キモオタ「我輩がおとぎ話の世界に行くですとwww」ティンカーベル「そう」 『作者』編
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151 :◆oBwZbn5S8kKC :2016/04/09(土)00:40:52 ID:MN1
・・・
ゴーテル「ふぅ、やはり老いぼれ二人だけとなると静かじゃな」
魔法使い「お主は…ラプンツェルのことばかり考えておる親バカだと思っておったが違うようじゃな」
ゴーテル「なんじゃいきなり、悪いが喧嘩を買うような元気はありゃあせんぞ?なんとか覚悟を決めはしたが…それでもラプンツェルの事を考えるともう心配で心配で…胸が張り裂けそうじゃわい」
魔法使い「その割にはティンカーベルの事を気遣っておったじゃないか、説教と見せかけて二人のために諭してやっていたように見えたが」
ゴーテル「お前にはお見通しというわけじゃな、まぁ…あの二人はお互いにズケズケとものを言い合っているように見えて案外気を使いあっておるからな、その解決になればと思ったんじゃよ」
魔法使い「ティンカーベルの…妖精の運命を知っておったんじゃな、お主」
ゴーテル「ワシはワシで色々と調べておるんじゃ、老いぼれにできるのは知恵袋の披露と相場が決まっておるし」
魔法使い「まぁそうだ、で…お主はどう思う?ティンカーベルが未だ生かされていることについて。小さくともあやつは世界移動も使えるし妖精の粉もある、早々に消しておいてアリス側に損はないはずだというのに」
ゴーテル「十中八九、キモオタを無力化するために生かしておるんじゃろうな。アリスにとってキモオタの能力影響力は未知数…となればいざという時、精神的に大打撃を与えるすべを用意しておきたい」
魔法使い「…それがティンカーベルの消滅。というわけだな、長い時をともに過ごし親しくなった友人を消されてはキモオタも平常心ではおれまい…」
ゴーテル「おそらくアリスはそれを狙い、能力の計り知れないキモオタへの最後の切り札としてティンカーベルをあえて生かしている…」
魔法使い「えげつない娘だ、などというのも今更な気もするがな」
ゴーテル「なんにせよもうワシ等にできることはありゃせん、突如別れがきた時にどうするか…それはあの二人次第じゃろ」
魔法使い「そうだな、心配しても仕方あるまい。ワシ等は今自分達にできることをするだけじゃな…」
152 :◆oBwZbn5S8kKC :2016/04/09(土)00:45:07 ID:MN1
裸の王様の世界 裸王の城 地下牢
シーンッ……
ブリキ(……今、何時頃だろうか。ヘンゼルと約束を交わしてからどれ程の時間が流れたのだろう…数時間?数日?あるいは数ヶ月…?)ギシッ
ブリキ(時計も無く太陽の傾きも見えないこの地下牢では…俺に時を知るすべはない、時に流れすらもあやふやだ)
ブリキ(……あぁあいつ等と離れ離れになってどれくらいの時が流れただろうか。ドロシー…かかしやライオンは無事だろうか、辛い思いをしていないだろうか)
ブリキ(いいや…あいつ等は俺の自分勝手な行動に巻き込まれたんだ、辛い思いをしていないはずがない。俺のことを恨んでいるだろう)
ブリキ(だがせめて無事でいて欲しい。かかしはしっかりしてるから平気だろうが…ライオンとドロシーが心配だ。誰か親切な奴に出会えていればいいが…雨風はしのげているだろうか?食事はとれているだろうか?気が弱い連中だから良いように利用されてないだろうか?それと……)
ブリキ(……よそう、あまりに不毛だ。どれだけ不安に思おうと心配しようとこの牢から動けない俺には何一つできない、実に情けない話だ)
ブリキ(仲間のことを他人任せにするなど無責任だが…それでも今の俺にはそうするしかない。ヘンゼルの言葉を信じて今はただ待つことしかできない)
ブリキ(自業自得とはいえこの暗い地下牢で身動きがとれず、ただ思索に耽り自問自答する日々。思えばこの状況は…あの頃と似ている)
ブリキ(昔、森の中で突然大雨に降られ…間接が錆び付いて長い間動けなかった事があった。あの時も自分ではどうすることもできず自問自答を繰り返していた)
ブリキ(あの時錆び付いた俺に声をかけてくれたのが…偶然通りがかったドロシーだったな。ずいぶんと昔の話だが、あいつとの出会いは今でも鮮明に思い出せる)
153 :◆oBwZbn5S8kKC :2016/04/09(土)00:47:00 ID:MN1
ずっと昔…
オズの魔法使いの世界 ブリキの木こりが暮らす森
ドロシー「あ、あのっ…お願いされたとおり小屋に行ってみたんですけどオイルの缶ってどれかわからなくて…すいません、こういうの詳しくなくて…すいません」オドオド
かかし「とりあえずそれっぽい缶を全部持って来たゾ、錆びに効くオイルってのはどれダ?」ガラガラ
錆びブリキ「すまない。その右から二番目の缶がそうだ、悪いが右腕の関節に差してくれるか?利き腕が動けば後は自分でやれる」
かかし「悪いけどドロシーがやってくレ。ただでさえ燃えやすい俺の体にオイルが染み込んだらもしもの時ヤバいからナ」
ドロシー「あっ、そうですよね…じゃあ私がオイルを差しますね、えーっと…右から二番目の缶…これですよね?」ヒョイッ
ツルッ ドバー
かかし「ぬわーッ!?」ビッシャ-
ドロシー「あぁーっ!すいませんすいません!言ったそばから…す、すぐに拭き取ります…!」バッ
かかし「お、おい!この辺オイルまみれなんだぞゾ!あんまり慌てて近寄るとお前…」
ズルッ
ドロシー「きゃあぁっ!?」ガシャーン
かかし「おいーッ!持ってきたオイルが全部…!お前ドロシーちょっと落ち着ケ!大惨事じゃねぇカ!」ベタベタ
ドロシー「あぁぁ…!すいませんすいません!」ドロドロ
錆びブリキ(……頼む相手を間違えた)
155 :◆oBwZbn5S8kKC :2016/04/09(土)00:49:50 ID:MN1
チューッ キュッキュッ
ドロシー「…はいっ、これでどうでしょうか。右腕、動かせそうですか…?」
ブリキ「…ああ、問題なく動く。助かった、長い間動くことができずに参っていたんでな」グルングルン
ドロシー「あっ、それはよかったです…あのっこのまま別の関節にもオイルを差しましょうか?」ソッ
ブリキ「いや、自分でやれる。オイルの缶を渡してくれ……次は落とさないように頼む」
かかし「本当に気をつけて渡せヨ?これ以上オイルまみれになるのは御免だゾ」ベタベタ
ドロシー「うぅ…すいません」ショボーン
ブリキ(なんだか随分と頼りない娘だ。相当気も弱そうだ…見たところ旅の途中のようだがこんなんでよくやっていけるもんだな)ジーッ
ドロシー「あ、あの…私何かしちゃいましたか?」オドオド
ブリキ「いいや、この辺りを人が通るのは珍しいんでな。見たところ旅の途中のようだが…どこを目指している?」
ドロシー「えっと、あの、エメラルドの都です。大魔法使いのオズ様にお会いするためにかかしさんと二人…あっ、トトも入れたら3人ですね、3人で旅してて…」
トト「わうんわうんっ」
ブリキ「エメラルドの都…話に聞いた程度だがここからだとずいぶんと遠い。その魔法使いに何の用事があるのか知らないが過酷な旅になるぞ」
かかし「それでも俺達は行かなきゃなんねぇんだヨ。俺はオズに頼んで脳みそを貰うんダ、知恵さえありゃあ畑のカラスどもにバカにされねぇで済むしナ」
ドロシー「私は…オズ様にお願いして故郷のカンザスへ帰る方法を教えてもらうんです。エム叔母さんも心配してるだろうから早く帰らなくちゃ…」
156 :◆oBwZbn5S8kKC :2016/04/09(土)00:53:16 ID:MN1
ブリキ「そうか、家族が待ってるなら帰らないとな」
ドロシー「は、はい…頑張りますっ!」
ブリキ(…この先には猛獣が出る森もある。妙なかかしが一緒だとしてもこの気弱な小娘が遠いエメラルドの都までたどり着けるとは思えない)
ブリキ(まぁ俺には関係のないことだ。こいつのドジに巻き込まれる前に礼を言って去ろう)
ドロシー「あ、あの…私も一つ聞いてもいいですか…?」
ブリキ「…なんだ?」
ドロシー「ブリキさんはその…どうしてブリキの体なんですか…?」
かかし「ン…?何言ってんダ?そいつはブリキの体だからブリキの体なんだろウ。ン?自分でもなに言ってるのかわかんなくなっちまっタ」
ドロシー「その、なんというか…かかしさんもですけど人間のように動けてお話もできるのにブリキの体だなんて初めて見たので…あっ失礼だったらごめんなさい」ペコペコ
ブリキ(常に謝ってるなこいつ…下手に言い渋れば無駄に謝られそうだな、それも面倒だ。素直に話してやった方が面倒も少ないか)
ブリキ「愉快な話ではないが助けて貰った礼に…聞きたいなら話そう。そもそも俺はブリキの木こりとして作り出された人形じゃない。昔は…元々は人間だった」
ドロシー「そ、そうなんですか…?なんだかすごいお話ですね、元々は人間だったのに今は全身をブリキで覆われているだなんて…いったい何でそんなことに…」
ブリキ「ある魔女の呪いを受けてな、その果てにこんな姿になっちまったというわけだ…話せば長くなるが」
157 :◆oBwZbn5S8kKC :2016/04/09(土)00:57:58 ID:MN1
ブリキ「昔、俺がまだ生身の人間だった頃の話だ。俺はしがない木こりだったが…そんな俺を愛してくれた女がいた。そして俺もまた彼女のことを愛していたんだ」
ドロシー「相思相愛の恋人同士だったんですね…すてきなお話です…!」キラキラ
ブリキ「…俺達は愛し合っていてやがて結婚の話がでた、俺は結婚資金をためるためにそれまで以上に精を出して働いた。が、彼女の母親に結婚を反対されてしまった」
かかし「ほウ…?なんでまタ…人間は愛し合った男女で結婚するもんなんだろウ?なにを反対する理由があるんダ?」
ブリキ「彼女は母親と二人で暮らしていたが炊事やら洗濯やら娘任せだったようでな、家を出られてはそれらを全部自分ですることになる。それが面倒だったんだろう、ずいぶんと怠け者な母親だったらしいからな」
ドロシー「そ、そんな理由で結婚に反対するなんて…お、おかしいと思います…」
ブリキ「とにかくだ母親にとって俺は邪魔な存在になった。そこで魔女に依頼して俺に呪いをかけたんだ、斧を振るうと自らの身体を切りつけちまうそんな呪いをな」
かかし「おおゥ…そりゃあ木こりにとっちゃ致命的な呪いじゃねぇカ。頭がいい奴ってのはおかしな事を考えるもんだナ」
ブリキ「最初に切り落としたのは左足だったな、だが知り合いのブリキ職人に頼んでブリキ製の左足をあてがってもらった。だが呪いは消えちゃいない、次は右足で次いで両腕そして頭…俺は生身の部分を少しずつ失っていった。だが…それでもめげなかった」
ドロシー「……」
ブリキ「愛する彼女と結婚したかったからな、多少の困難は苦にならなかった。だがそんな日々が続き俺の斧は遂に胴体を切り裂いた。そして胴体をブリキ製にしたとき俺の身体から生身の部分は無くなってしまった…その時だ、あれほど愛していた彼女のことがどうでもよくなった」
かかし「そりゃあどうしてダ…?」
ブリキ「完全にブリキ製の体になってしまった俺は心を失ってしまった。生身の体と一緒に愛する心もなくしてしまったのさ」
158 :◆oBwZbn5S8kKC :2016/04/09(土)01:01:31 ID:MN1
かかし「そりゃあ酷い話だナ…生身の体も心も失っテ、愛した女とも一緒になれねぇとハ…」
ブリキ「運がなかったのさ。それにこの身体もそれほど悪いもんじゃない、飯も食わずに済む眠らなくても済む。オイルを差さないと錆び付いてしまうのが難点だがな」
ブリキ「と、まぁ俺がブリキの体になった理由ってのはこんなもんだ。彼女は俺が心を失ったことを知らないだろうから今も俺のことを待っているかもしれないが…それすらもどうでもいいと思っている」
ブリキ「何しろ俺は心が無いブリキの木こりだからな。だがそれよりお前…大丈夫か?」
ドロシー「うぅっ…わだしのことはいいんでずよぉ…!ブリキざんは何もわるぐないのに…えっぐえっぐ…ひどいですよぉ…」ボロボロ
かかし「お、おウ…気持ちはわかるがお前の顔の方がひどいことになってんゾ…とりあえず涙拭けっテ…」
ドロシー「愛し合っていだのにどうでもよくなっちゃうなんて…ぞんなのあんまりでずよおぉぉ〜」ボロボロ
ブリキ「…何故お前がそこまで泣く?お前が辛い思いをしたわけじゃないだろう」
ドロシー「えっぐえっぐ…それはそうですけどぉ…悲しいじゃないですか…ブリキさんだって…本当は悲しいはずですよぉ…ぐすんぐすん」
ブリキ「……」
ブリキ(何故この娘がこうも悲しむ?いや、他人の不幸に悲しむ理由などないはずだ。これは同情あるいは哀れみ…そういった感情だ、そうでなければ他人のために涙する理由など…ありはしない)
ブリキ(俺にはこの娘が涙を流すのが理解できない。だが…俺に向けられている感情が同情や哀れみだというならば、何故俺は今…少し救われた気持ちになった?)
ブリキ(俺に心は無いはずなのに、何故この娘の涙をみると…空洞のはずの胸がざわつく…?)
159 :◆oBwZbn5S8kKC :2016/04/09(土)01:04:31 ID:MN1
かかし「もういい加減泣き止めっテ、気持ちはわかるが逆にお前の方が心配になっちまう程だゾ」
ドロシー「ぐすんぐすん…う、うん…ごめんなさい…」
ブリキ「お前たちは……かかしはオズに脳みそを貰うと言っていたな?」
かかし「おウ、頭よくなるのが俺の夢なんでナ。オズは大魔法使いらしいからそれぐらいのことは容易いだろうヨ」
ブリキ「オズに頼めば…俺も心をもう一度手に入れられるだろうか?」
ブリキ(今更だ。もうあれから一年以上たっているというのに…今更なにをしても遅い、そんなことはわかっている)
ブリキ(だが…俺の境遇に涙するこの娘の姿を見ていると…)
ブリキ(名前も忘れてしまった彼女の泣き顔を思い出す。あいつもずいぶんなお人好しで、他人の不幸に涙を流せる女だった気がする)
ブリキ「お前たちに話したせいかな、今になって昔愛した女の事が気になっちまった。今更だが…一度は失った心ってものに興味が沸いて来ちまった」
ブリキ「俺もお前たちと共にエメラルドの都へ…オズの元へ向かう旅に同行してもかまわないか?」
ドロシー「ブリキさん…!大丈夫ですよ、きっと!きっとオズ様なら心を与えるなんて簡単です!一緒に行きましょうっ」パアァァ
かかし「おウ、旅の仲間は多い方がいいからナ!」
ブリキ「ならば俺もお前たちとともに向かおう、オズが住むエメラルドの都へ」
160 :◆oBwZbn5S8kKC :2016/04/09(土)01:08:44 ID:MN1
今日はここまでです
作者について触れるのは先になりそうだけどまずはオズ組とヘンゼル裸王チームの場面になるかな?
『作者』編 次回に続きます
161 :名無しさん@おーぷん :2016/04/09(土)01:09:32 ID:5Ku
ごっつぁんです
162 :名無しさん@おーぷん :2016/04/09(土)01:15:58 ID:D4B
イッチ乙!
わぁブリキにそんな過去が…将来彼女とうまくいって欲しい…
そしてモンペが意外と(失礼)色々考えてるな…
163 :名無しさん@おーぷん :2016/04/09(土)03:01:30 ID:z5k
1さん乙です!
ブリキにそんな過去が(´;ω;`)
そしてドジっこドロシーのピュアさ可愛い…トトも出てきて嬉しかった!
老婆組も好きだー!!
182 :◆oBwZbn5S8kKC :2016/04/16(土)00:22:32 ID:z8G
現在
裸の王様の世界 裸王の城 地下牢
ブリキ(懐かしい話だ、俺の旅はあそこから始まった)
ブリキ(あの日、見ず知らずの俺のために涙を流すドロシーを見なかったら…もう一度心を手に入れたいなんて考えなかっただろう)
ブリキ(森の奥で錆び付き動けず、朽ちるのを待つだけだった俺に目的を与えてくれたのはドロシーだ)
ブリキ(あいつの純粋な心に振れたからこそ、俺はかつて愛した女の事を思い出せた…もう一度会いたいと思えた。ブリキの身体になってなお生きる意味が見つかった)
ブリキ(俺はあいつに救われた、俺にとってはそれが全てだった。だからあいつがアリスに利用されていると知った時…俺は他の何を犠牲にしてでもあいつを守り、助けようと誓った。だが……)
ブリキ(その結果が…これだ)ギシッ
ブリキ(すべての世界を敵にまわした挙げ句、何一つ救えなかった。二人の友を巻き込んで大切な仲間を傷付けただけだ。おそらくドロシーはきっと今も世界のどこかで泣いているだろう…)
ブリキ(だがそれはあの日のような優しい涙じゃない。脅威に怯え、孤独を恐れ、苦痛に耐えきれずこぼした涙)
ブリキ(俺がもっとうまくしていればあいつはそんな悲しい涙を流す必要はなかった。それだというのに不甲斐ない、俺は、俺は……!)ギシッ
カツンッ
ブリキ「……誰だ?」ギシッ
裸王「私だっ!我こそがこの国を統べる筋肉の伝道師…裸王なりっ!」マッスルポーズ
183 :◆oBwZbn5S8kKC :2016/04/16(土)00:25:03 ID:z8G
ブリキ「…誰も見ていないこんな場所でポーズをとる必要があるのか?」
裸王「無論っ!真のマッチョマンはその肉体美を披露するのに時や場所を選ばぬものなのだからな」マッチョ
ブリキ「…何用でここへ来た?王のお前が直々に出向いたという事はそれなりの用なのだろう?」
裸王「うむっ!その通りだ!だが本題に入る前にその拘束を解こうじゃないか、お前にはもう必要あるまいっ!」マッチョ
ガチャガチャ ギィッ
ブリキ「それは助かるが…構わないのか?俺はお前の兵を傷つけた悪党だ、王とはいえ独断で拘束を解くなど許されまい」
裸王「ハッハッハッ!裸王ノープロブレム!被害を受けた兵たちには了承を得ている、何かあれば私がすべての責任を負うと説得した
!さて何はともあれこの鎖を…ふんっ!」バキィッ
ブリキ「何故引きちぎった。ただ解けばいいだけだろうに」
裸王「ポージングで引き出される肉体美は素晴らしいものだ。だが筋肉の本質とは躍動によって輝く美しさ…そうは思わんかね?」ムキムキッ
ブリキ「…お前は筋肉の話をするために俺の元に来たのか?ならばあいにくだが俺には心も筋肉も無い、期待には応えられないぞ」
裸王「ハッハッハッ!生身の身体を持たぬお前と筋肉トークか!それは非常に心惹かれるがいい加減に本題に入らねばヘンゼルに渋い顔をされてしまいそうだなっ!さて…まずこれを渡しておこう」スッ
ブリキ「こいつは……錆止めオイルか?何故お前がこんなものを俺に…」
裸王「それは私からの贈り物ではないのだ。お前が地下牢に拘束されていると聞いて錆び付いていないかと心配した娘に渡すよう頼まれたものだ」
裸王「私の城で友と再会できることを待ち望んでいる、お前の友人にな」マッスルッ
184 :◆oBwZbn5S8kKC :2016/04/16(土)00:28:08 ID:z8G
ブリキ「ドロシー…!ヘンゼルはもうドロシーを捜し出したっていうのか!?あいつに託したあの時からそれ程月日は経っていないはずだぞ!?」ガタッ
ブリキ「いいや、ドロシーに会えるのならそんなことはどうだって構わない!王よ、今すぐに俺をお前の城へ案内してくれ!すぐにでもあいつに会いたい、これからは側にいてあいつを守ってやらないといけないんだ俺は…!」バッ
裸王「うむ、気持ちはわかるが落ち着きたまえ!そのようなボロボロの体でドロシーの前に出てどうする、恐らく彼女はお前のことを案じて心痛めるだろうっ!」マッチョ
ブリキ「…確かにそうだ、俺のひしゃげた体を見れば優しいあいつは自分に事のように悲しむ。それは…俺も嫌だ」
裸王「不甲斐ないことにお前の体を今すぐに直せる職人は…魔法の力をもつ鍛冶屋はこの国にはいないのだ」
裸王「だがこのマントを羽織ればいくらかは誤魔化せるだろうっ!これは私からの贈り物だ、少なくともボロボロになったお前の体を覆い隠すことはできるっ!」バサッ
ブリキ「気を使わせてしまって悪いな、使わせて貰おう」バサッ
裸王「ハッハッハッ!そのマントは友好国から送られた品なのだが、私は筋肉を衣類で隠すのが嫌なのでな!代わりに使ってくれれば無駄にならずにすんで私としても助かるのだ!」マッスル
ブリキ「そうか…肌触りなんざ俺には解らないが上等な品なんだろう、礼を言う。しかしヘンゼルの姿が見えないな…ドロシーは既に城にいるのだろう?ならばあいつは何を…」
裸王「ヘンゼルはライオンとかかしの両名に城に来て欲しいと頼みに行くと言ってた。【アラビアンナイト】と【桃太郎】の世界にいるという情報をラプンツェルと桃太郎から得ていたのでな!」マッチョ
ブリキ「ま、待て待て!まさかあいつらの居場所まで突き止めたのか!?この短時間で一体…」
裸王「うむ、全て偶然と言ってしまえばそれまでなのだがな。私とヘンゼルは別件で【シンデレラ】の世界を訪れていた、そこには目的を同じくするラプンツェルや桃太郎も居たのだ」
裸王「キモオタ達が来るのを待っていた我等はその間軽く情報のやりとりをしていた、その際に聞いたのだ。彼ら彼女らが偶然かかしやライオンと出会い、行動を共にしていることをな」
裸王「折角居場所が分かっているのだ、お前とドロシーだけでなく四人揃って居た方がいいのではないかと思い…ヘンゼルは彼らに直接来てくれと頼みに行ったのだ」
裸王「過去が原因とは言え大人に対する態度は少々目に余る部分もある、だが心根は実に優しい少年だ。この裸王、感心しっぱなしだっ!」マッスルポーズ
185 :◆oBwZbn5S8kKC :2016/04/16(土)00:33:57 ID:z8G
裸王「ライオンは【蛙の王子】の世界で桃太郎と出会い戦いに備え訓練をしていたらしい。かかしは【アラビアンナイト】の世界で勉学に励んでいるとラプンツェルが自信満々で言っておった、何故彼女が誇
らしげなのかはわからんがな?ハッハッハ」マッスル
ブリキ「それじゃあ何か…?アリスは俺たちを別々の世界へ無作為に飛ばした。そして偶然にもその先々で俺を含めて全員が、お前たちやキモオタの仲間とゆかりのある世界へ飛ばされたって言うのか!?」
裸王「ふむ、しかしそう驚くことでもあるまい。アリスはおとぎ話を消滅させて回っているのだからおとぎ話の数は極端に減っているはずだろう?」
ブリキ「それは間違いない、一時期と比べれば相当減っているはずだ。それには他でもない俺も関わっていたからな」
裸王「一方でキモオタ達はそれを防いで回っていた、故に今もなお残っているおとぎ話がキモオタ達とゆかりのある世界だという可能性は必然に高くなると言うわけだ!ハッハッハ」マッチョ
ブリキ「なんという偶然か巡り合わせか…いいや喜ばしいことに変わりはない、こうも早くあいつらに会えるんだからな」
裸王「うむ、ではそろそろ行こうではないか。おそらくヘンゼルも二人を連れて城に戻っているだろうからなっ!」マッスル
ブリキ「…あぁ、そうだな」ギシッ
裸王「むっ?どうかしたかね?」
ブリキ「あいつらに一刻も早く会いたい。その気持ちはあるのだが、この事態を招いたのは俺の責任…今になってどのような顔で会えばいいのかと考えてしまった」
裸王「ハッハッハ!ドロシーも言っていたが…お前に心が無いというのはどうも信じられんな!ハッハッハ!」
ブリキ「そういわれてもな、実際俺には心が無い。ブリキの体に心など存在しないのだからな」
裸王「ハッハッハ!心配せずとも仲間達もお前の考えや行動を汲むくらいの心は持ち合わせているだろう?」
裸王「それにドロシーもお前に会いたがっていたぞ、おそらくは仲間達もだ。あれこれと考えるまでに会いに行った方が早いぞっ!」
裸王「多くを語らずとも親しい仲間ならば、顔を合わせるだけで伝えられることもあるだろう?案ずるより生むが易し!私も付き添うぞ!さぁ案内しようではないか、我が城を!」ハッハッハ
186 :◆oBwZbn5S8kKC :2016/04/16(土)00:36:36 ID:z8G
同じ頃・・・
おとぎ話【ライオンとねずみ】の世界 森の奥地
人魚姫の声『何これ何これ!右も左も木、木、木!あと花!うぅ〜見たこと無い光景にちょーテンション上がるんですけどぉー!』ウキウキ
赤ずきん「見慣れない風景にワクワクする気持ちは分かるけど少し落ち着いたら?あとでバテても知らないわよ?」フフッ
赤鬼「まぁいいじゃねぇか、俺達はそうでもねぇが人魚姫には珍しいんだろ。海の中に森はねぇからなぁ」ハッハッハ
人魚姫の声『そうそう!それにさ今の私は空気の精なわけじゃん?こういう空気のきれいな場所は過ごしやすいんだよねー」ヘラヘラ
赤ずきん「それは結構なことだけど、はしゃぎすぎて警戒を怠っては駄目よ?」
人魚姫の声『えー?警戒ー?こんなに静かで穏やかな森なのに何を警戒する必要があんのさー、海と違って凶暴な鮫も鯨もいないしさ〜余裕余裕ー』ヘラヘラ
赤ずきん「あなたが知らないだけで森は危険だらけなのよ。凶暴な野生生物だっているかも知れない、例えば狼とかね」
人魚姫の声『オオカミ…?なんか聞いたことがあるようなないような…』ハテー?
赤鬼「狼ってのは森に住む獣だ、鋭い牙を持っていて獰猛な性格の奴が多い。おとぎ話の筋書きの中じゃ大抵悪役として出てきて主人公を食っちまったりするなぁ」
人魚姫の声『へーっ、森にも鮫みたいな凶暴な生き物がいるんだねー。聞いた感じヤバそうだけど、もしかしてかなり警戒した方がいい系?』
赤ずきん「そうよ、この世界の狼がどうかは知らないけど…【赤ずきん】の狼は人語を理解する知能があったし、元々の筋書きでは私を確実に食べるために狡猾な作戦まで練る…恐ろしい獣よ」
赤ずきん「基本的に群で行動するらしいから囲まれでもしたら厄介よ。各々きちんと警戒しながら進みましょう」
187 :◆oBwZbn5S8kKC :2016/04/16(土)00:43:32 ID:z8G
赤鬼「おう、それに森の中ではぐれちまったら厄介だ。特にお前は俺達からでさえ姿が見えないんだから、注意してくれよ?」
人魚姫の声『はいはーい!でもさぁ、森が危険なことも油断しちゃだめなこともわかったけどさぁ、だからってずっとピリピリしてるってのもつまんなくない?楽しくいこうよせっかくだしさぁー』ヘラヘラ
赤ずきん「警戒しろって言った側からあなたは……けれどまぁ気持ちは分からなくもないわ」
人魚姫の声『そうっしょ?なんか楽しい話でもしながら進んだ方が楽しいって!』ヘラヘラ
赤鬼「しかし楽しい話っつってもなぁ……それよりも赤ずきん、なんつぅか聞きそびれちまってたんだけどな。この世界が舞台の【ライオンとねずみ】っておとぎ話、どんな内容なのかまだ聞いてなかったよな?」
赤ずきん「あら、言ってなかったかしら?」
人魚姫の声『あっ、ホントだ。あたしもまだその話聞いてないや、ちょうど良いから教えてほしいんですけどー?』
赤ずきん「そうね、きっともう結末は迎えているんでしょうけど…このおとぎ話がどんな内容なのかは知っておいた方がいいわね。それじゃあ少し聞いて貰おうかしらr」
グオォォォォッ!
赤鬼「なんだぁ!?森の奥の方から獣のうなり声が聞こえたぞ!?」
赤ずきん「…この鳴き声!」バッ
人魚姫の声『ちょ、ちょっと!どーしたっての赤ずきん!?』
赤ずきん「間違いない…この鳴き声は狼のものよ!きっと誰かが狼に襲われてる!助けにいってくる、悪いけれど話の続きは後よ…!」タタッ
188 :◆oBwZbn5S8kKC :2016/04/16(土)00:46:13 ID:z8G
狼「グオオオォォォッ!!」ガルルルッ
狩人のおっさん「ひ、ひえぇ…!お助けぉぉー!」ジタバタ
狼2「ガアァァッ!」グワーッ
狩人のおっさん「ひえぇぇっ!くっ、もう弾丸も切れちまってる…!こんな事になるなら欲を出して森の中に入ったりするんじゃなかった!」
狩人のおっさん「この森に大層立派なライオンが住むって聞いたから毛皮を剥ごうと思って狩りに来たってのに…畜生!金に目が眩まなけりゃこんな事にはぁぁ!!」
狼3「グルルッ…グオオォォォッ!!」ババッ
狩人のおっさん「クゥッ、万事休すか…!」
ズダーン ズダーン ズダーン
狼達「ガウゥ…!ガルアァァ…!」ジタバタ
狩人のおっさん「な、なんだぁっ!?誰か助けてくれたってのか!?」
スタッ
赤ずきん「…1、2、3匹。狼の群にしては少ないわ。かといってアイツのように一匹狼ってわけでもなさそうね」ガチャッ
狩人のおっさん「女の…子供!?今の攻撃はおめぇがやったのか!?子供だってのになんて的確な射撃だ…!」
赤ずきん「誉めてくれるのはありがたいけれど、今のうちに逃げなさい。狼共は引き受けてあげるけれど…あなたの命の保証まではしかねるから」スッ
189 :◆oBwZbn5S8kKC :2016/04/16(土)00:48:33 ID:z8G
狩人のおっさん「そ、そういうことなら…嬢ちゃんすまねぇが後は頼むぞ!」ドタバタ
赤ずきん「…さぁ、私が相手になってあげるわ。一発の弾丸で倒れるようなヤワな体じゃないでしょう?ほら、さっさと掛かってきなさいな」フゥ
狼1「ググッ…グルルラァァ!」バッ
赤ずきん「あらあら、随分と怒っているみたいね。私が食事の邪魔をしてしまったからかしら?」ズダーン
狼1「グ、グオォ…」ドサッ
赤ずきん「あと2匹…。もう人を襲わないなら見逃してあげる、私は狼に因縁があるけど…逃げる相手を追撃したりしないわ」
狼2&3「…グルオォォォッ!」ババッ
赤ずきん「逃げるつもりは無し…それよりもあのおじさんの代わりに私を食べようって事?やめておきなさい。私なんか食べたら…」ガチャッ
ズダーン ズダーン
狼達「グルルァ…」ドサドサッ
赤ずきん「お腹を壊してしまうわよ?あぁ…腹痛という意味じゃなくて物理的に、ね」スタッ
・・・
ゴーテル「ふぅ、やはり老いぼれ二人だけとなると静かじゃな」
魔法使い「お主は…ラプンツェルのことばかり考えておる親バカだと思っておったが違うようじゃな」
ゴーテル「なんじゃいきなり、悪いが喧嘩を買うような元気はありゃあせんぞ?なんとか覚悟を決めはしたが…それでもラプンツェルの事を考えるともう心配で心配で…胸が張り裂けそうじゃわい」
魔法使い「その割にはティンカーベルの事を気遣っておったじゃないか、説教と見せかけて二人のために諭してやっていたように見えたが」
ゴーテル「お前にはお見通しというわけじゃな、まぁ…あの二人はお互いにズケズケとものを言い合っているように見えて案外気を使いあっておるからな、その解決になればと思ったんじゃよ」
魔法使い「ティンカーベルの…妖精の運命を知っておったんじゃな、お主」
ゴーテル「ワシはワシで色々と調べておるんじゃ、老いぼれにできるのは知恵袋の披露と相場が決まっておるし」
魔法使い「まぁそうだ、で…お主はどう思う?ティンカーベルが未だ生かされていることについて。小さくともあやつは世界移動も使えるし妖精の粉もある、早々に消しておいてアリス側に損はないはずだというのに」
ゴーテル「十中八九、キモオタを無力化するために生かしておるんじゃろうな。アリスにとってキモオタの能力影響力は未知数…となればいざという時、精神的に大打撃を与えるすべを用意しておきたい」
魔法使い「…それがティンカーベルの消滅。というわけだな、長い時をともに過ごし親しくなった友人を消されてはキモオタも平常心ではおれまい…」
ゴーテル「おそらくアリスはそれを狙い、能力の計り知れないキモオタへの最後の切り札としてティンカーベルをあえて生かしている…」
魔法使い「えげつない娘だ、などというのも今更な気もするがな」
ゴーテル「なんにせよもうワシ等にできることはありゃせん、突如別れがきた時にどうするか…それはあの二人次第じゃろ」
魔法使い「そうだな、心配しても仕方あるまい。ワシ等は今自分達にできることをするだけじゃな…」
152 :◆oBwZbn5S8kKC :2016/04/09(土)00:45:07 ID:MN1
裸の王様の世界 裸王の城 地下牢
シーンッ……
ブリキ(……今、何時頃だろうか。ヘンゼルと約束を交わしてからどれ程の時間が流れたのだろう…数時間?数日?あるいは数ヶ月…?)ギシッ
ブリキ(時計も無く太陽の傾きも見えないこの地下牢では…俺に時を知るすべはない、時に流れすらもあやふやだ)
ブリキ(……あぁあいつ等と離れ離れになってどれくらいの時が流れただろうか。ドロシー…かかしやライオンは無事だろうか、辛い思いをしていないだろうか)
ブリキ(いいや…あいつ等は俺の自分勝手な行動に巻き込まれたんだ、辛い思いをしていないはずがない。俺のことを恨んでいるだろう)
ブリキ(だがせめて無事でいて欲しい。かかしはしっかりしてるから平気だろうが…ライオンとドロシーが心配だ。誰か親切な奴に出会えていればいいが…雨風はしのげているだろうか?食事はとれているだろうか?気が弱い連中だから良いように利用されてないだろうか?それと……)
ブリキ(……よそう、あまりに不毛だ。どれだけ不安に思おうと心配しようとこの牢から動けない俺には何一つできない、実に情けない話だ)
ブリキ(仲間のことを他人任せにするなど無責任だが…それでも今の俺にはそうするしかない。ヘンゼルの言葉を信じて今はただ待つことしかできない)
ブリキ(自業自得とはいえこの暗い地下牢で身動きがとれず、ただ思索に耽り自問自答する日々。思えばこの状況は…あの頃と似ている)
ブリキ(昔、森の中で突然大雨に降られ…間接が錆び付いて長い間動けなかった事があった。あの時も自分ではどうすることもできず自問自答を繰り返していた)
ブリキ(あの時錆び付いた俺に声をかけてくれたのが…偶然通りがかったドロシーだったな。ずいぶんと昔の話だが、あいつとの出会いは今でも鮮明に思い出せる)
153 :◆oBwZbn5S8kKC :2016/04/09(土)00:47:00 ID:MN1
ずっと昔…
オズの魔法使いの世界 ブリキの木こりが暮らす森
ドロシー「あ、あのっ…お願いされたとおり小屋に行ってみたんですけどオイルの缶ってどれかわからなくて…すいません、こういうの詳しくなくて…すいません」オドオド
かかし「とりあえずそれっぽい缶を全部持って来たゾ、錆びに効くオイルってのはどれダ?」ガラガラ
錆びブリキ「すまない。その右から二番目の缶がそうだ、悪いが右腕の関節に差してくれるか?利き腕が動けば後は自分でやれる」
かかし「悪いけどドロシーがやってくレ。ただでさえ燃えやすい俺の体にオイルが染み込んだらもしもの時ヤバいからナ」
ドロシー「あっ、そうですよね…じゃあ私がオイルを差しますね、えーっと…右から二番目の缶…これですよね?」ヒョイッ
ツルッ ドバー
かかし「ぬわーッ!?」ビッシャ-
ドロシー「あぁーっ!すいませんすいません!言ったそばから…す、すぐに拭き取ります…!」バッ
かかし「お、おい!この辺オイルまみれなんだぞゾ!あんまり慌てて近寄るとお前…」
ズルッ
ドロシー「きゃあぁっ!?」ガシャーン
かかし「おいーッ!持ってきたオイルが全部…!お前ドロシーちょっと落ち着ケ!大惨事じゃねぇカ!」ベタベタ
ドロシー「あぁぁ…!すいませんすいません!」ドロドロ
錆びブリキ(……頼む相手を間違えた)
155 :◆oBwZbn5S8kKC :2016/04/09(土)00:49:50 ID:MN1
チューッ キュッキュッ
ドロシー「…はいっ、これでどうでしょうか。右腕、動かせそうですか…?」
ブリキ「…ああ、問題なく動く。助かった、長い間動くことができずに参っていたんでな」グルングルン
ドロシー「あっ、それはよかったです…あのっこのまま別の関節にもオイルを差しましょうか?」ソッ
ブリキ「いや、自分でやれる。オイルの缶を渡してくれ……次は落とさないように頼む」
かかし「本当に気をつけて渡せヨ?これ以上オイルまみれになるのは御免だゾ」ベタベタ
ドロシー「うぅ…すいません」ショボーン
ブリキ(なんだか随分と頼りない娘だ。相当気も弱そうだ…見たところ旅の途中のようだがこんなんでよくやっていけるもんだな)ジーッ
ドロシー「あ、あの…私何かしちゃいましたか?」オドオド
ブリキ「いいや、この辺りを人が通るのは珍しいんでな。見たところ旅の途中のようだが…どこを目指している?」
ドロシー「えっと、あの、エメラルドの都です。大魔法使いのオズ様にお会いするためにかかしさんと二人…あっ、トトも入れたら3人ですね、3人で旅してて…」
トト「わうんわうんっ」
ブリキ「エメラルドの都…話に聞いた程度だがここからだとずいぶんと遠い。その魔法使いに何の用事があるのか知らないが過酷な旅になるぞ」
かかし「それでも俺達は行かなきゃなんねぇんだヨ。俺はオズに頼んで脳みそを貰うんダ、知恵さえありゃあ畑のカラスどもにバカにされねぇで済むしナ」
ドロシー「私は…オズ様にお願いして故郷のカンザスへ帰る方法を教えてもらうんです。エム叔母さんも心配してるだろうから早く帰らなくちゃ…」
156 :◆oBwZbn5S8kKC :2016/04/09(土)00:53:16 ID:MN1
ブリキ「そうか、家族が待ってるなら帰らないとな」
ドロシー「は、はい…頑張りますっ!」
ブリキ(…この先には猛獣が出る森もある。妙なかかしが一緒だとしてもこの気弱な小娘が遠いエメラルドの都までたどり着けるとは思えない)
ブリキ(まぁ俺には関係のないことだ。こいつのドジに巻き込まれる前に礼を言って去ろう)
ドロシー「あ、あの…私も一つ聞いてもいいですか…?」
ブリキ「…なんだ?」
ドロシー「ブリキさんはその…どうしてブリキの体なんですか…?」
かかし「ン…?何言ってんダ?そいつはブリキの体だからブリキの体なんだろウ。ン?自分でもなに言ってるのかわかんなくなっちまっタ」
ドロシー「その、なんというか…かかしさんもですけど人間のように動けてお話もできるのにブリキの体だなんて初めて見たので…あっ失礼だったらごめんなさい」ペコペコ
ブリキ(常に謝ってるなこいつ…下手に言い渋れば無駄に謝られそうだな、それも面倒だ。素直に話してやった方が面倒も少ないか)
ブリキ「愉快な話ではないが助けて貰った礼に…聞きたいなら話そう。そもそも俺はブリキの木こりとして作り出された人形じゃない。昔は…元々は人間だった」
ドロシー「そ、そうなんですか…?なんだかすごいお話ですね、元々は人間だったのに今は全身をブリキで覆われているだなんて…いったい何でそんなことに…」
ブリキ「ある魔女の呪いを受けてな、その果てにこんな姿になっちまったというわけだ…話せば長くなるが」
ブリキ「昔、俺がまだ生身の人間だった頃の話だ。俺はしがない木こりだったが…そんな俺を愛してくれた女がいた。そして俺もまた彼女のことを愛していたんだ」
ドロシー「相思相愛の恋人同士だったんですね…すてきなお話です…!」キラキラ
ブリキ「…俺達は愛し合っていてやがて結婚の話がでた、俺は結婚資金をためるためにそれまで以上に精を出して働いた。が、彼女の母親に結婚を反対されてしまった」
かかし「ほウ…?なんでまタ…人間は愛し合った男女で結婚するもんなんだろウ?なにを反対する理由があるんダ?」
ブリキ「彼女は母親と二人で暮らしていたが炊事やら洗濯やら娘任せだったようでな、家を出られてはそれらを全部自分ですることになる。それが面倒だったんだろう、ずいぶんと怠け者な母親だったらしいからな」
ドロシー「そ、そんな理由で結婚に反対するなんて…お、おかしいと思います…」
ブリキ「とにかくだ母親にとって俺は邪魔な存在になった。そこで魔女に依頼して俺に呪いをかけたんだ、斧を振るうと自らの身体を切りつけちまうそんな呪いをな」
かかし「おおゥ…そりゃあ木こりにとっちゃ致命的な呪いじゃねぇカ。頭がいい奴ってのはおかしな事を考えるもんだナ」
ブリキ「最初に切り落としたのは左足だったな、だが知り合いのブリキ職人に頼んでブリキ製の左足をあてがってもらった。だが呪いは消えちゃいない、次は右足で次いで両腕そして頭…俺は生身の部分を少しずつ失っていった。だが…それでもめげなかった」
ドロシー「……」
ブリキ「愛する彼女と結婚したかったからな、多少の困難は苦にならなかった。だがそんな日々が続き俺の斧は遂に胴体を切り裂いた。そして胴体をブリキ製にしたとき俺の身体から生身の部分は無くなってしまった…その時だ、あれほど愛していた彼女のことがどうでもよくなった」
かかし「そりゃあどうしてダ…?」
ブリキ「完全にブリキ製の体になってしまった俺は心を失ってしまった。生身の体と一緒に愛する心もなくしてしまったのさ」
158 :◆oBwZbn5S8kKC :2016/04/09(土)01:01:31 ID:MN1
かかし「そりゃあ酷い話だナ…生身の体も心も失っテ、愛した女とも一緒になれねぇとハ…」
ブリキ「運がなかったのさ。それにこの身体もそれほど悪いもんじゃない、飯も食わずに済む眠らなくても済む。オイルを差さないと錆び付いてしまうのが難点だがな」
ブリキ「と、まぁ俺がブリキの体になった理由ってのはこんなもんだ。彼女は俺が心を失ったことを知らないだろうから今も俺のことを待っているかもしれないが…それすらもどうでもいいと思っている」
ブリキ「何しろ俺は心が無いブリキの木こりだからな。だがそれよりお前…大丈夫か?」
ドロシー「うぅっ…わだしのことはいいんでずよぉ…!ブリキざんは何もわるぐないのに…えっぐえっぐ…ひどいですよぉ…」ボロボロ
かかし「お、おウ…気持ちはわかるがお前の顔の方がひどいことになってんゾ…とりあえず涙拭けっテ…」
ドロシー「愛し合っていだのにどうでもよくなっちゃうなんて…ぞんなのあんまりでずよおぉぉ〜」ボロボロ
ブリキ「…何故お前がそこまで泣く?お前が辛い思いをしたわけじゃないだろう」
ドロシー「えっぐえっぐ…それはそうですけどぉ…悲しいじゃないですか…ブリキさんだって…本当は悲しいはずですよぉ…ぐすんぐすん」
ブリキ「……」
ブリキ(何故この娘がこうも悲しむ?いや、他人の不幸に悲しむ理由などないはずだ。これは同情あるいは哀れみ…そういった感情だ、そうでなければ他人のために涙する理由など…ありはしない)
ブリキ(俺にはこの娘が涙を流すのが理解できない。だが…俺に向けられている感情が同情や哀れみだというならば、何故俺は今…少し救われた気持ちになった?)
ブリキ(俺に心は無いはずなのに、何故この娘の涙をみると…空洞のはずの胸がざわつく…?)
159 :◆oBwZbn5S8kKC :2016/04/09(土)01:04:31 ID:MN1
かかし「もういい加減泣き止めっテ、気持ちはわかるが逆にお前の方が心配になっちまう程だゾ」
ドロシー「ぐすんぐすん…う、うん…ごめんなさい…」
ブリキ「お前たちは……かかしはオズに脳みそを貰うと言っていたな?」
かかし「おウ、頭よくなるのが俺の夢なんでナ。オズは大魔法使いらしいからそれぐらいのことは容易いだろうヨ」
ブリキ「オズに頼めば…俺も心をもう一度手に入れられるだろうか?」
ブリキ(今更だ。もうあれから一年以上たっているというのに…今更なにをしても遅い、そんなことはわかっている)
ブリキ(だが…俺の境遇に涙するこの娘の姿を見ていると…)
ブリキ(名前も忘れてしまった彼女の泣き顔を思い出す。あいつもずいぶんなお人好しで、他人の不幸に涙を流せる女だった気がする)
ブリキ「お前たちに話したせいかな、今になって昔愛した女の事が気になっちまった。今更だが…一度は失った心ってものに興味が沸いて来ちまった」
ブリキ「俺もお前たちと共にエメラルドの都へ…オズの元へ向かう旅に同行してもかまわないか?」
ドロシー「ブリキさん…!大丈夫ですよ、きっと!きっとオズ様なら心を与えるなんて簡単です!一緒に行きましょうっ」パアァァ
かかし「おウ、旅の仲間は多い方がいいからナ!」
ブリキ「ならば俺もお前たちとともに向かおう、オズが住むエメラルドの都へ」
160 :◆oBwZbn5S8kKC :2016/04/09(土)01:08:44 ID:MN1
今日はここまでです
作者について触れるのは先になりそうだけどまずはオズ組とヘンゼル裸王チームの場面になるかな?
『作者』編 次回に続きます
161 :名無しさん@おーぷん :2016/04/09(土)01:09:32 ID:5Ku
ごっつぁんです
162 :名無しさん@おーぷん :2016/04/09(土)01:15:58 ID:D4B
イッチ乙!
わぁブリキにそんな過去が…将来彼女とうまくいって欲しい…
そしてモンペが意外と(失礼)色々考えてるな…
163 :名無しさん@おーぷん :2016/04/09(土)03:01:30 ID:z5k
1さん乙です!
ブリキにそんな過去が(´;ω;`)
そしてドジっこドロシーのピュアさ可愛い…トトも出てきて嬉しかった!
老婆組も好きだー!!
182 :◆oBwZbn5S8kKC :2016/04/16(土)00:22:32 ID:z8G
現在
裸の王様の世界 裸王の城 地下牢
ブリキ(懐かしい話だ、俺の旅はあそこから始まった)
ブリキ(あの日、見ず知らずの俺のために涙を流すドロシーを見なかったら…もう一度心を手に入れたいなんて考えなかっただろう)
ブリキ(森の奥で錆び付き動けず、朽ちるのを待つだけだった俺に目的を与えてくれたのはドロシーだ)
ブリキ(あいつの純粋な心に振れたからこそ、俺はかつて愛した女の事を思い出せた…もう一度会いたいと思えた。ブリキの身体になってなお生きる意味が見つかった)
ブリキ(俺はあいつに救われた、俺にとってはそれが全てだった。だからあいつがアリスに利用されていると知った時…俺は他の何を犠牲にしてでもあいつを守り、助けようと誓った。だが……)
ブリキ(その結果が…これだ)ギシッ
ブリキ(すべての世界を敵にまわした挙げ句、何一つ救えなかった。二人の友を巻き込んで大切な仲間を傷付けただけだ。おそらくドロシーはきっと今も世界のどこかで泣いているだろう…)
ブリキ(だがそれはあの日のような優しい涙じゃない。脅威に怯え、孤独を恐れ、苦痛に耐えきれずこぼした涙)
ブリキ(俺がもっとうまくしていればあいつはそんな悲しい涙を流す必要はなかった。それだというのに不甲斐ない、俺は、俺は……!)ギシッ
カツンッ
ブリキ「……誰だ?」ギシッ
裸王「私だっ!我こそがこの国を統べる筋肉の伝道師…裸王なりっ!」マッスルポーズ
183 :◆oBwZbn5S8kKC :2016/04/16(土)00:25:03 ID:z8G
ブリキ「…誰も見ていないこんな場所でポーズをとる必要があるのか?」
裸王「無論っ!真のマッチョマンはその肉体美を披露するのに時や場所を選ばぬものなのだからな」マッチョ
ブリキ「…何用でここへ来た?王のお前が直々に出向いたという事はそれなりの用なのだろう?」
裸王「うむっ!その通りだ!だが本題に入る前にその拘束を解こうじゃないか、お前にはもう必要あるまいっ!」マッチョ
ガチャガチャ ギィッ
ブリキ「それは助かるが…構わないのか?俺はお前の兵を傷つけた悪党だ、王とはいえ独断で拘束を解くなど許されまい」
裸王「ハッハッハッ!裸王ノープロブレム!被害を受けた兵たちには了承を得ている、何かあれば私がすべての責任を負うと説得した
!さて何はともあれこの鎖を…ふんっ!」バキィッ
ブリキ「何故引きちぎった。ただ解けばいいだけだろうに」
裸王「ポージングで引き出される肉体美は素晴らしいものだ。だが筋肉の本質とは躍動によって輝く美しさ…そうは思わんかね?」ムキムキッ
ブリキ「…お前は筋肉の話をするために俺の元に来たのか?ならばあいにくだが俺には心も筋肉も無い、期待には応えられないぞ」
裸王「ハッハッハッ!生身の身体を持たぬお前と筋肉トークか!それは非常に心惹かれるがいい加減に本題に入らねばヘンゼルに渋い顔をされてしまいそうだなっ!さて…まずこれを渡しておこう」スッ
ブリキ「こいつは……錆止めオイルか?何故お前がこんなものを俺に…」
裸王「それは私からの贈り物ではないのだ。お前が地下牢に拘束されていると聞いて錆び付いていないかと心配した娘に渡すよう頼まれたものだ」
裸王「私の城で友と再会できることを待ち望んでいる、お前の友人にな」マッスルッ
184 :◆oBwZbn5S8kKC :2016/04/16(土)00:28:08 ID:z8G
ブリキ「ドロシー…!ヘンゼルはもうドロシーを捜し出したっていうのか!?あいつに託したあの時からそれ程月日は経っていないはずだぞ!?」ガタッ
ブリキ「いいや、ドロシーに会えるのならそんなことはどうだって構わない!王よ、今すぐに俺をお前の城へ案内してくれ!すぐにでもあいつに会いたい、これからは側にいてあいつを守ってやらないといけないんだ俺は…!」バッ
裸王「うむ、気持ちはわかるが落ち着きたまえ!そのようなボロボロの体でドロシーの前に出てどうする、恐らく彼女はお前のことを案じて心痛めるだろうっ!」マッチョ
ブリキ「…確かにそうだ、俺のひしゃげた体を見れば優しいあいつは自分に事のように悲しむ。それは…俺も嫌だ」
裸王「不甲斐ないことにお前の体を今すぐに直せる職人は…魔法の力をもつ鍛冶屋はこの国にはいないのだ」
裸王「だがこのマントを羽織ればいくらかは誤魔化せるだろうっ!これは私からの贈り物だ、少なくともボロボロになったお前の体を覆い隠すことはできるっ!」バサッ
ブリキ「気を使わせてしまって悪いな、使わせて貰おう」バサッ
裸王「ハッハッハッ!そのマントは友好国から送られた品なのだが、私は筋肉を衣類で隠すのが嫌なのでな!代わりに使ってくれれば無駄にならずにすんで私としても助かるのだ!」マッスル
ブリキ「そうか…肌触りなんざ俺には解らないが上等な品なんだろう、礼を言う。しかしヘンゼルの姿が見えないな…ドロシーは既に城にいるのだろう?ならばあいつは何を…」
裸王「ヘンゼルはライオンとかかしの両名に城に来て欲しいと頼みに行くと言ってた。【アラビアンナイト】と【桃太郎】の世界にいるという情報をラプンツェルと桃太郎から得ていたのでな!」マッチョ
ブリキ「ま、待て待て!まさかあいつらの居場所まで突き止めたのか!?この短時間で一体…」
裸王「うむ、全て偶然と言ってしまえばそれまでなのだがな。私とヘンゼルは別件で【シンデレラ】の世界を訪れていた、そこには目的を同じくするラプンツェルや桃太郎も居たのだ」
裸王「キモオタ達が来るのを待っていた我等はその間軽く情報のやりとりをしていた、その際に聞いたのだ。彼ら彼女らが偶然かかしやライオンと出会い、行動を共にしていることをな」
裸王「折角居場所が分かっているのだ、お前とドロシーだけでなく四人揃って居た方がいいのではないかと思い…ヘンゼルは彼らに直接来てくれと頼みに行ったのだ」
裸王「過去が原因とは言え大人に対する態度は少々目に余る部分もある、だが心根は実に優しい少年だ。この裸王、感心しっぱなしだっ!」マッスルポーズ
185 :◆oBwZbn5S8kKC :2016/04/16(土)00:33:57 ID:z8G
裸王「ライオンは【蛙の王子】の世界で桃太郎と出会い戦いに備え訓練をしていたらしい。かかしは【アラビアンナイト】の世界で勉学に励んでいるとラプンツェルが自信満々で言っておった、何故彼女が誇
らしげなのかはわからんがな?ハッハッハ」マッスル
ブリキ「それじゃあ何か…?アリスは俺たちを別々の世界へ無作為に飛ばした。そして偶然にもその先々で俺を含めて全員が、お前たちやキモオタの仲間とゆかりのある世界へ飛ばされたって言うのか!?」
裸王「ふむ、しかしそう驚くことでもあるまい。アリスはおとぎ話を消滅させて回っているのだからおとぎ話の数は極端に減っているはずだろう?」
ブリキ「それは間違いない、一時期と比べれば相当減っているはずだ。それには他でもない俺も関わっていたからな」
裸王「一方でキモオタ達はそれを防いで回っていた、故に今もなお残っているおとぎ話がキモオタ達とゆかりのある世界だという可能性は必然に高くなると言うわけだ!ハッハッハ」マッチョ
ブリキ「なんという偶然か巡り合わせか…いいや喜ばしいことに変わりはない、こうも早くあいつらに会えるんだからな」
裸王「うむ、ではそろそろ行こうではないか。おそらくヘンゼルも二人を連れて城に戻っているだろうからなっ!」マッスル
ブリキ「…あぁ、そうだな」ギシッ
裸王「むっ?どうかしたかね?」
ブリキ「あいつらに一刻も早く会いたい。その気持ちはあるのだが、この事態を招いたのは俺の責任…今になってどのような顔で会えばいいのかと考えてしまった」
裸王「ハッハッハ!ドロシーも言っていたが…お前に心が無いというのはどうも信じられんな!ハッハッハ!」
ブリキ「そういわれてもな、実際俺には心が無い。ブリキの体に心など存在しないのだからな」
裸王「ハッハッハ!心配せずとも仲間達もお前の考えや行動を汲むくらいの心は持ち合わせているだろう?」
裸王「それにドロシーもお前に会いたがっていたぞ、おそらくは仲間達もだ。あれこれと考えるまでに会いに行った方が早いぞっ!」
裸王「多くを語らずとも親しい仲間ならば、顔を合わせるだけで伝えられることもあるだろう?案ずるより生むが易し!私も付き添うぞ!さぁ案内しようではないか、我が城を!」ハッハッハ
186 :◆oBwZbn5S8kKC :2016/04/16(土)00:36:36 ID:z8G
同じ頃・・・
おとぎ話【ライオンとねずみ】の世界 森の奥地
人魚姫の声『何これ何これ!右も左も木、木、木!あと花!うぅ〜見たこと無い光景にちょーテンション上がるんですけどぉー!』ウキウキ
赤ずきん「見慣れない風景にワクワクする気持ちは分かるけど少し落ち着いたら?あとでバテても知らないわよ?」フフッ
赤鬼「まぁいいじゃねぇか、俺達はそうでもねぇが人魚姫には珍しいんだろ。海の中に森はねぇからなぁ」ハッハッハ
人魚姫の声『そうそう!それにさ今の私は空気の精なわけじゃん?こういう空気のきれいな場所は過ごしやすいんだよねー」ヘラヘラ
赤ずきん「それは結構なことだけど、はしゃぎすぎて警戒を怠っては駄目よ?」
人魚姫の声『えー?警戒ー?こんなに静かで穏やかな森なのに何を警戒する必要があんのさー、海と違って凶暴な鮫も鯨もいないしさ〜余裕余裕ー』ヘラヘラ
赤ずきん「あなたが知らないだけで森は危険だらけなのよ。凶暴な野生生物だっているかも知れない、例えば狼とかね」
人魚姫の声『オオカミ…?なんか聞いたことがあるようなないような…』ハテー?
赤鬼「狼ってのは森に住む獣だ、鋭い牙を持っていて獰猛な性格の奴が多い。おとぎ話の筋書きの中じゃ大抵悪役として出てきて主人公を食っちまったりするなぁ」
人魚姫の声『へーっ、森にも鮫みたいな凶暴な生き物がいるんだねー。聞いた感じヤバそうだけど、もしかしてかなり警戒した方がいい系?』
赤ずきん「そうよ、この世界の狼がどうかは知らないけど…【赤ずきん】の狼は人語を理解する知能があったし、元々の筋書きでは私を確実に食べるために狡猾な作戦まで練る…恐ろしい獣よ」
赤ずきん「基本的に群で行動するらしいから囲まれでもしたら厄介よ。各々きちんと警戒しながら進みましょう」
187 :◆oBwZbn5S8kKC :2016/04/16(土)00:43:32 ID:z8G
赤鬼「おう、それに森の中ではぐれちまったら厄介だ。特にお前は俺達からでさえ姿が見えないんだから、注意してくれよ?」
人魚姫の声『はいはーい!でもさぁ、森が危険なことも油断しちゃだめなこともわかったけどさぁ、だからってずっとピリピリしてるってのもつまんなくない?楽しくいこうよせっかくだしさぁー』ヘラヘラ
赤ずきん「警戒しろって言った側からあなたは……けれどまぁ気持ちは分からなくもないわ」
人魚姫の声『そうっしょ?なんか楽しい話でもしながら進んだ方が楽しいって!』ヘラヘラ
赤鬼「しかし楽しい話っつってもなぁ……それよりも赤ずきん、なんつぅか聞きそびれちまってたんだけどな。この世界が舞台の【ライオンとねずみ】っておとぎ話、どんな内容なのかまだ聞いてなかったよな?」
赤ずきん「あら、言ってなかったかしら?」
人魚姫の声『あっ、ホントだ。あたしもまだその話聞いてないや、ちょうど良いから教えてほしいんですけどー?』
赤ずきん「そうね、きっともう結末は迎えているんでしょうけど…このおとぎ話がどんな内容なのかは知っておいた方がいいわね。それじゃあ少し聞いて貰おうかしらr」
グオォォォォッ!
赤鬼「なんだぁ!?森の奥の方から獣のうなり声が聞こえたぞ!?」
赤ずきん「…この鳴き声!」バッ
人魚姫の声『ちょ、ちょっと!どーしたっての赤ずきん!?』
赤ずきん「間違いない…この鳴き声は狼のものよ!きっと誰かが狼に襲われてる!助けにいってくる、悪いけれど話の続きは後よ…!」タタッ
188 :◆oBwZbn5S8kKC :2016/04/16(土)00:46:13 ID:z8G
狼「グオオオォォォッ!!」ガルルルッ
狩人のおっさん「ひ、ひえぇ…!お助けぉぉー!」ジタバタ
狼2「ガアァァッ!」グワーッ
狩人のおっさん「ひえぇぇっ!くっ、もう弾丸も切れちまってる…!こんな事になるなら欲を出して森の中に入ったりするんじゃなかった!」
狩人のおっさん「この森に大層立派なライオンが住むって聞いたから毛皮を剥ごうと思って狩りに来たってのに…畜生!金に目が眩まなけりゃこんな事にはぁぁ!!」
狼3「グルルッ…グオオォォォッ!!」ババッ
狩人のおっさん「クゥッ、万事休すか…!」
ズダーン ズダーン ズダーン
狼達「ガウゥ…!ガルアァァ…!」ジタバタ
狩人のおっさん「な、なんだぁっ!?誰か助けてくれたってのか!?」
スタッ
赤ずきん「…1、2、3匹。狼の群にしては少ないわ。かといってアイツのように一匹狼ってわけでもなさそうね」ガチャッ
狩人のおっさん「女の…子供!?今の攻撃はおめぇがやったのか!?子供だってのになんて的確な射撃だ…!」
赤ずきん「誉めてくれるのはありがたいけれど、今のうちに逃げなさい。狼共は引き受けてあげるけれど…あなたの命の保証まではしかねるから」スッ
189 :◆oBwZbn5S8kKC :2016/04/16(土)00:48:33 ID:z8G
狩人のおっさん「そ、そういうことなら…嬢ちゃんすまねぇが後は頼むぞ!」ドタバタ
赤ずきん「…さぁ、私が相手になってあげるわ。一発の弾丸で倒れるようなヤワな体じゃないでしょう?ほら、さっさと掛かってきなさいな」フゥ
狼1「ググッ…グルルラァァ!」バッ
赤ずきん「あらあら、随分と怒っているみたいね。私が食事の邪魔をしてしまったからかしら?」ズダーン
狼1「グ、グオォ…」ドサッ
赤ずきん「あと2匹…。もう人を襲わないなら見逃してあげる、私は狼に因縁があるけど…逃げる相手を追撃したりしないわ」
狼2&3「…グルオォォォッ!」ババッ
赤ずきん「逃げるつもりは無し…それよりもあのおじさんの代わりに私を食べようって事?やめておきなさい。私なんか食べたら…」ガチャッ
ズダーン ズダーン
狼達「グルルァ…」ドサドサッ
赤ずきん「お腹を壊してしまうわよ?あぁ…腹痛という意味じゃなくて物理的に、ね」スタッ
キモオタ「我輩がおとぎ話の世界に行くですとwww」ティンカーベル「そう」 『作者』編
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