女「あの、顔色悪いけど大丈夫ですか?」 男「・・・え?」
Part3
40 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2015/07/27(月) 22:22:22.34 ID:umukeLDt0
男「よいしょ・・じゃあオレ階段の下にいるから」
女「・・・うん」
男「あ、鍵」
女「あ、うん。ありがとう」
女母「大丈夫?」
女「うん。一人で降りられるから」
女母「うん」
男「じゃあ、俺帰るから」
女「あ、はい。さようなら」
女母「女ちゃん」
女「なに?」
女母「お勉強教えてるの?」
女「うん」
女母「そうなんだ」
女「?」
女母「・・・じゃあうちも帰りましょう。車乗って」
女「うん」
41 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2015/07/27(月) 22:22:55.74 ID:umukeLDt0
男「・・・」
カリカリ・・
女「ねえ」
男「・・ん?」
女「今日は金曜日なんだけど」
男「知ってるけど」
女「あなた、土曜はどうするつもりなの?」
男「どうするって、何が?」
女「世界史も日本史も、覚えきれてないでしょう?テストは月曜からなんだけど、このままでは高得点はとれないわよ」
男「いや・・オレ別に高得点目指してないんだけど。赤点じゃなければそれでいいし。ていうか、お前が心配することじゃないだろ」
女「ここまでちゃんと教えたんだから、高得点とってもらわなきゃ私の気分が悪いわ」
男「なんだよその理屈。てか、お前のせいで今までにないくらいテスト勉強させられてるから、それなりに高得点はとれんだろ」
女「ダメよ。歴史系科目に明らかに穴があるでしょ」
男「赤点じゃなけりゃいーだろーが」
女「ダメよ。だから・・・・土日はうちで勉強しましょう」
42 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2015/07/27(月) 22:23:32.68 ID:umukeLDt0
男「は?」
女「家の場所分からないと思うから、明日はお母さんがあなたを迎えに行きます」
男「は?・・なに?マジで意味分かんねーんだけど?」
女「連絡を取り合うため、携帯の番号を教えなさい」
男「いや、お前・・・ていうか、そこまでしてもらう義理は無い」
女「・・・・お母さんに、あなたに階段を降りることを手伝ってもらっていたことを言ったら、お礼がしたいから家に連れてきなさいと言って聞かないのよ・・・」
男「・・・・・・はー」
オレと目を合わせない女の顔からは、どこか困ったようにうつむいた表情が見て取れた。
さっきの強引な物言いも、おそらくは母親からの言づけを直接オレに言うのがもどかしかったからだろう。
もう充分赤点回避の可能性を感じていたオレからすれば、迷惑極まりない話だったが、女の母親の気持ちも分からないでもない。
それに、ここでオレが行かなかったら、こいつの母親は自分の娘が学校内で友人にどう思われているか、という点について、良からぬ勘違いをするかもしれない。
なんとなくそれは嫌だったので、オレは諦めのため息をついた。
男「赤外線。オレが送信でいいか?」
女「・・・へ?」
男「ケータイだよ。連絡先交換すんだろ?」
女「あ、うん」
男「明日の時間は、家帰ってから連絡するんでいいか?」
女「・・・ええ」
43 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2015/07/27(月) 22:24:16.60 ID:umukeLDt0
***
ピンポーン
ガチャ
男「あ・・どうも。おはようございます」
女母「おはようございます。乗ってくださいな」
男「はい」
バタン
ブロロロロ・・
男「あの・・なんかすいません。別にオレ、そんなに感謝されるようなことしてないですから。オレの方も女さんに世話になったので」
女母「生徒会室でサッカー部の練習見てたんでしょ?」
男「あ、ハイそうです。知ってるんですね」
女母「ええ。娘から聞いてますよ」
男「はぁ」
女母「・・・でも、今日お招きしたのは、そんな事じゃあ無いんです」
男「?」
女母「うちの子は、あの通り車椅子で他の人と比べて出来ないことがたくさんあります」
男「・・・」
女母「でもあの子は、自分がそうだからといって他人に迷惑をかけたくないと言って、なんでも自分でやろうとします」
男「・・・そうですね」
44 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2015/07/27(月) 22:24:59.51 ID:umukeLDt0
女母「階段を降りるのだって、最初は生徒会の皆さんが手伝おうとしてくれたみたいだったんですが、どうやら断ったようで」
男「・・・」
女母「だから、あなたが娘が階段を降りるの手伝ってるって聞いた時はびっくりしました」
男「いや・・まあ、手伝ってるといっても車椅子を持って先に階段降りてるだけですが・・」
女母「それに、あの子は自分からあまり人と関わろうとしなかったんですが」
男(いや・・・最初めっちゃ因縁つけてきたんだが)
女母「今はあなたといっしょに勉強しているそうですね」
男「あ・・いえ。色々あって勉強教わってます」
女母「・・小学生ぐらいまでは、友達といっしょに勉強することも多かったようなんですが、最近はうちに友達を連れてくることもなくなりました」
男「・・・」
女母「また昔みたいに、仲のいいお友達を作ってほしくて、こんな形であなたを強引に呼んでしまいました。ごめんなさい」
男「・・・いえ。別に気にしてないっす」
女母「ありがとう。うちの子、結構キツイこと言うことあるけど、根はやさしい子だからよかったら仲良くしてあげてください」
女の母親の言葉は、なんとなく感じていた予感と一致した。
女はたぶん、自分で自分を律することができる強い人間なんだろう。
だが、親からすれば良く見えない学校生活でのわが子の様子は不安であるはずだ。
増してや、ハンディを持つ子であれば。
だからこれは、女のためやオレのためというより、むしろ女の家族のためという気持ちからの行動だ。
45 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2015/07/27(月) 22:25:35.72 ID:umukeLDt0
**
女「・・・えっと、今日はお疲れ様です」
男「なんだそりゃ」
女「・・・」
男「あー・・・まあおかげで嫌いな世界史も少し覚えた気がする」
女「そう」
男「どーも」
女「ええ」
男「じゃあ、オレ帰るわ」
女「あ・・明日の時間は」
男「今日と同じでいいんじゃねー?」
女「お母さんに伝えときます」
男「あ、うん」
オレは、次の日も同じように夕食までご馳走になって帰路についた。
女の家には、母と姉がいた。
女の姉も、女の母と同じように女のことを案じていたようだった。
これで少しは女の家族も安心するだろう。
あなたの家族の一員である女は、学校でちゃんと友達とうまくやっていますよ。
と、言ってきたつもりだ。
別に女にそんな事をする義理は無いし、女はそんな事をしてもらわなくても自分で何でもできそうだと思ったが。
そういう訳で、かつてないほど定期試験のために勉強したオレは、赤点なく夏休みに突入するはずだった。
52 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2015/07/28(火) 19:33:08.26 ID:M/5D64iY0
ミーン
ミーン
ミーン・・
女「・・・なんで、あなたがここにいるの?」
男「・・・補習」
女「あれだけ勉強教えたのに!日本史?世界史?」
男「・・・・数学」
女「え?・・・数学得意なんじゃなかった?」
男「たぶんだけど・・・・マークミスだ。最後なんでマークシートが余ったんだろうと疑問を感じた記憶がある」
女「はぁ・・・バカじゃないの?」
男「ッチ・・・うるせーな!オレが一番ダメージ受けてんだよ!ていうか、なんでお前も学校来てんだよ」
女「生徒会は休みのときも活動があるんです。ヒマなあなたと違って」
男「オレだって補習なきゃ部活やってんだよ」
女「補習ある人が何偉そうに言ってるの?」
男「・・クソが」
「おい、男。何廊下で騒いでんだよ。そろそろ補習はじまるぞ」
男「あ・ああ」
女「・・・ふんっ!」
男「・・・ッチ!」
53 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2015/07/28(火) 19:33:42.23 ID:M/5D64iY0
「なあ」
男「あんだよ」
「なんでお前が数学の補習にいるんだ?」
男「・・・たぶんマークミスだ」
「バーカ」
男「うっせ!」
「ははは」
男「はぁ・・・おかげで部活も出れねーよ」
「・・・そういやさ、お前さっきA組の女さんと話してなかった?」
男「あー・・・なんかムカついてきた」
「てゆーか・・・なんか仲良さげだったように見えたけど」
男「仲良くはない。色々あって話すようになっただけだ」
「おい、青春か?」
男「はぁ?死ねよ」
「おいこらお前ら!真面目に補習受けろ!!」
「うーっす」
男「・・・」
54 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2015/07/28(火) 19:34:21.61 ID:M/5D64iY0
「つーかさ、お前突き指した後生徒会行ってなかった?」
男「え?なんで知ってんだ?」
「いや、グラウンド使う運動部のやつは結構知ってるぞ。お前、生徒会の窓からグラウンド見てただろ」
男「あー・・・いやうちの部のキャプテンとかには言っといたんだけど、あそこからだと練習の風景良く見えるから、あそこから見学してたんだよ」
「女さんといっしょにか?」
男「・・・は?」
「いや、俺はお前に言われるまで女さんが覗いてるの知らなかったんだけど、うちの陸部とか野球の奴とか、結構知ってる奴いたみたいで、噂になってたぞ」
男「噂?何の?」
「最近、生徒会の窓から、女さんじゃなくお前が覗いてるって」
男「・・・・いや、意味わからんし」
「いつの間に女さんと仲良くなったんだ?」
男「いやだから、仲良くはない。グラウンド覗いてんの気が散るからやめろって言いに行った後、あそこからだとうちの部がよく見えるから、突き指治るまで見学させてくれって言っただけだ」
「・・・まあ別にいいけど、なんつーかあれだな。青春ってやつか?」
男「なんか引っかかる言い方やめろ。蹴り入れるぞ」
55 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2015/07/28(火) 19:34:55.80 ID:M/5D64iY0
「じゃあ今日はここまで。ちゃんと復習しろよ」
「へーい」
ガラガラ
男「あーかったりー・・・オレ帰るけどお前は?」
「俺も帰るわ。どうせ補習者は部活出してもらえないしなー」
男「じゃあさ、うちでモンハンでもしねー?」
「いいな、久しぶりに狩るか!」
女「ダメよ」
「え?」
男「は?」
女「あなた、ちょっと話があるから来てくれない?」
男「はっ?!」
ざわざわ・・ざわざわ・・
女「生徒会室に居ますから」
がらがらがらがらがら・・・
「マジかよ」
「え、やっぱり男って女さんと?」
男「おい・・なんだこの空気」
「いや・・・行くしかないだろ。行ってこい。後で報告しろよ」
男「え?すげー行きたくないんだけど」
「いや、行くべきだろ」
「男、最低野郎だな」
男「・・・・ッチ」
56 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2015/07/28(火) 19:35:26.87 ID:M/5D64iY0
コンコンコン
女「どうぞ」
ガラガラ
男「おい・・・お前、何のつもりだよ」
女「何が?」
男「お前のせいで、いらん注目集めただろうが!」
女「ちょっと待って。私の仕事ももう少しで終わるから」
男「おい!」
女「気が散るからちょっと黙っててくれる?」
男「・・・ッチ」
女「あ、お茶は入れてあるから飲んで待ってて」
男「・・・」
ずず・・
女「よし、終わり」
男「・・・はぁ・・・で?何?俺帰ってモンハンしたいんだけど」
女「ゲームなんて夏休みじゃなくてもできるでしょ?」
男「いちいちうるせーな」
女「あ、ごめんなさい」
男「は?」
女「あなたに、お願いがあります」
男「へ?」
57 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2015/07/28(火) 19:36:00.11 ID:M/5D64iY0
女「私に勉強を教えてください」
男「・・・・・・は?」
女「あなた、数学かなり得意でしょ?」
男「・・・まぁ」
女「数学補習のあなたにお願いするのはなんか変な気分だけど」
男「おい・・・ていうかお前別に補習じゃないし、数学苦手ってわけでもないだろ」
女「私、文系だから、どちらかと言えば数学は苦手」
男「そうなのか?でも別に人に教わるほどじゃないだろ」
女「いえ、あなたに教わりたいのは“統計学”です」
男「統計学?いや、オレもそんな勉強したことねーし」
女「私のとりたい資格の科目に統計学があるの。でも文系の私には参考書を読んでもよく分からないところが多々あるのよ。だからあなたに教えてもらいたいと思って」
男「・・・それって、つまりまず俺が、その統計学の参考書を読んだうえでお前に噛み砕いて教えるって意味?」
女「まあ、そういう事になるかしらね」
男「パス。オレにメリット無いうえにすごい時間かかりそう」
女「ちゃんとアルバイト代出します」
男「は?」
58 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2015/07/28(火) 19:36:32.80 ID:M/5D64iY0
女「勉強するときは喫茶店とかファミレスとかでやろうと思うの。そこでのご飯代は私が出します」
男「いや・・別にそんなんいらんし」
女「それに、あなたが部活ある時は頼みません」
男「・・・でもオレも夏休みの宿題とかやる時間必要だし」
女「いっしょにやれば早く終わります」
男「・・・」
男(正直・・宿題が早く終わるのは魅力的だけど・・オレの時間どれくらい削られるのか全く想像がつねーな)
『よかったら仲良くしてあげてくださいね』
男「はぁ・・・」
女「?」
男「お前は明日も来んの?」
女「えっと・・はい、来ます」
男「じゃあ参考書持ってきて。それ見てから決める。あまりに難しそうだったらオレだって無理だから諦めてくれ」
女「ありがとう!」
男「よいしょ・・じゃあオレ階段の下にいるから」
女「・・・うん」
男「あ、鍵」
女「あ、うん。ありがとう」
女母「大丈夫?」
女「うん。一人で降りられるから」
女母「うん」
男「じゃあ、俺帰るから」
女「あ、はい。さようなら」
女母「女ちゃん」
女「なに?」
女母「お勉強教えてるの?」
女「うん」
女母「そうなんだ」
女「?」
女母「・・・じゃあうちも帰りましょう。車乗って」
女「うん」
41 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2015/07/27(月) 22:22:55.74 ID:umukeLDt0
男「・・・」
カリカリ・・
女「ねえ」
男「・・ん?」
女「今日は金曜日なんだけど」
男「知ってるけど」
女「あなた、土曜はどうするつもりなの?」
男「どうするって、何が?」
女「世界史も日本史も、覚えきれてないでしょう?テストは月曜からなんだけど、このままでは高得点はとれないわよ」
男「いや・・オレ別に高得点目指してないんだけど。赤点じゃなければそれでいいし。ていうか、お前が心配することじゃないだろ」
女「ここまでちゃんと教えたんだから、高得点とってもらわなきゃ私の気分が悪いわ」
男「なんだよその理屈。てか、お前のせいで今までにないくらいテスト勉強させられてるから、それなりに高得点はとれんだろ」
女「ダメよ。歴史系科目に明らかに穴があるでしょ」
男「赤点じゃなけりゃいーだろーが」
女「ダメよ。だから・・・・土日はうちで勉強しましょう」
42 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2015/07/27(月) 22:23:32.68 ID:umukeLDt0
男「は?」
女「家の場所分からないと思うから、明日はお母さんがあなたを迎えに行きます」
男「は?・・なに?マジで意味分かんねーんだけど?」
女「連絡を取り合うため、携帯の番号を教えなさい」
男「いや、お前・・・ていうか、そこまでしてもらう義理は無い」
女「・・・・お母さんに、あなたに階段を降りることを手伝ってもらっていたことを言ったら、お礼がしたいから家に連れてきなさいと言って聞かないのよ・・・」
男「・・・・・・はー」
オレと目を合わせない女の顔からは、どこか困ったようにうつむいた表情が見て取れた。
さっきの強引な物言いも、おそらくは母親からの言づけを直接オレに言うのがもどかしかったからだろう。
もう充分赤点回避の可能性を感じていたオレからすれば、迷惑極まりない話だったが、女の母親の気持ちも分からないでもない。
それに、ここでオレが行かなかったら、こいつの母親は自分の娘が学校内で友人にどう思われているか、という点について、良からぬ勘違いをするかもしれない。
なんとなくそれは嫌だったので、オレは諦めのため息をついた。
男「赤外線。オレが送信でいいか?」
女「・・・へ?」
男「ケータイだよ。連絡先交換すんだろ?」
女「あ、うん」
男「明日の時間は、家帰ってから連絡するんでいいか?」
女「・・・ええ」
43 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2015/07/27(月) 22:24:16.60 ID:umukeLDt0
***
ピンポーン
ガチャ
男「あ・・どうも。おはようございます」
女母「おはようございます。乗ってくださいな」
男「はい」
バタン
ブロロロロ・・
男「あの・・なんかすいません。別にオレ、そんなに感謝されるようなことしてないですから。オレの方も女さんに世話になったので」
女母「生徒会室でサッカー部の練習見てたんでしょ?」
男「あ、ハイそうです。知ってるんですね」
女母「ええ。娘から聞いてますよ」
男「はぁ」
女母「・・・でも、今日お招きしたのは、そんな事じゃあ無いんです」
男「?」
女母「うちの子は、あの通り車椅子で他の人と比べて出来ないことがたくさんあります」
男「・・・」
女母「でもあの子は、自分がそうだからといって他人に迷惑をかけたくないと言って、なんでも自分でやろうとします」
男「・・・そうですね」
44 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2015/07/27(月) 22:24:59.51 ID:umukeLDt0
女母「階段を降りるのだって、最初は生徒会の皆さんが手伝おうとしてくれたみたいだったんですが、どうやら断ったようで」
男「・・・」
女母「だから、あなたが娘が階段を降りるの手伝ってるって聞いた時はびっくりしました」
男「いや・・まあ、手伝ってるといっても車椅子を持って先に階段降りてるだけですが・・」
女母「それに、あの子は自分からあまり人と関わろうとしなかったんですが」
男(いや・・・最初めっちゃ因縁つけてきたんだが)
女母「今はあなたといっしょに勉強しているそうですね」
男「あ・・いえ。色々あって勉強教わってます」
女母「・・小学生ぐらいまでは、友達といっしょに勉強することも多かったようなんですが、最近はうちに友達を連れてくることもなくなりました」
男「・・・」
女母「また昔みたいに、仲のいいお友達を作ってほしくて、こんな形であなたを強引に呼んでしまいました。ごめんなさい」
男「・・・いえ。別に気にしてないっす」
女母「ありがとう。うちの子、結構キツイこと言うことあるけど、根はやさしい子だからよかったら仲良くしてあげてください」
女の母親の言葉は、なんとなく感じていた予感と一致した。
女はたぶん、自分で自分を律することができる強い人間なんだろう。
だが、親からすれば良く見えない学校生活でのわが子の様子は不安であるはずだ。
増してや、ハンディを持つ子であれば。
だからこれは、女のためやオレのためというより、むしろ女の家族のためという気持ちからの行動だ。
**
女「・・・えっと、今日はお疲れ様です」
男「なんだそりゃ」
女「・・・」
男「あー・・・まあおかげで嫌いな世界史も少し覚えた気がする」
女「そう」
男「どーも」
女「ええ」
男「じゃあ、オレ帰るわ」
女「あ・・明日の時間は」
男「今日と同じでいいんじゃねー?」
女「お母さんに伝えときます」
男「あ、うん」
オレは、次の日も同じように夕食までご馳走になって帰路についた。
女の家には、母と姉がいた。
女の姉も、女の母と同じように女のことを案じていたようだった。
これで少しは女の家族も安心するだろう。
あなたの家族の一員である女は、学校でちゃんと友達とうまくやっていますよ。
と、言ってきたつもりだ。
別に女にそんな事をする義理は無いし、女はそんな事をしてもらわなくても自分で何でもできそうだと思ったが。
そういう訳で、かつてないほど定期試験のために勉強したオレは、赤点なく夏休みに突入するはずだった。
52 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2015/07/28(火) 19:33:08.26 ID:M/5D64iY0
ミーン
ミーン
ミーン・・
女「・・・なんで、あなたがここにいるの?」
男「・・・補習」
女「あれだけ勉強教えたのに!日本史?世界史?」
男「・・・・数学」
女「え?・・・数学得意なんじゃなかった?」
男「たぶんだけど・・・・マークミスだ。最後なんでマークシートが余ったんだろうと疑問を感じた記憶がある」
女「はぁ・・・バカじゃないの?」
男「ッチ・・・うるせーな!オレが一番ダメージ受けてんだよ!ていうか、なんでお前も学校来てんだよ」
女「生徒会は休みのときも活動があるんです。ヒマなあなたと違って」
男「オレだって補習なきゃ部活やってんだよ」
女「補習ある人が何偉そうに言ってるの?」
男「・・クソが」
「おい、男。何廊下で騒いでんだよ。そろそろ補習はじまるぞ」
男「あ・ああ」
女「・・・ふんっ!」
男「・・・ッチ!」
53 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2015/07/28(火) 19:33:42.23 ID:M/5D64iY0
「なあ」
男「あんだよ」
「なんでお前が数学の補習にいるんだ?」
男「・・・たぶんマークミスだ」
「バーカ」
男「うっせ!」
「ははは」
男「はぁ・・・おかげで部活も出れねーよ」
「・・・そういやさ、お前さっきA組の女さんと話してなかった?」
男「あー・・・なんかムカついてきた」
「てゆーか・・・なんか仲良さげだったように見えたけど」
男「仲良くはない。色々あって話すようになっただけだ」
「おい、青春か?」
男「はぁ?死ねよ」
「おいこらお前ら!真面目に補習受けろ!!」
「うーっす」
男「・・・」
54 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2015/07/28(火) 19:34:21.61 ID:M/5D64iY0
「つーかさ、お前突き指した後生徒会行ってなかった?」
男「え?なんで知ってんだ?」
「いや、グラウンド使う運動部のやつは結構知ってるぞ。お前、生徒会の窓からグラウンド見てただろ」
男「あー・・・いやうちの部のキャプテンとかには言っといたんだけど、あそこからだと練習の風景良く見えるから、あそこから見学してたんだよ」
「女さんといっしょにか?」
男「・・・は?」
「いや、俺はお前に言われるまで女さんが覗いてるの知らなかったんだけど、うちの陸部とか野球の奴とか、結構知ってる奴いたみたいで、噂になってたぞ」
男「噂?何の?」
「最近、生徒会の窓から、女さんじゃなくお前が覗いてるって」
男「・・・・いや、意味わからんし」
「いつの間に女さんと仲良くなったんだ?」
男「いやだから、仲良くはない。グラウンド覗いてんの気が散るからやめろって言いに行った後、あそこからだとうちの部がよく見えるから、突き指治るまで見学させてくれって言っただけだ」
「・・・まあ別にいいけど、なんつーかあれだな。青春ってやつか?」
男「なんか引っかかる言い方やめろ。蹴り入れるぞ」
55 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2015/07/28(火) 19:34:55.80 ID:M/5D64iY0
「じゃあ今日はここまで。ちゃんと復習しろよ」
「へーい」
ガラガラ
男「あーかったりー・・・オレ帰るけどお前は?」
「俺も帰るわ。どうせ補習者は部活出してもらえないしなー」
男「じゃあさ、うちでモンハンでもしねー?」
「いいな、久しぶりに狩るか!」
女「ダメよ」
「え?」
男「は?」
女「あなた、ちょっと話があるから来てくれない?」
男「はっ?!」
ざわざわ・・ざわざわ・・
女「生徒会室に居ますから」
がらがらがらがらがら・・・
「マジかよ」
「え、やっぱり男って女さんと?」
男「おい・・なんだこの空気」
「いや・・・行くしかないだろ。行ってこい。後で報告しろよ」
男「え?すげー行きたくないんだけど」
「いや、行くべきだろ」
「男、最低野郎だな」
男「・・・・ッチ」
56 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2015/07/28(火) 19:35:26.87 ID:M/5D64iY0
コンコンコン
女「どうぞ」
ガラガラ
男「おい・・・お前、何のつもりだよ」
女「何が?」
男「お前のせいで、いらん注目集めただろうが!」
女「ちょっと待って。私の仕事ももう少しで終わるから」
男「おい!」
女「気が散るからちょっと黙っててくれる?」
男「・・・ッチ」
女「あ、お茶は入れてあるから飲んで待ってて」
男「・・・」
ずず・・
女「よし、終わり」
男「・・・はぁ・・・で?何?俺帰ってモンハンしたいんだけど」
女「ゲームなんて夏休みじゃなくてもできるでしょ?」
男「いちいちうるせーな」
女「あ、ごめんなさい」
男「は?」
女「あなたに、お願いがあります」
男「へ?」
57 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2015/07/28(火) 19:36:00.11 ID:M/5D64iY0
女「私に勉強を教えてください」
男「・・・・・・は?」
女「あなた、数学かなり得意でしょ?」
男「・・・まぁ」
女「数学補習のあなたにお願いするのはなんか変な気分だけど」
男「おい・・・ていうかお前別に補習じゃないし、数学苦手ってわけでもないだろ」
女「私、文系だから、どちらかと言えば数学は苦手」
男「そうなのか?でも別に人に教わるほどじゃないだろ」
女「いえ、あなたに教わりたいのは“統計学”です」
男「統計学?いや、オレもそんな勉強したことねーし」
女「私のとりたい資格の科目に統計学があるの。でも文系の私には参考書を読んでもよく分からないところが多々あるのよ。だからあなたに教えてもらいたいと思って」
男「・・・それって、つまりまず俺が、その統計学の参考書を読んだうえでお前に噛み砕いて教えるって意味?」
女「まあ、そういう事になるかしらね」
男「パス。オレにメリット無いうえにすごい時間かかりそう」
女「ちゃんとアルバイト代出します」
男「は?」
58 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2015/07/28(火) 19:36:32.80 ID:M/5D64iY0
女「勉強するときは喫茶店とかファミレスとかでやろうと思うの。そこでのご飯代は私が出します」
男「いや・・別にそんなんいらんし」
女「それに、あなたが部活ある時は頼みません」
男「・・・でもオレも夏休みの宿題とかやる時間必要だし」
女「いっしょにやれば早く終わります」
男「・・・」
男(正直・・宿題が早く終わるのは魅力的だけど・・オレの時間どれくらい削られるのか全く想像がつねーな)
『よかったら仲良くしてあげてくださいね』
男「はぁ・・・」
女「?」
男「お前は明日も来んの?」
女「えっと・・はい、来ます」
男「じゃあ参考書持ってきて。それ見てから決める。あまりに難しそうだったらオレだって無理だから諦めてくれ」
女「ありがとう!」
ショートストーリーの人気記事
神様「神様だっ!」 神使「神力ゼロですが・・・」
神様の秘密とは?神様が叶えたかったこととは?笑いあり、涙ありの神ss。日常系アニメが好きな方におすすめ!
→記事を読む
女「ハローハロー。誰かいませんか?どうぞ」
→記事を読む
キモオタ「我輩がおとぎ話の世界に行くですとwww」ティンカーベル「そう」
→記事を読む
魔王「世界の半分はやらぬが、淫魔の国をくれてやろう」
→記事を読む
男「少し不思議な話をしようか」女「いいよ」
→記事を読む
同僚女「おーい、おとこ。起きろ、起きろー」
→記事を読む
妹「マニュアルで恋します!」
→記事を読む
きのこの山「最後通牒だと……?」たけのこの里「……」
→記事を読む
月「で……であ…でぁー…TH…であのて……?」
→記事を読む
彡(゚)(゚)「お、居酒屋やんけ。入ったろ」
→記事を読む