女騎士「寝ていろ。勇者」
Part2
32 :以下、?ちゃんねるからVIPがお送りします:2019/02/19(火) 01:39:42.676 ID:N8Qe0WAA0
ガチャ。
オーク「ダメです隊長。見つからねぇ」
捜索班兵士「なんの前触れもなく人が消えるなんて、おかしいですよ」
捜索班兵士「だーっ、疲れた……」
女騎士「……ご苦労。別の班を引き続き捜索にあてる」
バタンッ。
非番兵「ーーた、隊長っ」
女騎士「どうした」
33 :以下、?ちゃんねるからVIPがお送りします:2019/02/19(火) 01:41:25.867 ID:N8Qe0WAA0
非番兵「変なんです!」
女騎士「……お前はいつも要領を得んな。なにがだ?」
非番兵「停泊中のブレアーゼルですよっ。あれの乗組員が、みんな艦内に引っ込んじまったんです!」
勇者「……僕たちが乗る予定の? まさか出航が早まったとかーー」
女騎士「いや、それは無い」
非番兵「でも瓦礫の片付けを手伝ってくれてた連中も、買い物してた連中もみんなですよ!? あんなに賑わってたのに!」
女騎士「……島を出歩くなと命令があったんだろう」
勇者「なんでそんな……」
女騎士「……行方不明者2名に、ブレアーゼル乗員の艦内退避……。充分だな。
これより、我が連隊は最高度の警戒態勢をとる」
『!』
女騎士「全員武器を携帯。非番の者も招集しろ」
『り、了解っ』
34 :以下、?ちゃんねるからVIPがお送りします:2019/02/19(火) 01:43:19.809 ID:N8Qe0WAA0
かちゃ。
名誉連隊長「はっはっはっ。ずいぶん殺伐としとるの」
女騎士「……閣下」
名誉連隊長「少佐、面白いモノが見られるぞ。付いて来い」
ーー海岸。
女騎士「……一体なんでしょうか? 今は非常事態でーー」
名誉連隊長「まあ慌てるな」
マリア「なんで私まで……」
勇者「僕も、一体なぜ……あ、陽が沈む」
35 :以下、?ちゃんねるからVIPがお送りします:2019/02/19(火) 01:45:10.854 ID:N8Qe0WAA0
名誉連隊長「ここじゃ。少佐ーーあそこ、あの島、名前なんと言ったかの?」
女騎士「……アルビオン領、ビューカム島。この島に一番近い島です。それが何か?」
名誉連隊長「まあ見とれ。島の真ん中あたりじゃ」
チカッ。
勇者「ん? なにか光った……」
チカチカッーーチカッ。
女騎士「灯台? いや、そんなもの無かったはずだ。いったいーー」
チカッーーチカッ、チカッ。
女騎士「っ! ま、まさか……」
名誉連隊長「気がついたか」
マリア「回光通信……」
36 :以下、?ちゃんねるからVIPがお送りします:2019/02/19(火) 01:47:03.721 ID:N8Qe0WAA0
チカッ。
名誉連隊長「光のモールス信号じゃな」
勇者「?」
チカチカッ。チカッーーチカッ。チカッ、チカチカッ。
女騎士「カ、カエル、カエルブタイーーカエル部隊!」
勇者「かえる?」
マリア「しっ、静かに」
チカッ。チカッ。
女騎士「コ、コンヤーー今夜」
チカチカッ、チカッーーチカッ、チカッ。
女騎士「キ、キヲーー気をつけろ」
マリア「カエル部隊、今夜、気をつけろ」
名誉連隊長「うむ」
37 :以下、?ちゃんねるからVIPがお送りします:2019/02/19(火) 01:49:06.542 ID:N8Qe0WAA0
女騎士「なんて事だ……」
勇者「ちょ、一体なんなんですっ!?」
マリア「潜水と上陸作戦を得意とする部隊が、今夜島を強襲すると言ってるんですよ」
(……相手の動きが予想より早い。島にいるうちに仕掛けてくるつもり?)
勇者「? よ、よく分からないです。敵なんですか?」
女騎士「同じガリア軍だ」
勇者「えぇ……そんな」
名誉連隊長「コマンドー・グルヌイユか。蓄積された水路学や特殊作戦のノウハウを駆使すれば、この島など簡単に強襲できる連中じゃな」
勇者「な、なんでっ? 仲間なんでしょう!?」
女騎士「総督府の衛兵たちも、名目上は友軍だった」
勇者「っ……。それは……」
38 :以下、?ちゃんねるからVIPがお送りします:2019/02/19(火) 01:50:31.127 ID:N8Qe0WAA0
女騎士「気にするな。あいつらは自分たちの悪事を分かってやっていた。だが今回は恐らく違う」
名誉連隊長「士気と練度の高い連中じゃ。悪事に加担するような部隊では無い。……恐らく本土の癌どもが、おぬしらを悪者に仕立て上げとるんじゃろう」
女騎士「ええ。しかし、黙ってやられるわけにもいきません」
名誉連隊長「うーむ」
マリア「……。まあとにかく、回光通信が伝わった事を知らせましょう。ーー少佐、剣を」
女騎士「ああ」スラリ
勇者(なるほど。剣を魔力で光らせるんだ)
39 :以下、?ちゃんねるからVIPがお送りします:2019/02/19(火) 01:51:52.508 ID:N8Qe0WAA0
女騎士「あ、案外難しいぞ。これ」
チカッ チカッチカッ チカ。(感謝しる)
ビューカム島 ブフッ
チカチカッ、チカッーーチカッ。
マリア「コ、コウ、ウンヲーー幸運を。か……」
名誉連隊長「さすが、侮れんのう。アルビオン。情報戦では常に上を行かれてしまう」
マリア「……多分、信じていいと思いますよ」
女騎士(……遠くで誰かに笑われた気がする)
40 :以下、?ちゃんねるからVIPがお送りします:2019/02/19(火) 01:53:38.756 ID:N8Qe0WAA0
ーー連隊駐屯地。食堂。
命令連隊長「ーー以上が、今夜島に来るらしい、お客さんたちじゃ」
連隊兵士たち『……』
兵士「……同士討ちになるってことですよね。悪くもない奴らと」
女騎士「このままいけば、そういう事になる」
一等兵「相手は精鋭ーーってか、それ以上の連中でしょう? 敵うわけがない」
女騎士「そんなことはない。適切な指揮のもと、全力で戦えば勝機はある。向こうは一芸に長けてはいるが、兵站は無いに等しい。長引かせれば勝ちだ。
ーーが、そんな不毛なことをしても仕方がない」
名誉連隊長「味方じゃからな」
42 :以下、?ちゃんねるからVIPがお送りします:2019/02/19(火) 01:55:31.473 ID:N8Qe0WAA0
兵士「ど、どうするんですか?」
名誉連隊長「儂が一肌脱ごう」
兵士「め、名誉連隊長殿が?」
名誉連隊長「そうじゃ」
一等兵「で、でももう偉くないし……」
兵士「なぁ?」
女騎士「馬鹿者。予備役大将閣下は今でも偉いわ」
名誉連隊長「はっはっは。いやーいい島じゃ。本土じゃこうはいかん。やっぱり儂は名誉連隊長くらいがちょうどいいわい」
兵士「で、で、どう一肌脱ぐんです?」
女騎士「……それなんだが、少し待て」
名誉連隊長「そんな不安な顔をするでない。はっはっは」
43 :以下、?ちゃんねるからVIPがお送りします:2019/02/19(火) 01:57:21.501 ID:N8Qe0WAA0
ーー連隊駐屯地。士官用宿舎。
勇者「……なんなんです、これ」
マリア「んー。まあこれくらいなら教えていいか。無線機」
勇者「……。とだけ言われましても……」
かちゃ。
女騎士「どうだ、準備できたか?」
マリア「ええ。ま、準備ってほどでもないですよ。もう使えます」
44 :以下、?ちゃんねるからVIPがお送りします:2019/02/19(火) 01:59:08.553 ID:N8Qe0WAA0
ーーブレアーゼル艦橋。
艦長「……。私には、あの連隊長が祖国を裏切るような人間にはどうしても思えん」
副艦長「ですなぁ。先日の会食の際、私など彼女に惚れてしまいましたよ」
艦長「流血がなければいいが……」
副艦長「歯痒いですな。我々は待機命令が出ているだけですから」
通信士「ーーっ、艦長、通信です。何者かが緊急用周波数でこの艦を呼んでいます」
副艦長「……上陸部隊か?」
通信士「そ、それが違うようでして」
艦長「私が出る。ーーこちらガリア海軍ブレアーゼル」
『ーーああ、ブレアーゼル、こちらガリア陸軍サン・ヴェルニー島防衛隊、ヴェルニー連隊連隊長』
艦長「! ……連隊長、無線機などどこで?」
女騎士『その声、艦長ですか』
艦長「ああ。……それにしても驚いた」
女騎士『詳しくは話せないが、私は本国からこうした物を扱う資格を与えられています』
艦長「……。そんな気がしていた。きっと、私などより多くの機密に触れている人間なのだと」
45 :以下、?ちゃんねるからVIPがお送りします:2019/02/19(火) 02:00:55.661 ID:N8Qe0WAA0
ーー連隊駐屯地。士官用宿舎。
女騎士「……ええ。だが今回は厄介な相手を敵に回したようです。一応弁解しますが、我々は潔白だ」
艦長『信じよう』
女騎士「ありがとうございます。……乗組員が退避したのは、命令あってのことですね?」
艦長『……ああ。そうだ』
女騎士「重大な背任行為をした連隊幹部を捕縛するため、部隊を上陸させる。巻き込まれないよう乗組員を退避させろ。ーー大体そんな内容ですか?」
艦長『さすがだな。だが分かって欲しい。……個人的には理解を示せても、どうすることも出来ないのだ。
家族である乗組員を悪戯に危険に晒すわけにはいかない』
女騎士「ええ。もちろんです。しかし連隊も家族だ」
艦長『……。海軍だが、それは理解する。連隊は他の編成とは違って、軍全体で通し番号の部隊だ。解散すれば欠番になる。
"兵士は軍ではなく、連隊に属する"とはよく言ったものだな』
46 :以下、?ちゃんねるからVIPがお送りします:2019/02/19(火) 02:03:07.693 ID:N8Qe0WAA0
女騎士「はい。それにこの連隊の兵士はみな島の人間です。そういう意味でも、ヴェルニー連隊は特別な家族と言えます。
……もし相手が外敵なら、私は兵を死地へ送る。私も出向くでしょう。だが、友軍同士の茶番劇で死なせるつもりは一切ない」
艦長『……なら答えは1つのはずだ。聡明な貴女なら分かるだろう。……上陸部隊に投降したまえ。
彼らは私も詳細を知らない精鋭部隊だ。勝ち目はない。
だが、だからこそ、悪党の私兵に成り下がるような連中では無いはずだ。恐らく、誤った情報を与えられ、今回の作戦に従事している』
女騎士「ええ。私もそう踏んでいます」
艦長『ならば投降後に活路を見出すのが賢明だろう。彼らは君を丁重に扱うはずだ。そのあいだに、君の仲間が動いてくれるのではないかね?』
女騎士「それを期待しています。ーーそこで、1つお願いがあるのですが」
艦長『聞こう』
女騎士「一切の誤解なく投降するため、彼らと連絡が取りたいのです。
……艦に専用の周波数が知らされていませんか?」
47 :以下、?ちゃんねるからVIPがお送りします:2019/02/19(火) 02:05:03.497 ID:N8Qe0WAA0
ーーブレアーゼル艦橋
艦長「……」
副艦長「……。艦長、残念ですが、無線を切った方がよいかと。これ以上は……」
艦長「……。ああ、知らされているよ。連隊長」
副艦長「っ、艦長……」
女騎士『……お答え下さり感謝します。
無理は承知で頼みたいのですが、ブレアーゼルで彼らと連絡を取っていただきたい。
彼らに伝えて欲しいのです。
こちらが投降する意思があること。
無線を使ってその段取りを話したいこと。
シャルル・フランシス・カルポー陸軍予備役大将が、我々の潔白と、投降の意思の保証人であること。
以上をどうか』
艦長「……わかった。引き受けよう」
48 :以下、?ちゃんねるからVIPがお送りします:2019/02/19(火) 02:06:15.394 ID:N8Qe0WAA0
女騎士『ありがとうございます。ご迷惑をおかけして申し訳ありません』
艦長「いいさ。役に立てて光栄だ」
女騎士『……このご恩は忘れません』
ーープツ。
艦長「……。すまない副艦長。だが、私はこういう男だ」
副艦長「知っていました。家族ですから」
49 :以下、?ちゃんねるからVIPがお送りします:2019/02/19(火) 02:09:40.140 ID:N8Qe0WAA0
ーー連隊駐屯地、士官用宿舎。
勇者「……投降」
女騎士「それしか無い」
勇者「……一緒に行けますか?」
女騎士「分からない。だが期待はしないでくれ。すまない」
勇者「……いえ」
マリア「離れ離れになったら、私がガリアまで必ず送ります」
女騎士「ああ。頼む」
ザザッ。こーーザッーーらーーザザッ。
マリア「っ、少佐」
女騎士「ああ」
名誉連隊長「来たの」
勇者「……」
50 :以下、?ちゃんねるからVIPがお送りします:2019/02/19(火) 02:10:51.031 ID:N8Qe0WAA0
『こーーら海軍ーード、ーーヌイユ』
ザザー、ズッ、プチ。
『ーー申し出は聞いたよ。敬意を表する。連隊長』
女騎士「受けていただけますか」
『我々とて友軍だ。無益な流血は避けたい』
女騎士「理解に感謝します」
『ところで、そこにカルポー大将閣下はおられるかね?』
名誉連隊長「おるよ」
『ああ、お話できて光栄です、閣下。閣下が保証人なら我々も安心できる』
女騎士「それで、具体的にはどのように?」
51 :以下、?ちゃんねるからVIPがお送りします:2019/02/19(火) 02:12:21.956 ID:N8Qe0WAA0
『まず連隊駐屯地を人払いしてほしい。投降の意思を疑うわけではないが、我々は臆病でね。それに、人目についてはいけないモノも持っている。ーー無線機を持っている立場なら分かるだろう?』
女騎士「ええ」
『結構。駐屯地の東側に小さな多目的ホールがあるはずだ。そこに連隊長、勇者、立会人としてカルポー大将閣下。その3人だけで待っていてくれ。ーー1時間後でどうかな』
女騎士「……勇者。彼もですか?」
『我々の手で、本国まで送らせて貰う。英雄の凱旋を手伝えて嬉しいよ』
女騎士「……わかりました。すべてそのように。ーーそれと、情報収集のために拘束した島民は、いつ解放してくれますか?」
『すべて順調にいった、そのあとに』
ーープツ。
52 :以下、?ちゃんねるからVIPがお送りします:2019/02/19(火) 02:14:17.423 ID:N8Qe0WAA0
『…………』
マリア「やっぱり、彼らが拘束していたんですね」
名誉連隊長「部下にしておく分には有能そうな奴だったの。個人的な付き合いは勘弁じゃが」
マリア「人間味のない声で不気味」
勇者「……嫌な感じでした。でも、僕も連れて行ってくれるんですね」
名誉連隊長「……うーむ」
女騎士「……言っても仕方ない。さ、1時間で準備しなければ」
53 :以下、?ちゃんねるからVIPがお送りします:2019/02/19(火) 02:15:25.419 ID:N8Qe0WAA0
ーー40分後。連隊駐屯地、正門前。
兵士「自分たちで最後です……」
主計課エルフ「隊長……こんな別れ方って、やっぱり納得出来ません……」
女騎士「またきっと戻ってくる」
兵士「約束ですよぉ……」
女騎士「ああ。ーー念を押すが、このことは夜のあいだは島民には秘密にな。
明日の朝になったら、私と勇者は軍の事情で、夜のうちに島を離れたと伝えてくれ」
主計課エルフ「はい。……ぐすっ」
女騎士「泣くな。ほら行け。……またな」
54 :以下、?ちゃんねるからVIPがお送りします:2019/02/19(火) 02:18:31.053 ID:N8Qe0WAA0
ーー練兵場。倉庫の陰。
ゴソゴソ。
オーク“……はぁ、なーにやってんだろうな」
女騎士「ーー本当にな」
オーク「っ! た、隊長……」
女騎士「あの2人で最後のはずだぞ」
オーク「俺は残ります! 何かあったらどうするんですっ?」
女騎士「大丈夫だ。お前も行け、軍曹」
オーク「で、出来ませんっ! ここで隠れてますっ。何かあったらすぐ駆けつけますから!」
女騎士「ありがとう。だがいいんだ」
オーク「でっ、でもっーー」
女騎士「ずっと言いたかったことがある」
オーク「……なんです?」
女騎士「この連隊の連中は、みんな軍人失格だ」
ガチャ。
オーク「ダメです隊長。見つからねぇ」
捜索班兵士「なんの前触れもなく人が消えるなんて、おかしいですよ」
捜索班兵士「だーっ、疲れた……」
女騎士「……ご苦労。別の班を引き続き捜索にあてる」
バタンッ。
非番兵「ーーた、隊長っ」
女騎士「どうした」
33 :以下、?ちゃんねるからVIPがお送りします:2019/02/19(火) 01:41:25.867 ID:N8Qe0WAA0
非番兵「変なんです!」
女騎士「……お前はいつも要領を得んな。なにがだ?」
非番兵「停泊中のブレアーゼルですよっ。あれの乗組員が、みんな艦内に引っ込んじまったんです!」
勇者「……僕たちが乗る予定の? まさか出航が早まったとかーー」
女騎士「いや、それは無い」
非番兵「でも瓦礫の片付けを手伝ってくれてた連中も、買い物してた連中もみんなですよ!? あんなに賑わってたのに!」
女騎士「……島を出歩くなと命令があったんだろう」
勇者「なんでそんな……」
女騎士「……行方不明者2名に、ブレアーゼル乗員の艦内退避……。充分だな。
これより、我が連隊は最高度の警戒態勢をとる」
『!』
女騎士「全員武器を携帯。非番の者も招集しろ」
『り、了解っ』
34 :以下、?ちゃんねるからVIPがお送りします:2019/02/19(火) 01:43:19.809 ID:N8Qe0WAA0
かちゃ。
名誉連隊長「はっはっはっ。ずいぶん殺伐としとるの」
女騎士「……閣下」
名誉連隊長「少佐、面白いモノが見られるぞ。付いて来い」
ーー海岸。
女騎士「……一体なんでしょうか? 今は非常事態でーー」
名誉連隊長「まあ慌てるな」
マリア「なんで私まで……」
勇者「僕も、一体なぜ……あ、陽が沈む」
35 :以下、?ちゃんねるからVIPがお送りします:2019/02/19(火) 01:45:10.854 ID:N8Qe0WAA0
名誉連隊長「ここじゃ。少佐ーーあそこ、あの島、名前なんと言ったかの?」
女騎士「……アルビオン領、ビューカム島。この島に一番近い島です。それが何か?」
名誉連隊長「まあ見とれ。島の真ん中あたりじゃ」
チカッ。
勇者「ん? なにか光った……」
チカチカッーーチカッ。
女騎士「灯台? いや、そんなもの無かったはずだ。いったいーー」
チカッーーチカッ、チカッ。
女騎士「っ! ま、まさか……」
名誉連隊長「気がついたか」
マリア「回光通信……」
36 :以下、?ちゃんねるからVIPがお送りします:2019/02/19(火) 01:47:03.721 ID:N8Qe0WAA0
チカッ。
名誉連隊長「光のモールス信号じゃな」
勇者「?」
チカチカッ。チカッーーチカッ。チカッ、チカチカッ。
女騎士「カ、カエル、カエルブタイーーカエル部隊!」
勇者「かえる?」
マリア「しっ、静かに」
チカッ。チカッ。
女騎士「コ、コンヤーー今夜」
チカチカッ、チカッーーチカッ、チカッ。
女騎士「キ、キヲーー気をつけろ」
マリア「カエル部隊、今夜、気をつけろ」
名誉連隊長「うむ」
女騎士「なんて事だ……」
勇者「ちょ、一体なんなんですっ!?」
マリア「潜水と上陸作戦を得意とする部隊が、今夜島を強襲すると言ってるんですよ」
(……相手の動きが予想より早い。島にいるうちに仕掛けてくるつもり?)
勇者「? よ、よく分からないです。敵なんですか?」
女騎士「同じガリア軍だ」
勇者「えぇ……そんな」
名誉連隊長「コマンドー・グルヌイユか。蓄積された水路学や特殊作戦のノウハウを駆使すれば、この島など簡単に強襲できる連中じゃな」
勇者「な、なんでっ? 仲間なんでしょう!?」
女騎士「総督府の衛兵たちも、名目上は友軍だった」
勇者「っ……。それは……」
38 :以下、?ちゃんねるからVIPがお送りします:2019/02/19(火) 01:50:31.127 ID:N8Qe0WAA0
女騎士「気にするな。あいつらは自分たちの悪事を分かってやっていた。だが今回は恐らく違う」
名誉連隊長「士気と練度の高い連中じゃ。悪事に加担するような部隊では無い。……恐らく本土の癌どもが、おぬしらを悪者に仕立て上げとるんじゃろう」
女騎士「ええ。しかし、黙ってやられるわけにもいきません」
名誉連隊長「うーむ」
マリア「……。まあとにかく、回光通信が伝わった事を知らせましょう。ーー少佐、剣を」
女騎士「ああ」スラリ
勇者(なるほど。剣を魔力で光らせるんだ)
39 :以下、?ちゃんねるからVIPがお送りします:2019/02/19(火) 01:51:52.508 ID:N8Qe0WAA0
女騎士「あ、案外難しいぞ。これ」
チカッ チカッチカッ チカ。(感謝しる)
ビューカム島 ブフッ
チカチカッ、チカッーーチカッ。
マリア「コ、コウ、ウンヲーー幸運を。か……」
名誉連隊長「さすが、侮れんのう。アルビオン。情報戦では常に上を行かれてしまう」
マリア「……多分、信じていいと思いますよ」
女騎士(……遠くで誰かに笑われた気がする)
40 :以下、?ちゃんねるからVIPがお送りします:2019/02/19(火) 01:53:38.756 ID:N8Qe0WAA0
ーー連隊駐屯地。食堂。
命令連隊長「ーー以上が、今夜島に来るらしい、お客さんたちじゃ」
連隊兵士たち『……』
兵士「……同士討ちになるってことですよね。悪くもない奴らと」
女騎士「このままいけば、そういう事になる」
一等兵「相手は精鋭ーーってか、それ以上の連中でしょう? 敵うわけがない」
女騎士「そんなことはない。適切な指揮のもと、全力で戦えば勝機はある。向こうは一芸に長けてはいるが、兵站は無いに等しい。長引かせれば勝ちだ。
ーーが、そんな不毛なことをしても仕方がない」
名誉連隊長「味方じゃからな」
42 :以下、?ちゃんねるからVIPがお送りします:2019/02/19(火) 01:55:31.473 ID:N8Qe0WAA0
兵士「ど、どうするんですか?」
名誉連隊長「儂が一肌脱ごう」
兵士「め、名誉連隊長殿が?」
名誉連隊長「そうじゃ」
一等兵「で、でももう偉くないし……」
兵士「なぁ?」
女騎士「馬鹿者。予備役大将閣下は今でも偉いわ」
名誉連隊長「はっはっは。いやーいい島じゃ。本土じゃこうはいかん。やっぱり儂は名誉連隊長くらいがちょうどいいわい」
兵士「で、で、どう一肌脱ぐんです?」
女騎士「……それなんだが、少し待て」
名誉連隊長「そんな不安な顔をするでない。はっはっは」
43 :以下、?ちゃんねるからVIPがお送りします:2019/02/19(火) 01:57:21.501 ID:N8Qe0WAA0
ーー連隊駐屯地。士官用宿舎。
勇者「……なんなんです、これ」
マリア「んー。まあこれくらいなら教えていいか。無線機」
勇者「……。とだけ言われましても……」
かちゃ。
女騎士「どうだ、準備できたか?」
マリア「ええ。ま、準備ってほどでもないですよ。もう使えます」
44 :以下、?ちゃんねるからVIPがお送りします:2019/02/19(火) 01:59:08.553 ID:N8Qe0WAA0
ーーブレアーゼル艦橋。
艦長「……。私には、あの連隊長が祖国を裏切るような人間にはどうしても思えん」
副艦長「ですなぁ。先日の会食の際、私など彼女に惚れてしまいましたよ」
艦長「流血がなければいいが……」
副艦長「歯痒いですな。我々は待機命令が出ているだけですから」
通信士「ーーっ、艦長、通信です。何者かが緊急用周波数でこの艦を呼んでいます」
副艦長「……上陸部隊か?」
通信士「そ、それが違うようでして」
艦長「私が出る。ーーこちらガリア海軍ブレアーゼル」
『ーーああ、ブレアーゼル、こちらガリア陸軍サン・ヴェルニー島防衛隊、ヴェルニー連隊連隊長』
艦長「! ……連隊長、無線機などどこで?」
女騎士『その声、艦長ですか』
艦長「ああ。……それにしても驚いた」
女騎士『詳しくは話せないが、私は本国からこうした物を扱う資格を与えられています』
艦長「……。そんな気がしていた。きっと、私などより多くの機密に触れている人間なのだと」
45 :以下、?ちゃんねるからVIPがお送りします:2019/02/19(火) 02:00:55.661 ID:N8Qe0WAA0
ーー連隊駐屯地。士官用宿舎。
女騎士「……ええ。だが今回は厄介な相手を敵に回したようです。一応弁解しますが、我々は潔白だ」
艦長『信じよう』
女騎士「ありがとうございます。……乗組員が退避したのは、命令あってのことですね?」
艦長『……ああ。そうだ』
女騎士「重大な背任行為をした連隊幹部を捕縛するため、部隊を上陸させる。巻き込まれないよう乗組員を退避させろ。ーー大体そんな内容ですか?」
艦長『さすがだな。だが分かって欲しい。……個人的には理解を示せても、どうすることも出来ないのだ。
家族である乗組員を悪戯に危険に晒すわけにはいかない』
女騎士「ええ。もちろんです。しかし連隊も家族だ」
艦長『……。海軍だが、それは理解する。連隊は他の編成とは違って、軍全体で通し番号の部隊だ。解散すれば欠番になる。
"兵士は軍ではなく、連隊に属する"とはよく言ったものだな』
46 :以下、?ちゃんねるからVIPがお送りします:2019/02/19(火) 02:03:07.693 ID:N8Qe0WAA0
女騎士「はい。それにこの連隊の兵士はみな島の人間です。そういう意味でも、ヴェルニー連隊は特別な家族と言えます。
……もし相手が外敵なら、私は兵を死地へ送る。私も出向くでしょう。だが、友軍同士の茶番劇で死なせるつもりは一切ない」
艦長『……なら答えは1つのはずだ。聡明な貴女なら分かるだろう。……上陸部隊に投降したまえ。
彼らは私も詳細を知らない精鋭部隊だ。勝ち目はない。
だが、だからこそ、悪党の私兵に成り下がるような連中では無いはずだ。恐らく、誤った情報を与えられ、今回の作戦に従事している』
女騎士「ええ。私もそう踏んでいます」
艦長『ならば投降後に活路を見出すのが賢明だろう。彼らは君を丁重に扱うはずだ。そのあいだに、君の仲間が動いてくれるのではないかね?』
女騎士「それを期待しています。ーーそこで、1つお願いがあるのですが」
艦長『聞こう』
女騎士「一切の誤解なく投降するため、彼らと連絡が取りたいのです。
……艦に専用の周波数が知らされていませんか?」
47 :以下、?ちゃんねるからVIPがお送りします:2019/02/19(火) 02:05:03.497 ID:N8Qe0WAA0
ーーブレアーゼル艦橋
艦長「……」
副艦長「……。艦長、残念ですが、無線を切った方がよいかと。これ以上は……」
艦長「……。ああ、知らされているよ。連隊長」
副艦長「っ、艦長……」
女騎士『……お答え下さり感謝します。
無理は承知で頼みたいのですが、ブレアーゼルで彼らと連絡を取っていただきたい。
彼らに伝えて欲しいのです。
こちらが投降する意思があること。
無線を使ってその段取りを話したいこと。
シャルル・フランシス・カルポー陸軍予備役大将が、我々の潔白と、投降の意思の保証人であること。
以上をどうか』
艦長「……わかった。引き受けよう」
48 :以下、?ちゃんねるからVIPがお送りします:2019/02/19(火) 02:06:15.394 ID:N8Qe0WAA0
女騎士『ありがとうございます。ご迷惑をおかけして申し訳ありません』
艦長「いいさ。役に立てて光栄だ」
女騎士『……このご恩は忘れません』
ーープツ。
艦長「……。すまない副艦長。だが、私はこういう男だ」
副艦長「知っていました。家族ですから」
49 :以下、?ちゃんねるからVIPがお送りします:2019/02/19(火) 02:09:40.140 ID:N8Qe0WAA0
ーー連隊駐屯地、士官用宿舎。
勇者「……投降」
女騎士「それしか無い」
勇者「……一緒に行けますか?」
女騎士「分からない。だが期待はしないでくれ。すまない」
勇者「……いえ」
マリア「離れ離れになったら、私がガリアまで必ず送ります」
女騎士「ああ。頼む」
ザザッ。こーーザッーーらーーザザッ。
マリア「っ、少佐」
女騎士「ああ」
名誉連隊長「来たの」
勇者「……」
50 :以下、?ちゃんねるからVIPがお送りします:2019/02/19(火) 02:10:51.031 ID:N8Qe0WAA0
『こーーら海軍ーード、ーーヌイユ』
ザザー、ズッ、プチ。
『ーー申し出は聞いたよ。敬意を表する。連隊長』
女騎士「受けていただけますか」
『我々とて友軍だ。無益な流血は避けたい』
女騎士「理解に感謝します」
『ところで、そこにカルポー大将閣下はおられるかね?』
名誉連隊長「おるよ」
『ああ、お話できて光栄です、閣下。閣下が保証人なら我々も安心できる』
女騎士「それで、具体的にはどのように?」
51 :以下、?ちゃんねるからVIPがお送りします:2019/02/19(火) 02:12:21.956 ID:N8Qe0WAA0
『まず連隊駐屯地を人払いしてほしい。投降の意思を疑うわけではないが、我々は臆病でね。それに、人目についてはいけないモノも持っている。ーー無線機を持っている立場なら分かるだろう?』
女騎士「ええ」
『結構。駐屯地の東側に小さな多目的ホールがあるはずだ。そこに連隊長、勇者、立会人としてカルポー大将閣下。その3人だけで待っていてくれ。ーー1時間後でどうかな』
女騎士「……勇者。彼もですか?」
『我々の手で、本国まで送らせて貰う。英雄の凱旋を手伝えて嬉しいよ』
女騎士「……わかりました。すべてそのように。ーーそれと、情報収集のために拘束した島民は、いつ解放してくれますか?」
『すべて順調にいった、そのあとに』
ーープツ。
52 :以下、?ちゃんねるからVIPがお送りします:2019/02/19(火) 02:14:17.423 ID:N8Qe0WAA0
『…………』
マリア「やっぱり、彼らが拘束していたんですね」
名誉連隊長「部下にしておく分には有能そうな奴だったの。個人的な付き合いは勘弁じゃが」
マリア「人間味のない声で不気味」
勇者「……嫌な感じでした。でも、僕も連れて行ってくれるんですね」
名誉連隊長「……うーむ」
女騎士「……言っても仕方ない。さ、1時間で準備しなければ」
ーー40分後。連隊駐屯地、正門前。
兵士「自分たちで最後です……」
主計課エルフ「隊長……こんな別れ方って、やっぱり納得出来ません……」
女騎士「またきっと戻ってくる」
兵士「約束ですよぉ……」
女騎士「ああ。ーー念を押すが、このことは夜のあいだは島民には秘密にな。
明日の朝になったら、私と勇者は軍の事情で、夜のうちに島を離れたと伝えてくれ」
主計課エルフ「はい。……ぐすっ」
女騎士「泣くな。ほら行け。……またな」
54 :以下、?ちゃんねるからVIPがお送りします:2019/02/19(火) 02:18:31.053 ID:N8Qe0WAA0
ーー練兵場。倉庫の陰。
ゴソゴソ。
オーク“……はぁ、なーにやってんだろうな」
女騎士「ーー本当にな」
オーク「っ! た、隊長……」
女騎士「あの2人で最後のはずだぞ」
オーク「俺は残ります! 何かあったらどうするんですっ?」
女騎士「大丈夫だ。お前も行け、軍曹」
オーク「で、出来ませんっ! ここで隠れてますっ。何かあったらすぐ駆けつけますから!」
女騎士「ありがとう。だがいいんだ」
オーク「でっ、でもっーー」
女騎士「ずっと言いたかったことがある」
オーク「……なんです?」
女騎士「この連隊の連中は、みんな軍人失格だ」
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