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女「また混浴に来たんですか!!」

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Part13
222 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/03/07(火) 20:43:37.29 ID:82N5yNGi0
女「もうすぐ何の日か知ってますよね」
男「お前の誕生日か」
女「私は冬生まれです」
男「何かあったっけか」
女「まぶたを閉じると観えてきませんか?」
男「花火大会か」
女「即答ですか。そうですよ。楽しみですよね」
男「ああ」
女「言わないんですか?」
男「何を」
女「一緒に、夜空に浮かぶ花を見に行こう」
男「そういうセリフを吐くことを黒歴史というんじゃなかったか」
女「いいじゃないですか。善良なる市民で知られずに終えるより、歴史に汚名を刻む方が」
男「わざわざ街中まで観にいかん」
女「はぁー!?はぁー!?」
女「はぁーーーー!?」
男「ここから観えるからな」
女「えっ、そうなんですか!?」

223 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/03/07(火) 21:01:07.73 ID:82N5yNGi0
男「それにしても、意外だな」
女「憎き夜の思い出詰まった花火を見たがる心理がですか?」
男「それ」
女「過去を乗り越えたいという思いとはまた別の気持ちですね。単に時が経つにつれて、花火を観たがる自分になったんですよ」
女「でも、そう思えるようになったのは、やはりあの事件が原因なのでしょう。すくすくと何事もなく育ったままだったら、美しい景色や手触りの違うバスタオルに、ここまで興味をひかれることもなかったままだったと思います」
女「だから、なおさら嫌なんですけどね。つらい出来事があったおかげで良い出来事と巡り会えただなんて言ったら、つらい出来事を肯定しているみたいじゃないですか。ただひたすら、なければよかったって思いますよ」
男「…………」
女「あっ、傷ついてる。俺と出会えた今を否定するのかって、泣きそうになってる」
男「ああいえばこういうし黙ればそういう奴だな」
女「ということで、その日は夜にお風呂に入りましょうか」
男「早朝ルールを破るのか」
女「いいじゃないですか。減るもんじゃあるまいし」
男「ワニが来て心がすり減るかもしれないぞ」
女「私の裸なんかより、花火の方がよっぽど見応えありますよ。ボン、キュッ、ボンです」

224 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/03/07(火) 21:12:27.82 ID:82N5yNGi0
男「まぁ、いいが」
女「やったー!!!!」
男「だが」
女「いぇーい!!」
女「せんせーい!バナナはお弁当箱に入りますか??」
女「大きいお弁当箱になら入りまーす!!!」
男「落ち着け。行ける約束はできん」
女「…………」
女「…………」
女「…………」
男「いきなり落ち込むな」
女「も、もしかして……」
女「ほ、ほかに、ボン、キュッ、ボンがいたんですか?」クィ
男「小指を立てながら質問してこなかったらその難解な表現を理解できなったぞ」
男「女関係じゃない。ちょっと調べごとがあって、数日かかる」
女「なんですかその探偵みたいな仕事は」
男「俺は探偵に捕まる方だがな」
女「はい、過去の重い話題禁止。深淵禁止。表面上の付き合いで楽しみましょうや」
男「気楽なやつだ」
女「目指すは極楽なやつです」

225 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/03/07(火) 21:33:24.00 ID:82N5yNGi0
女「調べごとなんてネットで調べればいいじゃないですか」
男「こう見えても図書館にあるのを時々使う」
女「パソコンに座ってる姿あんまり想像できないです」
男「タイピングというやつが苦手だ。手書きで入力している」
女「不器用!!でもちょっと不器用なほうがいいかも!!」
男「どっちだ」
女「どんなこと調べてるんですか?」
男「うるさい 女性 心理」
女「完璧に使いこなしてますね」
男「冗談だ。ネットには載ってないこともあるから困る」
女「どんなことですか」
男「ネットに載せてはいけないこと」
女「とんちですか」
男「お前はネットは好きか」
女「私の記事が探せば出てくることを除けば大好きです」
男「大嫌いというわけか」
女「SNSは大好きですけどね」
男「パンケーキがどうのこうのやつか」
女「ああ、今さっきあなたの言ったことがわかる気がしました。ネットには、ネットに載せたくないことは誰も書き込みませんものね」
女「お風呂に入る前に見た朝日も、お風呂上がりの出来事も載せたことはありますが、みんな私が早朝に温泉に行ってることは知りません。あなたと出会う前から言ってませんでした」
女「悲しいですね。ネットに載せたくないほどよき出来事は、ネットには載ってないなんて」
男「携帯電話も持ってない俺はその悲しさとは無縁だな」
女「現実の人には伝えたくないほどよき言葉もネットにはありますからね」
男「どんなだ」
女「現実の人には教えられません~」
男「のぼせた。もうあがる」ザバァ…
女「すねないでください~」

226 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/03/07(火) 21:35:39.83 ID:82N5yNGi0
女「あっ!おはようございます」
「…………」
女「(やば、普通のお婆ちゃんだった。珍しいな)」
女「(まだかな…男さん来ないなぁ)」
女「(なんか調べごとがどうのこうの言ってたような)」
女「(今日は忙しいのかな)」


227 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/03/07(火) 21:46:06.01 ID:82N5yNGi0
それから数日間、男さんは温泉に来ませんでした。
朝が駄目なら夜にと思って来てみても、男さんは現れません。
私と会う気がなくなったのかな、と気弱な考えが浮かぶこともありますが、そうではないでしょう。
私に会う気がないなら、はっきりないと言ってから去る人でしょう。冗談みたいな会話をした日を最後に、果たす気のない約束をする人には思えません。
あの人はあの人で、耐えるだけの自分を乗り越えて、突き放すことを覚えたのだと思います。熱い湯船からすぐあがるのは意識の表れの1つでしょう。
だとするのなら。
何か、よくないできごとがあったんでしょうか。
あるいは。
あの人自ら、よくない出来事に近づいているのでしょうか。

229 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/03/07(火) 21:55:24.28 ID:82N5yNGi0
女「いよいよ明日が花火ですね」
女「朝も夜もお風呂に入ってますよ。お風呂嫌いだった少女が1日に2回もお風呂。湯当たりしちゃいますよ」
女「あなたがこないままのぼせて気絶でもしたら大変なので、また一日中張り付くようなことはできませんからね」
女「置き手紙でも何でもいいからしてくれたらいいのに」
女「はぁー。それでは早朝。あ、次は夜か」ザバァ

230 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/03/07(火) 22:03:44.94 ID:82N5yNGi0
女「一応朝に行ってみたけどやっぱり来なかったな」
女「本当に、夜来るのかなぁ」
女「何を調べているんだろう。それは、私と会話するよりは大事なことなんだな」
女「はぁー。はぁー。ため息とともに幸せがどんどん減っていく」
女「女子大生の最後がこれでいいのかー」
女「みんなと遊園地行ったり、ボーリングしにいったり、若者の集う場所で遊ぶのが正しいんだろうな」
女「田舎にうちあがる花火と温泉だなんて、老後の楽しみに近いような」
女「そうだね。私は理想の老後を大学生のうちに経験しておけばいいんだった」
女「あわよくば、縁側に、寄り添える人がいるような」

231 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/03/07(火) 22:28:53.39 ID:82N5yNGi0
女「もういい時間だな。小さな星も見えてきた。温泉から見る夜空は素敵だな」
女「今日はお客さん誰も来ないな。あの向こう側の川沿いから打ち上げるなら、ここからだと綺麗に見えるだろうな。確かにいい穴場スポットだ。こんな特等席、見つけても友人にシェアはできないな」
女「舞台は揃っているのに、役者が足りないっていうのはこのことだな」
女「お星様と、お姫様と……」
私がさみしく独り言をつぶやいていると、王子様、ではなく花火様が夜空に現れました。
左目の視力が良かったと、ほとほと感じます。
右目の分の負荷がかかり疲れやすくはありましたが、視力は友達より高いままです。世を捨て夜中にテレビを観ていた時期の影響も少なかったようで何よりです。
女「はやく来てくれませんか」
女「感想や感動なんて一瞬で、花火よりも早く言葉は消えてしまうんですよ」
女「ささいなことでいいから話したいですよ」
女「花火と夏と温泉の組み合わせって、素直でいいってこととか。こたつに入りながら雪をみることや、真夏にプール入ることなんかと違って、暑い中、熱いところに入って、火を見ることに幸福を感じる」
女「磁石の同じ極同士がくっつきあうような、奇跡とでも呼ぶべきことなんですよ」
女「でもこういうとあなたはまた無言になりますかね。そして私はおちょくるんですよ」
女「本来正反対の私達が出会ったことは、S極とN極がくっつくように自然なことだったと思いますかと」
女「花火と磁石なんて関係ないのにな。こんな綺麗な光景を前に小難しい話をしたくなるのはあなたの影響かもしれませんね」
女「もういいですよ。後日あったら散々自慢してあげますから。綺麗な女子大生がうじゃうじゃ来たって言ってやりますから。それで喜ばれたら沈めますけどね」
女「はやくこないと、のぼせてあがっちゃいますよ」

232 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/03/07(火) 22:45:48.80 ID:82N5yNGi0
オレンジ色、茜色、緑色、ピンク色。
目を閉じて見るまぶたのうらのはなびより。
目を閉じて思い出す過去に観た花火より。
今、目を開けてみているこの美しき花火を。
過去の何物でも、誰とでもなく。
あなたと過去を共有するのでも、あなた以外の人と今を共有するのでもなく。
今、ここで、あなたと……
「……ひさしぶり」
もしも心に押し隠している目いっぱいの期待さえなかったら、今立った鳥肌の意味をちゃんと理解できていたかもしれない。
女「だれ?」
「…………」
男性の声だった。
聞き覚えのある声だった。
「ずっと探していた」
毎日思い続けていた人だった。
「ずっと探していたんだ」
忘れられない人だった。
悲しき人だった。
「今だから告げよう」
出会ってはいけない人だった。
私の人生を変えた人だった。
「君のお母さんを、愛していた」
手には、わりばしが握られていた。
男性は、8年前のあの夏の夜よりも、いきいきと輝いているように見えた。

233 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/03/07(火) 23:08:16.27 ID:82N5yNGi0
ドーン。
パチパチパチ。
ドーン。
花火が浴衣をすり抜けて、いきなり心臓に触れてきても私は不快に思わない。
あなたが無遠慮な会話をして、土足で私の心に踏み込んできても、やっぱり嫌いにはならないでしょう。
そんなあなたと出会えた今を祝って。
そんなあなたと出会うきっかけとなった過去を呪って。
ただひたすら、この時間が続けばいいのにと願うはずだった今日が。
ただひたすら、なければよかったのにと願った過去に、塗り潰されてしまいそうです。
次回「18,000÷50÷365=」
あなたも、泣かないで。
私の目を、見て。

234 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/03/07(火) 23:11:03.60 ID:vlUdgHKPo
幸せになってほしい

235 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/03/08(水) 09:02:55.69 ID:UAm0e5kao
男はよこい

236 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/03/09(木) 16:23:58.22 ID:Sfg0ddYyo
早く助けるんだよぉ!!

237 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/03/09(木) 21:01:45.96 ID:b6F5FBNz0
温泉の中でありながら、真っ黒いジャージを着たまま男は立っていた。
女「……ぁ……」
言葉が出ない。
思考がまとまらない。
一体、何をしにきたんだろうか。
謝罪をしにきたわけではないのだろう。
その手にもつわりばしの意味は何なのだろう。
「大きくなったね」
身動き1つまともにとれないのに、普段は決してできないことー相手の目を見ることーができた。
目は、合わなかった。
相手も私を見ているにも関わらずだ。
(人の目は、同時に相手の両目を見れない)
いつかの男さんの言葉を思い出す。
男性は、私の義眼をみていた。
裁判の過程で同じことをされたことがある。当時は眼帯をつけていたが、自分が奪ったものを確かめるかのようにじっと見つめてきたのだった。
男性は、今度は私の左目を見つめて、こう言った。
「君から花火を、うばいにきた」

238 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/03/09(木) 21:21:01.97 ID:b6F5FBNz0
「私もそうだった!!!!」
いきなり大声をあげ、湯の中に踏み込んできた。
水しぶきがあがって身体にかかった。
私はいつもの定位置から離れ、男さんが普段座っているところまで足を震わせながら進んだ。
「"あの時ああしていれば!!!"」
「このくだらない!!このくだらないセリフを!!何度吐いたことか!!!!」
男性は激昂していた。
「だったらせめてその一部くらい、君にも味あわせてやりたかったんだ!!!」
宙を見て叫んだ。
私のことなんか見ていないようだった。
「僕は臆病だ……」
昂ぶっていた男性は一転、突然萎縮しながらぼそぼそとつぶやきはじめた。
「人が怖い……人を見るのが怖い……人から見られるのが怖い」
「君に僕を見られるのが1番怖い……」
「君が現れるといつも僕は物陰に隠れ……君が視界からいなくなると君の姿を探した」
「太陽と月のような関係だった」
「君は僕には決して気づかなかった。それは仕方のないことだった。しかし罪深いことだった」
「君は僕を見るべきだった。そのことで、死ぬまで後悔してほしい。そうすれば、僕の過去が報われる」
宙を見るのをやめ、私を見てこう言った。
「お母さんにそう告げてくれ。そのために、その目を奪う必要があったということも」
これから行うことを告げられた。
目の前に迫った恐怖に絶望し、早く死なせてほしい、と願った。

239 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/03/09(木) 21:35:21.83 ID:b6F5FBNz0
ぎりぎりまで逃げなければ。
そう思って立とうとした途端、めまいがした。
のぼせてしまっていたんだろうか。
こんな大事な時にのぼせるなんて馬鹿みたいだなと思った。
頭のおかしい犯罪者と、タオルを巻いた女子大生が、混浴で対峙しているこの状況も傍目からしたら滑稽に観えるんだろうか。
右目を奪われて生きるのと、溺れて死ぬならどちらの方がマシだろう。
すくなくとも、数年前に遭ったあの激痛にはもう耐えられない。
もう一度叫ぼうとしたが、声が震えて消えてしまった。
足がもつれて転んでしまった。
足首を掴まれた。
私は串で神経を抜かれる魚のようにぶるぶると痙攣した。
こんなに温泉を、冷たく感じたことはなかった。

240 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/03/09(木) 21:59:16.27 ID:b6F5FBNz0
水が見える。
あぶくが見える。
私の手が見える。
この景色も、1秒後には奪われてしまうのだろうか。
一人の男の理不尽な暴力によって、私は尊厳を奪われてしまうのだろうか。
奇跡が起きてほしかった。
あの頃から何も変わらず、目を背けてばかりの私。
8年前と今の私、違うものは、一体。
恐怖でもがき続けている私は、疲労を感じはじめていた。
一人でばしゃばしゃと何十秒も暴れているだけで、足首をもう掴まれていないことにも気づいた。
何かがおかしい気がした。

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