サシャ「それが醍醐味なんですよ」
Part4
64 : ◆H4iwFNXQsw:2013/10/26(土) 10:43:05 ID:hnhl9D8c
ーー 更に更に更にしばらく後
ジャン「じゃあ逆によ、2班を中央に行かせるのはどうだ?」
アルミン「それ引っかけじゃない? 僕も思いついたけど、そのまま進めても手詰まりになるよ?」
ライナー「これもダメか……打つ手なしだな」
マルコ「ミカサ、紙取ってくれる? あと鉛筆削りたいからナイフ持ってない?」
ミカサ「ナイフは誰かが相手を削いだら大変なので一番最初に撤去した。紙はもう残ってない」
ベルトルト「裏紙ならあるよ。はいマルコ」ペラッ
マルコ「どうも。えーっと……」カキカキ...
サシャ「……アルミンまで取り込まれてしまいました」
コニー「怖ぇよ問7」
エレン「もう教官に直接聞いてきたほうが早いんじゃねえか? あれだけ話し合っててダメなら俺たちには無理だろ」
65 : ◆H4iwFNXQsw:2013/10/26(土) 10:43:45 ID:hnhl9D8c
サシャ「教官にですか?」
コニー「課題なのに聞きに言っていいのかよ?」
エレン「だって、わからないんだから仕方がないだろ? 今すぐ教官室行って、『他の奴にも聞いたんですけどわかりませんでした』って白状したほうがずっと早いって」
エレン「仮に疑われたとしても、あそこで証拠の塊がまだ議論してるしな。なんか言われたら教官をここに連れてくればいいだろ」
コニー「……しゃーねーな。他は全部埋まってるし、なんとかなるか」
サシャ「ですね。行きましょっか」
コニー「俺ら提出したら一旦ここに戻ってくるからさ、あいつらのこと頼んでいいか? エレン」
エレン「おう、あいつらが正気に戻ったら説明しておく」
サシャ「すみません、じゃあお願いしますね」
エレン「頑張れよー」フリフリ
66 : ◆H4iwFNXQsw:2013/10/26(土) 10:44:28 ID:hnhl9D8c
ーー 教官室前
コニー「あー緊張する……」
サシャ「ここでうだうだしてても仕方ないですよ、覚悟決めて行きましょう! ーー失礼します!」ガチャッ
キース「……スプリンガーとブラウスか」ギロッ
コニー「」
サシャ「」
コニー(なんでよりにもよってキース教官が残ってんだよ!?)
サシャ(怒られる怒られる怒られる怒られる)ガタガタガタガタ
キース「貴様ら、課題はできたのか?」
コニー「はっ、終了しました! ……一応」
キース「一応?」ギロッ
サシャ「はっ! 一問だけわからないところがありましたので、聞きに参りました!」
キース「見せてみろ」
コニー「……どうぞ」スッ
67 : ◆H4iwFNXQsw:2013/10/26(土) 10:45:07 ID:hnhl9D8c
キース「……」ジッ...
コニー(やっぱり黙ってると怖ぇな、教官……なんか喋れよサシャ……)チラッ
サシャ(やっぱり黙ってると怖いですね、教官……なんか喋ってくださいよコニー……)チラッ
キース「問7だが、これは前提条件に誤りがある。よって、問題として成立しない」
コニー「……ということは?」
キース「この問題は飛ばして構わん。……残りも目を通した限り、大筋では間違っていないので問題なし」
コニー「…………つまり?」
キース「終わりだ」
サシャ「そ、そうですか……」ホッ
コニー「じゃあこれで……」
キース「明日の朝食はいつも通り出してやる」
68 : ◆H4iwFNXQsw:2013/10/26(土) 10:45:53 ID:hnhl9D8c
コニー「……」
サシャ「……」
キース「不満か?」
サシャ「いっ、いえいえいえそんなことはありません!」ブンブンブンブン
コニー「ありがとうございましたぁっ!」
サシャ「それでは失礼しますっ!」
キース「……待て、ブラウス。貴様にはまだ話がある」
サシャ「えっ? 私ですか?」
キース「そうだ。ーースプリンガーは行ってよし」
コニー「……はっ! それでは失礼いたします!」バッ!!
コニー(悪いなーサシャ。先に行ってるぜ!)
サシャ(……って顔してますね、あれは。ううっ、コニーだけずるい……)
69 : ◆H4iwFNXQsw:2013/10/26(土) 10:46:34 ID:hnhl9D8c
キース「座れ」
サシャ「あ、いえ、立ったままでもーー」
キース「座れ」
サシャ「……失礼します」ストンッ
キース「……」
サシャ「……」
サシャ(ちっ、沈黙がきつい……っ! 私、何かしましたっけ……?)
サシャ(最近食料庫には盗みに行ってませんし、罰則受けるのも久々ですし、他に心当たりなんてーー)
キース「近頃成績をあげているようだな、ブラウス」
サシャ「はっ! ……はっ? 成績??」
キース「立体機動の成績は元々悪くなかったが、苦手科目だった座学や技巧が伸びたおかげで、全体的な成績が底上げされてきている」
キース「今さっき提出した課題も、以前までの貴様なら今日中に提出など無理だったはずだ。誰かの手を借りん限りはな」
サシャ「……」ギクッ
サシャ(ば、バレてる……もしかして、手伝ってもらったのがまずかったんでしょうか……)ドキドキ
70 : ◆H4iwFNXQsw:2013/10/26(土) 10:48:07 ID:hnhl9D8c
サシャ「教官殿のご指摘の通り、他の人に教えてもらった部分もありますが……全てではありません」
キース「わかっている。問5は貴様一人で解いただろう」
サシャ「わかるんですか?」
キース「途中の詰めが甘い」
サシャ「……なるほど」
キース「ーーそれで、ブラウスはどうするつもりだ? 今後は」
サシャ「? 今後と言いますと?」
キース「成績を上げているということは、卒業後は憲兵団に行くのか?」
サシャ「それは……まだ、決めていません」
キース「説明がつかんな。目的意識もなく、ここまで成績が上がるはずもない」
サシャ(教官は鋭いですね……目的はありますけど、教官に話すようなことじゃありませんし、話を逸らした方が……あっ)
71 : ◆H4iwFNXQsw:2013/10/26(土) 10:48:47 ID:hnhl9D8c
サシャ「あの、教官殿は……昔は調査兵団所属だったんですよね?」
キース「何? ……何故知っている?」
サシャ「秋の山岳訓練の時に、椎茸のホダ木に押してあった焼印を見ました」
キース「……そうか。貴様は確かブラウンの班だったな」
サシャ「はい。ーーそれで、その、個人的に聞きたいことがあるのですが、構いませんか?」
キース「くだらん質問なら朝食は抜きだ」
サシャ「くだらないかどうかは、わからないのですが……教官殿は、その、壁の外に出て行くのは怖くなかったのですか?」
キース「……ふむ」
72 : ◆H4iwFNXQsw:2013/10/26(土) 10:49:34 ID:hnhl9D8c
キース「私が調査兵団に所属していたのは、壁の奪還という名目がなかった時期だ」
キース「『壁の中にいる限り、安全に暮らすことができるのに何故外に出ようとするのか』……壁外調査に行く度にそう言われていたな。税の無駄遣いだと罵られたことは数えきれん」
サシャ「それでも、壁の外へ出て行ったんですよね? 何故ですか?」
キース「……調査兵団に所属して、初めての壁外調査の時だったか」
キース「壁ではなく地平線から昇る朝陽を、私はこの目で見たことがある」
キース「あの美しさは……言葉には表せられんな」
サシャ「……朝陽、ですか」
キース「そうだ。壁内では見られない景色を見られるのは、調査兵団ならではの醍醐味だ。あの朝陽をもう一度見られるなら、巨人の脅威など大したことではない」
キース「それにやはり、自らの行く先を自らの力で切り開いていくのはーー血が滾る」
73 : ◆H4iwFNXQsw:2013/10/26(土) 10:50:25 ID:hnhl9D8c
キース「ブラウスよ。貴様は『死ね』と命令されたら死ねるか?」
サシャ「……いいえ、できれば死にたくありません」
キース「当然の答えだな。だが、実際『死ね』と命令されて死ぬのは、それほど難しいことではない。ーー『死ね』と言われた友を見捨てることのほうが、余程難しい」
キース「負傷した友を助けるために巨人の元へと引き返す者、友の亡骸だけでも壁の中へ連れて帰ろうとする者……友を見捨てきれずに巨人の餌食となった者は、決して無視できる数ではない。もちろん、巨人と相対して亡くなった者の数とは比ぶるべくもないがな」
サシャ「……」
キース「先程の問7の状況は、問題として成立はしていない。だが、もし仮に調査兵団に入れば、こんな問題よりも遥かに理不尽なことがいつでも起きる」
キース「再度聞こう、ブラウス。ーー貴様は『死ね』と言われた友を見捨てることができるか?」
サシャ「…………私は、その」
キース「今すぐに答える必要はない。だがな、もしも貴様がこの先調査兵団に入りたいと願うのなら、その答えを見つけておけ。これは私からの宿題だ」
74 : ◆H4iwFNXQsw:2013/10/26(土) 10:51:27 ID:hnhl9D8c
キース「つまらん話をしたな。もう行け」
サシャ「いえ……ありがとうございました」スクッ
サシャ「……」スタスタ...
サシャ「……あの」
キース「なんだ」
サシャ「どうして私にだけ、そのような話を聞かせてくれたのでしょうか」
キース「いいことを教えてやろう。自らの頭で考えようとしない奴は、巨人に食われる前に真っ先に死ぬ」
サシャ「……失礼しました」ペコッ
75 : ◆H4iwFNXQsw:2013/10/26(土) 10:53:13 ID:hnhl9D8c
ーー 廊下
サシャ「……」トボトボ...
サシャ(なんで私だけ残して、進路の話をしたんでしょう……)
サシャ(そりゃあ、コニーは憲兵団志望って前から言ってますけど。……ああそっか、コニーはもうどうするか決めてるんですよね。偉いなぁ……)
サシャ(……私って、そんなにフラフラしてるように見えるんでしょうか。自分では、少しはしっかりしてきたと思ってたんですがね……)
サシャ(……さっきの話、「聞かなきゃよかった」とは言いませんけど)
サシャ(一人で考えるには、ちょっぴり重たいですね)
サシャ「……はぁ」
「ーーため息ついてると幸せ逃げるぞ?」
76 : ◆H4iwFNXQsw:2013/10/26(土) 10:53:50 ID:hnhl9D8c
サシャ「……ライナー? どうしてここに?」
ライナー「先に戻ってきたコニーに聞いてな。ーーおかえり、サシャ」
サシャ「……サシャ・ブラウス、ただいま帰りました!」バッ!!
ライナー「敬礼しなくていいぞ」
サシャ「そうですね。すみません……なんかクセになっちゃってて」
ライナー「……なんだ、元気がないな。そんなに教官に絞られたのか?」ジッ...
サシャ「違いますよ、怒られたわけではないんです。追加で宿題はもらっちゃいましたけど」
ライナー「宿題? 明日でいいなら見てやろうか?」
サシャ「……いえ、自分一人で考えます」
ライナー「そうか。わからなくなったらいつでも声かけろよ?」
サシャ「はい。……あ、そうだ」
77 : ◆H4iwFNXQsw:2013/10/26(土) 10:54:24 ID:hnhl9D8c
サシャ「あの、私ってそんなにフラフラしてるように見えますか?」
ライナー「そうだな。危なっかしくて目が離せん」
サシャ「うぐぐ……やっぱりそうなんですか……」ギリッ...
ライナー「ははは、本当に困ったもんだ」
サシャ「なんでそんな嬉しそうに言うんですかぁっ! こっちは真剣に悩んでるのにぃっ!」プンスカ
ライナー「すまんすまん。ーーなあサシャ、ちょっと外へ行かないか?」
サシャ「外へ? 今からですか?」
ライナー「今じゃないとダメだ。見せたいもんがあるんだよ」
サシャ「見せたいもの……? でも、もう外は真っ暗ですよね? 見えるんですか?」
ライナー「いいから行くぞ」グイッ
サシャ「わっ! 引っ張らないでくださいよ!」タタタッ
78 : ◆H4iwFNXQsw:2013/10/26(土) 10:55:45 ID:hnhl9D8c
ーー 営庭
サシャ「わぁっ……! 雪! 雪! 雪降ってますよ!?」
ライナー「ついさっき降り始めたところだ。お前、朝から楽しみにしてただろ? 元気出たか?」
サシャ「はい、出ました! ーーもしかして、これを教えるために待っててくれたんですか?」
ライナー「それだけじゃないけどな。他の奴にあまり見せたくなかったってのもある」
サシャ「……? 何をです?」
ライナー「どっかの誰かが初雪ではしゃぐ姿をだ」
サシャ「……もうちょっと、おしとやかにしたほうがいいんでしょうか」
ライナー「そんなこと考えなくていい。元気よく走り回ってるほうが、こっちも見てて気分がいいからな」
サシャ「そうですか……なら、気にしません」
ライナー「どうせ明日からまたはしゃぎ回るんだろうけどな、今日のところは独り占めさせてもらうぞ?」
サシャ「……どうぞ、ご賞味ください」
ライナー「ああ、ごちそうさま」
サシャ「……お粗末様でした」
79 : ◆H4iwFNXQsw:2013/10/26(土) 10:56:27 ID:hnhl9D8c
ーー 食堂
サシャ「誰もいませんねー」キョロキョロ
ライナー「全員寮に帰ったんだろ。だが、灯りがそのままなのは不用心だな。火事になったらどうするんだ」
サシャ「私、忘れ物がないかどうか見て回りますね。えーっと……」スタスタ...
ミカサ「……」プルプルプルプル
サシャ「……ライナー、忘れ物ありましたー」
ライナー「誰のだ?」
サシャ「ミカサです。ミカサ本体です」
ミカサ「本体でーす……」プルプルプルプル
ライナー「……本体だな」
80 : ◆H4iwFNXQsw:2013/10/26(土) 10:57:12 ID:hnhl9D8c
ミカサ「さ、サシャ……私を部屋に帰して……」プルプルプルプル
サシャ「こんなところで縮こまってどうしたんです? ミカサ」ツンツン
ミカサ「アニに置いていかれた……ここの食堂は、とても寒い……」
ライナー「置いていかれたって……何したんだお前」
ミカサ「ちょっとしたスキンシップを……」
ライナー「スキンシップ?」
ミカサ「パーカーのフードの下に手を入れたら怒られた。……ので、脇に手を突っ込んでみた」
サシャ「脇ですか? でも脇に突っ込んでもあまりあったかくない気が」
ミカサ「こうやって」ズボッ!!
サシャ「ひゃああああああっ!?」ビクッ!!
81 : ◆H4iwFNXQsw:2013/10/26(土) 10:58:29 ID:hnhl9D8c
ミカサ「ふむ……サシャの二の腕はアニの腕よりも柔らかい。胸よりはやっぱり少し固いけれど」モニュモニュ
サシャ「くっ……くくく比べないでくださいよぉっ!! もうミカサなんて知りません置いていきます!」ダッ
ミカサ「ああっ、待ってサシャ……! 外は寒い、一人で行くのは危険……!」ヨロヨロ...
ライナー「……ミカサ」
ミカサ「何?」
ライナー「任務完了だ」
ミカサ「任務? 何の話?」
ライナー「こっちの話だ。……お前、いい仕事したな」
ミカサ「??」
ライナー「ほら、早く行かないと置いて行かれるぞ。あとアニに謝っとけよ」
ミカサ「部屋に帰ったら謝るけれど、部屋に帰れない……寒い……」フラフラ...
82 : ◆H4iwFNXQsw:2013/10/26(土) 10:59:09 ID:hnhl9D8c
ーー 廊下
ミカサ「サシャ、待って、置いていかないで……」ヨロヨロ...
サシャ「……反省してます?」
ミカサ「している。……ごめんなさい」プルッ
サシャ「もう……次やったら置いてきぼりにしますからね。今日のところは手を繋ぐくらいで我慢してください」ギュッ
ミカサ「わかった。がまんする」コクコク
サシャ「わっ、結構手が冷えちゃってますね……本当に寒がりなんですね、ミカサは」
ミカサ「……この時期は、とても心細い」ギュッ
サシャ「じゃあ心細くならないように、私が握っててあげますよ」ギューッ
ミカサ「……嬉しい」
83 : ◆H4iwFNXQsw:2013/10/26(土) 11:00:05 ID:hnhl9D8c
サシャ「ミカサは、冬は嫌いなんですか? 私は好きなんですけど」
ミカサ「嫌いではないけれど……寒いので、あまり得意ではない。ーーでも、雪は好き」
サシャ「雪ですか……いいですよね、雪。さっきやっと降り始めましたよ」
ミカサ「何度か、エレンやアルミンと一緒に雪道を散歩したことがある。あれはいいものだった」
サシャ「散歩ですか……雪が降ったら、私とも一緒に行ってくれますか?」
ミカサ「手袋になってくれるなら」
サシャ「あはは、正直ですね。いいですよ」
ミカサ「……今年は、いっぱい積もるといい」
サシャ「そうですね」
サシャ「ーー冬の醍醐味は、これからですよね!」
おわり
84 : ◆H4iwFNXQsw:2013/10/26(土) 11:01:29 ID:hnhl9D8c
読んでくださった方&途中レスしてくださった方ありがとうございました! お待たせしてすみません、ポケモンやってました
というわけでおっぱい&初雪の話でした 教官の宿題は後々回収する予定です
他におっぱいの別スレが立っててネタが被ったらどうしようかと思ったけどそんなことはなかったぜ!!よっしゃ!
次回からはがっつり雪の話をします そんなわけでまた来週!
85 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/10/26(土) 11:10:01 ID:jECfWdys
乙です
今回もみんな可愛かった!
また来週も楽しみにしてます
86 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/10/26(土) 12:49:09 ID:eHYBKPIA
乙乙!
楽しかった
ーー 更に更に更にしばらく後
ジャン「じゃあ逆によ、2班を中央に行かせるのはどうだ?」
アルミン「それ引っかけじゃない? 僕も思いついたけど、そのまま進めても手詰まりになるよ?」
ライナー「これもダメか……打つ手なしだな」
マルコ「ミカサ、紙取ってくれる? あと鉛筆削りたいからナイフ持ってない?」
ミカサ「ナイフは誰かが相手を削いだら大変なので一番最初に撤去した。紙はもう残ってない」
ベルトルト「裏紙ならあるよ。はいマルコ」ペラッ
マルコ「どうも。えーっと……」カキカキ...
サシャ「……アルミンまで取り込まれてしまいました」
コニー「怖ぇよ問7」
エレン「もう教官に直接聞いてきたほうが早いんじゃねえか? あれだけ話し合っててダメなら俺たちには無理だろ」
65 : ◆H4iwFNXQsw:2013/10/26(土) 10:43:45 ID:hnhl9D8c
サシャ「教官にですか?」
コニー「課題なのに聞きに言っていいのかよ?」
エレン「だって、わからないんだから仕方がないだろ? 今すぐ教官室行って、『他の奴にも聞いたんですけどわかりませんでした』って白状したほうがずっと早いって」
エレン「仮に疑われたとしても、あそこで証拠の塊がまだ議論してるしな。なんか言われたら教官をここに連れてくればいいだろ」
コニー「……しゃーねーな。他は全部埋まってるし、なんとかなるか」
サシャ「ですね。行きましょっか」
コニー「俺ら提出したら一旦ここに戻ってくるからさ、あいつらのこと頼んでいいか? エレン」
エレン「おう、あいつらが正気に戻ったら説明しておく」
サシャ「すみません、じゃあお願いしますね」
エレン「頑張れよー」フリフリ
66 : ◆H4iwFNXQsw:2013/10/26(土) 10:44:28 ID:hnhl9D8c
ーー 教官室前
コニー「あー緊張する……」
サシャ「ここでうだうだしてても仕方ないですよ、覚悟決めて行きましょう! ーー失礼します!」ガチャッ
キース「……スプリンガーとブラウスか」ギロッ
コニー「」
サシャ「」
コニー(なんでよりにもよってキース教官が残ってんだよ!?)
サシャ(怒られる怒られる怒られる怒られる)ガタガタガタガタ
キース「貴様ら、課題はできたのか?」
コニー「はっ、終了しました! ……一応」
キース「一応?」ギロッ
サシャ「はっ! 一問だけわからないところがありましたので、聞きに参りました!」
キース「見せてみろ」
コニー「……どうぞ」スッ
67 : ◆H4iwFNXQsw:2013/10/26(土) 10:45:07 ID:hnhl9D8c
キース「……」ジッ...
コニー(やっぱり黙ってると怖ぇな、教官……なんか喋れよサシャ……)チラッ
サシャ(やっぱり黙ってると怖いですね、教官……なんか喋ってくださいよコニー……)チラッ
キース「問7だが、これは前提条件に誤りがある。よって、問題として成立しない」
コニー「……ということは?」
キース「この問題は飛ばして構わん。……残りも目を通した限り、大筋では間違っていないので問題なし」
コニー「…………つまり?」
キース「終わりだ」
サシャ「そ、そうですか……」ホッ
コニー「じゃあこれで……」
キース「明日の朝食はいつも通り出してやる」
68 : ◆H4iwFNXQsw:2013/10/26(土) 10:45:53 ID:hnhl9D8c
コニー「……」
サシャ「……」
キース「不満か?」
サシャ「いっ、いえいえいえそんなことはありません!」ブンブンブンブン
コニー「ありがとうございましたぁっ!」
サシャ「それでは失礼しますっ!」
キース「……待て、ブラウス。貴様にはまだ話がある」
サシャ「えっ? 私ですか?」
キース「そうだ。ーースプリンガーは行ってよし」
コニー「……はっ! それでは失礼いたします!」バッ!!
コニー(悪いなーサシャ。先に行ってるぜ!)
サシャ(……って顔してますね、あれは。ううっ、コニーだけずるい……)
キース「座れ」
サシャ「あ、いえ、立ったままでもーー」
キース「座れ」
サシャ「……失礼します」ストンッ
キース「……」
サシャ「……」
サシャ(ちっ、沈黙がきつい……っ! 私、何かしましたっけ……?)
サシャ(最近食料庫には盗みに行ってませんし、罰則受けるのも久々ですし、他に心当たりなんてーー)
キース「近頃成績をあげているようだな、ブラウス」
サシャ「はっ! ……はっ? 成績??」
キース「立体機動の成績は元々悪くなかったが、苦手科目だった座学や技巧が伸びたおかげで、全体的な成績が底上げされてきている」
キース「今さっき提出した課題も、以前までの貴様なら今日中に提出など無理だったはずだ。誰かの手を借りん限りはな」
サシャ「……」ギクッ
サシャ(ば、バレてる……もしかして、手伝ってもらったのがまずかったんでしょうか……)ドキドキ
70 : ◆H4iwFNXQsw:2013/10/26(土) 10:48:07 ID:hnhl9D8c
サシャ「教官殿のご指摘の通り、他の人に教えてもらった部分もありますが……全てではありません」
キース「わかっている。問5は貴様一人で解いただろう」
サシャ「わかるんですか?」
キース「途中の詰めが甘い」
サシャ「……なるほど」
キース「ーーそれで、ブラウスはどうするつもりだ? 今後は」
サシャ「? 今後と言いますと?」
キース「成績を上げているということは、卒業後は憲兵団に行くのか?」
サシャ「それは……まだ、決めていません」
キース「説明がつかんな。目的意識もなく、ここまで成績が上がるはずもない」
サシャ(教官は鋭いですね……目的はありますけど、教官に話すようなことじゃありませんし、話を逸らした方が……あっ)
71 : ◆H4iwFNXQsw:2013/10/26(土) 10:48:47 ID:hnhl9D8c
サシャ「あの、教官殿は……昔は調査兵団所属だったんですよね?」
キース「何? ……何故知っている?」
サシャ「秋の山岳訓練の時に、椎茸のホダ木に押してあった焼印を見ました」
キース「……そうか。貴様は確かブラウンの班だったな」
サシャ「はい。ーーそれで、その、個人的に聞きたいことがあるのですが、構いませんか?」
キース「くだらん質問なら朝食は抜きだ」
サシャ「くだらないかどうかは、わからないのですが……教官殿は、その、壁の外に出て行くのは怖くなかったのですか?」
キース「……ふむ」
72 : ◆H4iwFNXQsw:2013/10/26(土) 10:49:34 ID:hnhl9D8c
キース「私が調査兵団に所属していたのは、壁の奪還という名目がなかった時期だ」
キース「『壁の中にいる限り、安全に暮らすことができるのに何故外に出ようとするのか』……壁外調査に行く度にそう言われていたな。税の無駄遣いだと罵られたことは数えきれん」
サシャ「それでも、壁の外へ出て行ったんですよね? 何故ですか?」
キース「……調査兵団に所属して、初めての壁外調査の時だったか」
キース「壁ではなく地平線から昇る朝陽を、私はこの目で見たことがある」
キース「あの美しさは……言葉には表せられんな」
サシャ「……朝陽、ですか」
キース「そうだ。壁内では見られない景色を見られるのは、調査兵団ならではの醍醐味だ。あの朝陽をもう一度見られるなら、巨人の脅威など大したことではない」
キース「それにやはり、自らの行く先を自らの力で切り開いていくのはーー血が滾る」
73 : ◆H4iwFNXQsw:2013/10/26(土) 10:50:25 ID:hnhl9D8c
キース「ブラウスよ。貴様は『死ね』と命令されたら死ねるか?」
サシャ「……いいえ、できれば死にたくありません」
キース「当然の答えだな。だが、実際『死ね』と命令されて死ぬのは、それほど難しいことではない。ーー『死ね』と言われた友を見捨てることのほうが、余程難しい」
キース「負傷した友を助けるために巨人の元へと引き返す者、友の亡骸だけでも壁の中へ連れて帰ろうとする者……友を見捨てきれずに巨人の餌食となった者は、決して無視できる数ではない。もちろん、巨人と相対して亡くなった者の数とは比ぶるべくもないがな」
サシャ「……」
キース「先程の問7の状況は、問題として成立はしていない。だが、もし仮に調査兵団に入れば、こんな問題よりも遥かに理不尽なことがいつでも起きる」
キース「再度聞こう、ブラウス。ーー貴様は『死ね』と言われた友を見捨てることができるか?」
サシャ「…………私は、その」
キース「今すぐに答える必要はない。だがな、もしも貴様がこの先調査兵団に入りたいと願うのなら、その答えを見つけておけ。これは私からの宿題だ」
74 : ◆H4iwFNXQsw:2013/10/26(土) 10:51:27 ID:hnhl9D8c
キース「つまらん話をしたな。もう行け」
サシャ「いえ……ありがとうございました」スクッ
サシャ「……」スタスタ...
サシャ「……あの」
キース「なんだ」
サシャ「どうして私にだけ、そのような話を聞かせてくれたのでしょうか」
キース「いいことを教えてやろう。自らの頭で考えようとしない奴は、巨人に食われる前に真っ先に死ぬ」
サシャ「……失礼しました」ペコッ
75 : ◆H4iwFNXQsw:2013/10/26(土) 10:53:13 ID:hnhl9D8c
ーー 廊下
サシャ「……」トボトボ...
サシャ(なんで私だけ残して、進路の話をしたんでしょう……)
サシャ(そりゃあ、コニーは憲兵団志望って前から言ってますけど。……ああそっか、コニーはもうどうするか決めてるんですよね。偉いなぁ……)
サシャ(……私って、そんなにフラフラしてるように見えるんでしょうか。自分では、少しはしっかりしてきたと思ってたんですがね……)
サシャ(……さっきの話、「聞かなきゃよかった」とは言いませんけど)
サシャ(一人で考えるには、ちょっぴり重たいですね)
サシャ「……はぁ」
「ーーため息ついてると幸せ逃げるぞ?」
76 : ◆H4iwFNXQsw:2013/10/26(土) 10:53:50 ID:hnhl9D8c
サシャ「……ライナー? どうしてここに?」
ライナー「先に戻ってきたコニーに聞いてな。ーーおかえり、サシャ」
サシャ「……サシャ・ブラウス、ただいま帰りました!」バッ!!
ライナー「敬礼しなくていいぞ」
サシャ「そうですね。すみません……なんかクセになっちゃってて」
ライナー「……なんだ、元気がないな。そんなに教官に絞られたのか?」ジッ...
サシャ「違いますよ、怒られたわけではないんです。追加で宿題はもらっちゃいましたけど」
ライナー「宿題? 明日でいいなら見てやろうか?」
サシャ「……いえ、自分一人で考えます」
ライナー「そうか。わからなくなったらいつでも声かけろよ?」
サシャ「はい。……あ、そうだ」
77 : ◆H4iwFNXQsw:2013/10/26(土) 10:54:24 ID:hnhl9D8c
サシャ「あの、私ってそんなにフラフラしてるように見えますか?」
ライナー「そうだな。危なっかしくて目が離せん」
サシャ「うぐぐ……やっぱりそうなんですか……」ギリッ...
ライナー「ははは、本当に困ったもんだ」
サシャ「なんでそんな嬉しそうに言うんですかぁっ! こっちは真剣に悩んでるのにぃっ!」プンスカ
ライナー「すまんすまん。ーーなあサシャ、ちょっと外へ行かないか?」
サシャ「外へ? 今からですか?」
ライナー「今じゃないとダメだ。見せたいもんがあるんだよ」
サシャ「見せたいもの……? でも、もう外は真っ暗ですよね? 見えるんですか?」
ライナー「いいから行くぞ」グイッ
サシャ「わっ! 引っ張らないでくださいよ!」タタタッ
78 : ◆H4iwFNXQsw:2013/10/26(土) 10:55:45 ID:hnhl9D8c
ーー 営庭
サシャ「わぁっ……! 雪! 雪! 雪降ってますよ!?」
ライナー「ついさっき降り始めたところだ。お前、朝から楽しみにしてただろ? 元気出たか?」
サシャ「はい、出ました! ーーもしかして、これを教えるために待っててくれたんですか?」
ライナー「それだけじゃないけどな。他の奴にあまり見せたくなかったってのもある」
サシャ「……? 何をです?」
ライナー「どっかの誰かが初雪ではしゃぐ姿をだ」
サシャ「……もうちょっと、おしとやかにしたほうがいいんでしょうか」
ライナー「そんなこと考えなくていい。元気よく走り回ってるほうが、こっちも見てて気分がいいからな」
サシャ「そうですか……なら、気にしません」
ライナー「どうせ明日からまたはしゃぎ回るんだろうけどな、今日のところは独り占めさせてもらうぞ?」
サシャ「……どうぞ、ご賞味ください」
ライナー「ああ、ごちそうさま」
サシャ「……お粗末様でした」
79 : ◆H4iwFNXQsw:2013/10/26(土) 10:56:27 ID:hnhl9D8c
ーー 食堂
サシャ「誰もいませんねー」キョロキョロ
ライナー「全員寮に帰ったんだろ。だが、灯りがそのままなのは不用心だな。火事になったらどうするんだ」
サシャ「私、忘れ物がないかどうか見て回りますね。えーっと……」スタスタ...
ミカサ「……」プルプルプルプル
サシャ「……ライナー、忘れ物ありましたー」
ライナー「誰のだ?」
サシャ「ミカサです。ミカサ本体です」
ミカサ「本体でーす……」プルプルプルプル
ライナー「……本体だな」
80 : ◆H4iwFNXQsw:2013/10/26(土) 10:57:12 ID:hnhl9D8c
ミカサ「さ、サシャ……私を部屋に帰して……」プルプルプルプル
サシャ「こんなところで縮こまってどうしたんです? ミカサ」ツンツン
ミカサ「アニに置いていかれた……ここの食堂は、とても寒い……」
ライナー「置いていかれたって……何したんだお前」
ミカサ「ちょっとしたスキンシップを……」
ライナー「スキンシップ?」
ミカサ「パーカーのフードの下に手を入れたら怒られた。……ので、脇に手を突っ込んでみた」
サシャ「脇ですか? でも脇に突っ込んでもあまりあったかくない気が」
ミカサ「こうやって」ズボッ!!
サシャ「ひゃああああああっ!?」ビクッ!!
81 : ◆H4iwFNXQsw:2013/10/26(土) 10:58:29 ID:hnhl9D8c
ミカサ「ふむ……サシャの二の腕はアニの腕よりも柔らかい。胸よりはやっぱり少し固いけれど」モニュモニュ
サシャ「くっ……くくく比べないでくださいよぉっ!! もうミカサなんて知りません置いていきます!」ダッ
ミカサ「ああっ、待ってサシャ……! 外は寒い、一人で行くのは危険……!」ヨロヨロ...
ライナー「……ミカサ」
ミカサ「何?」
ライナー「任務完了だ」
ミカサ「任務? 何の話?」
ライナー「こっちの話だ。……お前、いい仕事したな」
ミカサ「??」
ライナー「ほら、早く行かないと置いて行かれるぞ。あとアニに謝っとけよ」
ミカサ「部屋に帰ったら謝るけれど、部屋に帰れない……寒い……」フラフラ...
82 : ◆H4iwFNXQsw:2013/10/26(土) 10:59:09 ID:hnhl9D8c
ーー 廊下
ミカサ「サシャ、待って、置いていかないで……」ヨロヨロ...
サシャ「……反省してます?」
ミカサ「している。……ごめんなさい」プルッ
サシャ「もう……次やったら置いてきぼりにしますからね。今日のところは手を繋ぐくらいで我慢してください」ギュッ
ミカサ「わかった。がまんする」コクコク
サシャ「わっ、結構手が冷えちゃってますね……本当に寒がりなんですね、ミカサは」
ミカサ「……この時期は、とても心細い」ギュッ
サシャ「じゃあ心細くならないように、私が握っててあげますよ」ギューッ
ミカサ「……嬉しい」
83 : ◆H4iwFNXQsw:2013/10/26(土) 11:00:05 ID:hnhl9D8c
サシャ「ミカサは、冬は嫌いなんですか? 私は好きなんですけど」
ミカサ「嫌いではないけれど……寒いので、あまり得意ではない。ーーでも、雪は好き」
サシャ「雪ですか……いいですよね、雪。さっきやっと降り始めましたよ」
ミカサ「何度か、エレンやアルミンと一緒に雪道を散歩したことがある。あれはいいものだった」
サシャ「散歩ですか……雪が降ったら、私とも一緒に行ってくれますか?」
ミカサ「手袋になってくれるなら」
サシャ「あはは、正直ですね。いいですよ」
ミカサ「……今年は、いっぱい積もるといい」
サシャ「そうですね」
サシャ「ーー冬の醍醐味は、これからですよね!」
おわり
読んでくださった方&途中レスしてくださった方ありがとうございました! お待たせしてすみません、ポケモンやってました
というわけでおっぱい&初雪の話でした 教官の宿題は後々回収する予定です
他におっぱいの別スレが立っててネタが被ったらどうしようかと思ったけどそんなことはなかったぜ!!よっしゃ!
次回からはがっつり雪の話をします そんなわけでまた来週!
85 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/10/26(土) 11:10:01 ID:jECfWdys
乙です
今回もみんな可愛かった!
また来週も楽しみにしてます
86 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/10/26(土) 12:49:09 ID:eHYBKPIA
乙乙!
楽しかった
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