サシャ「どんな味でも構いません」
Part1
1 : ◆H4iwFNXQsw:2014/01/19(日) 19:29:25 ID:5gTKjbgE
・『サシャ「中味が大事なんですよ」』の続きです
2 : ◆H4iwFNXQsw:2014/01/19(日) 19:30:19 ID:5gTKjbgE
ーー 夕方 食堂
コニー「……」ニマニマ
クリスタ「コニー、なんだかご機嫌だね。何かいいことでもあったの?」
コニー「わかるか? やっぱりわかっちゃうかーそうかーそうだよなー」ムフフ
ユミル「ニヤニヤ笑いながらメシ食ってんじゃねえよ気持ち悪い」ケッ
コニー「どうとでも言えよ。今の俺は心が広いからな」フフン
ユミル「へーへー、よかったなぁ」ナデナデ ジョリジョリ
コニー「おいこら、頭ジョリジョリするなよ!!」プンスカ
クリスタ「……ねえ、ジャンは何か知ってる? コニーが機嫌がいい理由」ヒソヒソ
ジャン「ああ、知ってるぜ。なにせ同室だからな、何やってるかは嫌でも目に入っちまう」
コニー「嫌って言うな! ーー仕方ねえ。そんなに気になるならこの俺様が直々に教えてやろう」フフン
ユミル「別にいらねえよ」
クリスタ「もう、ユミルったらそんなこと言わないの。ーーコニー、話してくれる?」
3 : ◆H4iwFNXQsw:2014/01/19(日) 19:30:52 ID:5gTKjbgE
コニー「いいぜ。ーー実は今日、俺は朝から今までだけで三人の女子に声をかけられた。もちろんお前らやサシャを除いてだ」キリッ
クリスタ「そうなんだ、すごいね」
ジャン「そして八人の男にも声をかけられた」
ユミル「ほう、モテモテだな。それで?」
コニー「あいつらのアプローチの方法は様々だった……パンをくれたり座学の課題を教えてくれたり、立体機動装置の整備に付き合ってくれたりな」
ジャン「二言目には決まってこうだ。ーー『ところでコニー、明日は山岳訓練だな』」
ユミル「あー、やっぱりそっち目当てか」
コニー「だからさ、俺にも遂に……モテ期が、来ちゃったんじゃねえかなって……!」ガタッ...
クリスタ「よかったね、コニー!」パチパチ
ユミル「椅子の上に立つな、はしたない」
4 : ◆H4iwFNXQsw:2014/01/19(日) 19:31:32 ID:5gTKjbgE
ジャン「モテ期は結構だがよ。相手が男でも嬉しいのか? お前」
コニー「なお男の影響は考えないものとする」キリッ
ユミル「座学の試験の文章題かよ。……まあ、普通に考えりゃ班員交換という名の引き抜き目当てなんだろうがな」
コニー「ひっ、引き抜きだと!? ミカサやライナーならまだしも、俺を引き抜こうなんてどんな命知らずだよ!?」
クリスタ「班長は引き抜けないよ、コニー。それに命知らずってことはないと思うな。雪山の歩き方を知ってるっていうのは、すごく頼もしいことだと思うもの」
ジャン「今回の山岳訓練の点数はかなりでかいからな。お前がいたら楽に進められるって踏んでるんだろうよ」
コニー「……ええっと、つまり?」キョトン
ユミル「今朝になって突然擦り寄ってきた奴ら全員が、お前を十番内から引きずり下ろそうと企んでる奴だってこった。男女例外なくな」
ジャン「十番前後から二十番台までは成績がダンゴになってるからな。今回の訓練で逆転を狙ってる奴らが動き出したんだろ。ーーよかったなぁ狩猟民族、肩書きのお陰でモテモテだぞ」ポンポン
5 : ◆H4iwFNXQsw:2014/01/19(日) 19:32:14 ID:5gTKjbgE
コニー「ちぇっ……なーんだぁ、モテ期じゃねえのかよ……」ブツブツ イジイジ
クリスタ「コニー、元気出して? きっといつかいい人が見つかるから。ねっ?」ナデナデ ジョリジョリ
ユミル「モテてることには変わりねえんだし、モテ期にカウントしたいんならしてもいいんじゃねえか? 虚しいだろうけど」
ジャン「ちなみに人生でモテ期は三回しか来ないらしいからな。慎重に数えろよ」
コニー「……じゃあいいよ。モテ期なんかいらねえ」シュン
クリスタ「もう、ユミルもジャンもコニーをいじめないの!」プンスカ
ユミル「はいはい、すみませんでした」ヘコヘコ
ジャン「コニーがこの状態ってことはよ、今ごろサシャもモテてるんじゃねえか?」
ユミル「ああ、その可能性は高いな。今日はメシ時でも全然見かけないし」
クリスタ「ユミルはサシャと同じ班だったよね? 班長は誰だっけ?」
ユミル「何を隠そう、現在成績暫定二位のあいつだよ。ーー 面白いことになってたらいいんだが、どうなってるものやら」ニヤニヤ
6 : ◆H4iwFNXQsw:2014/01/19(日) 19:33:00 ID:5gTKjbgE
ーー 同刻 とある階段下
モブ男「ーーというわけで、頼む! 明日俺たちの班に入ってくれないか?」
モブ女「コニーにも頼んだんだけど、班長のジャンに断られちゃってさ。もうサシャしか頼れる人がいないの。だからお願い!」
サシャ「で、ですから……さっきから無理だって言ってるじゃないですか。そもそも今回の訓練は教官が班を指定したんですよ? それを勝手に変えるなんて、よくないことだと思うんですが……」
モブ女「でも他の班もみんなやってるし、別にいいじゃない」
モブ男「それに俺たち、今までお前に何回もパンくれてやったよな? そろそろそのお返しをしてくれてもいいんじゃねえの?」
モブ女「それとも、パンとスープだけじゃ物足りないってわけ? 他にも何かほしいとか?」
サシャ「いえ、そうじゃなくてーー」
モブ男「あっ、そうだ! そういや今度、街に新しく食堂ができるはずだよな?」
サシャ「……」ピクッ
モブ女「そういえば、そんなチラシ見たことあるかも! ーーねえサシャ、今度あそこで何か奢ろうか? それならどう?」
サシャ「……いえ、いいです。いりません」
モブ女「ええー……そんなぁ」
7 : ◆H4iwFNXQsw:2014/01/19(日) 19:33:37 ID:5gTKjbgE
サシャ(もう何回も無理だって言ってるのに、二人ともしつこいですね……ううっ、困りました)
サシャ(というか、なんて過去の私はお馬鹿さんなんでしょう……食べ物がもらえるからって、なんでもかんでも安請け合いするものじゃありませんね)グヌヌ
モブ男「食べ物に釣られないってことは……もしかして、他に何か班を変えたくない理由でもあるのか?」
サシャ「へ? 他の理由? ーーいえ、特にありませんけど」
モブ女「そういえば……サシャって最近、ライナーと仲いいよね」
サシャ「……まあ、少しは」
モブ男「はぁ? ライナー? あいつ基本的に誰とでも仲いいだろ?」
モブ女「でも私、この前街で二人が並んで歩いてるの見たよ。教官のお使いって雰囲気でもなさそうだったし……あれってさ、実は二人きりで出かけてたんでしょ? 違う?」
サシャ「違いますよ! この前のは本当に偶然会っただけでーー」
モブ女「どうだかねー。……なーんか二人とも、前々から怪しいよね」
モブ男「……おい、話がズレてきてるぞ。時間ねえんだから早くしろよ」
モブ女「ああ、ごめんごめん。ーーそれでさ、結局のところどうなの? やっぱりライナーがいるから、班は変わりたくないとか?」
サシャ「……いいえ、違います。そのことは関係ありません」
8 : ◆H4iwFNXQsw:2014/01/19(日) 19:34:21 ID:5gTKjbgE
モブ女「怪しいなぁ……だって今回が最後の山岳訓練でしょ? 少しでも気があるんなら、やっぱり思い出作りはしたいんじゃない?」
モブ男「そういや、ハンナとフランツが班長にかけあって同じ班にしてもらってたな。……なんだ、そういうことかよ。成績上位でも考えることは一緒なんだな」
サシャ「……ちょっと待ってください。それ、誰のこと言ってるんですか?」
モブ男「当然お前とお前の班長様だよ。少し考えりゃわかるだろ」
サシャ「はい? ……なんでそんなことになるんです?」
モブ男「いいって、隠さなくてもさ。……あーあ、成績がいい奴は羨ましいよなぁ。色恋沙汰に手を出す暇があってよ」
モブ女「ねえ、こうなったらもう直接ライナーに頼みに行かない? このままじゃ説明会の時間になっちゃうしさ」
モブ男「もうそんな時間か? ……ったく、だから俺、最初にあいつのところに行こうって言ったのに」ブツブツ
モブ女「人のせいにしないでよ。あんただって賛成したじゃない」
サシャ「……」
サシャ(私のせいで、ライナーに……迷惑が、かかる)
サシャ(……今ここで、なんとかしないと)
9 : ◆H4iwFNXQsw:2014/01/19(日) 19:35:01 ID:5gTKjbgE
サシャ「……あなたたち、一緒の班なんですよね? それとも別々ですか?」
モブ女「? 同じだけど?」
サシャ「ということは、ここにいないもう一人の誰かと私を交換するつもりなんですよね。その人に、ちゃんと今回のことは話してきたんですか?」
モブ男「言うわけないだろ? だいたい説明のしようがないしな。まあ、いざとなったら教官に言われたとか班長命令とか、適当に言っておくさ」
サシャ「同じ班の一員なのに、適当に対応するんですか? それってどうかと思いますけど」
モブ男「……なんだよ、文句でもあるのか? 俺らの班のことなんだから、どうしようがこっちの勝手だろ?」
サシャ「でもあなたたちは私を班に入れるつもりだったんでしょう? だったら私にも関係ある話じゃないですか」
モブ女「……意味わかんないんだけど。結局さ、私たちの班に入るの? 入らないの? それとも実は入りたいとか?」
サシャ「いいえ。今の話を聞いたら、あなたたちの班には絶対に入りたくないって思いました。役に立たない人は切り捨てるってこと、よくわかりましたから」
モブ男「切り捨てるって、そこまではーー」
サシャ「例えば! ……周りに他の班の人が見当たらない状態で、私が雪道から斜面に滑落したとします。もしそうなったら、あなたたちはどうします?」
モブ女「そんなの、助けるに決まってーー」
サシャ「どうやって?」
10 : ◆H4iwFNXQsw:2014/01/19(日) 19:35:45 ID:5gTKjbgE
モブ男「そりゃあ……」
モブ女「……」
サシャ「できないならできないでいいんです。やれないことを無理にやってもろくなことになりませんから」
サシャ「そもそも、山岳訓練の事前説明会で毎回言われてるじゃないですか。山の事故で一番怖いのは二次災害だって。助けに行った側が共倒れになることなんか珍しくないんです。つい二、三ヶ月前の訓練でも説明されたのに覚えてないんですか?」
モブ女「……覚えてるけどさ」
モブ男「他に答えようがねえだろ、今のは」
サシャ「そんなことありませんよ。信煙弾で教官を呼ぶとか、救助を呼ぶために先に下山するとか、色々な答えがあったはずです。……第一、詳しい状況も聞かないで『助ける』なんて即答するのはありえませんよ」
モブ男「……」
モブ女「……」
サシャ「勘違いしないでくださいね。これは相手がクリスタでもユミルでもミカサでも同じですから。……まあ、ミカサたちはそんな馬鹿な真似しませんが」
サシャ「私は私の身を守るだけで精一杯なんです。……普通は、みんなそうです。余裕そうに見えてる人だって、本当はいっぱいいっぱいなんです。だから、そんな風に縋られても……困ります」
サシャ「そもそも思い出作りってなんですか? そんなこと考えてる暇あると思ってるんですか?」
サシャ「ーー山舐めたら死にますよ、あなたたち」
11 : ◆H4iwFNXQsw:2014/01/19(日) 19:36:24 ID:5gTKjbgE
モブ女「……」
モブ男「……」
サシャ「……と、私は思うんですが」
モブ女「……」
モブ男「……」
サシャ「…………あの」
モブ女「……何 本気に取っちゃってんの? 感じ悪ぅ」
サシャ「えっ……だって、あなたたちが最初にーー」
モブ男「はいはいすみませんでした、誘って悪かったよ。……よくよく考えたら、お前みたいな芋女はこっちから願い下げだっての」
サシャ「……い、芋女って、なんで今そんなこと、」
モブ女「コニーはともかく、あんたはどうせ成績そっちのけで山菜採りに走り回るだろうしね。振り回されたらこっちがたまんないわ」
サシャ「……」
12 : ◆H4iwFNXQsw:2014/01/19(日) 19:37:07 ID:5gTKjbgE
サシャ(ちゃんと、考えて答えたのに……どうしてそんな風に、言われなきゃならないんですか)
サシャ(……仕方がないですよね。芋女、ですもんね。私)
サシャ(芋女らしく、とぼけて答えたほうがよかったんでしょうか……)
モブ男「あーあ、今日は一日時間の無駄遣いしちまったな。コニーにもフラれるし」
モブ女「ほんとほんと。……そうだサシャ、もうご飯の時にパンもらいに来ないでね」
サシャ「……いりませんよ。量は足りてます」
モブ女「ふーん……そう、じゃあよかった」
モブ男「おい、そんな奴にいつまでも構ってねえで行こうぜ? そろそろ時間がーー」
「ーーサシャ?」
13 : ◆H4iwFNXQsw:2014/01/19(日) 19:37:47 ID:5gTKjbgE
モブ男・モブ女「!」ビクッ
サシャ「! ……こんばんは、アニ」
アニ「どうも。ーー あんたたち、そんな薄暗いところで何してるの」
モブ女「えっと……」チラッ
モブ男「……ちょっと話してただけだ。他には何もしてねえよ」チラッ
アニ「話? こんなところで?」
サシャ「……ああっ! そういえば私、アニと一緒に説明会に行く約束してたんでした!」ポンッ!
アニ「……は? 約束?」
サシャ「そうですよこの前したじゃないですか! ーーというわけですみませんお二人とも、この辺で失礼しますね!」ペコッ
アニ「……」
アニ(約束はしてないんだけど……)チラッ
モブ男「……」
モブ女「……」
アニ(……なるほどね)
14 : ◆H4iwFNXQsw:2014/01/19(日) 19:38:23 ID:5gTKjbgE
アニ「……」
モブ女「……何見てんの? 約束してたならさっさと行けば?」
サシャ「はい、そうしますそうします! ーー ほらアニ、早く会議室まで行きましょう! 何なら競争でもします?」グイグイ
アニ「いいや、ちょっとだけ待って。……あのさ、そっちのあんた」
モブ男「な、なんだよ」ビクッ
アニ「教官室の前の掲示板に、あんたの名前があったような気がするんだけど」
サシャ「掲示板……?」
アニ「課題の未提出者のリストにいたはずだよ。……確か」
モブ女「課題って……兵法講義のでしょ、あんたまだ出してなかったの!?」
モブ男「うるせえな、班長の仕事と当番で忙しくてできなかったんだよ! ……それで? だからなんだってんだ?」
アニ「上位に……憲兵団に本気で入りたいんなら、提出物くらいちゃんと出したら? 馬鹿なコニーでもやってるよ、それくらい」
モブ男「なっ……! 俺だって、当番がなかったらーー」
アニ「コニーは今週厩舎当番があったし、教官からの頼み事もいくつかこなしてるよ。ーー そうやって人に絡む暇があるんだったら、今からでも戻って課題片付けたほうがいいんじゃないの」
モブ男「……ちっ。俺、先に戻るわ」クルッ スタスタ...
モブ女「はぁ!? ーーちょっと、どこ行くのよ!」タタタッ
15 : ◆H4iwFNXQsw:2014/01/19(日) 19:39:05 ID:5gTKjbgE
サシャ「……」ポカーン...
アニ「災難だったね、サシャ。でもあんなのいちいち真面目に相手してんじゃないよ。時間の無駄にも程がーー」
サシャ「アニーっ! 助かりました、ありがとうございますっ!」ムギュー
アニ「ちょっと! ーーミーナやミカサじゃあるまいし、近いってば……離れてよ」グイグイ
サシャ「むふふ、お断りです。ーーあれ? そういえばミーナは一緒じゃないんですか? 見当たりませんけど」キョロキョロ
アニ「……別にいつも一緒ってわけじゃないよ。それにあの子、今年の山岳訓練は参加しないって言ってたし」
サシャ「えっ、そうなんですか?」
アニ「去年の山岳訓練はひどく吹雪いただろ? どうもあれで懲りたみたいだね。成績上位を狙っているわけじゃないし、卒業試験に備えて体力は温存しておくってさ」
サシャ「そうですね、卒業試験を突破しないとどうにもなりませんもんねー……」スリスリ
アニ「……暑い。邪魔」ムスッ...
サシャ「アニってちっちゃいのでぬくいんですよねー。ミカサが擦り寄ってくるのもわかるってもんです」スリスリ
アニ「……」ゲシッ
サシャ「あいたぁっ!?」
アニ「……ちっちゃいは、余計」プイッ
16 : ◆H4iwFNXQsw:2014/01/19(日) 19:39:47 ID:5gTKjbgE
サシャ「いたた……でも意外でしたね。アニのことだから、正直さっきはそのまま通り過ぎちゃうんじゃないかと思ってましたけど」サスサス
アニ「そうしてほしかったの?」
サシャ「いいえ、全くそんなことはないです! ……かなり困ってましたので」シュン
アニ「……私だって、気が向けば人助けの一つや二つするさ。珍しいことでもないよ」
サシャ「でもあんなこと言っちゃったら、アニに迷惑がかかりません? 大丈夫ですか?」
アニ「別にいいよ。こういうの、慣れてるから」
サシャ「おおー……頼もしい答えですね」
アニ「あんたこそ、ああいう手合いは気にしない部類だと思ってたんだけど」
サシャ「あはは……私のことを言われるのは別に平気なんですけどね。でもやっぱり、好きな物に手を出されるのは嫌ですよ」
アニ「ふぅん……好きな物、か」
サシャ「アニだってそうでしょう? 自分が好きな物について何か言われるの、嫌じゃありません?」
アニ「……それなりにはね」
サシャ「それでも、もうちょっと上手い交わし方があったかもしれませんが……難しいですね、人と話すのって」ハァ
17 : ◆H4iwFNXQsw:2014/01/19(日) 19:40:34 ID:5gTKjbgE
アニ「さっきの二人は知り合い……じゃないか。あまり見ない顔だし」
サシャ「そうですね、三度ほどご飯を分けてもらった仲です。ーーおかげさまで、今日は朝からいろんな人に声かけられちゃって」
アニ「モテモテだね。よかったじゃないか」
サシャ「……あんまり嬉しくないです。こういう時だからチヤホヤされてるの、自分でもわかりますし」
アニ「それもそうか。ーー そんなに鬱陶しいなら、次からは班長を通せって言えばいいよ」
サシャ「いえ、それはちょっと……ライナーにあまり負担はかけたくないんですよ。最近特に忙しそうですから」
アニ「あいつが? ……私にはそう見えないけど。当番があるわけでもないし」
サシャ「だって、私が話しかけたらすぐに『用事がある』って言ってどこかいっちゃうんですよ? 食堂で見かけてもすぐに出てっちゃいますし」
アニ「へえ、それはおかしいね。……もしかして、またあいつのこと怒らせたんじゃないの?」
サシャ「いえ、それが全く身に覚えがないんですよ。話しかければちゃんと反応してくれますから、完全に無視されてるってわけでもないですし」
アニ「……変なの」
サシャ「ですよね、私もそう思います」
サシャ(どうもこの前の雪合戦の日から、避けられてる気がするんですよねー……いったい何なんでしょう……?)
18 : ◆H4iwFNXQsw:2014/01/19(日) 19:41:13 ID:5gTKjbgE
ーー 同刻 男子寮 エレンたちの部屋
ベルトルト「……」ペラッ...
ライナー「九十五っ! 九十六っ!」グッグッ
ベルトルト「……」
ライナー「九十七っ! 九十八っ!」グッグッ
ベルトルト「……あのさ、ライナー」
ライナー「九十九っ! 百っ! ーー なんだベルトルト」
ベルトルト「さっきから何してるの? 地味にうるさいんだけど」
ライナー「何してるって……筋トレだ。見てわからないのか?」
ベルトルト「わかってて言ってるんだよ。君の腹筋はもう充分以上割れてるだろ? これ以上鍛えてどうするんだ? 背筋でもやったら?」
ライナー「背筋はもう終わった」
ベルトルト「……どうでもいいけど、部屋出る前にちゃんと体は拭いてね。汗だくだよ」
ライナー「そうだな、そうする」ゴソゴソ
19 : ◆H4iwFNXQsw:2014/01/19(日) 19:42:04 ID:5gTKjbgE
ベルトルト「……」
ライナー「……」フキフキ
ベルトルト「……ところでさ、クリスタのことだけど」
ライナー「ああ、アニが話してた件か。ーー 監視していた奴の素性がわかったのか?」
ベルトルト「難しかったみたいけど、この前やっとね。やっぱりクリスタは壁教の関係者と見て間違いなさそうだよ」
ライナー「問題は、どの程度の立場なのかってところだな……ここに来る前は開拓地にいたんだっけか」
ベルトルト「そうらしいよ。ただ、その前の経歴がはっきりしないんだよね。戸籍資料もどこまで信じていいものやらわからないし」
ライナー「……本人から直接探るってのは難しいか?」
ベルトルト「いつも近くにユミルがいるからね、無理だと思うよ。ちょっとでも不穏な素振りを見せたら、すぐ違和感に気づくだろう」
ライナー「それなら、他に何か方法は……待てよ。確かお前ら、山岳訓練はクリスタと同じ班だったよな? なんとか本人から聞き出せないか? ユミルがいないからどうとでもできるだろ?」
ベルトルト「聞くだけなら難しくないけど……僕もアニもそういうことを他人から聞き出そうとする性格じゃないし、どうやったって不自然に見えるんじゃないかな」
ライナー「……やはり外から埋めていくしかないか」
ベルトルト「それしかないだろうね、今のところは」
20 : ◆H4iwFNXQsw:2014/01/19(日) 19:42:58 ID:5gTKjbgE
ベルトルト「……あのさ、ライナー」
ライナー「ん? なんだ?」
ベルトルト「もし、クリスタの存在が僕らの任務の妨げになるとしたら……いったいどうすればいいのかな」
ライナー「……お前はそんなこと考えなくていい。仮にそういう事態になっても俺がやる」
ベルトルト「だけど、」
ライナー「少なくともここを出るまでは下手に動こうとするな。訓練兵の身分じゃ逃げ場がない」
ベルトルト「そっか、そろそろ卒業なんだよね……無事に出られればいいけど」
ライナー「なぁに、心配するな。このまま順調に行けば、三人とも充分憲兵団を狙える成績だ。ーー だが、調査兵団の動きも把握しておきたいところだよな。エレンとアルミンに聞いたんだが、どうもあそこには人類最強の兵士がいるそうだ」
ベルトルト「人類最強? 何それ?」
ライナー「なんでも、一人で一個旅団並みの戦闘力を誇るらしいぞ」
ベルトルト「……多すぎじゃない?」
ライナー「噂だし、少しは誇張も入ってるだろうな。俺もエレンやアルミンから聞いただけだから、詳しくは知らん」
ベルトルト「調査兵団、か……」
・『サシャ「中味が大事なんですよ」』の続きです
2 : ◆H4iwFNXQsw:2014/01/19(日) 19:30:19 ID:5gTKjbgE
ーー 夕方 食堂
コニー「……」ニマニマ
クリスタ「コニー、なんだかご機嫌だね。何かいいことでもあったの?」
コニー「わかるか? やっぱりわかっちゃうかーそうかーそうだよなー」ムフフ
ユミル「ニヤニヤ笑いながらメシ食ってんじゃねえよ気持ち悪い」ケッ
コニー「どうとでも言えよ。今の俺は心が広いからな」フフン
ユミル「へーへー、よかったなぁ」ナデナデ ジョリジョリ
コニー「おいこら、頭ジョリジョリするなよ!!」プンスカ
クリスタ「……ねえ、ジャンは何か知ってる? コニーが機嫌がいい理由」ヒソヒソ
ジャン「ああ、知ってるぜ。なにせ同室だからな、何やってるかは嫌でも目に入っちまう」
コニー「嫌って言うな! ーー仕方ねえ。そんなに気になるならこの俺様が直々に教えてやろう」フフン
ユミル「別にいらねえよ」
クリスタ「もう、ユミルったらそんなこと言わないの。ーーコニー、話してくれる?」
3 : ◆H4iwFNXQsw:2014/01/19(日) 19:30:52 ID:5gTKjbgE
コニー「いいぜ。ーー実は今日、俺は朝から今までだけで三人の女子に声をかけられた。もちろんお前らやサシャを除いてだ」キリッ
クリスタ「そうなんだ、すごいね」
ジャン「そして八人の男にも声をかけられた」
ユミル「ほう、モテモテだな。それで?」
コニー「あいつらのアプローチの方法は様々だった……パンをくれたり座学の課題を教えてくれたり、立体機動装置の整備に付き合ってくれたりな」
ジャン「二言目には決まってこうだ。ーー『ところでコニー、明日は山岳訓練だな』」
ユミル「あー、やっぱりそっち目当てか」
コニー「だからさ、俺にも遂に……モテ期が、来ちゃったんじゃねえかなって……!」ガタッ...
クリスタ「よかったね、コニー!」パチパチ
ユミル「椅子の上に立つな、はしたない」
4 : ◆H4iwFNXQsw:2014/01/19(日) 19:31:32 ID:5gTKjbgE
ジャン「モテ期は結構だがよ。相手が男でも嬉しいのか? お前」
コニー「なお男の影響は考えないものとする」キリッ
ユミル「座学の試験の文章題かよ。……まあ、普通に考えりゃ班員交換という名の引き抜き目当てなんだろうがな」
コニー「ひっ、引き抜きだと!? ミカサやライナーならまだしも、俺を引き抜こうなんてどんな命知らずだよ!?」
クリスタ「班長は引き抜けないよ、コニー。それに命知らずってことはないと思うな。雪山の歩き方を知ってるっていうのは、すごく頼もしいことだと思うもの」
ジャン「今回の山岳訓練の点数はかなりでかいからな。お前がいたら楽に進められるって踏んでるんだろうよ」
コニー「……ええっと、つまり?」キョトン
ユミル「今朝になって突然擦り寄ってきた奴ら全員が、お前を十番内から引きずり下ろそうと企んでる奴だってこった。男女例外なくな」
ジャン「十番前後から二十番台までは成績がダンゴになってるからな。今回の訓練で逆転を狙ってる奴らが動き出したんだろ。ーーよかったなぁ狩猟民族、肩書きのお陰でモテモテだぞ」ポンポン
5 : ◆H4iwFNXQsw:2014/01/19(日) 19:32:14 ID:5gTKjbgE
コニー「ちぇっ……なーんだぁ、モテ期じゃねえのかよ……」ブツブツ イジイジ
クリスタ「コニー、元気出して? きっといつかいい人が見つかるから。ねっ?」ナデナデ ジョリジョリ
ユミル「モテてることには変わりねえんだし、モテ期にカウントしたいんならしてもいいんじゃねえか? 虚しいだろうけど」
ジャン「ちなみに人生でモテ期は三回しか来ないらしいからな。慎重に数えろよ」
コニー「……じゃあいいよ。モテ期なんかいらねえ」シュン
クリスタ「もう、ユミルもジャンもコニーをいじめないの!」プンスカ
ユミル「はいはい、すみませんでした」ヘコヘコ
ジャン「コニーがこの状態ってことはよ、今ごろサシャもモテてるんじゃねえか?」
ユミル「ああ、その可能性は高いな。今日はメシ時でも全然見かけないし」
クリスタ「ユミルはサシャと同じ班だったよね? 班長は誰だっけ?」
ユミル「何を隠そう、現在成績暫定二位のあいつだよ。ーー 面白いことになってたらいいんだが、どうなってるものやら」ニヤニヤ
ーー 同刻 とある階段下
モブ男「ーーというわけで、頼む! 明日俺たちの班に入ってくれないか?」
モブ女「コニーにも頼んだんだけど、班長のジャンに断られちゃってさ。もうサシャしか頼れる人がいないの。だからお願い!」
サシャ「で、ですから……さっきから無理だって言ってるじゃないですか。そもそも今回の訓練は教官が班を指定したんですよ? それを勝手に変えるなんて、よくないことだと思うんですが……」
モブ女「でも他の班もみんなやってるし、別にいいじゃない」
モブ男「それに俺たち、今までお前に何回もパンくれてやったよな? そろそろそのお返しをしてくれてもいいんじゃねえの?」
モブ女「それとも、パンとスープだけじゃ物足りないってわけ? 他にも何かほしいとか?」
サシャ「いえ、そうじゃなくてーー」
モブ男「あっ、そうだ! そういや今度、街に新しく食堂ができるはずだよな?」
サシャ「……」ピクッ
モブ女「そういえば、そんなチラシ見たことあるかも! ーーねえサシャ、今度あそこで何か奢ろうか? それならどう?」
サシャ「……いえ、いいです。いりません」
モブ女「ええー……そんなぁ」
7 : ◆H4iwFNXQsw:2014/01/19(日) 19:33:37 ID:5gTKjbgE
サシャ(もう何回も無理だって言ってるのに、二人ともしつこいですね……ううっ、困りました)
サシャ(というか、なんて過去の私はお馬鹿さんなんでしょう……食べ物がもらえるからって、なんでもかんでも安請け合いするものじゃありませんね)グヌヌ
モブ男「食べ物に釣られないってことは……もしかして、他に何か班を変えたくない理由でもあるのか?」
サシャ「へ? 他の理由? ーーいえ、特にありませんけど」
モブ女「そういえば……サシャって最近、ライナーと仲いいよね」
サシャ「……まあ、少しは」
モブ男「はぁ? ライナー? あいつ基本的に誰とでも仲いいだろ?」
モブ女「でも私、この前街で二人が並んで歩いてるの見たよ。教官のお使いって雰囲気でもなさそうだったし……あれってさ、実は二人きりで出かけてたんでしょ? 違う?」
サシャ「違いますよ! この前のは本当に偶然会っただけでーー」
モブ女「どうだかねー。……なーんか二人とも、前々から怪しいよね」
モブ男「……おい、話がズレてきてるぞ。時間ねえんだから早くしろよ」
モブ女「ああ、ごめんごめん。ーーそれでさ、結局のところどうなの? やっぱりライナーがいるから、班は変わりたくないとか?」
サシャ「……いいえ、違います。そのことは関係ありません」
8 : ◆H4iwFNXQsw:2014/01/19(日) 19:34:21 ID:5gTKjbgE
モブ女「怪しいなぁ……だって今回が最後の山岳訓練でしょ? 少しでも気があるんなら、やっぱり思い出作りはしたいんじゃない?」
モブ男「そういや、ハンナとフランツが班長にかけあって同じ班にしてもらってたな。……なんだ、そういうことかよ。成績上位でも考えることは一緒なんだな」
サシャ「……ちょっと待ってください。それ、誰のこと言ってるんですか?」
モブ男「当然お前とお前の班長様だよ。少し考えりゃわかるだろ」
サシャ「はい? ……なんでそんなことになるんです?」
モブ男「いいって、隠さなくてもさ。……あーあ、成績がいい奴は羨ましいよなぁ。色恋沙汰に手を出す暇があってよ」
モブ女「ねえ、こうなったらもう直接ライナーに頼みに行かない? このままじゃ説明会の時間になっちゃうしさ」
モブ男「もうそんな時間か? ……ったく、だから俺、最初にあいつのところに行こうって言ったのに」ブツブツ
モブ女「人のせいにしないでよ。あんただって賛成したじゃない」
サシャ「……」
サシャ(私のせいで、ライナーに……迷惑が、かかる)
サシャ(……今ここで、なんとかしないと)
9 : ◆H4iwFNXQsw:2014/01/19(日) 19:35:01 ID:5gTKjbgE
サシャ「……あなたたち、一緒の班なんですよね? それとも別々ですか?」
モブ女「? 同じだけど?」
サシャ「ということは、ここにいないもう一人の誰かと私を交換するつもりなんですよね。その人に、ちゃんと今回のことは話してきたんですか?」
モブ男「言うわけないだろ? だいたい説明のしようがないしな。まあ、いざとなったら教官に言われたとか班長命令とか、適当に言っておくさ」
サシャ「同じ班の一員なのに、適当に対応するんですか? それってどうかと思いますけど」
モブ男「……なんだよ、文句でもあるのか? 俺らの班のことなんだから、どうしようがこっちの勝手だろ?」
サシャ「でもあなたたちは私を班に入れるつもりだったんでしょう? だったら私にも関係ある話じゃないですか」
モブ女「……意味わかんないんだけど。結局さ、私たちの班に入るの? 入らないの? それとも実は入りたいとか?」
サシャ「いいえ。今の話を聞いたら、あなたたちの班には絶対に入りたくないって思いました。役に立たない人は切り捨てるってこと、よくわかりましたから」
モブ男「切り捨てるって、そこまではーー」
サシャ「例えば! ……周りに他の班の人が見当たらない状態で、私が雪道から斜面に滑落したとします。もしそうなったら、あなたたちはどうします?」
モブ女「そんなの、助けるに決まってーー」
サシャ「どうやって?」
10 : ◆H4iwFNXQsw:2014/01/19(日) 19:35:45 ID:5gTKjbgE
モブ男「そりゃあ……」
モブ女「……」
サシャ「できないならできないでいいんです。やれないことを無理にやってもろくなことになりませんから」
サシャ「そもそも、山岳訓練の事前説明会で毎回言われてるじゃないですか。山の事故で一番怖いのは二次災害だって。助けに行った側が共倒れになることなんか珍しくないんです。つい二、三ヶ月前の訓練でも説明されたのに覚えてないんですか?」
モブ女「……覚えてるけどさ」
モブ男「他に答えようがねえだろ、今のは」
サシャ「そんなことありませんよ。信煙弾で教官を呼ぶとか、救助を呼ぶために先に下山するとか、色々な答えがあったはずです。……第一、詳しい状況も聞かないで『助ける』なんて即答するのはありえませんよ」
モブ男「……」
モブ女「……」
サシャ「勘違いしないでくださいね。これは相手がクリスタでもユミルでもミカサでも同じですから。……まあ、ミカサたちはそんな馬鹿な真似しませんが」
サシャ「私は私の身を守るだけで精一杯なんです。……普通は、みんなそうです。余裕そうに見えてる人だって、本当はいっぱいいっぱいなんです。だから、そんな風に縋られても……困ります」
サシャ「そもそも思い出作りってなんですか? そんなこと考えてる暇あると思ってるんですか?」
サシャ「ーー山舐めたら死にますよ、あなたたち」
11 : ◆H4iwFNXQsw:2014/01/19(日) 19:36:24 ID:5gTKjbgE
モブ女「……」
モブ男「……」
サシャ「……と、私は思うんですが」
モブ女「……」
モブ男「……」
サシャ「…………あの」
モブ女「……何 本気に取っちゃってんの? 感じ悪ぅ」
サシャ「えっ……だって、あなたたちが最初にーー」
モブ男「はいはいすみませんでした、誘って悪かったよ。……よくよく考えたら、お前みたいな芋女はこっちから願い下げだっての」
サシャ「……い、芋女って、なんで今そんなこと、」
モブ女「コニーはともかく、あんたはどうせ成績そっちのけで山菜採りに走り回るだろうしね。振り回されたらこっちがたまんないわ」
サシャ「……」
12 : ◆H4iwFNXQsw:2014/01/19(日) 19:37:07 ID:5gTKjbgE
サシャ(ちゃんと、考えて答えたのに……どうしてそんな風に、言われなきゃならないんですか)
サシャ(……仕方がないですよね。芋女、ですもんね。私)
サシャ(芋女らしく、とぼけて答えたほうがよかったんでしょうか……)
モブ男「あーあ、今日は一日時間の無駄遣いしちまったな。コニーにもフラれるし」
モブ女「ほんとほんと。……そうだサシャ、もうご飯の時にパンもらいに来ないでね」
サシャ「……いりませんよ。量は足りてます」
モブ女「ふーん……そう、じゃあよかった」
モブ男「おい、そんな奴にいつまでも構ってねえで行こうぜ? そろそろ時間がーー」
「ーーサシャ?」
13 : ◆H4iwFNXQsw:2014/01/19(日) 19:37:47 ID:5gTKjbgE
モブ男・モブ女「!」ビクッ
サシャ「! ……こんばんは、アニ」
アニ「どうも。ーー あんたたち、そんな薄暗いところで何してるの」
モブ女「えっと……」チラッ
モブ男「……ちょっと話してただけだ。他には何もしてねえよ」チラッ
アニ「話? こんなところで?」
サシャ「……ああっ! そういえば私、アニと一緒に説明会に行く約束してたんでした!」ポンッ!
アニ「……は? 約束?」
サシャ「そうですよこの前したじゃないですか! ーーというわけですみませんお二人とも、この辺で失礼しますね!」ペコッ
アニ「……」
アニ(約束はしてないんだけど……)チラッ
モブ男「……」
モブ女「……」
アニ(……なるほどね)
14 : ◆H4iwFNXQsw:2014/01/19(日) 19:38:23 ID:5gTKjbgE
アニ「……」
モブ女「……何見てんの? 約束してたならさっさと行けば?」
サシャ「はい、そうしますそうします! ーー ほらアニ、早く会議室まで行きましょう! 何なら競争でもします?」グイグイ
アニ「いいや、ちょっとだけ待って。……あのさ、そっちのあんた」
モブ男「な、なんだよ」ビクッ
アニ「教官室の前の掲示板に、あんたの名前があったような気がするんだけど」
サシャ「掲示板……?」
アニ「課題の未提出者のリストにいたはずだよ。……確か」
モブ女「課題って……兵法講義のでしょ、あんたまだ出してなかったの!?」
モブ男「うるせえな、班長の仕事と当番で忙しくてできなかったんだよ! ……それで? だからなんだってんだ?」
アニ「上位に……憲兵団に本気で入りたいんなら、提出物くらいちゃんと出したら? 馬鹿なコニーでもやってるよ、それくらい」
モブ男「なっ……! 俺だって、当番がなかったらーー」
アニ「コニーは今週厩舎当番があったし、教官からの頼み事もいくつかこなしてるよ。ーー そうやって人に絡む暇があるんだったら、今からでも戻って課題片付けたほうがいいんじゃないの」
モブ男「……ちっ。俺、先に戻るわ」クルッ スタスタ...
モブ女「はぁ!? ーーちょっと、どこ行くのよ!」タタタッ
15 : ◆H4iwFNXQsw:2014/01/19(日) 19:39:05 ID:5gTKjbgE
サシャ「……」ポカーン...
アニ「災難だったね、サシャ。でもあんなのいちいち真面目に相手してんじゃないよ。時間の無駄にも程がーー」
サシャ「アニーっ! 助かりました、ありがとうございますっ!」ムギュー
アニ「ちょっと! ーーミーナやミカサじゃあるまいし、近いってば……離れてよ」グイグイ
サシャ「むふふ、お断りです。ーーあれ? そういえばミーナは一緒じゃないんですか? 見当たりませんけど」キョロキョロ
アニ「……別にいつも一緒ってわけじゃないよ。それにあの子、今年の山岳訓練は参加しないって言ってたし」
サシャ「えっ、そうなんですか?」
アニ「去年の山岳訓練はひどく吹雪いただろ? どうもあれで懲りたみたいだね。成績上位を狙っているわけじゃないし、卒業試験に備えて体力は温存しておくってさ」
サシャ「そうですね、卒業試験を突破しないとどうにもなりませんもんねー……」スリスリ
アニ「……暑い。邪魔」ムスッ...
サシャ「アニってちっちゃいのでぬくいんですよねー。ミカサが擦り寄ってくるのもわかるってもんです」スリスリ
アニ「……」ゲシッ
サシャ「あいたぁっ!?」
アニ「……ちっちゃいは、余計」プイッ
16 : ◆H4iwFNXQsw:2014/01/19(日) 19:39:47 ID:5gTKjbgE
サシャ「いたた……でも意外でしたね。アニのことだから、正直さっきはそのまま通り過ぎちゃうんじゃないかと思ってましたけど」サスサス
アニ「そうしてほしかったの?」
サシャ「いいえ、全くそんなことはないです! ……かなり困ってましたので」シュン
アニ「……私だって、気が向けば人助けの一つや二つするさ。珍しいことでもないよ」
サシャ「でもあんなこと言っちゃったら、アニに迷惑がかかりません? 大丈夫ですか?」
アニ「別にいいよ。こういうの、慣れてるから」
サシャ「おおー……頼もしい答えですね」
アニ「あんたこそ、ああいう手合いは気にしない部類だと思ってたんだけど」
サシャ「あはは……私のことを言われるのは別に平気なんですけどね。でもやっぱり、好きな物に手を出されるのは嫌ですよ」
アニ「ふぅん……好きな物、か」
サシャ「アニだってそうでしょう? 自分が好きな物について何か言われるの、嫌じゃありません?」
アニ「……それなりにはね」
サシャ「それでも、もうちょっと上手い交わし方があったかもしれませんが……難しいですね、人と話すのって」ハァ
17 : ◆H4iwFNXQsw:2014/01/19(日) 19:40:34 ID:5gTKjbgE
アニ「さっきの二人は知り合い……じゃないか。あまり見ない顔だし」
サシャ「そうですね、三度ほどご飯を分けてもらった仲です。ーーおかげさまで、今日は朝からいろんな人に声かけられちゃって」
アニ「モテモテだね。よかったじゃないか」
サシャ「……あんまり嬉しくないです。こういう時だからチヤホヤされてるの、自分でもわかりますし」
アニ「それもそうか。ーー そんなに鬱陶しいなら、次からは班長を通せって言えばいいよ」
サシャ「いえ、それはちょっと……ライナーにあまり負担はかけたくないんですよ。最近特に忙しそうですから」
アニ「あいつが? ……私にはそう見えないけど。当番があるわけでもないし」
サシャ「だって、私が話しかけたらすぐに『用事がある』って言ってどこかいっちゃうんですよ? 食堂で見かけてもすぐに出てっちゃいますし」
アニ「へえ、それはおかしいね。……もしかして、またあいつのこと怒らせたんじゃないの?」
サシャ「いえ、それが全く身に覚えがないんですよ。話しかければちゃんと反応してくれますから、完全に無視されてるってわけでもないですし」
アニ「……変なの」
サシャ「ですよね、私もそう思います」
サシャ(どうもこの前の雪合戦の日から、避けられてる気がするんですよねー……いったい何なんでしょう……?)
18 : ◆H4iwFNXQsw:2014/01/19(日) 19:41:13 ID:5gTKjbgE
ーー 同刻 男子寮 エレンたちの部屋
ベルトルト「……」ペラッ...
ライナー「九十五っ! 九十六っ!」グッグッ
ベルトルト「……」
ライナー「九十七っ! 九十八っ!」グッグッ
ベルトルト「……あのさ、ライナー」
ライナー「九十九っ! 百っ! ーー なんだベルトルト」
ベルトルト「さっきから何してるの? 地味にうるさいんだけど」
ライナー「何してるって……筋トレだ。見てわからないのか?」
ベルトルト「わかってて言ってるんだよ。君の腹筋はもう充分以上割れてるだろ? これ以上鍛えてどうするんだ? 背筋でもやったら?」
ライナー「背筋はもう終わった」
ベルトルト「……どうでもいいけど、部屋出る前にちゃんと体は拭いてね。汗だくだよ」
ライナー「そうだな、そうする」ゴソゴソ
19 : ◆H4iwFNXQsw:2014/01/19(日) 19:42:04 ID:5gTKjbgE
ベルトルト「……」
ライナー「……」フキフキ
ベルトルト「……ところでさ、クリスタのことだけど」
ライナー「ああ、アニが話してた件か。ーー 監視していた奴の素性がわかったのか?」
ベルトルト「難しかったみたいけど、この前やっとね。やっぱりクリスタは壁教の関係者と見て間違いなさそうだよ」
ライナー「問題は、どの程度の立場なのかってところだな……ここに来る前は開拓地にいたんだっけか」
ベルトルト「そうらしいよ。ただ、その前の経歴がはっきりしないんだよね。戸籍資料もどこまで信じていいものやらわからないし」
ライナー「……本人から直接探るってのは難しいか?」
ベルトルト「いつも近くにユミルがいるからね、無理だと思うよ。ちょっとでも不穏な素振りを見せたら、すぐ違和感に気づくだろう」
ライナー「それなら、他に何か方法は……待てよ。確かお前ら、山岳訓練はクリスタと同じ班だったよな? なんとか本人から聞き出せないか? ユミルがいないからどうとでもできるだろ?」
ベルトルト「聞くだけなら難しくないけど……僕もアニもそういうことを他人から聞き出そうとする性格じゃないし、どうやったって不自然に見えるんじゃないかな」
ライナー「……やはり外から埋めていくしかないか」
ベルトルト「それしかないだろうね、今のところは」
20 : ◆H4iwFNXQsw:2014/01/19(日) 19:42:58 ID:5gTKjbgE
ベルトルト「……あのさ、ライナー」
ライナー「ん? なんだ?」
ベルトルト「もし、クリスタの存在が僕らの任務の妨げになるとしたら……いったいどうすればいいのかな」
ライナー「……お前はそんなこと考えなくていい。仮にそういう事態になっても俺がやる」
ベルトルト「だけど、」
ライナー「少なくともここを出るまでは下手に動こうとするな。訓練兵の身分じゃ逃げ場がない」
ベルトルト「そっか、そろそろ卒業なんだよね……無事に出られればいいけど」
ライナー「なぁに、心配するな。このまま順調に行けば、三人とも充分憲兵団を狙える成績だ。ーー だが、調査兵団の動きも把握しておきたいところだよな。エレンとアルミンに聞いたんだが、どうもあそこには人類最強の兵士がいるそうだ」
ベルトルト「人類最強? 何それ?」
ライナー「なんでも、一人で一個旅団並みの戦闘力を誇るらしいぞ」
ベルトルト「……多すぎじゃない?」
ライナー「噂だし、少しは誇張も入ってるだろうな。俺もエレンやアルミンから聞いただけだから、詳しくは知らん」
ベルトルト「調査兵団、か……」
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