キモオタ「我輩がおとぎ話の世界に行くですとwww」ティンカーベル「そう」 かぐや姫とオズの魔法使い編
Part28
932 :◆oBwZbn5S8kKC :2016/03/07(月)00:25:39 ID:rPm
ブリキ「俺の望みはこの檻から出る事、そして友のドロシー達を探し出す事。その為に世界を渡る手段が必要だ」
ブリキ「俺を助けたいという言葉が真実ならば、俺を連れて別の世界へ渡ってくれ。お前の…小夜啼鳥の力は今俺が最も欲しているものだ、俺は今すぐにでも別の世界へ渡りたい、ドロシーを救う為に」
ヘンゼル「自分の身体がどうなっているか気が付いていない訳じゃないでしょ?そんなボロボロの身体でどうするつもり?」
ブリキ「俺の身体の事などドロシーが受けているであろう苦しみに比べれば些細な事だ。あいつは今、誰よりも辛く苦しい状況に置かれている」
ブリキ「今のあいつには俺やかかしやライオン…仲間が必要だ。今すぐにでも見つけ出してその不安を解消してやりたい。気の弱い娘だ、一人になどできない」
ヘンゼル「随分と大切なんだね、そのドロシーって子が。僕が知ってる情報だと…アリスと一緒に悪事をしてるって聞いたけど人違い?」
ブリキ「いや…事実だ。だが信じてくれ、あいつはアリスに利用されていただけで…本当は内気で気弱な女の子なんだ、悪意なんか無かった。今はアリスに掛けられていた魔法が解けてしまって、悪事の記憶に悩まされているはずだ…」
ブリキ「だから俺はあいつに協力するためだったら何だってやる。この身が朽ちる事など恐れない、あいつを悩ませる不安を取り除けるなら俺はなんだってやる」
ヘンゼル「……」
ブリキ「お前が俺に頭を下げて頼めというのならばそうする。決して暴れるなと命じるのならそれだって守る。だから頼む!俺に世界移動の力を貸してくれ!」
ヘンゼル「……悪いけど、それは出来ない。やっぱり危険すぎるよ、君自身も周りの人たちも」
ブリキ「好機が巡って来たと思ったが…そう甘くはないか。世界移動の力を貸すつもりがないというのなら、お前達に用は無い」ギリッ
ヘンゼル「最後まで聞きなよ、彼女は僕の見張りでもあるんだ…だから小夜啼鳥を貸すことは出来ない。でもその代わりに、僕がドロシーの居場所を突き止めてこの場所に連れてくる。それじゃ納得できない?」
933 :◆oBwZbn5S8kKC :2016/03/07(月)00:28:05 ID:rPm
ブリキ「俺の代わりにお前がドロシーを探し出し、ここへ連れてくるだと?」ギシッ
ヘンゼル「うん、自分の身体がそんな風になるまで暴れるような君を余所の世界に連れ出すなんて出来ない。でもだからといって諦めろというのは酷だよ」
ヘンゼル「僕にもやらなきゃいけない事があるから時間の全てをドロシーの捜索に割く事は出来ないけど、なるべく優先的に行動はするよ。それでもいいのなら任せて欲しいな」
ブリキ「そうしてくれるのならば、俺は助かるが…」
小夜啼鳥「ヘンゼル君。いいのですか?彼の言葉をそのまま信じてしまっても」
小夜啼鳥「ドロシーがアリスと組んでいるというのは女王様が得た確かな情報。しかしドロシーが操られているだけという情報は…初耳です。何らかの罠の可能性も…」
ブリキ「そう思うのも無理はない。だが、事実だ…それを証明する方法は無いから信じてくれとしか言えないがな」
ヘンゼル「大人の言う事は簡単に信用しちゃいけない。とはいっても…彼の言葉が嘘だとは思えないし、もしもアリスの罠なら世界移動ができる人を狙うと思う。僕がいるのなんか想定外なわけだし」
小夜啼鳥「…正直に言えば私も彼の言葉に嘘偽りは無いとは思いますよ、ですがあなたは随分とブリキに肩入れしているように見えます」
小夜啼鳥「それもごく個人的な感情が原因のようですが」
ヘンゼル「鋭いね小夜啼鳥は」クスクス
小夜啼鳥「鋭くなければあなたのお目付け役は務まりません。あなたはかつての自分の姿とブリキの姿を重ねている…そうですね?」
934 :◆oBwZbn5S8kKC :2016/03/07(月)00:29:46 ID:rPm
ブリキ「…【ヘンゼルとグレーテル】でお前と妹は魔女に騙され捕えられたんだったか」
ヘンゼル「まぁ一応その話だね…昔、僕と妹は魔女に騙されて捕まった。妹は奴隷のように扱われ、僕は太らせて食べる為に小屋に監禁され食べ物を与えられ続けた」
ヘンゼル「その時…妹が魔女のもとで苦しんで悲しんでいるのがわかっているのに、僕には何もできなかったんだ。小屋から出る事も妹に声をかける事も出来ずに…」
ブリキ「……まるで今の俺の状況のようだな。ドロシーが苦しんでいるのを解っていながら、俺は何もできない。それに似ている」
ヘンゼル「うん、だから僕にはブリキの気持ちがわかるんだ」
ヘンゼル「辛いよね。大切な人が苦しんでいるのに何もできない、声をかけて元気づける事も側に居る事さえできない。ただ指をくわえてみるしかできない…それがどれだけ辛い事か」
ヘンゼル「だから彼に協力したい。同じ辛さを経験している彼を、今の僕なら…救えると思う」
小夜啼鳥「個人的な感情で動くという事は…あまり良い結果を招かない事が多いですよ?」
ヘンゼル「あの時は僕を救ってくれる人は居なかった。けれど、ブリキの場合は違う。それとも僕の行動に問題があるって小夜啼鳥は思うの?」
小夜啼鳥「…いいえ、あなたが思うように行動なさってください。私の役目はヘンゼル君を導く事、それは答えを押し付ける事ではありませんから。でももしもの時は…わかってますね?」
ヘンゼル「うん、わかってる」
ブリキ「ヘンゼル…さっきは子供の癖になどと言って悪かった。お前の気づかいと協力、感謝する。今の俺に出来ることなど限られているが、必要な事があれば何でも話そう」
ヘンゼル「聞きたい事…そうだな、それじゃあ折角だからまず…」
ヘンゼル「…ドロシーって女の子がどんな子なのか聞かせてよ。君が身体を張ってまで守りたいと思う女の子がどんな子なのか、僕は興味がある」フフッ
935 :◆oBwZbn5S8kKC :2016/03/07(月)00:31:14 ID:rPm
現在
シンデレラの世界 魔法使いの屋敷 庭(森)
・・・
ヘンゼル「……って事があってね、僕はブリキと約束したんだ。君を探し出すって」
ヘンゼル「でもタイミングが良いのか悪いのか、その翌日にゴーテルさんが訪ねて来て僕と裸王さんはこの世界にやって来た。そこで君に出会った…って訳だよ」
ドロシー「ブリキったらいつもそうなんだから…『俺には心が無い』なんて言って、誰よりも私達の事を思ってくれて…誰よりも優しくて…」ポロポロ
ヘンゼル「……これ、使いなよ。そんなに泣いちゃ、ブリキも悲しむよ」スッ
ドロシー「うぅ、ごめんなさい…。私、すぐに泣いちゃって…気まずい感じにしちゃってごめんなさい…」フキフキ
ヘンゼル「いいよ、気にしてない。それで…どうする?ブリキは君に会いたがってる、僕としては彼にあって欲しいんだけど…」
ドロシー「も、もちろん行きます!本当はみんなに会ったらすぐに頼っちゃいそうだから…なんて考えてたけど、でもブリキの事が心配だから…行きます!」
ヘンゼル「そっか、ありがとう。ブリキも喜ぶよ」フフッ
ドロシー「あ、あの…こっちこそありがとうございます!ブリキの事、助けてくれて…」
ヘンゼル「僕は君に伝言を伝えただけだよ、大した事はしてない。あぁ、でも…裸王さんの話が終わってからじゃないといけないんだけど、それでもいいかな?」
ドロシー「あっ、はい…大丈夫です。私も皆さんのお話が終わってから用事があるんです、私がいないとキモオタさん達が塵になっちゃうとかで…」
ヘンゼル「ははっ、なにそれ?あの二人また何かやらかしたの?相変わらずよくわからないな、キモオタお兄さんは」クスクス
936 :◆oBwZbn5S8kKC :2016/03/07(月)00:34:09 ID:rPm
ヘンゼル「まぁ、待ってるにしてもこんなところに居ても仕方がない。裸王さん達の所へ行こう、邪魔になる様だったらその時に出ていけばいいよ」
ドロシー「は、はい…あっ、でも…そこにはみなさん居るんですよね…。桃太郎さんとかラプンツェルさんとか…」オドオド
ヘンゼル「どうしたの?あぁ…もしかしてこの前までアリス側に居たから、何か言われるとか思ってる?」
ドロシー「お、思ってないと言えば嘘になりますけど。でも、それはかぐやさん達やキモオタさんが励ましてくれたから平気です…。でも、私は元々…初対面の人と話すの苦手で…」
ヘンゼル「あぁ、ブリキが言ってたっけ…緊張しちゃうってことでしょ?えっと何か緊張をほぐすものあったかな…ああ、良いものがある」ゴソゴソ
スッ
ヘンゼル「裸王さんの所で買ったんだ、瓶詰めキャンディ。なめてればきっと気持ちも落ち着くと思うよ」
ヘンゼル「ひとつあげるよ、何味が好き?ミントとレモンとプロテインがあって…あぁごめん、プロテイン味はぜんぶ裸王さんにあげたんだった」
ドロシー「あっ、じゃあミント味で…」
ヘンゼル「ミント味だね。いいよ、わかった。じゃ口開けて、はい…あーん」スッ
ドロシー「ふえぇっ!?」ガタッ
ヘンゼル「えっ、何?」ビクッ
ドロシー「いや、あのっ!自分で食べられますから!だから、あの直接ください、あの、えーっと…」アワアワアワ
ヘンゼル「…あっ、ごめん。グレーテルに飴玉をあげる時はいつもこうしてたから。つい癖でやっちゃってた」ハハッ
ドロシー「だ、だよね!グレーテルちゃんにしてあげてるなら仕方ないよね、だ、大丈夫…!あはは、ごめんね?びっくりしただけだから大丈夫、あはは…」アセアセアセ
小夜啼鳥「……これ女王様に報告しておきます」スッ
ヘンゼル「また忘れたころに出てくる…。そんな事報告しなくてもいいって」
937 :◆oBwZbn5S8kKC :2016/03/07(月)00:36:30 ID:rPm
ヘンゼル「まぁ、いいや。食べたら行こう、彼等は大人だけど…まぁ信用してもよさそうな大人達だし、君が優しくて素敵な女の子だって事はブリキから聞いたから不安がる事無いよ」フフッ
ドロシー「うぅ…そんな風に言われると恥ずかしいです…。ブリキ、私の事どんなふうに喋ったんだろ…」ドキドキ
ヘンゼル「…?」
小夜啼鳥「…ヘンゼル君、おそらく他意はないんでしょうけど不用意すぎます。彼女はあなたの妹じゃないんですよ?」ヒソヒソ
ヘンゼル「そんなの当然じゃないか、何言ってるの小夜啼鳥?」キョトン
小夜啼鳥「いや…まぁいいです。家族以外の人と係わる事が少なかったという理由もあるでしょうし。ただもう少し敏感になりましょう、そうでなければ将来的に刺されますよ」
ヘンゼル「今何か物騒な事言わなかった…?」
小夜啼鳥「まぁ、こういった経験もあなたの成長の為には必要でしょうから…なりゆきに任せましょう」ピチチチチ
ヘンゼル「なりゆきで刺されるのはごめんなんだけど…」
小夜啼鳥(流石に刺されそうなら助けますけど、家族間では出来ないこういった経験こそ彼には必要でしょう)
小夜啼鳥(不安もありましたが裸王さんには心を許し始めているようですしね。その辺りは女王様や弥平さん、キモオタさんの影響なのでしょう…口で言うほど大人を信用していないわけではないのかもしれません)
小夜啼鳥(元々、子供や家族相手には優しい少年ですから大人への憎しみと家族への愛が暴走しないように注意していれば問題ないでしょう)
小夜啼鳥(しかし、アリスに利用されていたドロシーさんが解放されたこのタイミングでのシンデレラさんの誘拐…これがアリスの仕業だとするなら……
小夜啼鳥(アリス側は十分に戦力が整っているはず。そうでなければシンデレラさんを誘拐するなどというリスクを冒さないはず…むしろこれはキモオタさん達を誘い出す為の餌にも見える…)
小夜啼鳥(だとしたら、アリス達はこの一件を終わらせようとしていると考えてもいい…。それだけの自信と準備があるからこの様な行動に出た…)
小夜啼鳥(その様な意図がなかったとしても、シンデレラさんを救出に向かうとなれば【不思議の国のアリス】の世界に行く事になる。そうなれば戦いは逃れられないでしょう)
小夜啼鳥(いずれにせよ…この一件の終幕は、もう目の前と言うわけですか。例えその結末がどう転ぼうとも…もうじき、全てが終わると考えた方がよさそうですね…)
・・・
938 :◆oBwZbn5S8kKC :2016/03/07(月)00:38:10 ID:rPm
不思議の国のアリスの世界 ハートの王の城 牢屋の入り口付近
・・・
スタッ
ジャック「頼むぜ。誰も居ねぇでくれよ…」キョロキョロ
シーン…
ジャック「……よし、俺が牢番を倒した事はまだ奴等に知られてねぇみてぇだな。和尚、誰も居ない今のうちだ。とっととこんな牢から逃げだしちまおうぜ」ヒソヒソ
和尚「うむ、それがよかろう。皆、聞いておったな?もたもたしておっては見つかってしまう、早々にこの世界から逃げ出すのじゃ」
しっぺい太郎「是。我がジャック少年と共に先頭に立ち活路を切り拓く。例え敵が行く手を阻もうともこの牙とこの爪で切り刻んで御覧にいれよう」ガルルルッ
ぶんぶく(荷車状態)「よっしゃ!そんじゃお前達の後ろをオレっちと和尚が進むわ、本当はオレっちもアリスの手下共にひと泡吹かせてやりたいけどもな!」ポンポコポン
和尚「戦ってはならんぞ。お前には姫を護送するという役目があるじゃろう、狸のお主が荷車に化けた理由を忘れてはいかんぞ?」
ぶんぶく「わかってますって!呪いで眠っているオーロラ姫を安全に連れ出すのがオレっちの役目!任せてくれ!」
オーロラ姫「すやすや……んふふ、違いますってぇ……私は今話題のオペラ歌手じゃありませんよ〜…しがない一国の姫ですって〜……」スヤァ
ぶんぶく「ぐぬぬ…仕方がないっつってもこれから命賭けで逃げ出そうって時にいい気なもんだよなぁ…」ポンポコ
長靴を履いた猫「彼女が眠っているのは呪いのせいなのである、そのような事に腹を立てるなど時間の無駄である」ニャーン
長靴を履いた猫「事は一刻を争うのである。追手が現れた場合は最後尾を走るワガハイに任せよ、とにかく今は先を急ぐべきである!」ニャーン
939 :◆oBwZbn5S8kKC :2016/03/07(月)00:39:59 ID:rPm
タッタッタッタッ
ぶんぶく「しっかし、牢屋にぶち込まれてもう駄目かと思ったが…ジャックが助けに来てくれて本当に助かった!感謝してるぞー!」ゴロゴロ
ジャック「ヘヘッ、よせやい照れちまう。だが礼はこの世界から逃げ出してからにしてくれよな、まだ何も解決しちゃいねーんだぜ?」
和尚「そうじゃな。しかしジャック君、牢屋から逃げ出したは良いがこの後はどうするつもりじゃ?我々は一人として世界を移動する手段を持たんのじゃが…」
ジャック「それは問題ねぇぜ、俺には世界移動ができる魔法具があるからな。ほら、こいつだ」スッ
長靴を履いた猫「それは豆であるな?しかし君のおとぎ話に出てくる豆は成長速度が凄まじい他に世界を移動する力まであったのであるか?」
ジャック「いいや、あれとは別もんだ。俺の牛と豆を交換したおっさん…魔導師に事情を話して世界移動ができる豆ってやつを譲って貰った。この豆を育てて雲の上まで逃げれば…そこはもう【ジャックと豆の木】の世界ってわけだ」
和尚「ほう、世界移動の手段があるのならば話は早い。ひとまず逃げ、急いで別のおとぎ話の世界に協力を求めるんじゃ、牢に残してきた仲間達を救いに戻らねばならんからな」
しっぺい太郎「左様。牢に残ると決意したチルチル少年と鼠の娘は卑劣にも人質を取られている。我等と行動を共にする事は叶わなかったが…再び此方に舞い戻り、彼等を救いだす」
ぶんぶく「そうだな、足手まといになるからって残った笠地蔵も救ってやらねぇとな」ゴロゴロゴロ
オーロラ姫「すやすや…んふふふっ、そんなにローストビーフばかり食べられませんって〜…もうお腹いっぱいですぅ〜……」ジュルリ
ぶんぶく「あのさぁ、ジャックが連れて行こうっていうから連れ出したけど……こいつの方が足手まt」
ジャック「そんな事言うんじゃねぇよ!こんなかわいこちゃんを牢に残してられるかよ!可哀想だろ!?」
オーロラ姫「すやすや…だから違いますよぉ、私はただの姫君です〜…モデルさんじゃないですってぇ〜…」ニヤニヤ
940 :◆oBwZbn5S8kKC :2016/03/07(月)00:41:27 ID:rPm
ジャック「どっちにしろ世界を移動するにゃあ一度豆を埋めなきゃなんねーんだ。まずは城の裏手の森に身を隠してから距離を取って…豆を埋めちまえばあとは昇るだけだぜ」
和尚「うむ、少々大雑把な計画じゃが賛同しよう、他に手も無い事じゃし。じゃが…お主一人でこの世界に来るとは無茶するのぉ」
ジャック「ハハッ、無茶なのは昔からなのさ。実は雪の女王に協力を依頼されて今回の事を知ってさ、女王には依頼があるまで下手に動かないで欲しいって言われてたけどじっとしていられなくて一人で来たんだ、後で叱られるかもしれねぇけど」アハハ
長靴を履いた猫「なるほど…しかしジャックには頭が下がるのである。ワガハイも皆を救おうと単身この世界へ乗り込んだもののアリスに見つかりこの有様である」
しっぺい太郎「我も同じく、滾る正義の血を抑えきれずこの世界を訪れたまでは良かったが…彼奴等が駆使する数多の魔法具による猛攻に耐えきれず、捕えられた次第」
ジャック「俺も身軽さには自信あるけどよ、流石に動物のお前達には負けるぜ。俺の場合は運が良かったのさ。ん……しっ、静かに」スッ
…ワーワー
しっぺい太郎「…聞こえしは兵共の雄叫び、おそらく我等が牢を破った事が明るみに出、追って来たのだ。刹那の内にこの声の主達は我等を取り囲むだろう」グルル
ザッザッザッザッ
ぶんぶく「うおっ、やっべぇ!声が聞こえたかと思ったらもう姿が見えたぞ!オレっち達も急いで逃げねぇとやばくないかこれ!」
ジャック「急いで逃げるっつってもお前、こんな大勢で追ってくるなんて思っても無かったぞ!?クソッ、こっちにはオーロラ姫も居るってのに…!相手が多すぎる!」
ザッザッザッザッ
白ウサギ「ぐぬぬっ、アリスさん達が出張ってる時に限ってなんでこんな面倒事に…!トランプ兵達よ、急げ!奴等を捕えるんだ!」
和尚「致し方あるまい…ぶんぶくとジャック君の二人はオーロラ姫を連れて先を急ぐのじゃ。奴等の相手はワシらが…」バッ
スタッ
しっぺい太郎「否。先を急ぐは和尚もだ、汝には願いを叶えし札に墨を入れる力がある…この先の戦いを考慮すれば此処で失って良い力ではない。雑兵共の相手は我に任せよ。否、我等…か」ザッ
長靴を履いた猫「彼の言う通りなのである、和尚殿は彼等と共に先に行くのである!レイピアはアリスに取り上げられてしまったが安心するがよいである!ワガハイにはこの爪があるのである!」
941 :◆oBwZbn5S8kKC :2016/03/07(月)00:44:31 ID:rPm
白ウサギ「トランプ兵達よ、僕の命令に従い奴等を捕まえるんだ!決して逃がすんじゃないぞ!」バラバラバラッ
トランプ兵「Yes my lord…」ザッザッザッ
ヒュン ババッ
長靴を履いた猫「にゃはははっ!そのような薄っぺらい体でワガハイの爪を受け切れると思ったのであるか?貴様らなどワガハイに掛かれば一刀両断なのである!」ズパッ
ワーワー ニャンニャン ガルルルッ ワーワー
しっぺい太郎「歯応え無き身体よ。この様な脆弱な兵…我が妖殺しの牙にて噛み千切ってくれる!」ガブッ ビリィッ
トランプ兵「…error」ドサッ
白ウサギ「ぐぬぬ…流石はこの世界に襲撃を掛けてくるほどの実力者…!折角のトランプ兵も戦闘経験の浅い私が指揮したんじゃ力が発揮出来ない!」グヌヌ
ぶんぶく「よっしゃぁ!その調子で後は任せたぜ二人とも!」ゴロゴロゴロ
和尚「二人ともすまん!必ず別世界へ救援を求め、援護にやってくる故…それまで持ちこたえるんじゃぞ!」
長靴を履いた猫「今はそのような事を考えず、逃げのびる事を考えるのである!ワガハイ達を気にせず、先に行くのである!」
しっぺい太郎「是。汝等は生き延び、眠りの姫を救う事こそ使命。女子を護れぬ男児に価値など無し」
ぶんぶく「あいつらカッコイイな!くっそー…それに答える為にも生き延びるぞ!」ゴロゴロゴロ
ワーワー
白ウサギ「ぐっ…このままだと逃げられてしまう!ここはもう兵力で押しつぶすしかない、手持ちのトランプ兵を全部使って…」
???「その必要はありません…敵を殺すのに必要なのは兵力でも力でもありません」
ヒュッ
???「圧倒的なスピード。それだけで事足ります」ヒュッ
942 :◆oBwZbn5S8kKC :2016/03/07(月)00:46:09 ID:rPm
白ウサギ「どうして君がここに!?アリスさんが与えた君の持ち場は随分と離れた場所のはず…い、いやなんでもいい!」
白ウサギ「あいつ等を捕まえてくれ!殺しさえしなけりゃなんだっていい!任せたよ、シンデレラ…!」
シンデレラ「えぇ、まかせてください。あなたの時計の秒針が一周するまでにはケリをつけて見せます」
ヒュッ
長靴を履いた猫「な、なんであるか今の娘は!?突然現れたと思ったら消えてしまったのである!?」キョロキョロ
しっぺい太郎「…っ! 長靴の!消えたのではなく視認できぬだけだ!早急に避けよっ!」ガルッ
シンデレラ「身軽さが自慢の様ですけど、私程では無いみたいですね」スッ
長靴を履いた猫「なっ…!」
ゴシャアァァ!!
シンデレラ「次はあなたです、狼さん」ヒュッ
しっぺい太郎「其処…っ!我とて素早さを武器に戦う身!易々とやらせはせん!」スッ
シンデレラ「ふふっ、お見事です。私の攻撃をかわせる方がいるとは…驚きました」ウフフ
しっぺい太郎「長靴のを蔑むつもりはないが、我は奴と違い場数を踏んでいるのだ。貴様を視認するなど…我には容易い事」
シンデレラ「困りましたね……ではもう一段階速度を上げましょう」ヒュッ
しっぺい太郎「何…っ!此の上、更に速度を上げるなど…!」
シンデレラ「これでも視認できますか?もっとも視認出来たところで避けられるかどうかは……」
ヒュッ ゴシャアアアァァ
しっぺい太郎「ぬっ…うおぉっ…!」ドサッ
シンデレラ「…別問題ですけれどね」スタッ
943 :◆oBwZbn5S8kKC :2016/03/07(月)00:49:06 ID:rPm
白ウサギ「おぉ…!流石は高名な魔法使いが生み出した魔法具ガラスの靴!これほどとは…!」
シンデレラ「二人とも息はあるはずです、あとは貴方に任せます。私は彼等を追いますから」スッ
ヒュッ
シンデレラ「逃がしませんよ?あなた達には檻へ戻って貰います」
ぶんぶく「!? クッソ…なんなんだこいつは!」
和尚「シンデレラと呼ばれていた!ガラスの靴を履けるのは世界広しといえどシンデレラ本人だけじゃ!しかし、何と言う機敏な動きじゃあ!」
ジャック「和尚!ぶんぶく!姫連れて先に行け!あいつ等の努力無駄にできねぇ!和尚、豆は渡しておく!」ピーン
和尚「ジャック君!やめるんじゃ!あやつらでも叶わなかった相手、とてもお主には…!」パシッ
ぶんぶく「いいからいこうぜ和尚!オレっち達がやる事はひとつだ、こいつ等の意思を汲む事だろっ!」
シンデレラ「ダメですよ?和尚様も狸さんも姫様も、逃がしません」スッ
ジャック「おっと待ちなっ!シンデレラっつったか…随分と足さばきには覚えがあるみたいじゃねぇか…なぁ?」
シンデレラ「ジャック…と呼ばれてましたね?私の相手をするつもりなら…やめておいた方が良いですよ。怪我をせずに檻に入れられた方が後々楽ですから」
ジャック「そう言うなって、あんたみたいな美人さん見て声かけないわけにゃいかねぇだろ?それに、あいつ等逃がしたのは俺だ…最後まで面倒みなきゃなぁ!」バッ
シンデレラ「覚悟があるのでしたら私は構いませんが…その様にただがむしゃらに向かってこられるだけでは困ります」
ヒュッ
シンデレラ「そんな有様では舞踏の相手すら務まりませんよ?」ビュッ
ゴシャアァァ
944 :◆oBwZbn5S8kKC :2016/03/07(月)00:50:45 ID:rPm
シンデレラ「和尚様、もう降参なさってください。狸さんもお姫様もあなたもひとまず無傷で済みます。断るのでしたらどうぞ、お好きにしていただいてかまいませんが」
ぶんぶく「クッソ…なんだこいつ…!無茶苦茶な強さじゃねぇか…!」
和尚「…わかった、もう抵抗はせん。じゃからこいつらに乱暴はせんでくれ」
シンデレラ「えぇ、わかりました。……白ウサギさん」
白ウサギ「あ、あぁ、はいはい…トランプ兵ども!彼等を牢に閉じ込めるんだ、今度こそ厳重にだ!」
トランプ兵「Yes my lord…」
・・・
白ウサギ「いやはや助かった!ありがとうシンデレラ、君のおかげで最悪の事態だけは逃れることができたよ!」
シンデレラ「それなら何よりです」
白ウサギ「何か礼をしないと…そうだ、美味しいケーキがある。アリスさんも帽子屋や他の皆も出張っているけど、三月ウサギの庭でティーパーティと言うのはどうかなシンデレラ?」
シンデレラ「……シンデレラ」
白ウサギ「ん?どうかしたかい?」
シンデレラ「シンデレラと言う呼び名、あなたも…先ほど捕えた和尚様も使っていましたね」
白ウサギ「まぁ、そりゃあね。君はおとぎ話【シンデレラ】の主人公シンデレラなんだから、当然だと思うよ?」
シンデレラ「……気にいりませんね。シンデレラと言う呼び名は」
945 :◆oBwZbn5S8kKC :2016/03/07(月)00:59:19 ID:rPm
白ウサギ「気にいらないって…ははっ、自分の名前をそんな風に言うもんじゃないよ」アハハ
シンデレラ「そう言われても困ります、いい気分はしません」
白ウサギ「そうなのかい?まぁ、でもシンデレラって『灰かぶり』って意味だものね。蔑称と言えばそうだし、嫌なのもまぁ解るかも…」
シンデレラ「いえ、別にそれは気にしてないです。『灰かぶり』でだった事には違いないですし…過去に受けた辱めを忘れぬ為にもその意味は失いたくないです」
白ウサギ「ん?えっ、どういうこと?」
シンデレラ「『灰かぶり』はいいのです…ただ『シンデレラ』は気にいりません、その名前は私が戦うことを放棄して恨みや憎悪に目をつぶって生きていた頃の情けない自分の名です」
シンデレラ「継母や義姉達に利用されて屈辱の日々を送っていたにもかかわらず…怒りから目を背け、偶然得た幸福に身を委ねるだけの…愚かで恥ずべき頃の、私の名です」
シンデレラ「私はもう、そんな恥辱にまみれた名を名乗る事は我慢なりません」
白ウサギ「それならば何か新しい名前をつけるといい、『灰かぶり』だけど『シンデレラ』じゃない…みたいな。ははっ、そんな都合のいい名前ないかな」アハハ
シンデレラ「……いえ、そうでもないです。思い出しました」
白ウサギ「えっ?思い出したってなにを…?」
シンデレラ「かつて友人だった娘が昔口にしていたのです、彼女の国で灰かぶりを指すのはシンデレラという言葉では無いという話を」
シンデレラ「『シンデレラ』ではないもう一つの『灰かぶり』……怒りに憎悪に忠実に生き、何者にも媚びず屈さず、憎悪する全てに復讐を遂げる私の新たな名…」
アシェンプテル「アシェンプテル。今後…私はそう名乗りましょう」
946 :◆oBwZbn5S8kKC :2016/03/07(月)01:06:17 ID:rPm
かぐや姫とオズの魔法使い編 おしまい
今日はここまでです。そして八冊目終了です
書きたいこと書いてたら無駄に長くてまとまりなくなってしまった…ここまでつきあってくれた人たちありがとう!
サヨナキドリが考えているようにもう終幕近いです
孫悟空やキモオタ塵になるかも問題については次スレにて
次回九冊目、いよいよアリスとの決戦が見えてきます
更新までにスレが残ってたらここにお知らせします
1000いっちゃったら同じタイトルで立てておきます
次回もよろしくお願いしますー
947 :名無しさん@おーぷん :2016/03/07(月)01:09:00 ID:vIK
乙!
シンデレラ容赦無さすぎだろ…
948 :名無しさん@おーぷん :2016/03/07(月)02:36:19 ID:BP4
おつ!!!
949 :名無しさん@おーぷん :2016/03/07(月)07:05:25 ID:maG
おつ!あのときの名前がここで使われるなんて…
950 :名無しさん@おーぷん :2016/03/07(月)10:34:13 ID:iPF
乙です!
続き待ってます!!
951 :名無しさん@おーぷん :2016/03/07(月)13:51:06 ID:OWQ
乙です!最終章楽しみにしてます!!
もうヘンゼルとドロシーは結婚しろ!!しかしシンデレラが闇堕ちしてしまったか…キモオタ達はどう出るのか気になるな
あとこの和尚ってどの物語の人物だろうか
954 :名無しさん@おーぷん :2016/03/08(火)02:25:23 ID:kIN
>>951
『三枚のお札』の和尚さんだよ
シンデレラの闇堕ち、きっついなー…
かぐや達も心配だし
そういやカカシってどこに飛ばされたっけ?ライオンは桃太郎と一緒にいるんだよね?
956 :名無しさん@おーぷん :2016/03/08(火)12:40:18 ID:NRv
乙!
このシンデレラはヤバイ、踵切り落としたり目玉えぐりに来そう
>>954
かかしはアラビアンナイトのはず
魔法使いの屋敷にラプがいるなら状況わかるかもね
957 :名無しさん@おーぷん :2016/03/08(火)17:12:34 ID:YRY
乙です!!!次回作がたのしみ!
>>954
アラビアンナイトで
シェヘラザードとラプンツェルと一瞬
955 :名無しさん@おーぷん :2016/03/08(火)12:29:54 ID:NRv
登場おとぎ話まとめ
ピーターパン(消滅)、シンデレラ(無事)、裸の王様(無事)、王様の耳はロバの耳(消滅)
こびとの靴屋(無事)、泣いた赤鬼(無事)、赤ずきん(消滅)、一寸法師(消滅)
かぐや姫(無事)、舌切り雀(不明)、蛙の王子(無事)、石のスープ(無事)
わらしべ長者(無事)、桃太郎(無事)、マッチ売りの少女(無事)、眠り姫(不明)
人魚姫(無事)、おやゆび姫(無事)、幸福な王子(無事)、青い鳥(不明)
オズの魔法使い(消滅)、不思議の国のアリス(無事)、ハーメルンの笛吹き男(消滅)、狼と七匹のこやぎ(消滅)
雪の女王(無事)、アラビアンナイト(無事)、ラプンツェル(無事)、三匹のくま(消滅)
三匹のこぶた(消滅)、船乗りシンドバッドの冒険(無事)、アリババと40人の盗賊(無事)、ヌレンナハール姫と美しい魔女(無事)
アラジンと魔法のランプ(無事)、三枚のお札(不明)、ヘンゼルとグレーテル(消滅)、かもとりごんべえ(無事)
キジも鳴かずば(消滅)、金太郎(無事)、ジャックと豆の木(無事)、卑怯なコウモリ(無事)
みにくいアヒルの子(不明)、ブレーメンの音楽隊(無事)、力太郎(不明)、花咲か爺さん(消滅)
セロ弾きのゴーシュ(不明)、赤い靴(不明)、ピノキオ(消滅)、金のガチョウ(消滅)
ねずみの嫁入り(不明)、ルンペンシュティルツヒェン(消滅)、大工と鬼六(不明)、西遊記(消滅)
ホレおばさん(不明)、トゥルーデおばさん(不明)、美女と野獣(無事)、分福茶釜(不明)
笠地蔵(不明)、長靴を履いた猫(不明)、しっぺい太郎(不明)、かぐや姫(無事)
浦島太郎(無事)、青ひげ(消滅)、火打ち箱(無事)、小夜啼鳥(無事)
こぶとりじいさん(消滅)、死神の名付け親(消滅)、さるかに合戦(消滅)、瓜子姫と天邪鬼(消滅)
千匹皮(消滅)、つぐみの髭の王様(消滅)、フランダースの犬(消滅)、アシェンプテル(不明)
ブリキ「俺の望みはこの檻から出る事、そして友のドロシー達を探し出す事。その為に世界を渡る手段が必要だ」
ブリキ「俺を助けたいという言葉が真実ならば、俺を連れて別の世界へ渡ってくれ。お前の…小夜啼鳥の力は今俺が最も欲しているものだ、俺は今すぐにでも別の世界へ渡りたい、ドロシーを救う為に」
ヘンゼル「自分の身体がどうなっているか気が付いていない訳じゃないでしょ?そんなボロボロの身体でどうするつもり?」
ブリキ「俺の身体の事などドロシーが受けているであろう苦しみに比べれば些細な事だ。あいつは今、誰よりも辛く苦しい状況に置かれている」
ブリキ「今のあいつには俺やかかしやライオン…仲間が必要だ。今すぐにでも見つけ出してその不安を解消してやりたい。気の弱い娘だ、一人になどできない」
ヘンゼル「随分と大切なんだね、そのドロシーって子が。僕が知ってる情報だと…アリスと一緒に悪事をしてるって聞いたけど人違い?」
ブリキ「いや…事実だ。だが信じてくれ、あいつはアリスに利用されていただけで…本当は内気で気弱な女の子なんだ、悪意なんか無かった。今はアリスに掛けられていた魔法が解けてしまって、悪事の記憶に悩まされているはずだ…」
ブリキ「だから俺はあいつに協力するためだったら何だってやる。この身が朽ちる事など恐れない、あいつを悩ませる不安を取り除けるなら俺はなんだってやる」
ヘンゼル「……」
ブリキ「お前が俺に頭を下げて頼めというのならばそうする。決して暴れるなと命じるのならそれだって守る。だから頼む!俺に世界移動の力を貸してくれ!」
ヘンゼル「……悪いけど、それは出来ない。やっぱり危険すぎるよ、君自身も周りの人たちも」
ブリキ「好機が巡って来たと思ったが…そう甘くはないか。世界移動の力を貸すつもりがないというのなら、お前達に用は無い」ギリッ
ヘンゼル「最後まで聞きなよ、彼女は僕の見張りでもあるんだ…だから小夜啼鳥を貸すことは出来ない。でもその代わりに、僕がドロシーの居場所を突き止めてこの場所に連れてくる。それじゃ納得できない?」
933 :◆oBwZbn5S8kKC :2016/03/07(月)00:28:05 ID:rPm
ブリキ「俺の代わりにお前がドロシーを探し出し、ここへ連れてくるだと?」ギシッ
ヘンゼル「うん、自分の身体がそんな風になるまで暴れるような君を余所の世界に連れ出すなんて出来ない。でもだからといって諦めろというのは酷だよ」
ヘンゼル「僕にもやらなきゃいけない事があるから時間の全てをドロシーの捜索に割く事は出来ないけど、なるべく優先的に行動はするよ。それでもいいのなら任せて欲しいな」
ブリキ「そうしてくれるのならば、俺は助かるが…」
小夜啼鳥「ヘンゼル君。いいのですか?彼の言葉をそのまま信じてしまっても」
小夜啼鳥「ドロシーがアリスと組んでいるというのは女王様が得た確かな情報。しかしドロシーが操られているだけという情報は…初耳です。何らかの罠の可能性も…」
ブリキ「そう思うのも無理はない。だが、事実だ…それを証明する方法は無いから信じてくれとしか言えないがな」
ヘンゼル「大人の言う事は簡単に信用しちゃいけない。とはいっても…彼の言葉が嘘だとは思えないし、もしもアリスの罠なら世界移動ができる人を狙うと思う。僕がいるのなんか想定外なわけだし」
小夜啼鳥「…正直に言えば私も彼の言葉に嘘偽りは無いとは思いますよ、ですがあなたは随分とブリキに肩入れしているように見えます」
小夜啼鳥「それもごく個人的な感情が原因のようですが」
ヘンゼル「鋭いね小夜啼鳥は」クスクス
小夜啼鳥「鋭くなければあなたのお目付け役は務まりません。あなたはかつての自分の姿とブリキの姿を重ねている…そうですね?」
934 :◆oBwZbn5S8kKC :2016/03/07(月)00:29:46 ID:rPm
ブリキ「…【ヘンゼルとグレーテル】でお前と妹は魔女に騙され捕えられたんだったか」
ヘンゼル「まぁ一応その話だね…昔、僕と妹は魔女に騙されて捕まった。妹は奴隷のように扱われ、僕は太らせて食べる為に小屋に監禁され食べ物を与えられ続けた」
ヘンゼル「その時…妹が魔女のもとで苦しんで悲しんでいるのがわかっているのに、僕には何もできなかったんだ。小屋から出る事も妹に声をかける事も出来ずに…」
ブリキ「……まるで今の俺の状況のようだな。ドロシーが苦しんでいるのを解っていながら、俺は何もできない。それに似ている」
ヘンゼル「うん、だから僕にはブリキの気持ちがわかるんだ」
ヘンゼル「辛いよね。大切な人が苦しんでいるのに何もできない、声をかけて元気づける事も側に居る事さえできない。ただ指をくわえてみるしかできない…それがどれだけ辛い事か」
ヘンゼル「だから彼に協力したい。同じ辛さを経験している彼を、今の僕なら…救えると思う」
小夜啼鳥「個人的な感情で動くという事は…あまり良い結果を招かない事が多いですよ?」
ヘンゼル「あの時は僕を救ってくれる人は居なかった。けれど、ブリキの場合は違う。それとも僕の行動に問題があるって小夜啼鳥は思うの?」
小夜啼鳥「…いいえ、あなたが思うように行動なさってください。私の役目はヘンゼル君を導く事、それは答えを押し付ける事ではありませんから。でももしもの時は…わかってますね?」
ヘンゼル「うん、わかってる」
ブリキ「ヘンゼル…さっきは子供の癖になどと言って悪かった。お前の気づかいと協力、感謝する。今の俺に出来ることなど限られているが、必要な事があれば何でも話そう」
ヘンゼル「聞きたい事…そうだな、それじゃあ折角だからまず…」
ヘンゼル「…ドロシーって女の子がどんな子なのか聞かせてよ。君が身体を張ってまで守りたいと思う女の子がどんな子なのか、僕は興味がある」フフッ
935 :◆oBwZbn5S8kKC :2016/03/07(月)00:31:14 ID:rPm
現在
シンデレラの世界 魔法使いの屋敷 庭(森)
・・・
ヘンゼル「……って事があってね、僕はブリキと約束したんだ。君を探し出すって」
ヘンゼル「でもタイミングが良いのか悪いのか、その翌日にゴーテルさんが訪ねて来て僕と裸王さんはこの世界にやって来た。そこで君に出会った…って訳だよ」
ドロシー「ブリキったらいつもそうなんだから…『俺には心が無い』なんて言って、誰よりも私達の事を思ってくれて…誰よりも優しくて…」ポロポロ
ヘンゼル「……これ、使いなよ。そんなに泣いちゃ、ブリキも悲しむよ」スッ
ドロシー「うぅ、ごめんなさい…。私、すぐに泣いちゃって…気まずい感じにしちゃってごめんなさい…」フキフキ
ヘンゼル「いいよ、気にしてない。それで…どうする?ブリキは君に会いたがってる、僕としては彼にあって欲しいんだけど…」
ドロシー「も、もちろん行きます!本当はみんなに会ったらすぐに頼っちゃいそうだから…なんて考えてたけど、でもブリキの事が心配だから…行きます!」
ヘンゼル「そっか、ありがとう。ブリキも喜ぶよ」フフッ
ドロシー「あ、あの…こっちこそありがとうございます!ブリキの事、助けてくれて…」
ヘンゼル「僕は君に伝言を伝えただけだよ、大した事はしてない。あぁ、でも…裸王さんの話が終わってからじゃないといけないんだけど、それでもいいかな?」
ドロシー「あっ、はい…大丈夫です。私も皆さんのお話が終わってから用事があるんです、私がいないとキモオタさん達が塵になっちゃうとかで…」
ヘンゼル「ははっ、なにそれ?あの二人また何かやらかしたの?相変わらずよくわからないな、キモオタお兄さんは」クスクス
936 :◆oBwZbn5S8kKC :2016/03/07(月)00:34:09 ID:rPm
ヘンゼル「まぁ、待ってるにしてもこんなところに居ても仕方がない。裸王さん達の所へ行こう、邪魔になる様だったらその時に出ていけばいいよ」
ドロシー「は、はい…あっ、でも…そこにはみなさん居るんですよね…。桃太郎さんとかラプンツェルさんとか…」オドオド
ヘンゼル「どうしたの?あぁ…もしかしてこの前までアリス側に居たから、何か言われるとか思ってる?」
ドロシー「お、思ってないと言えば嘘になりますけど。でも、それはかぐやさん達やキモオタさんが励ましてくれたから平気です…。でも、私は元々…初対面の人と話すの苦手で…」
ヘンゼル「あぁ、ブリキが言ってたっけ…緊張しちゃうってことでしょ?えっと何か緊張をほぐすものあったかな…ああ、良いものがある」ゴソゴソ
スッ
ヘンゼル「裸王さんの所で買ったんだ、瓶詰めキャンディ。なめてればきっと気持ちも落ち着くと思うよ」
ヘンゼル「ひとつあげるよ、何味が好き?ミントとレモンとプロテインがあって…あぁごめん、プロテイン味はぜんぶ裸王さんにあげたんだった」
ドロシー「あっ、じゃあミント味で…」
ヘンゼル「ミント味だね。いいよ、わかった。じゃ口開けて、はい…あーん」スッ
ドロシー「ふえぇっ!?」ガタッ
ヘンゼル「えっ、何?」ビクッ
ドロシー「いや、あのっ!自分で食べられますから!だから、あの直接ください、あの、えーっと…」アワアワアワ
ヘンゼル「…あっ、ごめん。グレーテルに飴玉をあげる時はいつもこうしてたから。つい癖でやっちゃってた」ハハッ
ドロシー「だ、だよね!グレーテルちゃんにしてあげてるなら仕方ないよね、だ、大丈夫…!あはは、ごめんね?びっくりしただけだから大丈夫、あはは…」アセアセアセ
小夜啼鳥「……これ女王様に報告しておきます」スッ
ヘンゼル「また忘れたころに出てくる…。そんな事報告しなくてもいいって」
ヘンゼル「まぁ、いいや。食べたら行こう、彼等は大人だけど…まぁ信用してもよさそうな大人達だし、君が優しくて素敵な女の子だって事はブリキから聞いたから不安がる事無いよ」フフッ
ドロシー「うぅ…そんな風に言われると恥ずかしいです…。ブリキ、私の事どんなふうに喋ったんだろ…」ドキドキ
ヘンゼル「…?」
小夜啼鳥「…ヘンゼル君、おそらく他意はないんでしょうけど不用意すぎます。彼女はあなたの妹じゃないんですよ?」ヒソヒソ
ヘンゼル「そんなの当然じゃないか、何言ってるの小夜啼鳥?」キョトン
小夜啼鳥「いや…まぁいいです。家族以外の人と係わる事が少なかったという理由もあるでしょうし。ただもう少し敏感になりましょう、そうでなければ将来的に刺されますよ」
ヘンゼル「今何か物騒な事言わなかった…?」
小夜啼鳥「まぁ、こういった経験もあなたの成長の為には必要でしょうから…なりゆきに任せましょう」ピチチチチ
ヘンゼル「なりゆきで刺されるのはごめんなんだけど…」
小夜啼鳥(流石に刺されそうなら助けますけど、家族間では出来ないこういった経験こそ彼には必要でしょう)
小夜啼鳥(不安もありましたが裸王さんには心を許し始めているようですしね。その辺りは女王様や弥平さん、キモオタさんの影響なのでしょう…口で言うほど大人を信用していないわけではないのかもしれません)
小夜啼鳥(元々、子供や家族相手には優しい少年ですから大人への憎しみと家族への愛が暴走しないように注意していれば問題ないでしょう)
小夜啼鳥(しかし、アリスに利用されていたドロシーさんが解放されたこのタイミングでのシンデレラさんの誘拐…これがアリスの仕業だとするなら……
小夜啼鳥(アリス側は十分に戦力が整っているはず。そうでなければシンデレラさんを誘拐するなどというリスクを冒さないはず…むしろこれはキモオタさん達を誘い出す為の餌にも見える…)
小夜啼鳥(だとしたら、アリス達はこの一件を終わらせようとしていると考えてもいい…。それだけの自信と準備があるからこの様な行動に出た…)
小夜啼鳥(その様な意図がなかったとしても、シンデレラさんを救出に向かうとなれば【不思議の国のアリス】の世界に行く事になる。そうなれば戦いは逃れられないでしょう)
小夜啼鳥(いずれにせよ…この一件の終幕は、もう目の前と言うわけですか。例えその結末がどう転ぼうとも…もうじき、全てが終わると考えた方がよさそうですね…)
・・・
938 :◆oBwZbn5S8kKC :2016/03/07(月)00:38:10 ID:rPm
不思議の国のアリスの世界 ハートの王の城 牢屋の入り口付近
・・・
スタッ
ジャック「頼むぜ。誰も居ねぇでくれよ…」キョロキョロ
シーン…
ジャック「……よし、俺が牢番を倒した事はまだ奴等に知られてねぇみてぇだな。和尚、誰も居ない今のうちだ。とっととこんな牢から逃げだしちまおうぜ」ヒソヒソ
和尚「うむ、それがよかろう。皆、聞いておったな?もたもたしておっては見つかってしまう、早々にこの世界から逃げ出すのじゃ」
しっぺい太郎「是。我がジャック少年と共に先頭に立ち活路を切り拓く。例え敵が行く手を阻もうともこの牙とこの爪で切り刻んで御覧にいれよう」ガルルルッ
ぶんぶく(荷車状態)「よっしゃ!そんじゃお前達の後ろをオレっちと和尚が進むわ、本当はオレっちもアリスの手下共にひと泡吹かせてやりたいけどもな!」ポンポコポン
和尚「戦ってはならんぞ。お前には姫を護送するという役目があるじゃろう、狸のお主が荷車に化けた理由を忘れてはいかんぞ?」
ぶんぶく「わかってますって!呪いで眠っているオーロラ姫を安全に連れ出すのがオレっちの役目!任せてくれ!」
オーロラ姫「すやすや……んふふ、違いますってぇ……私は今話題のオペラ歌手じゃありませんよ〜…しがない一国の姫ですって〜……」スヤァ
ぶんぶく「ぐぬぬ…仕方がないっつってもこれから命賭けで逃げ出そうって時にいい気なもんだよなぁ…」ポンポコ
長靴を履いた猫「彼女が眠っているのは呪いのせいなのである、そのような事に腹を立てるなど時間の無駄である」ニャーン
長靴を履いた猫「事は一刻を争うのである。追手が現れた場合は最後尾を走るワガハイに任せよ、とにかく今は先を急ぐべきである!」ニャーン
939 :◆oBwZbn5S8kKC :2016/03/07(月)00:39:59 ID:rPm
タッタッタッタッ
ぶんぶく「しっかし、牢屋にぶち込まれてもう駄目かと思ったが…ジャックが助けに来てくれて本当に助かった!感謝してるぞー!」ゴロゴロ
ジャック「ヘヘッ、よせやい照れちまう。だが礼はこの世界から逃げ出してからにしてくれよな、まだ何も解決しちゃいねーんだぜ?」
和尚「そうじゃな。しかしジャック君、牢屋から逃げ出したは良いがこの後はどうするつもりじゃ?我々は一人として世界を移動する手段を持たんのじゃが…」
ジャック「それは問題ねぇぜ、俺には世界移動ができる魔法具があるからな。ほら、こいつだ」スッ
長靴を履いた猫「それは豆であるな?しかし君のおとぎ話に出てくる豆は成長速度が凄まじい他に世界を移動する力まであったのであるか?」
ジャック「いいや、あれとは別もんだ。俺の牛と豆を交換したおっさん…魔導師に事情を話して世界移動ができる豆ってやつを譲って貰った。この豆を育てて雲の上まで逃げれば…そこはもう【ジャックと豆の木】の世界ってわけだ」
和尚「ほう、世界移動の手段があるのならば話は早い。ひとまず逃げ、急いで別のおとぎ話の世界に協力を求めるんじゃ、牢に残してきた仲間達を救いに戻らねばならんからな」
しっぺい太郎「左様。牢に残ると決意したチルチル少年と鼠の娘は卑劣にも人質を取られている。我等と行動を共にする事は叶わなかったが…再び此方に舞い戻り、彼等を救いだす」
ぶんぶく「そうだな、足手まといになるからって残った笠地蔵も救ってやらねぇとな」ゴロゴロゴロ
オーロラ姫「すやすや…んふふふっ、そんなにローストビーフばかり食べられませんって〜…もうお腹いっぱいですぅ〜……」ジュルリ
ぶんぶく「あのさぁ、ジャックが連れて行こうっていうから連れ出したけど……こいつの方が足手まt」
ジャック「そんな事言うんじゃねぇよ!こんなかわいこちゃんを牢に残してられるかよ!可哀想だろ!?」
オーロラ姫「すやすや…だから違いますよぉ、私はただの姫君です〜…モデルさんじゃないですってぇ〜…」ニヤニヤ
940 :◆oBwZbn5S8kKC :2016/03/07(月)00:41:27 ID:rPm
ジャック「どっちにしろ世界を移動するにゃあ一度豆を埋めなきゃなんねーんだ。まずは城の裏手の森に身を隠してから距離を取って…豆を埋めちまえばあとは昇るだけだぜ」
和尚「うむ、少々大雑把な計画じゃが賛同しよう、他に手も無い事じゃし。じゃが…お主一人でこの世界に来るとは無茶するのぉ」
ジャック「ハハッ、無茶なのは昔からなのさ。実は雪の女王に協力を依頼されて今回の事を知ってさ、女王には依頼があるまで下手に動かないで欲しいって言われてたけどじっとしていられなくて一人で来たんだ、後で叱られるかもしれねぇけど」アハハ
長靴を履いた猫「なるほど…しかしジャックには頭が下がるのである。ワガハイも皆を救おうと単身この世界へ乗り込んだもののアリスに見つかりこの有様である」
しっぺい太郎「我も同じく、滾る正義の血を抑えきれずこの世界を訪れたまでは良かったが…彼奴等が駆使する数多の魔法具による猛攻に耐えきれず、捕えられた次第」
ジャック「俺も身軽さには自信あるけどよ、流石に動物のお前達には負けるぜ。俺の場合は運が良かったのさ。ん……しっ、静かに」スッ
…ワーワー
しっぺい太郎「…聞こえしは兵共の雄叫び、おそらく我等が牢を破った事が明るみに出、追って来たのだ。刹那の内にこの声の主達は我等を取り囲むだろう」グルル
ザッザッザッザッ
ぶんぶく「うおっ、やっべぇ!声が聞こえたかと思ったらもう姿が見えたぞ!オレっち達も急いで逃げねぇとやばくないかこれ!」
ジャック「急いで逃げるっつってもお前、こんな大勢で追ってくるなんて思っても無かったぞ!?クソッ、こっちにはオーロラ姫も居るってのに…!相手が多すぎる!」
ザッザッザッザッ
白ウサギ「ぐぬぬっ、アリスさん達が出張ってる時に限ってなんでこんな面倒事に…!トランプ兵達よ、急げ!奴等を捕えるんだ!」
和尚「致し方あるまい…ぶんぶくとジャック君の二人はオーロラ姫を連れて先を急ぐのじゃ。奴等の相手はワシらが…」バッ
スタッ
しっぺい太郎「否。先を急ぐは和尚もだ、汝には願いを叶えし札に墨を入れる力がある…この先の戦いを考慮すれば此処で失って良い力ではない。雑兵共の相手は我に任せよ。否、我等…か」ザッ
長靴を履いた猫「彼の言う通りなのである、和尚殿は彼等と共に先に行くのである!レイピアはアリスに取り上げられてしまったが安心するがよいである!ワガハイにはこの爪があるのである!」
941 :◆oBwZbn5S8kKC :2016/03/07(月)00:44:31 ID:rPm
白ウサギ「トランプ兵達よ、僕の命令に従い奴等を捕まえるんだ!決して逃がすんじゃないぞ!」バラバラバラッ
トランプ兵「Yes my lord…」ザッザッザッ
ヒュン ババッ
長靴を履いた猫「にゃはははっ!そのような薄っぺらい体でワガハイの爪を受け切れると思ったのであるか?貴様らなどワガハイに掛かれば一刀両断なのである!」ズパッ
ワーワー ニャンニャン ガルルルッ ワーワー
しっぺい太郎「歯応え無き身体よ。この様な脆弱な兵…我が妖殺しの牙にて噛み千切ってくれる!」ガブッ ビリィッ
トランプ兵「…error」ドサッ
白ウサギ「ぐぬぬ…流石はこの世界に襲撃を掛けてくるほどの実力者…!折角のトランプ兵も戦闘経験の浅い私が指揮したんじゃ力が発揮出来ない!」グヌヌ
ぶんぶく「よっしゃぁ!その調子で後は任せたぜ二人とも!」ゴロゴロゴロ
和尚「二人ともすまん!必ず別世界へ救援を求め、援護にやってくる故…それまで持ちこたえるんじゃぞ!」
長靴を履いた猫「今はそのような事を考えず、逃げのびる事を考えるのである!ワガハイ達を気にせず、先に行くのである!」
しっぺい太郎「是。汝等は生き延び、眠りの姫を救う事こそ使命。女子を護れぬ男児に価値など無し」
ぶんぶく「あいつらカッコイイな!くっそー…それに答える為にも生き延びるぞ!」ゴロゴロゴロ
ワーワー
白ウサギ「ぐっ…このままだと逃げられてしまう!ここはもう兵力で押しつぶすしかない、手持ちのトランプ兵を全部使って…」
???「その必要はありません…敵を殺すのに必要なのは兵力でも力でもありません」
ヒュッ
???「圧倒的なスピード。それだけで事足ります」ヒュッ
942 :◆oBwZbn5S8kKC :2016/03/07(月)00:46:09 ID:rPm
白ウサギ「どうして君がここに!?アリスさんが与えた君の持ち場は随分と離れた場所のはず…い、いやなんでもいい!」
白ウサギ「あいつ等を捕まえてくれ!殺しさえしなけりゃなんだっていい!任せたよ、シンデレラ…!」
シンデレラ「えぇ、まかせてください。あなたの時計の秒針が一周するまでにはケリをつけて見せます」
ヒュッ
長靴を履いた猫「な、なんであるか今の娘は!?突然現れたと思ったら消えてしまったのである!?」キョロキョロ
しっぺい太郎「…っ! 長靴の!消えたのではなく視認できぬだけだ!早急に避けよっ!」ガルッ
シンデレラ「身軽さが自慢の様ですけど、私程では無いみたいですね」スッ
長靴を履いた猫「なっ…!」
ゴシャアァァ!!
シンデレラ「次はあなたです、狼さん」ヒュッ
しっぺい太郎「其処…っ!我とて素早さを武器に戦う身!易々とやらせはせん!」スッ
シンデレラ「ふふっ、お見事です。私の攻撃をかわせる方がいるとは…驚きました」ウフフ
しっぺい太郎「長靴のを蔑むつもりはないが、我は奴と違い場数を踏んでいるのだ。貴様を視認するなど…我には容易い事」
シンデレラ「困りましたね……ではもう一段階速度を上げましょう」ヒュッ
しっぺい太郎「何…っ!此の上、更に速度を上げるなど…!」
シンデレラ「これでも視認できますか?もっとも視認出来たところで避けられるかどうかは……」
ヒュッ ゴシャアアアァァ
しっぺい太郎「ぬっ…うおぉっ…!」ドサッ
シンデレラ「…別問題ですけれどね」スタッ
943 :◆oBwZbn5S8kKC :2016/03/07(月)00:49:06 ID:rPm
白ウサギ「おぉ…!流石は高名な魔法使いが生み出した魔法具ガラスの靴!これほどとは…!」
シンデレラ「二人とも息はあるはずです、あとは貴方に任せます。私は彼等を追いますから」スッ
ヒュッ
シンデレラ「逃がしませんよ?あなた達には檻へ戻って貰います」
ぶんぶく「!? クッソ…なんなんだこいつは!」
和尚「シンデレラと呼ばれていた!ガラスの靴を履けるのは世界広しといえどシンデレラ本人だけじゃ!しかし、何と言う機敏な動きじゃあ!」
ジャック「和尚!ぶんぶく!姫連れて先に行け!あいつ等の努力無駄にできねぇ!和尚、豆は渡しておく!」ピーン
和尚「ジャック君!やめるんじゃ!あやつらでも叶わなかった相手、とてもお主には…!」パシッ
ぶんぶく「いいからいこうぜ和尚!オレっち達がやる事はひとつだ、こいつ等の意思を汲む事だろっ!」
シンデレラ「ダメですよ?和尚様も狸さんも姫様も、逃がしません」スッ
ジャック「おっと待ちなっ!シンデレラっつったか…随分と足さばきには覚えがあるみたいじゃねぇか…なぁ?」
シンデレラ「ジャック…と呼ばれてましたね?私の相手をするつもりなら…やめておいた方が良いですよ。怪我をせずに檻に入れられた方が後々楽ですから」
ジャック「そう言うなって、あんたみたいな美人さん見て声かけないわけにゃいかねぇだろ?それに、あいつ等逃がしたのは俺だ…最後まで面倒みなきゃなぁ!」バッ
シンデレラ「覚悟があるのでしたら私は構いませんが…その様にただがむしゃらに向かってこられるだけでは困ります」
ヒュッ
シンデレラ「そんな有様では舞踏の相手すら務まりませんよ?」ビュッ
ゴシャアァァ
944 :◆oBwZbn5S8kKC :2016/03/07(月)00:50:45 ID:rPm
シンデレラ「和尚様、もう降参なさってください。狸さんもお姫様もあなたもひとまず無傷で済みます。断るのでしたらどうぞ、お好きにしていただいてかまいませんが」
ぶんぶく「クッソ…なんだこいつ…!無茶苦茶な強さじゃねぇか…!」
和尚「…わかった、もう抵抗はせん。じゃからこいつらに乱暴はせんでくれ」
シンデレラ「えぇ、わかりました。……白ウサギさん」
白ウサギ「あ、あぁ、はいはい…トランプ兵ども!彼等を牢に閉じ込めるんだ、今度こそ厳重にだ!」
トランプ兵「Yes my lord…」
・・・
白ウサギ「いやはや助かった!ありがとうシンデレラ、君のおかげで最悪の事態だけは逃れることができたよ!」
シンデレラ「それなら何よりです」
白ウサギ「何か礼をしないと…そうだ、美味しいケーキがある。アリスさんも帽子屋や他の皆も出張っているけど、三月ウサギの庭でティーパーティと言うのはどうかなシンデレラ?」
シンデレラ「……シンデレラ」
白ウサギ「ん?どうかしたかい?」
シンデレラ「シンデレラと言う呼び名、あなたも…先ほど捕えた和尚様も使っていましたね」
白ウサギ「まぁ、そりゃあね。君はおとぎ話【シンデレラ】の主人公シンデレラなんだから、当然だと思うよ?」
シンデレラ「……気にいりませんね。シンデレラと言う呼び名は」
945 :◆oBwZbn5S8kKC :2016/03/07(月)00:59:19 ID:rPm
白ウサギ「気にいらないって…ははっ、自分の名前をそんな風に言うもんじゃないよ」アハハ
シンデレラ「そう言われても困ります、いい気分はしません」
白ウサギ「そうなのかい?まぁ、でもシンデレラって『灰かぶり』って意味だものね。蔑称と言えばそうだし、嫌なのもまぁ解るかも…」
シンデレラ「いえ、別にそれは気にしてないです。『灰かぶり』でだった事には違いないですし…過去に受けた辱めを忘れぬ為にもその意味は失いたくないです」
白ウサギ「ん?えっ、どういうこと?」
シンデレラ「『灰かぶり』はいいのです…ただ『シンデレラ』は気にいりません、その名前は私が戦うことを放棄して恨みや憎悪に目をつぶって生きていた頃の情けない自分の名です」
シンデレラ「継母や義姉達に利用されて屈辱の日々を送っていたにもかかわらず…怒りから目を背け、偶然得た幸福に身を委ねるだけの…愚かで恥ずべき頃の、私の名です」
シンデレラ「私はもう、そんな恥辱にまみれた名を名乗る事は我慢なりません」
白ウサギ「それならば何か新しい名前をつけるといい、『灰かぶり』だけど『シンデレラ』じゃない…みたいな。ははっ、そんな都合のいい名前ないかな」アハハ
シンデレラ「……いえ、そうでもないです。思い出しました」
白ウサギ「えっ?思い出したってなにを…?」
シンデレラ「かつて友人だった娘が昔口にしていたのです、彼女の国で灰かぶりを指すのはシンデレラという言葉では無いという話を」
シンデレラ「『シンデレラ』ではないもう一つの『灰かぶり』……怒りに憎悪に忠実に生き、何者にも媚びず屈さず、憎悪する全てに復讐を遂げる私の新たな名…」
アシェンプテル「アシェンプテル。今後…私はそう名乗りましょう」
946 :◆oBwZbn5S8kKC :2016/03/07(月)01:06:17 ID:rPm
かぐや姫とオズの魔法使い編 おしまい
今日はここまでです。そして八冊目終了です
書きたいこと書いてたら無駄に長くてまとまりなくなってしまった…ここまでつきあってくれた人たちありがとう!
サヨナキドリが考えているようにもう終幕近いです
孫悟空やキモオタ塵になるかも問題については次スレにて
次回九冊目、いよいよアリスとの決戦が見えてきます
更新までにスレが残ってたらここにお知らせします
1000いっちゃったら同じタイトルで立てておきます
次回もよろしくお願いしますー
947 :名無しさん@おーぷん :2016/03/07(月)01:09:00 ID:vIK
乙!
シンデレラ容赦無さすぎだろ…
948 :名無しさん@おーぷん :2016/03/07(月)02:36:19 ID:BP4
おつ!!!
949 :名無しさん@おーぷん :2016/03/07(月)07:05:25 ID:maG
おつ!あのときの名前がここで使われるなんて…
950 :名無しさん@おーぷん :2016/03/07(月)10:34:13 ID:iPF
乙です!
続き待ってます!!
951 :名無しさん@おーぷん :2016/03/07(月)13:51:06 ID:OWQ
乙です!最終章楽しみにしてます!!
もうヘンゼルとドロシーは結婚しろ!!しかしシンデレラが闇堕ちしてしまったか…キモオタ達はどう出るのか気になるな
あとこの和尚ってどの物語の人物だろうか
>>951
『三枚のお札』の和尚さんだよ
シンデレラの闇堕ち、きっついなー…
かぐや達も心配だし
そういやカカシってどこに飛ばされたっけ?ライオンは桃太郎と一緒にいるんだよね?
956 :名無しさん@おーぷん :2016/03/08(火)12:40:18 ID:NRv
乙!
このシンデレラはヤバイ、踵切り落としたり目玉えぐりに来そう
>>954
かかしはアラビアンナイトのはず
魔法使いの屋敷にラプがいるなら状況わかるかもね
957 :名無しさん@おーぷん :2016/03/08(火)17:12:34 ID:YRY
乙です!!!次回作がたのしみ!
>>954
アラビアンナイトで
シェヘラザードとラプンツェルと一瞬
955 :名無しさん@おーぷん :2016/03/08(火)12:29:54 ID:NRv
登場おとぎ話まとめ
ピーターパン(消滅)、シンデレラ(無事)、裸の王様(無事)、王様の耳はロバの耳(消滅)
こびとの靴屋(無事)、泣いた赤鬼(無事)、赤ずきん(消滅)、一寸法師(消滅)
かぐや姫(無事)、舌切り雀(不明)、蛙の王子(無事)、石のスープ(無事)
わらしべ長者(無事)、桃太郎(無事)、マッチ売りの少女(無事)、眠り姫(不明)
人魚姫(無事)、おやゆび姫(無事)、幸福な王子(無事)、青い鳥(不明)
オズの魔法使い(消滅)、不思議の国のアリス(無事)、ハーメルンの笛吹き男(消滅)、狼と七匹のこやぎ(消滅)
雪の女王(無事)、アラビアンナイト(無事)、ラプンツェル(無事)、三匹のくま(消滅)
三匹のこぶた(消滅)、船乗りシンドバッドの冒険(無事)、アリババと40人の盗賊(無事)、ヌレンナハール姫と美しい魔女(無事)
アラジンと魔法のランプ(無事)、三枚のお札(不明)、ヘンゼルとグレーテル(消滅)、かもとりごんべえ(無事)
キジも鳴かずば(消滅)、金太郎(無事)、ジャックと豆の木(無事)、卑怯なコウモリ(無事)
みにくいアヒルの子(不明)、ブレーメンの音楽隊(無事)、力太郎(不明)、花咲か爺さん(消滅)
セロ弾きのゴーシュ(不明)、赤い靴(不明)、ピノキオ(消滅)、金のガチョウ(消滅)
ねずみの嫁入り(不明)、ルンペンシュティルツヒェン(消滅)、大工と鬼六(不明)、西遊記(消滅)
ホレおばさん(不明)、トゥルーデおばさん(不明)、美女と野獣(無事)、分福茶釜(不明)
笠地蔵(不明)、長靴を履いた猫(不明)、しっぺい太郎(不明)、かぐや姫(無事)
浦島太郎(無事)、青ひげ(消滅)、火打ち箱(無事)、小夜啼鳥(無事)
こぶとりじいさん(消滅)、死神の名付け親(消滅)、さるかに合戦(消滅)、瓜子姫と天邪鬼(消滅)
千匹皮(消滅)、つぐみの髭の王様(消滅)、フランダースの犬(消滅)、アシェンプテル(不明)
キモオタ「我輩がおとぎ話の世界に行くですとwww」ティンカーベル「そう」 かぐや姫とオズの魔法使い編
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