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女「あの、顔色悪いけど大丈夫ですか?」 男「・・・え?」

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Part10
184 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2015/08/07(金) 22:00:49.41 ID:L0ubC2tO0
**
女「見て、すごくきれいね」
男「・・・・ああ」
パステル画のような、夏の雲と乾いた青空。
それぞれが全身で夏を表現しているような、見渡す限りのヒマワリ。
そして、白いワンピースと赤いリボンのついた麦わら帽子の彼女。
現実感が無いほどの美しさに、ごくり、と息をのんだ。
景色に飲み込まれて、動けなくなったオレは、彼女と目が合った。
彼女は目を細めると、オレの方に手を伸ばした。
半ば自動的にオレが手を出すと、彼女はオレに掴まり体重を預けた。
彼女が立ち上がると、再び風景が動き出した。
男「・・・キレイだな」
女「うん」

185 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2015/08/07(金) 22:01:24.86 ID:L0ubC2tO0
男「その服、去年水族館行った時のだよな」
女「・・・うん」
男「・・似合ってる・・・すごくかわいいと思う」
女「・・・ばか//」
彼女の身に着けているもので、あの時と違うところがあるとすればそれは、胸元のペンダントくらいだろう。
女「この服・・・・実はあなたに水族館誘われた後に買いに行ったの」
男「・・・そっか」
女「あなたが・・・気に入ってくれて嬉しいです//」
男「ん」
彼女とオレは、そのまま手を繋ぎ、ヒマワリの中を数歩歩いた。
彼女が座りたいと言うから、オレは彼女を彼女の車に乗せ、ヒマワリ畑を見下ろせる屋根のあるベンチまで彼女を押した。
ベンチに座ると彼女は、鞄から二人分の昼ご飯を出した。
彼女が作ったその昼ご飯は、彼女の家の味なのだろう。
オレには少し甘い味付けだった。

186 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2015/08/07(金) 22:01:57.26 ID:L0ubC2tO0
**
ドーン・・・
ドーン・・・
男「・・・」
女「・・・」
約束の時間に、オレたちは彼女の兄の車に拾われて、そこから1時間ほど走った場所の海岸線に下ろされた。
海を臨むその護岸には、大勢の人が集まっていた。
今日は花火大会だったようだ。
それは、彼女が今日を選んだ理由の一つでもあったようだ。
オレたちを下ろすと、彼女の兄は再び車に乗り込みどこかへと走って行った。
花火が終わるころ、迎えに来てくれるという。
オレは彼女の兄にお礼を言うとともに、彼女が彼女の家族に大切にされているということを改めて感じた。
ひゅるひゅる・・・・・・・・・ドーン!
男「あ・・・なんか今の花火、昼間のヒマワリみたいだな」
女「ふふ・・そうだね」

187 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2015/08/07(金) 22:02:27.46 ID:L0ubC2tO0
男「ヒマワリ、好きなんだな」
女「ええ・・・ヒマワリって強いじゃない」
男「強い?」
女「他の花と違って、とても強い茎を持っている。そして地面に力強く立っている」
男「・・・」
女「それなのにとっても健気で、ずっと太陽の方を見ているのよ・・・・太陽に届くことは無いのに」
男「・・・女」
女「?」
男「さっき・・・恥ずかしくて言えなかったけど、お前はヒマワリよりもずっときれいだった」
女「っ//」
男「行きたいところがあったら、オレがどこにでも連れてってやる。これからもずっと」
ヒュルルルルルルルルルルルルルル・・・・・・・・ドオオオオオオオオオンン!!!
横目で盗み見た彼女の頬は、涙で濡れているように見えた。
しかしながらオレは、闇に咲く花火から目を逸らさず、彼女の肩に静かに手を置いた。

190 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2015/08/07(金) 22:32:38.72 ID:L0ubC2tO0
***
冬が近づいていた。
教室は寒く、寒さに弱い彼女は学校を休みがちになった。
オレは彼女のことが少し心配で、受験勉強に身が入らないでいた。
彼女はそんなオレを叱咤した。
そしていつもの喫茶店で二人で勉強する日が続いた。
女「コラ、私の方チラチラ見てないで、ちゃんと勉強しなさい」
男「なんだよ、良いだろ。好きな人の事チラチラ見るくらい」
女「ばっばか//」
男「にしても、お前は受験勉強しないのか?ずっと資格の勉強してるように見えるけど」
女「あら?言ってなかったっけ?私、受験しないわよ」
男「へー・・・・えっ?!!」
女「私、資格取る方を優先したいから。資格取ってから、時間あったら大学行くわ」
男「マジか・・・オレもそうしようかな」
女「あなたは別に目的にしてる資格なんて無いでしょうが!」
男「えー・・・おれも会計士目指そうかなー」
女「もう!そんなに簡単に取れるものじゃないのよ」


191 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2015/08/07(金) 22:33:10.36 ID:L0ubC2tO0
女「そういう訳で、私は時間あるから、あなたがちゃんと勉強するように見張ってます」
男「マジか」
女「だってあなた、この前の模試の結果、第一志望Dだったでしょ」
男「う・・・・まあ何とかなるよ」
女「何とかならなかったらどうするの!」
男「そしたら浪人かなぁ」
女「あ、もうこれダメだわ。今年のクリスマスは勉強決定ね」
男「げ・・マジ?」
女「まじです」
男「はぁ・・・せめて一緒に勉強してくれるか」
女「・・・・しょ、しょうがないわね」
男「なー」
女「何よ」
男「オレ、お前と一緒にいられればそれでいいから」
女「・・・ふん//」
2学期が終わり、予告通りオレは彼女と一緒に勉強する日々が続いた。
冬が深まり、クリスマスの頃になると、寒さからか彼女はあまり家から出たがらなくなった。
だからオレは、彼女の家の彼女の部屋で一緒に勉強するようになった。
人は、幸せがもうその手の中にある時は、それ以上のために努力をしなくなるものだ。
いくつかの不安を抱えたまま、オレはセンター試験の日を迎えた。

192 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2015/08/07(金) 22:33:41.81 ID:L0ubC2tO0
**
女『自己採点どうだった?』
男「・・・・・正直ちょっとやばいかも」
女『えっ?!』
男「まあ私立もあるし、何とかなるよ」
女『・・・ならいいけど』
男「お前のほうはどうだ?」
女『え?何の?』
男「資格の勉強してるんじゃないのか?」
女『あ、うん。順調よ』
男「そっか・・なあ、今日会いに行ってもいいか?」
女『・・コラ、まだ二次も私立も受けるんだから勉強しなさい』
男「お前と一緒に勉強したい」
女『ダメよ。あなた、私と一緒だと集中してないもの』
男「ちぇー」

193 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2015/08/07(金) 22:34:16.01 ID:L0ubC2tO0
女『とにかく、ちゃんと集中して勉強しなさい。私も私の事やっているんだから』
男「はーい」
女『結果が出たら、報告してください・・・いい知らせ、待ってます』
男「ん」
電話を切るとオレは、家路についた。
自分の部屋でスタンド・ライトをつけて問題集を開く。
やはり集中できない。
得意の数学もなぜか公式さえ浮かばない。
ダメだ、今日は集中できない。
オレはベッドに横になると、ケータイをいじって、デートのときの彼女の写真を見る。
会った日から、一緒にすごした1年半分の彼女の肖像を眺め、思い出す。
もうすぐ卒業だ。
卒業したらオレは、彼女と。
甘い妄想に浸りながら眠りにつく。
そんな日が何日か続いた。
そして、オレの大学受験は終了した。

194 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2015/08/07(金) 22:34:47.22 ID:L0ubC2tO0
Trrrrrrrr・・・
・・ピッ
男「もしもし」
女『あ・・・男君』
男「うん」
女『結果、出たよね?どうだった?』
男「・・・」
女『・・・国立、ダメだった?』
男「ゴメン・・・どっちもダメだった」
女『え?・・・どっちも?』
男「私立も」
女『・・・そっか』
男「・・・どうしよっかな」
女『え?』
男「来年、受験しようかどうしようかって」
女『受験しないで、どうするの?』
男「わかんねー」

195 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2015/08/07(金) 22:35:18.57 ID:L0ubC2tO0
女『分からない、じゃあ無いでしょう?』
男「オレさぁ・・・何だろ・・・お前と一緒にいられればそれでいいやって思うからさ」
女『・・・・』
男「・・・・」
長い沈黙があった。
オレの中での答えは、浪人するという事で決まっていたが、浪人して、特に行きたい大学があるわけではなかった。
彼女のように、やりたい仕事があるわけでもなかった。
ただ今はなんとなく、彼女に甘えたかった。
だが彼女は、そんなオレを許せなかった。
オレをそうしてしまった、彼女自身を許せなかった。
女「あなたの・・・そういうところが大っ嫌いです」
男「・・女」
女「実力はあるのに、全力を出さないところが大っ嫌いです!」
女「私のために、部活辞めて、私と一緒にいることを優先して、自分の勉強を疎かにするところが大っ嫌いです!!」
女「あなたを、そうしてしまった、私の・・・自分の甘さが大っ嫌いです!!」
男「・・・女・・・ごめん・・オレ・・」
女「・・・別れましょう」
男「・・・・・え?」

196 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2015/08/07(金) 22:35:53.00 ID:L0ubC2tO0
女「このまま一緒にいたら、あなたも、私も前に進めなくなります」
男「・・嫌だ」
女「あなたの将来が台無しになってしまいます」
男「嫌だ・・嫌だ!」
女「もう、あなたが家に来ても、私はあなたに会いません」
男「女っ・・嫌だっ・・オレっ!!」
女「男君」
男「え?」
女「私に誇れるものを持ってきてください」
男「え?・・え?」
女「私に自慢できる、あなたの将来を持ってきてください・・・その時、もう一度会いましょう。その続きは、その時考えましょう」
男「女っ!!」
女「さよなら」
ガチャン・・・プー・・・プー・・・

197 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2015/08/07(金) 22:36:37.73 ID:L0ubC2tO0
何度かけなおしても、その日は電話が通じることは無かった。
オレは布団に包まって泣き続けた。
オレが手放してしまったものの大きさをかみしめた。
空が白んだ頃、やっと少し冷静さを取り戻し、彼女と最後に喋ったことを思い出していた。
彼女の声も震えていた。
ずっと彼女を見てきた俺には分かる。
ああいう声のとき、彼女は表情を変えずに泣いている。
彼女もまた、辛いのだ。
辛いが、オレのためにあえて手を離したのだ。
彼女はオレのことを愛してくれている。
オレが彼女を愛しているように。
だからオレは彼女の愛に包まれている。
オレはいつだって彼女に敵わない。
彼女はうまく歩くことができない。
でも、本当の意味でうまく歩けていないのはオレだった。
オレが彼女の手を引くように、彼女は今、オレの手を引いてくれているんだ。
夜が明けて、オレはシャワーを浴びた。
目標ができた。
来年の冬が終わる頃、オレは彼女に自慢できるものを持って、彼女に会いに行く。

198 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2015/08/07(金) 22:37:04.18 ID:L0ubC2tO0
今日はここまでにします

199 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2015/08/07(金) 22:41:37.38 ID:6VWxksHno

画面が汗で見えなくなってきたから>>1のパンツ貸してくれ

200 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2015/08/07(金) 22:53:48.11 ID:2OdAH96BO
すでに胸が苦しい……

201 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2015/08/08(土) 08:36:38.24 ID:/ED8k+mq0


202 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2015/08/08(土) 14:52:00.29 ID:QOECzu/lO
乙です
頑張れ男

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