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サシャ「いつだって、あなたの味方です」

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Part8
177 : ◆H4iwFNXQsw:2014/04/14(月) 20:07:36 ID:JC6Ta6P2
サシャ「……」
ライナー「……」
サシャ「あ、あの……ライナー? どうしたんですか? いきなり……」
ライナー「寒いんだ。……しばらくこうしててもいいか?」
サシャ「私は別にいいですけど……お肉はどこです? 見当たりませんが」キョロキョロ
ライナー「すまん。それ嘘だ」
サシャ「……」ジトッ...
ライナー「悪かったって。……そもそも肉はさっき食っただろ」
サシャ「お肉は別腹ですよ! ーーでも、手もすごく冷たいですね。雪遊びして冷えちゃいました?」ペタペタ
ライナー「……」ギュー
サシャ「? ?? え、えっと……?」オロオロ
ライナー「温かいな、お前……俺にはもったいないくらいだ……」
サシャ「あ、あのぅ……せめて顔だけでも見せてくれません? こんなに手が冷たいなら熱があるかもしれませんし、後ろから抱きつかれてると、その……緊張、するんですけど……」
ライナー「……すまん。卑怯だとは思うんだが、できればこのまま聞いてほしい。まだ踏ん切りがつかねえんだ」

178 : ◆H4iwFNXQsw:2014/04/14(月) 20:08:27 ID:JC6Ta6P2
ライナー「お前には、話さなきゃならんことがたくさんある。……ありすぎて、どこから話せばいいのか迷うくらいにな」
サシャ「……そんなにいっぱいあるんですか?」
ライナー「ああ。正直多すぎて困ってる」
ライナー(……順番を何も考えないなら、今すぐ説明できるのは巨人化のことなんだよな)
ライナー(この手の傷を、目の前で治しちまえばいい。……そうすれば、いくらサシャだって信じるはずだ)
ライナー(一番後回しにしたいことが、一番手っ取り早く話せるとは……皮肉なもんだな)
サシャ「あの……まだ話すことが決まってないなら、私が決めてもいいですか? 答えにくかったら後回しにしてもいいので」
ライナー「……? 何か聞きたいことがあるのか?」
サシャ「はい! ーー私、ライナーの故郷の話が聞きたいんです」
ライナー「俺のか? ……なんでまた」
サシャ「よくよく考えたら、ライナーの故郷の話って聞いたことありませんし……それに、自分の故郷のことなら話しやすいかなって思いまして」
ライナー「……俺がしようとしていた話とは、随分毛色が違う話なんだが」
サシャ「まあまあ、いいじゃないですか。ーー教えて下さいよ、ライナーの住んでた村ってどういうところだったんです?」
ライナー「そう言われてもなぁ……それこそ何から話したらいいかわかんねえぞ」

179 : ◆H4iwFNXQsw:2014/04/14(月) 20:09:31 ID:JC6Ta6P2
サシャ「それじゃあ、えーっと……ライナーの故郷ってどの辺りにあったんですか?」
ライナー「」ギクッ
サシャ「……? あの、どうしました?」
ライナー「……いや、なんでもない」ソワソワ
ライナー(どうしてこう、絶妙に答えにくい質問を選んでくるんだ……! わざとやってるんじゃないだろうな……?)
ライナー「あー……お前には話してなかったか? ウォール・マリア南東の山奥の村だ」
サシャ「へえ、南東の……あれ? 南東に山ってありましたっけ?」
ライナー「ある。絶対ある」キリッ
サシャ「そうでした? ーーということは、えっと……シーナがあってー、ローゼがあってー、マリアがあってー……」カキカキ

180 : ◆H4iwFNXQsw:2014/04/14(月) 20:10:29 ID:JC6Ta6P2
サシャ「ここがトロスト区で、ここがシガンシナ区で、それで南東だから……この辺りですかね」クルッ
ライナー「ああ、たぶんそこだ」
サシャ「たぶん?」
ライナー「……村にいた当時は地図なんて読まなかったからな。少し位置があやふやなんだ」
サシャ「えっ? あやふやで故郷に帰れるんですか?」
ライナー「……な、なんとかなるだろ。きっと……きっと行けばわかるはずだ」ギクシャク
サシャ「ふぅん、そんなものですかねー……ちなみに私のダウパー村はこの辺なんですよ。コニーのラガコ村はここで、マルコのジナエ町はここでーー」カキカキ...
ライナー「ほー……よく覚えてるな」
サシャ「前にそういう話をしたことがあるんです。アルミンが壁内の地形も一緒に説明してくれたんですよね。ーーところで、村の中に川は通ってました? 広さとかどれくらいでした?」

181 : ◆H4iwFNXQsw:2014/04/14(月) 20:11:19 ID:JC6Ta6P2
ライナー「川は……そうだな、細いのが一本あったはずだ。大人なら跨いで渡れるくらいだから……これくらいの幅か?」スッ
サシャ「結構狭いですね……ということは、釣りで食べていくのって難しいですよね。狩りも専門じゃないってことは、野菜とか家畜を育ててたんですか?」
ライナー「どちらかというと野菜を作ってたな。山羊や鶏を飼ってる家もあるにはあったが……基本的に、村人総出でお前の友だち作ってたぞ」
サシャ「……友だちじゃありません」ムスッ...
ライナー「冗談だって、怒るなよ。……それで、他に聞きたいことは?」
サシャ「牛を育ててる家は」
ライナー「なかった」
サシャ「……山羊と猪ってどっちがおいしいんでしょうか」
ライナー「お前……いくらなんでも人様の家畜を勝手に食うなよ」
サシャ「もう五年も経ってますし、そろそろ野生化してる頃合いだからいいかなぁって思ったんですけど……駄目ですかね?」
ライナー「知らん。俺に聞くな」


182 : ◆H4iwFNXQsw:2014/04/14(月) 20:12:04 ID:JC6Ta6P2
サシャ「後はそうですねー……森でうさぎ狩りとかしました? お花の蜜啜ったり、蜂の巣に手を突っ込んだりとかーー」
ライナー「ちょっと待て。なんで手ぇ突っ込んだんだ」
サシャ「蜂蜜食べるために決まってるでしょう。ライナーはやらなかったんですか?」
ライナー「やるわけねえだろ。……少なくとも普通の子どもはやらねえと思うぞ」
サシャ「えー……でもコニーはやってたって言ってましたよ? ーーおかしいですね、コニーが嘘を吐けるはずありませんし……」ウーン...
ライナー「狩猟民と農耕民を一緒にするんじゃーー」ハッ
ライナー(いかんいかん、さっきから何の話をしてるんだ! 本題からどんどん外れちまってるじゃねえか!)ブンブン
ライナー(サシャのペースに飲まれるな、こうやって話せる機会は今日しかないんだぞ……)ブツブツ...
サシャ「まあ、蜂の巣のことは置いといて。ーーそういう時ってベルトルトと二人で遊んでたんですか? 今でも仲いいですもんね、二人とも」
ライナー「……いや、二人じゃない。四人だった」
サシャ「四人?」
ライナー「ああ。……とは言っても、一人はもういないんだけどな」
サシャ「それは、その……五年前の時に、ですか」

183 : ◆H4iwFNXQsw:2014/04/14(月) 20:12:49 ID:JC6Ta6P2
ライナー「俺を庇って……巨人に食われて、死んだんだ」
サシャ「……巨人、に」
ライナー「俺とは違って、頼りになる奴だったよ。ベルトルトも、もう一人の仲間も……もちろん俺も、そいつのことを心から慕ってた。本当の兄貴みたいにな」
ライナー「もしかすると、三人の中で一番懐いていたのは俺かもしれん。村の中じゃずっとあいつに付いて回ってた気がする」
ライナー「年齢はもう追い越しちまったが……未だにあいつに追いつける気がしねえな。図体ばっかり大きくなって、中身はまだ子どものままだ」
サシャ「……」
ライナー「あー……すまん、脱線しすぎて変な話になっちまったな。忘れてくれ」
サシャ「いいえ、変な話なんかじゃないですよ。そのーー」
ライナー「……マルセルだ」
サシャ「マルセル……さんの話。聞けてよかったです」
ライナー「……」

184 : ◆H4iwFNXQsw:2014/04/14(月) 20:13:33 ID:JC6Ta6P2
ライナー「マルセルがいなくなった時に、俺は誓ったんだ。ーー絶対に、何としてでも故郷に帰るってな。こればっかりは……今でも、曲げられない」
サシャ「……それが、ライナーの夢なんですね」
ライナー「夢って言うほど上等なもんでもないけどな。……他の何を犠牲にしてでも、やり遂げなくちゃならねえことではあるが」
サシャ「……」
ライナー「……けどな、俺だって何もかも切り捨てられるってわけじゃない。同郷のベルトルトと、ア……もう一人の仲間だけは別だ」
ライナー「あいつらだけは、たとえ俺自身が犠牲になったとしても……守ってやらないといけない。マルセルの代わりに生き残った俺には、あいつらを無事に故郷に連れて行く責任がある」
ライナー「……いや、守ってやらないとってのは違うな。こればっかりは、俺がやりたいからやってるんだ。細かい理屈は抜きにしてな」
サシャ「……」
ライナー「その、理屈抜きで守りたいもんが……いつの間にか、もう一つ増えちまった」
サシャ「もう一つ……?」
ライナー「……お前だ、サシャ」

185 : ◆H4iwFNXQsw:2014/04/14(月) 20:14:36 ID:JC6Ta6P2
サシャ「……私、ですか?」
ライナー「ああ。……最初はそれこそ、もう一人手のかかる妹ができたみたいに考えてたんだ」
ライナー「お前は放っておくと何するかわからなかったからな。危なっかしくて目を離してられなかった」
ライナー「それで、しょっちゅうお前の面倒を見ているうちに……一緒にいるのが少しずつ楽しくなってきたんだ。初めて知ることや、お前に教えられることも多かった。ーー冗談に聞こえるかもしれんが、お前と話しただけで疲れが吹き飛んじまったこともあるくらいだ」
ライナー「気がついたら、俺はお前から目が離せなくなっちまってた。いらない世話を焼いてでも、お前のそばにいたくなった。……僅かでも、お前との繋がりが欲しくなっちまった」
サシャ「……」
ライナー「……それで、だな」
ライナー(ちくしょう、怖ぇな……心臓がぶっ壊れそうだ)
ライナー(アニの言う通りだ。……ビビってるのは俺のほうだったんだな)
ライナー(だが……今、ここでサシャに伝えなければ、俺はきっと一生後悔する……)

186 : ◆H4iwFNXQsw:2014/04/14(月) 20:15:48 ID:JC6Ta6P2
ライナー「……俺は、お前が好きだ。サシャ」
ライナー「この先、何があっても俺がお前を守る。幸せに……してやれるかどうかは、正直に言えばわからない」
ライナー「だが俺は、お前が泣いている顔は見たくないんだ。俺の隣で……ずっと、笑っていてほしいと願っている」
ライナー「だからこそ、俺は俺の全てを懸けて、お前を一生守り抜くと誓う。ーー絶対に、何としてでもだ」
ライナー「幸せにはできなくても、お前を泣かせたりなんかしない。……約束する」
サシャ「……」
ライナー「……だから」
ライナー「……俺と一緒に、来てくれないか」

187 : ◆H4iwFNXQsw:2014/04/14(月) 20:16:47 ID:JC6Ta6P2
ライナー「……すまん、いきなりで混乱してるよな。返事は今じゃなくていい」
サシャ「……」
ライナー「……そ、そろそろ訓練所に帰るか? 体は冷えて……っと」パッ
ライナー「悪いな、話してる間かなり力こもってただろ? 痛くなかったか? 平気か?」
サシャ「大丈夫です。……痛くないです」
ライナー「そうか、大丈夫か、大丈夫ならいいんだ……そうかそうか、よかったよかった」ホッ
サシャ「……」
ライナー「あー…………今日の……今日の晩飯はなんだろうな? 肉は出てこないだろうが、多少は味がついてるといいよな。うん」
サシャ「……」
ライナー「……なあサシャ、座り込んでないで帰ろうぜ。門限に間に合わなくなっちまうぞ」
サシャ「……今、お返事考えてるんです。ちょっと待ってください」
ライナー「ああそうか、返事を考えてるのか……なら仕方ないな。……………………返事?」

188 : ◆H4iwFNXQsw:2014/04/14(月) 20:17:42 ID:JC6Ta6P2
ライナー「……今、か?」
サシャ「……だから、ちょっと待ってくださいってば」
ライナー「え、あ、あぁ……すまん、わかった、少し待つ。座ってていいか?」
サシャ「好きにしてくださいよ。いちいち私に聞かないでください」
ライナー「そ、そうだな……わかった。好きにする」ドサッ
サシャ「……」
ライナー「……」ソワソワ
サシャ「……」
ライナー「……」
サシャ「……」
ライナー「……肩でも揉むか?」
サシャ「静かにしてくれません?」
ライナー「……すまん」シュン

189 : ◆H4iwFNXQsw:2014/04/14(月) 20:19:01 ID:JC6Ta6P2
前回の投下時に最後までと言いましたが、お待たせし過ぎなのでキリのいいところまで投下しました 続きは推敲次第ですがたぶん今週中
次こそは最後まで行きます

190 :以下、名無しが深夜にお送りします:2014/04/14(月) 20:56:53 ID:jlR55pB6

いいところで切りやがる

191 :以下、名無しが深夜にお送りします:2014/04/14(月) 21:24:24 ID:Q3vDVa5s
こっちまでドキドキ!!

192 :以下、名無しが深夜にお送りします:2014/04/14(月) 21:41:58 ID:eoSpYa0U
ギャアアアアアア!ドキドキする!心臓バクバクします!サシャ、頑張って受け止めてあげてー!!

193 :以下、名無しが深夜にお送りします:2014/04/14(月) 22:47:57 ID:SFAWbPnY
ライナー言ったああああ!
そして先が気になるう

194 :以下、名無しが深夜にお送りします:2014/04/14(月) 23:32:21 ID:WTJ7TxKI
返事待ちライナーかわいいw

199 : ◆H4iwFNXQsw:2014/04/22(火) 20:00:31 ID:VjbpwCWw
ライナー(さっきから、俺のほうを見ようともしない……背中を向けて、俯いたままだ)
ライナー「なあ、もしかして怒ってんのか?」
サシャ「……なんでそうなるんですか」
ライナー「いや、だってよ……静かにしてくれとか好きにしろとか……その……」モゴモゴ
サシャ「だから、違いますってば。……私も余裕ないんです、ちょっと待って下さい」
ライナー「別に今すぐ答えようとしなくてもいいんだぞ? もう少し考えてからでも、俺はーー」
サシャ「……考えてましたよ。私も、ずっと考えてたんです。……本当は、私から言おうと思ってて……なのに、どうしても、勇気が出なくて……」
サシャ「もう、気持ちは決まってるのに……わかんないんです、なんて答えたらいいのか……」
ライナー「……」
ライナー(答えにくいのも当然か。……よくよく考えたら、結局肝心なことは何一つ話してねえんだよな。俺は)
ライナー(本当は、何もかも打ち明けてから伝えるべきだったんだ。……サシャの気持ちを先に確かめたいってのは、完全に俺の都合だ)
ライナー(けど、これくらいの保険はかけたっていいだろ? 俺だって、答えを聞くのが怖いんだ……)
ライナー(その代わりーー)

200 : ◆H4iwFNXQsw:2014/04/22(火) 20:02:00 ID:VjbpwCWw
ライナー「難しく考えなくていいんだぞ、サシャ」
サシャ「でも……私、ちゃんとお返事したいんです。真剣に、答えたいんです。答えたいのに、どうしても言葉が浮かばなくって……」
ライナー「俺は、お前が出した答えならどんなものでも受け入れる。ありのままの、お前の気持ちを話してくれ」
サシャ「……私の、気持ち」
ライナー「ああ。……頭に浮かんだことを、そのまま話してくれればそれでいい。少しくらい無茶苦茶でもいいぞ?」
サシャ「……」
ライナー「何度も言うが、俺は急かすつもりはないんだ。すぐには返事をしにくいだろうってこともわかってる」
ライナー「いつまでも待つ、ってわけにはいかないけどな。できれば、そうだな……解散式までに聞かせてもらえれば充分なんだが、」
サシャ「……好き、です」


201 : ◆H4iwFNXQsw:2014/04/22(火) 20:02:42 ID:VjbpwCWw
ライナー「……サシャ?」
サシャ「……」
ライナー「お前、今……」
サシャ「……私も、ライナーのことが好きです」
ライナー「……」
サシャ「好きです、私も、好きです……すごく好きなんです、だいすき……」ギュウッ...
ライナー「……」
サシャ「でも……一緒には、行けません」

202 : ◆H4iwFNXQsw:2014/04/22(火) 20:03:31 ID:VjbpwCWw
サシャ「……」
ライナー「……そう、か」
サシャ「……」
ライナー「それは……俺がまだ、お前に話していないことがあるからか?」
サシャ「違います、それはもういいんです。……その隠しごとっていうのも、私のためなんですよね? ベルトルトから聞きました」
ライナー「ベルトルトに? ……まさか、他にも何か聞かされたのか?」
サシャ「そんなにたくさんは聞いてません。……けど、やらなきゃいけないことがあるとは聞きました」
サシャ「そのやらなきゃいけないことって、故郷に帰ることなんですよね? ライナーが私に来てほしいって言ってるのって、そのことですよね?」
ライナー「……ああ。その通りだ」
サシャ「正直に答えてください。ーー私が一緒に故郷へ行ったら、足手まといになりませんか?」
ライナー「ならない」
サシャ「……嘘ですよね」
ライナー「違う! 俺は本当にーー」
サシャ「いいえ。もう、わかるんです。わかっちゃうんですよ……ずっと、ずっと一緒にいたんですもん……」

203 : ◆H4iwFNXQsw:2014/04/22(火) 20:04:31 ID:VjbpwCWw
ライナー「……俺は、頼りにならないか?」
サシャ「そうじゃないです、そういうことじゃないんです。……あの、ライナーは覚えてます? 最初にキスしてくれた時、私に言ったこと」
ライナー「……? いや、覚えてない。何か変なこと言ったのか?」
サシャ「いいえ、変なことじゃないですよ。ーー『目的を果たそうとする意識はとても高い』って、『そういうところを尊敬している』って……褒めてくれたんです。私を」
サシャ「前にも言ったかもしれませんけど……あの時、私すごく嬉しかったんですよ? 『芋女』以外の私を見てくれてる人がいたんだって。こんな私にも……いいところがあったんだなって、実感できたんです」
ライナー「……悪いな。そんな大事なことなのに、俺は覚えてなくて」
サシャ「だから、いいんですってば。覚えてないってことは、ライナーの中から自然に出てきた言葉だってことでしょう? そういう言葉のほうが信じられます」
サシャ「それでですね……改めて考えてみたら、私も同じところが好きだったんですよ。故郷に帰ろうと……一つの目的に、夢に向かって頑張るライナーが、私は一番好きなんです」
サシャ「そういうライナーだったからこそ……あの時、私にキスの味を教えてくれたんですよね? そうでしょう?」

204 : ◆H4iwFNXQsw:2014/04/22(火) 20:05:25 ID:VjbpwCWw
サシャ「隠しごとなんかいくらされてもいいんです。置いて行かれたって平気です。ーーでも、ライナーの足を引っ張ることだけはしたくないんです」
サシャ「だから……一緒には、行けません」
ライナー「……俺は、それでも構わない。お前のためなら、俺はいくらだってーー」
サシャ「ライナーがよくても私が嫌なんですよ。私のせいで故郷に帰れなくなったらどうするんですか? そのために三年間頑張ってきたのに、全部台無しになっちゃうじゃないですか」
ライナー「俺が故郷に帰ったら、……一生、会えなくなるかもしれないんだぞ」
サシャ「だったら、私のほうから会いに行きますよ。故郷の大雑把な位置もさっき教えてもらいましたからね」
ライナー「……」
サシャ「やだなぁ、そんな顔しなくても大丈夫ですって! あんなに頑張ってきたんです、うまくいくに決まってますよ!」
サシャ「私、一緒には行けませんけど……ライナーのこと、ずっと応援してます」
サシャ「いつだって……どこにいたって、私はあなたの味方です。ーーそれだけは、覚えていてください」

205 : ◆H4iwFNXQsw:2014/04/22(火) 20:06:13 ID:VjbpwCWw
ライナー「……わかった。それがお前の答えなんだな」
サシャ「はい、そうです。ーー楽しかったです。今まで一緒にいられて」
ライナー「俺もだ。……故郷に帰っても、絶対に忘れない」
サシャ「私も忘れませんよ。忘れられそうにないってのが本当のところですけど」クスクス
ライナー「それはこっちの台詞だ。ーーさてと、もう帰るぞ。やり残したことはないよな? あったら今のうちに言っておけよ」
サシャ「……じゃあ、最後に一つだけ」
サシャ「……キスしてもらっても、いいですか?」
ライナー「……」
サシャ「これで、終わりにしますから。……お願いします」
ライナー「……ああ。わかった」

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