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サシャ「どんな味でも構いません」

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Part6
109 : ◆H4iwFNXQsw:2014/01/30(木) 20:54:44 ID:wPmia5jw
ーー しばらく後 山中 とある洞窟
ベルトルト「……奥も見てきた。問題なさそうだ」
アニ「なら、今日の野営地はこの洞窟で決まりだね。風除けの天幕は……まだいいか」ゴソゴソ
サシャ「今日はずっと晴れていい天気でしたね。おかげで大分進むことができました」ピラッ
アニ「この洞窟ってどの辺り?」
ベルトルト「ルートから外れて、南の方に進んできたから……この辺か」
サシャ「ルートに近いところにもいくつか洞窟ありましたけど、あれだとちょっと中が広すぎるんですよねー……奥のほうで熊が寝てるかもしれませんし」
ベルトルト「……熊の相手はしたくないな」
サシャ「でも熊鍋はおいしいですよ。……ああ、久しぶりに食べたいです」ジュルリ...
アニ「それなら冬眠中の熊でも襲えばいいんじゃない? 仕留めるなら手伝うよ」シュッシュッ
ベルトルト「いや、流石に素手じゃちょっと……」
サシャ「熊はともかく、やっぱりお肉は食べたいですね……ここ、幸いにも禁猟区じゃないらしいですし」
ベルトルト「調べてきたんだ……」
ベルトルト(これは……止めたほうがいいのかな。狩りに出かけるって言い出したら単独行動になるだろうし、下手に怪我でもしたら大変だ)ウーン...

110 : ◆H4iwFNXQsw:2014/01/30(木) 20:55:27 ID:wPmia5jw
ベルトルト「サシャ。……もしかして、狩りに出かけるなんて言わないよね?」
サシャ「行っていいんですか!?」キラキラキラキラ
ベルトルト「駄目だよ、単独行動はさせられない。万が一、君が狩りの最中に怪我をしたり遭難しても、僕らにはどうしようもないからね」
サシャ「大丈夫ですよ、お二人に迷惑はかけませんから!」
ベルトルト(うーん、この言い方じゃ駄目か。それならーー)
ベルトルト「そうじゃなくてさ……君にもしものことがあって、教官を呼ぶような事態に陥ったとするだろ? そしたら僕とアニも一緒にこの訓練は切り上げさせられて、三人まとめて棄権扱いになるはずだ」
ベルトルト「僕とアニは憲兵団を目指してるんだ。上位に残るためにも、今回の訓練の点数はどうしても落とすわけにはいかないんだよ。君がどういうつもりで今回の訓練に参加してるのかは知らないけど、できれば……邪魔だけはしないでくれ。君のせいで台無しにされたら困る」
サシャ「ああ、そういえばお二人は憲兵団志望でしたね……確かに、この訓練の点数がなくなったら大変ですよね」
ベルトルト「そうだよ。だからーー」
サシャ「つまり単独行動じゃなきゃいいんですよね!」ポンッ
ベルトルト「サシャ? 僕の話聞いてた?」ユサユサ

111 : ◆H4iwFNXQsw:2014/01/30(木) 20:56:28 ID:wPmia5jw
サシャ「大丈夫です! うさぎ狩りは元々複数でやるものですから!」ゴソゴソ
ベルトルト「あの……サシャ? その網は何? わざわざ持ってきたの?」
サシャ「うさぎ狩りに使う網です! 用意がいいでしょう?」フフン
ベルトルト「用意がいいも何も、君は最初からこれが狙いだったんだろ……」ハァ
アニ「……サシャ。ノリノリのところ悪いんだけどさ」
サシャ「はい、なんですかー?」
ベルトルト(アニ……! そうだよね、君も止めてくれるよね! 僕は信じてたよ!)
アニ「私、動物の狩りなんてやったことないよ」
ベルトルト(違った)
サシャ「安心してください、お二人にはちょこっとお手伝いしてもらうだけです。簡単なので気負わなくてもいいですよー」
ベルトルト「ちょこっとって……ああ、もう狩りするのは確定なんだ……」ドヨーン...

112 : ◆H4iwFNXQsw:2014/01/30(木) 20:58:03 ID:wPmia5jw
ーー 更にしばらく後 洞窟から少し南へ下ったところ
                            \ホーイ ホーイ ホーイ/
ベルトルト「……」
アニ「……」
           \フーワッ ホー!/
ベルトルト(広げた網を持たされて、二人一緒に野原に放置され……遠くには、奇声をあげて歩き回るサシャ一人……)
ベルトルト「……僕たち、騙されてないよね?」
アニ「さあ?」
ベルトルト(……これが、本当に狩りなんだろうか)

113 : ◆H4iwFNXQsw:2014/01/30(木) 20:59:59 ID:wPmia5jw
ベルトルト(でも、これだけ離れてたら聞こえないよね。……一応確かめてからのほうがいいのかな)
ベルトルト「牛肉ステーキ」ボソッ
アニ「は?」
ベルトルト「いや、サシャに聞こえてないか確認しただけ。……うん、大丈夫みたいだ」
アニ「……何? 急ぎの話?」ヒソヒソ
ベルトルト「いや、そんなに切羽詰まってないよ。こうやって二人きりになれる機会は少ないから、話せるうちに話しておこうと思って」
アニ「手短にね。今は離れてるけど、いつ戻ってくるかわからない」
ベルトルト「わかってるよ。ーーあのさ、ライナーが言ってたんだけど……僕たち、調査兵団に入ることになるかもしれない」
アニ「なんで?」
ベルトルト「あそこには人類最強がいるらしいんだ。その情報集めというかーー」
アニ「なら、調査兵団に行くことになった場合の理由を考えておけばいいんだね。わかった」
ベルトルト「……あっさりしてるね」
アニ「壁を壊すことのできない私に決定権はないからね。……決めるのは、あんたたちだ」


114 : ◆H4iwFNXQsw:2014/01/30(木) 21:00:50 ID:wPmia5jw
ベルトルト「……」
アニ「……」
ベルトルト「どうなると思う?」
アニ「……あんたの質問は漠然としすぎ」
ベルトルト「あ、ごめん……」
アニ「それで何が? この先のこと?」
ベルトルト「兵団のことだよ。……どっちになるのかなって」
アニ「さあ、わからないけど……あいつは、私たちを調査兵団に入れたがってるんじゃないかな」
ベルトルト「え?」
アニ「壁を壊すのに失敗した場合の話だよ。仮に私らの正体がバレたとして、内地の憲兵団にいたんじゃ逃げ場がない。故郷に帰るまでに、最低でも壁を二つ超えなきゃならないからね」
アニ「調査兵団なら……確かに、正体が気づかれて拘束される可能性もあるけれど、逃げる機会はいくらでもある。壁外調査の時に、私が巨人化して逃げたらまず追いつけない」
ベルトルト「……」
アニ「逆に、ウォール・ローゼを壊すことに成功したら……私らには内地に行けって言うんじゃないかな。調査兵団は巨人殺しの専門家ばかりだからね、そういう場所に私らを置きたがらないでしょ、あいつは」

115 : ◆H4iwFNXQsw:2014/01/30(木) 21:02:04 ID:wPmia5jw
アニ「本当はどういういうつもりなのかはわからないけどさ。いかにもあいつが考えそうなことじゃない?」
ベルトルト「……そうだね、アニの言う通りだ」
   ーー バスッ!!
アニ「!」ビクッ
ベルトルト「へっ? ……あ、うさぎだ」
アニ「……い、今、この子自分から飛び込んで来なかった?」ドキドキ
ベルトルト「うん、僕にもそう見えたよ」

116 : ◆H4iwFNXQsw:2014/01/30(木) 21:03:13 ID:wPmia5jw
サシャ「アニー、ベルトルトー! うさぎ捕まりましたかー?」ザクザク
ベルトルト「うん、大丈夫だよ。網に足が絡まっちゃって動けないみたいだけど」
サシャ「どれどれー? ……むふふ、結構大きいうさぎさんですね。これならたくさん食べられそうです」グイッ
アニ「た、食べる? その子食べるの? 本当に?」オロオロ
サシャ「食べるために狩ったんですから食べますよー。……ええっと、まずは逃げないように足を折って」ボキッ
アニ「」
サシャ「じゃっ、あっちの物陰のほうで解体してきます。お二人は火をおこしてお湯でも沸かしておいてください」ザクザク
アニ「解体って」
サシャ「血抜きです。生きてるうちに抜かないとおいしくなくなっちゃうんで」
アニ「」

117 : ◆H4iwFNXQsw:2014/01/30(木) 21:04:06 ID:wPmia5jw
アニ「……」
ベルトルト「へえ……すごいな、こういう狩りのやり方もあるのか。網1つでも形になるものなんだね」
アニ「……」
ベルトルト「……? アニ? どうしたの?」
アニ「……あれ、食べるの?」
ベルトルト「え? ……ああ、そうみたいだけど」
アニ「……」
ベルトルト「うさぎって本当に食べられるんだ。知らなかったよ」
アニ「……白くて、ふわふわしてた」
ベルトルト「……」
アニ「ふわふわ……」

118 : ◆H4iwFNXQsw:2014/01/30(木) 21:05:34 ID:wPmia5jw
今日はここまで 次回はウサギ鍋+山岳訓練終わりまで 投下はまた来週になります
ライサシャはこの話の終わり辺りと次の話でドロドロ甘ったるい話をやる(はず)なのでもうちょいお待ちください

120 :以下、名無しが深夜にお送りします:2014/01/30(木) 21:36:46 ID:6/fNhrmg
乙!ありがとう!来週も楽しみにしてます。

121 :以下、名無しが深夜にお送りします:2014/01/30(木) 23:46:54 ID:GkTxBAVQ
乙!甘ったるい話期待

122 :以下、名無しが深夜にお送りします:2014/01/31(金) 04:17:32 ID:3rA7kiTA
サシャは逞しいな
ウサギ飼ってたからきっと俺も食べられない…

123 :以下、名無しが深夜にお送りします:2014/02/02(日) 00:22:26 ID:GHjj.xlo
いつも乙!
肉になっちゃったら食べると思う

129 : ◆H4iwFNXQsw:2014/02/09(日) 22:16:04 ID:BCi7cAmc
ーー 夕方 山中 とある洞窟
サシャ「あれからすっかり吹雪になっちゃいましたねー……。こりゃしばらく出られませんよ」マゼマゼ
ベルトルト「明るいうちにここを見つけておいてよかったね。夜のうちに雪が止めば助かるんだけど、どうなるかな……」
サシャ「山の天気は変わりやすいですからねー。まあ気長に待ちましょう。夜は長いですし」グツグツ
アニ「……あのさ、サシャ。その……ピンク色の塊は、さっきの」
サシャ「そうですよ?」
アニ「本当に食べるの……?」
サシャ「もう捌いちゃいましたからねー。ちゃんと食べてあげないとうさぎさんに失礼ですから、骨の髄までしゃぶります」
ベルトルト「しゃぶるって」
アニ「……私の分はいいよ。支給された携帯食料があるからそれで足りるし」
サシャ「そうですか? 私としては取り分が増えますから無理強いはしませんけど……でも、久々に食べたくありません? お肉」
アニ「……」
ベルトルト「……」
サシャ「訓練所の食事には出ませんよ? しかもウサギ肉なんて、市場にも滅多に出回りませんし」

130 : ◆H4iwFNXQsw:2014/02/09(日) 22:17:21 ID:BCi7cAmc
アニ(さっきのウサギだって思うと抵抗はある、あるけれど……目の前のお鍋からはいい匂いがしてきて、たまらない……)スンスン
ベルトルト(今日は一日がかりで山登りしてきたんだ。お腹は空いてるし体も疲れきってる。……正直、携帯食料なんかじゃ全然足りない)グー...
ベルトルト「……君は卑怯だ」
サシャ「あはは、すみません。……アニはどうします? やめときますか?」
アニ「……あんたに乗せられたとはいえ、私が狩りを手伝ったことには変わりないんだよね。しかも、私がそのお肉を食べないと……ウサギは無駄に死んだことになる」
サシャ「そうですね、このままだとそういうことになっちゃいます」
アニ「なら食べるよ。……まんまと嵌められたみたいで癪だけど」
サシャ「まあまあ、お詫びにとびきり美味しいお鍋を作りますからそれで勘弁して下さいよ。もう少しで煮えますからねー」マゼマゼ
ベルトルト「ところでさ、その……鍋に浮いてる葉っぱは何? 端っこに浮いてるきのこも見たことない形をしてて、気になるんだけど……」
サシャ「これですか? その辺に生えてました。名前は知りません」
ベルトルト「その辺」
アニ「名無し」
サシャ「たぶん毒はないと思います。……たぶん」
アニ「そこは自信持ってよ」
サシャ「無理ですよ。山に慣れてる私のお父さんだって、たまに間違えて毒きのこ取ってくるんですから」

131 : ◆H4iwFNXQsw:2014/02/09(日) 22:18:22 ID:BCi7cAmc
サシャ「さあ、おいしいお鍋の完成です! ーー味見してませんけど」ジャーン!!
ベルトルト「どうして味見してないのにおいしいって言い切れるんだ……」
サシャ「私、今まで煮込み料理は一度も失敗したことないんですよ。それにさっきからいい匂いもしてますし、きっと大丈夫に決まってます!」
アニ「その自信が逆に不安なんだけど」
サシャ「そんなこと言わないで取り敢えず食べてみましょうよ! ーー というわけで均等に三等分っと……ベルトルトもこの量でいいですか? 足りなくありません?」
ベルトルト「いや、充分だよ。大丈夫」
サシャ「そうですか? 前に私、『ベルトルトは食いしん坊』って聞いたことがあるんですが」

132 : ◆H4iwFNXQsw:2014/02/09(日) 22:19:16 ID:BCi7cAmc
ベルトルト「はい? 僕が食いしん坊って……誰に聞いたの?」
サシャ「ライナーです!」
ベルトルト(やっぱりか……何話してるんだよライナーは)ハァ
サシャ「食いしん坊じゃないならそれはそれでいいです。ーー それじゃあお二人とも、両手を合わせて!」パンッ!!
アニ「こう?」ピトッ
ベルトルト「何? 何かするの?」
サシャ「特別なことはしませんよ。いつもやってることです。……それでは、いただきます」
ベルトルト「……いただきます」
アニ「いただきます……」

133 : ◆H4iwFNXQsw:2014/02/09(日) 22:20:12 ID:BCi7cAmc
アニ「……あ、おいしい」ホッコリ
サシャ「でしょう? うさぎってお刺し身もおいしいんですよ? うさ刺しって言うんですけど」
アニ「うささし」
ベルトルト「アニ、しっかりして」ユサユサ
サシャ「一度しか食べたことないんですけど、あれはおいしかったですねー。食感がまた他の動物とは違っててーー」ペラペラ
ベルトルト(ああ、アニが白目剥いてる……このままじゃダメだ、なんとか話題を変えよう)
ベルトルト「あの……あのさサシャ、ところでさっき持ってた網はどこから調達したの? 故郷の村から持ってきたとか?」
サシャ「あの網ですか? あれはミカサから麻縄をもらって作ったんです。3日ほど夜なべしました」エッヘン
ベルトルト「なんなのその情熱」
サシャ「おいしいものを食べるためには多少の労力は必要ですよ?」
ベルトルト「……まあいいや。でもうさぎ狩りで終わってよかったよ。僕はてっきりこのまま熊狩りにでも行くのかと思ってたからさ」
サシャ「まさか、いくらなんでも行きませんよ。そもそも熊なんて三人じゃ食べきれませんからね。お肉の無駄です」
アニ「へえ……そういうのは気にするんだ。あんたは考えなしに食べてるのかと思ったよ」
サシャ「基本的に動物は食べられる分しか狩りませんよ? お腹いっぱい食べたいといえば食べたいんですけど、食べきれなかった分は捨てるしかなくなっちゃいますからね。こんな状況じゃ余った肉を持って帰るわけにもいきませんし」

134 : ◆H4iwFNXQsw:2014/02/09(日) 22:21:09 ID:BCi7cAmc
サシャ「……なんだかこうやって三人で話すのって新鮮ですよね。いい機会ですし、私からもいくつか聞いてもいいですか?」
アニ「変な質問じゃなかったらね」
ベルトルト「答えられるようなことにしてね」
サシャ「そこまで特殊なことは聞きませんよ。お二人は……卒業した後は憲兵団に行くんですよね?」
ベルトルト「……うん、そうだよ」
ベルトルト(本当はまだ決まってないけど……この場はそういうことにしておこう。言い訳もまだ考えてないし)
アニ「そもそも上位で憲兵を目指してない奴なんて、あいつくらいのもんだと思うよ」
サシャ「あいつ? ……ああ、エレンですか! そうですよね、普通は憲兵団に行きますよね。そうじゃないと頑張って上位にいる意味がありませんし」
アニ「あんたはどうなの? ここ半年でえらく成績上げてるみたいだけど」
サシャ「私は……少し考え中です。前にも言いましたけど、成績を上げようと思ったのは憲兵団に入るためじゃないですから」
アニ(……そういえば、あいつと並びたいって話してたっけ)
サシャ「単純に『憲兵団に入れば毎日おいしいものが食べられる』って思ってた時期もあったんですけどね。調査兵団だともっとおいしいものにありつけるって話を聞いたので、正直悩んでるんです」
ベルトルト「巨人は食べられないよ」
サシャ「巨人じゃありませんって! アニとベルトルトは知りませんか? 壁の外にはウミっていう湖があるらしいんですよ!」


135 : ◆H4iwFNXQsw:2014/02/09(日) 22:21:57 ID:BCi7cAmc
サシャ「この前の山岳訓練の時にエレンが話してくれたんですけどね、その湖には巨人よりも大きい魚がうじゃうじゃ泳いでるらしいんですよ! そんなにでっかい魚なら一度は食べてみたくありません?」ジュルリ
ベルトルト「いや……僕は、そこまでじゃないかな」
アニ「興味ないね」
サシャ「そうですか……残念です」シュン
ベルトルト「そもそも食べきれない分は狩らないんじゃなかったの? さっきと言ってることが矛盾してるけど」
サシャ「もちろん全て食べきる予定ですよ? まずは漁を手伝ってくれた人と均等に分けあって……あっ、でも分け合う前にやっぱりお刺身で味わいたいですね。水揚げした瞬間から鮮度はどんどん落ちていきそうですし。それに定番はやっぱり焼き魚だと思うので、その分を切り出してから……そうだ、魚と言ったらマリネもいいですよね! 作ったことはないんですけど、この前アルミンが進めてくれた本の中にレシピが載っててーー」ペラペラペラペラ
ベルトルト(また始まった……でも今回は害のない話だし、放っておこう。アニも気にしてないみたいだし)チラッ
アニ(……ウサギの骨って食べられるのかな。サシャはしゃぶるって言ってたけど)ジーッ...
サシャ「それでですね、やっぱりそれだけ大きい魚だと巨人の力でも借りない限り釣るのは難しいと思うんですよ。ですからどうにかして巨人を説得しないとーーって、お二人とも、聞いてます?」
アニ「うん」ガジガジ
ベルトルト「聞いてる聞いてる」モグモグ

136 : ◆H4iwFNXQsw:2014/02/09(日) 22:22:41 ID:BCi7cAmc
ーー しばらく後
サシャ「ごちそうさまでした! あぁ……もう、満腹ですぅ……///」ムフフ
アニ「ごちそうさまでした。……それなりにおいしかったよ。ありがとね」
ベルトルト「ごちそうさまでした。肉料理なんて滅多に食べられないから嬉しかったな。でも狩りも調理もほとんど全部サシャに任せちゃったね……ごめん、何か手伝えたらよかったんだけど」
サシャ「いいえ、今回の狩りは私が無理に付きあわせたようなものですからね。これくらいは当然の対価です。気にしなくていいですよ」
ベルトルト「それにしても、あんな網一つでなんとかなるものなんだなぁ……こういう技術は、故郷の村で教えてもらったの?」
サシャ「そうですよ? 私、ここに来る前は兵士じゃなくて狩人になる気満々でしたからね。半人前のまま訓練所に来ちゃいましたけど、それまでお父さんに教えてもらったことはちゃんと覚えてます。今回も色々役に立ちましたし」
ベルトルト「へえ、そういうことを今でも使えてるっていうのはすごいな。……ところでさ、ダウパー村ってどれくらいの大きさ?」
サシャ「はい? 大きさですか? ……私も詳しくは知りませんけど、村の中に山三つくらい入ってるので小さくはないですよ」
ベルトルト「だよねー……」
ベルトルト(ほら見てみろ、やっぱり村一つ抱えるなんて無理じゃないか。……ちょっぴり検討しようとしてみた僕も馬鹿だけど)ハァ

137 : ◆H4iwFNXQsw:2014/02/09(日) 22:23:42 ID:BCi7cAmc
アニ「さてと。……火の番はサシャからだったよね。次は私だからそろそろ寝るよ」モゾモゾ
サシャ「ええっ、まだ寝るには早くありませんか? 今日のペースなら明日の昼前には着けますし、もう少しだけ夜更かししましょうよー?」グイグイ
ベルトルト「うーん……試験だって近いし、山岳訓練の疲れを後に引き摺るわけにはいかないからね。体は休める時に休めたほうがいいと思うな」
アニ「そもそも夜更かしして何する気? もしかして、網の他にチェス盤でも持ってきてるの?」
サシャ「持ってきてませんよ。というか私、チェスは指せないのであっても無理ですね、遊べません。そうじゃなくて、三人で何かお話でもしませんか? きっと楽しいと思いますよ!」
アニ「嫌だね。……第一、私やベルトルトは人と喋るの苦手だし」
サシャ「じゃあこの機会に苦手意識を克服したらいいじゃないですか! 幸いここには私たち三人しかいませんし、気兼ねする必要なんてないですよ?」
アニ「だから、話すこと自体が面倒なんだってば……このくらいで勘弁してくれない? もう寝たいんだよ、私は」ハァ
ベルトルト「僕もあまり……苦手っていうのもあるけど、話題も特にないし」
サシャ「でもでも、こういう機会なんて滅多にないんだからもったいないですよ! 二人とも同じ村に住んでたはずなのに、訓練所ではまるで赤の他人みたいに接してますし」

138 : ◆H4iwFNXQsw:2014/02/09(日) 22:24:24 ID:BCi7cAmc
ベルトルト「……え?」
サシャ「だからせめて、今くらいはゆっくりお話したらどうですかって提案してるんですよ。いくらお互い話すのが苦手だからって、嫌いでもない人をずっと知らんぷりし続けるのって疲れるでしょう? 私もお二人の故郷の話が聞きたいところですからね、気にせずどうぞお話してください」
アニ「……私たちは出身が近かっただけで、同じ村に住んでたわけじゃないって前にも説明したはずだよ。もう忘れたの?」
サシャ「いいえ、忘れてませんよ? 四人で街に出かけた時に教えてくれましたよね、ちゃんと覚えてます」
アニ「そう、じゃああんたが輪をかけて馬鹿になったわけじゃないんだね。安心したよ」
サシャ「はい、そこはご心配なく。ーーそれで結局、アニの家とベルトルトの家ってどれくらい離れてたんですか? できれば教えて欲しいんですけど」
ベルトルト「……サシャ、あのさ」
アニ「教えるも何も、今私が言った通りだよ。それじゃ不満なの?」
サシャ「不満というか……納得できないんですよね。私、二人が別々の村に住んでいたとはどうしても思えないんです。だってアニもベルトルトも、ここの訓練所に来るまでお互いのことを知らなかったんでしょう? その話からして既におかしいですよ」
ベルトルト「おかしいって……何が」
サシャ「一応確認しますけど、ベルトルトが住んでいたのは山奥の村なんですよね? そこは間違いありませんか?」
ベルトルト「いや、それは……間違ってないよ、間違ってないけどさ、」
サシャ「一年以上前の話になりますけど、座学の講義で言ってましたよね。『壁内には完全な自給自足で成り立っている集落は存在しない』って。ベルトルトの故郷が本当に山奥にあったとしたら、近くにあるっていうアニの村とも少なからず交流があったはずです」
アニ「交流があったはずだから、お互いのことを知らないのはおかしいって?」
サシャ「おかしいですよ。性別が違うとはいえ、年が同じなんですから尚更です。直接の交流はなくたって、親戚や近所の人が話題にしないわけがありません。……私たちの時は、難しい時期でしたから」

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