キモオタ「我輩がおとぎ話の世界に行くですとwww」ティンカーベル「そう」 『作者』編
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662 :◆oBwZbn5S8kKC :2016/08/15(月)01:14:34 ID:kNn
それからしばらく経ったある日
雪の女王「……」
雪の女王(私は苛立っていた)
雪の女王(ゲルダとカイが生まれ、この世界の物語が動き出してからというものどうしてもアンデルセンという男のことが気になった)
雪の女王(彼はただの作者。現実世界の男、おとぎ話の住人である私が気にかける必要などなかった)
雪の女王(だがどうしても…その作者が気になってしまったのだ。幸い、私には有り余る魔法の力が存在する。おとぎ話の世界の事情も、他のおとぎ話の存在も知っている)
雪の女王(彼について調べていくうちに一つの真実にたどり着いた。どうやら彼が紡ぐおとぎ話の多くは主人公が苦しみ辛い思いをするようなのだ)
雪の女王(おとぎ話はその全てがハッピーエンドではない。それは当然だ、おとぎ話には教訓を与える役割もあるのだから主人公全てが幸せになるとは限らない。だが…)
雪の女王(彼が紡ぐおとぎ話のいくつかは…理不尽な運命を主人公が強いられている。自業自得とはとてもいえない者も多い、幸せな結末さえ与えられない、救われることのない主人公が大勢いる)
雪の女王(悲恋の末泡と消える人魚、恋実らず焼き解かされる玩具の兵隊、人間に弄ばれるヒバリとヒナギク…。
詐欺師に騙される王、自らの行いが原因とはいえ沼に沈められる娘、同様に終わることのない舞踏を続けざるをえない少女。周囲に翻弄され続ける小さな娘、独りきりで虐げられ続ける白鳥…あげればきりがない)
雪の女王(これほど辛い思いをしている者が居て、その元凶がアンデルセンであると知って…私は黙っていられない)
雪の女王(その多くの主人公は自分がおとぎ話の世界の住人だと言うことすら知らないだろう。しかし…私は知っている)
雪の女王(そして私なら…現実世界へ向かうことが可能。世界を移動する魔法は使える、アンデルセンに与えられたこの魔力を兄弟姉妹たちの為に使うべきだ)
雪の女王(そう、私は決めた。現実世界へ渡り、私たちのおとぎ話を生み出したアンデルセンに出会い、その悪行を止めさせる)
雪の女王「罪のない主人公たちを苦しめる作者は…まさに悪魔だ。その悪魔を、私は成敗しなければいけない」
・・・
663 :◆oBwZbn5S8kKC :2016/08/15(月)01:17:15 ID:kNn
1840年代
現実世界 デンマークのとある都市
ザワザワ ザワザワ
雪の女王「……」スタスタ
雪の女王(この国、この都市にアンデルセンは住んでいる筈だ。だが正確な場所までは把握できていない、地道に探し出すしかないが…それより)
「おい、あそこ歩いてる女…この辺りでは見慣れない服装だな、外人かな?」
「っていうか、すげー美人だぜ。もう結構冷える季節になったのに妙に露出も多いし…いや、それは大歓迎なんですけどね。乳デカいし!」
「じろじろ見るなよお前、デンマークの民度が低いと思われるだろ…とはいえ綺麗な人だよな」
雪の女王(少々、私のこの姿は目立つようだ…。彼は私達おとぎ話の住人が実際に存在している事すら知らないだろうが、目立たないに越したことはないな。何か変装を…)
スッ
若者「そこのお姉さん、見たところ観光かな?この街は見所多いから悩んじゃうでしょ、俺が案内してあげようか?」ヘラヘラ
雪の女王「そうだな…是非案内を頼もうか。とはいえ観光地には興味ないんだ、できれば路地裏のような人目に付かない場所へ案内して欲しいな」
若者「路地裏?なんでそんな所に…」
雪の女王「フフッ、人目に付かない場所でする事なんかそう多くはないじゃないか。それとも私に皆まで言わせるつもりかい?」クスクス
若者「えっ、マジで?それってもしかして…行く行く!行きます!そこの路地裏なら人通り超少ないからそこに行こうか」ウヘヘ
雪の女王「何処でも構わないよ、誰にも見られないのならな」フフッ
ペキペキペキ ヌアアァァー!
雪の女王「さて、男物のコートだが…これで少しは目立たずに済むな。しかし人目に付かない場所へわざわざ行かないと魔法が使えないのは面倒なものだな」スタスタ
664 :◆oBwZbn5S8kKC :2016/08/15(月)01:20:28 ID:kNn
雪の女王(さて…あまり派手に聞き込みをする訳にもいかないが…一軒一軒当たっていくわけにもいかない、そもそもアンデルセンの風貌を知らないからな)スタスタ
雪の女王「となると…どうやってアンデルセンの家を探すのが最善か…」
靴磨きの少年「ねぇねぇお姉さん、アンデルセン先生に会いたいの?」ニコニコ
雪の女王「口に出ていたか…。その通りだが、君はアンデルセンの家を知っているのか?」
靴磨きの少年「残念だけど知らないよ。でも先生がよく行く本屋さんなら知ってるよ、そこの店員さんなら先生の住所知ってるかも。ところで…お姉さんの靴、少し磨こうか?」ニコッ
雪の女王「そうだな、世間話でもしながら磨いて貰おうか。代金は銀貨一枚で足りるか?」
靴磨きの少年「うん、十分だよ。じゃあちょちょっと磨いちゃうね……あぁアンデルセン先生だけどね、先生はそこの広場の脇にある小さな本屋によく入ってるのを見るよ」フキフキ
雪の女王「そうか。この後そこの本屋に行ってみるとしよう」
靴磨きの少年「そっか、でもお得意先の住所を見知らぬ女の人に教えてくれないと思うよ?先生に会いたくて来る観光客だって少なくないし、その辺のガードは堅いんじゃないかな。方法がない訳じゃないけど」チラチラッ
雪の女王「フフッ、君は実に腕のいい靴磨きだな。銀貨をもう一枚渡すからもう少し念入りに頼むよ」
靴磨きの少年「そりゃどーも。そういえばあの本屋さん、いつも通りならもう少しあとに本とかインクとかの配達をすると思うよ。もしかしたらアンデルセン先生にお家にも届けにいくかもね……はい、終わり!」キュッキュッ
雪の女王「君のおかげで足取りが軽くなりそうだ、ありがとう」ナデッ
靴磨きの少年「いえいえ、また靴磨きが必要ならいつでもどーぞ」ニコニコ
665 :◆oBwZbn5S8kKC :2016/08/15(月)01:24:29 ID:kNn
しばらく後…
ハンス・クリスチャン・アンデルセンの自宅
雪の女王「思った以上に容易くたどり着けたな。私が思っていた以上に彼が有名人だったということもあるが…しかし、有名人の割には普通の家に住んで居るんだな」
雪の女王「…さて、いつまでも家の前をうろうろしていて怪しまれても良くない」スッ
雪の女王「そこの路地からなら人目に付かないな、丁度よく小窓もある。鍵はかかっているかも知れないが…まぁそれは大した問題じゃない」
パキパキパキ ガチャン
雪の女王「……家の中から人の気配はしないな。それじゃあお邪魔させて貰おう」スタッ
雪の女王「さて…作家先生なんだ、どこかに執筆作業に使っている部屋があるはずだ。そこで彼が帰ってくるのを待とう」
雪の女王「アンデルセンに出会ったら、まずは奴が執筆した残酷な物語の数々を書き直させる」スタスタ
雪の女王「他人が無理やり干渉すればおとぎ話の世界が消える可能性もあるが、作者ならば問題がない筈だ。もしも私の要求を飲まず…おとぎ話の修正を断るようならば」スタスタ
雪の女王「彼が私に与えたこの氷結能力で脅迫する。アンデルセンがどんな男だとしても…自分のおとぎ話よりも命を優先させるだろうからな…っと、この部屋かな?」スタスタ
ガチャ
雪の女王「ペンにインク、原稿紙…どうやらここがアンデルセンの仕事部屋のようだ」
雪の女王「資料らしい本の他に自分が書いたおとぎ話の本も並んでいるな、私の世界【雪の女王】も並んでいる。この多くの物語の主人公が奴の餌食になっているわけだ…」
雪の女王「なんにせよアンデルセンが帰宅してからだな。それにしても慣れない世界を歩き回って少々疲れた、少し座って…んっ?机の上に原稿が置いてあるな、どうやら書き終えたばかりのおとぎ話のようだが…」
雪の女王「奴はいつ戻ってくるかわからない、退屈しのぎに読ませて貰おうか。この原稿の、このおとぎ話のタイトルは…」
雪の女王「【マッチ売りの少女】…か、せめてこの物語の主人公が他の主人公のように辛い思いをしないことを祈るばかりだな」ペラッ
666 :◆oBwZbn5S8kKC :2016/08/15(月)01:28:50 ID:kNn
アンデルセンの自宅
アンデルセン「いやはや、参ったな。すぐに家に戻るつもりが…すっかり遅くなってしまった。まだ新作の推敲が終わっていないというのに、さぁ急いで推敲を始めよう」ガチャガチャッ
男の声『待て…妙だ、アンデルセン。お前は家を出る前、確かに鍵を閉めた。何故、家の中から人の気配がする?』
アンデルセン「人の気配?私には何も感じないのですが…」
男の声『私はお前と違って敏感だ、間違いない。しかも…ただの盗人じゃあなさそうだ…おとぎ話世界の住人の可能性が高い、膨大な魔力を感じる』
アンデルセン「おぉ…それは楽しみだ!どこの世界の誰かは知らないがおとぎ話の世界に住む者が私に会いに来てくれたというわけだ!」フフッ
男の声『愚か者、お前はあの様な物語を書き連ねておきながらよくも楽しげに出来るものだ。お前の作風はおとぎ話の住人に愛されると言うよりは恨みを買う方だ』
アンデルセン「そんなつもりは無いのだが…私は自分に作品を愛しているんですよ?」
男の声『お前がどう思っているかなど関係は無い。おとぎ話の住人は作者の決定には抗えない、そして作者に想いまでは知る由がない』
男の声『私に言わせればお前がおとぎ話の住人に恨まれて殺されようが自業自得だ。おとぎ話に人々の未来を変える力があるなどと未だに信じている愚かな男への報いだ』
アンデルセン「おや、あなただって以前は私と同じ志だったと聞いていますけどね」
男の声『過去の話だ。おとぎ話にはそんな力は無い。そして私はもう、決して筆をとらない』
アンデルセン「勿体ないですよ、かつて沢山の名作を生み出した作者であるあなたがもう筆をとらないというのは…」
男の声『……今はそんなことはどうでもいい、どうやら客人はお前の書斎で待っているようだ。早く向かうべきではないか?』
667 :◆oBwZbn5S8kKC :2016/08/15(月)01:38:22 ID:kNn
アンデルセンの書斎
ガチャッ
雪の女王「……っ」ギロッ
アンデルセン「これは驚いた、私の書斎に忍び込むなんて誰かと思ったが…こんなに美しい女性だとは思わなかった」フフッ
雪の女王「…貴様がアンデルセンだな?」
アンデルセン「あぁ、如何にも。私がハンス・クリスチャン・アンデルセンだ。君の名も是非教えて欲しいものだが…」
雪の女王「その前に答えて貰おうか、この原稿は…何だ?」バサッ
アンデルセン「っ、ぞんざいに扱わないで欲しいものだ。それに何…とはどういう意味かな?それは昨晩書き上げたばかりのおとぎ話【マッチ売りの少女】というおとぎ話だ、まだ推敲を残しているから完成とはいえないが」
雪の女王「私が問いかけているのは内容の事だ」
アンデルセン「内容…?この作品に何かおかしなところがあるかい?」
雪の女王「色々と言いたいことはある、だがこの物語は何だ!?常軌を逸している!正気じゃあない!まともな人間がよくもこんな残酷なバッドエンドを書けたものだ!」バンッ
アンデルセン「バッドエンド…?おかしな事を言う女性だ、【マッチ売りの少女】はハッピーエンドじゃないか、マッチ売りは死ぬことが出来て幸せだったんだからね」
ヒュッ バチーンッ!!
アンデルセン「ぐっ…!何をするんだ君は…!」
雪の女王「…人を殴るなんて初めてだ。だが私の心は決まった…あぁ、まだ名乗っていなかったな」
雪の女王「はじめましてアンデルセン、私は貴様が生み出した雪の女王という名の魔女だ。そしてさようならだ、アンデルセン」
雪の女王「私は貴様を殺すことに決めたよ、無慈悲で残酷な作者様を…!」ギロリ
パキパキパキ ヒュオオオォォォ
668 :◆oBwZbn5S8kKC :2016/08/15(月)01:44:40 ID:kNn
今日はここまで 『作者』編 次回へ続きます
次回以降予告
マッチ売りは幸せだ、ハッピーエンドだと言い放つアンデルセンに怒りを露わにする雪の女王
何故彼が他の作者と比較して数多くのバッドエンドを書き記しているのか…アンデルセンの思想と想いに振れる女王
次回をお楽しみに!
670 :名無しさん@おーぷん :2016/08/15(月)10:02:41 ID:EFa
乙です!
続き待ってます!!
672 :名無しさん@おーぷん :2016/08/15(月)13:22:23 ID:1kR
乙!
靴磨きの少年はたくましいなw
673 :名無しさん@おーぷん :2016/08/15(月)22:59:03 ID:xdd
乙
優しいうえに乳でかいとか完璧か女王!
つーか女王いろいろ容赦がないなwww
678 :◆oBwZbn5S8kKC :2016/08/22(月)00:39:01 ID:kap
過去、現実世界 (1840年代)
アンデルセンの書斎
アンデルセン「そうか、君は雪の女王か。自分が生み出した物語の登場人物と言葉を交わせる日が来るとは…実に喜ばしい」フフッ
雪の女王「私はただただ不愉快だがな。貴様の思想もその余裕そうな態度も全て気にくわない」スッ
パキパキパキ…! シャキンシャキン
アンデルセン「おぉ、無数の氷の刃で私の動きを封じるとは…いやはや見事な手際だね、流石は雪の女王だ。賞賛と拍手を贈ろう」パチパチパチ
雪の女王「止めろ。嘗めた態度で私を挑発して隙を生み出そうというのなら無駄だ」
アンデルセン「失敬、そんなつもりは無いよ。純粋に君の能力への賞賛さ」
雪の女王「余計な行動はするなと忠告してやろう。今、私は貴様の命を容易く散らせるという事を忘れるな」
アンデルセン「君は随分と物騒な物言いをするね。冷静沈着に見えてその心に秘めた怒りと情熱は『雪』とはあまりにもかけ離れている…『焔』という二つ名の方が今の君にはお似合いかな」クスクス
679 :◆oBwZbn5S8kKC :2016/08/22(月)00:40:40 ID:kap
雪の女王「訂正する、余計な言葉も発するな。刻まれて死ぬのが嫌ならこの書斎ごと貴様を焼き殺そうか?私はどちらでも構わない」ギロリ
アンデルセン「むぅ…すまない、そう怒らないでくれ。私は場を和ませようと冗談を口にしただけなんだ、悪気は無いよ」
雪の女王「悪気は無い…か。貴様が不幸にしてきた数多くの主人公たちにもそうやって言い訳をするつもりか?」ギロッ
アンデルセン「薄々感づいてはいたけれど…。君がこの世界へ来た理由は私が執筆したおとぎ話に不満があったから…そうだね?」
雪の女王「その通りだ、私は貴様のせいで苦しんでいる者達を救いたい。しかし物語の筋を無理に変えればその世界を消滅させてしまう、一度決められた結末を変えることは出来ない。ただ一人、作者を除いてな」
アンデルセン「なるほど、君の納得がいくように物語を書き直せと言うんだね」
アンデルセン「…確かに作者である私になら人魚姫の恋を成就させる事も、赤い靴の少女の呪いを解く事も、マッチ売りに裕福な暮らしをさせることも容易い…君はそれを望んでいるんだろう?」
雪の女王「そうだ。今すぐに彼女達の物語をハッピーエンドに書き直すというのなら、私はこの刃を収める。だが断るというのならば…どうなるかは言わずとも解るな?」
アンデルセン「あぁ解るとも、だが君の望みには応えられない。私はおとぎ話の結末を決して変えるつもりはないよ」
680 :◆oBwZbn5S8kKC :2016/08/22(月)00:42:26 ID:kap
ヒュッ ザシュッ
アンデルセン「……っ!」ボタボタ
雪の女王「残っている方の耳でよく聞け、アンデルセン」スッ
雪の女王「貴様のおとぎ話を全てハッピーエンドに書き直せ。これは頼みでも要求でもない、命令だ。次は耳では済まさないぞ?」
アンデルセン「ハハッ…やっぱり君は『雪』なんかじゃないなぁ」ハハハ…
雪の女王「余計な言葉を発するなと私は言ったはずだ、何度も言わせるな。私の命令に対して首を縦に振る事、それ以外の言動は死に繋がると思え」
アンデルセン「君こそ何度も同じ事を言わせないで欲しいな、私は言ったはずだよ」
アンデルセン「おとぎ話の結末は変えない。君がどんな暴挙に出ようこの考えは覆らないよ」
シュッ ピタッ
雪の女王「こんな風に…刃の切っ先を喉笛に突きつけられなければ正しい判断ができないか?アンデルセン」
アンデルセン「……っ」
雪の女王「図に乗るなよ?私は貴様を殺すことに抵抗も躊躇も感じない。これが生き長らえる最後のチャンスだと思え、さぁ…結末を変えろ」
アンデルセン「断る。決して変えないよ、私は」
雪の女王「……っ」
アンデルセン「どうしたんだい?私は生き長らえる最後のチャンスをふいにしたんだ。さぁ、ひと思いにやってくれ…私を殺すんだろう?雪の女王」フフッ
681 :◆oBwZbn5S8kKC :2016/08/22(月)00:44:15 ID:kap
雪の女王「貴様…!」ギロリ
アンデルセン「いや…女王である君の手を煩わせるのは忍びないな…。目の前に丁度良い刃があるんだ、これで自ら命を絶つとしようか」スッ
雪の女王「……っ!やめろ…!」
フッ
アンデルセン「どうしたんだい?氷の刃を収めては私を殺すことが出来ないぞ?」フフッ
雪の女王「…もういい、茶番を続けるな」
アンデルセン「そうかい?君が言うのならそうしようか」フフッ
雪の女王「やはり貴様は…意地の悪い男だな」ギロリ
アンデルセン「私のおとぎ話を書き換えられるのは私だけ、殺してしまって君は望みを叶えることが出来ないばかりか唯一の希望すらふいにしてしまう」
アンデルセン「でも君はそこまで愚かじゃない。殺す殺すと強気に脅してきたのも、それを悟らせないためだったんだろう?」
雪の女王「……」ギロリ
アンデルセン「そう睨まないでくれ、もう私を脅迫して我を通すことは無理だと解っただろう?ここは一つ話し合いで解決しようじゃないか、君にはそれしか手が残っていないのだしね」
雪の女王「言葉の端々に嫌みを織り交ぜるのは止めろ。私の憎しみを煽って貴様に利益があるのか?」
アンデルセン「あぁ…すまない。全くの無意識なんだ…悪気は全くないんだ、大目に見て欲しい」
682 :◆oBwZbn5S8kKC :2016/08/22(月)00:46:33 ID:kap
雪の女王「……で、話し合いで解決すると貴様は言ったな?」
アンデルセン「言ったね。あぁ、耳の手当てをしながらでも構わないね?こう見えて相当痛いんだよ」ハハハ…
雪の女王「好きにしろ。話を戻すが…そう言った以上、場合によってはおとぎ話の結末を書き替える、そう解釈してもいいな?」
アンデルセン「構わないよ。そうでなければ嘘になってしまう」ガサガサ
雪の女王「さっきはあれほど頑なに拒んでいたというのに、どういう心境の変化だ?」
アンデルセン「誤解を招かないように言っておくけれど、既に世間に発表されている【人魚姫】や【赤い靴】の結末は決して変えないよ」
アンデルセン「私は自分の納得できる物語を書けたから世間に公表した。これを変えることはありえない。もうこれに関しては諦めてくれとしかいえない」
雪の女王「…それならば、私が結末を変える事が出来るのはこの原稿のおとぎ話だけというわけか?」スッ
アンデルセン「そうだね、この原稿のおとぎ話【マッチ売りの少女】はまだ世間に公表していない」
アンデルセン「作者である私とある童話作家と…それと書斎に忍び込んで盗み見した君の三人だけだ、この童話の内容を知っているのは」
雪の女王「まだ発表されていないから世界も構築されていないというわけだな。だが……」ペラペラ
雪の女王「何度読んでも胸くその悪い内容だ。よくも貴様はこんな物語を書けたものだと心底思う」
雪の女王「可哀想な少女が報われず救われず死んでいくだけなど…そんな結末には絶対にさせない。必ず貴様を説き伏せて彼女には幸せな結末を用意させる」
683 :◆oBwZbn5S8kKC :2016/08/22(月)00:49:28 ID:kap
アンデルセン「その前に…雪の女王、最初の読者として君に聞きたい。【マッチ売りの少女】を読んだ感想を、聞かせてくれないか」
雪の女王「貴様を殺す決意が固まった」
アンデルセン「いや、そういうのではなくて…もう少し一般的な感想をだな…」
雪の女王「それほどに残酷だった。という事だ」フイッ
雪の女王「それに貴様の口振りだと…おとぎ話を書いてそれが世間に知れ渡るとそのおとぎ話の世界が生まれる、と言うことを知っていたようだな?」
アンデルセン「そうだね、知っていたよ。とある童話作家から聞いたからね」
雪の女王「本来、現実世界ではそれは知られていないはずだ。貴様がどこからそれを知ったのかまでは聞かないが…この事実を知っていたという事は」
雪の女王「【マッチ売りの少女】を生み出すという事はそれと同時に父親に虐待され貧しく食事もできず苦しい生活の末、些細な幻にすがって凍死する…そんな少女を実際に生み出す。それを理解した上で執筆したということだな?」
アンデルセン「そう思ってくれて構わない。それを理解した上で私はこの物語を書いた」
雪の女王「残酷だとは思わなかったのか?このマッチ売りに申し訳ないとすら思わなかったと?」
アンデルセン「…残酷だとは思う、マッチ売りには酷な運命を背負わせたとも思う」
アンデルセン「だが私は童話作家だ、必要があると考えたから彼女にこの運命を定めた。それに…」
アンデルセン「彼女なら…あの女性ならきっと私の考えを理解して納得してくれると信じている。マッチ売りはきっと私の意図を汲んで運命を受け入れてくれると信じている」
684 :◆oBwZbn5S8kKC :2016/08/22(月)00:54:39 ID:kap
雪の女王「あの女性…?」
アンデルセン「マッチ売りにはモデルがいるんだ。優しくて自分のことより他人を優先する優しい女性だった」
アンデルセン「私は数え切れない程の愛情と恩を受け取ったけれど何一つ返せないままこの世を去ってしまった。せめてこの【マッチ売りの少女】が恩返しになればいいのだが」フフッ
雪の女王「…貴様は不可解なことばかり口にする男だ」
アンデルセン「そうかい?」
雪の女王「そうだろう。こんな残酷なおとぎ話の主人公のモデルにされてその女が喜ぶ訳ないだろう。むしろ普通は憤慨する」
雪の女王「それに貴様はこのおとぎ話をあろうことかハッピーエンドだなどと抜かした。私に言わせれば全てのおとぎ話の中でも屈指のバッドエンドだ、こんな残酷な結末が他にあるか?」
アンデルセン「確かに彼女の境遇は残酷かも知れない。だがあの結末はむしろハッピーエンドだ」
雪の女王「解らない男だな貴様は。死を迎える結末が幸せだというのか?」
アンデルセン「解っていないのは君だと思うが…ならば生きていれば幸せなのか?」
雪の女王「当然だろう、死んでしまっては終わりだ。幸せになる未来すら失うことになる」
アンデルセン「わかっていないな…未来なんかないんだよ、貧民には」ボソッ
雪の女王「何だ?よく聞こえなかったが?」
アンデルセン「いいや、なんでもないよ。すまないがその原稿をよこしてくれ」スッ
685 :◆oBwZbn5S8kKC :2016/08/22(月)00:56:32 ID:kap
アンデルセン「さて…本題に入ろう」スクッ
アンデルセン「君は私のおとぎ話の主人公を…マッチ売りを救いたいと考えている。それはおとぎ話がただの『物語』ではなく君たちのとっての現実だからだ」
アンデルセン「だが私もそうそう容易く自分の想いを曲げられない。私は必要だと思ったからこの物語を執筆した、当然この結末も必要なものだと思っている」
雪の女王「私はそうは思わないがな」
アンデルセン「君と私は違うからね。だからこそこのおとぎ話を書いたともいえるが…ともかく」
アンデルセン「私としてもマッチ売りには幸福になって欲しいと思っている、だからハッピーエンドにした訳なのだし」
雪の女王「貴様はまだ言うか、あの結末の何処が…」
アンデルセン「それに関してはひとまず置いておくとして…とにかく私にとってこの物語はハッピーエンドなんだ。それを書き換えろと言うからにはこれよりも素晴らしい結末でなければいけない」
雪の女王「…つまり、私に現状よりもマッチ売りを幸せに出来る結末を用意してみろという事だな?」
アンデルセン「そうだ、それに私が納得すれば結末をきちんと書き換えて発表する。それで私に出来る精一杯の譲歩だ」
雪の女王「十分だ。こんな最悪の結末よりも幸せな展開など湧き出るほど存在するからな」
アンデルセン「そうか、ならば君の考えるハッピーエンドを聞かせてくれ、私はそれをメモしていく」スッ
686 :◆oBwZbn5S8kKC :2016/08/22(月)00:59:36 ID:kap
雪の女王「そうだな…まずは死ぬのは無しだ」
アンデルセン「死ぬのは無し、と。ならばマッチ売りは何故死なないんだい?」
雪の女王「何故?こんな幼い少女が死ぬなど可哀想だからに決まっているだじゃないか」
アンデルセン「そうじゃない。これはおとぎ話だが最低限のリアリティは必要なんだ」
アンデルセン「マッチ売りは貧しい暮らしをして食事も着るものにも困っているんだ、まともな防寒もせずに体調も万全じゃない状態で一晩過ごせるとは思えない」
雪の女王「ならばそもそも貧しい生活という設定を変えるべきだ、彼女は裕福な家に暮らしていて両親からも愛されていてだな…」
アンデルセン「……何故そんなお嬢様がマッチを売る事になるんだ?」
雪の女王「売らなくてもいいだろう、マッチ売りが幸せならば」
アンデルセン「…目だ、そこを変えたらこの物語の意味がない。マッチ売りの境遇はそのままで最後の晩だけの改変しか認めない」
雪の女王「注文の多い奴め…ならばこうだ。その日、マッチがたくさん売れた事にしろ。そうすれば死なないだろう」
アンデルセン「マッチがたくさん売れました、おしまい……では物語を締めることなんかできない。それくらい配慮してくれないか?」
雪の女王「何の問題がある?オチが特にないおとぎ話なんていくらでもあるだろう」
アンデルセン「民間伝承ならともかく私のおとぎ話は創作童話だ、そんな結末では多くの人に読んでもらえるわけがない
687 :◆oBwZbn5S8kKC :2016/08/22(月)01:03:25 ID:kap
しばらく後…
雪の女王「……」ムムム
アンデルセン「もうそろそろネタ切れではないか?」
雪の女王「待て、今考えているところだ」
アンデルセン「いいよ、いくらでも待つ。でもわかっただろう、これ以上のハッピーエンドなどありはしないんだよ」
雪の女王「黙っていろ。ならばこうだ、マッチ売りが息を引き取る前に心優しい富豪が現れてだな…」
アンデルセン「よく読んでくれるか女王、この街にそんな富豪が居るならもう少しマッチ売りはましな生活が出来ているさ」
雪の女王「何なんだ貴様は却下却下と、結局マッチ売りを幸せにするつもりも結末を変えるつもりもないんじゃないか」バンッ
アンデルセン「…君は魔女としては一流だが作家としては三流だ」
アンデルセン「女王はマッチ売りを可哀想に思うあまり現実が見えていない。世間は彼女のような貧民には無関心だ、手をさしのべる者なんか決していない」
アンデルセン「食事も衣服も不足して、父親からは虐待され、毎日毎日苦しい日々を過ごすマッチ売りを助ける者なんていない…それは君も散々考えて解っただろう」
雪の女王「……」
アンデルセン「もう薄々理解してるだろう?私が何故、死をハッピーエンドだと言ったか」
雪の女王「黙っていろ。私はまだ認めていないし諦めてもいない」
アンデルセン「無駄だよ女王…マッチ売りを、このような貧しい少女を救うのは死しかない」
アンデルセン「この冷たい社会の中で貧しい少女は未来を夢見ることすら許されない。誰見手をさしのべてくれない上に少女が一人で生きていけるほど社会は甘くもない」
アンデルセン「死ぬことでしか救われない、そういう状況もあるんだ。解っただろう、女王」
それからしばらく経ったある日
雪の女王「……」
雪の女王(私は苛立っていた)
雪の女王(ゲルダとカイが生まれ、この世界の物語が動き出してからというものどうしてもアンデルセンという男のことが気になった)
雪の女王(彼はただの作者。現実世界の男、おとぎ話の住人である私が気にかける必要などなかった)
雪の女王(だがどうしても…その作者が気になってしまったのだ。幸い、私には有り余る魔法の力が存在する。おとぎ話の世界の事情も、他のおとぎ話の存在も知っている)
雪の女王(彼について調べていくうちに一つの真実にたどり着いた。どうやら彼が紡ぐおとぎ話の多くは主人公が苦しみ辛い思いをするようなのだ)
雪の女王(おとぎ話はその全てがハッピーエンドではない。それは当然だ、おとぎ話には教訓を与える役割もあるのだから主人公全てが幸せになるとは限らない。だが…)
雪の女王(彼が紡ぐおとぎ話のいくつかは…理不尽な運命を主人公が強いられている。自業自得とはとてもいえない者も多い、幸せな結末さえ与えられない、救われることのない主人公が大勢いる)
雪の女王(悲恋の末泡と消える人魚、恋実らず焼き解かされる玩具の兵隊、人間に弄ばれるヒバリとヒナギク…。
詐欺師に騙される王、自らの行いが原因とはいえ沼に沈められる娘、同様に終わることのない舞踏を続けざるをえない少女。周囲に翻弄され続ける小さな娘、独りきりで虐げられ続ける白鳥…あげればきりがない)
雪の女王(これほど辛い思いをしている者が居て、その元凶がアンデルセンであると知って…私は黙っていられない)
雪の女王(その多くの主人公は自分がおとぎ話の世界の住人だと言うことすら知らないだろう。しかし…私は知っている)
雪の女王(そして私なら…現実世界へ向かうことが可能。世界を移動する魔法は使える、アンデルセンに与えられたこの魔力を兄弟姉妹たちの為に使うべきだ)
雪の女王(そう、私は決めた。現実世界へ渡り、私たちのおとぎ話を生み出したアンデルセンに出会い、その悪行を止めさせる)
雪の女王「罪のない主人公たちを苦しめる作者は…まさに悪魔だ。その悪魔を、私は成敗しなければいけない」
・・・
663 :◆oBwZbn5S8kKC :2016/08/15(月)01:17:15 ID:kNn
1840年代
現実世界 デンマークのとある都市
ザワザワ ザワザワ
雪の女王「……」スタスタ
雪の女王(この国、この都市にアンデルセンは住んでいる筈だ。だが正確な場所までは把握できていない、地道に探し出すしかないが…それより)
「おい、あそこ歩いてる女…この辺りでは見慣れない服装だな、外人かな?」
「っていうか、すげー美人だぜ。もう結構冷える季節になったのに妙に露出も多いし…いや、それは大歓迎なんですけどね。乳デカいし!」
「じろじろ見るなよお前、デンマークの民度が低いと思われるだろ…とはいえ綺麗な人だよな」
雪の女王(少々、私のこの姿は目立つようだ…。彼は私達おとぎ話の住人が実際に存在している事すら知らないだろうが、目立たないに越したことはないな。何か変装を…)
スッ
若者「そこのお姉さん、見たところ観光かな?この街は見所多いから悩んじゃうでしょ、俺が案内してあげようか?」ヘラヘラ
雪の女王「そうだな…是非案内を頼もうか。とはいえ観光地には興味ないんだ、できれば路地裏のような人目に付かない場所へ案内して欲しいな」
若者「路地裏?なんでそんな所に…」
雪の女王「フフッ、人目に付かない場所でする事なんかそう多くはないじゃないか。それとも私に皆まで言わせるつもりかい?」クスクス
若者「えっ、マジで?それってもしかして…行く行く!行きます!そこの路地裏なら人通り超少ないからそこに行こうか」ウヘヘ
雪の女王「何処でも構わないよ、誰にも見られないのならな」フフッ
ペキペキペキ ヌアアァァー!
雪の女王「さて、男物のコートだが…これで少しは目立たずに済むな。しかし人目に付かない場所へわざわざ行かないと魔法が使えないのは面倒なものだな」スタスタ
664 :◆oBwZbn5S8kKC :2016/08/15(月)01:20:28 ID:kNn
雪の女王(さて…あまり派手に聞き込みをする訳にもいかないが…一軒一軒当たっていくわけにもいかない、そもそもアンデルセンの風貌を知らないからな)スタスタ
雪の女王「となると…どうやってアンデルセンの家を探すのが最善か…」
靴磨きの少年「ねぇねぇお姉さん、アンデルセン先生に会いたいの?」ニコニコ
雪の女王「口に出ていたか…。その通りだが、君はアンデルセンの家を知っているのか?」
靴磨きの少年「残念だけど知らないよ。でも先生がよく行く本屋さんなら知ってるよ、そこの店員さんなら先生の住所知ってるかも。ところで…お姉さんの靴、少し磨こうか?」ニコッ
雪の女王「そうだな、世間話でもしながら磨いて貰おうか。代金は銀貨一枚で足りるか?」
靴磨きの少年「うん、十分だよ。じゃあちょちょっと磨いちゃうね……あぁアンデルセン先生だけどね、先生はそこの広場の脇にある小さな本屋によく入ってるのを見るよ」フキフキ
雪の女王「そうか。この後そこの本屋に行ってみるとしよう」
靴磨きの少年「そっか、でもお得意先の住所を見知らぬ女の人に教えてくれないと思うよ?先生に会いたくて来る観光客だって少なくないし、その辺のガードは堅いんじゃないかな。方法がない訳じゃないけど」チラチラッ
雪の女王「フフッ、君は実に腕のいい靴磨きだな。銀貨をもう一枚渡すからもう少し念入りに頼むよ」
靴磨きの少年「そりゃどーも。そういえばあの本屋さん、いつも通りならもう少しあとに本とかインクとかの配達をすると思うよ。もしかしたらアンデルセン先生にお家にも届けにいくかもね……はい、終わり!」キュッキュッ
雪の女王「君のおかげで足取りが軽くなりそうだ、ありがとう」ナデッ
靴磨きの少年「いえいえ、また靴磨きが必要ならいつでもどーぞ」ニコニコ
665 :◆oBwZbn5S8kKC :2016/08/15(月)01:24:29 ID:kNn
しばらく後…
ハンス・クリスチャン・アンデルセンの自宅
雪の女王「思った以上に容易くたどり着けたな。私が思っていた以上に彼が有名人だったということもあるが…しかし、有名人の割には普通の家に住んで居るんだな」
雪の女王「…さて、いつまでも家の前をうろうろしていて怪しまれても良くない」スッ
雪の女王「そこの路地からなら人目に付かないな、丁度よく小窓もある。鍵はかかっているかも知れないが…まぁそれは大した問題じゃない」
パキパキパキ ガチャン
雪の女王「……家の中から人の気配はしないな。それじゃあお邪魔させて貰おう」スタッ
雪の女王「さて…作家先生なんだ、どこかに執筆作業に使っている部屋があるはずだ。そこで彼が帰ってくるのを待とう」
雪の女王「アンデルセンに出会ったら、まずは奴が執筆した残酷な物語の数々を書き直させる」スタスタ
雪の女王「他人が無理やり干渉すればおとぎ話の世界が消える可能性もあるが、作者ならば問題がない筈だ。もしも私の要求を飲まず…おとぎ話の修正を断るようならば」スタスタ
雪の女王「彼が私に与えたこの氷結能力で脅迫する。アンデルセンがどんな男だとしても…自分のおとぎ話よりも命を優先させるだろうからな…っと、この部屋かな?」スタスタ
ガチャ
雪の女王「ペンにインク、原稿紙…どうやらここがアンデルセンの仕事部屋のようだ」
雪の女王「資料らしい本の他に自分が書いたおとぎ話の本も並んでいるな、私の世界【雪の女王】も並んでいる。この多くの物語の主人公が奴の餌食になっているわけだ…」
雪の女王「なんにせよアンデルセンが帰宅してからだな。それにしても慣れない世界を歩き回って少々疲れた、少し座って…んっ?机の上に原稿が置いてあるな、どうやら書き終えたばかりのおとぎ話のようだが…」
雪の女王「奴はいつ戻ってくるかわからない、退屈しのぎに読ませて貰おうか。この原稿の、このおとぎ話のタイトルは…」
雪の女王「【マッチ売りの少女】…か、せめてこの物語の主人公が他の主人公のように辛い思いをしないことを祈るばかりだな」ペラッ
666 :◆oBwZbn5S8kKC :2016/08/15(月)01:28:50 ID:kNn
アンデルセンの自宅
アンデルセン「いやはや、参ったな。すぐに家に戻るつもりが…すっかり遅くなってしまった。まだ新作の推敲が終わっていないというのに、さぁ急いで推敲を始めよう」ガチャガチャッ
男の声『待て…妙だ、アンデルセン。お前は家を出る前、確かに鍵を閉めた。何故、家の中から人の気配がする?』
アンデルセン「人の気配?私には何も感じないのですが…」
男の声『私はお前と違って敏感だ、間違いない。しかも…ただの盗人じゃあなさそうだ…おとぎ話世界の住人の可能性が高い、膨大な魔力を感じる』
アンデルセン「おぉ…それは楽しみだ!どこの世界の誰かは知らないがおとぎ話の世界に住む者が私に会いに来てくれたというわけだ!」フフッ
男の声『愚か者、お前はあの様な物語を書き連ねておきながらよくも楽しげに出来るものだ。お前の作風はおとぎ話の住人に愛されると言うよりは恨みを買う方だ』
アンデルセン「そんなつもりは無いのだが…私は自分に作品を愛しているんですよ?」
男の声『お前がどう思っているかなど関係は無い。おとぎ話の住人は作者の決定には抗えない、そして作者に想いまでは知る由がない』
男の声『私に言わせればお前がおとぎ話の住人に恨まれて殺されようが自業自得だ。おとぎ話に人々の未来を変える力があるなどと未だに信じている愚かな男への報いだ』
アンデルセン「おや、あなただって以前は私と同じ志だったと聞いていますけどね」
男の声『過去の話だ。おとぎ話にはそんな力は無い。そして私はもう、決して筆をとらない』
アンデルセン「勿体ないですよ、かつて沢山の名作を生み出した作者であるあなたがもう筆をとらないというのは…」
男の声『……今はそんなことはどうでもいい、どうやら客人はお前の書斎で待っているようだ。早く向かうべきではないか?』
アンデルセンの書斎
ガチャッ
雪の女王「……っ」ギロッ
アンデルセン「これは驚いた、私の書斎に忍び込むなんて誰かと思ったが…こんなに美しい女性だとは思わなかった」フフッ
雪の女王「…貴様がアンデルセンだな?」
アンデルセン「あぁ、如何にも。私がハンス・クリスチャン・アンデルセンだ。君の名も是非教えて欲しいものだが…」
雪の女王「その前に答えて貰おうか、この原稿は…何だ?」バサッ
アンデルセン「っ、ぞんざいに扱わないで欲しいものだ。それに何…とはどういう意味かな?それは昨晩書き上げたばかりのおとぎ話【マッチ売りの少女】というおとぎ話だ、まだ推敲を残しているから完成とはいえないが」
雪の女王「私が問いかけているのは内容の事だ」
アンデルセン「内容…?この作品に何かおかしなところがあるかい?」
雪の女王「色々と言いたいことはある、だがこの物語は何だ!?常軌を逸している!正気じゃあない!まともな人間がよくもこんな残酷なバッドエンドを書けたものだ!」バンッ
アンデルセン「バッドエンド…?おかしな事を言う女性だ、【マッチ売りの少女】はハッピーエンドじゃないか、マッチ売りは死ぬことが出来て幸せだったんだからね」
ヒュッ バチーンッ!!
アンデルセン「ぐっ…!何をするんだ君は…!」
雪の女王「…人を殴るなんて初めてだ。だが私の心は決まった…あぁ、まだ名乗っていなかったな」
雪の女王「はじめましてアンデルセン、私は貴様が生み出した雪の女王という名の魔女だ。そしてさようならだ、アンデルセン」
雪の女王「私は貴様を殺すことに決めたよ、無慈悲で残酷な作者様を…!」ギロリ
パキパキパキ ヒュオオオォォォ
668 :◆oBwZbn5S8kKC :2016/08/15(月)01:44:40 ID:kNn
今日はここまで 『作者』編 次回へ続きます
次回以降予告
マッチ売りは幸せだ、ハッピーエンドだと言い放つアンデルセンに怒りを露わにする雪の女王
何故彼が他の作者と比較して数多くのバッドエンドを書き記しているのか…アンデルセンの思想と想いに振れる女王
次回をお楽しみに!
670 :名無しさん@おーぷん :2016/08/15(月)10:02:41 ID:EFa
乙です!
続き待ってます!!
672 :名無しさん@おーぷん :2016/08/15(月)13:22:23 ID:1kR
乙!
靴磨きの少年はたくましいなw
673 :名無しさん@おーぷん :2016/08/15(月)22:59:03 ID:xdd
乙
優しいうえに乳でかいとか完璧か女王!
つーか女王いろいろ容赦がないなwww
678 :◆oBwZbn5S8kKC :2016/08/22(月)00:39:01 ID:kap
過去、現実世界 (1840年代)
アンデルセンの書斎
アンデルセン「そうか、君は雪の女王か。自分が生み出した物語の登場人物と言葉を交わせる日が来るとは…実に喜ばしい」フフッ
雪の女王「私はただただ不愉快だがな。貴様の思想もその余裕そうな態度も全て気にくわない」スッ
パキパキパキ…! シャキンシャキン
アンデルセン「おぉ、無数の氷の刃で私の動きを封じるとは…いやはや見事な手際だね、流石は雪の女王だ。賞賛と拍手を贈ろう」パチパチパチ
雪の女王「止めろ。嘗めた態度で私を挑発して隙を生み出そうというのなら無駄だ」
アンデルセン「失敬、そんなつもりは無いよ。純粋に君の能力への賞賛さ」
雪の女王「余計な行動はするなと忠告してやろう。今、私は貴様の命を容易く散らせるという事を忘れるな」
アンデルセン「君は随分と物騒な物言いをするね。冷静沈着に見えてその心に秘めた怒りと情熱は『雪』とはあまりにもかけ離れている…『焔』という二つ名の方が今の君にはお似合いかな」クスクス
679 :◆oBwZbn5S8kKC :2016/08/22(月)00:40:40 ID:kap
雪の女王「訂正する、余計な言葉も発するな。刻まれて死ぬのが嫌ならこの書斎ごと貴様を焼き殺そうか?私はどちらでも構わない」ギロリ
アンデルセン「むぅ…すまない、そう怒らないでくれ。私は場を和ませようと冗談を口にしただけなんだ、悪気は無いよ」
雪の女王「悪気は無い…か。貴様が不幸にしてきた数多くの主人公たちにもそうやって言い訳をするつもりか?」ギロッ
アンデルセン「薄々感づいてはいたけれど…。君がこの世界へ来た理由は私が執筆したおとぎ話に不満があったから…そうだね?」
雪の女王「その通りだ、私は貴様のせいで苦しんでいる者達を救いたい。しかし物語の筋を無理に変えればその世界を消滅させてしまう、一度決められた結末を変えることは出来ない。ただ一人、作者を除いてな」
アンデルセン「なるほど、君の納得がいくように物語を書き直せと言うんだね」
アンデルセン「…確かに作者である私になら人魚姫の恋を成就させる事も、赤い靴の少女の呪いを解く事も、マッチ売りに裕福な暮らしをさせることも容易い…君はそれを望んでいるんだろう?」
雪の女王「そうだ。今すぐに彼女達の物語をハッピーエンドに書き直すというのなら、私はこの刃を収める。だが断るというのならば…どうなるかは言わずとも解るな?」
アンデルセン「あぁ解るとも、だが君の望みには応えられない。私はおとぎ話の結末を決して変えるつもりはないよ」
680 :◆oBwZbn5S8kKC :2016/08/22(月)00:42:26 ID:kap
ヒュッ ザシュッ
アンデルセン「……っ!」ボタボタ
雪の女王「残っている方の耳でよく聞け、アンデルセン」スッ
雪の女王「貴様のおとぎ話を全てハッピーエンドに書き直せ。これは頼みでも要求でもない、命令だ。次は耳では済まさないぞ?」
アンデルセン「ハハッ…やっぱり君は『雪』なんかじゃないなぁ」ハハハ…
雪の女王「余計な言葉を発するなと私は言ったはずだ、何度も言わせるな。私の命令に対して首を縦に振る事、それ以外の言動は死に繋がると思え」
アンデルセン「君こそ何度も同じ事を言わせないで欲しいな、私は言ったはずだよ」
アンデルセン「おとぎ話の結末は変えない。君がどんな暴挙に出ようこの考えは覆らないよ」
シュッ ピタッ
雪の女王「こんな風に…刃の切っ先を喉笛に突きつけられなければ正しい判断ができないか?アンデルセン」
アンデルセン「……っ」
雪の女王「図に乗るなよ?私は貴様を殺すことに抵抗も躊躇も感じない。これが生き長らえる最後のチャンスだと思え、さぁ…結末を変えろ」
アンデルセン「断る。決して変えないよ、私は」
雪の女王「……っ」
アンデルセン「どうしたんだい?私は生き長らえる最後のチャンスをふいにしたんだ。さぁ、ひと思いにやってくれ…私を殺すんだろう?雪の女王」フフッ
681 :◆oBwZbn5S8kKC :2016/08/22(月)00:44:15 ID:kap
雪の女王「貴様…!」ギロリ
アンデルセン「いや…女王である君の手を煩わせるのは忍びないな…。目の前に丁度良い刃があるんだ、これで自ら命を絶つとしようか」スッ
雪の女王「……っ!やめろ…!」
フッ
アンデルセン「どうしたんだい?氷の刃を収めては私を殺すことが出来ないぞ?」フフッ
雪の女王「…もういい、茶番を続けるな」
アンデルセン「そうかい?君が言うのならそうしようか」フフッ
雪の女王「やはり貴様は…意地の悪い男だな」ギロリ
アンデルセン「私のおとぎ話を書き換えられるのは私だけ、殺してしまって君は望みを叶えることが出来ないばかりか唯一の希望すらふいにしてしまう」
アンデルセン「でも君はそこまで愚かじゃない。殺す殺すと強気に脅してきたのも、それを悟らせないためだったんだろう?」
雪の女王「……」ギロリ
アンデルセン「そう睨まないでくれ、もう私を脅迫して我を通すことは無理だと解っただろう?ここは一つ話し合いで解決しようじゃないか、君にはそれしか手が残っていないのだしね」
雪の女王「言葉の端々に嫌みを織り交ぜるのは止めろ。私の憎しみを煽って貴様に利益があるのか?」
アンデルセン「あぁ…すまない。全くの無意識なんだ…悪気は全くないんだ、大目に見て欲しい」
682 :◆oBwZbn5S8kKC :2016/08/22(月)00:46:33 ID:kap
雪の女王「……で、話し合いで解決すると貴様は言ったな?」
アンデルセン「言ったね。あぁ、耳の手当てをしながらでも構わないね?こう見えて相当痛いんだよ」ハハハ…
雪の女王「好きにしろ。話を戻すが…そう言った以上、場合によってはおとぎ話の結末を書き替える、そう解釈してもいいな?」
アンデルセン「構わないよ。そうでなければ嘘になってしまう」ガサガサ
雪の女王「さっきはあれほど頑なに拒んでいたというのに、どういう心境の変化だ?」
アンデルセン「誤解を招かないように言っておくけれど、既に世間に発表されている【人魚姫】や【赤い靴】の結末は決して変えないよ」
アンデルセン「私は自分の納得できる物語を書けたから世間に公表した。これを変えることはありえない。もうこれに関しては諦めてくれとしかいえない」
雪の女王「…それならば、私が結末を変える事が出来るのはこの原稿のおとぎ話だけというわけか?」スッ
アンデルセン「そうだね、この原稿のおとぎ話【マッチ売りの少女】はまだ世間に公表していない」
アンデルセン「作者である私とある童話作家と…それと書斎に忍び込んで盗み見した君の三人だけだ、この童話の内容を知っているのは」
雪の女王「まだ発表されていないから世界も構築されていないというわけだな。だが……」ペラペラ
雪の女王「何度読んでも胸くその悪い内容だ。よくも貴様はこんな物語を書けたものだと心底思う」
雪の女王「可哀想な少女が報われず救われず死んでいくだけなど…そんな結末には絶対にさせない。必ず貴様を説き伏せて彼女には幸せな結末を用意させる」
683 :◆oBwZbn5S8kKC :2016/08/22(月)00:49:28 ID:kap
アンデルセン「その前に…雪の女王、最初の読者として君に聞きたい。【マッチ売りの少女】を読んだ感想を、聞かせてくれないか」
雪の女王「貴様を殺す決意が固まった」
アンデルセン「いや、そういうのではなくて…もう少し一般的な感想をだな…」
雪の女王「それほどに残酷だった。という事だ」フイッ
雪の女王「それに貴様の口振りだと…おとぎ話を書いてそれが世間に知れ渡るとそのおとぎ話の世界が生まれる、と言うことを知っていたようだな?」
アンデルセン「そうだね、知っていたよ。とある童話作家から聞いたからね」
雪の女王「本来、現実世界ではそれは知られていないはずだ。貴様がどこからそれを知ったのかまでは聞かないが…この事実を知っていたという事は」
雪の女王「【マッチ売りの少女】を生み出すという事はそれと同時に父親に虐待され貧しく食事もできず苦しい生活の末、些細な幻にすがって凍死する…そんな少女を実際に生み出す。それを理解した上で執筆したということだな?」
アンデルセン「そう思ってくれて構わない。それを理解した上で私はこの物語を書いた」
雪の女王「残酷だとは思わなかったのか?このマッチ売りに申し訳ないとすら思わなかったと?」
アンデルセン「…残酷だとは思う、マッチ売りには酷な運命を背負わせたとも思う」
アンデルセン「だが私は童話作家だ、必要があると考えたから彼女にこの運命を定めた。それに…」
アンデルセン「彼女なら…あの女性ならきっと私の考えを理解して納得してくれると信じている。マッチ売りはきっと私の意図を汲んで運命を受け入れてくれると信じている」
684 :◆oBwZbn5S8kKC :2016/08/22(月)00:54:39 ID:kap
雪の女王「あの女性…?」
アンデルセン「マッチ売りにはモデルがいるんだ。優しくて自分のことより他人を優先する優しい女性だった」
アンデルセン「私は数え切れない程の愛情と恩を受け取ったけれど何一つ返せないままこの世を去ってしまった。せめてこの【マッチ売りの少女】が恩返しになればいいのだが」フフッ
雪の女王「…貴様は不可解なことばかり口にする男だ」
アンデルセン「そうかい?」
雪の女王「そうだろう。こんな残酷なおとぎ話の主人公のモデルにされてその女が喜ぶ訳ないだろう。むしろ普通は憤慨する」
雪の女王「それに貴様はこのおとぎ話をあろうことかハッピーエンドだなどと抜かした。私に言わせれば全てのおとぎ話の中でも屈指のバッドエンドだ、こんな残酷な結末が他にあるか?」
アンデルセン「確かに彼女の境遇は残酷かも知れない。だがあの結末はむしろハッピーエンドだ」
雪の女王「解らない男だな貴様は。死を迎える結末が幸せだというのか?」
アンデルセン「解っていないのは君だと思うが…ならば生きていれば幸せなのか?」
雪の女王「当然だろう、死んでしまっては終わりだ。幸せになる未来すら失うことになる」
アンデルセン「わかっていないな…未来なんかないんだよ、貧民には」ボソッ
雪の女王「何だ?よく聞こえなかったが?」
アンデルセン「いいや、なんでもないよ。すまないがその原稿をよこしてくれ」スッ
685 :◆oBwZbn5S8kKC :2016/08/22(月)00:56:32 ID:kap
アンデルセン「さて…本題に入ろう」スクッ
アンデルセン「君は私のおとぎ話の主人公を…マッチ売りを救いたいと考えている。それはおとぎ話がただの『物語』ではなく君たちのとっての現実だからだ」
アンデルセン「だが私もそうそう容易く自分の想いを曲げられない。私は必要だと思ったからこの物語を執筆した、当然この結末も必要なものだと思っている」
雪の女王「私はそうは思わないがな」
アンデルセン「君と私は違うからね。だからこそこのおとぎ話を書いたともいえるが…ともかく」
アンデルセン「私としてもマッチ売りには幸福になって欲しいと思っている、だからハッピーエンドにした訳なのだし」
雪の女王「貴様はまだ言うか、あの結末の何処が…」
アンデルセン「それに関してはひとまず置いておくとして…とにかく私にとってこの物語はハッピーエンドなんだ。それを書き換えろと言うからにはこれよりも素晴らしい結末でなければいけない」
雪の女王「…つまり、私に現状よりもマッチ売りを幸せに出来る結末を用意してみろという事だな?」
アンデルセン「そうだ、それに私が納得すれば結末をきちんと書き換えて発表する。それで私に出来る精一杯の譲歩だ」
雪の女王「十分だ。こんな最悪の結末よりも幸せな展開など湧き出るほど存在するからな」
アンデルセン「そうか、ならば君の考えるハッピーエンドを聞かせてくれ、私はそれをメモしていく」スッ
686 :◆oBwZbn5S8kKC :2016/08/22(月)00:59:36 ID:kap
雪の女王「そうだな…まずは死ぬのは無しだ」
アンデルセン「死ぬのは無し、と。ならばマッチ売りは何故死なないんだい?」
雪の女王「何故?こんな幼い少女が死ぬなど可哀想だからに決まっているだじゃないか」
アンデルセン「そうじゃない。これはおとぎ話だが最低限のリアリティは必要なんだ」
アンデルセン「マッチ売りは貧しい暮らしをして食事も着るものにも困っているんだ、まともな防寒もせずに体調も万全じゃない状態で一晩過ごせるとは思えない」
雪の女王「ならばそもそも貧しい生活という設定を変えるべきだ、彼女は裕福な家に暮らしていて両親からも愛されていてだな…」
アンデルセン「……何故そんなお嬢様がマッチを売る事になるんだ?」
雪の女王「売らなくてもいいだろう、マッチ売りが幸せならば」
アンデルセン「…目だ、そこを変えたらこの物語の意味がない。マッチ売りの境遇はそのままで最後の晩だけの改変しか認めない」
雪の女王「注文の多い奴め…ならばこうだ。その日、マッチがたくさん売れた事にしろ。そうすれば死なないだろう」
アンデルセン「マッチがたくさん売れました、おしまい……では物語を締めることなんかできない。それくらい配慮してくれないか?」
雪の女王「何の問題がある?オチが特にないおとぎ話なんていくらでもあるだろう」
アンデルセン「民間伝承ならともかく私のおとぎ話は創作童話だ、そんな結末では多くの人に読んでもらえるわけがない
687 :◆oBwZbn5S8kKC :2016/08/22(月)01:03:25 ID:kap
しばらく後…
雪の女王「……」ムムム
アンデルセン「もうそろそろネタ切れではないか?」
雪の女王「待て、今考えているところだ」
アンデルセン「いいよ、いくらでも待つ。でもわかっただろう、これ以上のハッピーエンドなどありはしないんだよ」
雪の女王「黙っていろ。ならばこうだ、マッチ売りが息を引き取る前に心優しい富豪が現れてだな…」
アンデルセン「よく読んでくれるか女王、この街にそんな富豪が居るならもう少しマッチ売りはましな生活が出来ているさ」
雪の女王「何なんだ貴様は却下却下と、結局マッチ売りを幸せにするつもりも結末を変えるつもりもないんじゃないか」バンッ
アンデルセン「…君は魔女としては一流だが作家としては三流だ」
アンデルセン「女王はマッチ売りを可哀想に思うあまり現実が見えていない。世間は彼女のような貧民には無関心だ、手をさしのべる者なんか決していない」
アンデルセン「食事も衣服も不足して、父親からは虐待され、毎日毎日苦しい日々を過ごすマッチ売りを助ける者なんていない…それは君も散々考えて解っただろう」
雪の女王「……」
アンデルセン「もう薄々理解してるだろう?私が何故、死をハッピーエンドだと言ったか」
雪の女王「黙っていろ。私はまだ認めていないし諦めてもいない」
アンデルセン「無駄だよ女王…マッチ売りを、このような貧しい少女を救うのは死しかない」
アンデルセン「この冷たい社会の中で貧しい少女は未来を夢見ることすら許されない。誰見手をさしのべてくれない上に少女が一人で生きていけるほど社会は甘くもない」
アンデルセン「死ぬことでしか救われない、そういう状況もあるんだ。解っただろう、女王」
キモオタ「我輩がおとぎ話の世界に行くですとwww」ティンカーベル「そう」 『作者』編
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キモオタ「我輩がおとぎ話の世界に行くですとwww」ティンカーベル「そう」一覧に戻る
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