キモオタ「我輩がおとぎ話の世界に行くですとwww」ティンカーベル「そう」 ヘンゼルとグレーテル編
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487 :◆oBwZbn5S8kKC :2015/08/18(火)23:28:03 ID:C93
弥平「ん?どうしたヘンゼルぼーっとして、考えごとか?」
ヘンゼル「ああ、大丈夫だよ。それよりこれ隣のおじさんに頂いた、畑で取れた菜っ葉だって。お礼は言っておいたよ」スッ
弥平「おっ、それじゃあ今夜は贅沢に菜っ葉粥だな!さぁて、収穫した野菜積んで帰るか…よっこいっしょっくらぁ!」ググッ
ヘンゼル「ちょっと欲張り過ぎじゃない?二回に分けた方がいいと思うけど…」
弥平「平気平気、これくらい持てなくてどうすんだ!男が廃るってもんだぜヘンゼル!」グイッ
グキッ
弥平「……っぬぉぉっ!」ドサッ
ヘンゼル「パパさん…?どうしたの?」
弥平「いたた…すまんヘンゼル、しくじっちまった。ちょっと腰やっちまったみたいだ…すまねぇが野菜を荷車に運んでくれ」
ヘンゼル「ほら、無理するからだよ。男廃っちゃってるじゃないか」クスクス
弥平「笑うな笑うな、時にはこういう失敗だってある。それを寛容に受け止められるのが男ってもんよ」ハッハッハ
ヘンゼル「それ自分で言っちゃフォローにもなんにもならないよ。あとは僕が片付けるから座ってなよ」フフッ
タッタッタ
グレーテル「大変なの……お兄ちゃん……弥平パパ……!」ハァハァ
488 :◆oBwZbn5S8kKC :2015/08/18(火)23:29:37 ID:C93
弥平「おいおい、どうしたんだ?グレーテルが慌てるなんて珍しいぞ?」
ヘンゼル「何かあったんだね?落ち着いて話して、グレーテル」
グレーテル「あのね……私とお千代ちゃん……隣のお婆ちゃんとお裁縫のお仕事……してた……でも、お千代ちゃん……突然倒れちゃったの……」
弥平「なんだと…っ!お千代は!お千代は無事なのか、グレーテル!」バッ
グレーテル「お婆ちゃんがお家に運んでくれた……今、お婆ちゃんが見てくれてるけど……凄い熱だった……すぐにお父さん呼んできなさいってお婆ちゃんに言われた……」
弥平「お千代…!待ってろよ、オラがすぐに駆けつけて一緒に居てやるからな!」ググッ
ビキッ
弥平「ぬぐっ、腰が…!クソッ、なんだってこんな時に…!」
ヘンゼル「パパさん落ち着いて、隣のお婆ちゃんが見てくれてるなら大丈夫だよ。無理せず歩いて行こう、ここでパパさんまで動けなくなったら大変だよ」
弥平「そうだよな…子供に諭されてどうするんだって話だ、落ち着かねぇと……」
ヘンゼル(パパさんがこんなに動揺するなんて…初めて見た。やっぱり、お千代の事が心配なんだ)
弥平「グレーテル…すまねぇけど、隣のおじさんに頼んで収穫物運んでくれるように頼んでくれ。お千代の事も説明してくれ」
グレーテル「わかった……お願いしてくる……」タッタッタ
弥平「ヘンゼル、お前はオラと一緒に来てくれ。肩を借りねぇと歩けそうにねぇから」
ヘンゼル「わかった、行こう。お千代の事、僕も心配だ」
489 :◆oBwZbn5S8kKC :2015/08/18(火)23:30:57 ID:C93
とあるおとぎ話の世界 弥平の家
バタバタバタ
弥平「お千代!大丈夫か、お千代!」ガラガラッ
隣のばあさん「おぉ、弥平さん。ほれお千代ちゃんや、父ちゃん帰ってきてくれたぞ、もう寂しく無いのぅ」ナデナデ
お千代「あっ…父ちゃん…?」ゼェゼエ
弥平「おお、父ちゃんはここにいるぞ!わかるか、お千代!」
お千代「心配かけてごめんね、父ちゃん……本当は今朝からちょっと身体が熱くて、心配かけたくないから黙っとったけど。もう我慢できなかったんよ……」ニヘッ
弥平「何言ってんだお前は、黙ってたら辛い事がわからんだろ!我慢してどうするんだお千代!」
お千代「でも、父ちゃんにもヘンゼルにもグレーテルにも心配かけるでしょ…?それが嫌だったんよ……」ゼェゼェ
弥平「家族なんだから心配するに決まってるだろうが!そんな事心配してどうするんだお前……」
隣のばあさん「コレッ!あんた、娘の無事な姿見て安心したのはわかるけども、寝込んどる娘に大きな声出しちゃいかんじゃろっ!」
弥平「…そうだよな、すまねぇ。お千代」
お千代「ううん……うちが無理したのがいけなかったんよ、ごめんね。父ちゃん」ゼェゼェ
弥平「いいや、気にするなお千代。お前を働かせすぎたオラの責任だ、ゆっくり休め。な?」
お千代「うん、ごめんね…夕飯のお手伝いも後片付けも出来ないけど……元気になったら、たくさんお手伝いするんよ……」
弥平「お前…今は何も心配するなお千代、父ちゃんがついてる」
弥平「お前が元気になるまで側に居てやるからな。お千代」
490 :◆oBwZbn5S8kKC :2015/08/18(火)23:32:44 ID:C93
グレーテル「ただいま……おじさんにお願いしてきた……任せてくれっていってた……」カラカラッ
ヘンゼル「グレーテル、お帰り。お千代とパパさんはそっとしておいてあげよう、僕達で夕飯の準備しようか」
隣のおばさん「……ヘンゼル坊にグレーテルちゃんや。ちょっといいかのぅ?」
ヘンゼル「何?もしかして、お千代の事?」
隣のおばさん「そうじゃ…お千代ちゃんのあの様子はただの疲れや風邪じゃあありゃあせん」
グレーテル「もっと……重い病気って事……?」
隣のおばさん「かもしれん。今は弥平さんの前だで随分と気丈にふるまっておったけどな、ここに運んで来た時はそりゃあ口も利けんほど弱っておった」
ヘンゼル「…すぐにでも医者を呼んだ方がいいのかな?」
隣のおばさん「呼べるのならそうするべきじゃが…弥平さんには難しいじゃろ…」
ヘンゼル(その通りだ。パパさんには医者を呼ぶようなお金は無い。何とか僕達の看病でお千代の病気を治さなきゃいけない)
隣のばあさん「すまんことだが、銭の相談に乗れるような余裕はうちにもないでな……他の事なら何でも言えばええ、畑の事もうちの息子に任せりゃあええ」
ヘンゼル「ありがとう、お婆さん。この事はパパさんに伝えておくよ、お千代の事運んでくれてありがとう」
隣のばあさん「なんて事無いだ、そんな事。ええかい、ヘンゼル坊、グレーテルちゃん。あんたら兄妹が協力してお千代ちゃんの事、看病してやるんじゃぞ」
グレーテル「うん……頑張って、お千代ちゃんの病気……治してあげなきゃね……」
ヘンゼル「そうだね、またお千代の好きな鞠つきが出来るように…出来る限りの看病をしよう」
・・・
491 :◆oBwZbn5S8kKC :2015/08/18(火)23:36:00 ID:C93
それから数日後
ザーザー ザーザー
グレーテル「雨……ずっと振ってるね、お兄ちゃん……」
ヘンゼル「ああ、畑に行けないからその分お千代の側に居られるのは良いけど…」
弥平「……」
お千代「……」ゼェゼェ
ヘンゼル(お千代が倒れてから数日経った。あの日からずっと雨が振り続けている)
ヘンゼル(昼間はなるべく僕達がお千代を看病して、夜中はずっとパパさんが看病していた。でも、一向に良くなる様子は見えなかった)
ヘンゼル(それどころか、目に見えてお千代の病状は悪化しているようだった。食事もろくに食べようとしないし、ほとんど喋らない)
ヘンゼル(虚ろな目をしたお千代の手を握り続けるパパさんも、次第に口数が少なくなってしまった。やっぱり、医者は呼べていない)
ヘンゼル(誰も口には出さないけれど、もしかしたらお千代は……もう……。思わずそう思ってしまうほど、お千代の姿は病気に侵されていた)
ヘンゼル(病気にいいという薬草を聞いたり、いろいろと僕達も手を尽くしてみたけど……結果は出せなかった)
弥平「さぁ、お千代…粟の粥だ。お前、昼間も食べなかっただろ。ちゃんとくわねぇと元気でねぇぞ」ソッ
お千代「……うち、お粥…いらないんよ」フルフル
弥平「…何か食べたいものでもあるのか?」
お千代「父ちゃん……うちな……あずきまんまが食べたいんよ……」ゼェゼェ
492 :◆oBwZbn5S8kKC :2015/08/18(火)23:37:31 ID:C93
弥平「あずきまんま……か」
お千代「……ごめん、父ちゃん。なんでもないんよ……少し、寝るね……おやすみ……」スッ
弥平「……」
グレーテル「弥平パパ……あずきまんまって……なに……?」
弥平「赤飯っていってな、あずきっていう豆の入った飯だ。祝いごとなんかに食べるもんなんだが…こいつは一度だけ昔食った事があるんだ」
弥平「まだこいつの母親が生きてる時、えらい豊作でな。その祝いに炊いたあずきまんまの事、こいつは忘れてなかったんだな。こいつにとってはそれが何よりのごちそうなんだろうな」
ヘンゼル「そのあずきまんまって、そんなに高価なものなの?」
弥平「いいや、とんでもなく贅沢な代物って訳でもねぇ。作るのにさほど手間がかかるもんでもねぇ」
ヘンゼル「だったら、お千代に食べさせてやろうよ。そのあずきまんまを。そうすれば元気になるかもしれないよ」
弥平「オラもそうしてやりてぇが…うちには小豆どころか米すらねぇ。それを買うだけの金も無い」
ヘンゼル「……そうだよね、ごめん」
グレーテル「……弥平パパ、ごめんね……私たち、なんにもできないね……」
弥平「おいおい、お前達が気にする事じゃねぇよ。ほらほら、子供はさっさと粥を食って寝ろ寝ろ。お千代の看病はオラに任せろ、な?」
グレーテル「わかった……おやすみなさい、弥平パパ……」
弥平「おう、おやすみ」
ヘンゼル「……」
493 :◆oBwZbn5S8kKC :2015/08/18(火)23:40:10 ID:C93
・・・
お千代「……」ゼェゼェ
弥平(……あいつが犀川の氾濫で死んだ時、お千代の事は一人でも立派に育てるって誓ったんだがな。その誓い、護れてねぇや…すまん)
弥平(オラは若い時からろくでなしで、畑仕事しか能が無い奴だったけど。そんなろくでなしを愛してくれた女が居て……)
弥平(あいつは都の生まれで良いところのお嬢さんだったけど、家を捨てて貧乏なオラの嫁さんになってくれて…そして、お千代が生まれて……)
弥平(お千代が生まれた時は、嬉しかったよなぁ…その時決めたもんな、もうヘラヘラしてらんねぇって、オラはこの娘に胸がはれるような大人になるってな)
弥平(そんで、こいつはどんどん大きくなって…でもやっぱりうちは貧乏で…なんにも買ってやれなかったけど…こいつはなんにも文句言わねぇで…)
弥平(母親が死んだ時も、グッと堪えて……寂しいだなんて言わないで……)
弥平(貧しい時も、ひもじい時も、こいつは文句ひとつ言わずオラと一緒に笑っていてくれた)
弥平(オラはお千代にまともな教育もしてやれねぇ、食いたいもんも、欲しい玩具も買ってやれなかった。でも…)
弥平「…オラはなぁ、お千代。お前からいろんなもんをもう数え切れねぇほど貰って来たんだ」
弥平(……)
弥平(今まで何一つねだらなかったお千代が、生まれて初めてオラに欲しいと言ったんだ。あずきまんまを食わせてくれと言ったんだ)
弥平(俺は不甲斐ねぇ父親だけどな、それくらいの願いは…娘の些細な願いくらいは叶えてやりてぇよな……)
弥平(もう、お千代が生きていられる時間は……きっと、長くねぇ……)
弥平「……」
弥平「地主の蔵になら…米も小豆もある。それを拝借すりゃあ……お千代の願いを叶えてやれる」スッ
474 :名無しさん@おーぷん :2015/08/18(火)19:50:41 ID:RvM
弥平とお千代ってあの後味悪いおとぎ話かな…
質問ですが裸王様の年齢設定ってありますか?
494 :◆oBwZbn5S8kKC :2015/08/18(火)23:50:45 ID:C93
今日はここまでです、レスありがとう!まとめから来てくれる人もいて嬉しい限りです
普段の雪の女王は優しいお姉さんなんだけどシリアス場面多すぎて普段が書けないwww
>>474
裸王は30後半から40前半くらいかな?キモオタの仲間の中では比較的年長者です
ちょっと仕事の関係で次回更新は早くても週末かな?
ヘンゼルとグレーテル。とある消滅したおとぎ話編入 次回に続きます
495 :鈍足の達人◆do2cizOyDI :2015/08/18(火)23:59:10 ID:o6U
乙!
なんか不安になってきたぞ.........
496 :名無しさん@おーぷん :2015/08/19(水)01:16:11 ID:HRe
乙です!あああああ……不穏な空気になってきたー……
弥平が優しすぎて辛い
このお話一冊目からずっと読んでるよ
次回も楽しみにしてる!
497 :名無しさん@おーぷん :2015/08/19(水)03:54:10 ID:dah
乙です
ここからの展開を思うと、胸が痛い…
512 :◆oBwZbn5S8kKC :2015/08/23(日)23:01:03 ID:rQn
ザーザー ザーザー
弥平(陽もすっかり暮れてる、そのうえこの雨だ…これなら誰にも見られずに地主の蔵に忍び込めるだろう)
弥平(あいつらに黙って出て行くのは気が引けるが、子供達に心配を掛けるわけにはいかねぇ。ましてや盗みを働くために出掛けるなんて言えねぇよな)
弥平(だが、やるしかねぇ。お千代に何一つ幸せな思い出を残せないまま死なせるなんてできねぇ…なに、さっと盗んで戻ればいいだけだ)スッ
ビキッ
弥平「ぐぅっ…!クソッ…こんな時に腰が悲鳴を上げやがる…!」ググッ
弥平(だがやめるわけにはいかねぇ。でも、本当に…こんな身体で蔵に忍び込めるのか?もしもオラが捕まれば三人は路頭に迷う事になっちまう、無理矢理に危険を冒して失敗すればあいつらは……)
弥平「いや、迷ってる場合じゃねぇ。こんな腰の痛みがなんだってんだ…!オラはお千代の為に行かなきゃなんねぇんだ、オラは地主の蔵に……!」ググッ
ヘンゼル「……パパさん、こんな夜遅くにどこに行くつもりなの?」スッ
弥平「ヘンゼル…お前、起きてたのか?」
ヘンゼル「お千代が苦しんでるのに眠れないよ。それより、地主っていってたけど…もしかしてパパさん、小豆と米を何とかしようって考えてる?」
弥平(察しの良い奴だ、気付かれちまっちゃまずい。だが盗みに行く、とは言えねぇな)
弥平「ああ、地主なら米も小豆も持ってるはずだ。事情を話して分けて貰おうと思ってな」
ヘンゼル「そうなんだ、地主なら確かに米も小豆も持ってるだろうね。分けてくれるかどうかは別だけど」
513 :◆oBwZbn5S8kKC :2015/08/23(日)23:02:39 ID:rQn
弥平「お前は相変わらずだなおい。事情を話せば地主だって快く分けてくれるだろ、そうすりゃ明日はあずきまんまだ。お千代もきっとよくなる、だからお前も安心してもう寝ろ」
ヘンゼル「安心なんか出来ないよ。それにパパさんこの間痛めた腰がまだ治って無いんでしょ?地主の家なんて結構遠いのに、それまでに倒れたりしちゃあ大変だよ」
弥平「お前が気にすることじゃねぇよ。平気だ、オラはこう見えてもまだ若いんだ。地主の家に行くくらい余裕なんだぜヘンゼr」
ビキッ
弥平「ぬぐっ…!」グヌヌッ
ヘンゼル「ほら、パパさんまで倒れたら大事なんだから。僕が行くよ、地主の家まで行って事情を話して米と小豆を少し分けてもらえばいいんでしょ?」
弥平「い、いやまてヘンゼル。子供のお前がこんな夜中に出歩くのは感心しねぇ…ぬぐぐっ」ビキッ
ヘンゼル「いいから横になってなよパパさん。僕が地主の所まで行ってくるからさ」
弥平「駄目だ。オラが行く、お前はもう寝てろ」
ヘンゼル「パパさんって意外と強情だよね。でも地主の所には僕が行く、どうしても止めたいなら追いかけて止めたらいいよ。今のパパさんにそれが出来るならね」
弥平「おいヘンゼル!お前、オラが追いかけられないとわかってそんな事いいやがったな!おい!待てヘンゼル!」ビキッ
ヘンゼル「怪我人は大人しく横になっててよ、こういうおつかいは元気な僕に任せればいいんだよ」フフッ
スタスタスタ
弥平「…あいつ」
514 :◆oBwZbn5S8kKC :2015/08/23(日)23:04:07 ID:rQn
とあるおとぎ話の世界 地主の蔵
ヘンゼル(見張りはいない。でも長居はできない、早く米と小豆を盗んで帰ろう)キョロキョロ
コソコソ
ヘンゼル(さっきパパさんは地主に食べ物を分けて貰いに行くなんて言っていたけど、あれは絶対に嘘だ)
ヘンゼル(食べ物に困っているから少し分けて欲しい。そんな風に言って快く食べ物を分けてくれるなら、パパさんはもっと早く地主の所に相談に出かけたはずだ)
ヘンゼル(でもパパさんはそうしなかった。きっと、正直に相談しても地主は食べ物を分けてくれない事を知っていたんだ。だから相談しなかった)
ヘンゼル(裕福な人間は自分達のことしか考えていないんだ。だから小さな村の隅で貧しい女の子が今にも死にそうな事なんて知らない)
ヘンゼル(貧しい親子が健気に生きてる事を知らない。食べ物に困っている事も知らない。善人のパパさんが盗みを働こうと考えるほど追いつめられてる事も、知らない)
ヘンゼル(きっとそれを知ってもこう言う、自分達には関係ない。って)
ヘンゼル(誰かを助けられるだけのお金や食べ物を持っているのに、他人なんか助けない。自分以外にお金や食べ物を使ったりしない、だからこいつ等は裕福なんだ)
ヘンゼル(だからこんな山ほどある食料の中からほんの一握りの米や小豆を盗まれたって、こいつらにとってはほんの些細な事だろう)
ザクッ
ヘンゼル(けれどお千代にとってこの一握りの米と小豆は、明日を生きる為に必要なんだ)ザラザラ
ヘンゼル(地主達は自分達の為だけに食べ物をため込んで貧しい人に分け与えもしない、こいつらは間違いなく悪人だ)ザラザラ
ヘンゼル(だからこいつらから盗みをしたって構わない。それでお千代やパパさんやグレーテルが幸せになれるならそれでいいんだ)
ヘンゼル(僕達は悪くない。ただ家族の幸せを願っているだけなんだ。ただそれだけの事が悪いことのはずが無いよ)
スタスタ
515 :◆oBwZbn5S8kKC :2015/08/23(日)23:05:49 ID:rQn
翌朝 弥平の家
ホカホッカ
弥平「ほら見ろお千代!お前の食いたがっていたあずきまんまだぞ!まだあるからな、好きなだけ食え!」スッ
お千代「あずきまんま…これ、うちが食べてもいいの…?」ゼェゼェ
グレーテル「いいんだよ……お兄ちゃんがね、地主さんにお願いして分けて貰ったんだって……お千代ちゃんの為に……だよ……」
お千代「本当なん…?だったらヘンゼルには苦労かけちゃったんよ…」ゼェゼェ
ヘンゼル「何言ってるんだよお千代、お前は僕の妹だ。妹の為にならなんだってやってやるのが兄の役目なんだ。だから遠慮せずに食べなよ、全部お千代のなんだから」
弥平「ほれ、冷めちまうまえに食え。しっかり食って元気になるんだぞお千代」
お千代「うん、うち嬉しいんよ。ありがとね父ちゃん、ヘンゼル、グレーテル。それじゃ、いただきます」モグッ
グレーテル「どう……?おいしい……?」
お千代「本当においしいんよ…前に母ちゃんと父ちゃんと三人で食べた時よりも、このあずきまんまの方がずっと美味しいんよ」
お千代「きっと、父ちゃんや…ヘンゼルとグレーテルが一緒に居てくれるからそう感じるんかもしれないんよ」ニコッ
ヘンゼル「そっか。ほら、もっと食べて良いんだよ。食べて早く元気になってよ、その為に僕は地主にお願いに行ったんだから」フフッ
お千代「そうだね、私は早く元気になってみんなを安心させないといけないんよ」
弥平「……」
516 :◆oBwZbn5S8kKC :2015/08/23(日)23:07:18 ID:rQn
数日後 弥平の家
弥平「さて、オラは少し畑の様子を見てくる。ヘンゼルは今日は畑仕事休んでグレーテルと一緒にお千代の側に居てくれ」
ヘンゼル「大丈夫なの?パパさんの腰も完全に治ったわけじゃないんでしょ?」
弥平「何心配してんだお前、俺はまだ若いっていったろ?無茶な事はしねぇから安心しろ、それにいつまでも隣のおっさんに畑を頼むのも悪い。まだ大した仕事は出来ねぇけどな」
グレーテル「……お千代ちゃんは私達が看病するから、弥平パパも無理しないでね……?」
弥平「おう!じゃあお千代の事は頼んだぞ、まぁ二人なら心配いらねぇな」ハッハッハ
ヘンゼル(お千代が倒れてからしばらく畑をまかせっきりにしていたパパさんは、久しぶりに畑に出かけた。お千代を僕達に任せてももう大丈夫だろうという判断だと思う)
ヘンゼル(実際、お千代は起き上がれるくらいに体調が回復していた。とはいってもまだ病気は治っていないし、畑仕事はおろか裁縫や家の仕事もしばらくは禁止だ)
ヘンゼル(でも少しずつだけど確実にお千代は元気を取り戻している。それがあのあずきまんまのおかげなのかどうかはわからない)
ヘンゼル(どちらにしてもお千代が元気になっていくことは僕たち家族にとって何よりもうれしいことだった。だから元気になった理由なんかどうでもいいんだ、元気なお千代がいてくれればそれでいいんだ)
お千代「ねぇねぇヘンゼル、お願いがあるんよ。うちな、ちょっとだけ外に出て…鞠がつきたいんよ」
ヘンゼル「駄目だよ、まだ治ったわけじゃないんだから大人しくしてないと。パパさんとも約束したでしょ?」
お千代「それはそうなんやけど、でも…寝てばかりでお仕事もお手伝いも出来ないとちょっぴり退屈なんよ」
ヘンゼル「病人は休んでるのが仕事なんだ。退屈なんて言っちゃダメだよ、お千代」
グレーテル「……だったらね……良いもの、私持ってる……これ読んだら退屈じゃなくなるよ……それに大人しくしてるって約束も守れる……」スッ
517 :◆oBwZbn5S8kKC :2015/08/23(日)23:08:56 ID:rQn
お千代「なんなんこれ…?【マッチ売りの少女】…?」
グレーテル「おとぎ話の絵本だよ……このお話、お兄ちゃんに読んでもらえば……きっと退屈な気持ち、なくなるよ……ねっ?お兄ちゃん?」
お千代「ヘンゼルがうちにお話聞かせてくれるん?だったら鞠つきできなくても退屈じゃないんよ」ニコニコ
ヘンゼル「それはいいけどさ、よりによって【マッチ売りの少女】って…他にもっと明るい話あるでしょ…というかその本、持ち歩いてたんだ」
グレーテル「うん……女王さまに貰ったたからものだから……でも貸してあげる、だからお千代ちゃんに読んであげて……」
ヘンゼル「いや、だからこれさ内容が暗すぎるでしょ。おとぎ話なら僕が読んだ他のおとぎ話を話してあげるから、そっちにしようよ」
お千代「でも折角だから、グレーテルが貸してくれたこの絵本読んで欲しいんよ。ヘンゼルはこのおとぎ話、嫌いなん?」
ヘンゼル「そういう訳じゃないけど…」
お千代「だったら読んで欲しいんよ、うち余所の国のお話聞くの初めてなんよ。ヘンゼルが読んだっていう他のおとぎ話の話も聞かせて欲しいんよ」ニコニコ
ヘンゼル「それは良いけど…とりあえず【マッチ売りの少女】を読むけど後悔しないでよ?楽しい話じゃないからね、これ」スッ
ヘンゼル(そういえば……今まで気にしていなかったけど、このお千代とパパさんが住む世界も、おとぎ話の世界のはずだ)
ヘンゼル(それなら当然、この世界にも現実世界の人間共が作った筋書きがあって、何かしらの結末が用意されているはずだ)
ヘンゼル(でも、パパさんやお千代が主人公だとは限らない。どこかのおとぎ話の世界に住む単なる脇役かもしれない。僕が読んだおとぎ話に二人が出てきたものは無いから、確認のしようもない)
ヘンゼル(…まぁいいか。それより今は、お千代に少しでも笑顔が戻った事が素直に嬉しい)
ヘンゼル(二人が何者だろうと、僕は家族の幸せを願う。それだけのことだ)
518 :◆oBwZbn5S8kKC :2015/08/23(日)23:10:29 ID:rQn
さらに数日後
ポツポツ ポツポツ
お千代「ヘンゼル、今日も他のおとぎ話聞かせて欲しいんよ」ニコッ
ヘンゼル「それは良いけど、毎日毎日飽きないよねお千代は」フフッ
お千代「だってもう元気なのに外に出ちゃいけないって父ちゃんいうんよ?でもヘンゼルがたくさんお話聞かせてくれるからうちは最近それが楽しみなんよ」
お千代「余所の国の髪の長いお姫様の話とか、音楽が好きな動物の話とか、金を紡げる小さいおじさんの話とか、楽しいお話たくさん知ってて凄いんよ」
お千代「それになんだかね、ヘンゼルの話してくれるおとぎ話を聞いてると元気になれる気がするんよ」ニコッ
ヘンゼル「まぁ、お前が退屈じゃないならそれでいいさ。それじゃあ今日は…」
ガラガラッ
グレーテル「お兄ちゃん……ちょっといい……?」ヒョコ
ヘンゼル「どうかした?確か隣のお婆ちゃんに頼まれて裁縫仕事の手伝いしに行ったんじゃなかったの?」
グレーテル「うん、あのね……荷物を運びたいんだけどおじさんが居なくてね……私とお婆ちゃんじゃ重くて運べないから……お兄ちゃんに手伝って欲しいの……」
ヘンゼル「ああ、そういうこと。ごめんお千代、少し手伝ってくるよ。もうだいぶ元気になったし少しなら一人でも平気だよね?」
お千代「うん、うち一人でも平気。大人しくしてるから、お婆ちゃんのお手伝いいってきてもいいんよ」
ヘンゼル「わかった、それじゃあおとなしくしててね、お千代」スタスタ
519 :◆oBwZbn5S8kKC :2015/08/23(日)23:11:21 ID:rQn
お千代「……」ポツーン
お千代「父ちゃんは畑仕事、ヘンゼルとグレーテルはお手伝い…うちだけ一人ぼっちは退屈なんよ」
お千代「ヘンゼルのおはなし楽しみにしてたのに、これでまた退屈になっちゃったんよ。流石にもう寝るのには飽きたんよ」
お千代「今は雨もぽつぽつ振り……これくらいなら外に出ても風邪ひいたりしないんよ」
お千代「……最近ずーっと横になってたから、鞠つき全然出来てない…たまにはうちも外で遊びたいんよ……」
お千代「今はこの家にはうちだけだから、ヘンゼルが帰ってくるまでにおふとんに戻ればいいんよ……ちょっとだけ、ちょっとだけなんよ」コソコソ
スタスタ
お千代「んーっ、外の空気は気持ちいいんよー」ンーッ
お千代「うちが病気になってみんなに心配かけたのは嫌だったけど、みんなが優しくしてくれるからそれはすっごく嬉しかったんよね」スッ
お千代「父ちゃんもグレーテルも看病してくれたし、ヘンゼルはうちの為にお米と小豆まで借りて来てくれたんよ。元気になったらちゃんとお礼言わないといけんね。家族がみんな優しくてうちはとっても嬉しいんよ」ニコニコ
トーントーン
お千代「てんてんてんまり、てんてまりー。うち、おいしいまんま食ーべた。赤くて綺麗なあずきまんま。おいしいおいしいあずきまんま食ーべたー」ニコニコ
薄毛のおっさん「……」スッ
弥平「ん?どうしたヘンゼルぼーっとして、考えごとか?」
ヘンゼル「ああ、大丈夫だよ。それよりこれ隣のおじさんに頂いた、畑で取れた菜っ葉だって。お礼は言っておいたよ」スッ
弥平「おっ、それじゃあ今夜は贅沢に菜っ葉粥だな!さぁて、収穫した野菜積んで帰るか…よっこいっしょっくらぁ!」ググッ
ヘンゼル「ちょっと欲張り過ぎじゃない?二回に分けた方がいいと思うけど…」
弥平「平気平気、これくらい持てなくてどうすんだ!男が廃るってもんだぜヘンゼル!」グイッ
グキッ
弥平「……っぬぉぉっ!」ドサッ
ヘンゼル「パパさん…?どうしたの?」
弥平「いたた…すまんヘンゼル、しくじっちまった。ちょっと腰やっちまったみたいだ…すまねぇが野菜を荷車に運んでくれ」
ヘンゼル「ほら、無理するからだよ。男廃っちゃってるじゃないか」クスクス
弥平「笑うな笑うな、時にはこういう失敗だってある。それを寛容に受け止められるのが男ってもんよ」ハッハッハ
ヘンゼル「それ自分で言っちゃフォローにもなんにもならないよ。あとは僕が片付けるから座ってなよ」フフッ
タッタッタ
グレーテル「大変なの……お兄ちゃん……弥平パパ……!」ハァハァ
488 :◆oBwZbn5S8kKC :2015/08/18(火)23:29:37 ID:C93
弥平「おいおい、どうしたんだ?グレーテルが慌てるなんて珍しいぞ?」
ヘンゼル「何かあったんだね?落ち着いて話して、グレーテル」
グレーテル「あのね……私とお千代ちゃん……隣のお婆ちゃんとお裁縫のお仕事……してた……でも、お千代ちゃん……突然倒れちゃったの……」
弥平「なんだと…っ!お千代は!お千代は無事なのか、グレーテル!」バッ
グレーテル「お婆ちゃんがお家に運んでくれた……今、お婆ちゃんが見てくれてるけど……凄い熱だった……すぐにお父さん呼んできなさいってお婆ちゃんに言われた……」
弥平「お千代…!待ってろよ、オラがすぐに駆けつけて一緒に居てやるからな!」ググッ
ビキッ
弥平「ぬぐっ、腰が…!クソッ、なんだってこんな時に…!」
ヘンゼル「パパさん落ち着いて、隣のお婆ちゃんが見てくれてるなら大丈夫だよ。無理せず歩いて行こう、ここでパパさんまで動けなくなったら大変だよ」
弥平「そうだよな…子供に諭されてどうするんだって話だ、落ち着かねぇと……」
ヘンゼル(パパさんがこんなに動揺するなんて…初めて見た。やっぱり、お千代の事が心配なんだ)
弥平「グレーテル…すまねぇけど、隣のおじさんに頼んで収穫物運んでくれるように頼んでくれ。お千代の事も説明してくれ」
グレーテル「わかった……お願いしてくる……」タッタッタ
弥平「ヘンゼル、お前はオラと一緒に来てくれ。肩を借りねぇと歩けそうにねぇから」
ヘンゼル「わかった、行こう。お千代の事、僕も心配だ」
489 :◆oBwZbn5S8kKC :2015/08/18(火)23:30:57 ID:C93
とあるおとぎ話の世界 弥平の家
バタバタバタ
弥平「お千代!大丈夫か、お千代!」ガラガラッ
隣のばあさん「おぉ、弥平さん。ほれお千代ちゃんや、父ちゃん帰ってきてくれたぞ、もう寂しく無いのぅ」ナデナデ
お千代「あっ…父ちゃん…?」ゼェゼエ
弥平「おお、父ちゃんはここにいるぞ!わかるか、お千代!」
お千代「心配かけてごめんね、父ちゃん……本当は今朝からちょっと身体が熱くて、心配かけたくないから黙っとったけど。もう我慢できなかったんよ……」ニヘッ
弥平「何言ってんだお前は、黙ってたら辛い事がわからんだろ!我慢してどうするんだお千代!」
お千代「でも、父ちゃんにもヘンゼルにもグレーテルにも心配かけるでしょ…?それが嫌だったんよ……」ゼェゼェ
弥平「家族なんだから心配するに決まってるだろうが!そんな事心配してどうするんだお前……」
隣のばあさん「コレッ!あんた、娘の無事な姿見て安心したのはわかるけども、寝込んどる娘に大きな声出しちゃいかんじゃろっ!」
弥平「…そうだよな、すまねぇ。お千代」
お千代「ううん……うちが無理したのがいけなかったんよ、ごめんね。父ちゃん」ゼェゼェ
弥平「いいや、気にするなお千代。お前を働かせすぎたオラの責任だ、ゆっくり休め。な?」
お千代「うん、ごめんね…夕飯のお手伝いも後片付けも出来ないけど……元気になったら、たくさんお手伝いするんよ……」
弥平「お前…今は何も心配するなお千代、父ちゃんがついてる」
弥平「お前が元気になるまで側に居てやるからな。お千代」
490 :◆oBwZbn5S8kKC :2015/08/18(火)23:32:44 ID:C93
グレーテル「ただいま……おじさんにお願いしてきた……任せてくれっていってた……」カラカラッ
ヘンゼル「グレーテル、お帰り。お千代とパパさんはそっとしておいてあげよう、僕達で夕飯の準備しようか」
隣のおばさん「……ヘンゼル坊にグレーテルちゃんや。ちょっといいかのぅ?」
ヘンゼル「何?もしかして、お千代の事?」
隣のおばさん「そうじゃ…お千代ちゃんのあの様子はただの疲れや風邪じゃあありゃあせん」
グレーテル「もっと……重い病気って事……?」
隣のおばさん「かもしれん。今は弥平さんの前だで随分と気丈にふるまっておったけどな、ここに運んで来た時はそりゃあ口も利けんほど弱っておった」
ヘンゼル「…すぐにでも医者を呼んだ方がいいのかな?」
隣のおばさん「呼べるのならそうするべきじゃが…弥平さんには難しいじゃろ…」
ヘンゼル(その通りだ。パパさんには医者を呼ぶようなお金は無い。何とか僕達の看病でお千代の病気を治さなきゃいけない)
隣のばあさん「すまんことだが、銭の相談に乗れるような余裕はうちにもないでな……他の事なら何でも言えばええ、畑の事もうちの息子に任せりゃあええ」
ヘンゼル「ありがとう、お婆さん。この事はパパさんに伝えておくよ、お千代の事運んでくれてありがとう」
隣のばあさん「なんて事無いだ、そんな事。ええかい、ヘンゼル坊、グレーテルちゃん。あんたら兄妹が協力してお千代ちゃんの事、看病してやるんじゃぞ」
グレーテル「うん……頑張って、お千代ちゃんの病気……治してあげなきゃね……」
ヘンゼル「そうだね、またお千代の好きな鞠つきが出来るように…出来る限りの看病をしよう」
・・・
491 :◆oBwZbn5S8kKC :2015/08/18(火)23:36:00 ID:C93
それから数日後
ザーザー ザーザー
グレーテル「雨……ずっと振ってるね、お兄ちゃん……」
ヘンゼル「ああ、畑に行けないからその分お千代の側に居られるのは良いけど…」
弥平「……」
お千代「……」ゼェゼェ
ヘンゼル(お千代が倒れてから数日経った。あの日からずっと雨が振り続けている)
ヘンゼル(昼間はなるべく僕達がお千代を看病して、夜中はずっとパパさんが看病していた。でも、一向に良くなる様子は見えなかった)
ヘンゼル(それどころか、目に見えてお千代の病状は悪化しているようだった。食事もろくに食べようとしないし、ほとんど喋らない)
ヘンゼル(虚ろな目をしたお千代の手を握り続けるパパさんも、次第に口数が少なくなってしまった。やっぱり、医者は呼べていない)
ヘンゼル(誰も口には出さないけれど、もしかしたらお千代は……もう……。思わずそう思ってしまうほど、お千代の姿は病気に侵されていた)
ヘンゼル(病気にいいという薬草を聞いたり、いろいろと僕達も手を尽くしてみたけど……結果は出せなかった)
弥平「さぁ、お千代…粟の粥だ。お前、昼間も食べなかっただろ。ちゃんとくわねぇと元気でねぇぞ」ソッ
お千代「……うち、お粥…いらないんよ」フルフル
弥平「…何か食べたいものでもあるのか?」
お千代「父ちゃん……うちな……あずきまんまが食べたいんよ……」ゼェゼェ
弥平「あずきまんま……か」
お千代「……ごめん、父ちゃん。なんでもないんよ……少し、寝るね……おやすみ……」スッ
弥平「……」
グレーテル「弥平パパ……あずきまんまって……なに……?」
弥平「赤飯っていってな、あずきっていう豆の入った飯だ。祝いごとなんかに食べるもんなんだが…こいつは一度だけ昔食った事があるんだ」
弥平「まだこいつの母親が生きてる時、えらい豊作でな。その祝いに炊いたあずきまんまの事、こいつは忘れてなかったんだな。こいつにとってはそれが何よりのごちそうなんだろうな」
ヘンゼル「そのあずきまんまって、そんなに高価なものなの?」
弥平「いいや、とんでもなく贅沢な代物って訳でもねぇ。作るのにさほど手間がかかるもんでもねぇ」
ヘンゼル「だったら、お千代に食べさせてやろうよ。そのあずきまんまを。そうすれば元気になるかもしれないよ」
弥平「オラもそうしてやりてぇが…うちには小豆どころか米すらねぇ。それを買うだけの金も無い」
ヘンゼル「……そうだよね、ごめん」
グレーテル「……弥平パパ、ごめんね……私たち、なんにもできないね……」
弥平「おいおい、お前達が気にする事じゃねぇよ。ほらほら、子供はさっさと粥を食って寝ろ寝ろ。お千代の看病はオラに任せろ、な?」
グレーテル「わかった……おやすみなさい、弥平パパ……」
弥平「おう、おやすみ」
ヘンゼル「……」
493 :◆oBwZbn5S8kKC :2015/08/18(火)23:40:10 ID:C93
・・・
お千代「……」ゼェゼェ
弥平(……あいつが犀川の氾濫で死んだ時、お千代の事は一人でも立派に育てるって誓ったんだがな。その誓い、護れてねぇや…すまん)
弥平(オラは若い時からろくでなしで、畑仕事しか能が無い奴だったけど。そんなろくでなしを愛してくれた女が居て……)
弥平(あいつは都の生まれで良いところのお嬢さんだったけど、家を捨てて貧乏なオラの嫁さんになってくれて…そして、お千代が生まれて……)
弥平(お千代が生まれた時は、嬉しかったよなぁ…その時決めたもんな、もうヘラヘラしてらんねぇって、オラはこの娘に胸がはれるような大人になるってな)
弥平(そんで、こいつはどんどん大きくなって…でもやっぱりうちは貧乏で…なんにも買ってやれなかったけど…こいつはなんにも文句言わねぇで…)
弥平(母親が死んだ時も、グッと堪えて……寂しいだなんて言わないで……)
弥平(貧しい時も、ひもじい時も、こいつは文句ひとつ言わずオラと一緒に笑っていてくれた)
弥平(オラはお千代にまともな教育もしてやれねぇ、食いたいもんも、欲しい玩具も買ってやれなかった。でも…)
弥平「…オラはなぁ、お千代。お前からいろんなもんをもう数え切れねぇほど貰って来たんだ」
弥平(……)
弥平(今まで何一つねだらなかったお千代が、生まれて初めてオラに欲しいと言ったんだ。あずきまんまを食わせてくれと言ったんだ)
弥平(俺は不甲斐ねぇ父親だけどな、それくらいの願いは…娘の些細な願いくらいは叶えてやりてぇよな……)
弥平(もう、お千代が生きていられる時間は……きっと、長くねぇ……)
弥平「……」
弥平「地主の蔵になら…米も小豆もある。それを拝借すりゃあ……お千代の願いを叶えてやれる」スッ
474 :名無しさん@おーぷん :2015/08/18(火)19:50:41 ID:RvM
弥平とお千代ってあの後味悪いおとぎ話かな…
質問ですが裸王様の年齢設定ってありますか?
494 :◆oBwZbn5S8kKC :2015/08/18(火)23:50:45 ID:C93
今日はここまでです、レスありがとう!まとめから来てくれる人もいて嬉しい限りです
普段の雪の女王は優しいお姉さんなんだけどシリアス場面多すぎて普段が書けないwww
>>474
裸王は30後半から40前半くらいかな?キモオタの仲間の中では比較的年長者です
ちょっと仕事の関係で次回更新は早くても週末かな?
ヘンゼルとグレーテル。とある消滅したおとぎ話編入 次回に続きます
495 :鈍足の達人◆do2cizOyDI :2015/08/18(火)23:59:10 ID:o6U
乙!
なんか不安になってきたぞ.........
496 :名無しさん@おーぷん :2015/08/19(水)01:16:11 ID:HRe
乙です!あああああ……不穏な空気になってきたー……
弥平が優しすぎて辛い
このお話一冊目からずっと読んでるよ
次回も楽しみにしてる!
497 :名無しさん@おーぷん :2015/08/19(水)03:54:10 ID:dah
乙です
ここからの展開を思うと、胸が痛い…
512 :◆oBwZbn5S8kKC :2015/08/23(日)23:01:03 ID:rQn
ザーザー ザーザー
弥平(陽もすっかり暮れてる、そのうえこの雨だ…これなら誰にも見られずに地主の蔵に忍び込めるだろう)
弥平(あいつらに黙って出て行くのは気が引けるが、子供達に心配を掛けるわけにはいかねぇ。ましてや盗みを働くために出掛けるなんて言えねぇよな)
弥平(だが、やるしかねぇ。お千代に何一つ幸せな思い出を残せないまま死なせるなんてできねぇ…なに、さっと盗んで戻ればいいだけだ)スッ
ビキッ
弥平「ぐぅっ…!クソッ…こんな時に腰が悲鳴を上げやがる…!」ググッ
弥平(だがやめるわけにはいかねぇ。でも、本当に…こんな身体で蔵に忍び込めるのか?もしもオラが捕まれば三人は路頭に迷う事になっちまう、無理矢理に危険を冒して失敗すればあいつらは……)
弥平「いや、迷ってる場合じゃねぇ。こんな腰の痛みがなんだってんだ…!オラはお千代の為に行かなきゃなんねぇんだ、オラは地主の蔵に……!」ググッ
ヘンゼル「……パパさん、こんな夜遅くにどこに行くつもりなの?」スッ
弥平「ヘンゼル…お前、起きてたのか?」
ヘンゼル「お千代が苦しんでるのに眠れないよ。それより、地主っていってたけど…もしかしてパパさん、小豆と米を何とかしようって考えてる?」
弥平(察しの良い奴だ、気付かれちまっちゃまずい。だが盗みに行く、とは言えねぇな)
弥平「ああ、地主なら米も小豆も持ってるはずだ。事情を話して分けて貰おうと思ってな」
ヘンゼル「そうなんだ、地主なら確かに米も小豆も持ってるだろうね。分けてくれるかどうかは別だけど」
513 :◆oBwZbn5S8kKC :2015/08/23(日)23:02:39 ID:rQn
弥平「お前は相変わらずだなおい。事情を話せば地主だって快く分けてくれるだろ、そうすりゃ明日はあずきまんまだ。お千代もきっとよくなる、だからお前も安心してもう寝ろ」
ヘンゼル「安心なんか出来ないよ。それにパパさんこの間痛めた腰がまだ治って無いんでしょ?地主の家なんて結構遠いのに、それまでに倒れたりしちゃあ大変だよ」
弥平「お前が気にすることじゃねぇよ。平気だ、オラはこう見えてもまだ若いんだ。地主の家に行くくらい余裕なんだぜヘンゼr」
ビキッ
弥平「ぬぐっ…!」グヌヌッ
ヘンゼル「ほら、パパさんまで倒れたら大事なんだから。僕が行くよ、地主の家まで行って事情を話して米と小豆を少し分けてもらえばいいんでしょ?」
弥平「い、いやまてヘンゼル。子供のお前がこんな夜中に出歩くのは感心しねぇ…ぬぐぐっ」ビキッ
ヘンゼル「いいから横になってなよパパさん。僕が地主の所まで行ってくるからさ」
弥平「駄目だ。オラが行く、お前はもう寝てろ」
ヘンゼル「パパさんって意外と強情だよね。でも地主の所には僕が行く、どうしても止めたいなら追いかけて止めたらいいよ。今のパパさんにそれが出来るならね」
弥平「おいヘンゼル!お前、オラが追いかけられないとわかってそんな事いいやがったな!おい!待てヘンゼル!」ビキッ
ヘンゼル「怪我人は大人しく横になっててよ、こういうおつかいは元気な僕に任せればいいんだよ」フフッ
スタスタスタ
弥平「…あいつ」
514 :◆oBwZbn5S8kKC :2015/08/23(日)23:04:07 ID:rQn
とあるおとぎ話の世界 地主の蔵
ヘンゼル(見張りはいない。でも長居はできない、早く米と小豆を盗んで帰ろう)キョロキョロ
コソコソ
ヘンゼル(さっきパパさんは地主に食べ物を分けて貰いに行くなんて言っていたけど、あれは絶対に嘘だ)
ヘンゼル(食べ物に困っているから少し分けて欲しい。そんな風に言って快く食べ物を分けてくれるなら、パパさんはもっと早く地主の所に相談に出かけたはずだ)
ヘンゼル(でもパパさんはそうしなかった。きっと、正直に相談しても地主は食べ物を分けてくれない事を知っていたんだ。だから相談しなかった)
ヘンゼル(裕福な人間は自分達のことしか考えていないんだ。だから小さな村の隅で貧しい女の子が今にも死にそうな事なんて知らない)
ヘンゼル(貧しい親子が健気に生きてる事を知らない。食べ物に困っている事も知らない。善人のパパさんが盗みを働こうと考えるほど追いつめられてる事も、知らない)
ヘンゼル(きっとそれを知ってもこう言う、自分達には関係ない。って)
ヘンゼル(誰かを助けられるだけのお金や食べ物を持っているのに、他人なんか助けない。自分以外にお金や食べ物を使ったりしない、だからこいつ等は裕福なんだ)
ヘンゼル(だからこんな山ほどある食料の中からほんの一握りの米や小豆を盗まれたって、こいつらにとってはほんの些細な事だろう)
ザクッ
ヘンゼル(けれどお千代にとってこの一握りの米と小豆は、明日を生きる為に必要なんだ)ザラザラ
ヘンゼル(地主達は自分達の為だけに食べ物をため込んで貧しい人に分け与えもしない、こいつらは間違いなく悪人だ)ザラザラ
ヘンゼル(だからこいつらから盗みをしたって構わない。それでお千代やパパさんやグレーテルが幸せになれるならそれでいいんだ)
ヘンゼル(僕達は悪くない。ただ家族の幸せを願っているだけなんだ。ただそれだけの事が悪いことのはずが無いよ)
スタスタ
515 :◆oBwZbn5S8kKC :2015/08/23(日)23:05:49 ID:rQn
翌朝 弥平の家
ホカホッカ
弥平「ほら見ろお千代!お前の食いたがっていたあずきまんまだぞ!まだあるからな、好きなだけ食え!」スッ
お千代「あずきまんま…これ、うちが食べてもいいの…?」ゼェゼェ
グレーテル「いいんだよ……お兄ちゃんがね、地主さんにお願いして分けて貰ったんだって……お千代ちゃんの為に……だよ……」
お千代「本当なん…?だったらヘンゼルには苦労かけちゃったんよ…」ゼェゼェ
ヘンゼル「何言ってるんだよお千代、お前は僕の妹だ。妹の為にならなんだってやってやるのが兄の役目なんだ。だから遠慮せずに食べなよ、全部お千代のなんだから」
弥平「ほれ、冷めちまうまえに食え。しっかり食って元気になるんだぞお千代」
お千代「うん、うち嬉しいんよ。ありがとね父ちゃん、ヘンゼル、グレーテル。それじゃ、いただきます」モグッ
グレーテル「どう……?おいしい……?」
お千代「本当においしいんよ…前に母ちゃんと父ちゃんと三人で食べた時よりも、このあずきまんまの方がずっと美味しいんよ」
お千代「きっと、父ちゃんや…ヘンゼルとグレーテルが一緒に居てくれるからそう感じるんかもしれないんよ」ニコッ
ヘンゼル「そっか。ほら、もっと食べて良いんだよ。食べて早く元気になってよ、その為に僕は地主にお願いに行ったんだから」フフッ
お千代「そうだね、私は早く元気になってみんなを安心させないといけないんよ」
弥平「……」
516 :◆oBwZbn5S8kKC :2015/08/23(日)23:07:18 ID:rQn
数日後 弥平の家
弥平「さて、オラは少し畑の様子を見てくる。ヘンゼルは今日は畑仕事休んでグレーテルと一緒にお千代の側に居てくれ」
ヘンゼル「大丈夫なの?パパさんの腰も完全に治ったわけじゃないんでしょ?」
弥平「何心配してんだお前、俺はまだ若いっていったろ?無茶な事はしねぇから安心しろ、それにいつまでも隣のおっさんに畑を頼むのも悪い。まだ大した仕事は出来ねぇけどな」
グレーテル「……お千代ちゃんは私達が看病するから、弥平パパも無理しないでね……?」
弥平「おう!じゃあお千代の事は頼んだぞ、まぁ二人なら心配いらねぇな」ハッハッハ
ヘンゼル(お千代が倒れてからしばらく畑をまかせっきりにしていたパパさんは、久しぶりに畑に出かけた。お千代を僕達に任せてももう大丈夫だろうという判断だと思う)
ヘンゼル(実際、お千代は起き上がれるくらいに体調が回復していた。とはいってもまだ病気は治っていないし、畑仕事はおろか裁縫や家の仕事もしばらくは禁止だ)
ヘンゼル(でも少しずつだけど確実にお千代は元気を取り戻している。それがあのあずきまんまのおかげなのかどうかはわからない)
ヘンゼル(どちらにしてもお千代が元気になっていくことは僕たち家族にとって何よりもうれしいことだった。だから元気になった理由なんかどうでもいいんだ、元気なお千代がいてくれればそれでいいんだ)
お千代「ねぇねぇヘンゼル、お願いがあるんよ。うちな、ちょっとだけ外に出て…鞠がつきたいんよ」
ヘンゼル「駄目だよ、まだ治ったわけじゃないんだから大人しくしてないと。パパさんとも約束したでしょ?」
お千代「それはそうなんやけど、でも…寝てばかりでお仕事もお手伝いも出来ないとちょっぴり退屈なんよ」
ヘンゼル「病人は休んでるのが仕事なんだ。退屈なんて言っちゃダメだよ、お千代」
グレーテル「……だったらね……良いもの、私持ってる……これ読んだら退屈じゃなくなるよ……それに大人しくしてるって約束も守れる……」スッ
517 :◆oBwZbn5S8kKC :2015/08/23(日)23:08:56 ID:rQn
お千代「なんなんこれ…?【マッチ売りの少女】…?」
グレーテル「おとぎ話の絵本だよ……このお話、お兄ちゃんに読んでもらえば……きっと退屈な気持ち、なくなるよ……ねっ?お兄ちゃん?」
お千代「ヘンゼルがうちにお話聞かせてくれるん?だったら鞠つきできなくても退屈じゃないんよ」ニコニコ
ヘンゼル「それはいいけどさ、よりによって【マッチ売りの少女】って…他にもっと明るい話あるでしょ…というかその本、持ち歩いてたんだ」
グレーテル「うん……女王さまに貰ったたからものだから……でも貸してあげる、だからお千代ちゃんに読んであげて……」
ヘンゼル「いや、だからこれさ内容が暗すぎるでしょ。おとぎ話なら僕が読んだ他のおとぎ話を話してあげるから、そっちにしようよ」
お千代「でも折角だから、グレーテルが貸してくれたこの絵本読んで欲しいんよ。ヘンゼルはこのおとぎ話、嫌いなん?」
ヘンゼル「そういう訳じゃないけど…」
お千代「だったら読んで欲しいんよ、うち余所の国のお話聞くの初めてなんよ。ヘンゼルが読んだっていう他のおとぎ話の話も聞かせて欲しいんよ」ニコニコ
ヘンゼル「それは良いけど…とりあえず【マッチ売りの少女】を読むけど後悔しないでよ?楽しい話じゃないからね、これ」スッ
ヘンゼル(そういえば……今まで気にしていなかったけど、このお千代とパパさんが住む世界も、おとぎ話の世界のはずだ)
ヘンゼル(それなら当然、この世界にも現実世界の人間共が作った筋書きがあって、何かしらの結末が用意されているはずだ)
ヘンゼル(でも、パパさんやお千代が主人公だとは限らない。どこかのおとぎ話の世界に住む単なる脇役かもしれない。僕が読んだおとぎ話に二人が出てきたものは無いから、確認のしようもない)
ヘンゼル(…まぁいいか。それより今は、お千代に少しでも笑顔が戻った事が素直に嬉しい)
ヘンゼル(二人が何者だろうと、僕は家族の幸せを願う。それだけのことだ)
518 :◆oBwZbn5S8kKC :2015/08/23(日)23:10:29 ID:rQn
さらに数日後
ポツポツ ポツポツ
お千代「ヘンゼル、今日も他のおとぎ話聞かせて欲しいんよ」ニコッ
ヘンゼル「それは良いけど、毎日毎日飽きないよねお千代は」フフッ
お千代「だってもう元気なのに外に出ちゃいけないって父ちゃんいうんよ?でもヘンゼルがたくさんお話聞かせてくれるからうちは最近それが楽しみなんよ」
お千代「余所の国の髪の長いお姫様の話とか、音楽が好きな動物の話とか、金を紡げる小さいおじさんの話とか、楽しいお話たくさん知ってて凄いんよ」
お千代「それになんだかね、ヘンゼルの話してくれるおとぎ話を聞いてると元気になれる気がするんよ」ニコッ
ヘンゼル「まぁ、お前が退屈じゃないならそれでいいさ。それじゃあ今日は…」
ガラガラッ
グレーテル「お兄ちゃん……ちょっといい……?」ヒョコ
ヘンゼル「どうかした?確か隣のお婆ちゃんに頼まれて裁縫仕事の手伝いしに行ったんじゃなかったの?」
グレーテル「うん、あのね……荷物を運びたいんだけどおじさんが居なくてね……私とお婆ちゃんじゃ重くて運べないから……お兄ちゃんに手伝って欲しいの……」
ヘンゼル「ああ、そういうこと。ごめんお千代、少し手伝ってくるよ。もうだいぶ元気になったし少しなら一人でも平気だよね?」
お千代「うん、うち一人でも平気。大人しくしてるから、お婆ちゃんのお手伝いいってきてもいいんよ」
ヘンゼル「わかった、それじゃあおとなしくしててね、お千代」スタスタ
519 :◆oBwZbn5S8kKC :2015/08/23(日)23:11:21 ID:rQn
お千代「……」ポツーン
お千代「父ちゃんは畑仕事、ヘンゼルとグレーテルはお手伝い…うちだけ一人ぼっちは退屈なんよ」
お千代「ヘンゼルのおはなし楽しみにしてたのに、これでまた退屈になっちゃったんよ。流石にもう寝るのには飽きたんよ」
お千代「今は雨もぽつぽつ振り……これくらいなら外に出ても風邪ひいたりしないんよ」
お千代「……最近ずーっと横になってたから、鞠つき全然出来てない…たまにはうちも外で遊びたいんよ……」
お千代「今はこの家にはうちだけだから、ヘンゼルが帰ってくるまでにおふとんに戻ればいいんよ……ちょっとだけ、ちょっとだけなんよ」コソコソ
スタスタ
お千代「んーっ、外の空気は気持ちいいんよー」ンーッ
お千代「うちが病気になってみんなに心配かけたのは嫌だったけど、みんなが優しくしてくれるからそれはすっごく嬉しかったんよね」スッ
お千代「父ちゃんもグレーテルも看病してくれたし、ヘンゼルはうちの為にお米と小豆まで借りて来てくれたんよ。元気になったらちゃんとお礼言わないといけんね。家族がみんな優しくてうちはとっても嬉しいんよ」ニコニコ
トーントーン
お千代「てんてんてんまり、てんてまりー。うち、おいしいまんま食ーべた。赤くて綺麗なあずきまんま。おいしいおいしいあずきまんま食ーべたー」ニコニコ
薄毛のおっさん「……」スッ
キモオタ「我輩がおとぎ話の世界に行くですとwww」ティンカーベル「そう」 ヘンゼルとグレーテル編
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