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女「また混浴に来たんですか!!」

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Part7
107 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/02/18(土) 10:16:35.60 ID:FjDEx+7n0
女「さあのぼせないうちに」
男「そうだな。お前がトイレに駆け込まないうちにな」
女「と、トイレは生理現象だからしょうがないです」
男「のぼせるのだって生理現象だ」
女「そういえば!!」
男「どうした」
女「私、生まれてから、一度ものぼせたことがないです!!」
男「それがどうした」
女「すごくないですか?のぼせるということは誰もが経験していて、朝風呂も誰もが経験してるのに、朝にのぼせた人って滅多にいないんじゃないでしょうか」
男「女の朝風呂は朝シャンとかいうやつだろう。夜に張った湯は朝には冷えている」
女「ああ、そうですね。そもそも、朝にゆっくり湯船に浸かる時間はないですし」
男「今はあるじゃないか。新幹線で通学するほどの生活をしていながら朝に湯に浸かるゆとりがある」
女「それでも時間は少し意識してますけどね。ああ、どうして朝ってこんなに慌ただしいんでしょうね。夜の1時間と、朝の1時間を比較してみて下さい」
女「夜の五分なんて潮干狩りみたいにそこらじゅうにごろごろころがってるじゃないですか。20時に暇になったとして、テレビを見たり、SNSで友達と絡んだりして、ごろごろのんびりして21時になります」
女「それに比べて朝の五分はスーパーでのつかみ取りタイムです。次々に奪われていきます。目覚ましがジリジリ鳴って、ぐずぐずしてるうちに意識のないまま15分や30分過ぎてます。お母さんが怒ってきてベッドから飛び起きて、急いで朝ごはんを食べて、着替えて、化粧して電車までダッシュしてあっという間に1時間なんて吹き飛んでしまいます」
男「トイレを外すなよ。スーパーの掴み取りを例に出すなら家族と奪い合いになるくだりは必要だろ」
女「乙女の恥じらいです。それにうちにはトイレ複数ありますから」
男「それにしてもフェアな比較ではないだろう。休日の朝の1時間はそれなりにゆったりしているはずだ。まぁ、休日ならそもそも朝は寝ているがな」
男「朝は何時までに寝なければならないという期限があるのに対して、夜は何時までに寝なければならないという期限がないからな。それで無限に思えた夜の時間も、無駄なことをしているうちにあっという間に過ぎてはしまうが」
女「夜の自由時間も確かにあっという間ですけど、朝に比べたら何ともないですよ。夜が砂漠だとしたら、朝は砂場です。どちらも音速で駆け抜けてしまうので短く感じてしまいますが」

108 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/02/18(土) 10:17:19.68 ID:FjDEx+7n0
男「それなら時間がなくて電車の中で化粧をする女も仕方ない気がするな」
女「それは別ですよ。それを認めたら男性が電車の中で髭をそっていても私達文句言えなくなっちゃいます」
男「ひげは剃れば落ちるが化粧は塗るだけだろう」
女「ちっともわかってないですねぇ。化粧は女性の本能なんですよ。避難所にいる女性が欲しい物についてテレビで取り上げられていたんですが、食べ物など必要な物が確保された後では化粧が女性の最大の要求になっていたんです」
男「朝につけて夜に落とすのにな」
女「仕方なくマスクを着けるんです。すっぴんを見られたくないから」
男「でもお前もここに来るまで化粧してないんだろう」
女「これだけ髪が長いんですもの。それにあなたとしか会いませんし」
男「ああーそうかよ」
女「おや、ちょっと怒りました?怒ってくれました?」
男「化粧が女性の本能なのはわかった」
女「無視ですか」
男「けれど睡眠も人間の本能で、電車の中で寝ることは許されてるじゃないか」
女「いいじゃないですか。朝はただでさえ眠いのに、座って揺られてると眠くなっちゃいますよ」
男「……何の話をしていたんだったか」
女「電車の中で髭を剃るのと化粧をするのは同じだって話です」
女「化粧は塗りたくる行為でもなければ、仮面をつける行為でもありません。汚い自分を削ぎ落として本来の自分を取り戻す行為です。化粧をして自然と話している女性が偽物で、すっぴんで不自然に俯いている女性が本物だって言われたら違和感あるでしょう?」
女「化粧をすることはお風呂で垢を落とす行為と一緒なんです。旦那さんと夜の営みをする時に灯りをつけるのには応じるのに、お風呂に一緒に入るのは恥ずかしくてできないという女性がいたら、その人は決して電車の中でお化粧をする人ではないでしょう。はぁ、立派な女性とはお風呂プレイができないという男性のジレンマが生じますね」
男「混浴では人前で垢を落としているがそれは」
女「マナーの問題ですよ!当たり前じゃないですか!」
男「お前の主張についていくのは掴み取りに参加するくらいに大変だ……」

109 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/02/18(土) 11:12:07.10 ID:FjDEx+7n0
男「マナーの問題ですよ!!」
親父「だから言ってるだろ。垢を落とすのと何が違うってんだ」
男「全然違いますって!」
湯船に浸かりながら、俺は珍しく親父さんと長々口論をしていた。
親父さんは、身体を洗っている時に小便をしょっちゅうしていた。
俺はそれがたまらなく嫌だった。
親父さんは温泉という場所を、神聖な空間だとよく言っていた。
激しい刺青を入れているにも関わらず、刺青禁止の銭湯に堂々と入るし、騒いでいる学生がいたら脅して退出させていた。一滴も見ずを浴びないまま追い出された者もいる(たいがいそういう連中が腹いせに通報する)。
筋を通すなら、出来る限りのマナーは守って貰いたかった。
社会に対して不平不満を言いながらその社会の癌になっているような義父と重なった。
従順であることを愛情表現にしていた俺が、珍しく反発する時であった。
男「マナーを守れない人間は、どうしてその場にいちゃいけないのか考えたことがあるか」
男「周りの人に迷惑をかけるからでしょう」
親父「周りの人に迷惑をかけてきた人間が、その場にいてもいいと思うか?」
男「すいません、どういう意味ですか」
親父「温泉でも、遊園地でも、映画館でもどこでもいい。普段は大人しいガキのくせに、そういうところに行って舞い上がってはしゃいだり道端にゴミを捨てたりするような人間と、普段は物凄い悪さをしているのにそういう場所に行くときはマナーを守る人間」
親父「どっちがそこにいるにふさわしいと思う?」
男「その場所でマナーを守る人間でしょう。その場所で正しいかどうかだけですよ。親父さんは、裏でも悪さをしているし、マナーも守れていません」
言い過ぎたと思った。
"お前も裏では悪さをしているのに温泉に入っているのだから、お互い様だろう"
こういう話に持っていきたかったに違いない。
長く湯に浸かってのぼせすぎていた。俺は正反対の主張をしてしまった。
自分を悪い人間だと思っている人が、自慢げに自分の悪さを自慢をしていたとして。
格下の人間がその人を悪い人間だと言ってはいけない。
お代官様と越後屋のように、上下関係の区別がはっきりついていて、お互いが同じことをしているような、絶妙なバランスが取れていない限り。
自分を馬鹿だと笑いながら言ってる人への、自分をブスだと笑いながら言ってる人への、タブーの言葉が馬鹿とブスであるように。
悪人に対して、悪人だと言ってはいけなかったのだ。
親父「……居場所をつくってくれた恩人に、悪者だってか」
周囲に他の客がいてもがいても同じことをされていただろう。
頭を掴まれ水の中に突っ込まされた。
息を吸う間もなかった。
ごぼごぼとあぶくがたつ水中からでさえ、頭上で親が怒鳴っているのが伝わってきた。

110 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/02/18(土) 11:18:46.16 ID:FjDEx+7n0
一緒に過ごす時間が経つにつれ、段々と自分に接する時の態度が厳しくなってきた。
それは社会で生きていく上では、裏の人間も、表の人間も同じらしい。
温泉でさえ長く浸かっていると身体を熱して追い出そうとしてくるのだから。
いつまでも役に立たずにぬるま湯に浸かっている人間は、社会が追い打ちをかけてくる。
ただ、うわさで聞くには。
家族という存在だけは、最初こそ厳しいものの、時が経つにつれてやさしい部分だけを見せてくれるようになるらしい。
俺は一度も味わったことはないのだが。
水中から引き上げられた。
親父はまだ鬼のような剣幕で怒っていた。
俺は憎しみに駆られていた。
本気を出せば、こいつを溺死させることもできるかもしれないと想像した。
俺は怒りを堪えた。
そのまま湯からあがり、無言で身体を拭き、店を出る前だった
親父さんが黙ってコーヒー牛乳を奢ってくれた。
親父「さっきは悪かったな」
親父さんは謝るのが早かった。
俺は、馬鹿らしいことに、罪悪感を感じた。
この人を傷つけてしまったな、と。
見ず知らずの他人である俺をあの家から救い出して、しばらく寝場所もタダ飯も与えてくれたこの人に、怒りの感情をわき上がらせてしまったなと。
俺は、俗に言う、ちょろい人間だったのだ。

111 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/02/18(土) 14:20:09.20 ID:FjDEx+7n0
女「私には全然ガードが硬いですけどね」
男「何のことだ」
女「人は何故温泉に行くのでしょうね。憑き物でも落とすのでしょうか」
男「本屋でトイレに行きたくなるし、お風呂でおしっこしたくなるだろ?人生、垂れ流しだ」
女「それ心理学の授業で聞きました。青木まりこ現象でしょう?」
男「なんだそれは」
女「書店に足を運んだ際に便意に襲われる現象を示す用語です。青木まりこというペンネームで、とある雑誌に質問を投稿した女性がいたそうです。内容は、書店を訪れると便意に襲われるということについて」
女「紙がトイレットペーパーを彷彿とさせるとか、いろんな説があるそうですが、これが原因だと断定できる理由はまだないそうです」
女「パブロフの犬という言葉もあわせて聞きました。これは経験による学習が引き起こす条件反射を示す用語です。梅干しを食べたことがない人が梅干しを見てもなんともならないけれど、梅干しを食べたことがある人が梅干しを見ると、ヨダレが出てくるというあれです」
女「その親父さんが温泉に行った時に尿意に襲われるのは、家庭でお風呂にはいっているときに排尿をしていたからではないでしょうか」
男「風呂とトイレを一緒にするなんて言語道断だな。トイレで水浴びをしているのと何ら変わらん」
女「あら、意外とそこら辺は厳しいんですね」
男「だから俺は浴室で伴侶を求めるようなことはしないだろう」
女「さぁ、どうだか」
男「のぼせた。あがる」ザバァ
女「私はもうちょっと浸かってます。朝にも関わらず時間に余裕がある女なので」
男「好きにしろ」
女「それではまた早朝」
男「また早朝」


112 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/02/18(土) 14:30:35.70 ID:FjDEx+7n0
男「おはよう」
女「おはようございます」
男「今日は厚いな」
女「真夏ですもの」
男「温泉に入っても汗がでてくるだけだぞ」
女「出てもいいじゃないですか」
男「そうだな」
女「夏の温泉は好きですか?」
男「親父さんにも聞かれたな」
女「なんて答えました?」
男「のぼせやすいんで、ちょっと熱いとは思います」
女「ぐふふ。それでも好きなんじゃろ」
男「喋り方が似ていない」
女「すぐにのぼせちゃいますよね」
男「ああ。だが、親父さんはなかなかあがらないだろう?だから耐えるのに大変だった」
女「今すぐあがるのはその反動が来たんですかね」
男「さぁな」
女「でも、やっぱり冬に入る温泉にはかないませんよね」
女「夏のクーラー。冬のコタツ。夏のプール。冬の温泉。夏のアイス。冬のおでん」
女「人はないものねだりの生き物だって証ですね」
男「隣の芝生は青く見える。他人の飯は白い。隣の花は赤い」
女「隣のブツはでかく見える。他人の汁は白い」
男「慎め」
女「つい女子大のノリが」

113 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/02/18(土) 14:41:15.41 ID:FjDEx+7n0
女「無いものねだりの人間であるはずの私たちは、夏に温泉に来ていますね」
男「冬にプールに来ているようなものかもな。こういううだるような暑さの日には温泉好きは困ってしまうな」
女「本物の温泉好きなら天候に左右されませんよ。無いものねだりの人が欲しがる理由は、それを持っていないからです。本当に好きだという人は、それを持っていても欲しがり続けます」
女「夏に温泉に入るというのは、結婚した伴侶を大切にし続けるのと一緒です。釣った魚に餌をやり続ける立派な人格者の証です。私たちはこうして夏に温泉に来ることで、人格者になっているんですよ」
男「のぼせたんならあがっていいぞ」
女「シラフです」
男「シラフという表現が適切なのか」
女「風呂上がりの冷たい牛乳は最高ですけどね」
男「ここには置いてないな」
女「そこもまたいいですよね」
男「お嬢さんのくせにほしがらないやつだ」
女「与えられすぎていたのかもしれません」
男「見に余っているわけか」
女「ただ、私自身だって不安に思いますよ。与えられなくなったら、私は私自身を支えられないだろうって」
女「今私を支えているのは親の経済力と愛情だけです」
男「充分に見えるんだが」
女「私もそう思います」
男「めでたしめでたしだな」

114 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/02/18(土) 14:50:45.14 ID:FjDEx+7n0
女「冬の温泉までまだ半年後ありますね」
男「その頃には街中の銭湯の修理も終わっているだろう」
女「それはもうすぐ……」
男「ん?」
女「そうですね」
男「そうだな」
女「…………」
男「…………」
女「夏のアイス、夏のスイカ、夏のクーラー」
男「それが?」
女「やっぱり好きです」
女「私の仲の良い友達にもいるんですよ」
女「こんない暑い日は熱々のラーメンを食うに限る!!とか、寒い日にあえてアイスを買ったりするのが」
男「冬をコンセプトにしてる氷菓子があるくらいだからな」
女「暑いから熱々の物を食べるっていうのを聞き流すじゃないですか。そして、帰宅して、夕飯食べてテレビ見て、お布団にはいってるときに疑問がわくんですよ」
女「暑いからこそ熱々って意味わかんなくない!!!??」
男「わっ、驚かすな」
女「いいじゃないですか無いものねだりでも!!」
女「だから私はあなたの話に興味があるんです!!医者の息子の鼻もちならない話なんか聞きたくないんです!!」
男「わかったから落ち着け」
女「これが!!これが落ち着いていられます……」シュン…
男「わっ、急に落ち着くな」

115 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/02/18(土) 15:10:53.17 ID:FjDEx+7n0
女「さぁのぼせないうちに前の話の続きを。あなたがのぼせて気絶して、私もねこまないうちに」
男「三途の川をわたらんうちにか」
女「真夏に入る三途の川は気持ちいのかもしれないですね」
男「意外と熱いのかもしれん」
女「浸かったことあります?」
男「冷たかった記憶がある」
女「夏に入る水辺より、冬に入る温泉のほうが好きです」
男「ここではないどこかを求める旅好きのお前なら、きっと気に入る場所があるぞ」
女「どこでしょう」
男「北海道にある屈斜路湖露天風呂という場所だ」
女「くっしゃろころてんぶろ?」
男「通称古丹温泉だ」
女「こたんおんせん?」
男「奇跡なんだ、ここは」
男「岩に囲まれたスペースに小さな温泉がある。その眼前には湖の光景が広がっていて」
男「一面は朝日に照らされて輝いていてな。湖の上には数多の白鳥が見える」
男「白鳥は人間を畏れておらず、近くで鳴いている。白鳥独特の、あの高い鳴き声で」
男「異空間を思わせるようなその場所は、まるで」

116 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/02/18(土) 15:23:33.67 ID:FjDEx+7n0
親父「天国のようだった」
親父さんは、うっとりとした表情を浮かべていた。
親父「何もかもを失っていた時だった。俺は疲れ果てていた。馴染みもない冬国に命からがらたどり着き、手を差し伸べてくれる人もいるわけもなく」
親父「手持ちの金に余裕はあったが、借金は遥かに上回っていた。追い詰められた頭では、このお金で贅沢をしつくして、このままこの寒さの中死んでしまおうかと考えていた」
親父「目的地もないのにバスに乗っている間に、色々なことが頭をよぎった。俺はどうしてこんな目に遭っているんだろうと」
親父「父親が犯罪者だったせいなのか。母親が身体を売っていたせいなのか。そもそも、俺が生まれたこと自体が間違いだったのか」
親父「俺は俺なりに知恵を絞って生きてきた。一時期はうまくいっていた。俺を慕ってくれるようなやつらも現れた」
親父「それが、金を失った今ではこのざまだと」
親父「冬の広い寂れた光景をいつまでも眺め続けていた。これからどこに行くのだとしても、俺という人間は変わらない。だったら行き着く先は、全て絶望なのだろうと」

117 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/02/18(土) 15:33:49.95 ID:FjDEx+7n0
親父「小さな民宿に泊まった。広さは四畳で、畳は全てかびていた。俺以外に宿泊者は誰もいなかった」
親父「俺はそこで数日間過ごした。好きな時間に起きて、酒を買って飲んで、寝て。ひたすらそれの繰り返しだった」
親父「所持金にも余裕がなくなってきた。俺は支払いもせずに黙って民宿を出た。どこまでも世界に嫌われてやろうと思った」
親父「今が朝方なのか、夕方なのか、どちらかわからなかった。日が登ろうとしているのか沈もうとしているのかの区別がつかない」
親父「外は誰も歩いていなしし、寒さは変わらないし。腕時計なんてものも持っていない。そもそも、時間を気にする必要がなかった」
親父「ずっと歩いていた。多分、自殺しようとしていたんだろう」
親父「足のつま先の感覚も、寒さが痛さに変わり、やがて麻痺して気にもならなくなって」
親父「死ぬことだけを考えている頭で、ふと、お湯がほしいと思った」
親父「お湯。お湯。数か月前まで夜の街で贅沢三昧金をばらまいていた俺が、死の間際に求めていたものはそれだけだったんだ」

118 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/02/18(土) 15:43:31.00 ID:FjDEx+7n0
親父「そしてたどり着いた」
親父「こんなところに温泉があるのかと、目を疑ったよ。幻覚でも見てるんじゃないかって」
親父「もしも浸かって冷水だったら、俺はそのまま死んでしまおうと思った。そこで力尽きてしまうしかないと思った」
親父「無人の自然の中を、俺は裸になって、身体もながさずに水の中に入り込んだ」
親父「蘇ったよ。この時間だけをいつまでも抱きしめていたいと思った。俺は、皮肉にも、このまま死んでしまいたいとさえ思った。この最高の瞬間を最後にしたいとな」
親父「人間から忌み嫌われた俺の周りには白鳥がいた。遠慮もせずに甲高い声で泣いていた。白鳥でも冬の寒さを感じることがあるんだろうかと気になった。こいつらもここで湯の恩恵を受けに来ているのかと思うと、俺はふとおかしくなって、笑いだしてしまった」
親父「久しぶりに笑った。大声でな。白鳥が何羽かバタバタと飛んでいった。構わず俺は大声で笑い続けた」
親父「その時だったよ」

119 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/02/18(土) 16:02:28.08 ID:FjDEx+7n0
「そんなにおかしい景色ですか」
親父「俺は笑うのをやめて、凍りついた表情のまま振り返った」
親父「陽の光を浴びた女が、一糸まとわず立っていた」
親父「こんなに美しい女がいるのかと驚いた。幻想的な光景に、思わず見惚れてしまった」
親父「正気を取り戻して、俺を慌てた。女は静かに言った。ここは女湯ですよと」
親父「大きな岩で風呂は仕切られていた。そんなのを気にする余裕もなかった俺は間違えてはいってしまったらしい」
親父「柄にもなく謝ったあと飛び出ていったよ。空気の寒さに震えながら、股間をぶらぶらさせながら、滑稽に男湯だと思わしきところに入りにいった
親父「さきほどの美しさを整理する時間が欲しかった。湯に浸かりながら、白鳥の騒々しい鳴き声を聴きながら、俺は人間の心を取り戻した気がしていた」
親父「話しかけてみたいと思った。だが、なんと声をかけていいかわからなかった」
親父「しばらく身体を温めているうちに、俺は待ち伏せようと思いついて、脱衣場に向かった。服は脱ぎ散らかしたままだった。バスタオルなんかないから、上着で身体を拭いた」
親父「髪の毛は濡れたまま。かける言葉も思い浮かばないまま、女が出てくるのを、そのまま待ち続けた」
親父「しかし、いくら待てども女は出てこなかった。相当な長湯なのか、それとものぼせやすくてすぐに上がってしまったのか」
親父「寒さに耐えきれずに俺はその場所を離れた。有名な観光地らしく、バスに乗った人が降りてくるのが見えた。俺は宿を探しはじめた」
親父「もう一度あの女に会いたいと思った」

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