キモオタ「我輩がおとぎ話の世界に行くですとwww」ティンカーベル「そう」 『作者』編
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688 :◆oBwZbn5S8kKC :2016/08/22(月)01:12:04 ID:kap
雪の女王「黙れ、私は認めない。そうだ魔法だ…魔法を使えばいい!マッチ売りの所へ魔女が現れる、これなら自然な展開だ」
アンデルセン「【シンデレラ】は名作だよ、ペロー先生の童話はどれもすばらしい。でも【マッチ売りの少女】には相応しくない」
雪の女王「貴様…いい加減にしろ、今度こそ問題はないだろう」
雪の女王「【シンデレラ】は人気の高い作品だ、あれも貧しい娘のシンデレラが登場するが魔法で助けられるじゃあないか。ならばマッチ売りも同じように…」
アンデルセン「私の作風はペロー先生のそれとは大きく異なる。民間伝承を元にしたファンタジー色の強いペロー先生の作品と違って私の作風はずっと現実的だ」
アンデルセン「ファンタジー色の強い作品を書くときだってリアリティは残している、そしてこの【マッチ売りの少女】は限り無く現実に近い形に仕上げたいと考えている、だから魔法使いは出せない」
雪の女王「マッチ売りを幸せにしたいとお前は言ったはずだ、ならば魔法を使って助ければいいだろう。何が気にくわない?」
アンデルセン「それなら聞くけれど現実世界に住む貧しい子供たちは…清く生きていれば魔法使いが来るのか?正しく生きていれば王子が来てくれるのか?ガラスの靴を持って?」
雪の女王「…いいや来ないさ。だが別にいいだろう、おとぎ話の世界なんだから多少は都合がいい展開だとしても」
アンデルセン「駄目なんだそれじゃ。ここで魔法に頼っては私が伝えたいことがかき消される、キチンと読み手に伝わらない」
アンデルセン「この思いが伝わらなければ未来を変えられない。貧しい子供たちを取り巻く現状を変えることなんてできないんだよ」
689 :◆oBwZbn5S8kKC :2016/08/22(月)01:16:12 ID:kap
雪の女王「未来?現状を変える?貴様は何を…」
アンデルセン「【マッチ売りの少女】はただのおとぎ話じゃない」
アンデルセン「私が童話作家として出来る、貧しい子供たちの未来を救うための希望だ」
雪の女王「救う…?世界を、おとぎ話で、か?どういう事だ…?」
アンデルセン「…雪の女王、悪いが今日は帰ってくれないか」
雪の女王「…断る。貴様は何を言っている、話はまだ終わっていないだろう」
アンデルセン「わかっている。この話をうやむやにするつもりはない、ただ…君に見て欲しいものがある。だから明日、同じ時間にこの場所に来てくれないか?」
雪の女王「……」
アンデルセン「私がこのおとぎ話を通して伝えたいことを見せる。言葉では伝えきれないが…女王ならば必ず理解してくれるはずだ」
雪の女王「…いいだろう。つき合ってやる、ただしお前がこのおとぎ話に込めた思いとやらに納得がいかなかった場合は…このおとぎ話を世に出すことは許さない」
アンデルセン「それでも構わない。なんなら両腕をへし折ってくれても構わない」
雪の女王「…いいだろう。ならば明日、もう一度訪れる事としよう」スッ
690 :◆oBwZbn5S8kKC :2016/08/22(月)01:21:01 ID:kap
女王が去った後 アンデルセンの書斎
男の声『貴様も酔狂な男だ』
アンデルセン「あぁ…いらしてたんですね。声が聞こえませんでしたからどこかへ行かれたのかと」
男の声『傍らでずっと聞いていた。所詮あの女はおとぎ話の住人、作者であるお前がその気になれば氷結能力を失わせることも出来ただろうに』
アンデルセン「その必要はありませんよ。それに…私を殺したいほど憎んでいるという事はそれ程マッチ売りや他の主人公を思ってくれていると言うことです。それは嬉しいことですよ」
男の声『くだらないな。所詮おとぎ話の住人など我々作者の道具に過ぎない。想いを伝えるための道具にな』
アンデルセン「あなたの事、尊敬していますよ。しかしそのような考えには賛同できません」
男の声『お前に賛同して貰おうとも思わん。だが私には無意味に思えてならない』
アンデルセン「そうでしょうか?」
男の声『あいも変わらず貴様はおとぎ話で未来を変えるなどと宣っているしな。不可能な夢を見るのも大概にしろ』
アンデルセン「不可能ではありませんよ。長い時間はかかっても必ず変えられます」
男の声『馬鹿め。実際に私は千年以上もの長い間人間の歴史を目の当たりにしてきた、だがおとぎ話如きに何かが変えられたことなど一度もない。不可能だ』
アンデルセン「……」
男の声『そもそみだ、おとぎ話の住人に現実世界の人間であるお前に考えなど理解できる訳ないだろう、世界が違う』
アンデルセン「そんなことはありませんよ。彼女は心優しい女性です、きっと私と同じ感情をもってくれるはずですよ」
・・・
693 :◆oBwZbn5S8kKC :2016/08/22(月)01:25:20 ID:kap
今日はここまで 『作者』編 次回へ続きます
次回以降予告
翌日、再びアンデルセンの元へ訪れた雪の女王
現実世界で雪の女王が目の当たりにした『現実』とは…
次回をお楽しみに!
695 :名無しさん@おーぷん :2016/08/22(月)03:50:13 ID:JC2
乙!
男の声、1000年以上…、ということから考えてこの男には実体がない?
696 :名無しさん@おーぷん :2016/08/22(月)06:48:37 ID:VMb
乙!アンデルセンが言ってるハッピーエンドの意味がやっと分かった…
697 :名無しさん@おーぷん :2016/08/22(月)07:02:17 ID:JrJ
1000年…イソップ?かな?
698 :名無しさん@おーぷん :2016/08/22(月)14:33:34 ID:oT8
乙です!
ハッピーエンド=救いってことか…
やり切れないなぁ…
そう思わせることがアンデルセンのしたいことなんだろうけど…
続き待ってます!!
707 :◆oBwZbn5S8kKC :2016/08/29(月)00:05:56 ID:VlT
時は少し遡って…過去、1835年
現実世界 デンマーク アンデルセンの自宅
出版業者「いやー、凄いですよ先生!先日増刷したばかりだというのに追加で刷ってくれって依頼がバンバン来てて…更に更に増刷することが決まりました!」ホクホク
アンデルセン「ふふっ、なんだか作者の私よりも君の方が嬉しそうだ」
出版業者「そりゃ嬉しいですよ!自分の所で印刷した本が大ヒットしたんですから、出版冥利に尽きるってもんです!」
出版業者「それにバンバン増刷してるんでぶっちゃけ儲かってます!これもアンデルセン先生と『即興詩人』のお陰ですよ!」
アンデルセン「私のような無名の作家の作品を世に出してくれたんだから君に感謝しているのはむしろ私の方だよ」
出版業者「そんな畏れ多いですってー!でも無名作家なのはもう過去の話ですよ、アンデルセン先生の名前を知らないデンマーク人はもう居ませんからね!よっ!有名作家!」ポンッ
アンデルセン「ふふっ、そんなにおだてなくても次回作を出すときには是非君の所に頼もうと思っているよ」クスクス
出版業者「いやいや!お世辞とかゴマスリとかではなくて…でも今後ともご贔屓にしていただけるならありがたいです!うちもバッチリ高品質な本を印刷し続けますんでまた声かけてください!」
アンデルセン「あぁ、実はいくつか案はあるんだ。まだ完成にはほど遠いのだけどね」スッ
出版業者「おぉ!それは楽しみですね、ちなみにどんな作品なんですか!?『即興詩人』のような恋愛小説ですか?それとも冒険小説?いや推理小説というパターンも…」
アンデルセン「どれもハズレだ。『即興詩人』への反響は非常に喜ばしいが私が目指している作家は小説作家ではないんだよ」
アンデルセン「私が目指しているのは童話作家だ。だから次の作品はおとぎ話にしようと思っている」
出版業者「お、おとぎ話…ですか?えぇ…マジですか…?」ドンビキ
708 :◆oBwZbn5S8kKC :2016/08/29(月)00:09:53 ID:VlT
出版業者「ちょ、ちょっと待ってください先生!それちょっと考え直しませんか!?」ガタッ
アンデルセン「何故だい?私がおとぎ話を執筆することに何か問題があるのかな?」
出版業者「問題しかありませんよ!おとぎ話っていうのは子供向けの読み物で…!いわゆる子供だましなんですよ!?」
出版業者「世間ではほとんどの場合、童話は文学作品として認められませんし扱いも小説等よりずっと劣ります…それは先生もご存知でしょう?」
アンデルセン「童話という作品を取り巻く現状は知っているよ。しかしおかしいとは思わないかい?おとぎ話には素晴らしい作品だって多いんだ、それなのに子供向けだという理由で一蹴するなんて…間違っている」
出版業者「先生の仰りたい事は解りますけど、それが世間の評価なんですって!先生は『即興詩人』のような名作を執筆できる立派な小説家なんですから小説一本でいきましょうよ!」
出版業者「せっかく世間に認知されて評価もされてるのに、わざわざ童話なんか書いて先生の評判を落とすことは無いですって!」
アンデルセン「童話は近い将来、必ず文学作品として認められて確固たる地位を築く。シャルル・ペロー先生やヤーコプさんにヴィルヘルムさんのような童話作家もこの先増えていくだろう」
出版業者「それでも…!先生は一般的な小説が書けるんですからそっちに力を入れるべきです!」
アンデルセン「その方が君の会社は儲かるから…かい?だから人気の低い童話を書かれては困ると?」
出版業者「…正直に言えばそれも理由の一つです!でもそれだけじゃありません、私は出版業者である前に一人の人間として先生に才能に惚れているんです!『即興詩人』も自腹で買いました!」
出版業者「先生の才能はずば抜けています!だからこそ童話なんて書くのは勿体ないです!これは先生のファンとしての私の気持ちなんです!」
710 :◆oBwZbn5S8kKC :2016/08/29(月)00:13:39 ID:VlT
・・・
アンデルセン「……何故だ、何故解ってくれない。世間のおとぎ話に対する評価は不当だ…何故だ…」ブツブツ
男の声『机に突っ伏していても作品は仕上がらない。いつまでそうしているつもりだアンデルセン』
アンデルセン「正直、あそこまで強く反対されるとは思っていませんでした。彼は『即興詩人』の出版で私のために親身にしてくれましたから、きっと協力してくれると信じてました」
アンデルセン「そのうえ…彼の忠告は私の作家としての将来を案じているからこそのものです。あれは彼の心からの言葉ですから尚更堪えました…」
男の声『だから私は忠告してやったのだ、童話作家を目指すなど止めろと』
アンデルセン「しかし…私の夢は童話作家です。作品を通して想いを伝えるには童話作家でなければいけません」
男の声『小説家の何が不満だ?小説でも作品を通して考えや想いを伝えることはできるだろう』
アンデルセン「そうですが、子供は小説を読みません。私が本当に想いを伝えたい相手は子供たちなんです」
男の声『お前はおとぎ話というものを高く評価しすぎだ。お前が思うほどおとぎ話は良いものでも力を持ったものでもない』
アンデルセン「かつては高名な童話作家だったあなたが、そんなことを口にするのですか?」
男の声『昔の話だ。今はただの亡霊だ。千年以上も前に肉体は朽ちたが、どう言うわけか私の魂はこの世に留まっている…理由は解らんがな』
男の声『だが現世に残れるなら儲けものだ、私は様々な人間の元を転々としながら長い時間を過ごした。霊で居るのも悪くない、こうして優れた作家の側にいればいつでも新作の小説を楽しめるのだからな。なぁアンデルセン』
アンデルセン「優れた作家などと…買いかぶりすぎですよ。『即興詩人』だってたまたま読者のウケが良かっただけです」
男の声『謙遜するな、お前の才能は本物だ。だからこそ私はお前の元に居る、そしてその存在を明かした。…その童話に夢を見ている所だけは頂けんがな』
アンデルセン「童話作家のあなたですら、認めてはくれないのですね。おとぎ話が持つ力を、未来を変える力を」
男の声『かつて童話作家だったからこそ、千年以上の時を過ごしてきた私だからこそ認めないのだ』
男の声『生きていた頃はお前と同じ考えを持っていた頃もあった。だが結局、おとぎ話などただの作り話に過ぎない。まして希望を託すなど愚かしい事だ』
・・・
711 :◆oBwZbn5S8kKC :2016/08/29(月)00:18:11 ID:VlT
雪の女王が訪れた翌日
現実世界 デンマーク アンデルセンの自宅
・・・
男の声『起きろ。起きろと言っているのだ、アンデルセン』
アンデルセン「…んん、うたた寝してしまったようだ」ウツラウツラ
男の声『あの女との約束の時間まで僅かだ。寝過ごしてまた家を破壊されては私も居心地が悪い、早急に脳を覚醒させろ』
アンデルセン「あぁ…マズいですね。寝ぼけ眼では彼女に凍らされるかも知れない。えぇっと…蝶ネクタイはどこにしまったか…。フフッ…」
男の声『…何を笑っている?』
アンデルセン「思い出し笑いですよ、先程夢を見ましてね。私が童話作家になる前、丁度『即興詩人』を出版したころの夢です」ゴソゴソ
男の声『あぁ…あの頃か。私はあの時散々忠告してやったのに、結局お前は童話作家になるという愚かな道を選んだのだったな』フンッ
アンデルセン「私の夢でしたからね。ですが今はこうして結果も残せています、ですから『愚かな』という物言いは訂正していただきたいものです」
男の声『何を言っている、当時は滅茶苦茶に酷評されていただろう。あの出版業者の言葉通り、実力ある作家が童話など書くなとまで言われていた癖に』
男の声『まぁまったくの正論だったがな。それなのにどういうわけか…お前の童話は周囲に受け入れられてしまった、私には到底理解できんな』
アンデルセン「私が落ち目の時でも出版を引き受けてくれた彼や、常々文句を付けてくれたあなたのおかげですよ。感謝してます」フフッ
男の声『フンッ、お前のおとぎ話がどれだけ受け入れられようとそれがなんの力も持たないただの物語だという事実は変わらん』フイッ
アンデルセン「あなたは相変わらずですね、あの頃からおとぎ話への嫌悪は一向に変わらないんですから」
男の声『お前も大概だろう。いつまでも無意味な夢を追い続けている辺りがな』フンッ
・・・
712 :◆oBwZbn5S8kKC :2016/08/29(月)00:21:27 ID:VlT
現実世界 デンマーク アンデルセンの自宅 前
雪の女王「……」ザッ
──アンデルセン「明日、同じ時間にこの場所に来てくれないか」
──アンデルセン「私がこのおとぎ話を通じて伝えたいことを見せる」
雪の女王(あの男が【マッチ売りの少女】を通して読者に伝えたかったこと……)
雪の女王(あの男は、アンデルセンは多くの主人公を不幸にした憎むべき作者だ。だが……この言葉が嘘だとは思えない)
雪の女王(アンデルセンは何を思ってあんな辛い結末の物語を生み出したのか…)
雪の女王「ここで考えても仕方ないか…。奴に会えば全て解る」スッ
リンゴンリンゴーン…
アンデルセン「あぁ、いらっしゃい。来てくれたんだね女王」フフッ
雪の女王「お前が来いと言ったのだろう?それとも来ない方が良かったか?」ギロッ
アンデルセン「そんな事はないさ、歓迎する。ただまた昨日みたいに鍵を壊して進入してくるのかも…と身構えていたから拍子抜けではあるかな」フフッ
雪の女王「そうか。今からでも遅くはないだろう、貴様の期待に応えて扉を破壊してやろうか?30秒ほど貰うが」スッ
アンデルセン「待ってくれ、冗談だ。これから出掛けなければいけないんだ、扉を壊されるのは困ってしまう」フフッ
713 :◆oBwZbn5S8kKC :2016/08/29(月)00:23:38 ID:VlT
雪の女王「出掛ける…?その先に貴様があのおとぎ話を書いた理由があるというのか?」
アンデルセン「まぁそうだね。少し歩くが構わないだろう?」
雪の女王「いいだろう。そういう事ならつき合ってやる。それで、何か支度が必要か?」
アンデルセン「いいや、女王はそのままの格好で構わない。それ以外には必要なものも特に無い」
雪の女王「そうか。いや…待て、昨日似たような格好で街に出たら妙に目立ってしまったんだ。暗い色のコートを羽織るとかして変装しておいた方がいい」
アンデルセン「あぁ…確かに君の衣装は刺激的だ。この季節にしては露出も多い」クスクス
雪の女王「他人事のように…貴様がそのように生み出したんだろう?問題があるのなら貴様が責任を持ってなんとかしろ」ギロリ
アンデルセン「なんでも私の責任にされても困ってしまうな。だが問題はないよ、むしろ少々目立った方が好都合だ」
雪の女王「好都合…?」
アンデルセン「とにかくその格好のままでいいよ。さぁ、そろそろ行こうか」
雪の女王「待て。結局何処へ行くんだ?」
アンデルセン「そう身構えなくても良いじゃないか。なんてことない、ただのパーティー会場さ」スタスタ
714 :◆oBwZbn5S8kKC :2016/08/29(月)00:29:26 ID:VlT
現実世界 デンマーク とある大きなパーティー会場
アンデルセン「さぁ到着だ。えぇっと、招待状は何処へしまったかな…」ゴソゴソ
雪の女王「随分と大きな会場だな。無駄に豪奢で、警備も客も多い…身なりに随分と金をかけていそうな輩も多い」
アンデルセン「貴族のお坊ちゃんの主催だからね。さて、女王には一つ芝居を打って貰うが…ここでは私の助手として振る舞ってくれるか?」
雪の女王「私が…貴様の助手だと?私がお前を襲撃した理由を忘れたか?」ギロリ
アンデルセン「忘れちゃいないよ。ただ…私はあまりこういった場には顔を出さないから女性の君を連れていれば周囲の人間は興味本位で関係を聞いてくるかも知れない」
アンデルセン「私もこう見えてこのデンマークでは随分と名の知れている男だ。腑に落ちないかも知れないが面倒を防ぐためだ、頼むよ」フフッ
雪の女王「…やむを得ないか。あくまでフリだ、いいな?」
アンデルセン「あぁ、構わないよ。助手クン、早速荷物を持ってくれるかな?」フフッ
雪の女王「……」ギロッ
アンデルセン「参ったな。こんな調子じゃすぐに怪しまれてしまう、そうすれば目的を達成することも難しいな…いやはや参ったな」ヤレヤレ
雪の女王「わかりましたお持ちします…ただしあまり調子に乗ると後で地獄を見ることになりますよ先生」ギロッ
アンデルセン「あぁ恐ろしい助手だ…まぁお手柔らかに頼むよ」クスクス
715 :◆oBwZbn5S8kKC :2016/08/29(月)00:34:01 ID:VlT
ザワザワ ザワザワ
アンデルセン「さて…この辺りに彼が居るはずだが…」キョロキョロ
出版業者「あっ、アナスン先生!今日はご足労頂きありがとうございます!なんとお礼を言っていいやら!」
アンデルセン「やぁしばらくぶり。どうだい調子は?」
出版業者「おかげさまで特に病気もなく!どうやら先生もお変わりないようで!……ところでそちらの女性は?はっ!もしかして先生の恋人ですか!?」
アンデルセン「違う違う、そうじゃないよ。彼女は…」
出版業者「またまたー!隠さなくたって良いですよ!私と先生の仲じゃないですか!こんな若くて綺麗な女性捕まえて先生も隅に置けませんね!ふぅーっ!」フゥーッ
雪の女王「こいつが今、違うと言ったのが聞こえなかったか…?」ギロリ
出版業者「ひっ」ビクッ
アンデルセン「彼は私の作品の出版を担当してくれているんだ、随分長い付き合いになる。さぁ挨拶を」
雪の女王「…申し遅れました、私はアンデルセン先生の助手です。先程は冗談が過ぎて申し訳ございません」ニッコリ
出版業者「あっ、ジョーク!?そうですよね!いやいやこっちこそ失礼しました、先生は長らく助手さんをとらなかったので私はてっきり!ははは!」
アンデルセン「もう少しうまくあわせてほしいものだが…」ボソッ
雪の女王「お前のような男と恋仲だと思われた私の気持ちになれ。不愉快意外の何ものでもない」ボソッ
716 :◆oBwZbn5S8kKC :2016/08/29(月)00:38:38 ID:VlT
出版業者「何はともあれ私がご案内しますよ!先生、どうぞこちらへ!助手の方も」スッ
アンデルセン「それにしても…随分大勢の客を招いたようだ、あのお坊ちゃんは。相当費用もかさんでいるだろうな」
出版業者「えぇ、豪華すぎです…普通はここまでしませんよ。やっぱり貴族の方は体裁とか気にしますからね、著名人も結構来てますよ。それであのー…先生のご友人のグリム様とかリンド様とかには…招待状渡していただきました?」チラッ
アンデルセン「それは手紙で断ったはずだが?」
出版業者「でしたよねぇ…ダメ元で聞きました」ペコリー
アンデルセン「ヤーコプさんもヴィルヘルムさんも何かと忙しいだろうしジェニーには舞台だってあるんだ。例え暇があったとしてもこんなくだらない集まりの為にわざわざ呼べないし呼ばないよ」
出版業者「…いや本当にすいません。失礼なのは承知の上なんですけど、私としても一応頼むだけはしておかないと」
アンデルセン「構わないよ、君の気苦労も理解できる」
出版業者「すんません、でも本当にアナスン先生が来てくださっただけでもぜんぜん助かりました。これでうちの会社も首の皮繋がりましたよ…」
雪の女王「おいアンデルセン…先生、結局この集まりは何なのですか」
アンデルセン「とある貴族の坊ちゃんが先日小説家としてデビューしてね、これはその記念式典を兼ねたパーティーというわけだ」
出版業者「そうなんです。その方はアナスン先生のファンらしくてですね…先生の作品を扱ってるうちの会社にその小説の出版をさせてやるからアナスン先生を紹介しろって言われまして」
出版業者「断ると後が怖いんで…失礼を承知で先生にお願いしていたんですよ。本当はこういう集まり苦手なのに本当にすいません、先生」
アンデルセン「まぁたまにはいいんじゃないか、それに別の目的も果たせそうだ」
717 :◆oBwZbn5S8kKC :2016/08/29(月)00:42:31 ID:VlT
雪の女王「なるほど…その貴族としてはこのパーティーに貴様…先生が来ていれば箔が付くというところか。こう見えて有名作家だものな」
アンデルセン「貴族というのはやたら見栄を張りたがる。私がいれば『あのアンデルセンが認めた!』とか言いはれる、自画自賛になってしまうが私の名前は出版物を出す時に使えば何かと都合がいいのさ」
出版業者「先生以外にもいろんな著名人来てますよ、画家とか政治家とか歌手やら色々…挨拶回りだけで大変ですよ」グッタリ
雪の女王「他人の威光を借りようって腹積もりか…馬鹿馬鹿しい」
アンデルセン「気持ちは分からんでもないがな、意味があるかどうかは別問題だが」
出版業者「ちょっと先生も助手さんも何処で誰が聞いてるかわかんないんでもうちょっとトーンを…ところで招待状と一緒にお贈りした小説は読んでもらえました?絶対送ってくれって言われてるんで…」
アンデルセン「あぁ、一応目を通しておいた」
出版業者「助かります。あっ、あそこにいらっしゃるのがその小説の作者でこのパーティーの主役の…」
雪の女王「貴族のお坊ちゃまか」
出版業者「先生、ホント軽くでいいんで挨拶して貰っていいですか?一応紹介するって約束なんで、ホントスイマセン」
アンデルセン「あぁ、では行こうか助手クン」スタスタ
雪の女王「…あぁ、行こうか先生」スタスタ
718 :◆oBwZbn5S8kKC :2016/08/29(月)00:47:17 ID:VlT
出版業者「せ、先生お疲れ様ですー!」ヘコヘコ
貴族作家「あぁ、君か。どうかしたのか?」
出版業者「先生に是非とも紹介したい方がいらっしゃいまして…ささっ、アナスン先生お願いします」ススッ
アンデルセン「本日はお招きいただきありがとうございます。お初にお目にかかります。私、ハンス・クリスチャン・アンデルセンと申します」ペコリ
貴族作家「おぉ、あなたがあの有名な!招待状をお渡ししたもののこの様なパーティーには滅多に足を運ばないと聞いていましたので心配していたのです」
アンデルセン「いえいえ、お招き感謝しております。この度はデビュー作品の出版おめでとうございます」
貴族作家「ありがとうございます。実は私はあなたのファンなのでお会いできて光栄です。立食ではありますが食事も用意しているので存分に楽しんでいただきたい」
アンデルセン「ありがとうございます。それにしても随分と豪勢な式典ですね、これほどに贅を尽くしたパーティーは私といえども見たことがございません」
貴族作家「そうでしょうそうでしょう!数々の著名人を呼び寄せ会場にも装飾にも料理も最上級のものを用意しましたからな」ハハハ
アンデルセン「流石は○○様の御子息、金に糸目を付けないとはまさにこのことでございますな」ハハハ
出版業者「先生ー!アナスン先生ー!口汚いの出てますって!」ヒソヒソヒソヒソ
貴族作家「フフッ、アナスン先生はどうやら冗談がお好きなようだ。ところで私の作品は既にごらん頂けましたか?」
アンデルセン「えぇ、もちろんですとも。非常に興味深い内容でした」
719 :◆oBwZbn5S8kKC :2016/08/29(月)00:53:36 ID:VlT
貴族作家「そうですか!あのアナスン先生に読んでいただけるとは光栄です。で…いかがでしたか?私の作品は」ウキウキ
アンデルセン「いやはや、あの様な凄まじい作品を目にしたのははじめてと言って差し支えありませんね」
貴族作家「おぉ、そんなに素晴らしかったですか!」
アンデルセン「えぇ、なんと表現しましょうか…読み手の感動を誘う言葉使い、終止収まることのないワクワク感と膨れ上がる期待…それを受け止めるだけの重厚な結末」
アンデルセン「私にはとても真似できない物語でした」
貴族作家「おぉ、アナスン先生にそこまで誉めていただけると自信がつきますよ。次回作も期待していただきたい、完成しだい贈らせますので」ホクホク
アンデルセン「それは光栄ですね…んっ?どうしたかね助手クン?」
雪の女王「は?…………あぁ、そろそろお時間が迫っております先生」
アンデルセン「なんと、せっかくの機会だというのに…先生、名残惜しいですが私は新作の執筆がございますのでこの辺りで…」
貴族作家「そうですか。おい、アナスン先生をご自宅までお送りして差し上げろ」
使用人「はっ!」
アンデルセン「いえいえ、それには及びません。それでは私はこれで…」
720 :◆oBwZbn5S8kKC :2016/08/29(月)01:03:35 ID:VlT
・・・
出版業者「助かりましたアナスン先生!今日はありがとうございました、でも不意に口悪くなるの何とかしてください…」
アンデルセン「悪気はないんだが…さぁすまないが私は用事があるから失礼するよ。新作は出来次第連絡を入れるからもう少し待っていて貰えるかな」
出版業者「あっ、はい!お待ちしています!あの、送迎本当にいいんですか?遠慮なさらなくていいんですよ?」
アンデルセン「あぁ結構、寄るところもあるんでね。それじゃあお疲れ様」スッ
・・・
アンデルセン「ふぅ、少々疲れたな助手クン?」
雪の女王「もうその茶番はいいだろう…それと突然私に振るのは止めろアンデルセン」
アンデルセン「あぁ、すまない。君ならうまくあわせてくれると思ってね」フフッ
雪の女王「調子のいいことを…さっきだってそうだ。ワクワク感だの自分には真似できないなどと感想を述べていたが…貴様あの男の小説読んでいないな?」
アンデルセン「フフッ、失礼だな?ちゃんと読んださ、20ページくらいね」フフッ
雪の女王「そんなところだと思った。感想に内容がなかったからな、抽象的な言葉ばかりでストーリーや展開には一切振れていない」
アンデルセン「見抜かれてしまったな。だが彼は気が付いていなかったから良しとしようか」クスクス
雪の女王「不誠実な奴め。どれだけ興味が無くともそれなりに読んで感想を述べるのもああいった場では社交辞令として必要だろう」
アンデルセン「そうは言うが…実際の感想なんか言えば悪評が広がり私が贔屓にしている出版社が潰れることになりかねないしな」クスクス
雪の女王「大袈裟すぎるな。そんなに酷い出来と言うわけでもないだろうに」
アンデルセン「そうだな、まぁ彼の小説でもっともすばらしいところをあげるなら…鍋敷きとして使うのに丁度よい厚さだったというところくらいだな」フフッ
アンデルセン「さぁ用事は済んだ。次の場所へ向かおうか、女王」
雪の女王「次の場所…?」
721 :◆oBwZbn5S8kKC :2016/08/29(月)01:10:10 ID:VlT
今日はここまで 『作者』編 次回へ続きます
男の声、説明不足してて申し訳ない!
いわゆる幽霊ですね、今のところ声が聞こえているのはアンデルセンのみです。まぁ既に予想してる人もいると思うけどあの有名な童話作家です
ルイス・キャロルじゃないよ
次回、貴族作家のパーティー会場を後にしたアンデルセンが向かった先とは…
次回、水曜日更新予定してます!お楽しみに!
722 :名無しさん@おーぷん :2016/08/29(月)03:27:22 ID:vSx
>>1さん、乙です!!
次の更新を楽しみにしています!!
723 :名無しさん@おーぷん :2016/08/29(月)10:15:40 ID:X1K
乙です!
続き待ってます!!
724 :名無しさん@おーぷん :2016/08/29(月)12:35:56 ID:ePT
出勤前に読んで遅刻するところだったぜ乙!
鍋しきwww毒舌作家www
725 :名無しさん@おーぷん :2016/08/29(月)14:36:09 ID:nsg
アンデルセンいいキャラしてるなwwwww
雪の女王「黙れ、私は認めない。そうだ魔法だ…魔法を使えばいい!マッチ売りの所へ魔女が現れる、これなら自然な展開だ」
アンデルセン「【シンデレラ】は名作だよ、ペロー先生の童話はどれもすばらしい。でも【マッチ売りの少女】には相応しくない」
雪の女王「貴様…いい加減にしろ、今度こそ問題はないだろう」
雪の女王「【シンデレラ】は人気の高い作品だ、あれも貧しい娘のシンデレラが登場するが魔法で助けられるじゃあないか。ならばマッチ売りも同じように…」
アンデルセン「私の作風はペロー先生のそれとは大きく異なる。民間伝承を元にしたファンタジー色の強いペロー先生の作品と違って私の作風はずっと現実的だ」
アンデルセン「ファンタジー色の強い作品を書くときだってリアリティは残している、そしてこの【マッチ売りの少女】は限り無く現実に近い形に仕上げたいと考えている、だから魔法使いは出せない」
雪の女王「マッチ売りを幸せにしたいとお前は言ったはずだ、ならば魔法を使って助ければいいだろう。何が気にくわない?」
アンデルセン「それなら聞くけれど現実世界に住む貧しい子供たちは…清く生きていれば魔法使いが来るのか?正しく生きていれば王子が来てくれるのか?ガラスの靴を持って?」
雪の女王「…いいや来ないさ。だが別にいいだろう、おとぎ話の世界なんだから多少は都合がいい展開だとしても」
アンデルセン「駄目なんだそれじゃ。ここで魔法に頼っては私が伝えたいことがかき消される、キチンと読み手に伝わらない」
アンデルセン「この思いが伝わらなければ未来を変えられない。貧しい子供たちを取り巻く現状を変えることなんてできないんだよ」
689 :◆oBwZbn5S8kKC :2016/08/22(月)01:16:12 ID:kap
雪の女王「未来?現状を変える?貴様は何を…」
アンデルセン「【マッチ売りの少女】はただのおとぎ話じゃない」
アンデルセン「私が童話作家として出来る、貧しい子供たちの未来を救うための希望だ」
雪の女王「救う…?世界を、おとぎ話で、か?どういう事だ…?」
アンデルセン「…雪の女王、悪いが今日は帰ってくれないか」
雪の女王「…断る。貴様は何を言っている、話はまだ終わっていないだろう」
アンデルセン「わかっている。この話をうやむやにするつもりはない、ただ…君に見て欲しいものがある。だから明日、同じ時間にこの場所に来てくれないか?」
雪の女王「……」
アンデルセン「私がこのおとぎ話を通して伝えたいことを見せる。言葉では伝えきれないが…女王ならば必ず理解してくれるはずだ」
雪の女王「…いいだろう。つき合ってやる、ただしお前がこのおとぎ話に込めた思いとやらに納得がいかなかった場合は…このおとぎ話を世に出すことは許さない」
アンデルセン「それでも構わない。なんなら両腕をへし折ってくれても構わない」
雪の女王「…いいだろう。ならば明日、もう一度訪れる事としよう」スッ
690 :◆oBwZbn5S8kKC :2016/08/22(月)01:21:01 ID:kap
女王が去った後 アンデルセンの書斎
男の声『貴様も酔狂な男だ』
アンデルセン「あぁ…いらしてたんですね。声が聞こえませんでしたからどこかへ行かれたのかと」
男の声『傍らでずっと聞いていた。所詮あの女はおとぎ話の住人、作者であるお前がその気になれば氷結能力を失わせることも出来ただろうに』
アンデルセン「その必要はありませんよ。それに…私を殺したいほど憎んでいるという事はそれ程マッチ売りや他の主人公を思ってくれていると言うことです。それは嬉しいことですよ」
男の声『くだらないな。所詮おとぎ話の住人など我々作者の道具に過ぎない。想いを伝えるための道具にな』
アンデルセン「あなたの事、尊敬していますよ。しかしそのような考えには賛同できません」
男の声『お前に賛同して貰おうとも思わん。だが私には無意味に思えてならない』
アンデルセン「そうでしょうか?」
男の声『あいも変わらず貴様はおとぎ話で未来を変えるなどと宣っているしな。不可能な夢を見るのも大概にしろ』
アンデルセン「不可能ではありませんよ。長い時間はかかっても必ず変えられます」
男の声『馬鹿め。実際に私は千年以上もの長い間人間の歴史を目の当たりにしてきた、だがおとぎ話如きに何かが変えられたことなど一度もない。不可能だ』
アンデルセン「……」
男の声『そもそみだ、おとぎ話の住人に現実世界の人間であるお前に考えなど理解できる訳ないだろう、世界が違う』
アンデルセン「そんなことはありませんよ。彼女は心優しい女性です、きっと私と同じ感情をもってくれるはずですよ」
・・・
693 :◆oBwZbn5S8kKC :2016/08/22(月)01:25:20 ID:kap
今日はここまで 『作者』編 次回へ続きます
次回以降予告
翌日、再びアンデルセンの元へ訪れた雪の女王
現実世界で雪の女王が目の当たりにした『現実』とは…
次回をお楽しみに!
695 :名無しさん@おーぷん :2016/08/22(月)03:50:13 ID:JC2
乙!
男の声、1000年以上…、ということから考えてこの男には実体がない?
乙!アンデルセンが言ってるハッピーエンドの意味がやっと分かった…
697 :名無しさん@おーぷん :2016/08/22(月)07:02:17 ID:JrJ
1000年…イソップ?かな?
698 :名無しさん@おーぷん :2016/08/22(月)14:33:34 ID:oT8
乙です!
ハッピーエンド=救いってことか…
やり切れないなぁ…
そう思わせることがアンデルセンのしたいことなんだろうけど…
続き待ってます!!
707 :◆oBwZbn5S8kKC :2016/08/29(月)00:05:56 ID:VlT
時は少し遡って…過去、1835年
現実世界 デンマーク アンデルセンの自宅
出版業者「いやー、凄いですよ先生!先日増刷したばかりだというのに追加で刷ってくれって依頼がバンバン来てて…更に更に増刷することが決まりました!」ホクホク
アンデルセン「ふふっ、なんだか作者の私よりも君の方が嬉しそうだ」
出版業者「そりゃ嬉しいですよ!自分の所で印刷した本が大ヒットしたんですから、出版冥利に尽きるってもんです!」
出版業者「それにバンバン増刷してるんでぶっちゃけ儲かってます!これもアンデルセン先生と『即興詩人』のお陰ですよ!」
アンデルセン「私のような無名の作家の作品を世に出してくれたんだから君に感謝しているのはむしろ私の方だよ」
出版業者「そんな畏れ多いですってー!でも無名作家なのはもう過去の話ですよ、アンデルセン先生の名前を知らないデンマーク人はもう居ませんからね!よっ!有名作家!」ポンッ
アンデルセン「ふふっ、そんなにおだてなくても次回作を出すときには是非君の所に頼もうと思っているよ」クスクス
出版業者「いやいや!お世辞とかゴマスリとかではなくて…でも今後ともご贔屓にしていただけるならありがたいです!うちもバッチリ高品質な本を印刷し続けますんでまた声かけてください!」
アンデルセン「あぁ、実はいくつか案はあるんだ。まだ完成にはほど遠いのだけどね」スッ
出版業者「おぉ!それは楽しみですね、ちなみにどんな作品なんですか!?『即興詩人』のような恋愛小説ですか?それとも冒険小説?いや推理小説というパターンも…」
アンデルセン「どれもハズレだ。『即興詩人』への反響は非常に喜ばしいが私が目指している作家は小説作家ではないんだよ」
アンデルセン「私が目指しているのは童話作家だ。だから次の作品はおとぎ話にしようと思っている」
出版業者「お、おとぎ話…ですか?えぇ…マジですか…?」ドンビキ
708 :◆oBwZbn5S8kKC :2016/08/29(月)00:09:53 ID:VlT
出版業者「ちょ、ちょっと待ってください先生!それちょっと考え直しませんか!?」ガタッ
アンデルセン「何故だい?私がおとぎ話を執筆することに何か問題があるのかな?」
出版業者「問題しかありませんよ!おとぎ話っていうのは子供向けの読み物で…!いわゆる子供だましなんですよ!?」
出版業者「世間ではほとんどの場合、童話は文学作品として認められませんし扱いも小説等よりずっと劣ります…それは先生もご存知でしょう?」
アンデルセン「童話という作品を取り巻く現状は知っているよ。しかしおかしいとは思わないかい?おとぎ話には素晴らしい作品だって多いんだ、それなのに子供向けだという理由で一蹴するなんて…間違っている」
出版業者「先生の仰りたい事は解りますけど、それが世間の評価なんですって!先生は『即興詩人』のような名作を執筆できる立派な小説家なんですから小説一本でいきましょうよ!」
出版業者「せっかく世間に認知されて評価もされてるのに、わざわざ童話なんか書いて先生の評判を落とすことは無いですって!」
アンデルセン「童話は近い将来、必ず文学作品として認められて確固たる地位を築く。シャルル・ペロー先生やヤーコプさんにヴィルヘルムさんのような童話作家もこの先増えていくだろう」
出版業者「それでも…!先生は一般的な小説が書けるんですからそっちに力を入れるべきです!」
アンデルセン「その方が君の会社は儲かるから…かい?だから人気の低い童話を書かれては困ると?」
出版業者「…正直に言えばそれも理由の一つです!でもそれだけじゃありません、私は出版業者である前に一人の人間として先生に才能に惚れているんです!『即興詩人』も自腹で買いました!」
出版業者「先生の才能はずば抜けています!だからこそ童話なんて書くのは勿体ないです!これは先生のファンとしての私の気持ちなんです!」
710 :◆oBwZbn5S8kKC :2016/08/29(月)00:13:39 ID:VlT
・・・
アンデルセン「……何故だ、何故解ってくれない。世間のおとぎ話に対する評価は不当だ…何故だ…」ブツブツ
男の声『机に突っ伏していても作品は仕上がらない。いつまでそうしているつもりだアンデルセン』
アンデルセン「正直、あそこまで強く反対されるとは思っていませんでした。彼は『即興詩人』の出版で私のために親身にしてくれましたから、きっと協力してくれると信じてました」
アンデルセン「そのうえ…彼の忠告は私の作家としての将来を案じているからこそのものです。あれは彼の心からの言葉ですから尚更堪えました…」
男の声『だから私は忠告してやったのだ、童話作家を目指すなど止めろと』
アンデルセン「しかし…私の夢は童話作家です。作品を通して想いを伝えるには童話作家でなければいけません」
男の声『小説家の何が不満だ?小説でも作品を通して考えや想いを伝えることはできるだろう』
アンデルセン「そうですが、子供は小説を読みません。私が本当に想いを伝えたい相手は子供たちなんです」
男の声『お前はおとぎ話というものを高く評価しすぎだ。お前が思うほどおとぎ話は良いものでも力を持ったものでもない』
アンデルセン「かつては高名な童話作家だったあなたが、そんなことを口にするのですか?」
男の声『昔の話だ。今はただの亡霊だ。千年以上も前に肉体は朽ちたが、どう言うわけか私の魂はこの世に留まっている…理由は解らんがな』
男の声『だが現世に残れるなら儲けものだ、私は様々な人間の元を転々としながら長い時間を過ごした。霊で居るのも悪くない、こうして優れた作家の側にいればいつでも新作の小説を楽しめるのだからな。なぁアンデルセン』
アンデルセン「優れた作家などと…買いかぶりすぎですよ。『即興詩人』だってたまたま読者のウケが良かっただけです」
男の声『謙遜するな、お前の才能は本物だ。だからこそ私はお前の元に居る、そしてその存在を明かした。…その童話に夢を見ている所だけは頂けんがな』
アンデルセン「童話作家のあなたですら、認めてはくれないのですね。おとぎ話が持つ力を、未来を変える力を」
男の声『かつて童話作家だったからこそ、千年以上の時を過ごしてきた私だからこそ認めないのだ』
男の声『生きていた頃はお前と同じ考えを持っていた頃もあった。だが結局、おとぎ話などただの作り話に過ぎない。まして希望を託すなど愚かしい事だ』
・・・
711 :◆oBwZbn5S8kKC :2016/08/29(月)00:18:11 ID:VlT
雪の女王が訪れた翌日
現実世界 デンマーク アンデルセンの自宅
・・・
男の声『起きろ。起きろと言っているのだ、アンデルセン』
アンデルセン「…んん、うたた寝してしまったようだ」ウツラウツラ
男の声『あの女との約束の時間まで僅かだ。寝過ごしてまた家を破壊されては私も居心地が悪い、早急に脳を覚醒させろ』
アンデルセン「あぁ…マズいですね。寝ぼけ眼では彼女に凍らされるかも知れない。えぇっと…蝶ネクタイはどこにしまったか…。フフッ…」
男の声『…何を笑っている?』
アンデルセン「思い出し笑いですよ、先程夢を見ましてね。私が童話作家になる前、丁度『即興詩人』を出版したころの夢です」ゴソゴソ
男の声『あぁ…あの頃か。私はあの時散々忠告してやったのに、結局お前は童話作家になるという愚かな道を選んだのだったな』フンッ
アンデルセン「私の夢でしたからね。ですが今はこうして結果も残せています、ですから『愚かな』という物言いは訂正していただきたいものです」
男の声『何を言っている、当時は滅茶苦茶に酷評されていただろう。あの出版業者の言葉通り、実力ある作家が童話など書くなとまで言われていた癖に』
男の声『まぁまったくの正論だったがな。それなのにどういうわけか…お前の童話は周囲に受け入れられてしまった、私には到底理解できんな』
アンデルセン「私が落ち目の時でも出版を引き受けてくれた彼や、常々文句を付けてくれたあなたのおかげですよ。感謝してます」フフッ
男の声『フンッ、お前のおとぎ話がどれだけ受け入れられようとそれがなんの力も持たないただの物語だという事実は変わらん』フイッ
アンデルセン「あなたは相変わらずですね、あの頃からおとぎ話への嫌悪は一向に変わらないんですから」
男の声『お前も大概だろう。いつまでも無意味な夢を追い続けている辺りがな』フンッ
・・・
712 :◆oBwZbn5S8kKC :2016/08/29(月)00:21:27 ID:VlT
現実世界 デンマーク アンデルセンの自宅 前
雪の女王「……」ザッ
──アンデルセン「明日、同じ時間にこの場所に来てくれないか」
──アンデルセン「私がこのおとぎ話を通じて伝えたいことを見せる」
雪の女王(あの男が【マッチ売りの少女】を通して読者に伝えたかったこと……)
雪の女王(あの男は、アンデルセンは多くの主人公を不幸にした憎むべき作者だ。だが……この言葉が嘘だとは思えない)
雪の女王(アンデルセンは何を思ってあんな辛い結末の物語を生み出したのか…)
雪の女王「ここで考えても仕方ないか…。奴に会えば全て解る」スッ
リンゴンリンゴーン…
アンデルセン「あぁ、いらっしゃい。来てくれたんだね女王」フフッ
雪の女王「お前が来いと言ったのだろう?それとも来ない方が良かったか?」ギロッ
アンデルセン「そんな事はないさ、歓迎する。ただまた昨日みたいに鍵を壊して進入してくるのかも…と身構えていたから拍子抜けではあるかな」フフッ
雪の女王「そうか。今からでも遅くはないだろう、貴様の期待に応えて扉を破壊してやろうか?30秒ほど貰うが」スッ
アンデルセン「待ってくれ、冗談だ。これから出掛けなければいけないんだ、扉を壊されるのは困ってしまう」フフッ
713 :◆oBwZbn5S8kKC :2016/08/29(月)00:23:38 ID:VlT
雪の女王「出掛ける…?その先に貴様があのおとぎ話を書いた理由があるというのか?」
アンデルセン「まぁそうだね。少し歩くが構わないだろう?」
雪の女王「いいだろう。そういう事ならつき合ってやる。それで、何か支度が必要か?」
アンデルセン「いいや、女王はそのままの格好で構わない。それ以外には必要なものも特に無い」
雪の女王「そうか。いや…待て、昨日似たような格好で街に出たら妙に目立ってしまったんだ。暗い色のコートを羽織るとかして変装しておいた方がいい」
アンデルセン「あぁ…確かに君の衣装は刺激的だ。この季節にしては露出も多い」クスクス
雪の女王「他人事のように…貴様がそのように生み出したんだろう?問題があるのなら貴様が責任を持ってなんとかしろ」ギロリ
アンデルセン「なんでも私の責任にされても困ってしまうな。だが問題はないよ、むしろ少々目立った方が好都合だ」
雪の女王「好都合…?」
アンデルセン「とにかくその格好のままでいいよ。さぁ、そろそろ行こうか」
雪の女王「待て。結局何処へ行くんだ?」
アンデルセン「そう身構えなくても良いじゃないか。なんてことない、ただのパーティー会場さ」スタスタ
714 :◆oBwZbn5S8kKC :2016/08/29(月)00:29:26 ID:VlT
現実世界 デンマーク とある大きなパーティー会場
アンデルセン「さぁ到着だ。えぇっと、招待状は何処へしまったかな…」ゴソゴソ
雪の女王「随分と大きな会場だな。無駄に豪奢で、警備も客も多い…身なりに随分と金をかけていそうな輩も多い」
アンデルセン「貴族のお坊ちゃんの主催だからね。さて、女王には一つ芝居を打って貰うが…ここでは私の助手として振る舞ってくれるか?」
雪の女王「私が…貴様の助手だと?私がお前を襲撃した理由を忘れたか?」ギロリ
アンデルセン「忘れちゃいないよ。ただ…私はあまりこういった場には顔を出さないから女性の君を連れていれば周囲の人間は興味本位で関係を聞いてくるかも知れない」
アンデルセン「私もこう見えてこのデンマークでは随分と名の知れている男だ。腑に落ちないかも知れないが面倒を防ぐためだ、頼むよ」フフッ
雪の女王「…やむを得ないか。あくまでフリだ、いいな?」
アンデルセン「あぁ、構わないよ。助手クン、早速荷物を持ってくれるかな?」フフッ
雪の女王「……」ギロッ
アンデルセン「参ったな。こんな調子じゃすぐに怪しまれてしまう、そうすれば目的を達成することも難しいな…いやはや参ったな」ヤレヤレ
雪の女王「わかりましたお持ちします…ただしあまり調子に乗ると後で地獄を見ることになりますよ先生」ギロッ
アンデルセン「あぁ恐ろしい助手だ…まぁお手柔らかに頼むよ」クスクス
715 :◆oBwZbn5S8kKC :2016/08/29(月)00:34:01 ID:VlT
ザワザワ ザワザワ
アンデルセン「さて…この辺りに彼が居るはずだが…」キョロキョロ
出版業者「あっ、アナスン先生!今日はご足労頂きありがとうございます!なんとお礼を言っていいやら!」
アンデルセン「やぁしばらくぶり。どうだい調子は?」
出版業者「おかげさまで特に病気もなく!どうやら先生もお変わりないようで!……ところでそちらの女性は?はっ!もしかして先生の恋人ですか!?」
アンデルセン「違う違う、そうじゃないよ。彼女は…」
出版業者「またまたー!隠さなくたって良いですよ!私と先生の仲じゃないですか!こんな若くて綺麗な女性捕まえて先生も隅に置けませんね!ふぅーっ!」フゥーッ
雪の女王「こいつが今、違うと言ったのが聞こえなかったか…?」ギロリ
出版業者「ひっ」ビクッ
アンデルセン「彼は私の作品の出版を担当してくれているんだ、随分長い付き合いになる。さぁ挨拶を」
雪の女王「…申し遅れました、私はアンデルセン先生の助手です。先程は冗談が過ぎて申し訳ございません」ニッコリ
出版業者「あっ、ジョーク!?そうですよね!いやいやこっちこそ失礼しました、先生は長らく助手さんをとらなかったので私はてっきり!ははは!」
アンデルセン「もう少しうまくあわせてほしいものだが…」ボソッ
雪の女王「お前のような男と恋仲だと思われた私の気持ちになれ。不愉快意外の何ものでもない」ボソッ
716 :◆oBwZbn5S8kKC :2016/08/29(月)00:38:38 ID:VlT
出版業者「何はともあれ私がご案内しますよ!先生、どうぞこちらへ!助手の方も」スッ
アンデルセン「それにしても…随分大勢の客を招いたようだ、あのお坊ちゃんは。相当費用もかさんでいるだろうな」
出版業者「えぇ、豪華すぎです…普通はここまでしませんよ。やっぱり貴族の方は体裁とか気にしますからね、著名人も結構来てますよ。それであのー…先生のご友人のグリム様とかリンド様とかには…招待状渡していただきました?」チラッ
アンデルセン「それは手紙で断ったはずだが?」
出版業者「でしたよねぇ…ダメ元で聞きました」ペコリー
アンデルセン「ヤーコプさんもヴィルヘルムさんも何かと忙しいだろうしジェニーには舞台だってあるんだ。例え暇があったとしてもこんなくだらない集まりの為にわざわざ呼べないし呼ばないよ」
出版業者「…いや本当にすいません。失礼なのは承知の上なんですけど、私としても一応頼むだけはしておかないと」
アンデルセン「構わないよ、君の気苦労も理解できる」
出版業者「すんません、でも本当にアナスン先生が来てくださっただけでもぜんぜん助かりました。これでうちの会社も首の皮繋がりましたよ…」
雪の女王「おいアンデルセン…先生、結局この集まりは何なのですか」
アンデルセン「とある貴族の坊ちゃんが先日小説家としてデビューしてね、これはその記念式典を兼ねたパーティーというわけだ」
出版業者「そうなんです。その方はアナスン先生のファンらしくてですね…先生の作品を扱ってるうちの会社にその小説の出版をさせてやるからアナスン先生を紹介しろって言われまして」
出版業者「断ると後が怖いんで…失礼を承知で先生にお願いしていたんですよ。本当はこういう集まり苦手なのに本当にすいません、先生」
アンデルセン「まぁたまにはいいんじゃないか、それに別の目的も果たせそうだ」
717 :◆oBwZbn5S8kKC :2016/08/29(月)00:42:31 ID:VlT
雪の女王「なるほど…その貴族としてはこのパーティーに貴様…先生が来ていれば箔が付くというところか。こう見えて有名作家だものな」
アンデルセン「貴族というのはやたら見栄を張りたがる。私がいれば『あのアンデルセンが認めた!』とか言いはれる、自画自賛になってしまうが私の名前は出版物を出す時に使えば何かと都合がいいのさ」
出版業者「先生以外にもいろんな著名人来てますよ、画家とか政治家とか歌手やら色々…挨拶回りだけで大変ですよ」グッタリ
雪の女王「他人の威光を借りようって腹積もりか…馬鹿馬鹿しい」
アンデルセン「気持ちは分からんでもないがな、意味があるかどうかは別問題だが」
出版業者「ちょっと先生も助手さんも何処で誰が聞いてるかわかんないんでもうちょっとトーンを…ところで招待状と一緒にお贈りした小説は読んでもらえました?絶対送ってくれって言われてるんで…」
アンデルセン「あぁ、一応目を通しておいた」
出版業者「助かります。あっ、あそこにいらっしゃるのがその小説の作者でこのパーティーの主役の…」
雪の女王「貴族のお坊ちゃまか」
出版業者「先生、ホント軽くでいいんで挨拶して貰っていいですか?一応紹介するって約束なんで、ホントスイマセン」
アンデルセン「あぁ、では行こうか助手クン」スタスタ
雪の女王「…あぁ、行こうか先生」スタスタ
718 :◆oBwZbn5S8kKC :2016/08/29(月)00:47:17 ID:VlT
出版業者「せ、先生お疲れ様ですー!」ヘコヘコ
貴族作家「あぁ、君か。どうかしたのか?」
出版業者「先生に是非とも紹介したい方がいらっしゃいまして…ささっ、アナスン先生お願いします」ススッ
アンデルセン「本日はお招きいただきありがとうございます。お初にお目にかかります。私、ハンス・クリスチャン・アンデルセンと申します」ペコリ
貴族作家「おぉ、あなたがあの有名な!招待状をお渡ししたもののこの様なパーティーには滅多に足を運ばないと聞いていましたので心配していたのです」
アンデルセン「いえいえ、お招き感謝しております。この度はデビュー作品の出版おめでとうございます」
貴族作家「ありがとうございます。実は私はあなたのファンなのでお会いできて光栄です。立食ではありますが食事も用意しているので存分に楽しんでいただきたい」
アンデルセン「ありがとうございます。それにしても随分と豪勢な式典ですね、これほどに贅を尽くしたパーティーは私といえども見たことがございません」
貴族作家「そうでしょうそうでしょう!数々の著名人を呼び寄せ会場にも装飾にも料理も最上級のものを用意しましたからな」ハハハ
アンデルセン「流石は○○様の御子息、金に糸目を付けないとはまさにこのことでございますな」ハハハ
出版業者「先生ー!アナスン先生ー!口汚いの出てますって!」ヒソヒソヒソヒソ
貴族作家「フフッ、アナスン先生はどうやら冗談がお好きなようだ。ところで私の作品は既にごらん頂けましたか?」
アンデルセン「えぇ、もちろんですとも。非常に興味深い内容でした」
719 :◆oBwZbn5S8kKC :2016/08/29(月)00:53:36 ID:VlT
貴族作家「そうですか!あのアナスン先生に読んでいただけるとは光栄です。で…いかがでしたか?私の作品は」ウキウキ
アンデルセン「いやはや、あの様な凄まじい作品を目にしたのははじめてと言って差し支えありませんね」
貴族作家「おぉ、そんなに素晴らしかったですか!」
アンデルセン「えぇ、なんと表現しましょうか…読み手の感動を誘う言葉使い、終止収まることのないワクワク感と膨れ上がる期待…それを受け止めるだけの重厚な結末」
アンデルセン「私にはとても真似できない物語でした」
貴族作家「おぉ、アナスン先生にそこまで誉めていただけると自信がつきますよ。次回作も期待していただきたい、完成しだい贈らせますので」ホクホク
アンデルセン「それは光栄ですね…んっ?どうしたかね助手クン?」
雪の女王「は?…………あぁ、そろそろお時間が迫っております先生」
アンデルセン「なんと、せっかくの機会だというのに…先生、名残惜しいですが私は新作の執筆がございますのでこの辺りで…」
貴族作家「そうですか。おい、アナスン先生をご自宅までお送りして差し上げろ」
使用人「はっ!」
アンデルセン「いえいえ、それには及びません。それでは私はこれで…」
・・・
出版業者「助かりましたアナスン先生!今日はありがとうございました、でも不意に口悪くなるの何とかしてください…」
アンデルセン「悪気はないんだが…さぁすまないが私は用事があるから失礼するよ。新作は出来次第連絡を入れるからもう少し待っていて貰えるかな」
出版業者「あっ、はい!お待ちしています!あの、送迎本当にいいんですか?遠慮なさらなくていいんですよ?」
アンデルセン「あぁ結構、寄るところもあるんでね。それじゃあお疲れ様」スッ
・・・
アンデルセン「ふぅ、少々疲れたな助手クン?」
雪の女王「もうその茶番はいいだろう…それと突然私に振るのは止めろアンデルセン」
アンデルセン「あぁ、すまない。君ならうまくあわせてくれると思ってね」フフッ
雪の女王「調子のいいことを…さっきだってそうだ。ワクワク感だの自分には真似できないなどと感想を述べていたが…貴様あの男の小説読んでいないな?」
アンデルセン「フフッ、失礼だな?ちゃんと読んださ、20ページくらいね」フフッ
雪の女王「そんなところだと思った。感想に内容がなかったからな、抽象的な言葉ばかりでストーリーや展開には一切振れていない」
アンデルセン「見抜かれてしまったな。だが彼は気が付いていなかったから良しとしようか」クスクス
雪の女王「不誠実な奴め。どれだけ興味が無くともそれなりに読んで感想を述べるのもああいった場では社交辞令として必要だろう」
アンデルセン「そうは言うが…実際の感想なんか言えば悪評が広がり私が贔屓にしている出版社が潰れることになりかねないしな」クスクス
雪の女王「大袈裟すぎるな。そんなに酷い出来と言うわけでもないだろうに」
アンデルセン「そうだな、まぁ彼の小説でもっともすばらしいところをあげるなら…鍋敷きとして使うのに丁度よい厚さだったというところくらいだな」フフッ
アンデルセン「さぁ用事は済んだ。次の場所へ向かおうか、女王」
雪の女王「次の場所…?」
721 :◆oBwZbn5S8kKC :2016/08/29(月)01:10:10 ID:VlT
今日はここまで 『作者』編 次回へ続きます
男の声、説明不足してて申し訳ない!
いわゆる幽霊ですね、今のところ声が聞こえているのはアンデルセンのみです。まぁ既に予想してる人もいると思うけどあの有名な童話作家です
ルイス・キャロルじゃないよ
次回、貴族作家のパーティー会場を後にしたアンデルセンが向かった先とは…
次回、水曜日更新予定してます!お楽しみに!
722 :名無しさん@おーぷん :2016/08/29(月)03:27:22 ID:vSx
>>1さん、乙です!!
次の更新を楽しみにしています!!
723 :名無しさん@おーぷん :2016/08/29(月)10:15:40 ID:X1K
乙です!
続き待ってます!!
724 :名無しさん@おーぷん :2016/08/29(月)12:35:56 ID:ePT
出勤前に読んで遅刻するところだったぜ乙!
鍋しきwww毒舌作家www
725 :名無しさん@おーぷん :2016/08/29(月)14:36:09 ID:nsg
アンデルセンいいキャラしてるなwwwww
キモオタ「我輩がおとぎ話の世界に行くですとwww」ティンカーベル「そう」 『作者』編
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キモオタ「我輩がおとぎ話の世界に行くですとwww」ティンカーベル「そう」一覧に戻る
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