サシャ「じっくり吟味しましょうか」
Part4
74 : ◆H4iwFNXQsw:2013/11/27(水) 21:47:34 ID:uq5n96C2
ーー 同刻 街中 とある噴水前
ミカサ「迷った」
サシャ「迷いましたね」
ミカサ「どうしよう」
サシャ「どうしましょうね」
ミカサ「……」
サシャ「……」
ミカサ「ごめんなさい」ヘコヘコ
サシャ「すみませんでした」ヘコヘコ
ミカサ「色々目移りしてるうちに、知らないところへ来てしまった」
サシャ「私も、食べ物の匂いに釣られてフラフラしてたら道がわからなくなっちゃいまして」
ミカサ「……仕方がない。二人でその辺をお散歩しよう。そのうち知ってる道に出るかもしれない」
サシャ「そうですね。こういうのもお出かけの醍醐味ですよね、ええ」
75 : ◆H4iwFNXQsw:2013/11/27(水) 21:48:32 ID:uq5n96C2
ミカサ「でも、迷ったおかげで何やらいっぱいチラシをもらった」ガサガサ
サシャ「取り敢えず食べ物屋さんとそれ以外に分けましょうか」ガサガサ
ミカサ「地図が載ってるチラシはないだろうか」ガサガサ
サシャ「あっ! ーーミカサミカサ、見てくださいよこれ!! 今度大通り近くに新しい食堂ができるみたいですよ! しかも開店日はお肉が食べられるみたいです!」ワーイ
ミカサ「本当だ。……今度、エレンやアルミンを誘って行こう」
サシャ「開店日は、えーっと……卒業試験直前ですね。忙しいかもしれませんけど、お肉の魅力には敵いませんよね……!」ジュルリ
ミカサ「サシャ、涎が垂れてる」
サシャ「おっといけない」フキフキ
ミカサ「……サシャはライナーと行くの? 食堂」
サシャ「えっ? ……どうなんでしょうかね。私としては行きたい気持ちはあるんですけど。どうせ他に誘う人もいませんし、おいしいものは一緒に食べたいですし」ウーン...
76 : ◆H4iwFNXQsw:2013/11/27(水) 21:49:24 ID:uq5n96C2
ミカサ「そういえば、ライナーに今日のことは報告した?」
サシャ「ええ、しましたよ。ーーっていうか聞いてくださいよ! ライナーってば私のことちっちゃい子ども扱いするんですよ、酷くないですか!?」
ミカサ「ちっちゃい子ども?」
サシャ「そうですよ! 迷子…………にはなりましたけど。服とか今日の日程はともかく、帰ってきたら手洗いうがいしろって、そんなこと言わなくてもいいと思いません!?」
ミカサ「それはライナーが過保護」
サシャ「ですよね! ふんがー!!」ムキーッ!!
ミカサ「でも、気持ちはわかる。ーーきっとサシャがかわいくて仕方がないのだろう」
サシャ「へっ? …………え、えと、そうなんですかね」モジモジ
ミカサ「私もエレンやアルミンに言い過ぎてしまうことがあるからわかる。……ところで今回は、一緒に行きたいとは言われなかったの?」
サシャ「……そういえば、言われませんでしたね」
ミカサ「珍しい。釣りの時は体調が悪くても来たのに。他には何か言ってなかった?」
77 : ◆H4iwFNXQsw:2013/11/27(水) 21:50:24 ID:uq5n96C2
サシャ「ええっと……確か『楽しんで来いよ』って言われました。それになんだか元気がなかったんですよね」
ミカサ「スパイスは出た?」
サシャ「出ませんでした。ーーもしかして、スパイス出すのって身体に負担がかかるんでしょうか」ハッ
ミカサ「そうかもしれない。ミーナは特に何も言ってなかったけれど」
サシャ「それでライナーはあんなに辛そうな顔をしてたんでしょうかね。ーーでも、ライナーのあんな顔、前にも見たことあるような気がするんですよね。いつだったのかは思い出せないんですけど」ウーン...
ミカサ「つまり、前にもスパイスが出たことがあったの?」
サシャ「そうかもしれませんね。私が気づいてなかっただけで、あったのかもしれません」
ミカサ「前にも出たことがあるなら、またスパイスが出る可能性も高いはず。もう少しライナーを振り回してみる?」
サシャ「……」
ミカサ「……? サシャ? どうしたの?」
78 : ◆H4iwFNXQsw:2013/11/27(水) 21:51:47 ID:uq5n96C2
サシャ「ミカサ。……やっぱり私、スパイスは諦めます」
ミカサ「? どうして?」
サシャ「なんていうか……辛いというよりは、色々我慢してるみたいに見えたんですよね。ーー言いたいことがあるのに、言えないでいる、みたいな」
サシャ「……えっと、すみません。私も、何を言ってるのかよくわかってないんですけど。ーーでも、ライナーにあんな顔をさせるくらいなら、おいしいものなんかいりません。我慢します」
ミカサ「……ごめんなさい。もう少し振り回してみろだなんて、軽率なことを言った」シュン
サシャ「いえ、ミカサは悪くないですよ! やったのは私ですし! ーーけど、結局アニの言った通りになっちゃいましたね。……やらなきゃよかったです」
サシャ「帰ったら、ちゃんとライナーに振り回したことを謝らないといけませんね。怒られるかもしれませんけど」
ミカサ「でも、今のサシャの言葉を聞いたらライナーはびっくりすると思う。おいしいものをいらないなんて言うサシャを、私ははじめて見た」
サシャ「……正直もったいない気はするんですけどね」ジュルリ
ミカサ「台無し」クスクス
サシャ「すみません」エヘヘ
79 : ◆H4iwFNXQsw:2013/11/27(水) 21:54:04 ID:uq5n96C2
昨日より短くてすみませんが今日はここまで 続きは明日
気合い入れて直すのでもう少し待っててください
80 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/11/27(水) 23:14:36 ID:Mvzc7POs
乙です!
皆でわいわい楽しそうな買い物だったな和んだ
明日も楽しみにしてます乙乙!
81 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/11/28(木) 00:08:21 ID:me4cdoo.
いつも乙!
82 : ◆H4iwFNXQsw:2013/11/28(木) 21:37:48 ID:C9xoV3yY
ーー とある路地 古本屋の前
ライナー(ベルトルトとも別れちまったし、街に出て来てもやることなんかないな。……帰るか)スタスタ...
ライナー(おっ、あそこの屋台ははじめて見るな。……うまそうだなー)チラッ
ライナー「……」
ライナー(いかんいかん、なんであいつの思考まで伝染してんだ!)ブンブン
ライナー(……さっさと寮に戻ったほうが良さそうだな。ここは誘惑が多すぎる)スタスタ...
エレン「おーいライナー! こんなところで何してんだー?」フリフリ
83 : ◆H4iwFNXQsw:2013/11/28(木) 21:38:58 ID:C9xoV3yY
ライナー「……エレンか」
エレン「よっ! ーー朝っぱらから寮にいないと思ったら、ライナーも街に出てたんだな」
ライナー「ちょっと野暮用でな。お前こそ、なんで街まで出て来てるんだ? 掃除は終わったのか?」
エレン「アルミンの付き添いだよ。流石に全部は資料室で引き取ってもらえなくってさ。燃やして処分しちまおうかと思ったんだが、アルミンが『捨てるのはもったいない』って言い張って、トロスト区中の古本屋回ってるんだ。今ので三軒目」
ライナー「なるほどな。……ところで、ミカサはいないのか?」キョロキョロ
エレン「あいつはあいつで用事だよ。それに、その……いっ、いかがわしい本もあったからな。言えねえだろ。こういうのは」モジモジ
ライナー「まあ……言えないよな。だがお前やアルミンがいないとなっちゃあ、今ごろ一人で暇してるかもな」
エレン「いや、今日はあいつ他の奴と遊びに行ってるぞ?」
ライナー「他の奴? 誰だ?」
ミカサ「ひみつ」
84 : ◆H4iwFNXQsw:2013/11/28(木) 21:40:01 ID:C9xoV3yY
エレン「……」
ライナー「……」
ミカサ「こんにちは。今日はいい天気。素敵」
エレン「お前どこから来たんだ」キョロキョロ
ライナー「立体機動で飛んできたのか?」キョロキョロ
ミカサ「違う。走ってきた。程よく汗をかいたので、冷たい風が気持ちいい」シャラーン
エレン「髪掻きあげるな」
アルミン「ごめんエレン、お待たせ! ……あれ? なんでミカサがいるの?」キョトン
ミカサ「エレンに呼ばれた気がしたから」
85 : ◆H4iwFNXQsw:2013/11/28(木) 21:40:42 ID:C9xoV3yY
アルミン「そっか、なら仕方がないね。ーーサシャと買い物だったんだよね? 楽しかった?」
ミカサ「楽しかった」コクコク
ライナー「……サシャと?」
エレン「……? なんだライナー、サシャから聞いてなかったのか?」
ライナー「いや……俺は、デートって聞いたんだが」
エレン「? 二人で出かけるんだからデートであってるじゃねえか」
アルミン「二人で出かけるからって全部が全部デートなわけじゃないんだよ? エレン」
ライナー「……そうか、なんだ、ミカサとだったのか。…………そうか」
86 : ◆H4iwFNXQsw:2013/11/28(木) 21:41:36 ID:C9xoV3yY
アルミン「ところでミカサ、お店で何買ってきたの? そっちの紙袋は何?」
ミカサ「毛糸のぱんつ」
エレン「……」プイッ
ライナー「……」プイッ
アルミン「ぱっ……!? だっ、ダメだよミカサ! そういうことは大きな声で言っちゃだめ!!」
ミカサ「でもエレンとアルミンに報告しないと。……そうだ、色は相談すべきだっただろうか。柄はくまさんとうさぎさんとねこさんはやめて、水玉にしてみたのだけれど」ガサガサ
アルミン「袋から出すのはもっとだめだから!! ミカサしまって! エレンからも何か言って!」
エレン「黒のほうがよかったな。黒に白の水玉」
ミカサ「なるほど……では、予備はそれにしよう。今度買ってくる」
アルミン「なんでアドバイスしてるの! そうじゃないでしょ! そうじゃないでしょ!!」ダンダンダンダン!!
87 : ◆H4iwFNXQsw:2013/11/28(木) 21:42:59 ID:C9xoV3yY
ライナー「アルミン落ち着け、地団駄を踏むんじゃない。迷惑になるから静かにしろ。なっ?」ポンポン
アルミン「……ふーっ、ふーっ」プルプルプルプル...
ライナー「よしよし、どうどう。ーーミカサはそれ早くしまえ、女の子なんだから恥じらいとか慎みを持とうな? エレンもアドバイスしてやるのはいいが、ミカサが自分で選んで買ってきたものにも一言くらい言ってやれ」テキパキ
エレン「赤に白の水玉は派手だと思う」
ミカサ「私もそう思ったけれど、アニが勧めてくれたのでこれにした。……ちなみに、隣にあった星柄は恥ずかしいので自重した」テレッ
アルミン「星柄は恥ずかしいのにくまさんぱんつは履けるの……?」
ミカサ「かわいいから履ける。星柄はスタイリッシュすぎる」
ライナー「……ん? そういやミカサ、お前一人なのか? サシャはどうした? 一緒だったんだよな?」キョロキョロ
ミカサ「ついさっきまで一緒にいたけどはぐれた」
ライナー「お前それを早く言えよ!!」ダッ
88 : ◆H4iwFNXQsw:2013/11/28(木) 21:43:51 ID:C9xoV3yY
ーー 街中 とある路地
サシャ「ミカサー? どこですかー?」スタスタ...
サシャ(ミカサ、いませんね……ちょっと目を離した隙に、どこ行ったんでしょう)キョロキョロ
サシャ(アルミンに、ミカサのことお願いされたのに……あーあ、私ってば何やってるんでしょう)トンッ
サシャ「あっ……すみません」ペコッ スタスタ...
男「ーーちょっと待ちなよ。人にぶつかっておいて、それだけってことはないんじゃないの?」
サシャ「えっ? ーーあの、急いでて、周りが見えてなかったんです。ごめんなさい」
男「急いでたら人にぶつかってもいいの? なあ」
サシャ「そうじゃなくて……わざとじゃないんです。よろけてしまいまして、その……」
男「だから何? 何なの? 本気で謝ってる? 君、謝る気あるの?」
サシャ「え、えっと……ごめんなさい、すみませんでした」
89 : ◆H4iwFNXQsw:2013/11/28(木) 21:44:40 ID:C9xoV3yY
サシャ(ミカサもアニも、誰もいないんです。自分で、自分でなんとかしなきゃ……)ギュッ
男「なんかさぁ、言われたから謝ってるだけにしか聞こえないんだけど」
サシャ「そんなこと、ないです……」
男「聞こえないんだけどぉ?」ズイッ
サシャ「!」ビクッ
男「何? なんでびびってんの? 俺が悪いわけ?」
サシャ「そ、そうじゃなくて……えっと……」
「すみません! ーーそいつが何かしましたか?」
90 : ◆H4iwFNXQsw:2013/11/28(木) 21:45:22 ID:C9xoV3yY
サシャ「あ……」
男「……? あんた誰だよ」
ライナー「こいつの連れです。何かしたのなら失礼しました。ーーおい、行くぞ」グイッ
サシャ「は、はい……えっと、本当にすみませんでした」ペコッ
男「ちょっと待てって、まだ話はーー」
ライナー「……まだ何か?」
男「……い、いや、なんでもねえよ。次からは気をつけろ」ボソッ
ライナー「はい、気をつけます。ーーそれでは」スタスタ...
91 : ◆H4iwFNXQsw:2013/11/28(木) 21:46:09 ID:C9xoV3yY
サシャ「? ?? ……えっと、私と一緒に来たのはミカサのはずなんですが」
ライナー「ああ、合ってるぞ」
サシャ「ですよね……そうですよね? 私の連れってミカサですよね? ーーでも、なんだか手が大きくなってませんか?」
ライナー「そうか? 大きさはあまり変わってないと思うけどな」
サシャ「そうですか……? なんだかゴツゴツしてて男の人みたいですよ?」
ライナー「男だからな」
サシャ「声もなんだか低いですし」
ライナー「声変わりはとっくの昔に終わった」
92 : ◆H4iwFNXQsw:2013/11/28(木) 21:47:19 ID:C9xoV3yY
サシャ「変装の術ってすごいですね……! 本人みたいです」ニンニン
ライナー「残念だったな。変装の術じゃなくて本人だ」
サシャ「……?」キョトン
ライナー「本人だ」
サシャ「……ライナーなんですか? ミカサじゃなくて?」
ライナー「だから本人だって言ってるだろ。何回言わせるんだ?」
サシャ「……寮から立体機動で飛んできたんですか?」
ライナー「違う。……歩いてきた」
サシャ「でも、心なしか手が汗ばんでるような……あっ」パッ
ライナー「気のせいだ」フキフキフキフキ
サシャ「……汗、思いっきり拭いているように見えるんですけど」
ライナー「気のせいだって言ってんだろ」ゴシゴシゴシゴシ
93 : ◆H4iwFNXQsw:2013/11/28(木) 21:48:03 ID:C9xoV3yY
サシャ「……ライナー」
ライナー「なんだ」
サシャ「そんなに心配されなくったって、自分のことくらい自分で始末つけられます。ーー私、ちっちゃい子どもじゃないんですよ?」
ライナー「そうだな」
サシャ「後から来て、おいしいところだけ掻っ攫ってくなんて……ずるいですよ。私、全然いいところないじゃないですか」
サシャ「さっきだって、一人でなんとかできました。ただちょっと、前に絡まれたこと、思い出して……動けなくなっちゃっただけで、……っ」
サシャ「本当に、怖くなかったんですよ? へっちゃらだったんです。ーー今だって……寒くて、震えてるだけ、なんですから。こんなのなんにも怖くなかったんですから、一人でも平気です。一人でも……」
ライナー「ああ、そうだな。……過保護なのは、俺だ」
サシャ「…………すみません。素直じゃありませんでしたよね、私。ーー来てくれて、ありがとうございました。嬉しかったです。とても……安心しました」
ライナー「……さて、何のことだかな」
94 : ◆H4iwFNXQsw:2013/11/28(木) 21:48:52 ID:C9xoV3yY
ライナー「大体な、ああいう輩の相手をまともにするんじゃない。走って逃げるんじゃなかったのか?」
サシャ「そういえばすっかり忘れてましたね。ーーけど、ああいう絡まれ方ってはじめてで、どうしたらいいかわからなくて……ええっと、私も身長伸ばしたほうがいいんですかね」
ライナー「なんでそうなる。そもそも伸ばそうと思って伸びるもんじゃないだろ」
サシャ「でもさっきのライナーみたいに、相手を高いところから睨みつければイチコロだと思うんですが」
ライナー「睨みつける?」
サシャ「こんな感じに」ジーッ...
ライナー「……」
サシャ「……」ジーッ...
ライナー「……」ササッ
サシャ「あっ、ちょっと! 手で隠したら睨めないじゃないですか! こっち見てくださいよこっち!」ピョンピョン
ライナー「……睨みつけるのは禁止だ。それに、俺相手だと上目遣いになってるから意味ないぞ」
サシャ「そんな……そしたら私はどうやって対抗すればいいんですか!」
ライナー「ありゃお前みたいに馬鹿正直な奴に難癖つけたいだけだから、相手するだけ時間の無駄だ。最初に言った通りさっさと逃げろ」
サシャ「うっ……そうですね、すみません」シュン
95 : ◆H4iwFNXQsw:2013/11/28(木) 21:49:41 ID:C9xoV3yY
ライナー「……お前、俺が言ったとおりにしてきたのか? 走れる靴履いてきたんだろうな?」ジロジロ
サシャ「ちゃんと守りましたよ。靴は高さがないものにしましたし、服も動きやすいのを選んだつもりです」ムー...
ライナー「服装はいいみたいだが……その髪はなんだ? お前そんなややこしい結び方できたのか?」
サシャ「ああ、これですか? これ、ミーナがやってくれたんですよ」
ライナー「ミーナが? ……ほー、あいつ器用だな」ジロジロ
サシャ「ミカサの髪の毛編み込んでるのを見てたんですけど、手際もよかったですよ。私が髪ゴム使いたいって言ったら、ちゃんとそれに合うアレンジにしてくれましたし」
ライナー「これだけ器用なら、技巧の成績はもう少し伸びてもおかしくないと思うんだがな……そうだ、技巧で思い出した。さっきおつかい中のコニーと会ったぞ」
サシャ「コニーですか? コニーって、前も教官に小屋の修理頼まれてたんですよね。色々頼まれやすいんでしょうか。……そうそう、コニーと言えばこの前余ってたみかん分けてくれたんですよ! しかも、早く食べないと傷むからって六つも! ユミルとクリスタにも分けろって言われてーー」
ライナー「ちゃんと分けたんだろうな?」
サシャ「もちろん分けましたよ? ……一個ずつ」
ライナー「おい」
サシャ「……だってお腹空いてたんですもん」
ライナー「お前なぁ……」ハァ
96 : ◆H4iwFNXQsw:2013/11/28(木) 21:50:34 ID:C9xoV3yY
サシャ「……」
ライナー「……」
サシャ「……何の話してたんでしたっけ?」
ライナー「……さあ?」
サシャ「……」ウーン...
ライナー「……」ウーン...
サシャ「……ああっ!! 思い出しました! 私の髪の話です!ポンッ
ライナー「そうだそれだ! ーーそんな髪型で出歩くんじゃない! だから絡まれるんだろ!!」ガミガミ
サシャ「えっ? ええー……?? 怒られるなら思い出さなきゃよかったですね……」ショボン...
97 : ◆H4iwFNXQsw:2013/11/28(木) 21:51:25 ID:C9xoV3yY
ライナー「……それで、この後の予定は? 他にもどこか行くのか?」
サシャ「ええっと、特には決めてません。……あっ、でもミカサを探さないと」
ライナー「ミカサはエレンたちと一緒にいるから大丈夫だろ。さっき会った」
サシャ「そうですか。なら安心ですね」ホッ
ライナー「……デートの相手って、ミカサだったんだな」
サシャ「はい、そうですよ。『ライナーより強い』ってあらかじめ言ったじゃないですか」
ライナー「…………わかるわけねえだろそんなもん」ボソッ
サシャ「そんな難しいこと言ったつもりはないんですけど……でも、結果的には騙してることになっちゃいましたよね。振り回してすみませんでした」
ライナー「そう思うなら、最初にはっきり言えよな」ハァ
サシャ「……騙してたことは、怒らないんですね」
ライナー「飼い犬に噛まれたと思えば大したことない。……でもそうだな。これくらいで許してやるよ」ベチンッ
サシャ「あいたぁっ!? ……うう、でこぴんなのに痛いです」サスサス
ライナー「これくらいはいいだろ? 騙したって自覚があるならな、もう少ししおらしく振る舞ったほうがーー」
98 : ◆H4iwFNXQsw:2013/11/28(木) 21:52:13 ID:C9xoV3yY
ライナー(……騙してるのは、俺か)
ライナー「……」
サシャ「……ライナー? どうかしましたか?」
ライナー「いや、なんでもない。ーーミカサとの買い物は楽しかったか? サシャ」
サシャ「はい、とっても楽しかったです! ……そうそう、今日はミカサだけじゃなくて、アニとミーナも一緒だったんですよ」
ライナー「アニも一緒だったのか? ……あいつがミカサと遊びに行くとはな。珍しい」
サシャ「そんなことないですって! アニとミカサ、とっても仲よしでしたよ? 二人で何を買うか相談してるのを遠くから見たんですが、すごく楽しそうでした」
ライナー「ほう……あいつらがなぁ」
ライナー(……あの柄はアニが選んでやったのか)ウーン...
サシャ「それとですね、ミカサが卒業祝いをエレンとアルミンに贈りたいって話してて……あ、これ内緒ですからね? 二人に喋っちゃだめですよ?」シーッ
ライナー「ああ、わかった。エレンたちには言わないように気をつける。ーーそれで?」
99 : ◆H4iwFNXQsw:2013/11/28(木) 21:53:22 ID:C9xoV3yY
サシャ「他に、ミーナもアニに何か贈り物しようって考えてたみたいです。……そういう話を、今日はしてきました」
サシャ「クリスタやユミルとはそういう話をしてなかったので、実感なかったんですが……これまでにお世話になった人とか、大切な人に何かを贈りたいって気持ちは、私にもありまして」
ライナー「……ああ」
サシャ「ミカサやミーナがやるから、ついでに私もっていうわけじゃないんですけど。ーー私、いつもライナーには助けてもらってますし、他にもたくさんもらってばっかりで……この前ハンバーグは作りましたけど、やっぱり何か手元に残る物を渡したいんです」
サシャ「ライナーは、何かほしいものありませんか? 私があげられるものだったら、何か一つ……贈りたいなって、思うんですが。どうでしょうか」
ライナー「……サシャ」
サシャ「はい? なんですか?」
ライナー「ーーそういうものは、受け取れない」
ーー 同刻 街中 とある噴水前
ミカサ「迷った」
サシャ「迷いましたね」
ミカサ「どうしよう」
サシャ「どうしましょうね」
ミカサ「……」
サシャ「……」
ミカサ「ごめんなさい」ヘコヘコ
サシャ「すみませんでした」ヘコヘコ
ミカサ「色々目移りしてるうちに、知らないところへ来てしまった」
サシャ「私も、食べ物の匂いに釣られてフラフラしてたら道がわからなくなっちゃいまして」
ミカサ「……仕方がない。二人でその辺をお散歩しよう。そのうち知ってる道に出るかもしれない」
サシャ「そうですね。こういうのもお出かけの醍醐味ですよね、ええ」
75 : ◆H4iwFNXQsw:2013/11/27(水) 21:48:32 ID:uq5n96C2
ミカサ「でも、迷ったおかげで何やらいっぱいチラシをもらった」ガサガサ
サシャ「取り敢えず食べ物屋さんとそれ以外に分けましょうか」ガサガサ
ミカサ「地図が載ってるチラシはないだろうか」ガサガサ
サシャ「あっ! ーーミカサミカサ、見てくださいよこれ!! 今度大通り近くに新しい食堂ができるみたいですよ! しかも開店日はお肉が食べられるみたいです!」ワーイ
ミカサ「本当だ。……今度、エレンやアルミンを誘って行こう」
サシャ「開店日は、えーっと……卒業試験直前ですね。忙しいかもしれませんけど、お肉の魅力には敵いませんよね……!」ジュルリ
ミカサ「サシャ、涎が垂れてる」
サシャ「おっといけない」フキフキ
ミカサ「……サシャはライナーと行くの? 食堂」
サシャ「えっ? ……どうなんでしょうかね。私としては行きたい気持ちはあるんですけど。どうせ他に誘う人もいませんし、おいしいものは一緒に食べたいですし」ウーン...
76 : ◆H4iwFNXQsw:2013/11/27(水) 21:49:24 ID:uq5n96C2
ミカサ「そういえば、ライナーに今日のことは報告した?」
サシャ「ええ、しましたよ。ーーっていうか聞いてくださいよ! ライナーってば私のことちっちゃい子ども扱いするんですよ、酷くないですか!?」
ミカサ「ちっちゃい子ども?」
サシャ「そうですよ! 迷子…………にはなりましたけど。服とか今日の日程はともかく、帰ってきたら手洗いうがいしろって、そんなこと言わなくてもいいと思いません!?」
ミカサ「それはライナーが過保護」
サシャ「ですよね! ふんがー!!」ムキーッ!!
ミカサ「でも、気持ちはわかる。ーーきっとサシャがかわいくて仕方がないのだろう」
サシャ「へっ? …………え、えと、そうなんですかね」モジモジ
ミカサ「私もエレンやアルミンに言い過ぎてしまうことがあるからわかる。……ところで今回は、一緒に行きたいとは言われなかったの?」
サシャ「……そういえば、言われませんでしたね」
ミカサ「珍しい。釣りの時は体調が悪くても来たのに。他には何か言ってなかった?」
77 : ◆H4iwFNXQsw:2013/11/27(水) 21:50:24 ID:uq5n96C2
サシャ「ええっと……確か『楽しんで来いよ』って言われました。それになんだか元気がなかったんですよね」
ミカサ「スパイスは出た?」
サシャ「出ませんでした。ーーもしかして、スパイス出すのって身体に負担がかかるんでしょうか」ハッ
ミカサ「そうかもしれない。ミーナは特に何も言ってなかったけれど」
サシャ「それでライナーはあんなに辛そうな顔をしてたんでしょうかね。ーーでも、ライナーのあんな顔、前にも見たことあるような気がするんですよね。いつだったのかは思い出せないんですけど」ウーン...
ミカサ「つまり、前にもスパイスが出たことがあったの?」
サシャ「そうかもしれませんね。私が気づいてなかっただけで、あったのかもしれません」
ミカサ「前にも出たことがあるなら、またスパイスが出る可能性も高いはず。もう少しライナーを振り回してみる?」
サシャ「……」
ミカサ「……? サシャ? どうしたの?」
78 : ◆H4iwFNXQsw:2013/11/27(水) 21:51:47 ID:uq5n96C2
サシャ「ミカサ。……やっぱり私、スパイスは諦めます」
ミカサ「? どうして?」
サシャ「なんていうか……辛いというよりは、色々我慢してるみたいに見えたんですよね。ーー言いたいことがあるのに、言えないでいる、みたいな」
サシャ「……えっと、すみません。私も、何を言ってるのかよくわかってないんですけど。ーーでも、ライナーにあんな顔をさせるくらいなら、おいしいものなんかいりません。我慢します」
ミカサ「……ごめんなさい。もう少し振り回してみろだなんて、軽率なことを言った」シュン
サシャ「いえ、ミカサは悪くないですよ! やったのは私ですし! ーーけど、結局アニの言った通りになっちゃいましたね。……やらなきゃよかったです」
サシャ「帰ったら、ちゃんとライナーに振り回したことを謝らないといけませんね。怒られるかもしれませんけど」
ミカサ「でも、今のサシャの言葉を聞いたらライナーはびっくりすると思う。おいしいものをいらないなんて言うサシャを、私ははじめて見た」
サシャ「……正直もったいない気はするんですけどね」ジュルリ
ミカサ「台無し」クスクス
サシャ「すみません」エヘヘ
昨日より短くてすみませんが今日はここまで 続きは明日
気合い入れて直すのでもう少し待っててください
80 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/11/27(水) 23:14:36 ID:Mvzc7POs
乙です!
皆でわいわい楽しそうな買い物だったな和んだ
明日も楽しみにしてます乙乙!
81 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/11/28(木) 00:08:21 ID:me4cdoo.
いつも乙!
82 : ◆H4iwFNXQsw:2013/11/28(木) 21:37:48 ID:C9xoV3yY
ーー とある路地 古本屋の前
ライナー(ベルトルトとも別れちまったし、街に出て来てもやることなんかないな。……帰るか)スタスタ...
ライナー(おっ、あそこの屋台ははじめて見るな。……うまそうだなー)チラッ
ライナー「……」
ライナー(いかんいかん、なんであいつの思考まで伝染してんだ!)ブンブン
ライナー(……さっさと寮に戻ったほうが良さそうだな。ここは誘惑が多すぎる)スタスタ...
エレン「おーいライナー! こんなところで何してんだー?」フリフリ
83 : ◆H4iwFNXQsw:2013/11/28(木) 21:38:58 ID:C9xoV3yY
ライナー「……エレンか」
エレン「よっ! ーー朝っぱらから寮にいないと思ったら、ライナーも街に出てたんだな」
ライナー「ちょっと野暮用でな。お前こそ、なんで街まで出て来てるんだ? 掃除は終わったのか?」
エレン「アルミンの付き添いだよ。流石に全部は資料室で引き取ってもらえなくってさ。燃やして処分しちまおうかと思ったんだが、アルミンが『捨てるのはもったいない』って言い張って、トロスト区中の古本屋回ってるんだ。今ので三軒目」
ライナー「なるほどな。……ところで、ミカサはいないのか?」キョロキョロ
エレン「あいつはあいつで用事だよ。それに、その……いっ、いかがわしい本もあったからな。言えねえだろ。こういうのは」モジモジ
ライナー「まあ……言えないよな。だがお前やアルミンがいないとなっちゃあ、今ごろ一人で暇してるかもな」
エレン「いや、今日はあいつ他の奴と遊びに行ってるぞ?」
ライナー「他の奴? 誰だ?」
ミカサ「ひみつ」
84 : ◆H4iwFNXQsw:2013/11/28(木) 21:40:01 ID:C9xoV3yY
エレン「……」
ライナー「……」
ミカサ「こんにちは。今日はいい天気。素敵」
エレン「お前どこから来たんだ」キョロキョロ
ライナー「立体機動で飛んできたのか?」キョロキョロ
ミカサ「違う。走ってきた。程よく汗をかいたので、冷たい風が気持ちいい」シャラーン
エレン「髪掻きあげるな」
アルミン「ごめんエレン、お待たせ! ……あれ? なんでミカサがいるの?」キョトン
ミカサ「エレンに呼ばれた気がしたから」
85 : ◆H4iwFNXQsw:2013/11/28(木) 21:40:42 ID:C9xoV3yY
アルミン「そっか、なら仕方がないね。ーーサシャと買い物だったんだよね? 楽しかった?」
ミカサ「楽しかった」コクコク
ライナー「……サシャと?」
エレン「……? なんだライナー、サシャから聞いてなかったのか?」
ライナー「いや……俺は、デートって聞いたんだが」
エレン「? 二人で出かけるんだからデートであってるじゃねえか」
アルミン「二人で出かけるからって全部が全部デートなわけじゃないんだよ? エレン」
ライナー「……そうか、なんだ、ミカサとだったのか。…………そうか」
86 : ◆H4iwFNXQsw:2013/11/28(木) 21:41:36 ID:C9xoV3yY
アルミン「ところでミカサ、お店で何買ってきたの? そっちの紙袋は何?」
ミカサ「毛糸のぱんつ」
エレン「……」プイッ
ライナー「……」プイッ
アルミン「ぱっ……!? だっ、ダメだよミカサ! そういうことは大きな声で言っちゃだめ!!」
ミカサ「でもエレンとアルミンに報告しないと。……そうだ、色は相談すべきだっただろうか。柄はくまさんとうさぎさんとねこさんはやめて、水玉にしてみたのだけれど」ガサガサ
アルミン「袋から出すのはもっとだめだから!! ミカサしまって! エレンからも何か言って!」
エレン「黒のほうがよかったな。黒に白の水玉」
ミカサ「なるほど……では、予備はそれにしよう。今度買ってくる」
アルミン「なんでアドバイスしてるの! そうじゃないでしょ! そうじゃないでしょ!!」ダンダンダンダン!!
87 : ◆H4iwFNXQsw:2013/11/28(木) 21:42:59 ID:C9xoV3yY
ライナー「アルミン落ち着け、地団駄を踏むんじゃない。迷惑になるから静かにしろ。なっ?」ポンポン
アルミン「……ふーっ、ふーっ」プルプルプルプル...
ライナー「よしよし、どうどう。ーーミカサはそれ早くしまえ、女の子なんだから恥じらいとか慎みを持とうな? エレンもアドバイスしてやるのはいいが、ミカサが自分で選んで買ってきたものにも一言くらい言ってやれ」テキパキ
エレン「赤に白の水玉は派手だと思う」
ミカサ「私もそう思ったけれど、アニが勧めてくれたのでこれにした。……ちなみに、隣にあった星柄は恥ずかしいので自重した」テレッ
アルミン「星柄は恥ずかしいのにくまさんぱんつは履けるの……?」
ミカサ「かわいいから履ける。星柄はスタイリッシュすぎる」
ライナー「……ん? そういやミカサ、お前一人なのか? サシャはどうした? 一緒だったんだよな?」キョロキョロ
ミカサ「ついさっきまで一緒にいたけどはぐれた」
ライナー「お前それを早く言えよ!!」ダッ
88 : ◆H4iwFNXQsw:2013/11/28(木) 21:43:51 ID:C9xoV3yY
ーー 街中 とある路地
サシャ「ミカサー? どこですかー?」スタスタ...
サシャ(ミカサ、いませんね……ちょっと目を離した隙に、どこ行ったんでしょう)キョロキョロ
サシャ(アルミンに、ミカサのことお願いされたのに……あーあ、私ってば何やってるんでしょう)トンッ
サシャ「あっ……すみません」ペコッ スタスタ...
男「ーーちょっと待ちなよ。人にぶつかっておいて、それだけってことはないんじゃないの?」
サシャ「えっ? ーーあの、急いでて、周りが見えてなかったんです。ごめんなさい」
男「急いでたら人にぶつかってもいいの? なあ」
サシャ「そうじゃなくて……わざとじゃないんです。よろけてしまいまして、その……」
男「だから何? 何なの? 本気で謝ってる? 君、謝る気あるの?」
サシャ「え、えっと……ごめんなさい、すみませんでした」
89 : ◆H4iwFNXQsw:2013/11/28(木) 21:44:40 ID:C9xoV3yY
サシャ(ミカサもアニも、誰もいないんです。自分で、自分でなんとかしなきゃ……)ギュッ
男「なんかさぁ、言われたから謝ってるだけにしか聞こえないんだけど」
サシャ「そんなこと、ないです……」
男「聞こえないんだけどぉ?」ズイッ
サシャ「!」ビクッ
男「何? なんでびびってんの? 俺が悪いわけ?」
サシャ「そ、そうじゃなくて……えっと……」
「すみません! ーーそいつが何かしましたか?」
90 : ◆H4iwFNXQsw:2013/11/28(木) 21:45:22 ID:C9xoV3yY
サシャ「あ……」
男「……? あんた誰だよ」
ライナー「こいつの連れです。何かしたのなら失礼しました。ーーおい、行くぞ」グイッ
サシャ「は、はい……えっと、本当にすみませんでした」ペコッ
男「ちょっと待てって、まだ話はーー」
ライナー「……まだ何か?」
男「……い、いや、なんでもねえよ。次からは気をつけろ」ボソッ
ライナー「はい、気をつけます。ーーそれでは」スタスタ...
91 : ◆H4iwFNXQsw:2013/11/28(木) 21:46:09 ID:C9xoV3yY
サシャ「? ?? ……えっと、私と一緒に来たのはミカサのはずなんですが」
ライナー「ああ、合ってるぞ」
サシャ「ですよね……そうですよね? 私の連れってミカサですよね? ーーでも、なんだか手が大きくなってませんか?」
ライナー「そうか? 大きさはあまり変わってないと思うけどな」
サシャ「そうですか……? なんだかゴツゴツしてて男の人みたいですよ?」
ライナー「男だからな」
サシャ「声もなんだか低いですし」
ライナー「声変わりはとっくの昔に終わった」
92 : ◆H4iwFNXQsw:2013/11/28(木) 21:47:19 ID:C9xoV3yY
サシャ「変装の術ってすごいですね……! 本人みたいです」ニンニン
ライナー「残念だったな。変装の術じゃなくて本人だ」
サシャ「……?」キョトン
ライナー「本人だ」
サシャ「……ライナーなんですか? ミカサじゃなくて?」
ライナー「だから本人だって言ってるだろ。何回言わせるんだ?」
サシャ「……寮から立体機動で飛んできたんですか?」
ライナー「違う。……歩いてきた」
サシャ「でも、心なしか手が汗ばんでるような……あっ」パッ
ライナー「気のせいだ」フキフキフキフキ
サシャ「……汗、思いっきり拭いているように見えるんですけど」
ライナー「気のせいだって言ってんだろ」ゴシゴシゴシゴシ
93 : ◆H4iwFNXQsw:2013/11/28(木) 21:48:03 ID:C9xoV3yY
サシャ「……ライナー」
ライナー「なんだ」
サシャ「そんなに心配されなくったって、自分のことくらい自分で始末つけられます。ーー私、ちっちゃい子どもじゃないんですよ?」
ライナー「そうだな」
サシャ「後から来て、おいしいところだけ掻っ攫ってくなんて……ずるいですよ。私、全然いいところないじゃないですか」
サシャ「さっきだって、一人でなんとかできました。ただちょっと、前に絡まれたこと、思い出して……動けなくなっちゃっただけで、……っ」
サシャ「本当に、怖くなかったんですよ? へっちゃらだったんです。ーー今だって……寒くて、震えてるだけ、なんですから。こんなのなんにも怖くなかったんですから、一人でも平気です。一人でも……」
ライナー「ああ、そうだな。……過保護なのは、俺だ」
サシャ「…………すみません。素直じゃありませんでしたよね、私。ーー来てくれて、ありがとうございました。嬉しかったです。とても……安心しました」
ライナー「……さて、何のことだかな」
ライナー「大体な、ああいう輩の相手をまともにするんじゃない。走って逃げるんじゃなかったのか?」
サシャ「そういえばすっかり忘れてましたね。ーーけど、ああいう絡まれ方ってはじめてで、どうしたらいいかわからなくて……ええっと、私も身長伸ばしたほうがいいんですかね」
ライナー「なんでそうなる。そもそも伸ばそうと思って伸びるもんじゃないだろ」
サシャ「でもさっきのライナーみたいに、相手を高いところから睨みつければイチコロだと思うんですが」
ライナー「睨みつける?」
サシャ「こんな感じに」ジーッ...
ライナー「……」
サシャ「……」ジーッ...
ライナー「……」ササッ
サシャ「あっ、ちょっと! 手で隠したら睨めないじゃないですか! こっち見てくださいよこっち!」ピョンピョン
ライナー「……睨みつけるのは禁止だ。それに、俺相手だと上目遣いになってるから意味ないぞ」
サシャ「そんな……そしたら私はどうやって対抗すればいいんですか!」
ライナー「ありゃお前みたいに馬鹿正直な奴に難癖つけたいだけだから、相手するだけ時間の無駄だ。最初に言った通りさっさと逃げろ」
サシャ「うっ……そうですね、すみません」シュン
95 : ◆H4iwFNXQsw:2013/11/28(木) 21:49:41 ID:C9xoV3yY
ライナー「……お前、俺が言ったとおりにしてきたのか? 走れる靴履いてきたんだろうな?」ジロジロ
サシャ「ちゃんと守りましたよ。靴は高さがないものにしましたし、服も動きやすいのを選んだつもりです」ムー...
ライナー「服装はいいみたいだが……その髪はなんだ? お前そんなややこしい結び方できたのか?」
サシャ「ああ、これですか? これ、ミーナがやってくれたんですよ」
ライナー「ミーナが? ……ほー、あいつ器用だな」ジロジロ
サシャ「ミカサの髪の毛編み込んでるのを見てたんですけど、手際もよかったですよ。私が髪ゴム使いたいって言ったら、ちゃんとそれに合うアレンジにしてくれましたし」
ライナー「これだけ器用なら、技巧の成績はもう少し伸びてもおかしくないと思うんだがな……そうだ、技巧で思い出した。さっきおつかい中のコニーと会ったぞ」
サシャ「コニーですか? コニーって、前も教官に小屋の修理頼まれてたんですよね。色々頼まれやすいんでしょうか。……そうそう、コニーと言えばこの前余ってたみかん分けてくれたんですよ! しかも、早く食べないと傷むからって六つも! ユミルとクリスタにも分けろって言われてーー」
ライナー「ちゃんと分けたんだろうな?」
サシャ「もちろん分けましたよ? ……一個ずつ」
ライナー「おい」
サシャ「……だってお腹空いてたんですもん」
ライナー「お前なぁ……」ハァ
96 : ◆H4iwFNXQsw:2013/11/28(木) 21:50:34 ID:C9xoV3yY
サシャ「……」
ライナー「……」
サシャ「……何の話してたんでしたっけ?」
ライナー「……さあ?」
サシャ「……」ウーン...
ライナー「……」ウーン...
サシャ「……ああっ!! 思い出しました! 私の髪の話です!ポンッ
ライナー「そうだそれだ! ーーそんな髪型で出歩くんじゃない! だから絡まれるんだろ!!」ガミガミ
サシャ「えっ? ええー……?? 怒られるなら思い出さなきゃよかったですね……」ショボン...
97 : ◆H4iwFNXQsw:2013/11/28(木) 21:51:25 ID:C9xoV3yY
ライナー「……それで、この後の予定は? 他にもどこか行くのか?」
サシャ「ええっと、特には決めてません。……あっ、でもミカサを探さないと」
ライナー「ミカサはエレンたちと一緒にいるから大丈夫だろ。さっき会った」
サシャ「そうですか。なら安心ですね」ホッ
ライナー「……デートの相手って、ミカサだったんだな」
サシャ「はい、そうですよ。『ライナーより強い』ってあらかじめ言ったじゃないですか」
ライナー「…………わかるわけねえだろそんなもん」ボソッ
サシャ「そんな難しいこと言ったつもりはないんですけど……でも、結果的には騙してることになっちゃいましたよね。振り回してすみませんでした」
ライナー「そう思うなら、最初にはっきり言えよな」ハァ
サシャ「……騙してたことは、怒らないんですね」
ライナー「飼い犬に噛まれたと思えば大したことない。……でもそうだな。これくらいで許してやるよ」ベチンッ
サシャ「あいたぁっ!? ……うう、でこぴんなのに痛いです」サスサス
ライナー「これくらいはいいだろ? 騙したって自覚があるならな、もう少ししおらしく振る舞ったほうがーー」
98 : ◆H4iwFNXQsw:2013/11/28(木) 21:52:13 ID:C9xoV3yY
ライナー(……騙してるのは、俺か)
ライナー「……」
サシャ「……ライナー? どうかしましたか?」
ライナー「いや、なんでもない。ーーミカサとの買い物は楽しかったか? サシャ」
サシャ「はい、とっても楽しかったです! ……そうそう、今日はミカサだけじゃなくて、アニとミーナも一緒だったんですよ」
ライナー「アニも一緒だったのか? ……あいつがミカサと遊びに行くとはな。珍しい」
サシャ「そんなことないですって! アニとミカサ、とっても仲よしでしたよ? 二人で何を買うか相談してるのを遠くから見たんですが、すごく楽しそうでした」
ライナー「ほう……あいつらがなぁ」
ライナー(……あの柄はアニが選んでやったのか)ウーン...
サシャ「それとですね、ミカサが卒業祝いをエレンとアルミンに贈りたいって話してて……あ、これ内緒ですからね? 二人に喋っちゃだめですよ?」シーッ
ライナー「ああ、わかった。エレンたちには言わないように気をつける。ーーそれで?」
99 : ◆H4iwFNXQsw:2013/11/28(木) 21:53:22 ID:C9xoV3yY
サシャ「他に、ミーナもアニに何か贈り物しようって考えてたみたいです。……そういう話を、今日はしてきました」
サシャ「クリスタやユミルとはそういう話をしてなかったので、実感なかったんですが……これまでにお世話になった人とか、大切な人に何かを贈りたいって気持ちは、私にもありまして」
ライナー「……ああ」
サシャ「ミカサやミーナがやるから、ついでに私もっていうわけじゃないんですけど。ーー私、いつもライナーには助けてもらってますし、他にもたくさんもらってばっかりで……この前ハンバーグは作りましたけど、やっぱり何か手元に残る物を渡したいんです」
サシャ「ライナーは、何かほしいものありませんか? 私があげられるものだったら、何か一つ……贈りたいなって、思うんですが。どうでしょうか」
ライナー「……サシャ」
サシャ「はい? なんですか?」
ライナー「ーーそういうものは、受け取れない」
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