サシャ「いつだって、あなたの味方です」
Part2
21 : ◆H4iwFNXQsw:2014/03/15(土) 15:52:26 ID:PgauRLVM
サシャ「……こんなところで何してるんですか?」
アニ「掃除当番。……の、帰りだよ」
サシャ「へえ……へえー! お掃除の当番だったんですね、それはそれは大変だったでしょう、ええ、大変に決まってます!」ソワソワ
アニ「なんでそんなに焦ってるの?」
サシャ「焦ってませんっ!!」
サシャ(今一番会いたくて会いたくない人が目の前に現れたらそりゃ焦りますって! 焦りますとも!!)
アニ「…………」ジトッ...
サシャ(ああっ……! アニってばそんな目で見ないでくださいよ! 今回ばかりは私がおかしいって自分でもわかってるんですから!!)ダラダラ
アニ「あんた汗っかきだった?」
サシャ「ええっと……それなりに?」
アニ「私に聞かないでよ」
サシャ(私にも聞かないでくださいぃ……!)ギリッ...
サシャ(どうしましょう……先にアニだけにでも謝っておいたほうがいいんですかね……? でもいつベルトルトと話せるかわかりませんしどうせベルトルトを呼び出すことになるなら一緒にアニも呼んだほうがええっとええっと)ソワソワソワソワ
アニ「……一日目は、技巧と対人格闘だったよね」
22 : ◆H4iwFNXQsw:2014/03/15(土) 15:53:07 ID:PgauRLVM
サシャ「……へ? 何がです?」
アニ「試験だよ。来週から始まるでしょ」
サシャ「……」キョトン
アニ「ミーナもあんたもしょっちゅう表情変わるよね。……変なの」クスッ
サシャ「……あの、怒ってないんですか? この前のこと」
アニ「別に? ーーあれはあれでケリがついただろ。終わったことをいつまでも引き摺るほど、私は器の小さい女じゃないんだよ」
サシャ「おおー……なんか大人っぽい台詞ですね。見習いたいです」パチパチ
アニ「あんたはズルズル引きずりすぎ。……不意打ちとはいえ、私やベルトルトに勝ったんだから堂々としてなよ。そうやってびくびくしてる姿を見せられる方がよっぽど頭にくるからさ」
サシャ「……すみません」シュン
アニ「悪人面するなら最後までやり通しな。……そんな調子じゃ、将来苦労するだろうよ。きっと」
サシャ「悪人面……こうですか!」キリッ
23 : ◆H4iwFNXQsw:2014/03/15(土) 15:54:05 ID:PgauRLVM
アニ「……」
サシャ「……」キリリッ
アニ「……なんかさ、あんたみたいな馬鹿に負けたって思うと余計悔しいよね」ハァ
サシャ「!? わ、私そこまで馬鹿じゃありませんってば! コニーより座学の成績はいいんですよ!?」
アニ「そこで引き合いに出すのがコニーって時点でね……下と比べてどうするの? せめてミカサやユミルにしたら?」
サシャ「いえ、流石にその二人に頭で勝てるとは思わないんですけど……」
アニ「そんな弱気なら勝負は目に見えてるね。ーー次は負けないよ。油断も手加減もしない」
サシャ「! ……私だって、負けませんよ」
アニ「上等じゃないか。卒業試験であんたを叩きのめすのを楽しみにしておくよ。……じゃあね」スタスタ...
サシャ「あっ……行っちゃいました」
サシャ(……そういえばアニ、どこに行くんでしょう? あっちに何かありましたっけ?)
24 : ◆H4iwFNXQsw:2014/03/15(土) 15:54:42 ID:PgauRLVM
ーー営庭隅 とある林の中
アニ(確か、この辺だったかな……)キョロキョロ
ベルトルト「あっ、来た来た……アニ、こっちだよこっち」
アニ「! ……待たせたね、遅れてごめん」スタスタ...
ライナー「いや、俺たちも今来たところだ。それほど待ってない」
ベルトルト「今日は掃除当番だったんだよね? それなら遅れても仕方ないさ」
アニ「ううん、当番だけじゃなくて……ちょっとサシャと話してたんだよ」
ベルトルト「……」ピクッ
ライナー「お前がサシャと? ……珍しいな」
アニ「試験の話を少しだけね。ーーそれで、目処はついたの? ベルトルト」
ベルトルト「ああ、なんとかね。今から説明……する前に、ちょっと足元が不安だけど火を落とそうか。この前はミカサに見つかっちゃったし」フッ
アニ「……真っ暗で何も見えないんだけど」
ライナー「話をするだけならこれでもできるだろ。ーーそれで、計画を実行する日についてだが」
ベルトルト「ちゃんとキース教官から聞き出してきたよ。解散式の次の日、運良く調査兵団がトロスト区から離れるらしい」
25 : ◆H4iwFNXQsw:2014/03/15(土) 15:55:17 ID:PgauRLVM
アニ「壁外遠征だっけ? ……それ、確かな情報なの?」
ベルトルト「ああ、間違いないと思う。キース教官はかなり調査兵団の事情に明るいみたいでね。トロスト区を出発する時間まで詳しく教えてくれたよ」
アニ「いくら主任教官だからって、訓練兵団所属の兵士が調査兵団の事情に詳しいっておかしくない? 本当に大丈夫なの?」
ライナー「お前の疑問も最もだが、教官が調査兵団の関係者だってことは間違いないと思うぞ。秋の山岳訓練の時に、調査兵団の自由の翼と教官の署名が入った物をこの目で見たからな。どの辺りの地位にいたのかまではわからんが」
ベルトルト「それに、夏の肝試しの時にハンジさんって臨時教官がいただろ? 実はあの人、調査兵団の分隊長らしいんだ」
ライナー「……」ピクッ
アニ「……肝試し?」
ベルトルト「現役の調査兵団の分隊長が、わざわざ訓練所まで訪ねてくるくらいだから……少なくとも分隊長以上の地位にはいたんじゃないかな? それがどうして訓練兵団の教官になったのかまでは想像つかないけどね」
ライナー「……」
アニ「……」
ベルトルト「……? どうしたの、二人とも。急に静かになったけど」
アニ「……あのさ、ベルトルト」
26 : ◆H4iwFNXQsw:2014/03/15(土) 15:55:58 ID:PgauRLVM
アニ「営庭に巨人って……いないよね?」
ベルトルト「はい? ……いるわけないだろ、何言ってるんだよアニったら」
ライナー「便所に一人で行っても、変な声とか聞こえてこないよな……?」
ベルトルト「……ああ、七不思議か」ポン
アニ「七不思議か、じゃないでしょ? ……あんたのせいで思い出しちゃったじゃないか」プルプルプルプル....
ライナー「そ、そうイライラするなよアニ、少し落ち着け、なっ? ーーそれでベルトルト、あの時アルミンやお前が話してたのは全部嘘っぱちなんだろ? そんなこと実際ありえないよな? な?」ソワソワ
ベルトルト「……」
アニ「ねえってば……なんとか言ってよ、ベルトルト」グイグイ
ライナー「ベルトルト? 話聞いてるか?」ユサユサ
ベルトルト「……誰もいないトイレから聞こえる、謎の声」
アニ「ひっ」ビクッ!!
ライナー「………………聞こえない聞こえない聞こえない聞こえない」ブツブツ
ベルトルト「……片腕だけで帰ってきた息子が、夜な夜な母親の枕元に立っては母さん母さん痛い痛いと呻き声をーー」
27 : ◆H4iwFNXQsw:2014/03/15(土) 15:56:55 ID:PgauRLVM
ーー 同刻 男子寮 エレンたちの部屋
アルミン「……」パラッ
エレン「九十六っ、九十七っ、九十八っ」ブンブンブンブン
アルミン「……? 今、どこかで悲鳴が聞こえなかった?」
エレン「九十九……悲鳴? 気のせいだろ、俺には何も聞こえなかったぞ?」
アルミン「……ちょっと調べてくるね」スクッ
エレン「一応聞くがどの辺りに行くんだ?」
アルミン「そうだなぁ……営庭の隅っこの林辺りかな。この前、あそこでなんだか光が動いてた気がするんだよね。ーー七不思議が生まれた気がする」キリッ
エレン「じゃあ七不思議じゃなくて八不思議だな」
アルミン「ちょっと僕出かけて」
エレン「行かせるわけねえだろ? 一人で四人分の点呼なんか誤魔化せねえよ」ガシッ
アルミン「『点呼してやる……! 一人残らず!』……みたいな感じでさ、なんとかならない?」
エレン「ならねえよ。座れアルミン」
28 : ◆H4iwFNXQsw:2014/03/15(土) 15:57:48 ID:PgauRLVM
ーー 同刻 営庭隅 とある林の中
アニ「ひぃぃぃぃ……!」ガタガタガタガタ...
ライナー「あああああもう完ッ全に思い出しちまったじゃねえかぁ……! 夜中に便所に行きたくなったらどうしてくれんだよ……!」ブルブルブルブル...
アニ「……そうだ、私はミーナ起こそうっと」ポン
ライナー「なっ……!? アニ、お前汚ねえぞ!?」
アニ「あんたはベルトルトを連れて歩けばいいでしょ? 怖いの平気なんだから」
ライナー「……なあ、ベルトルト」クイクイ
ベルトルト「寒いから嫌だね。用足しくらい一人で行きなよ、子どもじゃないんだから」
ライナー「くそっ……! この薄情者め! 覚えてろよ!」イライラ
29 : ◆H4iwFNXQsw:2014/03/15(土) 15:59:30 ID:PgauRLVM
ライナー「……」
ベルトルト「……」
アニ「……」
ライナー「……俺たち、さっきまで何の話してたんだっけ?」
ベルトルト「壁を壊す日のことだよ」
アニ「……話を戻そうか。日程がズレる可能性は?」
ライナー「そりゃ天候次第、としか今のところは言えないな。その日に限って馬が一匹残らず体調を崩すかもしれないし、運悪く団長が当日腹を下すかもしれん。可能性を一つ一つ考えていたらキリがない」
アニ「確かにそうだね。……それで、解散式の次の日の、いつ頃にやるの?」
ライナー「できれば……そうだな、昼前には決行したいところだ。ベルトルト、お前の整備班はその日どうなってる?」
ベルトルト「……」
ライナー「……? ベルトルト? どうした?」
ベルトルト「え? ……あ、ごめん。少し考えごとしてた」
アニ「……」
ベルトルト「その日は仕事がないはずだから問題ないよ。ないけどさ、その……」
ライナー「なんだ? 言いたいことがあるならはっきり言え」
30 : ◆H4iwFNXQsw:2014/03/15(土) 16:00:13 ID:PgauRLVM
ベルトルト「この、壁を壊す日なんだけど……どうしても、ズラせないかな。一日か二日でいいからさ」
ライナー「……」ポカン
アニ「……」
ベルトルト「……? 何?」
アニ「いや……」
ライナー「お前が自分の意見を言うなんて珍しいと思ってな。驚いただけだ」
ベルトルト「……たまにはね。それでどうかな、やっぱり無理?」
ライナー「日をズラすのははっきり言って難しいな。この日以降は論外だし、その前はまだトロスト区に調査兵団がいる。下手すりゃお前のうなじが削がれるぞ?」
ベルトルト「ならせめて、時間帯をなんとかできないかな。例えば……そうだ、明け方近くとか」
31 : ◆H4iwFNXQsw:2014/03/15(土) 16:02:22 ID:PgauRLVM
ライナー「それも無理だ。時間も変更はできない。昼前にしたのはな、調査兵団が出発した直後だからってものあるが……ちょうどこの時間に、壁外を監視してる駐屯兵団が交替するからなんだ。引き継ぎ前後はどうしても気が緩むから、できればそこを突きたい」
アニ「当日の明け方だとまだ調査兵団がいるし、次の日の明け方だと調査兵団が戻ってきてる可能性も高まるからね。ライナーが言ってる調査兵団が出発した直後ってのが一番いいタイミングだと思うよ」
ベルトルト「……そうだね、二人の言う通りだ。ーーごめん、さっきのは撤回するよ。忘れて」
ライナー「いや、お前の意見が聞けるなんてかなり貴重な機会だからな。正直忘れられそうにない」
アニ「私もびっくりしたよ。あんた、自分の意見を言うことちゃんとできたんだね」クスッ
ベルトルト「二人とも酷いな……僕だって、思うところがあったらそれなりには言うさ」
32 : ◆H4iwFNXQsw:2014/03/15(土) 16:03:04 ID:PgauRLVM
アニ「……ここまで、長かったね」
ベルトルト「訓練兵団に入って三年……ううん、ここに来た時からって考えるともう五年か」
ライナー「その苦労もあと少しで報われるさ。ーー当日にしくじるなよ? ベルトルト」
ベルトルト「大丈夫、わかってるよ。任せておいて」
アニ「今回で打ち合わせは終わりだっけ?」
ライナー「ああ、後は当日までお互い接触は控えよう。変に疑われても困るからな」
ベルトルト「じゃあ、今日はこれで解散……かな。あまり部屋を空けてもまずいし」
アニ「終わりなら私は帰るよ。やることもあるからね」
ライナー「いや、お前には少し話がある。……ベルトルト、すまないが先に戻っててくれないか? 二人だけで話がしたいんだ」
ベルトルト「……? わかった、行ってるよ」スタスタ...
アニ「……」
33 : ◆H4iwFNXQsw:2014/03/15(土) 16:03:41 ID:PgauRLVM
アニ「話って何? まだお風呂に入ってないんだから早く済ませてよ。こっちはフォローしてくれる奴がいないから、あまり部屋を空けたらミカサたちに怪しまれるんだ」
ライナー「……お前、今回の中間成績は六位だったよな。確か」
アニ「ああ、そうらしいね。私はちゃんと見てないけど、ミーナに教えてもらったよ」
ライナー「山岳訓練の前は四位だった。……二つ順位を落としたな?」
アニ「説教するためにわざわざ残したの? ーー次はちゃんとやるよ。あんたに心配されなくても大丈夫」
ライナー「……」
アニ「何?」
ライナー「俺は、お前らに誤魔化されるほど馬鹿じゃない」
アニ「……」
ライナー「今回の訓練の直前にも成績が貼りだされたよな? あの時、ユミルの成績は確か八位だった。クリスタは……悪くはなかったが、それでも二十番前後といったところだ。それが今回大きく逆転した」
アニ「へえ、頑張ったんだねクリスタは」
ライナー「ユミルの荷物はクリスタよりも多かった」
アニ「……」
34 : ◆H4iwFNXQsw:2014/03/15(土) 16:04:29 ID:PgauRLVM
ライナー「お前の言うとおり、普通はクリスタが頑張ったと考えるところなんだろうな。だが、俺はあいつらが荷物の配分をどうしていたのか知っている」
ライナー「ユミルはクリスタと荷物をすり替えたんだ。……いつやったのかはわからんがな」
アニ「つまり?」
ライナー「俺たちの班だけで起こっていたとは考えにくい」
アニ「へえ……あんたは、私たちの班でも同じことがあったって疑ってるわけだ」
ライナー「……近いことはあったんじゃないかと、俺は考えている」
アニ「……」
ライナー「何かあったんだな?」
アニ「……あんたには、教えてやんない」
ライナー「アニ」
アニ「……ベルトルトがどう思ってるかは知らないけどさ、私は今回の結果に不満はないんだ。むしろ感心してるんだよ」
アニ「あの子はただの食欲馬鹿じゃない。あんたが思っているよりずっと強かだし、色々考えてるよ」
35 : ◆H4iwFNXQsw:2014/03/15(土) 16:07:05 ID:PgauRLVM
ふぇぇぇ……話の流れは決まってるのに入れたい展開が多すぎてまとまらないよぉ……
デートネタだけでもう一本書けるぞぉ(白目)
というわけで話としては中途半端なんですが一旦ここまでです 次回は来週
今回途中に出てきた順位ですが、一応考えた上であの並びになってますので「あのキャラがそんな下なわけない!」って怒らないでくださいね
36 :以下、名無しが深夜にお送りします:2014/03/15(土) 16:42:38 ID:a2NJYr4A
乙です
続き待ってます
37 :以下、名無しが深夜にお送りします:2014/03/15(土) 19:29:58 ID:4NmqL9Lo
まってました(≧∇≦)続き楽しみにしてますw
38 :以下、名無しが深夜にお送りします:2014/03/15(土) 23:04:34 ID:697ihSsg
待ってましたあああああああ!!!!! はーライサシャかわいい、幸せです。続き物凄く楽しみにしています~!!
39 :以下、名無しが深夜にお送りします:2014/03/18(火) 18:52:38 ID:rJlhDBRE
待ってました!!
40 : ◆H4iwFNXQsw:2014/03/19(水) 21:51:59 ID:wUGBEG/A
アニ「あんた、明日はあの子と一緒に街に出かけるんでしょ? 最後くらいしっかり楽しんで、いい思い出作ってあげなよ。後悔がないようにね」
ライナー「ああ、もちろんそうするさ。……そうだな、最後なんだよな」
アニ「……ねえ、もう何回聞いたのかわかんないんだけど……本当に言う気ないの? このまま何も言わないつもり?」
ライナー「当然だ。……言えるわけねえだろ、そもそも」
アニ「頑固」
ライナー「なんとでも言え」
アニ「石頭、筋肉馬鹿、堅物、お人好し、それから……」ブツブツ...
ライナー「……言いすぎじゃねえか?」
アニ「あんたが言えって言ったんでしょ? ……あの子を壁内に置いていくつもりなら、あんたの手でしっかり突き放しな。いつまでも思わせぶりな態度ばかり取られるほうの身にもなってみなよ」
ライナー「……お前に説教されなくたってわかってんだよ、そんなことは」
アニ「わかってるのに実行しようとしないのはなんで? ……あんたらしくもない」
ライナー「……」
アニ「あのさぁ……あんたはいい加減、自分の気持ちに正直になったら? 私やベルトルトや……故郷のことは置いといてさ」
ライナー「そういうわけにはいかんだろう。大体ーー」
アニ「サシャを故郷に連れて行きたいならそうすればいい。……無理矢理にでも、ね」
41 : ◆H4iwFNXQsw:2014/03/19(水) 21:52:56 ID:wUGBEG/A
ライナー「……は?」
アニ「だから、連れてっちゃえばいいって言ってるの。力尽くでも説得するにしても、あんたならやろうと思えばできるでしょ?」
ライナー「俺に人攫いになれってか?」
アニ「そうだけど?」
ライナー「……犯罪じゃねえか」
アニ「壁壊したあんたが今更何言ってるんだか。……でも、連れて行きたいなら覚悟しなよ? 中途半端な態度や誘い文句じゃ、あの子にはすぐ見抜かれるからね。説得するはずが逆にフラれちゃったとしても、私はフォローしてやんないよ」
ライナー「……」
アニ「……ふふっ、変な顔。ーーベルトルトも残ればよかったのにね、あんたのそんな顔見る機会なんて滅多にないよ」クスクス
ライナー「お前は……俺が、あいつを故郷に連れて行くことには反対しないのか?」
アニ「別にしないよ。あんたの好きにすればいいんじゃない? ーーそもそも、他人の色恋に口出しなんかしたくないし。そういうのはもうミーナだけで充分だよ」ハァ
ライナー「……そうか」
アニ「ただし、私もベルトルトも……あんたも。いざという時には、自分の手の届く範囲しか守れない」
42 : ◆H4iwFNXQsw:2014/03/19(水) 21:53:52 ID:wUGBEG/A
アニ「そして私やベルトルトの手は、あの子までは届かない。ーーそのことが覚悟できるなら、連れて行くのも可能性としては充分ありなんじゃないの?」
ライナー「……つまり、お前らはサシャの手助けはしないってことでいいんだな?」
アニ「あんたの予想通り、こっちは今回手酷くやられたんでね。そこまで面倒みてあげる義理はないよ。……それに、そういう手助けの仕方は嫌うと思うんだ。あの子」
ライナー「……ったく、お前も随分簡単に言ってくれるよな。どっちを選ぶにしろ、結局説得するのも掻っ攫うのも俺なんだぞ? わかってるのか?」
アニ「そんなのあんたがズルズル関係引き延ばしたのが原因でしょ? 私は悪くない」
ライナー「それにしたってなぁ……俺たちのことを明かすにはリスクがでかすぎるだろ? 計画の実行前に調査兵団に駆け込まれでもしたらそれこそ終わりだ。仮に受け入れてもらえたとしても、サシャなら何かの拍子にポロッと言っちまうこともあるだろうし、そもそもだなーー」ブツブツ...
アニ「……あんたさぁ、そうやってぐだぐた言ってるけどーー本当は、サシャに拒否されるのが怖いだけなんじゃないの?」
ライナー「……何だと?」ピクッ
アニ「意気地なし」
ライナー「……煽るならもう少し凝った言い回しを覚えるんだな。ーー確認したかったのはさっきのことだけだ。もう俺は戻るぞ」スタスタ...
アニ「……あの子だって、怖いんだよ」
ライナー「……」
43 : ◆H4iwFNXQsw:2014/03/19(水) 21:55:15 ID:wUGBEG/A
アニ「私やあんたは『任務だから』って逃げることができるけど……サシャにはそれがないんだ。ーー怖くたって、進まないといけない。戻れないんだよ」
ライナー「……」
アニ「ねえ、あんたはいつまで目を逸らしてるつもりなの? 本当にこのままでいいわけ? 絶対に後悔しないって言える? 餌付けした野良犬の面倒は、最後まで見るのが道理ってもんなんじゃないの?」
ライナー「……」
アニ「……」
ライナー「……つまり」
アニ「うん」
ライナー「つまり……長々と、色々言ってはいるが、結局のところ」
アニ「うん」
ライナー「俺から、サシャに…………………………………………………………すっ、好きだと伝えろ、ってことか?」
アニ「うん」
44 : ◆H4iwFNXQsw:2014/03/19(水) 21:56:13 ID:wUGBEG/A
ライナー「……」
アニ「……」
ライナー「……」クルッ
アニ「待ちなよライナー、どこ行く気?」ガシッ
ライナー「ちょっ、ちょっとだけ、ちょっとだけその辺走ってくる……!」ソワソワ ウズウズ
アニ「……ふんっ!!」ゲシッ
ライナー「ぐおぁぁっ!?」ドタンッ!!
アニ「馬鹿か! 馬鹿か!! あんたなんですぐ肉体いじめる方向に走るの!?」ゲシゲシゲシゲシ
ライナー「痛って! 痛えって、スネ蹴るんじゃねえ! 俺はただ、走りながら考えをまとめようとーー」ジタバタジタバタ
アニ「どうせそのまま疲れて寝ちゃおうって魂胆なんでしょ!? 私はね、まだ一晩あるからきちんと悩んで結論出せって言ったの!! あやふやにしろなんて言ってないっ!!」ゲシゲシゲシゲシ
ライナー「わかった、わかったから蹴るのをやめろ!!」ゴロンゴロン
アニ「……ふんだ、そのスネじゃ走れないよね。さっさと寮に帰りな」スタスタ...
ライナー「」グッタリ
サシャ「……こんなところで何してるんですか?」
アニ「掃除当番。……の、帰りだよ」
サシャ「へえ……へえー! お掃除の当番だったんですね、それはそれは大変だったでしょう、ええ、大変に決まってます!」ソワソワ
アニ「なんでそんなに焦ってるの?」
サシャ「焦ってませんっ!!」
サシャ(今一番会いたくて会いたくない人が目の前に現れたらそりゃ焦りますって! 焦りますとも!!)
アニ「…………」ジトッ...
サシャ(ああっ……! アニってばそんな目で見ないでくださいよ! 今回ばかりは私がおかしいって自分でもわかってるんですから!!)ダラダラ
アニ「あんた汗っかきだった?」
サシャ「ええっと……それなりに?」
アニ「私に聞かないでよ」
サシャ(私にも聞かないでくださいぃ……!)ギリッ...
サシャ(どうしましょう……先にアニだけにでも謝っておいたほうがいいんですかね……? でもいつベルトルトと話せるかわかりませんしどうせベルトルトを呼び出すことになるなら一緒にアニも呼んだほうがええっとええっと)ソワソワソワソワ
アニ「……一日目は、技巧と対人格闘だったよね」
22 : ◆H4iwFNXQsw:2014/03/15(土) 15:53:07 ID:PgauRLVM
サシャ「……へ? 何がです?」
アニ「試験だよ。来週から始まるでしょ」
サシャ「……」キョトン
アニ「ミーナもあんたもしょっちゅう表情変わるよね。……変なの」クスッ
サシャ「……あの、怒ってないんですか? この前のこと」
アニ「別に? ーーあれはあれでケリがついただろ。終わったことをいつまでも引き摺るほど、私は器の小さい女じゃないんだよ」
サシャ「おおー……なんか大人っぽい台詞ですね。見習いたいです」パチパチ
アニ「あんたはズルズル引きずりすぎ。……不意打ちとはいえ、私やベルトルトに勝ったんだから堂々としてなよ。そうやってびくびくしてる姿を見せられる方がよっぽど頭にくるからさ」
サシャ「……すみません」シュン
アニ「悪人面するなら最後までやり通しな。……そんな調子じゃ、将来苦労するだろうよ。きっと」
サシャ「悪人面……こうですか!」キリッ
23 : ◆H4iwFNXQsw:2014/03/15(土) 15:54:05 ID:PgauRLVM
アニ「……」
サシャ「……」キリリッ
アニ「……なんかさ、あんたみたいな馬鹿に負けたって思うと余計悔しいよね」ハァ
サシャ「!? わ、私そこまで馬鹿じゃありませんってば! コニーより座学の成績はいいんですよ!?」
アニ「そこで引き合いに出すのがコニーって時点でね……下と比べてどうするの? せめてミカサやユミルにしたら?」
サシャ「いえ、流石にその二人に頭で勝てるとは思わないんですけど……」
アニ「そんな弱気なら勝負は目に見えてるね。ーー次は負けないよ。油断も手加減もしない」
サシャ「! ……私だって、負けませんよ」
アニ「上等じゃないか。卒業試験であんたを叩きのめすのを楽しみにしておくよ。……じゃあね」スタスタ...
サシャ「あっ……行っちゃいました」
サシャ(……そういえばアニ、どこに行くんでしょう? あっちに何かありましたっけ?)
24 : ◆H4iwFNXQsw:2014/03/15(土) 15:54:42 ID:PgauRLVM
ーー営庭隅 とある林の中
アニ(確か、この辺だったかな……)キョロキョロ
ベルトルト「あっ、来た来た……アニ、こっちだよこっち」
アニ「! ……待たせたね、遅れてごめん」スタスタ...
ライナー「いや、俺たちも今来たところだ。それほど待ってない」
ベルトルト「今日は掃除当番だったんだよね? それなら遅れても仕方ないさ」
アニ「ううん、当番だけじゃなくて……ちょっとサシャと話してたんだよ」
ベルトルト「……」ピクッ
ライナー「お前がサシャと? ……珍しいな」
アニ「試験の話を少しだけね。ーーそれで、目処はついたの? ベルトルト」
ベルトルト「ああ、なんとかね。今から説明……する前に、ちょっと足元が不安だけど火を落とそうか。この前はミカサに見つかっちゃったし」フッ
アニ「……真っ暗で何も見えないんだけど」
ライナー「話をするだけならこれでもできるだろ。ーーそれで、計画を実行する日についてだが」
ベルトルト「ちゃんとキース教官から聞き出してきたよ。解散式の次の日、運良く調査兵団がトロスト区から離れるらしい」
25 : ◆H4iwFNXQsw:2014/03/15(土) 15:55:17 ID:PgauRLVM
アニ「壁外遠征だっけ? ……それ、確かな情報なの?」
ベルトルト「ああ、間違いないと思う。キース教官はかなり調査兵団の事情に明るいみたいでね。トロスト区を出発する時間まで詳しく教えてくれたよ」
アニ「いくら主任教官だからって、訓練兵団所属の兵士が調査兵団の事情に詳しいっておかしくない? 本当に大丈夫なの?」
ライナー「お前の疑問も最もだが、教官が調査兵団の関係者だってことは間違いないと思うぞ。秋の山岳訓練の時に、調査兵団の自由の翼と教官の署名が入った物をこの目で見たからな。どの辺りの地位にいたのかまではわからんが」
ベルトルト「それに、夏の肝試しの時にハンジさんって臨時教官がいただろ? 実はあの人、調査兵団の分隊長らしいんだ」
ライナー「……」ピクッ
アニ「……肝試し?」
ベルトルト「現役の調査兵団の分隊長が、わざわざ訓練所まで訪ねてくるくらいだから……少なくとも分隊長以上の地位にはいたんじゃないかな? それがどうして訓練兵団の教官になったのかまでは想像つかないけどね」
ライナー「……」
アニ「……」
ベルトルト「……? どうしたの、二人とも。急に静かになったけど」
アニ「……あのさ、ベルトルト」
アニ「営庭に巨人って……いないよね?」
ベルトルト「はい? ……いるわけないだろ、何言ってるんだよアニったら」
ライナー「便所に一人で行っても、変な声とか聞こえてこないよな……?」
ベルトルト「……ああ、七不思議か」ポン
アニ「七不思議か、じゃないでしょ? ……あんたのせいで思い出しちゃったじゃないか」プルプルプルプル....
ライナー「そ、そうイライラするなよアニ、少し落ち着け、なっ? ーーそれでベルトルト、あの時アルミンやお前が話してたのは全部嘘っぱちなんだろ? そんなこと実際ありえないよな? な?」ソワソワ
ベルトルト「……」
アニ「ねえってば……なんとか言ってよ、ベルトルト」グイグイ
ライナー「ベルトルト? 話聞いてるか?」ユサユサ
ベルトルト「……誰もいないトイレから聞こえる、謎の声」
アニ「ひっ」ビクッ!!
ライナー「………………聞こえない聞こえない聞こえない聞こえない」ブツブツ
ベルトルト「……片腕だけで帰ってきた息子が、夜な夜な母親の枕元に立っては母さん母さん痛い痛いと呻き声をーー」
27 : ◆H4iwFNXQsw:2014/03/15(土) 15:56:55 ID:PgauRLVM
ーー 同刻 男子寮 エレンたちの部屋
アルミン「……」パラッ
エレン「九十六っ、九十七っ、九十八っ」ブンブンブンブン
アルミン「……? 今、どこかで悲鳴が聞こえなかった?」
エレン「九十九……悲鳴? 気のせいだろ、俺には何も聞こえなかったぞ?」
アルミン「……ちょっと調べてくるね」スクッ
エレン「一応聞くがどの辺りに行くんだ?」
アルミン「そうだなぁ……営庭の隅っこの林辺りかな。この前、あそこでなんだか光が動いてた気がするんだよね。ーー七不思議が生まれた気がする」キリッ
エレン「じゃあ七不思議じゃなくて八不思議だな」
アルミン「ちょっと僕出かけて」
エレン「行かせるわけねえだろ? 一人で四人分の点呼なんか誤魔化せねえよ」ガシッ
アルミン「『点呼してやる……! 一人残らず!』……みたいな感じでさ、なんとかならない?」
エレン「ならねえよ。座れアルミン」
28 : ◆H4iwFNXQsw:2014/03/15(土) 15:57:48 ID:PgauRLVM
ーー 同刻 営庭隅 とある林の中
アニ「ひぃぃぃぃ……!」ガタガタガタガタ...
ライナー「あああああもう完ッ全に思い出しちまったじゃねえかぁ……! 夜中に便所に行きたくなったらどうしてくれんだよ……!」ブルブルブルブル...
アニ「……そうだ、私はミーナ起こそうっと」ポン
ライナー「なっ……!? アニ、お前汚ねえぞ!?」
アニ「あんたはベルトルトを連れて歩けばいいでしょ? 怖いの平気なんだから」
ライナー「……なあ、ベルトルト」クイクイ
ベルトルト「寒いから嫌だね。用足しくらい一人で行きなよ、子どもじゃないんだから」
ライナー「くそっ……! この薄情者め! 覚えてろよ!」イライラ
29 : ◆H4iwFNXQsw:2014/03/15(土) 15:59:30 ID:PgauRLVM
ライナー「……」
ベルトルト「……」
アニ「……」
ライナー「……俺たち、さっきまで何の話してたんだっけ?」
ベルトルト「壁を壊す日のことだよ」
アニ「……話を戻そうか。日程がズレる可能性は?」
ライナー「そりゃ天候次第、としか今のところは言えないな。その日に限って馬が一匹残らず体調を崩すかもしれないし、運悪く団長が当日腹を下すかもしれん。可能性を一つ一つ考えていたらキリがない」
アニ「確かにそうだね。……それで、解散式の次の日の、いつ頃にやるの?」
ライナー「できれば……そうだな、昼前には決行したいところだ。ベルトルト、お前の整備班はその日どうなってる?」
ベルトルト「……」
ライナー「……? ベルトルト? どうした?」
ベルトルト「え? ……あ、ごめん。少し考えごとしてた」
アニ「……」
ベルトルト「その日は仕事がないはずだから問題ないよ。ないけどさ、その……」
ライナー「なんだ? 言いたいことがあるならはっきり言え」
30 : ◆H4iwFNXQsw:2014/03/15(土) 16:00:13 ID:PgauRLVM
ベルトルト「この、壁を壊す日なんだけど……どうしても、ズラせないかな。一日か二日でいいからさ」
ライナー「……」ポカン
アニ「……」
ベルトルト「……? 何?」
アニ「いや……」
ライナー「お前が自分の意見を言うなんて珍しいと思ってな。驚いただけだ」
ベルトルト「……たまにはね。それでどうかな、やっぱり無理?」
ライナー「日をズラすのははっきり言って難しいな。この日以降は論外だし、その前はまだトロスト区に調査兵団がいる。下手すりゃお前のうなじが削がれるぞ?」
ベルトルト「ならせめて、時間帯をなんとかできないかな。例えば……そうだ、明け方近くとか」
31 : ◆H4iwFNXQsw:2014/03/15(土) 16:02:22 ID:PgauRLVM
ライナー「それも無理だ。時間も変更はできない。昼前にしたのはな、調査兵団が出発した直後だからってものあるが……ちょうどこの時間に、壁外を監視してる駐屯兵団が交替するからなんだ。引き継ぎ前後はどうしても気が緩むから、できればそこを突きたい」
アニ「当日の明け方だとまだ調査兵団がいるし、次の日の明け方だと調査兵団が戻ってきてる可能性も高まるからね。ライナーが言ってる調査兵団が出発した直後ってのが一番いいタイミングだと思うよ」
ベルトルト「……そうだね、二人の言う通りだ。ーーごめん、さっきのは撤回するよ。忘れて」
ライナー「いや、お前の意見が聞けるなんてかなり貴重な機会だからな。正直忘れられそうにない」
アニ「私もびっくりしたよ。あんた、自分の意見を言うことちゃんとできたんだね」クスッ
ベルトルト「二人とも酷いな……僕だって、思うところがあったらそれなりには言うさ」
32 : ◆H4iwFNXQsw:2014/03/15(土) 16:03:04 ID:PgauRLVM
アニ「……ここまで、長かったね」
ベルトルト「訓練兵団に入って三年……ううん、ここに来た時からって考えるともう五年か」
ライナー「その苦労もあと少しで報われるさ。ーー当日にしくじるなよ? ベルトルト」
ベルトルト「大丈夫、わかってるよ。任せておいて」
アニ「今回で打ち合わせは終わりだっけ?」
ライナー「ああ、後は当日までお互い接触は控えよう。変に疑われても困るからな」
ベルトルト「じゃあ、今日はこれで解散……かな。あまり部屋を空けてもまずいし」
アニ「終わりなら私は帰るよ。やることもあるからね」
ライナー「いや、お前には少し話がある。……ベルトルト、すまないが先に戻っててくれないか? 二人だけで話がしたいんだ」
ベルトルト「……? わかった、行ってるよ」スタスタ...
アニ「……」
33 : ◆H4iwFNXQsw:2014/03/15(土) 16:03:41 ID:PgauRLVM
アニ「話って何? まだお風呂に入ってないんだから早く済ませてよ。こっちはフォローしてくれる奴がいないから、あまり部屋を空けたらミカサたちに怪しまれるんだ」
ライナー「……お前、今回の中間成績は六位だったよな。確か」
アニ「ああ、そうらしいね。私はちゃんと見てないけど、ミーナに教えてもらったよ」
ライナー「山岳訓練の前は四位だった。……二つ順位を落としたな?」
アニ「説教するためにわざわざ残したの? ーー次はちゃんとやるよ。あんたに心配されなくても大丈夫」
ライナー「……」
アニ「何?」
ライナー「俺は、お前らに誤魔化されるほど馬鹿じゃない」
アニ「……」
ライナー「今回の訓練の直前にも成績が貼りだされたよな? あの時、ユミルの成績は確か八位だった。クリスタは……悪くはなかったが、それでも二十番前後といったところだ。それが今回大きく逆転した」
アニ「へえ、頑張ったんだねクリスタは」
ライナー「ユミルの荷物はクリスタよりも多かった」
アニ「……」
34 : ◆H4iwFNXQsw:2014/03/15(土) 16:04:29 ID:PgauRLVM
ライナー「お前の言うとおり、普通はクリスタが頑張ったと考えるところなんだろうな。だが、俺はあいつらが荷物の配分をどうしていたのか知っている」
ライナー「ユミルはクリスタと荷物をすり替えたんだ。……いつやったのかはわからんがな」
アニ「つまり?」
ライナー「俺たちの班だけで起こっていたとは考えにくい」
アニ「へえ……あんたは、私たちの班でも同じことがあったって疑ってるわけだ」
ライナー「……近いことはあったんじゃないかと、俺は考えている」
アニ「……」
ライナー「何かあったんだな?」
アニ「……あんたには、教えてやんない」
ライナー「アニ」
アニ「……ベルトルトがどう思ってるかは知らないけどさ、私は今回の結果に不満はないんだ。むしろ感心してるんだよ」
アニ「あの子はただの食欲馬鹿じゃない。あんたが思っているよりずっと強かだし、色々考えてるよ」
35 : ◆H4iwFNXQsw:2014/03/15(土) 16:07:05 ID:PgauRLVM
ふぇぇぇ……話の流れは決まってるのに入れたい展開が多すぎてまとまらないよぉ……
デートネタだけでもう一本書けるぞぉ(白目)
というわけで話としては中途半端なんですが一旦ここまでです 次回は来週
今回途中に出てきた順位ですが、一応考えた上であの並びになってますので「あのキャラがそんな下なわけない!」って怒らないでくださいね
36 :以下、名無しが深夜にお送りします:2014/03/15(土) 16:42:38 ID:a2NJYr4A
乙です
続き待ってます
37 :以下、名無しが深夜にお送りします:2014/03/15(土) 19:29:58 ID:4NmqL9Lo
まってました(≧∇≦)続き楽しみにしてますw
38 :以下、名無しが深夜にお送りします:2014/03/15(土) 23:04:34 ID:697ihSsg
待ってましたあああああああ!!!!! はーライサシャかわいい、幸せです。続き物凄く楽しみにしています~!!
39 :以下、名無しが深夜にお送りします:2014/03/18(火) 18:52:38 ID:rJlhDBRE
待ってました!!
40 : ◆H4iwFNXQsw:2014/03/19(水) 21:51:59 ID:wUGBEG/A
アニ「あんた、明日はあの子と一緒に街に出かけるんでしょ? 最後くらいしっかり楽しんで、いい思い出作ってあげなよ。後悔がないようにね」
ライナー「ああ、もちろんそうするさ。……そうだな、最後なんだよな」
アニ「……ねえ、もう何回聞いたのかわかんないんだけど……本当に言う気ないの? このまま何も言わないつもり?」
ライナー「当然だ。……言えるわけねえだろ、そもそも」
アニ「頑固」
ライナー「なんとでも言え」
アニ「石頭、筋肉馬鹿、堅物、お人好し、それから……」ブツブツ...
ライナー「……言いすぎじゃねえか?」
アニ「あんたが言えって言ったんでしょ? ……あの子を壁内に置いていくつもりなら、あんたの手でしっかり突き放しな。いつまでも思わせぶりな態度ばかり取られるほうの身にもなってみなよ」
ライナー「……お前に説教されなくたってわかってんだよ、そんなことは」
アニ「わかってるのに実行しようとしないのはなんで? ……あんたらしくもない」
ライナー「……」
アニ「あのさぁ……あんたはいい加減、自分の気持ちに正直になったら? 私やベルトルトや……故郷のことは置いといてさ」
ライナー「そういうわけにはいかんだろう。大体ーー」
アニ「サシャを故郷に連れて行きたいならそうすればいい。……無理矢理にでも、ね」
ライナー「……は?」
アニ「だから、連れてっちゃえばいいって言ってるの。力尽くでも説得するにしても、あんたならやろうと思えばできるでしょ?」
ライナー「俺に人攫いになれってか?」
アニ「そうだけど?」
ライナー「……犯罪じゃねえか」
アニ「壁壊したあんたが今更何言ってるんだか。……でも、連れて行きたいなら覚悟しなよ? 中途半端な態度や誘い文句じゃ、あの子にはすぐ見抜かれるからね。説得するはずが逆にフラれちゃったとしても、私はフォローしてやんないよ」
ライナー「……」
アニ「……ふふっ、変な顔。ーーベルトルトも残ればよかったのにね、あんたのそんな顔見る機会なんて滅多にないよ」クスクス
ライナー「お前は……俺が、あいつを故郷に連れて行くことには反対しないのか?」
アニ「別にしないよ。あんたの好きにすればいいんじゃない? ーーそもそも、他人の色恋に口出しなんかしたくないし。そういうのはもうミーナだけで充分だよ」ハァ
ライナー「……そうか」
アニ「ただし、私もベルトルトも……あんたも。いざという時には、自分の手の届く範囲しか守れない」
42 : ◆H4iwFNXQsw:2014/03/19(水) 21:53:52 ID:wUGBEG/A
アニ「そして私やベルトルトの手は、あの子までは届かない。ーーそのことが覚悟できるなら、連れて行くのも可能性としては充分ありなんじゃないの?」
ライナー「……つまり、お前らはサシャの手助けはしないってことでいいんだな?」
アニ「あんたの予想通り、こっちは今回手酷くやられたんでね。そこまで面倒みてあげる義理はないよ。……それに、そういう手助けの仕方は嫌うと思うんだ。あの子」
ライナー「……ったく、お前も随分簡単に言ってくれるよな。どっちを選ぶにしろ、結局説得するのも掻っ攫うのも俺なんだぞ? わかってるのか?」
アニ「そんなのあんたがズルズル関係引き延ばしたのが原因でしょ? 私は悪くない」
ライナー「それにしたってなぁ……俺たちのことを明かすにはリスクがでかすぎるだろ? 計画の実行前に調査兵団に駆け込まれでもしたらそれこそ終わりだ。仮に受け入れてもらえたとしても、サシャなら何かの拍子にポロッと言っちまうこともあるだろうし、そもそもだなーー」ブツブツ...
アニ「……あんたさぁ、そうやってぐだぐた言ってるけどーー本当は、サシャに拒否されるのが怖いだけなんじゃないの?」
ライナー「……何だと?」ピクッ
アニ「意気地なし」
ライナー「……煽るならもう少し凝った言い回しを覚えるんだな。ーー確認したかったのはさっきのことだけだ。もう俺は戻るぞ」スタスタ...
アニ「……あの子だって、怖いんだよ」
ライナー「……」
43 : ◆H4iwFNXQsw:2014/03/19(水) 21:55:15 ID:wUGBEG/A
アニ「私やあんたは『任務だから』って逃げることができるけど……サシャにはそれがないんだ。ーー怖くたって、進まないといけない。戻れないんだよ」
ライナー「……」
アニ「ねえ、あんたはいつまで目を逸らしてるつもりなの? 本当にこのままでいいわけ? 絶対に後悔しないって言える? 餌付けした野良犬の面倒は、最後まで見るのが道理ってもんなんじゃないの?」
ライナー「……」
アニ「……」
ライナー「……つまり」
アニ「うん」
ライナー「つまり……長々と、色々言ってはいるが、結局のところ」
アニ「うん」
ライナー「俺から、サシャに…………………………………………………………すっ、好きだと伝えろ、ってことか?」
アニ「うん」
44 : ◆H4iwFNXQsw:2014/03/19(水) 21:56:13 ID:wUGBEG/A
ライナー「……」
アニ「……」
ライナー「……」クルッ
アニ「待ちなよライナー、どこ行く気?」ガシッ
ライナー「ちょっ、ちょっとだけ、ちょっとだけその辺走ってくる……!」ソワソワ ウズウズ
アニ「……ふんっ!!」ゲシッ
ライナー「ぐおぁぁっ!?」ドタンッ!!
アニ「馬鹿か! 馬鹿か!! あんたなんですぐ肉体いじめる方向に走るの!?」ゲシゲシゲシゲシ
ライナー「痛って! 痛えって、スネ蹴るんじゃねえ! 俺はただ、走りながら考えをまとめようとーー」ジタバタジタバタ
アニ「どうせそのまま疲れて寝ちゃおうって魂胆なんでしょ!? 私はね、まだ一晩あるからきちんと悩んで結論出せって言ったの!! あやふやにしろなんて言ってないっ!!」ゲシゲシゲシゲシ
ライナー「わかった、わかったから蹴るのをやめろ!!」ゴロンゴロン
アニ「……ふんだ、そのスネじゃ走れないよね。さっさと寮に帰りな」スタスタ...
ライナー「」グッタリ
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