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女「また混浴に来たんですか!!」

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Part1
1 : ◆uw4OnhNu4k :2017/01/24(火) 22:46:50.03 ID:ogoBvV2R0
女「性懲りもなく!!」
男「肩こりもなく」
女「肩が凝ってなかったら来ないでください!」
男「それはそのご自慢の胸をご自慢してるのか」
女「違います!私が自慢することなんてここの景色の美しさと温泉の効能の素晴らしさくらいです!」
男「それはな、温泉の効能じゃない。湯に乳が浮かんで一時的に重さから解放されてるだけだ。肩こりを直したいなら宇宙にでも行ってこい」
女「あなたが行ってください!」
男「はっはっは。腹が凝るほどでかくはないぞ。ふっはっはっは」
女「混浴で下ネタなんてマナー違反です!お先に失礼します!」ザバァ
男「すまんが既に俺が先にあがっている」ザバァ
女「じゃあ浸かります!」ザバァ
男「それではまた早朝。次もちゃんとタオルを巻いてくるんだぞ」
女「早く出てって下さい!!」

2 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/01/24(火) 23:10:38.62 ID:ogoBvV2R0
女「(世界に自分だけしかいないという慢心。それは、傍若無人とは異なる)」
女「(電車の中でお化粧をするのも、優先席に座りながら電話をするのも、子供の遊び場の近くでタバコを吸うのも、傍らに人無きが若き行為であるが、恥ずかしいことではない。少なくとも本人たちにとっては)」
女「(誰がいるとも思わなかった。その後悔こそが恥の元)」
女「(夜道を一人で歩いている時に歌を歌っていたら、すぐ後ろに人がいると気づいた時のように)」
女「(ノートに好きな二次元キャラの名前を書いていたら、友達がニヤニヤしながら見ていたことに気づいた時のように)」
女「(いや、大学4年生に至るまでの過去の思い出を全て遡っても、それ以上に……)」
女「ふぅー!!解放ー!!」
女「最高ー!!」
女「健康ー!!」
女「ちんすこう!!」
女「ここ沖縄じゃないけどね!!ははは!!!」
男「韻を踏んでたのか」
女「(早朝5時という時間に油断して、山の中にある天然の混浴で、全裸でくだらない独り言を叫んでしまったことに勝る恥ずかしい記憶はなかったであろう)」

3 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/01/24(火) 23:19:10.96 ID:ogoBvV2R0
女「…………」
男「…………」
女「…………」
男「…………」
女「……おはようございます」
男「おお、話しかけてくるとは。おはよう」
女「……今日もお早いですね」
男「そちらこそ」
女「まだ5時ですよ?」
男「真冬なら大事件の寒さだな」
女「7月ですが、普通誰もこんな時間に混浴に来ませんよ」
男「日本で二人くらいか」
女「そうかもしれないですね」
男「そりゃあ油断もするわな」
女「……何の話でしょうか」
男「いやいや、案ずるな。そちらの話だ」
女「やっぱり私の話じゃないですか!」

4 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/01/24(火) 23:36:54.49 ID:ogoBvV2R0
女「いたならちゃんとアピールしてくれればよかったのに!!」
男「5時からここに来る女がいるとは思わなかったからな」
女「風呂なしアパートだからしょうがないんです」
女「ほら、この山の麓にある温泉、この前の地震で片方の温泉が使えなくなっちゃったじゃないですか」
女「普段男性客ばかり来る場所だから、修理が終わるまで、ほとんどの時間を男湯しか解放しないんですよ?」
女「男女平等だなんだと言うつもりはありませんが、この付近の風呂なしアパートに住んでる女性は時間合わせるの大変なんですよ」
男「男女は平等ではないだろう。男湯と女湯はその象徴だ。であればこそ、混浴はその矛盾を超越した究極の存在だと言える」
女「いきなり何の主張ですか」
女「あっちの温泉だって早朝も開いてますし、行きやすいからあっちに行けばいいじゃないですか」
男「俺はあそこの温泉には入れなくてな」
女「何言ってるんですか。男湯はあいてますって」
男「…………」
女「あの、いつも長めのタオルで下半身すっぽり隠してますよね」
女「も、もしかして……」
男「触って確かめてみたいかしら」
女「え、あ、す、すいません!てっきりあの!だ、大丈夫ですので」
男「安心しろ。ちゃんと付いてる」
女「ちょっと!!警戒レベル引き上がりましたよ!!!」

5 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/01/24(火) 23:44:38.84 ID:ogoBvV2R0
男「こんないかつい女もいないだろう」
女「人生の途中で性を変えたのかと思ったんですよ」
男「キャッチコピーのように言われたこともある。ごつい、でかい、こわい」
女「確かにそうですね」
男「俺もそう思う」
女「中身はどうですか?」
男「さぁな」
女「意外と乙女だったりして」
男「冷徹な怪物だよ」
女「小心者で、怖いものだらけみたいな裏設定は?」
男「すまんがもうあがる」
女「すいません、怒っちゃいました?」
男「のぼせやすいんだ」
女「恋愛にも?」
男「乙女にしたてようとするな」


8 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/01/24(火) 23:59:47.89 ID:ogoBvV2R0
女「おはようございます。今日は私より早いですね」
男「性転換、か」
女「え、なんですかいきなり。まだ5時ですよ。いや、夜でも驚きますよ」
男「俺が本気で女になろうと努力をしたら、誰も俺が俺だとはわからなくなるだろうな」
女「まぁそうでしょうね」
男「女湯にも入れるようになる。楽しめるかはわからんが」
女「そうですね」
男「女性専用車両にも乗れる」
女「そうですね。私は極力乗りませんが」
男「トイレはなんとなく真ん中の多目的トイレを使ってしまいそうだ」
女「あの、何の話ですか?」
男「男女は平等にはなりえないという話だ」
女「朝からテーマ重すぎません?」

9 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/01/25(水) 00:05:03.74 ID:5nF5BaWm0
全部書きためてからまとめて投稿しようと思っていたのですが、つい始めてしまいました。
終わりまでのあらすじは決まっていますが、1日5投稿くらいのペースになりそうです。
気長に読んで下さるとありがたいです。
今日はおやすみなさいませ。

10 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/01/25(水) 00:47:35.30 ID:Qp5GwkfNO
おつ

11 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/01/25(水) 00:55:57.87 ID:ukP0pftr0
おつ
好きです

12 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/01/25(水) 01:00:44.22 ID:FBA39PTxo
また楽しみにしてるで

13 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/01/25(水) 01:24:53.57 ID:qU0zTCYYo
おつ

14 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/01/25(水) 20:13:59.88 ID:5nF5BaWm0
男「昔から不思議に思っていた。どうしてホームレスは男ばかりなのだろうと」
男「概して男のほうが稼ぐ意欲があり、女のほうが稼ぐ意欲がないとするならば、どうして貧乏の最たるホームレスに女はいないのか」
女「それこのご時世に絶対SNSに書き込んじゃだめですよ。住所と小学校の頃に好きだった女の子を特定されてお祭り騒ぎになっちゃいますよ」
男「どんな調査能力だ。いずれにせよ携帯電話もパソコンも持ってないから心配は無用だ」
女「ええっ!?もってないんですか!?」
女「ええ!!?ええ!!?」
女「えぇーーー!!!?」
男「そんなに驚くことか」
女「綺麗な景色とかおいしい食べ物とか珍しい出来事があったらどうするんですか!どうやって周囲にシェアするんですか!!」
男「現代っ子だな。それでだ、俺が考えるに…」
女「俺ってばついつい街の中にある銭湯ではなく、山の中の温泉にわざわざ足を運んできてしまうんだよなぁ。ああー!5時は誰もいなくて最高だな!まぁ、こんな時間にこんな場所に来るようなもの好きはそうそういないか、かっこわら」
女「ってできないんですよ!!」
男「俺は今日も手を大きく広げて山の中で自由を叫ぶ女に遭遇してしまった。これが証拠の写真です」
女「今日はしてないです!盗撮は犯罪です!」
男「話を戻すとだな、おそらく」
女「うぅ……私の綺麗なお尻は二次元の男の子にも見せたことがないというのに……」
男「ろくに見てないと言っただろ。すぐ目をそらしたさ」
女「ほんとですかねぇ。まぁ前髪も長いですしね。ごついのに。私みたい」
男「ごつい男が坊主じゃないといけない理由でもあるのか」
女「それで、パンケーキがなんでしたっけ?」
男「全く話を聞いてないなこいつ……」

15 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/01/25(水) 20:25:43.41 ID:5nF5BaWm0
女「冗談ですよ。女性は男のそばにいるだけで価値があるから、男が養ってくれるんじゃないでしょうか」
男「内容はありきたりだが、凄い言い方だな。まぁ、俺も似たようなことを考えていたが。その価値観は周囲の男友達にシェアしないでおくんだな」
女「女子大ですから大丈夫ですー。心配ご無用ですー。SNSで女性専用車両と女子大アップロードしますー」
男「誰が共感するんだ」
女「そういえば、男子大って存在しないですよね」
男「行きたいやつがいないんだろう」
女「女子大は楽でいいんですけどね。湯上がりの軽い化粧でも気にせずいけますから」
男「そうか」
女「ここにも男はいるんだがな……ってやきもち気味に意味深につぶやかないんですか?」
男「わるいがのぼせた。先にあがる」
女「はい、いってらっしゃいー」

16 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/01/25(水) 20:29:20.07 ID:5nF5BaWm0
男「…………」
女「…………」
男「…………」
女「……おほん」
男「…………」
女「……ごほんごほん」
男「…………」
女「……ぶぇーっくしょい!!」
男「風邪引いてるならあがったらどうだ」
女「あっ、おはようございます。今日もいい朝ですね」
男「ああ」
女「…………」
男「…………」
女「ノリわるっ」
男「化粧の話か?」
女「化粧はお風呂上がりにします。先にあがるあなたは知らないでしょうけど」

17 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/01/25(水) 21:00:13.19 ID:5nF5BaWm0
男「…………」
女「もしもーし」
男「何だ」
女「ニヒルを気取ってるこの俺が、昨日は喋り過ぎちまったな、とか思ってるでしょ」
男「よくわかったな」
女「小学生の頃に好きだった女の子の名前、しおりちゃんっていうんでしょ」
男「違うな」
女「じゃあなんですか?」
男「内緒だ」
女「別にいいじゃないですか」
男「小学生の頃の俺に怒られてしまう」
女「今日は何について喋りますか?」
男「本当おしゃべりが好きだな」
女「最近誰とも喋ってなくて人恋しいんです」
男「大学の友達はどうした」
女「みんなほとんど単位を取り終わっているので来ないんですよ」
男「お前は行ってるのか」
女「別にさぼってたとかじゃないですよ。留学をして4年で卒業するという方法が私の環境では半年の自主休講という形でしかなくてですね。凄いでしょ」
女「日本に帰って来た私は、また異国の地を愛する心を求めて、実家には帰らずにこの田舎にあるおばあちゃんちに来たんです」
男「そうか」
女「私、今は新幹線で大学に通ってるんですよ。親のおかげです」
男「医者か何かか」
女「医者の外科です」
男「そうか」
女「この話題退屈ですか?」
男「大学に通ったことがないからな。あまりイメージがわかないんだ」
女「そうだったんですか」
男「高校も中退してるから、中卒だ」
女「そうなんですか……」
男「反応に困るか?」
女「いえ、そういうわけでは…」
男「気にするな。パンケーキの話でもしよう」
女「本当ですか!?」
男「嘘だ」
女「…………」
男「不機嫌な表情に戻ったな」

18 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/01/25(水) 21:37:22.51 ID:5nF5BaWm0
女「私と話すの嫌ですか?」
男「誰に対してもこんな感じだ」
女「誰に対するものと一緒ですか」
男「そうかもしれないな」
女「ふーん」
女「あなたはどうしてこんな早朝にこの温泉までくるんです?」
女「この時間でも、街中の例の銭湯は男湯を解放してるじゃないですか。女性は夜の短い指定時間に入っていますけど」
男「理由は3つくらいあるがどれも退屈な理由だ」
女「人混みが苦手とか」
男「それは1つの理由だな。人が苦手だ」
女「私も苦手です」
男「その割にはよく喋りかけてくるな」
女「ふふん」
男「お前こそどうしてここまで来る。例の銭湯で夜に入ればいいだろう」

19 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/01/25(水) 21:42:48.25 ID:5nF5BaWm0
女「まぁあれですよ。朝に生きるのが1番だって思ったんですよ」
男「なんだそれは。夜は死んでるみたいな言い方だな」
女「あの地震が起きる前は、例の銭湯に早起きして浸かりにいっていたんです。ここは修理が終わるまでのしのぎ場です」
男「旅の恥はかき捨て、みたいなものだな。でなければ、痴態を見られた男に話しかけられるわけもないか」
女「やっぱり見てたんじゃないですか!!」
男「身体はじろじろ見ていない。セリフは鮮明に覚えているがな」
女「くうぅう……」

20 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/01/25(水) 22:03:56.50 ID:5nF5BaWm0
女「お風呂は朝に入ろうって決めたんです。今までの生活を全て逆さまにすれば、この人生も反対になるんじゃないかって」
女「時計って円の形をしているので、回転してもわかりにくいんですよ。人生を後ろ倒しにすると、おやつの時間が4時になって、5時になって」
女「起床時間もだんだん7時、8時、9時となって」
女「気づいたら6時が18時になっていたり。人が起きる時間に私が寝たり、誰かが朝食を取る時間に私は寝る前のお風呂に入っていたり」
女「でも、度重なる遅刻が重なると、面白いことに、誰よりも早い人間になるんですよ」
女「いつの間にか、みんなが起きる時間より1時間早く起きて、私のおやつの時間は14時になっていて」
女「私の人生取り返しがつくかもしれないと思った時に、取り返してやろうと思ったんです」
女「回りくどく話しすぎましたね」
女「まぁ、なんというか、私、中学時代から一時期……」
男「わるい、のぼせた。今日も先にあがる」ザバァ
女「……あの」
男「どうした」
女「今私が何か打ち明けようとしてた雰囲気感じ取れました?」
男「医者の娘のお嬢さんの人生の喜怒哀楽の結末が聞けるんだなと」
女「なんですかその言い方」
男「お前の話はそこまで退屈ではない。こんな時間に混浴に来てるのはあんたと俺くらいで、たしかに一見気もあいそうに見える」
男「だけどな、そっちの言葉を借りると、お互い異なる時間を生きている」
女「どういうことですか?」
男「俺は今から帰って寝るんだよ。俺の時計もまた他の人間とずれている」
女「時間差は、ええと……」
男「寝るのが6時間遅い。海外に遊びに行ってても時差はすぐには浮かばないのか」
女「今日はなんだか冷たいですね」
男「熱いだろ。だから俺はのぼせた。じゃあな」

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