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キモオタ「我輩がおとぎ話の世界に行くですとwww」ティンカーベル「そう」 ヘンゼルとグレーテル編

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Part7
179 :◆oBwZbn5S8kKC :2015/07/19(日)22:41:00 ID:Age
ヘンゼル「おとぎ話の世界に係わっている男が居て、そいつはどうやら面倒事の渦中に居る。そいつはいずれグレーテルやあいつを巻き込むかもしれない」
ヘンゼル「…そうしたらもうやる事はひとつだ。案の定あんたは僕の家族に近づいた……あいつ等が傷つく前に、涙を流す前に、僕があんたを始末する」
キモオタ「ちょ、ちょっと待つでござるよヘンゼル殿。お主の気持ちはわかりますぞ、大切な家族が面倒事に巻き込まれないようにするというのは当然でござる。しかし……」
ヘンゼル「しかし……なに?まだ自分はグレーテル達に何かした訳じゃない、だから攻撃されるのはおかしい。とでも言いたいの?」
キモオタ「そうですぞ、と言うよりもそもそも我輩はこの戦いにお主らを巻き込むつもりなどさらさらないのでござるよ。だから安心していただきたい」
ヘンゼル「そうか、ってなるわけないだろう。疑わしきは罰せよだよ、お兄さん」
キモオタ「……あくまで聞く耳を持ってくれないでござるか」
ヘンゼル「それはそうでしょ。だって僕はあんたを信用してない、巻き込むつもりがないと言われても安心できないし、僕はあんたを見逃さない」
ヘンゼル「あんたがまだ僕の家族に危害を加えていなかったとしても…面倒事の渦中に居るあんたが側に居れば、いずれそうなる可能性はとても高い」
ヘンゼル「だったら、あんたがまだ何もしていなかったとしてもここで始末しておく必要がある。いや、あんたを始末しておかないと僕の妹が傷つく」
キモオタ「ヘンゼル殿…!お主は少々、考えが過激というか…何故そんなに悪い方に考えるでござるか、いささか乱暴な考え方ではないですかな?」
ヘンゼル「黙ってよ、なんであんたが僕に説教してるんだ。そんな風に思えるって事は、随分とこの世界は平和なんだね。羨ましいよ、平和ボケできるあんたが」
ヘンゼル「あんたにはわからないだろうけどさ…最悪な事態っていうのはね、一度起きてしまうと全て飲み込んでしまうんだよ」
ヘンゼル「わかるかな?大切な思い出も、妹の笑顔も、大切な家族も、何もかも全てだ」

180 :◆oBwZbn5S8kKC :2015/07/19(日)22:42:37 ID:Age
ヘンゼル「最悪の事態ってのは取り返しがつかないから最悪なんだ。だからそもそも最悪の事態に巡り合わないように普段から注意深く生きないといけない」
ヘンゼル「僕達の大嫌いな現実世界に住む大人の男、そしておとぎ話にかかわりを持っていて、しかもあいつの働く図書館によく来る……あんたは僕の家族に災いを招く疑いがある、だから罰する。それだけのことだよ」
キモオタ「ヘンゼル殿に何があったのか、お主のおとぎ話の内容を知らない我輩にはわからないでござるが……何故そうまでして不安要素を排除しようとするんですかな?」
ヘンゼル「誰だって不幸になりたくないし、好きな人が苦しむのは見たくない。違う?」
キモオタ「ヘンゼル殿の場合は少々過剰に思えますぞ。不幸にならない為に……まだ悪人か善人か解らぬ相手を攻撃するなど間違ってますぞ」
ヘンゼル「あんたはまぁ、そう言うしかないよね。僕の考えを否定しなけりゃ僕に始末される事に納得した形になってしまうもんね」
キモオタ「我輩の事はこの際どうだっていいでござる。しかしですな、なりふり構わず疑わしい者を排除して……そんな事をして不幸を避け続けてもグレーテル殿は……」
ヘンゼル「喜ばない。って言いたいの?あんたさぁ、グレーテルの何なの?兄の僕よりあいつの事わかってるつもりなの?気持ち悪いな、そういう事言うのやめてよ」
キモオタ「いや、喜ばないでござろう!グレーテル殿はヘンゼル殿の事が大好きなんでござるよ、大好きなお兄ちゃんが自分の為とはいえ他人を傷付ける事をしていて喜ぶわけがないですぞ!」
ヘンゼル「……だからやめろって言ってるだろ」グイッ
ゴゴゴゴゴ
ヘンゼル「お前にグレーテルや僕の何がわかるんだよ」ギリッ
ヘンゼル「現実世界の大人が、僕達の事をわかったふうに口にするなよ……!」ググッ
キモオタ「…お主は言ったでござるよ、誰だって好きな人が苦しむのは見たくないと!それはグレーテル殿だって同じでござろう、ヘンゼル殿が苦しむ姿を見たくないのでござるよ!」

181 :◆oBwZbn5S8kKC :2015/07/19(日)22:44:15 ID:Age
ヘンゼル「仮にそうだとして、あんたを始末する上で僕が苦しむ事ってある?あんたが内臓ぶちまけようと死んでしまおうと、僕は苦しまないけど?」
キモオタ「嘘でござるな……苦しむからこそヘンゼル殿は魔力を連発できないのでござろう?」
ヘンゼル「……」
キモオタ「お主が最初に我輩に魔力を撃ちこんだ時は右手…おそらくきき腕でござる。しかし、次に魔力を圧縮した時は左手でござった」
キモオタ「同じように魔力を圧縮していた魔法使い殿は何度もきき腕から放っておりましたからな。ヘンゼル殿の場合だけ何か腕を切り替えねばならぬ理由があるのでござろう、おそらく…一度魔力を放つとしばらくはその腕からは出せないでござるな?」
ヘンゼル「正解だね……でも左腕でも十分に魔力を放出する事は出来る、加減なんかしなけりゃあんたを黙らせることだってできるんだよ」
キモオタ「同じ腕から出せない理由は……魔力の放出はヘンゼル殿にも大きな負荷を掛けるからではないですかな?痛みを伴うほどの負荷……違いますかな?」
ヘンゼル「だから、なんなの?『お前は魔力を使うとダメージを負うから辛いだろ?だから俺を攻撃するな』そういう事?」
ヘンゼル「狡猾だよね大人は、そんな風にあたかも相手を気遣うふりして本当は自分が助かりたいだけなんだもんね。見ていて腹が立つよ」
キモオタ「お主がどう思おうと勝手でござるが、自分の身体を気づ付けてまで魔力を放出して…そんな風にグレーテル殿を幸せにしてもあの子は喜ばないでござるよ!」
ヘンゼル「グレーテルの事知ったふうに口にするの、やめろって言ってるのにあんたは人の話を聞かないよね」
キモオタ「そうかもしれませんな、ですがヘンゼル殿の我の強さも相当ですぞ…!」
ヘンゼル「グレーテルが喜ぶとか喜ばないとか関係ないよ。あいつが幸せになればそれだけでいい」
ヘンゼル「幸せだという結果が残れば、あんたが死のうが僕が死のうがその過程はどうだってかまわない。グレーテル達が笑っていられれば、それだけでいい」

182 :◆oBwZbn5S8kKC :2015/07/19(日)22:45:55 ID:Age
キモオタ「……何故そこまでヘンゼル殿はグレーテル殿の幸せにこだわるのでござるか」
ヘンゼル「兄が妹の幸せを願うのは当然さ、違う?」
キモオタ「我輩には、他に事情があるように見えますがな?」
ヘンゼル「……さぁどうだろうね、どちらにしろあんたに教える必要はないよ」
ゴゴゴゴゴ
ヘンゼル「どうせ言ってもわからないだろうしね。あんたを含めてこの世界の連中はどいつもこいつも平和にのうのうと生きてる」
ヘンゼル「そんな奴らにはわからないよ、僕達がどれだけ辛い思いをして生きてきたかなんて」
キモオタ「ヘンゼル殿、お主は……」
ヘンゼル「……話し過ぎたね、グレーテルやあいつが待ってる。あんたはもう僕の家族に近寄れないようにしないとね、あの図書館にも二度と来れないように」ゴゴゴゴゴ
キモオタ「……っ!」
バッ
グレーテル「ヘンゼルお兄ちゃん……ダメ……」ギュッ
ゴゴゴ……シュウゥゥ
ヘンゼル「駄目じゃないか。男子トイレに入って来るなんて、グレーテルはいつからそんなはしたない子になったの?」
グレーテル「……お兄ちゃん、今手加減……してなかった。キモオタお兄ちゃんの事……殺そうとした……」ボソボソ
グレーテル「約束……破っちゃ駄目なの……雪の女王さまとの約束……破っちゃ駄目……」ギュッ

183 :◆oBwZbn5S8kKC :2015/07/19(日)22:47:37 ID:Age
ヘンゼル「僕がこいつを殺してもグレーテルが雪の女王に喋らなきゃ、バレやしないさ。それに女王との約束は『よほどの事がない限り魔力を使うな』って事だろ?だからこれは約束を破ったうちに入らないよ」
ヘンゼル「僕にとってはお前達が辛い思いをするかもしれないって事は、よほどの事なんだ」
グレーテル「でも……駄目よ。私は何もされてないよ……それにキモオタお兄ちゃんは……お姉ちゃんを傷付けないって約束してくれたよ……?」
キモオタ「グレーテル殿…お主は我輩の言葉を信じてくれるのでござるな……ありがたいですぞ!」
ヘンゼル「グレーテル、お前はこいつの言う事なんか信じるの?なんで?」
グレーテル「……信じる。約束したから……約束したのに私が信じなきゃ……キモオタお兄ちゃんも私を信じてくれない……だから私は信じるの……」ボソボソ
ヘンゼル「グレーテル、なんでわかんないの?こいつは現実世界の大人だ、僕達をあんな目にあわせた奴らと同じなんだよ?」
ヘンゼル「大人はいつだって僕達を苦しめる、今までだって散々見てきただろ。この人だけは大丈夫…なんて信用なんかしたら、グレーテルが傷つくだけだよ」
グレーテル「私も……大人は……嫌い。でも、お姉ちゃん言ってたよ……キモオタお兄ちゃんは私と友達になれそうだって……」
ヘンゼル「あいつは騙されてるんだよ、大人ってやつは外面だけは良いんだから。世間体とか立場とか、そういう事ばっかり重要だと思ってるからね」
ヘンゼル「こいつだってそうだ、ヘラヘラと取り繕っているから外面は立派なのさ。だからあいつは騙されてるんだよ、大人なんかみんな嘘付きなのに」
グレーテル「……そうなの……かな……?」
キモオタ「ヘンゼル殿……お主やたらと大人を目の敵にしておりますが……何があったのでござるか?」
ヘンゼル「あんたに教える必要はないでしょ……流石にグレーテルに無残な死体を見せたくないから、命は助けてあげるよキモオタお兄さん」
ヘンゼル「でも許すわけじゃないよ?見逃してあげるから、だからもう僕と家族には一切係わらないで」


184 :◆oBwZbn5S8kKC :2015/07/19(日)22:50:02 ID:Age
キモオタ「……それはできませんな」
ヘンゼル「見逃してあげるって言ってるのに、そんなに魔力撃ち込まれるのが気にいったの?」ゴゴゴ
キモオタ「いや、そうではなくですな。我輩の友人に父親に虐待を受けていた子がいましてな…ヘンゼル殿が大人を嫌っている理由がもしも同じく両親からの虐待ならば、我輩は見過ごせないでござるよ」
ヘンゼル「それはおせっかいかい?それとも体裁を保つため?」
キモオタ「おせっかいかもしれませんな、しかしあの子は虐待を受けながらも誰にも助けを求められなかったでござる、それと同様にお主らも助けを求める事が出来ないのなら……」
ヘンゼル「余計な御世話だ、僕達は虐待なんか受けてない」
グレーテル「……」
キモオタ「グレーテル殿……本当でござるか?」
グレーテル「……」
ヘンゼル「行こう、グレーテル。こいつにはもう構わないようにしよう、碌なことにならない」
グレーテル「……私とお兄ちゃんは……いらないって、言われたの……」
ヘンゼル「…よせ、グレーテル」
キモオタ「いらない…ですと?」
グレーテル「私とヘンゼルお兄ちゃんは……最初のパパとママに捨てられたのよ……」
グレーテル「みなしご……なのよ。私もお兄ちゃんも……」
キモオタ「孤児……それでヘンゼル殿はそれで大人を毛嫌いしているでござるか…」

185 :◆oBwZbn5S8kKC :2015/07/19(日)22:53:08 ID:Age
ヘンゼル「余計な事を聞かないでよ、グレーテルは素直なんだ。それになんで僕達の事を知りたがってるの?付け入る隙でも探してるの?」
キモオタ「違いますぞ、ただお主が憎むほど大人はみんな悪い奴って訳ではないのでござるよ。だからお主の力になれるならば我輩は協力しますぞ」
ヘンゼル「…憐れみなんていらない、僕が欲しいのはそんなもんじゃない」
グレーテル「ヘンゼルお兄ちゃん……私達に協力してくれるって……言ってくれてるよ?」
ヘンゼル「グレーテル、喋りすぎだ。それと他人の言葉を簡単に信じちゃ駄目だよ、こんなの嘘に決まってる」
キモオタ「憐れみではござらんよ、それにお主らが辛い思いをしているのならば…少しくらい大人に頼ってもいいのではないですかな?我輩でよければ力になりますぞ?」
ヘンゼル「大人を頼れ?それをあんたがいうの?現実世界の大人のあんたが?」
ヘンゼル「ねぇ、お兄さん。あんたは毎日お湯みたいなスープだけで過ごした事があるの?着の身着のままケダモノだらけの森に捨てられた事があるの?一か月近くも監禁された事があるの?」
ヘンゼル「殺意を抱くほど追いつめられた事があるのか?妹が日に日にやつれてどんどん暗くなっていくのを、ただ納屋の隙間から見てるだけしか出来ない…そんな経験があるのかよ」
キモオタ「いや…それは、無いでござるけど……」
グレーテル「ねぇ……お兄ちゃん……私ね、もうあの時の事……気にしてないよ……?」
ヘンゼル「なぁ、キモオタお兄さん。あんたは今までいろんな世界を旅して、いろんなおとぎ話の仲間に恵まれたんだろうけどさ……僕達はその連中とは違う」
ヘンゼル「僕は憎んでる。おとぎ話を作った作者を許さない……自分達のおとぎ話を盛り上げる為に僕達に貧しい暮らしをさせて、グレーテルをあんな目にあわせた連中を……」
ヘンゼル「あのおぞましい人柱とかいうしきたりを作った大人を、お千代にあんな残酷な仕打ちをした現実世界の連中を僕は絶対に許さない……行こう、グレーテル。もうこいつと関わるのは本当に終わりだ」
グレーテル「……うん、じゃあね。キモオタお兄ちゃん……」
スタスタ
キモオタ「作者を……許さない。でござるか……」

186 :◆oBwZbn5S8kKC :2015/07/19(日)22:54:47 ID:Age
○○ホール 世界の童話展会場 廊下
グレーテル「お兄ちゃん、腕……痛い?私の魔法……使う……?」ボソボソ
ヘンゼル「大丈夫だよ、一度使っただけだからしばらくは痛むけど治癒魔法を使うほどじゃない。それに、こんなことでグレーテルに魔法を使わせられないよ」
グレーテル「そっか……私はお兄ちゃんが居ないと魔法使えないから……お兄ちゃんの為に使うなら……いいかなって……思ったの……」
ヘンゼル「駄目だよ、グレーテルは魔法を使っちゃ駄目だ。女王もカイの奴も言っていたろ?」
グレーテル「……わかった……でも大丈夫よ……お兄ちゃんが魔力を分けてくれないと、私は魔法使えないもんね……」
グレーテル「私には……魔法を使う事は出来るけど……身体に魔力が流れてないもんね……」
ヘンゼル「……ごめん、グレーテル。この話はおしまいだ。とにかく、僕は治療なんか必要ないから心配しないで」ナデナデ
ヘンゼル「それより、グレーテルはどうしてあそこにいたの?」
グレーテル「えっとね……お兄ちゃんの事……迎えに行こうと思ったの……そしたら大きな音が聞こえて……もしかして、キモオタお兄ちゃんに何かしてるかな……って思ったの……」
ヘンゼル「人気の少ないところを選んだつもりだったけど……もう少しわからないところで始末すればよかった」
グレーテル「駄目よ……雪の女王さまとの約束。現実世界ではむやみに魔力や魔法を使わない事……現実世界の人に危害を加えない事……だよ……?」
ヘンゼル「僕だって守りたいさ、女王は僕達によくしてくれたし。でも女王との約束よりも優先したいものだってある」

187 :◆oBwZbn5S8kKC :2015/07/19(日)22:56:58 ID:Age
グレーテル「……もしも、女王さまにバレたら……きっとお仕置きだよ……?」
ヘンゼル「それは嫌だね、女王のお仕置きは身体だけじゃなくて精神的に冷えてくるからね……なんなんだろうねあれ……」
グレーテル「……大丈夫、約束守ってたら、女王さまは優しいままよ……だからちゃんと約束守ろう……そしたらお菓子くれるよ……冷たくて甘いお菓子……」
ヘンゼル「またグレーテルはお菓子お菓子……でも、この世界の大人は女王みたいに優しくないんだ。さっきみたいに易々と信用しちゃ駄目だよ」
グレーテル「……でも、本当にキモオタお兄ちゃんは悪い大人なの……?」
ヘンゼル「その考え方がまずおかしいよ、大人は悪い奴しかいない。あいつだってそうさ。女王やパパさんは例外中の例外なんだから」
ヘンゼル「そうじゃなきゃ、現実世界の作者どもはおとぎ話を盛り上げる為だけに僕達を貧しい兄妹にしないだろ?みなしごにだってしない、魔女に捕まるなんて運命にもしない」
ヘンゼル「なのに僕等を貧しいみなしごにして、魔女に捕えられて酷い目に合う運命に決めた。そんなこと、悪いやつじゃなきゃしないだろ?」
グレーテル「……うん、良い人はそんな酷い事しない……私が作者だったら……みんな幸せにするの……そういうおとぎ話の方が私、好きよ……」
ヘンゼル「グレーテルは優しい子だね。グレーテルは絶対に幸せになれるよ、もうあの忌々しい【ヘンゼルとグレーテル】は無くなってるんだから、僕達は運命に縛られない」
ヘンゼル「だから絶対に幸せにする……絶対に……!」
グレーテル「うん、そうだよね……ヘンゼルお兄ちゃん、早く行こう。待ってるよ、お姉ちゃん……」
ヘンゼル「心配させたらあいつに悪いからね。変な輩に声掛けられでもしていたら面倒だ、少し急ごうか」

188 :◆oBwZbn5S8kKC :2015/07/19(日)22:59:23 ID:Age
・・・
小柄な男「ったく、人の集まるところなら魔力持ちの人間もいるだろうとわざわざこんなところまで来たがいいがよぉ……」
小柄な男「どうなってんだこの世界の魔力の希薄さは、とんだ期待はずれだな……この様子だと今日の成果は朝殺した娘一人だけか……」
小柄な男「どこかにバカでかい魔力持ってるやつがいねぇかなぁ……そうすりゃあ話は早いんだがよ。そんなうまい話もねぇか……」
ブワァッ
小柄な男「魔力の気配だ!それも……なんだこれ、バカでかい魔力……!おい、一体どこだ!?どこのどいつがこんな魔力を…」
グレーテル「……ヘンゼルお兄ちゃん、待って……歩くの、ちょっと早いよ……私を置いて行かないで……」トテトテ
ヘンゼル「っと…ごめん、少し急ぎ過ぎたね。ゆっくりでいいよ、慌てなくて良いんだグレーテル」ナデナデ
グレーテル「うん……ありがと、ちょっとだけ早く歩けるように頑張る……」
スッ
小柄な男「おいおい……どういうことだこりゃあ?」コソコソ
小柄な男「きき間違いじゃねぇ、ヘンゼルとグレーテルって呼び合ってたぞあのガキ共。単なる偶然か?同じ名前だっていうオチか……?」
小柄な男「いや、あのバカでかい魔力……どっちが持ってんのかまでハッキリしなかったけどよぉ、あれを頂かない手はねぇよなぁ…!よし、奪っちまおう」ニタァ
小柄な男「となると、まずは様子を窺うか……あいつらはおとぎ話の世界の住人、もしかしたら俺様の名前を知ってるかも知れないからな、それに魔法だって使えるだろうしなぁ」
小柄な男「慌てず慎重に、策を練ってから奪おうじゃねぇか。なに、デカイ魔力を持っていてもあいつ等はガキだ……この俺様が負けるわけねぇ!」クックック

189 :◆oBwZbn5S8kKC :2015/07/19(日)23:01:37 ID:Age
○○ホール トイレ前のベンチ
シュオオォォォォ
キモオタ「いやはやwww痛みがかなり楽になってきましたぞwww申し訳ないですなwww桃太郎殿wwwわざわざ出向いてもらってwww」
桃太郎「気にする事は無い。しかし、相当深い傷だったが…その童は相当おとぎ話の作者が憎いのだろう、故に現実世界の大人にも牙をむく」シュオォォォ
キモオタ「そこなんでござるよねぇ……作者が憎い、でござるもんなぁ……桃太郎殿も作者が憎いとかあるでござるか?」
桃太郎「作者とはおとぎ話の主人公の運命を定めし者だったな……しかし拙者のおとぎ話【桃太郎】は大団円を迎える物語、あまり深く考えた事は無い」
キモオタ「赤鬼殿やマッチ売り殿の運命は、めでたしとはいえませんからなぁ……そういう物語の主人公から見たら、現実世界の作者は『自分達を苦しめる輩』に見えてしまうのでござろうか……」
桃太郎「ふむ…赤鬼はその様な素振りは見せぬが、そこはやはり齢の問題もあるであろう。赤鬼は立派な大人だが、そのヘンゼルという童は赤ずきん程の年齢なのだろう?」
キモオタ「そうですな。しかし、やはりほうっておけませんなヘンゼル殿とグレーテル殿」
桃太郎「これほど酷い傷を負わされたというのに…やはりお主は現実世界でも変わらぬな」フフッ
キモオタ「なんというか…我輩は元のおとぎ話を知らないでござるけど、両親に蔑ろにされるとか食べる者にも困るとか貧しい生活とか…マッチ売り殿と重なる部分が多いのでござるよ、あの二人」
キモオタ「マッチ売りは自分の運命が誰かの幸せの為に役立つなら、と受け入れたでござるが。ヘンゼル殿は逆で自分達の運命を誰かの幸せの為に利用されるのが許せないという考えで……」
キモオタ「どっちが正しいとかではないでござるけど、我輩にはほうっておく事は出来ませんな…自分を犠牲にして誰かを幸せにするというのが上策と言えないのは【泣いた赤鬼】で学びましたしな」
桃太郎「ならば、その童等と話すしかあるまい。話したくない係わりたくないと言われようとも、話さねばわからぬ事、伝わらぬ事も多い」
桃太郎「童等が拒もうと、お主の想いを伝えるしかあるまい。なぁ、キモオタよ……優しきお主の事、例えまた傷を負わされようと諦めるつもりはないのであろう」
キモオタ「まぁwwwそうですなwww子供たちの幸せはマッチ売り殿だけの願いでは無いのでwwwもしもボッコボコにされたらまた治癒頼むでござるwww」コポォ
桃太郎「うむ、任せよ。拙者は桃より生れし桃太郎、魔を払い邪を清めるなど容易い。遠慮なく頼るがいい」フフッ

190 :◆oBwZbn5S8kKC :2015/07/19(日)23:03:51 ID:Age
世界の童話展 入口近く
司書「それじゃあ、キモオタさんは帰っちゃったの?」
ヘンゼル「そうなんだよ、サイン貰った後トイレに行ってたんだけど急に連絡があったみたいで…なんだか急ぎの様だったみたいだよ?」
司書「そっか…でも急な用事なら仕方ないよね。キモオタさんも楽しみにしてたと思うけど、どうにもならなかったのかな」
ヘンゼル「さぁ、でも二人に言わずに帰るくらいだから相当急いでたんだと思うよ」
司書「残念だけど、私達だけで楽しんでまた今度感想を聞かせてあげよう。ね、グレーテル」ニコニコ
グレーテル「……うん、でも、図書館に来てくれたらね……」ボソボソ
司書「……?」
ヘンゼル「さぁ、ここで話してても仕方ないから行こうよ。キモオタお兄さんの分までグレーテル達が楽しめばいいんだから」
ドスドスドスドス
キモオタ「ちょwww待っていただきたいwwww我輩もwww行きますぞwww」ドスドスドス
ヘンゼル「あいつ……っ」ボソッ
グレーテル「……キモオタお兄ちゃん……大丈夫なの……?」
キモオタ「平気ですぞwwwさぁ待たせて申し訳ありませんでしたなwwwでは行くでござるかwww」コポォ
司書「キモオタさん、なんだか急用ができて帰らなくちゃならなくなったってヘンゼルから聞いてたんですけど…平気なんですか?」

191 :◆oBwZbn5S8kKC :2015/07/19(日)23:06:33 ID:Age
キモオタ「急用?あ、あーwww急用!そうでしたなwww突然連絡がありましてwww帰らないといけなくなったでござるけどwww」
ヘンゼル「だったら、無理に伝えに来なくても良かったんだよ?僕が代わりに伝えたから、お兄さんはもう帰ったってね。だから僕達に気を使わずに帰っても良いんだけど?」
キモオタ「ご安心をwww確かに急用が入ったでござるがもう解決したでござるwwwたいしたことではなかったのでwww」コポォ
司書「そうなんですね!だったら一緒に見に行きましょう、実は早く見に行きたくてワクワクしていたんですよ」フフッ
キモオタ「それは申し訳ありませんでしたなwwではヘンゼル殿、グレーテル殿行きますかな!はぐれては事ですからな、ヘンゼル殿は我輩と手をつなぐでござるかwww」コポォ
司書「そうですね、迷子センターもないでしょうから。それじゃグレーテルは私と手をつないでいこうか」ニコニコ
グレーテル「うん……一緒に行く……」ギュッ
ヘンゼル「お兄さんさ……学習能力、無いの?」ボソッ
キモオタ「ちょwwwありますぞwww人をバカのように言うのはやめていただきたいwww」ボソッ
ヘンゼル「どんな魔法で治癒したのか知らないけどさ、僕に触れられる事がどういう事か身をもって知ったはずだよ。それなのに手をつなぐなんて言うのはバカでしょ。それ以前にあんたと手をつなぐなんてお断りだけどね」ボソッ
キモオタ「ドゥフフwww我輩もノンケですからなwww」コポォ
ヘンゼル「そこまでしてあいつやグレーテルを不幸にしたいの?そっちがその気なら、僕は構わない……見逃してあげたのに、必要ないというなら頭でも落としておこうか?」ボソッ
キモオタ「またバイオレンスなwww彼女等を不幸にするつもりもなければヘンゼル殿と敵対するつもりもないでござるwww」
ヘンゼル「だったらどういうつもり?返答しだいじゃ、次は怪我じゃ済まないけど?」
キモオタ「我輩たちは童話展に来たのでござるからwwwこのイベントを楽しむ以外のミッションなど存在しませんぞwww」コポォ
ヘンゼル「どういうつもりか知らないけど……随分余裕そうだね。まぁいいさ、隙を見せれば次は治せないくらいにあんたを壊せばいいだけの話だからね」
キモオタ「ちょwww物騒ですぞwww早くしないと二人において行かれますぞwww」コポォ

192 :◆oBwZbn5S8kKC :2015/07/19(日)23:08:49 ID:Age
コソコソ
小柄な男「……」コソコソ
小柄な男「おとぎ話【ヘンゼルとグレーテル】……あいつ等が何故この現実世界に居るのか知らねぇけど、俺様は運がいい」
小柄な男「あの眼鏡の女とデブは現実世界の人間か、だがそりゃあ好都合だ。少なくとも俺様の名前を知っている可能性があるのはあの二人だけ」
小柄な男「となると問題は二人まとめて誘拐するのは難しいってことだな、今日は俺様のしもべは一緒じゃねぇしな」
小柄な男「だが…もう一つの問題、あいつ等に名前を当てられる可能性があるってのも同時に解決する良い方法がある」
小柄な男「ここはひとつ、あの娘に餌になってもらおうか。どうやら随分と懐かれているみたいだからなぁ」
小柄な男「もうすぐあのでかい魔力が手に入るのか……クックック」
小柄な男「だが焦りは禁物だよなぁ、狙うのはもっと後だ。あの現実世界の娘が一人になった時を狙おうじゃねぇか」
小柄な男「魔力も何もない娘一人捕まえるのには苦労しないだろうしな」
小柄な男「つくづく人質ってのは効率がいい……」クックック
小柄な男「さて、あの娘を連れ去って……それを餌にあの二人を呼び出そうか、だがやっぱり焦っちまったらよくねぇもんな」
小柄な男「ここは遠くから観察して機会をうかがうとするか……」

193 :◆oBwZbn5S8kKC :2015/07/19(日)23:10:11 ID:Age
今日はここまでです
【ヘンゼルとグレーテル】の内容は次回。多分そんなに間開かないです、明日か遅くても火曜日には…!
ヘンゼルとグレーテル。とある消滅したおとぎ話編 次回に続きます

195 :名無しさん@おーぷん :2015/07/20(月)00:41:08 ID:ior
乙です!!
しかし、あれだけ叩きのめされても冷静さを失わないキモオタの精神力は
半端ないなぁ・・・。

196 :名無しさん@おーぷん :2015/07/20(月)01:53:14 ID:yQH
乙です!
キモオタがカッコよく見えましたwww

208 :◆oBwZbn5S8kKC :2015/07/21(火)23:02:20 ID:v9g
世界の童話展 
・・・
キモオタ「いやはやwwwなかなか面白かったでござるなwww童話展www侮れませんなwww」コポォ
司書「キモオタさんもそう思いますよね!やっぱり童話は良いですよね。お誘いしてよかったです」ニコニコ
キモオタ「友人が主人公の…いや、知ってるおとぎ話が多くてついのめり込んでしまいましたぞwwwいろいろ勉強になりましたなwww」コポォ
キモオタ(ただし、消えてしまったおとぎ話も気になってしまいましたな……童話展ではいろんなおとぎ話の内容や成り立ち、作者について展示されていたでござるが…)
キモオタ(当然というか、展示物には【ピーターパン】も【赤ずきん】も一切ありませんでしたからな。ヘンゼル殿とグレーテル殿が主人公の【ヘンゼルとグレーテル】もどこにもなかったでござるし)
キモオタ(おとぎ話の内容がわからんことには、二人の気持ちを察する事も難しいですしな。戻ったらシェヘラザード殿か赤ずきん殿に聞いてみますかな、【ヘンゼルとグレーテル】の内容を)
キモオタ(しかし、事情はわからぬでござるがあの二人の大人に対する憎しみは……ヘンゼル殿の作者への憎しみは……)
ーーグレーテル「私も……大人は……嫌い」
ーーヘンゼル「僕は憎んでる。おとぎ話を作った作者を許さない……」
キモオタ(なんとか出来ぬでござるかねぇ……ヘンゼル殿もグレーテル殿も憎しみなんて持たずに幸せになれる手段が……おとぎ話の作者も悪意を持ってそういう話の筋にしたわけではないでござろうし)
グレーテル「……キモオタお兄ちゃん?……どうしたの?……」
キモオタ「おおっとwwwちょっとボーっとしてましたなwwwあまりに感動し過ぎたからでござろうかwww」コポォ
司書「感動のあまりボーっとしちゃうのわかります、興奮冷めやらぬって感じで……キモオタさんに時間があれば少しどこかのカフェでお話ししませんか?私もこの感動を分かち合いたいです」ワクワク

209 :◆oBwZbn5S8kKC :2015/07/21(火)23:04:38 ID:v9g
キモオタ「いいですなwwwこの近くならば歩いて行ける距離にドトールがありましたぞwwwそこでどうですかなwww」
ヘンゼル「……それもいいけどさ、僕は今日はなんだか疲れたよ。だから今日はこれで解散にしない?グレーテルは平気?」
グレーテル「私は平気……でもヘンゼルお兄ちゃんが疲れたなら……今日は寄り道はやめて帰ろう、無理させちゃいけないよね……お姉ちゃん……?」
司書「そっか、気がつかなくてごめんねヘンゼル。あんまりこういう場所慣れてないから疲れちゃったかな…?」
ヘンゼル「そうかも、ごめんね。そういうことだから今日はここで解散にしよう。いいよね、キモオタお兄さん?」ジッ
キモオタ(ヘンゼル殿の視線がwwwもう係わるなという事なのでござろうがwww我輩はおせっかいやきのキモオタですからなwww)
キモオタ「そうですなwww今日はこれでお開きにするでござるかwwwそしてまた図書館で会いましょうなwwwヘンゼル殿wwwグレーテル殿www」コポォ
ヘンゼル「……」
キモオタ「我輩たちはもう友達でござるからなwww困りごとがあれば何でも言ってくだされwww手伝いますぞwww力になりますぞwww」コポォ
グレーテル「……お手伝いしてくれるって、お兄ちゃん」
司書「うふふ、仲良くできそうでよかったね。でも二人ともキモオタさんにあまり迷惑かけないようにね」ニコニコ
ヘンゼル「……帰ろう。キモオタお兄さん、僕も次会う時が楽しみだよ。次は最後までやるよ、今日みたいに中途半端にならないように」
司書「……?ではキモオタさん、私達はここで。また図書館で会いましょう」ニコッ
グレーテル「……ばいばい、キモオタお兄ちゃん……」フリフリ
キモオタ「デゥフフwwwそれではまた図書館でwww」コポォ
・・・

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