サシャ「じっくり吟味しましょうか」
Part2
24 : ◆H4iwFNXQsw:2013/11/26(火) 20:32:55 ID:YhM/Zu/M
サシャ「いったいいつ落としたんでしょうか……それとも、寝ぼけて食べたとか……?」ブツブツ
クリスタ「……」チラッ
ユミル「……」チラッ
クリスタ「……おおきなくりのーきのしたでー♪」スッスッ
サシャ「……? あの、クリスタ? 何やってるんです?」
クリスタ「はーいじゃあ一緒にやってみよー。ーーおおきなくりのーきのしたでー」スッスッ
サシャ「は、はぁ……おおきなくりのーきのしたーーああっ! ありましたぁっ!」サワサワ
クリスタ「うっかりさんだね、サシャ」クスクス
サシャ「……というか、何も歌わなくたって『頭を触れ』って言えば終わる話だったんじゃ」
ユミル「何言ってんだサシャ。天使は歌を使わないと下々の民に言葉を伝えられないんだぞ」
サシャ「なんと」
クリスタ「真に受けないでね、サシャ」
25 : ◆H4iwFNXQsw:2013/11/26(火) 20:34:03 ID:YhM/Zu/M
サシャ「……また後で慌てそうなのでしまっておきましょう。もう夜ごはん食べて課題やってお風呂に入るだけですし」シュルッ
クリスタ「そうだね、そうしたほうがいいと思うよ。ーーでも代わりにそれをつけてたってことは、いつもの髪ゴム使い切っちゃったの?」
サシャ「そうなんですよ。今朝三つくらいブチブチ切れちゃいまして……なんでこういうものって一気にダメになるんですかね、不思議です」ウーン...
ユミル「私もそうだぞ。不思議だな」
クリスタ「でも、髪ゴムがないと不便だね。サシャの髪、広がりやすいから」
ユミル「私のやるか? 確か何本かあるぞ」ゴソゴソ
サシャ「いえ、明日ついでに買いに行くのでいいですよ。平気です」
ユミル「明日? なんだ、どこか出かけるのか?」
サシャ「はい。ーー実は、デートなんですよ!」
26 : ◆H4iwFNXQsw:2013/11/26(火) 20:35:00 ID:YhM/Zu/M
ーー 夜 食堂
ライナー「……いや、知らないが」
クリスタ「えっ、ライナーとデートじゃないの?」
ユミル「あぁーっ、浮気かぁー。お前がしっかり手綱握っとかないからだぞぅー(棒)」
ライナー「……」メキッ
ベルトルト「ライナー、スプーンが曲がってるよ」
ライナー「……曲がってないぞ」グイッ
ベルトルト「今、自力で元に戻したでしょ」
ライナー「気のせいだ」
クリスタ「……ちょっとユミル、からかうのはよくないよ」ヒソヒソ
ユミル「まあまあ、そう怒らずによく考えてみろよクリスタ。……髪ゴムなくしただけで顔青くする奴が、浮気なんてするわきゃないだろ」ヒソヒソ
クリスタ「……それはそうかもしれないけど」
27 : ◆H4iwFNXQsw:2013/11/26(火) 20:36:19 ID:YhM/Zu/M
ユミル「というわけでどうすんだ? 相手探しに行くか? 行くのか? 行っちゃうのか?」ニヤニヤ
ベルトルト「……」チラッ
ライナー「……いいや。探さない」
ユミル「おっ、意外な反応」
ライナー「大体なんで俺がサシャの人間関係まで面倒見なきゃいけないんだ?」スカッ スカッ
ユミル「……」
ベルトルト「……」
クリスタ「ライナー、あのね……さっきから、パン掴めてないよ。一生懸命空気掴んでるよ?」
ライナー「休日くらい、あいつの好きにすればいいんじゃないか? 俺には関係ない」カツカツ
ユミル「……」
クリスタ「……」
ベルトルト「ライナー。フォークじゃスープは飲めないよ」
ライナー「……」
28 : ◆H4iwFNXQsw:2013/11/26(火) 20:37:11 ID:YhM/Zu/M
ライナー「……ところで、サシャは一緒じゃないのか? 食堂には一緒に来てたよな?」チラッチラッ
ユミル「あっちでエレンとミカサとアルミンと四人で食べてるぞ。なんか話があるらしくてな」
ライナー「……」チラッ
サシャ「今日のスープ、味がいつもより薄いです」ションボリ
アルミン「まだ壁内との流通が完全に戻ってないらしいからね。具も少なめだし、調味料もかなり減らしてるのかも」
サシャ「……切ないです」シュン
アルミン「あと何日かすればまたいつもの食事に戻るよ。ーー元気出して、サシャ」
サシャ「はーい……」
29 : ◆H4iwFNXQsw:2013/11/26(火) 20:38:08 ID:YhM/Zu/M
ミカサ「エレン、アルミン。ーー私は明日、街へ出かける」
アルミン「明日? ……ごめん、明日は僕付きあえないや。エレンと二人で行ってきてくれる?」
エレン「俺も部屋の片付けあるから無理だぞ」
ミカサ「違う。二人を誘ってるわけじゃない。他の人とお出かけする」
アルミン「他の人?」
ミカサ「デートしてくる」
エレン「そっか。がんばれよー」
ミカサ「……」
アルミン「エレン、せっかくミカサが話してくれてるんだからもう少し聞いてあげようよ。ーーねえミカサ、誰と出かけるの? デートってことは他の男の子?」
30 : ◆H4iwFNXQsw:2013/11/26(火) 20:39:20 ID:YhM/Zu/M
エレン「そんなこと聞かなくてもわかるって、アルミン。ーー 一緒に食べてるってことは、相手はサシャだろ?」チラッ
サシャ「おおっ、エレンにしては鋭いですね。……バレてしまっては仕方ありません。その通りです」フーッ
エレン「なんでドヤ顔してんだ」
アルミン「サシャと二人で出かけるの? ミカサ」
ミカサ「ううん、違う。アニとミーナも一緒。だから四人。ダブルデート」
アルミン「へえ……珍しい面子だね」
エレン「お前、アニと仲悪くなかったか? 一緒に出かけて大丈夫かよ」
ミカサ「犬と猿だって共通の目的があったら仲良くする。桃太郎のように」
エレン「何の話だ」
サシャ「つまり心配ないってことですよ。それに、明日は私やミーナもついてますし!」
アルミン「そうだね、サシャがいるなら大丈夫かな。……明日はミカサのことよろしくね、サシャ」
サシャ「任せてください! なんてったって私のほうが一つ年上ですからね!」
31 : ◆H4iwFNXQsw:2013/11/26(火) 20:40:09 ID:YhM/Zu/M
エレン「ふーん。ーーまあいいや、いってらっしゃい。お土産よろしくなー」フリフリ
ミカサ「……」
アルミン「エレン、もうちょっと気の利いたこと言ってあげなよ。ーー明日はいい思い出作れるといいね、ミカサ」
ミカサ「……うん。作る」
アルミン「ところでどうしてサシャは空気に座ってるの? きつくない?」
サシャ「……お尻が痛くて、椅子に座れないんです」プルプルプルプル...
クリスタ「距離が遠くて声が聞こえないね」
ライナー「……ちょっと待て。あいつ座高伸びたんじゃないか?」ガタッ
ユミル「知らねえよ。本人に聞いてこい」
ベルトルト「ライナー、行儀が悪いよ。座って」グイ
32 : ◆H4iwFNXQsw:2013/11/26(火) 20:41:08 ID:YhM/Zu/M
ーー 夕食後 食堂近くの廊下
サシャ(話し込んでたらすっかり遅くなっちゃいましたね。帰ったら課題を片付けてー、お風呂に入ってー、明日の準備してー……あっ、ライナーに報告もしないとーー)テクテク...
ライナー「おい、サシャ」
サシャ「ふぁい?」クルッ モグモグ
ライナー「……歩きながら物を食べるな」
サシャ「あっ、あー……これはですね、違うんですよ。私がやめてって言ってるのに、食べ物が無理矢理口の中に入ってきたんです。だから、私のせいじゃないんです」コソコソ
ライナー「……明日、出かけるんだって?」
サシャ「そうですけど……あれっ? 誰から聞いたんですか?」
ライナー「クリスタとユミルだ。ーーデートらしいな」
サシャ「はい、そうですよ!」
ライナー「……そう、か。デートなのか」
33 : ◆H4iwFNXQsw:2013/11/26(火) 20:42:51 ID:YhM/Zu/M
ライナー(やっと、俺以外のいい男を見つけたんだな)
ライナー(先のない俺よりも、壁内の誰かと結ばれるほうが、サシャにとっては断然いい。祝ってやらないとな。…………ん?)
サシャ「……」ジロジロ
ライナー「……なんだ? 俺の顔に何かついてるか?」
サシャ「スパイス出ませんね」ボソッ
ライナー「は?」
サシャ「いえ、なんでもないです」
サシャ(うーん、振り回し方が足りないんでしょうか。ライナーからスパイスが出る気配が全くありませんね……あっ、そうだ)
サシャ「ライナー、ちょっと後ろ向いてくれます? そっちのほうがやりやすいので」
ライナー「別に構わんが……これでいいか?」クルッ
サシャ「はい、大丈夫ですよ。ーーそれじゃあ失礼しますね」ダキッ
34 : ◆H4iwFNXQsw:2013/11/26(火) 20:43:50 ID:YhM/Zu/M
ライナー「……」
サシャ「ふぐぐぐぐ……」ギューッ
ライナー「……サシャ。お前何してるんだ」
サシャ「ちょっとした実験です……っ! うぐぐぐぐ、持ち上がりませんね……っ!」グイグイ
ライナー「……放してくれ」
サシャ「え? ーーすみません、痛くなっちゃいました?」パッ
ライナー「そうじゃない。……そういうことは、もうやめろ。デートの相手に勘違いされたら、お前が困るだろ?」
サシャ「勘違い……?」キョトン
ライナー「お前が誰かに抱きつくような格好を見たら、怒るだろうが」
サシャ「大丈夫ですよ、ちゃんと了解取ってますから!」
ライナー「……気軽に他の男に触らせるなんて、そいつは随分懐が広いんだな」
サシャ「そういえば、結構懐には余裕があるみたいですね」ウーン...
サシャ(夏に四人でハンバーグを食べに行った時、ミカサに秋物一着選んでもらったんですよね。懐かしいです)
ライナー「……」
35 : ◆H4iwFNXQsw:2013/11/26(火) 20:44:48 ID:YhM/Zu/M
サシャ(というか、ライナーに嫌がられちゃいましたね……男の人が女の人に物理的に振り回されるのは、いい気がしないのかもしれません。ミカサが担ぎ上げれば、エレンはいつも思いっきり抵抗しますし)
サシャ(でも、ここでスパイスを諦めるのはもったいないですよね……うーん、いっそライナーに「スパイスが欲しい」って正直に相談してみましょうか。案外すんなりと手伝ってもらえるかもしれません)
ライナー「……お前にも、いい奴が見つかったんだな。サシャ」
サシャ「へ? まあ、そうですね……とてもいい人ですよ!」
ライナー「明日は楽しんで来いよ」
サシャ「? そのつもりですけど」キョトン
36 : ◆H4iwFNXQsw:2013/11/26(火) 20:46:26 ID:YhM/Zu/M
ライナー(相手は結構いい加減な奴みたいだが……ここで、俺が引き止めるのは野暮だよな)
ライナー「……」
サシャ「……? ライナー、元気ないですね。スープはちゃんと飲みました? 薄くても全部飲んだほうがいいですよ? ……あ、そうだ」ゴソゴソ
サシャ「元気がない時は何か食べるのが一番ですよ。ーーというわけで、これどうぞ。クリスタからのもらいものなんですけどね、飴玉です」コロン
ライナー「……サシャ」
サシャ「はい、なんでしょう?」
ライナー「ーー出かけるなら、明日は立体機動装置をつけていけ」
サシャ「……はい?」
37 : ◆H4iwFNXQsw:2013/11/26(火) 20:48:03 ID:YhM/Zu/M
サシャ「つけていけって言われても……そんなことしたら出かける前に独房にぶちこまれちゃいますよ。無事に訓練所の外に出たとしても、今度は駐屯兵に捕まっちゃいますし」
ライナー「街で悪漢に絡まれたらどうする」
サシャ「走って逃げます」
ライナー「走って逃げたら迷子になるかもしれないぞ」
サシャ「……まあ、否定はできませんが」
ライナー「道がわからないからといって怪しげな路地には入るなよ? 迷子になった時は駐屯兵でいいから声をかけろ」
サシャ「そこまで子どもじゃないですよ。訓練所まで、ちゃんと一人で帰れます」
ライナー「そもそも明日はどこに行くか決まってるのか? 相手との打ち合わせは済んだのか? 貴重な休みなんだから行き当たりばったりで行動するのは避けろよ? 道に迷う原因にもなるからな」クドクド
サシャ「……」
ライナー「ああそうだ、靴はすぐ動けるように履き慣れた靴を履いていけ。スカートは万が一のことを考えてやめたほうがいいな。最近特に冷え込んできたから温かくしていけよ。でもあのマフラーは今回はやめておくんだな。長すぎて扉に挟んだり踏まれたりしたら大変だ。手袋は持ってるのか? 帽子があるなら被っていけよ? 明日は晴れるらしいから軒下に行くんじゃないぞ? 上から雪が落ちてきたら危険だからな」クドクドクドクド
サシャ「……」ムカムカ
38 : ◆H4iwFNXQsw:2013/11/26(火) 20:49:02 ID:YhM/Zu/M
サシャ「……ライナー」
ライナー「課題は今日のうちに片付けておくといいぞ。明日は余裕を持って門限の十分前までには帰ってくるんだ。そうだ、財布とハンカチだけは忘れるなよ。帰ってきたら手洗いうがいはしっかりやれ。お前は食い物のことを考えると周りが見えなくなるんだから、一緒に出かける奴のこともちゃんと考えてやれよ?」クドクドクドクド
サシャ「ライナー」
ライナー「なんだ」
サシャ「そんなに心配されなくたって、自分のことくらい自分で始末つけられます。……私、ちっちゃい子どもじゃないんですよ」
ライナー「でも俺より年下じゃないか」
サシャ「一個だけじゃないですか。ーーそれに、明日はライナーより強い人と行くので大丈夫ですよーだ!」ダッ
ライナー「あっ! ーーおい待てサシャ! 話はまだ終わってないぞ!」ダッ
サシャ「知りませんライナーなんかぁっ!」アッカンベー
39 : ◆H4iwFNXQsw:2013/11/26(火) 20:50:10 ID:YhM/Zu/M
ーー しばらく後 女子寮 ユミルたちの部屋
サシャ「……」カキカキ
クリスタ「……ねえユミル。机に向かってるってことは、サシャは今課題をやってるんだよね?」ヒソヒソ
ユミル「ああ、明日出かけるらしいからな。今しか片付ける時間ないんだろ」ヒソヒソ
クリスタ「でも、なんか……怒ってない?」
ユミル「奇遇だな、私にもそう見える。…………サシャ、わからないところあったら言えよ。見てやるから」ポンポン
サシャ「……」クルッ
サシャ「……」
サシャ「……」ムカムカ
サシャ「ふんがー!」スクッ ゴロゴロゴロゴロ
クリスタ「!? サシャ、どうしたの!?」
40 : ◆H4iwFNXQsw:2013/11/26(火) 20:51:28 ID:YhM/Zu/M
サシャ「私は! 私は!! 子どもじゃありませんよーっだ!! むきーっ!!」バリバリバリバリ
ユミル「うるっせえな野生動物かお前は!!」
クリスタ「サシャ、どうどう! ーーほら、さっきあげた飴でも食べて落ち着いて?」
サシャ「……すみませんクリスタ。さっきの、ライナーにあげちゃいました」シュン
クリスタ「そうなの? 別にいいけど……じゃあもう一個あげるね?」ゴソゴソ
サシャ「えっ、いいんですか? やったー!」バンザーイ
ユミル「……お前、あの飴をライナーにやったのか? 一つしかなかったのに?」
サシャ「そうですよ? なんだか元気がなかったのであげてきました」ペロペロ
ユミル(サシャが食べ物を分けただと……? しかも、自分の取り分を失ってまで……!!)
クリスタ(うーん、尚更浮気してるようには見えないんだけどなぁ……明日は、誰とお出かけするんだろう……?)
41 : ◆H4iwFNXQsw:2013/11/26(火) 20:52:30 ID:YhM/Zu/M
ーー 同刻 男子寮 エレンたちの部屋
ライナー「俺より強い男子って誰だと思う?」
ベルトルト「寝たら?」
ライナー「……」
ベルトルト「……」
ライナー「俺より強い男子って誰だと思う?」
ベルトルト「二回言わなくても聞こえてたよ。……格闘術の話ならエレンってことになるんじゃない? 君、訓練中は手を抜いてるし」
ライナー「そうか。 ーーおーいエレン、ちょっと投げさせてくれないか?」
エレン「は?」キョトン
ベルトルト「いやいやいやいやちょっと待った待った」ガシッ
42 : ◆H4iwFNXQsw:2013/11/26(火) 20:53:19 ID:YhM/Zu/M
エレン「やだよ。投げられたら痛いだろ」
ライナー「そうか、ならいい。ーーベルトルト、他には?」
ベルトルト「他にはって……アルミンは頭がいいけど、それが強いってことにはならないだろうし」
ライナー「おーいアルミン、ちょっとチェスやらないか?」
アルミン「今日はもう少し本の整理したいから、また今度ね」
ライナー「そうか、頑張ってくれ。ーーベルトルト、他には?」
ベルトルト「……ジャンは立体機動のトップクラスだよね」
ライナー「よし」スクッ
ベルトルト「よしじゃないよ座って」グイグイ
43 : ◆H4iwFNXQsw:2013/11/26(火) 20:54:01 ID:YhM/Zu/M
ベルトルト「なんなの……なんなの君、黙って話できないの? 野生動物か何か?」
ライナー「黙ったままじゃ話はできないぞ、ベルトルト」ハッハッハ
ベルトルト「何かあったんだね?」
ライナー「……ここじゃ話せん。少しいいか?」
ベルトルト「わかったよ。ーーエレン、アルミン。僕たちちょっと出てくるね」スタスタ...
エレン「おう、点呼までには戻ってこいよー」フリフリ
アルミン「行ってらっしゃーい」フリフリ
エレン「……なんだ、二人で連れションか?」
アルミン「ううん、違うよ。何か話があるみたい」
エレン「ここで話せばいいのになー」
アルミン「そうだよね。……何か、都合の悪いことでもあるのかなぁ」
44 : ◆H4iwFNXQsw:2013/11/26(火) 20:54:54 ID:YhM/Zu/M
ーー しばらく後 兵舎裏
ライナー「ーーということがあったんだ」
ベルトルト「うん、そもそも食堂で言ってたことと今やってることが丸っきり違うんだけどそれは置いておくね。ーーライナーはさ、デートの相手を突き止めたいの? それとも自分のほうがその相手より強いことをサシャに証明したいの?」
ライナー「両方だな」キリッ
ベルトルト「なるほどね、大体わかった。……でもさ、自分を強く見せたいんだったら、サシャの前でやらなきゃ意味がないと思うよ」
ライナー「……それもそうだな」ポンッ
ベルトルト「あと対象が無差別過ぎるから、相手を突き止めるまでは自重してね。……とはいえ君より強い訓練兵って、僕にはミカサしか思い当たらないんだけどな」ウーン...
ライナー「何言ってるんだ、ミカサは女だぞ?」
ベルトルト「知ってるよ。ーー他に何かヒントはないの?」
ライナー「そうだな……そういや、懐が広いって言ってたな。ーー待てよ、もしかしたら教官かもしれない」ハッ
ベルトルト「わあ。禁断の恋だね」
ライナー「……真面目に聞いてるか?」
ベルトルト「真面目に聞いてほしいならやる気をガンガン削ぐようなこと言わないでくれるかな。ーーそんなに気になるなら、サシャに直接相手を聞いてくればよかったのに」
ライナー「!? その手があったか……! ベルトルト、お前頭いいな!」バシバシ
ベルトルト「君が馬鹿になっただけだろ」
45 : ◆H4iwFNXQsw:2013/11/26(火) 20:55:48 ID:YhM/Zu/M
ベルトルト「そこまでご執心なのに、『嘘でもいいから付き合う』って選択肢が出てこないのが君らしいよね」
ライナー「そんなことしたらあいつに失礼だ。ーーそれに、これ以上嘘は吐きたくない」
ベルトルト「今更嘘の一つや二つ増えたところで、あの子は気づかないと思うけどな」
ライナー「いいや、意外とあいつは鋭いぞ。前に食事の癖を見抜かれたことがあっただろ。観察力も無視できないものがある」
ベルトルト「ああ……アニも入れて四人で街に行った時ね。確かにあの時は驚かされたな」
ライナー「それだけじゃない。ーー俺たちの秘密も、あいつにはバレてる」
ベルトルト「……まさか君、話したの?」
ライナー「んなわけあるか。『隠し事がある』ってことがバレてるんだ。お前が提案したように、仮にあいつと付き合うことになったとしてーー」
ベルトルト「なったとして?」
ライナー「……なれたらよかったなー」ボソッ
ベルトルト「もしもし? 現実逃避は後からにしてくれる?」
ライナー「……なったとして、だ。そうすれば、少なからず俺の態度にもおかしなところが出てくるだろ? その違和感に気づいたサシャが、中身を確かめようと足を突っ込んでくる可能性は捨てきれない」
ベルトルト「それは……厄介というか、面倒だね」
46 : ◆H4iwFNXQsw:2013/11/26(火) 20:56:39 ID:YhM/Zu/M
ライナー「……なあ、ベルトルト。あいつ、変わったと思わないか?」
ベルトルト「え? ……そうかなぁ、食い意地は前とは変わってないと思うけど。食べ物与えたら今でも簡単に寝返りそうだし」
ライナー「正直、新鮮な海の幸でもぶら下げればあっさりついてくるんじゃないかとは俺も思う」
ベルトルト「だよね。……だから、やっぱりあの子はちっとも変わってないと思うよ」
ライナー「けどな、あいつは入団してからつい最近までずっと芋女だったんだぞ? ……いや確かに第一印象はそうだったがだからといって女扱いしてなかったわけじゃないしそれに」
ベルトルト「ライナー、ライナー。落ち着いて」
ライナー「……つまりだな。今のサシャはそうじゃないだろ。前だったら考えられないくらい、真剣でひたむきだ。俺にはもったいないくらいのいい奴だ」
サシャ「いったいいつ落としたんでしょうか……それとも、寝ぼけて食べたとか……?」ブツブツ
クリスタ「……」チラッ
ユミル「……」チラッ
クリスタ「……おおきなくりのーきのしたでー♪」スッスッ
サシャ「……? あの、クリスタ? 何やってるんです?」
クリスタ「はーいじゃあ一緒にやってみよー。ーーおおきなくりのーきのしたでー」スッスッ
サシャ「は、はぁ……おおきなくりのーきのしたーーああっ! ありましたぁっ!」サワサワ
クリスタ「うっかりさんだね、サシャ」クスクス
サシャ「……というか、何も歌わなくたって『頭を触れ』って言えば終わる話だったんじゃ」
ユミル「何言ってんだサシャ。天使は歌を使わないと下々の民に言葉を伝えられないんだぞ」
サシャ「なんと」
クリスタ「真に受けないでね、サシャ」
25 : ◆H4iwFNXQsw:2013/11/26(火) 20:34:03 ID:YhM/Zu/M
サシャ「……また後で慌てそうなのでしまっておきましょう。もう夜ごはん食べて課題やってお風呂に入るだけですし」シュルッ
クリスタ「そうだね、そうしたほうがいいと思うよ。ーーでも代わりにそれをつけてたってことは、いつもの髪ゴム使い切っちゃったの?」
サシャ「そうなんですよ。今朝三つくらいブチブチ切れちゃいまして……なんでこういうものって一気にダメになるんですかね、不思議です」ウーン...
ユミル「私もそうだぞ。不思議だな」
クリスタ「でも、髪ゴムがないと不便だね。サシャの髪、広がりやすいから」
ユミル「私のやるか? 確か何本かあるぞ」ゴソゴソ
サシャ「いえ、明日ついでに買いに行くのでいいですよ。平気です」
ユミル「明日? なんだ、どこか出かけるのか?」
サシャ「はい。ーー実は、デートなんですよ!」
26 : ◆H4iwFNXQsw:2013/11/26(火) 20:35:00 ID:YhM/Zu/M
ーー 夜 食堂
ライナー「……いや、知らないが」
クリスタ「えっ、ライナーとデートじゃないの?」
ユミル「あぁーっ、浮気かぁー。お前がしっかり手綱握っとかないからだぞぅー(棒)」
ライナー「……」メキッ
ベルトルト「ライナー、スプーンが曲がってるよ」
ライナー「……曲がってないぞ」グイッ
ベルトルト「今、自力で元に戻したでしょ」
ライナー「気のせいだ」
クリスタ「……ちょっとユミル、からかうのはよくないよ」ヒソヒソ
ユミル「まあまあ、そう怒らずによく考えてみろよクリスタ。……髪ゴムなくしただけで顔青くする奴が、浮気なんてするわきゃないだろ」ヒソヒソ
クリスタ「……それはそうかもしれないけど」
27 : ◆H4iwFNXQsw:2013/11/26(火) 20:36:19 ID:YhM/Zu/M
ユミル「というわけでどうすんだ? 相手探しに行くか? 行くのか? 行っちゃうのか?」ニヤニヤ
ベルトルト「……」チラッ
ライナー「……いいや。探さない」
ユミル「おっ、意外な反応」
ライナー「大体なんで俺がサシャの人間関係まで面倒見なきゃいけないんだ?」スカッ スカッ
ユミル「……」
ベルトルト「……」
クリスタ「ライナー、あのね……さっきから、パン掴めてないよ。一生懸命空気掴んでるよ?」
ライナー「休日くらい、あいつの好きにすればいいんじゃないか? 俺には関係ない」カツカツ
ユミル「……」
クリスタ「……」
ベルトルト「ライナー。フォークじゃスープは飲めないよ」
ライナー「……」
28 : ◆H4iwFNXQsw:2013/11/26(火) 20:37:11 ID:YhM/Zu/M
ライナー「……ところで、サシャは一緒じゃないのか? 食堂には一緒に来てたよな?」チラッチラッ
ユミル「あっちでエレンとミカサとアルミンと四人で食べてるぞ。なんか話があるらしくてな」
ライナー「……」チラッ
サシャ「今日のスープ、味がいつもより薄いです」ションボリ
アルミン「まだ壁内との流通が完全に戻ってないらしいからね。具も少なめだし、調味料もかなり減らしてるのかも」
サシャ「……切ないです」シュン
アルミン「あと何日かすればまたいつもの食事に戻るよ。ーー元気出して、サシャ」
サシャ「はーい……」
ミカサ「エレン、アルミン。ーー私は明日、街へ出かける」
アルミン「明日? ……ごめん、明日は僕付きあえないや。エレンと二人で行ってきてくれる?」
エレン「俺も部屋の片付けあるから無理だぞ」
ミカサ「違う。二人を誘ってるわけじゃない。他の人とお出かけする」
アルミン「他の人?」
ミカサ「デートしてくる」
エレン「そっか。がんばれよー」
ミカサ「……」
アルミン「エレン、せっかくミカサが話してくれてるんだからもう少し聞いてあげようよ。ーーねえミカサ、誰と出かけるの? デートってことは他の男の子?」
30 : ◆H4iwFNXQsw:2013/11/26(火) 20:39:20 ID:YhM/Zu/M
エレン「そんなこと聞かなくてもわかるって、アルミン。ーー 一緒に食べてるってことは、相手はサシャだろ?」チラッ
サシャ「おおっ、エレンにしては鋭いですね。……バレてしまっては仕方ありません。その通りです」フーッ
エレン「なんでドヤ顔してんだ」
アルミン「サシャと二人で出かけるの? ミカサ」
ミカサ「ううん、違う。アニとミーナも一緒。だから四人。ダブルデート」
アルミン「へえ……珍しい面子だね」
エレン「お前、アニと仲悪くなかったか? 一緒に出かけて大丈夫かよ」
ミカサ「犬と猿だって共通の目的があったら仲良くする。桃太郎のように」
エレン「何の話だ」
サシャ「つまり心配ないってことですよ。それに、明日は私やミーナもついてますし!」
アルミン「そうだね、サシャがいるなら大丈夫かな。……明日はミカサのことよろしくね、サシャ」
サシャ「任せてください! なんてったって私のほうが一つ年上ですからね!」
31 : ◆H4iwFNXQsw:2013/11/26(火) 20:40:09 ID:YhM/Zu/M
エレン「ふーん。ーーまあいいや、いってらっしゃい。お土産よろしくなー」フリフリ
ミカサ「……」
アルミン「エレン、もうちょっと気の利いたこと言ってあげなよ。ーー明日はいい思い出作れるといいね、ミカサ」
ミカサ「……うん。作る」
アルミン「ところでどうしてサシャは空気に座ってるの? きつくない?」
サシャ「……お尻が痛くて、椅子に座れないんです」プルプルプルプル...
クリスタ「距離が遠くて声が聞こえないね」
ライナー「……ちょっと待て。あいつ座高伸びたんじゃないか?」ガタッ
ユミル「知らねえよ。本人に聞いてこい」
ベルトルト「ライナー、行儀が悪いよ。座って」グイ
32 : ◆H4iwFNXQsw:2013/11/26(火) 20:41:08 ID:YhM/Zu/M
ーー 夕食後 食堂近くの廊下
サシャ(話し込んでたらすっかり遅くなっちゃいましたね。帰ったら課題を片付けてー、お風呂に入ってー、明日の準備してー……あっ、ライナーに報告もしないとーー)テクテク...
ライナー「おい、サシャ」
サシャ「ふぁい?」クルッ モグモグ
ライナー「……歩きながら物を食べるな」
サシャ「あっ、あー……これはですね、違うんですよ。私がやめてって言ってるのに、食べ物が無理矢理口の中に入ってきたんです。だから、私のせいじゃないんです」コソコソ
ライナー「……明日、出かけるんだって?」
サシャ「そうですけど……あれっ? 誰から聞いたんですか?」
ライナー「クリスタとユミルだ。ーーデートらしいな」
サシャ「はい、そうですよ!」
ライナー「……そう、か。デートなのか」
33 : ◆H4iwFNXQsw:2013/11/26(火) 20:42:51 ID:YhM/Zu/M
ライナー(やっと、俺以外のいい男を見つけたんだな)
ライナー(先のない俺よりも、壁内の誰かと結ばれるほうが、サシャにとっては断然いい。祝ってやらないとな。…………ん?)
サシャ「……」ジロジロ
ライナー「……なんだ? 俺の顔に何かついてるか?」
サシャ「スパイス出ませんね」ボソッ
ライナー「は?」
サシャ「いえ、なんでもないです」
サシャ(うーん、振り回し方が足りないんでしょうか。ライナーからスパイスが出る気配が全くありませんね……あっ、そうだ)
サシャ「ライナー、ちょっと後ろ向いてくれます? そっちのほうがやりやすいので」
ライナー「別に構わんが……これでいいか?」クルッ
サシャ「はい、大丈夫ですよ。ーーそれじゃあ失礼しますね」ダキッ
34 : ◆H4iwFNXQsw:2013/11/26(火) 20:43:50 ID:YhM/Zu/M
ライナー「……」
サシャ「ふぐぐぐぐ……」ギューッ
ライナー「……サシャ。お前何してるんだ」
サシャ「ちょっとした実験です……っ! うぐぐぐぐ、持ち上がりませんね……っ!」グイグイ
ライナー「……放してくれ」
サシャ「え? ーーすみません、痛くなっちゃいました?」パッ
ライナー「そうじゃない。……そういうことは、もうやめろ。デートの相手に勘違いされたら、お前が困るだろ?」
サシャ「勘違い……?」キョトン
ライナー「お前が誰かに抱きつくような格好を見たら、怒るだろうが」
サシャ「大丈夫ですよ、ちゃんと了解取ってますから!」
ライナー「……気軽に他の男に触らせるなんて、そいつは随分懐が広いんだな」
サシャ「そういえば、結構懐には余裕があるみたいですね」ウーン...
サシャ(夏に四人でハンバーグを食べに行った時、ミカサに秋物一着選んでもらったんですよね。懐かしいです)
ライナー「……」
35 : ◆H4iwFNXQsw:2013/11/26(火) 20:44:48 ID:YhM/Zu/M
サシャ(というか、ライナーに嫌がられちゃいましたね……男の人が女の人に物理的に振り回されるのは、いい気がしないのかもしれません。ミカサが担ぎ上げれば、エレンはいつも思いっきり抵抗しますし)
サシャ(でも、ここでスパイスを諦めるのはもったいないですよね……うーん、いっそライナーに「スパイスが欲しい」って正直に相談してみましょうか。案外すんなりと手伝ってもらえるかもしれません)
ライナー「……お前にも、いい奴が見つかったんだな。サシャ」
サシャ「へ? まあ、そうですね……とてもいい人ですよ!」
ライナー「明日は楽しんで来いよ」
サシャ「? そのつもりですけど」キョトン
36 : ◆H4iwFNXQsw:2013/11/26(火) 20:46:26 ID:YhM/Zu/M
ライナー(相手は結構いい加減な奴みたいだが……ここで、俺が引き止めるのは野暮だよな)
ライナー「……」
サシャ「……? ライナー、元気ないですね。スープはちゃんと飲みました? 薄くても全部飲んだほうがいいですよ? ……あ、そうだ」ゴソゴソ
サシャ「元気がない時は何か食べるのが一番ですよ。ーーというわけで、これどうぞ。クリスタからのもらいものなんですけどね、飴玉です」コロン
ライナー「……サシャ」
サシャ「はい、なんでしょう?」
ライナー「ーー出かけるなら、明日は立体機動装置をつけていけ」
サシャ「……はい?」
37 : ◆H4iwFNXQsw:2013/11/26(火) 20:48:03 ID:YhM/Zu/M
サシャ「つけていけって言われても……そんなことしたら出かける前に独房にぶちこまれちゃいますよ。無事に訓練所の外に出たとしても、今度は駐屯兵に捕まっちゃいますし」
ライナー「街で悪漢に絡まれたらどうする」
サシャ「走って逃げます」
ライナー「走って逃げたら迷子になるかもしれないぞ」
サシャ「……まあ、否定はできませんが」
ライナー「道がわからないからといって怪しげな路地には入るなよ? 迷子になった時は駐屯兵でいいから声をかけろ」
サシャ「そこまで子どもじゃないですよ。訓練所まで、ちゃんと一人で帰れます」
ライナー「そもそも明日はどこに行くか決まってるのか? 相手との打ち合わせは済んだのか? 貴重な休みなんだから行き当たりばったりで行動するのは避けろよ? 道に迷う原因にもなるからな」クドクド
サシャ「……」
ライナー「ああそうだ、靴はすぐ動けるように履き慣れた靴を履いていけ。スカートは万が一のことを考えてやめたほうがいいな。最近特に冷え込んできたから温かくしていけよ。でもあのマフラーは今回はやめておくんだな。長すぎて扉に挟んだり踏まれたりしたら大変だ。手袋は持ってるのか? 帽子があるなら被っていけよ? 明日は晴れるらしいから軒下に行くんじゃないぞ? 上から雪が落ちてきたら危険だからな」クドクドクドクド
サシャ「……」ムカムカ
38 : ◆H4iwFNXQsw:2013/11/26(火) 20:49:02 ID:YhM/Zu/M
サシャ「……ライナー」
ライナー「課題は今日のうちに片付けておくといいぞ。明日は余裕を持って門限の十分前までには帰ってくるんだ。そうだ、財布とハンカチだけは忘れるなよ。帰ってきたら手洗いうがいはしっかりやれ。お前は食い物のことを考えると周りが見えなくなるんだから、一緒に出かける奴のこともちゃんと考えてやれよ?」クドクドクドクド
サシャ「ライナー」
ライナー「なんだ」
サシャ「そんなに心配されなくたって、自分のことくらい自分で始末つけられます。……私、ちっちゃい子どもじゃないんですよ」
ライナー「でも俺より年下じゃないか」
サシャ「一個だけじゃないですか。ーーそれに、明日はライナーより強い人と行くので大丈夫ですよーだ!」ダッ
ライナー「あっ! ーーおい待てサシャ! 話はまだ終わってないぞ!」ダッ
サシャ「知りませんライナーなんかぁっ!」アッカンベー
39 : ◆H4iwFNXQsw:2013/11/26(火) 20:50:10 ID:YhM/Zu/M
ーー しばらく後 女子寮 ユミルたちの部屋
サシャ「……」カキカキ
クリスタ「……ねえユミル。机に向かってるってことは、サシャは今課題をやってるんだよね?」ヒソヒソ
ユミル「ああ、明日出かけるらしいからな。今しか片付ける時間ないんだろ」ヒソヒソ
クリスタ「でも、なんか……怒ってない?」
ユミル「奇遇だな、私にもそう見える。…………サシャ、わからないところあったら言えよ。見てやるから」ポンポン
サシャ「……」クルッ
サシャ「……」
サシャ「……」ムカムカ
サシャ「ふんがー!」スクッ ゴロゴロゴロゴロ
クリスタ「!? サシャ、どうしたの!?」
40 : ◆H4iwFNXQsw:2013/11/26(火) 20:51:28 ID:YhM/Zu/M
サシャ「私は! 私は!! 子どもじゃありませんよーっだ!! むきーっ!!」バリバリバリバリ
ユミル「うるっせえな野生動物かお前は!!」
クリスタ「サシャ、どうどう! ーーほら、さっきあげた飴でも食べて落ち着いて?」
サシャ「……すみませんクリスタ。さっきの、ライナーにあげちゃいました」シュン
クリスタ「そうなの? 別にいいけど……じゃあもう一個あげるね?」ゴソゴソ
サシャ「えっ、いいんですか? やったー!」バンザーイ
ユミル「……お前、あの飴をライナーにやったのか? 一つしかなかったのに?」
サシャ「そうですよ? なんだか元気がなかったのであげてきました」ペロペロ
ユミル(サシャが食べ物を分けただと……? しかも、自分の取り分を失ってまで……!!)
クリスタ(うーん、尚更浮気してるようには見えないんだけどなぁ……明日は、誰とお出かけするんだろう……?)
41 : ◆H4iwFNXQsw:2013/11/26(火) 20:52:30 ID:YhM/Zu/M
ーー 同刻 男子寮 エレンたちの部屋
ライナー「俺より強い男子って誰だと思う?」
ベルトルト「寝たら?」
ライナー「……」
ベルトルト「……」
ライナー「俺より強い男子って誰だと思う?」
ベルトルト「二回言わなくても聞こえてたよ。……格闘術の話ならエレンってことになるんじゃない? 君、訓練中は手を抜いてるし」
ライナー「そうか。 ーーおーいエレン、ちょっと投げさせてくれないか?」
エレン「は?」キョトン
ベルトルト「いやいやいやいやちょっと待った待った」ガシッ
42 : ◆H4iwFNXQsw:2013/11/26(火) 20:53:19 ID:YhM/Zu/M
エレン「やだよ。投げられたら痛いだろ」
ライナー「そうか、ならいい。ーーベルトルト、他には?」
ベルトルト「他にはって……アルミンは頭がいいけど、それが強いってことにはならないだろうし」
ライナー「おーいアルミン、ちょっとチェスやらないか?」
アルミン「今日はもう少し本の整理したいから、また今度ね」
ライナー「そうか、頑張ってくれ。ーーベルトルト、他には?」
ベルトルト「……ジャンは立体機動のトップクラスだよね」
ライナー「よし」スクッ
ベルトルト「よしじゃないよ座って」グイグイ
43 : ◆H4iwFNXQsw:2013/11/26(火) 20:54:01 ID:YhM/Zu/M
ベルトルト「なんなの……なんなの君、黙って話できないの? 野生動物か何か?」
ライナー「黙ったままじゃ話はできないぞ、ベルトルト」ハッハッハ
ベルトルト「何かあったんだね?」
ライナー「……ここじゃ話せん。少しいいか?」
ベルトルト「わかったよ。ーーエレン、アルミン。僕たちちょっと出てくるね」スタスタ...
エレン「おう、点呼までには戻ってこいよー」フリフリ
アルミン「行ってらっしゃーい」フリフリ
エレン「……なんだ、二人で連れションか?」
アルミン「ううん、違うよ。何か話があるみたい」
エレン「ここで話せばいいのになー」
アルミン「そうだよね。……何か、都合の悪いことでもあるのかなぁ」
ーー しばらく後 兵舎裏
ライナー「ーーということがあったんだ」
ベルトルト「うん、そもそも食堂で言ってたことと今やってることが丸っきり違うんだけどそれは置いておくね。ーーライナーはさ、デートの相手を突き止めたいの? それとも自分のほうがその相手より強いことをサシャに証明したいの?」
ライナー「両方だな」キリッ
ベルトルト「なるほどね、大体わかった。……でもさ、自分を強く見せたいんだったら、サシャの前でやらなきゃ意味がないと思うよ」
ライナー「……それもそうだな」ポンッ
ベルトルト「あと対象が無差別過ぎるから、相手を突き止めるまでは自重してね。……とはいえ君より強い訓練兵って、僕にはミカサしか思い当たらないんだけどな」ウーン...
ライナー「何言ってるんだ、ミカサは女だぞ?」
ベルトルト「知ってるよ。ーー他に何かヒントはないの?」
ライナー「そうだな……そういや、懐が広いって言ってたな。ーー待てよ、もしかしたら教官かもしれない」ハッ
ベルトルト「わあ。禁断の恋だね」
ライナー「……真面目に聞いてるか?」
ベルトルト「真面目に聞いてほしいならやる気をガンガン削ぐようなこと言わないでくれるかな。ーーそんなに気になるなら、サシャに直接相手を聞いてくればよかったのに」
ライナー「!? その手があったか……! ベルトルト、お前頭いいな!」バシバシ
ベルトルト「君が馬鹿になっただけだろ」
45 : ◆H4iwFNXQsw:2013/11/26(火) 20:55:48 ID:YhM/Zu/M
ベルトルト「そこまでご執心なのに、『嘘でもいいから付き合う』って選択肢が出てこないのが君らしいよね」
ライナー「そんなことしたらあいつに失礼だ。ーーそれに、これ以上嘘は吐きたくない」
ベルトルト「今更嘘の一つや二つ増えたところで、あの子は気づかないと思うけどな」
ライナー「いいや、意外とあいつは鋭いぞ。前に食事の癖を見抜かれたことがあっただろ。観察力も無視できないものがある」
ベルトルト「ああ……アニも入れて四人で街に行った時ね。確かにあの時は驚かされたな」
ライナー「それだけじゃない。ーー俺たちの秘密も、あいつにはバレてる」
ベルトルト「……まさか君、話したの?」
ライナー「んなわけあるか。『隠し事がある』ってことがバレてるんだ。お前が提案したように、仮にあいつと付き合うことになったとしてーー」
ベルトルト「なったとして?」
ライナー「……なれたらよかったなー」ボソッ
ベルトルト「もしもし? 現実逃避は後からにしてくれる?」
ライナー「……なったとして、だ。そうすれば、少なからず俺の態度にもおかしなところが出てくるだろ? その違和感に気づいたサシャが、中身を確かめようと足を突っ込んでくる可能性は捨てきれない」
ベルトルト「それは……厄介というか、面倒だね」
46 : ◆H4iwFNXQsw:2013/11/26(火) 20:56:39 ID:YhM/Zu/M
ライナー「……なあ、ベルトルト。あいつ、変わったと思わないか?」
ベルトルト「え? ……そうかなぁ、食い意地は前とは変わってないと思うけど。食べ物与えたら今でも簡単に寝返りそうだし」
ライナー「正直、新鮮な海の幸でもぶら下げればあっさりついてくるんじゃないかとは俺も思う」
ベルトルト「だよね。……だから、やっぱりあの子はちっとも変わってないと思うよ」
ライナー「けどな、あいつは入団してからつい最近までずっと芋女だったんだぞ? ……いや確かに第一印象はそうだったがだからといって女扱いしてなかったわけじゃないしそれに」
ベルトルト「ライナー、ライナー。落ち着いて」
ライナー「……つまりだな。今のサシャはそうじゃないだろ。前だったら考えられないくらい、真剣でひたむきだ。俺にはもったいないくらいのいい奴だ」
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