キモオタ「我輩がおとぎ話の世界に行くですとwww」ティンカーベル「そう」 ヘンゼルとグレーテル編
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236 :◆oBwZbn5S8kKC :2015/07/25(土)23:10:30 ID:1yX
キモオタ「ヘンゼル殿は我輩に攻撃した時も自分の事は二の次でグレーテル殿の事を気にしておりましたからな。大切な家族を守る為なら、自分の犠牲などどうだっていいのでござろう」
グレーテル「どうだってよくないのにね……ヘンゼルお兄ちゃん、私やお姉ちゃんの為なら無茶な魔力の使い方するもん……あんな風にしてたら……お兄ちゃんいつか大怪我しちゃう……」
キモオタ「いくらグレーテル殿や司書殿の為とはいえ、ヘンゼル殿が無茶して怪我するのは悲しいでござるよね、グレーテル殿は」
グレーテル「うん……ヘンゼルお兄ちゃんはいつも私たちの心配ばっかり……もっと自分の事も大切にして欲しいの……ヘンゼルお兄ちゃんが幸せじゃなきゃ、私は幸せになんかなれないの……」
グレーテル「ヘンゼルお兄ちゃんと一緒に居るだけで……私は安心なの、だから置いて行ったりしないで欲しいの……でも、わかってくれないの……」
キモオタ「ふむ……状況は把握できましたからなすぐにでもヘンゼル殿を追いかけて一緒に司書殿を救出しますぞ」
キモオタ「グレーテル殿の胸に秘めたその気持ちは、後ほどヘンゼル殿に伝えるでござる。黙っていては伝わりませんからなwww」
グレーテル「……うん、全部終わったら私ちゃんと言う……もう無茶な事しないでって……私の側に居てって、置いて行かないでって……言うの……」
タッタッタ
ティンカーベル「キモオター!グレーテルちゃんー!話長いけど何か困った事だよね?ラプンツェルに頼んでお会計してきたけど…」パタパタ
ラプンツェル「二人とも深刻そうだったからー、きっともうご飯なんか食べてる場合じゃないよね?」
キモオタ「おお、申し訳ありませんな二人とも。これからちょっと向かわねばならぬ場所が出来ましてな…丁度良かったでござるよwww」
グレーテル「……すっごく長くて綺麗な髪……お姉ちゃん……本物の、ラプンツェル……?」
ラプンツェル「うん!おとぎ話【ラプンツェル】の主人公だよ!えーっと、キモオタが言ってたグレーテルちゃんだよね?よろしくね!」ニコニコ
グレーテル「うん、グレーテルだよ……よろしく……」
ラプンツェル「うんうん!グレーテルは妹みたいでかわいいね!私の事ラプお姉ちゃんって呼んでいいよ!私の方がずーっとお姉ちゃんだからね、ラプお姉ちゃんになんでも頼ってね」フンス
キモオタ「ちょwwwラプンツェル殿wwwお主どれだけ頼られたいのでござるかwww」コポォ
237 :◆oBwZbn5S8kKC :2015/07/25(土)23:11:29 ID:1yX
・・・
・・・
ティンカーベル「ええっ!?司書さんが誘拐された!?ちょ、ちょっとそれってこんなところでゆっくり話してる場合じゃないじゃん!急がないと司書さんが酷い目にあっちゃう!」
グレーテル「……キモオタお兄ちゃん……急がなくても……大丈夫……?」ビクビク
キモオタ「ちょwwwグレーテル殿の不安をあおらないでいただきたいwww慌てて動いても良い結果にはならぬでござるよ、急いでいる時こそ冷静にですぞwww」
ラプンツェル「私も司書って人助けるのお手伝いするよ!あっ、でも確か現実世界にはケーサツっていう悪い人を捕まえるチームがいるんだよね?その人たちにも手伝ってもらえないの?」
ティンカーベル「そっか、ここは現実世界なんだし私たちが行くより、警察にお願いした方がいいんじゃないかなー?」
キモオタ「もちろん、本来ならそうなのでござるが……ちょっと思うところがあるのでござるよ、警察には届けず我らだけで救出しますぞwwwラプンツェル殿にもお手伝いお願いしたいwww」
ラプンツェル「まっかせて!犯人見つけたらこの髪の毛でしゅしゅーって捕まえちゃうからね!」フンス
グレーテル「ただ長いだけじゃないんだ……長くて綺麗なだけでも素敵なのに……悪い人も捕まえられるなんて、ラプお姉ちゃんの髪の毛すごいね……」
ラプンツェル「そうでしょ!もう助けたも同然だからグレーテルは安心しても良いよ!」フンス
コソコソ
ティンカーベル「……ねぇ、キモオタ。確かにおはなしサイリウムで魔法使えるし、私もラプンツェルもいるから魔法なんか使えない人間の誘拐犯なんか簡単に捕まえられちゃうとは思うよ?」ヒソヒソ
ティンカーベル「でも、私はやっぱり警察に届けた方がいいと思うな…司書さんにもしもの事があったら……」ヒソヒソ
キモオタ「……不可解だとは思いませんかな、ティンカーベル殿」ヒソヒソ
ティンカーベル「不可解…?なにかおかしい事あったっけ?」ヒソヒソ
キモオタ「我輩はこの誘拐……単なる身代金誘拐では無いと思うでござる」ヒソヒソ
238 :◆oBwZbn5S8kKC :2015/07/25(土)23:12:36 ID:1yX
キモオタ「例えばでござるよ?ティンカーベル殿と我輩が誘拐犯コンビだとして……大人の司書殿、しっかりしてそうなヘンゼル殿、無口そうなグレーテル殿。誰をさらいますかな?」
ティンカーベル「えーっと…グレーテルかな?一番体も小さいし、女の子だから簡単に誘拐できそうだし……」
キモオタ「そうでござろう?ならば何故犯人は司書殿を?」
ティンカーベル「それはあれでしょ?お金が欲しかったから、それに一人でいたんでしょ?誘拐しやすいならだれでもよかったんだよ!きっと!」
キモオタ「強盗ならともかく身代金を要求するのなら司書殿を誘拐するのはおかしいでござろう、ヘンゼル殿とグレーテル殿に要求しておりましたが……二人がお金をどう用意するでござるか?銀行でも下ろせず、せいぜい部屋にあるいくらかのお金が関の山ですぞ」
ティンカーベル「じゃあ……お金が目的じゃないって事?」
キモオタ「我輩の予想ではそうですな。単純にお金が欲しい犯人にしては効率が悪すぎますぞ、『金目の物』なんていう指示もざっくり過ぎでござるし、目的は他の所にあるように見えますな」
ティンカーベル「もしかして……お金も司書さんもどうでもよくて……本当はヘンゼルとグレーテルを廃墟に呼び出す為の作戦かな…?」
キモオタ「我輩はそう考えてますぞ。必ず二人で来るように…なんて手紙を部屋まで届ける辺り二人を呼び出す事が目的でござろうな。そうなると、何故二人を呼び出すのか……」
キモオタ「あの二人に用があるから。しかし、現実世界の人間にとってはあの二人はただの外国人の兄妹。となると……犯人はおとぎ話の世界の住人かも、となりますな」
ティンカーベル「おとぎ話の世界の住人が、何かを求めてヘンゼルとグレーテルを呼び出そうとしてるってこと?」
キモオタ「そこに行きつくのでござるよね、今はまだ推測の域を出ませんがな。もちろんただ単に犯人が現実世界のロリコンショタコンの可能性もあるでござるが……」
キモオタ「ただ犯人がおとぎ話の世界の住人だった場合、魔法具なんか出されては警察では相手をしきれない可能性もありますからな……警察なんか呼んでは我々も魔法具を使いにくくなりますしな」
ティンカーベル「逆に暴力振るった!ってなってキモオタやラプンツェルが逮捕されちゃうかもしれないもんね……」
キモオタ「我輩はともかくwwwラプンツェル殿をそんな目にあわせたとなると、我々塵と消えるどころではすみませんぞwww」
239 :◆oBwZbn5S8kKC :2015/07/25(土)23:14:27 ID:1yX
キモオタ「とにかく、ここは我々だけで司書殿の救出を試みますぞ」
ティンカーベル「確かに犯人がおとぎ話の世界の住人だったら、警察より私たちの方が司書さん助けられる可能性上がるもんね」
キモオタ「ただ、相手が誰か解らない以上…どんな手を使ってくるかもわからないでござる。強い腕力や恐ろしい魔法を相手にする可能性もありますぞ」
キモオタ「故に、ティンカーベル殿だけは廃墟の外で様子を見て司書殿を探す方向で動いて欲しいでござる」
ティンカーベル「ヤだよ!それキモオタ達が捕まったり傷付けられても無視して単独行動ってことでしょ?私だって最後まで戦うよ!」
キモオタ「ちょwww我輩たちが全員捕まったら誰が司書殿を助けるでござるかwwwティンカーベル殿は唯一世界移動が出来るでござるし、我輩と通信だって出来ますからな」
ティンカーベル「そりゃあ、そうだけどさ……」
キモオタ「平気でござるよwww捕まるつもりで行くわけではないのでwwwそれの何かあったときにティンカーベル殿なら動きやすいでござるしwww頼りにしてますぞwww」
ティンカーベル「そーいうことならわかった、司書さんを探す役目私がやるよ」
キモオタ「たのみますぞwwwさて、グレーテル殿準備は出来たでござる、出発しますぞ!」
グレーテル「うん……私は、心の準備……出来てる。絶対に、お姉ちゃん助ける……」
キモオタ「そうですな!では我輩がひとっ走り例の廃墟まで走るでござるから、グレーテル殿は我輩の背中にwww」
グレーテル「自分で走って行くよ……?おんぶしてもらったら……悪いよ、キモオタお兄ちゃん疲れちゃう……」
キモオタ「ご安心をwww我輩、魔法を使う事が出来ますからなwww遠慮は無用ですぞwww」
スススッ
おはなしサイリウム「コード認識完了『裸王』 魔法発現状態へ移行……モード『muscle』」
240 :◆oBwZbn5S8kKC :2015/07/25(土)23:16:09 ID:1yX
廃墟への道
ドスドスドス
グレーテル「……キモオタお兄ちゃん、大丈夫?……重くない……?疲れない……?」
キモオタ「平気ですぞwww二人は到着してからウォッチで呼びますからなwwwそれに今の我輩はただのデブに非ずwww体重を気にするとはグレーテル殿も乙女ですなwww」コポォ
キモオタ「裸王殿との絆の魔法『muscle』は民の願いを形にする為の強靭な筋肉、そして逆境をも撥ね退けるタフネスを得る事が出来ますからなwww少々走った程度では息切れすらしませんぞwww」コポォ
グレーテル「キモオタお兄ちゃん……現実世界の大人なのに……魔法、使えるのね……すごい……」
キモオタ「とはいってもwww魔法具ですからなwww我輩自身に魔力があるわけではないでござるwww」コポォ
グレーテル「私と一緒だね……私にも魔力があったら……お姉ちゃんの所にもっと早く着けるのにな……」
キモオタ「焦りは禁物ですぞ、とはいえwww本当はシンデレラ殿との絆の魔法『step』で加速したいところでござるがwwwグレーテル殿をおぶっている状態で転んでは大惨事ですからなwww」
グレーテル「【ラプンツェル】に【シンデレラ】……裸王っていうのは……【裸の王様】かな……?友達、いっぱいいるのね……」
キモオタ「おとぎ話の世界ではちょっとしたリア充レベルに友人はいますぞwwwおとぎ話もたくさん読みましたしなwww」
グレーテル「そっか……私も、たくさんのおとぎ話読んだよ……私のおとぎ話は、もう無いけど……」
キモオタ「先ほど、ラプンツェル殿に【ヘンゼルとグレーテル】のおとぎ話を教えてもらいましたぞwww我輩はグレーテル殿のおとぎ話もちゃんと知ってるでござるよwww」コポォ
グレーテル「そっか……私たちの為に聞いてくれたのかな……でも聞かない方が、よかったよ……」
キモオタ「……グレーテル殿?」
241 :◆oBwZbn5S8kKC :2015/07/25(土)23:17:46 ID:1yX
グレーテル「もっと楽しいお話はいっぱいあるよ……誰も悪い人なんか居ない……だれも辛い思いなんかしない……幸せだけしかないおとぎ話……」
キモオタ「それは……やっぱりグレーテル殿もあのおとぎ話を憎んでいるのでござるか?」
グレーテル「……どうかな?……でも私たちのおとぎ話聞いたなら……私やヘンゼルお兄ちゃんが……大人が嫌いな理由、わかったよね……?」
キモオタ「……わかったでござる、童話展では事情も知らず無責任に大人を頼れなどと言って申し訳ありませんでしたな」
グレーテル「いいの。キモオタお兄ちゃんがそう言ってくれたから……私は助けてって言えたの……」
グレーテル「それに……大人は嫌いだけど……キモオタお兄ちゃんの事は……ちょっと好き……」
キモオタ「それはありがたいですなwwwしかし、我輩が特別なわけではないのでござるwwwこれを機にもっといろんな大人を頼ればいいですぞwww」
グレーテル「それは……無理だよ……キモオタお兄ちゃんはちょっと特別なの……他の大人は……やっぱり嫌い……」
キモオタ「しかし……これから先、全ての大人を信用できずに生きていくというのは、辛いと思うのでござるよ」
グレーテル「辛い事って……大人を信用できない事じゃないよ……辛いのはね……いらないって言われる事なの……」
グレーテル「私のうちは貧乏だったけど……ごはんがちょっとしか食べられなくても、可愛いお洋服無くても……平気だったの……パパやヘンゼルお兄ちゃんが居て……ちょっとイジワルでもお母さんがいて……それで幸せだったの……」
グレーテル「だってね……お家が無い子も家族が居ない一人ぼっちな子もたくさんいるのよ……でも私にはお家も家族もある……だから幸せだったの……」
キモオタ「……」
グレーテル「でもね……パパとお母さんはそう思ってなかったみたい……私やヘンゼルお兄ちゃんがいたら……ごはんが足りないって……このままじゃ自分たちが死んじゃうって……」
グレーテル「だから……ヘンゼルもグレーテルもいらないって……捨てちゃったの……私がね、ずっと幸せだと思ってたものって……」
グレーテル「パパ達にとっては不幸なものだったの……それを知っちゃったときね……我慢したけど、泣いちゃった……」
242 :◆oBwZbn5S8kKC :2015/07/25(土)23:20:16 ID:1yX
グレーテル「その時、ヘンゼルお兄ちゃん言ってた……大人は勝手だって……いつだって辛い目にあうのは子供たちの方だって……」
グレーテル「私もそう思うの……お母さんは私たちの事好きじゃないかもって思ってたけど……それでもパパは私たちの事好きだと思ってた……でも助けてくれなかったの……暗い暗い森の奥に、二回も置き去りにされたよ……」
グレーテル「だから……嫌いになったの……それから会う大人もみんな悪い人ばっかり……」
キモオタ「……それはもう、相当辛い思いをしたのでござろう。両親に捨てられ、魔女に利用され……お主らの境遇はあまりに辛すぎますぞ……
例え、ハッピーエンドになったとしても……それでは埋め合わせできぬほどの辛い生活だったのでござろう……二人が大人を憎むのも当然でござる……」グッ
グレーテル「それにね……私もいろんなおとぎ話を読んだけど……大人って、みんな悪い人だなって……やっぱり思ったよ……それって、どこの世界も一緒なの……」
グレーテル「マッチを売る女の子のお父さんは……ひどい暴力を振るったよ……?」
グレーテル「笛吹きがネズミを退治しても……街の大人は約束を守らなかったよ……?」
グレーテル「優しい灰かぶりのお姉ちゃんを……新しいお母さんはいじめたよ……?」
グレーテル「ラプお姉ちゃんだって……本当のお父さんに魔法の野菜と交換されたんだよ……?優しいお父さんはそんなひどい事しないよ……?」
グレーテル「村の為だって言って……優しい弥平パパを殺したのだって……村の大人だよ……?」
キモオタ「弥平……殿?」
グレーテル「優しい大人……私達に優しくしてくれたお父さん……でも、女王さまと弥平パパ……とキモオタお兄ちゃん以外は……どのおとぎ話の大人もみんな悪い人だよ……」
キモオタ「グレーテル殿も我輩の友人も、なんら現実世界の人間と変わらぬ友人でござる。しかし…それでもおとぎ話は作られた物語でござる、誰かに聞かせる為に作られた以上は…」
キモオタ「やはり、物語を盛り上げる状況が必要なのでござろう。主人公が気持ちよく逆境を撃ち払ったり、幸福を手にする展開……その為には、わかり易い悪役の存在が便利なのでござろう……」
グレーテル「……物語を盛り上げる為……それ、ヘンゼルお兄ちゃんも言ってた……現実世界の作者さんのせいで……私たちはあんな苦しい思いをしたんだって……」
243 :◆oBwZbn5S8kKC :2015/07/25(土)23:22:56 ID:1yX
グレーテル「私達を作った作者さんはね……【ヘンゼルとグレーテル】を盛り上げる為に……私達を貧乏な兄妹にしたの……パパ達に嫌われる運命にしたの……魔女に酷いことされる人生にしたの……」
グレーテル「お金持ちの兄妹が……パパに愛されて、魔女にも会わないおとぎ話って……きっとつまらないから……貧しい兄妹が酷い目にあう方が……盛り上がるから……」
キモオタ「そんな風に考えるのは……作者殿が何を考えてお主らを生み出したかなど、知りようがないでござろう?悪い方に物事を考えてはいけませんぞ」
グレーテル「でもね……作者さんが私たちでは考えつかない素敵な理由で……おとぎ話を作ってくれてても……やっぱり私たちの辛い人生を決めたのは、作者さんだよ……?」
キモオタ「物語の大きな筋は決められていますからな、確かにおとぎ話の主人公からしたら……作者は自分の運命を決めた存在になりますな」
グレーテル「……それって、悲しいな。最初っから運命が決まってるって……やだな……」
グレーテル「……どんなに頑張っても……変えられないの……」
グレーテル「【ヘンゼルとグレーテル】が無くなっちゃったから……私は運命から逃げられたけど……それでもこうやってお姉ちゃんがさらわれて、お兄ちゃんに置いて行かれて……」
グレーテル「どんなに頑張っても……良くしようとしても……運命から逃れてても……幸せになろうとしちゃいけないのかな、私がおとぎ話の主人公だから……」
キモオタ「…そんなことは、無いでござろう」
キモオタ「お主もヘンゼル殿も、おとぎ話の主人公でござるが…我輩にとっては現実世界の人間もおとぎ話の世界の人間も変わりありませんぞ、その境界線などものすごく曖昧でござる」
キモオタ「努力とは簡単には報われないものでござるが……それでも、お主の思いや努力は無意味にはならんでござろう」
キモオタ「気を落とさぬよう、グレーテル殿。我輩やヘンゼル殿と一緒に、司書殿を助けたいから一緒に来たのでござろう?ならば、ここはひとつ誘拐犯どもに目に物見せてやりますぞwww」コポォ
グレーテル「うん……ありがとね、キモオタお兄ちゃん……」
・・・
244 :◆oBwZbn5S8kKC :2015/07/25(土)23:24:22 ID:1yX
少し前 廃墟
ヘンゼル(……脅迫状に書いてあった場所は恐らく、ここだ)コソコソ
ヘンゼル(廃墟とはいっても結構大きな建物みたいだ…一周したところ、覗ける部屋にあいつは捕えられてなかった。奥の部屋か……一階じゃないのかな?)
ヘンゼル(人の気配はする、あいつを除いて二人……)
ヘンゼル(……)
ヘンゼル(誘拐犯には腹が立つけど、あいつを助けだす方が先決。どこかから忍び込んであいつだけ助けてってのが理想だけど…でも、そう簡単にはいかないか…)
ヘンゼル(それにしても現実世界の奴らは……大人は本当に姑息だ、誘拐なんて卑劣な手段を使う事もだけど)
ヘンゼル(僕やグレーテルを来させるように仕向けた、子供なら抵抗も出来ないと思われたんだろうけど)
ヘンゼル(僕には魔力がある……たとえ誘拐犯とやりあっても有利なのはこっちだ)
ヘンゼル(この世界には存在しない『魔力』の前には大人と子供なんて差は些細な事だ)
ヘンゼル(僕の家族に手を出した事、後悔させてやらないとね)
ヘンゼル「いつまでもこうしてられない、あいつもグレーテルも待ってる。ここは正面突破が一番かな……」ダッ
バタンッ!
ヘンゼル「おい!僕達にふざけた手紙をよこした奴、居るんだろう!隠れるなんて姑息な事はやめてもらうよ、さぁ出て来てもらおうか!」
245 :◆oBwZbn5S8kKC :2015/07/25(土)23:26:26 ID:1yX
小柄な男「喚くんじゃねぇよ、こっちはずっと待っていたんだぜ?隠れなんかしねぇよ」
ギィギィ
小柄な男「しかし随分と威勢のいいガキだな、大人しげな外見に騙されるところだったぜ」クックック
強面グラサン「……」
ヘンゼル「あんた達が、あいつを誘拐した犯人だよね?」
小柄な男「ああ、そうだぜ。だが、おかしいぞ、俺様はこう要求したはずだ。二人で来いとな…おい、妹はどうした?」
ヘンゼル「妹は部屋に残してきた。連れてくる理由がなかったからね」
小柄な男「おいおい…お前は大人しげに見えるが随分と利口そうに見える、いわゆるインテリ系だと思っていたんだが…やっぱり脳みそはガキだな」ハァー
小柄な男「状況理解してんのか?お前の姉ちゃんは俺様が監禁してる、あいつを殺そうがどうしようが俺の自由だ。それを助けるチャンスをお前達に与えてやってるんだぜ?」
小柄な男「これは取引なんかじゃねぇ、俺様からお前達への命令だ。勘違いすんじゃねぇぞ」
ヘンゼル「あんたこそ勘違いしないで欲しいね」
小柄な男「あぁ?」
ヘンゼル「僕はここに取引に来たわけじゃないんだ。本当は…あいつだけそっと助け出せればそれでいいと思っていたけど……予定変更だ」
ヘンゼル「元々廃墟なんだ、多少壊れても…中で男が死んでいても誰も困りはしないよ」ググッ
スッ
246 :◆oBwZbn5S8kKC :2015/07/25(土)23:27:27 ID:1yX
ヘンゼル「一気に距離を詰めて、捕える…!」ギロッ
小柄な男「おい、近寄るんじゃねぇクソガキ!あいつを殺しちまってもいいのか!?」
ヘンゼル「誰が殺すの?あんたには出来ないよ、死人に人殺しなんてできないから」ダダッ
ゴゴゴゴゴ
小柄な男「なんてやつだ…!人質がいるんだぞ!わかってんのかテメェ、恐ろしくねぇのか!あの女がどうなっても…」
ヘンゼル「五月蠅い。僕は今凄く腹が立ってるんだ。それに僕の大切な家族を……」
ヘンゼル「『あの女』なんて呼び方するな」ヒュッ
小柄な男「チッ…!我がしもべ!俺様を守りやがれ!そのガキを止めろ!」
ヒュバッ ガシッ
強面グラサン「……小僧、悪ぃがここは引け。加減、出来ねぇぞ」シュウゥゥゥ
ヘンゼル「……っ!」ババッ
ヘンゼル(なんだ…?思わずのけぞってしまった。こいつの威圧感…あの小柄な男とは段違いだ)
小柄な男「これだからガキは…!考えが甘いから嫌になんだよ!おい!まだだぞ!そいつを俺様に近づけるなよ!」チッ
247 :◆oBwZbn5S8kKC :2015/07/25(土)23:31:53 ID:1yX
小柄な男「おいクソガキ!何故テメェがそんなに余裕なのかしらねぇけどな、優位はまだこっちにあんだぞ?」
ヘンゼル「そうかな?クソガキの攻撃にビビっていた奴に優位があるかな?」
小柄な男「あの女は別の部屋に閉じ込めてある。お前は俺達に他の仲間が居ないと踏んで強気で出たみたいだがなぁ…お前の奇襲は失敗だ、もうお前が反抗的だってのはわかった」
小柄な男「先手必勝で俺達を殺せればその策も上策だったろうがなぁ、あまり舐めた真似してっと本当にあの女を殺すぞ!」チッ
ヘンゼル「……」
小柄な男「だが俺の目的はあの女を殺す事じゃねぇ、チャンスをもう一度やる。妹を連れてもう一度来い」
ヘンゼル「何故、金を要求するでもなく僕の妹を連れてこいなんて言うんだ?あんたは身代金目的なんじゃないのか?」
小柄な男「俺様はただな、生意気なガキが俺の命令に従わないのが腹立たしいだけだ」
ヘンゼル「…そんな理由で、わざわざ僕達を呼び出すの?普通じゃないと思うけど」
小柄な男「答えろ、ガキ。戻って妹のグレーテルを連れてくるか、あるいはここで俺様のしもべにやられるか」
ヘンゼル「僕がなんていうか予想できてるだろう?だったら、答えなくてもいいんじゃないかな」
小柄な男「ああ、面倒なうえに腹の立つクソガキだ……」ギリッ
小柄な男「おい、俺は少し休む、相手をしてやれ、ただし殺すなよ?そいつを捕えりゃあ妹に対して上等な人質に出来るからな、捕えてあの女とは別の部屋に閉じ込めておけ」
ヘンゼル「逃げるんだ?自分じゃクソガキに勝てないから手下に任せるんだね」
小柄な男「あの女はまだ利用価値があるから生かしてやる、お前もだ。だが、まだそいつに勝てるとでも思ってるなら考えを改めろよ?」
小柄な男「俺様のしもべはそこらのチンピラとはわけがちがうんだぜ?」クックック
248 :◆oBwZbn5S8kKC :2015/07/25(土)23:34:02 ID:1yX
ヘンゼル「……」ジリジリ
ヘンゼル(あの男が言うように、確かにこいつは……ただの力自慢なんてわけじゃなさそうだ)
強面グラサン「……小僧、ここは引きやがれ。お前じゃあ俺には勝てねぇ、それに……もう一度いうが加減もしてやれねぇ」
ヘンゼル「あんた、あの男よりずっと強そうなのに。なんで手下みたいな事してるの?」
強面グラサン「理由は言えねぇ、だが……今は逆らえねぇ。小僧が妹を連れに戻るなら手出しはしねぇ、だが立ち向かってくるなら捕えるしかねぇぞ?」
ヘンゼル「……じゃあ捕えなきゃね、出来ればだけど」
強面グラサン「やむを得ねぇか、来い小僧。殺しはしねぇが、多少痛くても我慢しやがれ…テメェが決めた事だ」
ヘンゼル「あくまで捕えるつもりなんだね、僕はあんたを殺すつもりで行くけど?」
ゴゴゴゴゴ
ヘンゼル「あんたの強さくらいわかるよ、出し惜しみして勝てる相手じゃないってこともね」
強面グラサン「……妖術、いや西洋のガキなら…魔法ってやつか…」ボソッ
ヘンゼル「なんでこんな気迫を放てるあんたが姑息な真似をするのか解らないけど、まぁ大人なんてそんなものだから別段不思議でもないね」ダダッ
ヘンゼル「どっちにしろ、僕がやることは変わらない。あんたが何者だとしてもね」ダダッ
強面グラサン「……」スッ
249 :◆oBwZbn5S8kKC :2015/07/25(土)23:40:58 ID:1yX
ヘンゼル「さぁ、どうするの?避けなくて良いの?僕は手加減なんかしないよ?」ダダッ
強面グラサン「小僧が手のひらで練り上げた力、俺にぶち当てるには近づかなきゃなんねぇだろ?」
ヘンゼル「そうだね、だったらどうだっていうんだ?僕は本気だ、あんたが逃げず避けずだって言うなら……容赦なんてしないよ」ダダッ
強面グラサン「小僧は俺が逃げも避けもしねぇから容易く近づけていると思ってるだろうがなぁ、俺がお前を敢えて近づかせてるとしたら……やべぇと思わねぇか?」
ヘンゼル「あんた、僕が近付くのを狙って…!」ダダッ
強面グラサン「近ければ近いほど、攻撃の狙いは定まる。小僧にはまともな実戦経験がねぇだろ?虚勢を張っても丸わかりだぞ?」
ヘンゼル「黙れよ…!もう目の前まで来たんだ、このまま全力の魔力をあんたに撃ち込んであの小柄な男を追いかける!」ググッ
強面グラサン「すまねぇな、師匠。罪の無い奴に暴力を振るうなっていうあんたの教え……守れなかったぜ」
ヘンゼル「何をブツブツといってるんだ、もう終わりにしよう。この腕が使い物にならなくなろうとも、僕はあいつ等を守る…!」
強面グラサン「悪ぃが、俺にも守るもんがあるんだ。そりゃあ譲れねぇ…ほんの少しばかり本気出させてもらうぜ」キンッ
ビュオ
ヘンゼル「こいつ、どこにあんな棒なんて隠し持って……っ!」ググッ
強面グラサン「天を穿て、大地を抉れ!その伸縮自在なる姿を見せやがれ…!さて、下手に動くなよ、急所は外してやる……だから少しの間、眠って居ろ小僧ッ!伸びろッ……!」
ヘンゼル「……っ!」
強面グラサン「如意棒ッッ!!」
ヒュガッ
250 :◆oBwZbn5S8kKC :2015/07/25(土)23:42:52 ID:1yX
今日はここまでです
外国人の少女をおぶって町外れに走るオタク風の男(事案)
ヘンゼルとグレーテル。とある消滅したおとぎ話編 次回に続きます
251 :名無しさん@おーぷん :2015/07/25(土)23:44:23 ID:nhJ
まさかの孫悟空!盛り上がってきた!
252 :名無しさん@おーぷん :2015/07/26(日)01:01:54 ID:Dkd
乙です!!!
253 :名無しさん@おーぷん :2015/07/26(日)06:40:06 ID:C7y
乙です!
えええ、グラサンの正体が孫悟空!?
完全に予想外だった…(゚Д゚)
254 :名無しさん@おーぷん :2015/07/26(日)07:18:38 ID:k6w
乙です!!!
続きがすごく楽しみです!!!
265 :◆oBwZbn5S8kKC :2015/07/27(月)23:10:22 ID:LPB
ヘンゼル「うグッ…!」グイッ
ドガシャアアァァァ
強面グラサン「……自分の事情で罪の無ぇ童を傷付けるたぁ、俺はもう僧を名乗れねぇな」スッ
強面グラサン「気は進まねぇが、一先ずはこの小僧を捕えておくしかねぇか。……ん?」
ゲホゲホッ
ヘンゼル「ハァハァ…どういうことだよ…これは……」ゼェゼェ
強面グラサン「驚いたな、急所を外したつってもあの一撃で意識が保てるたぁ……壁に叩きつけられる直前に魔力を放って衝撃を軽減したってぇ訳か」
ヘンゼル「あんたには、衝撃を軽減出来てる風に見えるの?」ゲホゲホ
強面グラサン「如意棒の一撃を至近距離で受けてそれだけ喋れるんなら十分だと思うけどな」ザッザッ
グイッ
ヘンゼル「離せよ…僕はまだ負けてない…!」ゴゴゴゴゴ
強面グラサン「やめときな。小僧、魔力の制御が不完全なんだろ?自分でも完全に制御できねぇから、反動に耐えられず腕を壊しちまう」
ヘンゼル「だから何なの?両腕が潰れてもあんたを殺せればあの小柄な男は魔力なしだってどうにかなるよ」
ヘンゼル「あんたを殺せば僕は妹達を救える。左手だけ残っていれば魔力の圧縮だって出来る、僕は十分あんたを殺せる」
ヘンゼル「殺さなきゃ助けられない。離さないってなら、その腕ごとあんたの全身にありったけの魔力をぶち込んで…殺してやる」キッ
キモオタ「ヘンゼル殿は我輩に攻撃した時も自分の事は二の次でグレーテル殿の事を気にしておりましたからな。大切な家族を守る為なら、自分の犠牲などどうだっていいのでござろう」
グレーテル「どうだってよくないのにね……ヘンゼルお兄ちゃん、私やお姉ちゃんの為なら無茶な魔力の使い方するもん……あんな風にしてたら……お兄ちゃんいつか大怪我しちゃう……」
キモオタ「いくらグレーテル殿や司書殿の為とはいえ、ヘンゼル殿が無茶して怪我するのは悲しいでござるよね、グレーテル殿は」
グレーテル「うん……ヘンゼルお兄ちゃんはいつも私たちの心配ばっかり……もっと自分の事も大切にして欲しいの……ヘンゼルお兄ちゃんが幸せじゃなきゃ、私は幸せになんかなれないの……」
グレーテル「ヘンゼルお兄ちゃんと一緒に居るだけで……私は安心なの、だから置いて行ったりしないで欲しいの……でも、わかってくれないの……」
キモオタ「ふむ……状況は把握できましたからなすぐにでもヘンゼル殿を追いかけて一緒に司書殿を救出しますぞ」
キモオタ「グレーテル殿の胸に秘めたその気持ちは、後ほどヘンゼル殿に伝えるでござる。黙っていては伝わりませんからなwww」
グレーテル「……うん、全部終わったら私ちゃんと言う……もう無茶な事しないでって……私の側に居てって、置いて行かないでって……言うの……」
タッタッタ
ティンカーベル「キモオター!グレーテルちゃんー!話長いけど何か困った事だよね?ラプンツェルに頼んでお会計してきたけど…」パタパタ
ラプンツェル「二人とも深刻そうだったからー、きっともうご飯なんか食べてる場合じゃないよね?」
キモオタ「おお、申し訳ありませんな二人とも。これからちょっと向かわねばならぬ場所が出来ましてな…丁度良かったでござるよwww」
グレーテル「……すっごく長くて綺麗な髪……お姉ちゃん……本物の、ラプンツェル……?」
ラプンツェル「うん!おとぎ話【ラプンツェル】の主人公だよ!えーっと、キモオタが言ってたグレーテルちゃんだよね?よろしくね!」ニコニコ
グレーテル「うん、グレーテルだよ……よろしく……」
ラプンツェル「うんうん!グレーテルは妹みたいでかわいいね!私の事ラプお姉ちゃんって呼んでいいよ!私の方がずーっとお姉ちゃんだからね、ラプお姉ちゃんになんでも頼ってね」フンス
キモオタ「ちょwwwラプンツェル殿wwwお主どれだけ頼られたいのでござるかwww」コポォ
237 :◆oBwZbn5S8kKC :2015/07/25(土)23:11:29 ID:1yX
・・・
・・・
ティンカーベル「ええっ!?司書さんが誘拐された!?ちょ、ちょっとそれってこんなところでゆっくり話してる場合じゃないじゃん!急がないと司書さんが酷い目にあっちゃう!」
グレーテル「……キモオタお兄ちゃん……急がなくても……大丈夫……?」ビクビク
キモオタ「ちょwwwグレーテル殿の不安をあおらないでいただきたいwww慌てて動いても良い結果にはならぬでござるよ、急いでいる時こそ冷静にですぞwww」
ラプンツェル「私も司書って人助けるのお手伝いするよ!あっ、でも確か現実世界にはケーサツっていう悪い人を捕まえるチームがいるんだよね?その人たちにも手伝ってもらえないの?」
ティンカーベル「そっか、ここは現実世界なんだし私たちが行くより、警察にお願いした方がいいんじゃないかなー?」
キモオタ「もちろん、本来ならそうなのでござるが……ちょっと思うところがあるのでござるよ、警察には届けず我らだけで救出しますぞwwwラプンツェル殿にもお手伝いお願いしたいwww」
ラプンツェル「まっかせて!犯人見つけたらこの髪の毛でしゅしゅーって捕まえちゃうからね!」フンス
グレーテル「ただ長いだけじゃないんだ……長くて綺麗なだけでも素敵なのに……悪い人も捕まえられるなんて、ラプお姉ちゃんの髪の毛すごいね……」
ラプンツェル「そうでしょ!もう助けたも同然だからグレーテルは安心しても良いよ!」フンス
コソコソ
ティンカーベル「……ねぇ、キモオタ。確かにおはなしサイリウムで魔法使えるし、私もラプンツェルもいるから魔法なんか使えない人間の誘拐犯なんか簡単に捕まえられちゃうとは思うよ?」ヒソヒソ
ティンカーベル「でも、私はやっぱり警察に届けた方がいいと思うな…司書さんにもしもの事があったら……」ヒソヒソ
キモオタ「……不可解だとは思いませんかな、ティンカーベル殿」ヒソヒソ
ティンカーベル「不可解…?なにかおかしい事あったっけ?」ヒソヒソ
キモオタ「我輩はこの誘拐……単なる身代金誘拐では無いと思うでござる」ヒソヒソ
238 :◆oBwZbn5S8kKC :2015/07/25(土)23:12:36 ID:1yX
キモオタ「例えばでござるよ?ティンカーベル殿と我輩が誘拐犯コンビだとして……大人の司書殿、しっかりしてそうなヘンゼル殿、無口そうなグレーテル殿。誰をさらいますかな?」
ティンカーベル「えーっと…グレーテルかな?一番体も小さいし、女の子だから簡単に誘拐できそうだし……」
キモオタ「そうでござろう?ならば何故犯人は司書殿を?」
ティンカーベル「それはあれでしょ?お金が欲しかったから、それに一人でいたんでしょ?誘拐しやすいならだれでもよかったんだよ!きっと!」
キモオタ「強盗ならともかく身代金を要求するのなら司書殿を誘拐するのはおかしいでござろう、ヘンゼル殿とグレーテル殿に要求しておりましたが……二人がお金をどう用意するでござるか?銀行でも下ろせず、せいぜい部屋にあるいくらかのお金が関の山ですぞ」
ティンカーベル「じゃあ……お金が目的じゃないって事?」
キモオタ「我輩の予想ではそうですな。単純にお金が欲しい犯人にしては効率が悪すぎますぞ、『金目の物』なんていう指示もざっくり過ぎでござるし、目的は他の所にあるように見えますな」
ティンカーベル「もしかして……お金も司書さんもどうでもよくて……本当はヘンゼルとグレーテルを廃墟に呼び出す為の作戦かな…?」
キモオタ「我輩はそう考えてますぞ。必ず二人で来るように…なんて手紙を部屋まで届ける辺り二人を呼び出す事が目的でござろうな。そうなると、何故二人を呼び出すのか……」
キモオタ「あの二人に用があるから。しかし、現実世界の人間にとってはあの二人はただの外国人の兄妹。となると……犯人はおとぎ話の世界の住人かも、となりますな」
ティンカーベル「おとぎ話の世界の住人が、何かを求めてヘンゼルとグレーテルを呼び出そうとしてるってこと?」
キモオタ「そこに行きつくのでござるよね、今はまだ推測の域を出ませんがな。もちろんただ単に犯人が現実世界のロリコンショタコンの可能性もあるでござるが……」
キモオタ「ただ犯人がおとぎ話の世界の住人だった場合、魔法具なんか出されては警察では相手をしきれない可能性もありますからな……警察なんか呼んでは我々も魔法具を使いにくくなりますしな」
ティンカーベル「逆に暴力振るった!ってなってキモオタやラプンツェルが逮捕されちゃうかもしれないもんね……」
キモオタ「我輩はともかくwwwラプンツェル殿をそんな目にあわせたとなると、我々塵と消えるどころではすみませんぞwww」
239 :◆oBwZbn5S8kKC :2015/07/25(土)23:14:27 ID:1yX
キモオタ「とにかく、ここは我々だけで司書殿の救出を試みますぞ」
ティンカーベル「確かに犯人がおとぎ話の世界の住人だったら、警察より私たちの方が司書さん助けられる可能性上がるもんね」
キモオタ「ただ、相手が誰か解らない以上…どんな手を使ってくるかもわからないでござる。強い腕力や恐ろしい魔法を相手にする可能性もありますぞ」
キモオタ「故に、ティンカーベル殿だけは廃墟の外で様子を見て司書殿を探す方向で動いて欲しいでござる」
ティンカーベル「ヤだよ!それキモオタ達が捕まったり傷付けられても無視して単独行動ってことでしょ?私だって最後まで戦うよ!」
キモオタ「ちょwww我輩たちが全員捕まったら誰が司書殿を助けるでござるかwwwティンカーベル殿は唯一世界移動が出来るでござるし、我輩と通信だって出来ますからな」
ティンカーベル「そりゃあ、そうだけどさ……」
キモオタ「平気でござるよwww捕まるつもりで行くわけではないのでwwwそれの何かあったときにティンカーベル殿なら動きやすいでござるしwww頼りにしてますぞwww」
ティンカーベル「そーいうことならわかった、司書さんを探す役目私がやるよ」
キモオタ「たのみますぞwwwさて、グレーテル殿準備は出来たでござる、出発しますぞ!」
グレーテル「うん……私は、心の準備……出来てる。絶対に、お姉ちゃん助ける……」
キモオタ「そうですな!では我輩がひとっ走り例の廃墟まで走るでござるから、グレーテル殿は我輩の背中にwww」
グレーテル「自分で走って行くよ……?おんぶしてもらったら……悪いよ、キモオタお兄ちゃん疲れちゃう……」
キモオタ「ご安心をwww我輩、魔法を使う事が出来ますからなwww遠慮は無用ですぞwww」
スススッ
おはなしサイリウム「コード認識完了『裸王』 魔法発現状態へ移行……モード『muscle』」
240 :◆oBwZbn5S8kKC :2015/07/25(土)23:16:09 ID:1yX
廃墟への道
ドスドスドス
グレーテル「……キモオタお兄ちゃん、大丈夫?……重くない……?疲れない……?」
キモオタ「平気ですぞwww二人は到着してからウォッチで呼びますからなwwwそれに今の我輩はただのデブに非ずwww体重を気にするとはグレーテル殿も乙女ですなwww」コポォ
キモオタ「裸王殿との絆の魔法『muscle』は民の願いを形にする為の強靭な筋肉、そして逆境をも撥ね退けるタフネスを得る事が出来ますからなwww少々走った程度では息切れすらしませんぞwww」コポォ
グレーテル「キモオタお兄ちゃん……現実世界の大人なのに……魔法、使えるのね……すごい……」
キモオタ「とはいってもwww魔法具ですからなwww我輩自身に魔力があるわけではないでござるwww」コポォ
グレーテル「私と一緒だね……私にも魔力があったら……お姉ちゃんの所にもっと早く着けるのにな……」
キモオタ「焦りは禁物ですぞ、とはいえwww本当はシンデレラ殿との絆の魔法『step』で加速したいところでござるがwwwグレーテル殿をおぶっている状態で転んでは大惨事ですからなwww」
グレーテル「【ラプンツェル】に【シンデレラ】……裸王っていうのは……【裸の王様】かな……?友達、いっぱいいるのね……」
キモオタ「おとぎ話の世界ではちょっとしたリア充レベルに友人はいますぞwwwおとぎ話もたくさん読みましたしなwww」
グレーテル「そっか……私も、たくさんのおとぎ話読んだよ……私のおとぎ話は、もう無いけど……」
キモオタ「先ほど、ラプンツェル殿に【ヘンゼルとグレーテル】のおとぎ話を教えてもらいましたぞwww我輩はグレーテル殿のおとぎ話もちゃんと知ってるでござるよwww」コポォ
グレーテル「そっか……私たちの為に聞いてくれたのかな……でも聞かない方が、よかったよ……」
キモオタ「……グレーテル殿?」
グレーテル「もっと楽しいお話はいっぱいあるよ……誰も悪い人なんか居ない……だれも辛い思いなんかしない……幸せだけしかないおとぎ話……」
キモオタ「それは……やっぱりグレーテル殿もあのおとぎ話を憎んでいるのでござるか?」
グレーテル「……どうかな?……でも私たちのおとぎ話聞いたなら……私やヘンゼルお兄ちゃんが……大人が嫌いな理由、わかったよね……?」
キモオタ「……わかったでござる、童話展では事情も知らず無責任に大人を頼れなどと言って申し訳ありませんでしたな」
グレーテル「いいの。キモオタお兄ちゃんがそう言ってくれたから……私は助けてって言えたの……」
グレーテル「それに……大人は嫌いだけど……キモオタお兄ちゃんの事は……ちょっと好き……」
キモオタ「それはありがたいですなwwwしかし、我輩が特別なわけではないのでござるwwwこれを機にもっといろんな大人を頼ればいいですぞwww」
グレーテル「それは……無理だよ……キモオタお兄ちゃんはちょっと特別なの……他の大人は……やっぱり嫌い……」
キモオタ「しかし……これから先、全ての大人を信用できずに生きていくというのは、辛いと思うのでござるよ」
グレーテル「辛い事って……大人を信用できない事じゃないよ……辛いのはね……いらないって言われる事なの……」
グレーテル「私のうちは貧乏だったけど……ごはんがちょっとしか食べられなくても、可愛いお洋服無くても……平気だったの……パパやヘンゼルお兄ちゃんが居て……ちょっとイジワルでもお母さんがいて……それで幸せだったの……」
グレーテル「だってね……お家が無い子も家族が居ない一人ぼっちな子もたくさんいるのよ……でも私にはお家も家族もある……だから幸せだったの……」
キモオタ「……」
グレーテル「でもね……パパとお母さんはそう思ってなかったみたい……私やヘンゼルお兄ちゃんがいたら……ごはんが足りないって……このままじゃ自分たちが死んじゃうって……」
グレーテル「だから……ヘンゼルもグレーテルもいらないって……捨てちゃったの……私がね、ずっと幸せだと思ってたものって……」
グレーテル「パパ達にとっては不幸なものだったの……それを知っちゃったときね……我慢したけど、泣いちゃった……」
242 :◆oBwZbn5S8kKC :2015/07/25(土)23:20:16 ID:1yX
グレーテル「その時、ヘンゼルお兄ちゃん言ってた……大人は勝手だって……いつだって辛い目にあうのは子供たちの方だって……」
グレーテル「私もそう思うの……お母さんは私たちの事好きじゃないかもって思ってたけど……それでもパパは私たちの事好きだと思ってた……でも助けてくれなかったの……暗い暗い森の奥に、二回も置き去りにされたよ……」
グレーテル「だから……嫌いになったの……それから会う大人もみんな悪い人ばっかり……」
キモオタ「……それはもう、相当辛い思いをしたのでござろう。両親に捨てられ、魔女に利用され……お主らの境遇はあまりに辛すぎますぞ……
例え、ハッピーエンドになったとしても……それでは埋め合わせできぬほどの辛い生活だったのでござろう……二人が大人を憎むのも当然でござる……」グッ
グレーテル「それにね……私もいろんなおとぎ話を読んだけど……大人って、みんな悪い人だなって……やっぱり思ったよ……それって、どこの世界も一緒なの……」
グレーテル「マッチを売る女の子のお父さんは……ひどい暴力を振るったよ……?」
グレーテル「笛吹きがネズミを退治しても……街の大人は約束を守らなかったよ……?」
グレーテル「優しい灰かぶりのお姉ちゃんを……新しいお母さんはいじめたよ……?」
グレーテル「ラプお姉ちゃんだって……本当のお父さんに魔法の野菜と交換されたんだよ……?優しいお父さんはそんなひどい事しないよ……?」
グレーテル「村の為だって言って……優しい弥平パパを殺したのだって……村の大人だよ……?」
キモオタ「弥平……殿?」
グレーテル「優しい大人……私達に優しくしてくれたお父さん……でも、女王さまと弥平パパ……とキモオタお兄ちゃん以外は……どのおとぎ話の大人もみんな悪い人だよ……」
キモオタ「グレーテル殿も我輩の友人も、なんら現実世界の人間と変わらぬ友人でござる。しかし…それでもおとぎ話は作られた物語でござる、誰かに聞かせる為に作られた以上は…」
キモオタ「やはり、物語を盛り上げる状況が必要なのでござろう。主人公が気持ちよく逆境を撃ち払ったり、幸福を手にする展開……その為には、わかり易い悪役の存在が便利なのでござろう……」
グレーテル「……物語を盛り上げる為……それ、ヘンゼルお兄ちゃんも言ってた……現実世界の作者さんのせいで……私たちはあんな苦しい思いをしたんだって……」
243 :◆oBwZbn5S8kKC :2015/07/25(土)23:22:56 ID:1yX
グレーテル「私達を作った作者さんはね……【ヘンゼルとグレーテル】を盛り上げる為に……私達を貧乏な兄妹にしたの……パパ達に嫌われる運命にしたの……魔女に酷いことされる人生にしたの……」
グレーテル「お金持ちの兄妹が……パパに愛されて、魔女にも会わないおとぎ話って……きっとつまらないから……貧しい兄妹が酷い目にあう方が……盛り上がるから……」
キモオタ「そんな風に考えるのは……作者殿が何を考えてお主らを生み出したかなど、知りようがないでござろう?悪い方に物事を考えてはいけませんぞ」
グレーテル「でもね……作者さんが私たちでは考えつかない素敵な理由で……おとぎ話を作ってくれてても……やっぱり私たちの辛い人生を決めたのは、作者さんだよ……?」
キモオタ「物語の大きな筋は決められていますからな、確かにおとぎ話の主人公からしたら……作者は自分の運命を決めた存在になりますな」
グレーテル「……それって、悲しいな。最初っから運命が決まってるって……やだな……」
グレーテル「……どんなに頑張っても……変えられないの……」
グレーテル「【ヘンゼルとグレーテル】が無くなっちゃったから……私は運命から逃げられたけど……それでもこうやってお姉ちゃんがさらわれて、お兄ちゃんに置いて行かれて……」
グレーテル「どんなに頑張っても……良くしようとしても……運命から逃れてても……幸せになろうとしちゃいけないのかな、私がおとぎ話の主人公だから……」
キモオタ「…そんなことは、無いでござろう」
キモオタ「お主もヘンゼル殿も、おとぎ話の主人公でござるが…我輩にとっては現実世界の人間もおとぎ話の世界の人間も変わりありませんぞ、その境界線などものすごく曖昧でござる」
キモオタ「努力とは簡単には報われないものでござるが……それでも、お主の思いや努力は無意味にはならんでござろう」
キモオタ「気を落とさぬよう、グレーテル殿。我輩やヘンゼル殿と一緒に、司書殿を助けたいから一緒に来たのでござろう?ならば、ここはひとつ誘拐犯どもに目に物見せてやりますぞwww」コポォ
グレーテル「うん……ありがとね、キモオタお兄ちゃん……」
・・・
244 :◆oBwZbn5S8kKC :2015/07/25(土)23:24:22 ID:1yX
少し前 廃墟
ヘンゼル(……脅迫状に書いてあった場所は恐らく、ここだ)コソコソ
ヘンゼル(廃墟とはいっても結構大きな建物みたいだ…一周したところ、覗ける部屋にあいつは捕えられてなかった。奥の部屋か……一階じゃないのかな?)
ヘンゼル(人の気配はする、あいつを除いて二人……)
ヘンゼル(……)
ヘンゼル(誘拐犯には腹が立つけど、あいつを助けだす方が先決。どこかから忍び込んであいつだけ助けてってのが理想だけど…でも、そう簡単にはいかないか…)
ヘンゼル(それにしても現実世界の奴らは……大人は本当に姑息だ、誘拐なんて卑劣な手段を使う事もだけど)
ヘンゼル(僕やグレーテルを来させるように仕向けた、子供なら抵抗も出来ないと思われたんだろうけど)
ヘンゼル(僕には魔力がある……たとえ誘拐犯とやりあっても有利なのはこっちだ)
ヘンゼル(この世界には存在しない『魔力』の前には大人と子供なんて差は些細な事だ)
ヘンゼル(僕の家族に手を出した事、後悔させてやらないとね)
ヘンゼル「いつまでもこうしてられない、あいつもグレーテルも待ってる。ここは正面突破が一番かな……」ダッ
バタンッ!
ヘンゼル「おい!僕達にふざけた手紙をよこした奴、居るんだろう!隠れるなんて姑息な事はやめてもらうよ、さぁ出て来てもらおうか!」
245 :◆oBwZbn5S8kKC :2015/07/25(土)23:26:26 ID:1yX
小柄な男「喚くんじゃねぇよ、こっちはずっと待っていたんだぜ?隠れなんかしねぇよ」
ギィギィ
小柄な男「しかし随分と威勢のいいガキだな、大人しげな外見に騙されるところだったぜ」クックック
強面グラサン「……」
ヘンゼル「あんた達が、あいつを誘拐した犯人だよね?」
小柄な男「ああ、そうだぜ。だが、おかしいぞ、俺様はこう要求したはずだ。二人で来いとな…おい、妹はどうした?」
ヘンゼル「妹は部屋に残してきた。連れてくる理由がなかったからね」
小柄な男「おいおい…お前は大人しげに見えるが随分と利口そうに見える、いわゆるインテリ系だと思っていたんだが…やっぱり脳みそはガキだな」ハァー
小柄な男「状況理解してんのか?お前の姉ちゃんは俺様が監禁してる、あいつを殺そうがどうしようが俺の自由だ。それを助けるチャンスをお前達に与えてやってるんだぜ?」
小柄な男「これは取引なんかじゃねぇ、俺様からお前達への命令だ。勘違いすんじゃねぇぞ」
ヘンゼル「あんたこそ勘違いしないで欲しいね」
小柄な男「あぁ?」
ヘンゼル「僕はここに取引に来たわけじゃないんだ。本当は…あいつだけそっと助け出せればそれでいいと思っていたけど……予定変更だ」
ヘンゼル「元々廃墟なんだ、多少壊れても…中で男が死んでいても誰も困りはしないよ」ググッ
スッ
246 :◆oBwZbn5S8kKC :2015/07/25(土)23:27:27 ID:1yX
ヘンゼル「一気に距離を詰めて、捕える…!」ギロッ
小柄な男「おい、近寄るんじゃねぇクソガキ!あいつを殺しちまってもいいのか!?」
ヘンゼル「誰が殺すの?あんたには出来ないよ、死人に人殺しなんてできないから」ダダッ
ゴゴゴゴゴ
小柄な男「なんてやつだ…!人質がいるんだぞ!わかってんのかテメェ、恐ろしくねぇのか!あの女がどうなっても…」
ヘンゼル「五月蠅い。僕は今凄く腹が立ってるんだ。それに僕の大切な家族を……」
ヘンゼル「『あの女』なんて呼び方するな」ヒュッ
小柄な男「チッ…!我がしもべ!俺様を守りやがれ!そのガキを止めろ!」
ヒュバッ ガシッ
強面グラサン「……小僧、悪ぃがここは引け。加減、出来ねぇぞ」シュウゥゥゥ
ヘンゼル「……っ!」ババッ
ヘンゼル(なんだ…?思わずのけぞってしまった。こいつの威圧感…あの小柄な男とは段違いだ)
小柄な男「これだからガキは…!考えが甘いから嫌になんだよ!おい!まだだぞ!そいつを俺様に近づけるなよ!」チッ
247 :◆oBwZbn5S8kKC :2015/07/25(土)23:31:53 ID:1yX
小柄な男「おいクソガキ!何故テメェがそんなに余裕なのかしらねぇけどな、優位はまだこっちにあんだぞ?」
ヘンゼル「そうかな?クソガキの攻撃にビビっていた奴に優位があるかな?」
小柄な男「あの女は別の部屋に閉じ込めてある。お前は俺達に他の仲間が居ないと踏んで強気で出たみたいだがなぁ…お前の奇襲は失敗だ、もうお前が反抗的だってのはわかった」
小柄な男「先手必勝で俺達を殺せればその策も上策だったろうがなぁ、あまり舐めた真似してっと本当にあの女を殺すぞ!」チッ
ヘンゼル「……」
小柄な男「だが俺の目的はあの女を殺す事じゃねぇ、チャンスをもう一度やる。妹を連れてもう一度来い」
ヘンゼル「何故、金を要求するでもなく僕の妹を連れてこいなんて言うんだ?あんたは身代金目的なんじゃないのか?」
小柄な男「俺様はただな、生意気なガキが俺の命令に従わないのが腹立たしいだけだ」
ヘンゼル「…そんな理由で、わざわざ僕達を呼び出すの?普通じゃないと思うけど」
小柄な男「答えろ、ガキ。戻って妹のグレーテルを連れてくるか、あるいはここで俺様のしもべにやられるか」
ヘンゼル「僕がなんていうか予想できてるだろう?だったら、答えなくてもいいんじゃないかな」
小柄な男「ああ、面倒なうえに腹の立つクソガキだ……」ギリッ
小柄な男「おい、俺は少し休む、相手をしてやれ、ただし殺すなよ?そいつを捕えりゃあ妹に対して上等な人質に出来るからな、捕えてあの女とは別の部屋に閉じ込めておけ」
ヘンゼル「逃げるんだ?自分じゃクソガキに勝てないから手下に任せるんだね」
小柄な男「あの女はまだ利用価値があるから生かしてやる、お前もだ。だが、まだそいつに勝てるとでも思ってるなら考えを改めろよ?」
小柄な男「俺様のしもべはそこらのチンピラとはわけがちがうんだぜ?」クックック
248 :◆oBwZbn5S8kKC :2015/07/25(土)23:34:02 ID:1yX
ヘンゼル「……」ジリジリ
ヘンゼル(あの男が言うように、確かにこいつは……ただの力自慢なんてわけじゃなさそうだ)
強面グラサン「……小僧、ここは引きやがれ。お前じゃあ俺には勝てねぇ、それに……もう一度いうが加減もしてやれねぇ」
ヘンゼル「あんた、あの男よりずっと強そうなのに。なんで手下みたいな事してるの?」
強面グラサン「理由は言えねぇ、だが……今は逆らえねぇ。小僧が妹を連れに戻るなら手出しはしねぇ、だが立ち向かってくるなら捕えるしかねぇぞ?」
ヘンゼル「……じゃあ捕えなきゃね、出来ればだけど」
強面グラサン「やむを得ねぇか、来い小僧。殺しはしねぇが、多少痛くても我慢しやがれ…テメェが決めた事だ」
ヘンゼル「あくまで捕えるつもりなんだね、僕はあんたを殺すつもりで行くけど?」
ゴゴゴゴゴ
ヘンゼル「あんたの強さくらいわかるよ、出し惜しみして勝てる相手じゃないってこともね」
強面グラサン「……妖術、いや西洋のガキなら…魔法ってやつか…」ボソッ
ヘンゼル「なんでこんな気迫を放てるあんたが姑息な真似をするのか解らないけど、まぁ大人なんてそんなものだから別段不思議でもないね」ダダッ
ヘンゼル「どっちにしろ、僕がやることは変わらない。あんたが何者だとしてもね」ダダッ
強面グラサン「……」スッ
249 :◆oBwZbn5S8kKC :2015/07/25(土)23:40:58 ID:1yX
ヘンゼル「さぁ、どうするの?避けなくて良いの?僕は手加減なんかしないよ?」ダダッ
強面グラサン「小僧が手のひらで練り上げた力、俺にぶち当てるには近づかなきゃなんねぇだろ?」
ヘンゼル「そうだね、だったらどうだっていうんだ?僕は本気だ、あんたが逃げず避けずだって言うなら……容赦なんてしないよ」ダダッ
強面グラサン「小僧は俺が逃げも避けもしねぇから容易く近づけていると思ってるだろうがなぁ、俺がお前を敢えて近づかせてるとしたら……やべぇと思わねぇか?」
ヘンゼル「あんた、僕が近付くのを狙って…!」ダダッ
強面グラサン「近ければ近いほど、攻撃の狙いは定まる。小僧にはまともな実戦経験がねぇだろ?虚勢を張っても丸わかりだぞ?」
ヘンゼル「黙れよ…!もう目の前まで来たんだ、このまま全力の魔力をあんたに撃ち込んであの小柄な男を追いかける!」ググッ
強面グラサン「すまねぇな、師匠。罪の無い奴に暴力を振るうなっていうあんたの教え……守れなかったぜ」
ヘンゼル「何をブツブツといってるんだ、もう終わりにしよう。この腕が使い物にならなくなろうとも、僕はあいつ等を守る…!」
強面グラサン「悪ぃが、俺にも守るもんがあるんだ。そりゃあ譲れねぇ…ほんの少しばかり本気出させてもらうぜ」キンッ
ビュオ
ヘンゼル「こいつ、どこにあんな棒なんて隠し持って……っ!」ググッ
強面グラサン「天を穿て、大地を抉れ!その伸縮自在なる姿を見せやがれ…!さて、下手に動くなよ、急所は外してやる……だから少しの間、眠って居ろ小僧ッ!伸びろッ……!」
ヘンゼル「……っ!」
強面グラサン「如意棒ッッ!!」
ヒュガッ
250 :◆oBwZbn5S8kKC :2015/07/25(土)23:42:52 ID:1yX
今日はここまでです
外国人の少女をおぶって町外れに走るオタク風の男(事案)
ヘンゼルとグレーテル。とある消滅したおとぎ話編 次回に続きます
251 :名無しさん@おーぷん :2015/07/25(土)23:44:23 ID:nhJ
まさかの孫悟空!盛り上がってきた!
252 :名無しさん@おーぷん :2015/07/26(日)01:01:54 ID:Dkd
乙です!!!
253 :名無しさん@おーぷん :2015/07/26(日)06:40:06 ID:C7y
乙です!
えええ、グラサンの正体が孫悟空!?
完全に予想外だった…(゚Д゚)
254 :名無しさん@おーぷん :2015/07/26(日)07:18:38 ID:k6w
乙です!!!
続きがすごく楽しみです!!!
265 :◆oBwZbn5S8kKC :2015/07/27(月)23:10:22 ID:LPB
ヘンゼル「うグッ…!」グイッ
ドガシャアアァァァ
強面グラサン「……自分の事情で罪の無ぇ童を傷付けるたぁ、俺はもう僧を名乗れねぇな」スッ
強面グラサン「気は進まねぇが、一先ずはこの小僧を捕えておくしかねぇか。……ん?」
ゲホゲホッ
ヘンゼル「ハァハァ…どういうことだよ…これは……」ゼェゼェ
強面グラサン「驚いたな、急所を外したつってもあの一撃で意識が保てるたぁ……壁に叩きつけられる直前に魔力を放って衝撃を軽減したってぇ訳か」
ヘンゼル「あんたには、衝撃を軽減出来てる風に見えるの?」ゲホゲホ
強面グラサン「如意棒の一撃を至近距離で受けてそれだけ喋れるんなら十分だと思うけどな」ザッザッ
グイッ
ヘンゼル「離せよ…僕はまだ負けてない…!」ゴゴゴゴゴ
強面グラサン「やめときな。小僧、魔力の制御が不完全なんだろ?自分でも完全に制御できねぇから、反動に耐えられず腕を壊しちまう」
ヘンゼル「だから何なの?両腕が潰れてもあんたを殺せればあの小柄な男は魔力なしだってどうにかなるよ」
ヘンゼル「あんたを殺せば僕は妹達を救える。左手だけ残っていれば魔力の圧縮だって出来る、僕は十分あんたを殺せる」
ヘンゼル「殺さなきゃ助けられない。離さないってなら、その腕ごとあんたの全身にありったけの魔力をぶち込んで…殺してやる」キッ
キモオタ「我輩がおとぎ話の世界に行くですとwww」ティンカーベル「そう」 ヘンゼルとグレーテル編
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