神様「神様だっ!」 神使「神力ゼロですが・・・」
Part34
889 : ◆8YCWQhLlF2:2016/07/26(火) 01:09:31 ID:r3J1jPRQ
ーーー 翌日
神使「神様! 神様!」ユッサ ユッサ
神様「なんだよ〜 もう少し優しく起こせよ・・・」ムニャムニャ
神使「狸さんを捕まえたそうです!」
神様「よっしゃ! 神使よ、私の正装を!」ガバッ
神使「ボロボロですが・・・」
神様「あぁ・・・ Tシャツと短パンで・・・」
890 : ◆8YCWQhLlF2:2016/07/26(火) 01:10:20 ID:r3J1jPRQ
ーーー こわこわ神社
神様「うわっ、なんか人だかりができてるぞ」
神使「警察もいますね」
村人「入れろよ!」
警官「ダメです。 近づかないで下さい」
女将「お願いです! 入れて下さい!」
警官「ダメダメ」
神使「すいません、関係者ですが中に入れてもらえないでしょうか」
警官「関係者? どちらさん?」
神使「神社を管理しております神宮の者なのですが」
警官「神宮?」
891 : ◆8YCWQhLlF2:2016/07/26(火) 01:11:22 ID:r3J1jPRQ
村長「あっ、神使様」スタスタ
警官「村長さん」
村長「関係者の方です。 入れてあげて下さい」
警官「はぁ・・・ どうぞ」
神使「ありがとうございます」
神様「どうも〜」
警官「おっと、お嬢ちゃんはダメだよ」
神様「私も関係者! 神宮の者!」
警官「その格好で?」
神様「・・・・・・装束汚れちゃったんだもん」ブーブー
村長「そちらの方も入れて下さい」
警官「・・・・・・どうぞ」
神様「サンキュー」スタスタ
892 : ◆8YCWQhLlF2:2016/07/26(火) 01:11:58 ID:r3J1jPRQ
女将「私たちも関係者です!」
警官「ダメだって言ってんでしょ」
村人「神罰が下るぞ!」
神使「村長さん、これは一体・・・」
村長「狸狩りをしているところを村人に見つかってしまいまして・・・」
神様「あ〜 それでこんななってんのか」
神使「狸さんが捕まったと伺いましたが」
村長「はい、社務所にいます。 どうぞ」
スタスタ
893 : ◆8YCWQhLlF2:2016/07/26(火) 01:12:50 ID:r3J1jPRQ
── 社務所
神様・神使「・・・・・・」
神使「あの、これは・・・」
村長「8匹捕まえましたが、どれが神力を持った狸か分からずでして」
神使「神様、お分かりになりますか?」
神様「え? う〜ん・・・ あっ、あの右端のヤツ!」
狸「!?」
神様「さてと、ハロ〜 たぬちゃ〜ん」
狸「・・・・・・」
神使「神様、いくら何でも言葉は通じないと思うのですが・・・」
神様「そうかな〜?」ゴソゴソ
神使「何してるんです?」
894 : ◆8YCWQhLlF2:2016/07/26(火) 01:13:49 ID:r3J1jPRQ
神様「これな〜んだ」
狸「!?」
神使「牡蠣せんべい?」
狸「くれ!」
神使・村長「・・・・・・」
神様「やっぱり」ニヤッ
狸「あっ!」
村長「狸がしゃべった・・・」
狸「私には“たぬ吉”という名がある」
神使・村長「・・・・・・」
895 : ◆8YCWQhLlF2:2016/07/26(火) 01:14:27 ID:r3J1jPRQ
神様「おい、たぬ吉さんよ〜」
たぬ吉「なんだ」
神様「お前、私のかわゆい神ちゃん象どこに隠したんだ?」
たぬ吉「知らん」
神様「この煎餅、牡蠣が丸ごと入ってんだよ。 おいしいぞ?」
たぬ吉「旅館の女将が持ってる」
神様「ほぉ」
たぬ吉「その煎餅くれ!」
神様「ほれ」
たぬ吉「うまい!」ムシャムシャ
896 : ◆8YCWQhLlF2:2016/07/26(火) 01:15:04 ID:r3J1jPRQ
神使「神様、これは一体・・・」
神様「神力の影響だ」
神使「言葉をしゃべると言うことは神使と同じと言うことですか?」
神様「いや、神使になる過程をすっ飛ばして神になったな。 お前人の姿になれるか?」
たぬ吉「私はただしゃべることができる狸なだけだ」
村長「こんなことって・・・」
神使「どうされるんですか? 神様」
神様「おい、たぬ吉」
たぬ吉「なんだ」
神様「お前、どうしたい?」
たぬ吉「どうとは?」
神様「・・・・・・」
897 : ◆8YCWQhLlF2:2016/07/26(火) 01:15:51 ID:r3J1jPRQ
たぬ吉「私は普通の生活に戻りたい、しかしここの村民の願いも叶えてやりたい」
神様「願い?」
たぬ吉「この村は見ての通り何も無い退屈な所だ。 年に数回の神事が皆の唯一の楽しみだからな」
村長「神事というのは?」
たぬ吉「わらわい神事」
神使「わらわい神事?」
たぬ吉「明日が本祭の予定だ」
神様「どんな神事だ?」
たぬ吉「参加してみるか?」
神様「・・・・・・明日夜に来れば良いんだな?」
898 : ◆8YCWQhLlF2:2016/07/26(火) 01:16:49 ID:r3J1jPRQ
神使「神様、まさか・・・」
神様「ご神体が無い状況じゃどうしようもない。 村長、たぬ吉を一度解放してやってくれ」
村長「神様がそれでよろしければ」
たぬ吉「うむ」
神使「このまま解放して大丈夫でしょうか・・・」
神様「大丈夫だ」
たぬ吉「この力はお嬢ちゃんの物なんだろ?」
神様「・・・・・・」
たぬ吉「明日の神事後に私から力を抜くのであれば従う。 元々私の力じゃないしな」
神様「・・・・・・」
たぬ吉「それでは、明日会おう」テクテク
899 : ◆8YCWQhLlF2:2016/07/26(火) 01:18:17 ID:r3J1jPRQ
ーーー 境内
女将「あっ、たぬ吉様!」
村人「ご無事か!」
狸「・・・・・・」タッ タッ タッ
女将「あなたたち一体・・・」
神様「私は、神宮に籍を置く神だ」
女将「!?」
神様「こっちは、私の神使で狛犬」
神使「神様の使いで狛犬の神使と申します」
村人「神と神使だぁ?」
900 : ◆8YCWQhLlF2:2016/07/26(火) 01:19:24 ID:r3J1jPRQ
神様「神使よ、狛犬になれ」
神使「はい」ボンッ
女将・村民「!?」
神様「納得したか?」
女将「うそ・・・」
神様「お前たちが崇めるたぬ吉が神としてふさわしいかを明日確認させてもらう」
女将「・・・・・・」
村人「よそ者が何を!」
神様「あれは正式な手順を踏まずに神の力を得た。 これはあってはならない事だ」キリッ
村人「・・・・・・」
神様「明日の神事如何で今後の対応を決めることにした。 決定は覆らない」
女将「・・・・・・」
901 : ◆8YCWQhLlF2:2016/07/26(火) 01:20:12 ID:r3J1jPRQ
神様「いくぞ、神使」
神使「はい」
神様「村長、車を」
村長「え? 神様?」
スタスタ
神使「偉そうな事を言ってますが、元凶は神様ですよ? 分かってます?」ボソッ
神様「うっせー、あいつらに聞こえるだろ! ここは格好つける場面だ、黙ってろ!」
村長「神様? 私、車で来ていないのですが・・・」ボソッ
神様「・・・・・・」
903 : ◆8YCWQhLlF2:2016/07/27(水) 01:21:02 ID:TANvLE/A
ーーー 翌日・こわこわ神社
神使「結構大勢の村の方がいますね」
神様「これだけの人数がいてよく今まで極秘にできたな」
村長「村のほとんどの人間がいるとは・・・」
女将「わらわい神事へようこそ。 本日は半年に一度の本祭、存分に楽しんで下さい」
ワーワー
ガヤガヤ
神使「申し訳ございません、一体どのような神事なのでしょうか?」
女将「今日の本祭は、たぬ吉さまがお話しになる笑い話を最後まで拝聴する神事です」
神様「はい?」
女将「途中で笑ったら即退場。 笑いをこらえた者だけが、たぬ吉さまのお話を最後まで聞くことができるんです」
神使「はぁ・・・」
村人「たぬ吉さまのお話は、爆笑必至だ。 気を許すと一発で退場だぞ」
神様「・・・・・・」
904 : ◆8YCWQhLlF2:2016/07/27(水) 01:21:53 ID:TANvLE/A
女将「前の方の席を空けますので座ってお聞きになりますか?」
神様「いや、私たちは後ろで立って聞くから気にしないでくれ」
女将「分かりました」スタスタ
神使「神様、座らなくてもよろしいんですか?」
神様「私たちは部外者だ。 わきまえろ」
神使「失礼いたしました」
女将「それでは! たぬ吉さま〜 ご入場〜」
トテトテ
たぬ吉「始める」
神様「早っ」ズコッ
905 : ◆8YCWQhLlF2:2016/07/27(水) 01:23:16 ID:TANvLE/A
たぬ吉「神宮に一人の女神さまがいたそうだ」
神様「」ピクッ
女将「神ちゃんシリーズだわ! これは爆笑必至ね」
村人「俺、このシリーズ最後まで聞いたこと無いんだ。 今日は絶対こらえてみせる!」
神様「・・・・・・」
たぬ吉「女神さまは神力が使えず神宮の神職から役立たずと罵られていたが、持ち前の明るさで毎日元気に過ごしていた」
たぬ吉「ある日女神さまは自身の分社を作ろうと、わらわら神社からご神体を借り受けて別の神社に向かっていたそうだ」
神使「(このお話ってもしかして・・・)」チラッ
神様「なんだ?」ギロッ
神使「・・・・・・いえ」
906 : ◆8YCWQhLlF2:2016/07/27(水) 01:24:17 ID:TANvLE/A
たぬ吉「女神さまは途中・・・ この村に立ち寄った」
女将「この村のお話!?」
ザワザワ
たぬ吉「数百年ぶりに村に神様がお越し下さった! 村人は女神さまにおもてなしを沢山した」
たぬ吉「女神さまの好物が牡蠣であることを知れば牡蠣ご飯を用意し、甘い飲み物が好きと知ればうんと甘い飲み物を献上した」
神様「・・・・・・」
たぬ吉「数日後、女神さまはこの村をたつため本殿の扉を開けると、そこに一匹の狸が倒れていた」
たぬ吉「そう・・・ この神社の本殿・・・ 神宮から来たお嬢ちゃんが立っている場所だった」
神様「・・・・・・」
907 : ◆8YCWQhLlF2:2016/07/27(水) 01:25:22 ID:TANvLE/A
たぬ吉「狸は、とある事情でまもなく死を迎えようとしていたそうだ」
たぬ吉「女神さまは、その狸に自身のご神体の一部をなんの躊躇もなく割って飲み込ませた」
たぬ吉「狸の体を女神さまの優しさが包み込んだ」
たぬ吉「女神さまは、その狸が回復するのを待つまでこの村に残ると言ってくれた」
たぬ吉「村人たちは、そんなことなど露知らず・・・ いつまでたっても居座る女神さまに不信感を募らせていった」
たぬ吉「裕福でない村は神様の食事を献上するのが大変だったのだ」
たぬ吉「女神さまは献上はしなくて良いと何度も話をしたが、神罰におびえる村人は牡蠣ご飯を献上し続けた」
たぬ吉「女神さまは、献上された牡蠣ご飯を狸にすべて与えてくれた」
たぬ吉「なんとか命の危機を脱した狸が女神さまにお礼をしようとしたその時・・・」
村人「」ゴクリ
908 : ◆8YCWQhLlF2:2016/07/27(水) 01:27:01 ID:TANvLE/A
たぬ吉「女神さまは村人に捕らえられ、隣町まで連れて行かれてしまったそうだ」
たぬ吉「狸は村人を恨んだ・・・ 自分を死の淵に追いやるだけでなく、命を救って下さった心優しい女神さまにこんな仕打ちをするなんて・・・」
たぬ吉「しかし狸の中にある女神さまの神力は、そんな村人を全く恨んでなどいなかった・・・」
神使「・・・・・・」
たぬ吉「女神さま・・・」トテトテ
神様「?」
たぬ吉「命をお助けいただきありがとうございます」チョコン
神様「・・・・・・」
女将「!? 女神さまって!」
村人「この女の子が・・・!?」
ザワザワ
909 : ◆8YCWQhLlF2:2016/07/27(水) 01:27:51 ID:TANvLE/A
たぬ吉「私は、あのとき以来ずっと村人のみんなを笑顔にするために生きてきました」
たぬ吉「みんなの笑顔が私の何よりの宝物でした」
神様「そうか・・・」
たぬ吉「ご神体の神力をお返しいたします」
神様「・・・・・・」
女将「たぬ吉さま!」
村人「そんな・・・」
神様「今のお前から神力を抜くと死ぬぞ?」
たぬ吉「心得ております」
神様「覚悟の上か・・・」
神使「神様・・・」
910 : ◆8YCWQhLlF2:2016/07/27(水) 01:28:44 ID:TANvLE/A
神様「神勅を申し伝える!」
一同「!?」
神様「私、神様は“たぬ吉”をこわこわ神社の主神として任命する!」
たぬ吉「なっ・・・!」
神様「たぬ吉よ、お前は本日をもって神籍に登録。 神階を従三位とする」
神様「村人達よ、たぬ吉は人の姿を持たぬ特殊な神だ。 皆でたぬ吉を守ってやってくれ」
女将「女神さま・・・」
911 : ◆8YCWQhLlF2:2016/07/27(水) 01:29:23 ID:TANvLE/A
神様「村長」
村長「はい」
神様「申し訳けないが、もうしばらくこの村に残ってこの社の宮司を兼任してくれるか?」
村長「しかとお受けいたしました」フカブカ
神様「あ〜 それと、神宮には・・・」
村長「承知しております。 私からは一切報告の方は行いません」
神様「すまない」
神様「神使よ」
神使「はい」
神様「神籍登録を神宮に通達せよ」
神使「承知いたしました」フカブカ
神様「以上、神宮審査神・神様から神勅を申し伝えた」
912 : ◆8YCWQhLlF2:2016/07/27(水) 01:30:22 ID:TANvLE/A
神様「私たちは失礼する。 皆、神事を続けて大いに楽しんでくれ」
たぬ吉「・・・・・・」
神様「たぬ吉、酷かもしれないがお前の役目末永く続けよ」
神様「行くぞ、神使」
神使「神様、ご神体の方は・・・」
神様「もう100年以上この神社にあるんだ。 この村の物だ」
たぬ吉「女神さま・・・」
神様「今日からお前と私は同じ神だ。 神には上も下もない。 さま付けはやめろ」
たぬ吉「はい、かわゆい神ちゃん」
神様「!? たぬ吉! お前が初めてだ! 私をそう呼んでくれたのは!!」ウルウル
ーーー 翌日
神使「神様! 神様!」ユッサ ユッサ
神様「なんだよ〜 もう少し優しく起こせよ・・・」ムニャムニャ
神使「狸さんを捕まえたそうです!」
神様「よっしゃ! 神使よ、私の正装を!」ガバッ
神使「ボロボロですが・・・」
神様「あぁ・・・ Tシャツと短パンで・・・」
890 : ◆8YCWQhLlF2:2016/07/26(火) 01:10:20 ID:r3J1jPRQ
ーーー こわこわ神社
神様「うわっ、なんか人だかりができてるぞ」
神使「警察もいますね」
村人「入れろよ!」
警官「ダメです。 近づかないで下さい」
女将「お願いです! 入れて下さい!」
警官「ダメダメ」
神使「すいません、関係者ですが中に入れてもらえないでしょうか」
警官「関係者? どちらさん?」
神使「神社を管理しております神宮の者なのですが」
警官「神宮?」
891 : ◆8YCWQhLlF2:2016/07/26(火) 01:11:22 ID:r3J1jPRQ
村長「あっ、神使様」スタスタ
警官「村長さん」
村長「関係者の方です。 入れてあげて下さい」
警官「はぁ・・・ どうぞ」
神使「ありがとうございます」
神様「どうも〜」
警官「おっと、お嬢ちゃんはダメだよ」
神様「私も関係者! 神宮の者!」
警官「その格好で?」
神様「・・・・・・装束汚れちゃったんだもん」ブーブー
村長「そちらの方も入れて下さい」
警官「・・・・・・どうぞ」
神様「サンキュー」スタスタ
892 : ◆8YCWQhLlF2:2016/07/26(火) 01:11:58 ID:r3J1jPRQ
女将「私たちも関係者です!」
警官「ダメだって言ってんでしょ」
村人「神罰が下るぞ!」
神使「村長さん、これは一体・・・」
村長「狸狩りをしているところを村人に見つかってしまいまして・・・」
神様「あ〜 それでこんななってんのか」
神使「狸さんが捕まったと伺いましたが」
村長「はい、社務所にいます。 どうぞ」
スタスタ
893 : ◆8YCWQhLlF2:2016/07/26(火) 01:12:50 ID:r3J1jPRQ
── 社務所
神様・神使「・・・・・・」
神使「あの、これは・・・」
村長「8匹捕まえましたが、どれが神力を持った狸か分からずでして」
神使「神様、お分かりになりますか?」
神様「え? う〜ん・・・ あっ、あの右端のヤツ!」
狸「!?」
神様「さてと、ハロ〜 たぬちゃ〜ん」
狸「・・・・・・」
神使「神様、いくら何でも言葉は通じないと思うのですが・・・」
神様「そうかな〜?」ゴソゴソ
神使「何してるんです?」
神様「これな〜んだ」
狸「!?」
神使「牡蠣せんべい?」
狸「くれ!」
神使・村長「・・・・・・」
神様「やっぱり」ニヤッ
狸「あっ!」
村長「狸がしゃべった・・・」
狸「私には“たぬ吉”という名がある」
神使・村長「・・・・・・」
895 : ◆8YCWQhLlF2:2016/07/26(火) 01:14:27 ID:r3J1jPRQ
神様「おい、たぬ吉さんよ〜」
たぬ吉「なんだ」
神様「お前、私のかわゆい神ちゃん象どこに隠したんだ?」
たぬ吉「知らん」
神様「この煎餅、牡蠣が丸ごと入ってんだよ。 おいしいぞ?」
たぬ吉「旅館の女将が持ってる」
神様「ほぉ」
たぬ吉「その煎餅くれ!」
神様「ほれ」
たぬ吉「うまい!」ムシャムシャ
896 : ◆8YCWQhLlF2:2016/07/26(火) 01:15:04 ID:r3J1jPRQ
神使「神様、これは一体・・・」
神様「神力の影響だ」
神使「言葉をしゃべると言うことは神使と同じと言うことですか?」
神様「いや、神使になる過程をすっ飛ばして神になったな。 お前人の姿になれるか?」
たぬ吉「私はただしゃべることができる狸なだけだ」
村長「こんなことって・・・」
神使「どうされるんですか? 神様」
神様「おい、たぬ吉」
たぬ吉「なんだ」
神様「お前、どうしたい?」
たぬ吉「どうとは?」
神様「・・・・・・」
897 : ◆8YCWQhLlF2:2016/07/26(火) 01:15:51 ID:r3J1jPRQ
たぬ吉「私は普通の生活に戻りたい、しかしここの村民の願いも叶えてやりたい」
神様「願い?」
たぬ吉「この村は見ての通り何も無い退屈な所だ。 年に数回の神事が皆の唯一の楽しみだからな」
村長「神事というのは?」
たぬ吉「わらわい神事」
神使「わらわい神事?」
たぬ吉「明日が本祭の予定だ」
神様「どんな神事だ?」
たぬ吉「参加してみるか?」
神様「・・・・・・明日夜に来れば良いんだな?」
898 : ◆8YCWQhLlF2:2016/07/26(火) 01:16:49 ID:r3J1jPRQ
神使「神様、まさか・・・」
神様「ご神体が無い状況じゃどうしようもない。 村長、たぬ吉を一度解放してやってくれ」
村長「神様がそれでよろしければ」
たぬ吉「うむ」
神使「このまま解放して大丈夫でしょうか・・・」
神様「大丈夫だ」
たぬ吉「この力はお嬢ちゃんの物なんだろ?」
神様「・・・・・・」
たぬ吉「明日の神事後に私から力を抜くのであれば従う。 元々私の力じゃないしな」
神様「・・・・・・」
たぬ吉「それでは、明日会おう」テクテク
899 : ◆8YCWQhLlF2:2016/07/26(火) 01:18:17 ID:r3J1jPRQ
ーーー 境内
女将「あっ、たぬ吉様!」
村人「ご無事か!」
狸「・・・・・・」タッ タッ タッ
女将「あなたたち一体・・・」
神様「私は、神宮に籍を置く神だ」
女将「!?」
神様「こっちは、私の神使で狛犬」
神使「神様の使いで狛犬の神使と申します」
村人「神と神使だぁ?」
900 : ◆8YCWQhLlF2:2016/07/26(火) 01:19:24 ID:r3J1jPRQ
神様「神使よ、狛犬になれ」
神使「はい」ボンッ
女将・村民「!?」
神様「納得したか?」
女将「うそ・・・」
神様「お前たちが崇めるたぬ吉が神としてふさわしいかを明日確認させてもらう」
女将「・・・・・・」
村人「よそ者が何を!」
神様「あれは正式な手順を踏まずに神の力を得た。 これはあってはならない事だ」キリッ
村人「・・・・・・」
神様「明日の神事如何で今後の対応を決めることにした。 決定は覆らない」
女将「・・・・・・」
901 : ◆8YCWQhLlF2:2016/07/26(火) 01:20:12 ID:r3J1jPRQ
神様「いくぞ、神使」
神使「はい」
神様「村長、車を」
村長「え? 神様?」
スタスタ
神使「偉そうな事を言ってますが、元凶は神様ですよ? 分かってます?」ボソッ
神様「うっせー、あいつらに聞こえるだろ! ここは格好つける場面だ、黙ってろ!」
村長「神様? 私、車で来ていないのですが・・・」ボソッ
神様「・・・・・・」
903 : ◆8YCWQhLlF2:2016/07/27(水) 01:21:02 ID:TANvLE/A
ーーー 翌日・こわこわ神社
神使「結構大勢の村の方がいますね」
神様「これだけの人数がいてよく今まで極秘にできたな」
村長「村のほとんどの人間がいるとは・・・」
女将「わらわい神事へようこそ。 本日は半年に一度の本祭、存分に楽しんで下さい」
ワーワー
ガヤガヤ
神使「申し訳ございません、一体どのような神事なのでしょうか?」
女将「今日の本祭は、たぬ吉さまがお話しになる笑い話を最後まで拝聴する神事です」
神様「はい?」
女将「途中で笑ったら即退場。 笑いをこらえた者だけが、たぬ吉さまのお話を最後まで聞くことができるんです」
神使「はぁ・・・」
村人「たぬ吉さまのお話は、爆笑必至だ。 気を許すと一発で退場だぞ」
神様「・・・・・・」
904 : ◆8YCWQhLlF2:2016/07/27(水) 01:21:53 ID:TANvLE/A
女将「前の方の席を空けますので座ってお聞きになりますか?」
神様「いや、私たちは後ろで立って聞くから気にしないでくれ」
女将「分かりました」スタスタ
神使「神様、座らなくてもよろしいんですか?」
神様「私たちは部外者だ。 わきまえろ」
神使「失礼いたしました」
女将「それでは! たぬ吉さま〜 ご入場〜」
トテトテ
たぬ吉「始める」
神様「早っ」ズコッ
905 : ◆8YCWQhLlF2:2016/07/27(水) 01:23:16 ID:TANvLE/A
たぬ吉「神宮に一人の女神さまがいたそうだ」
神様「」ピクッ
女将「神ちゃんシリーズだわ! これは爆笑必至ね」
村人「俺、このシリーズ最後まで聞いたこと無いんだ。 今日は絶対こらえてみせる!」
神様「・・・・・・」
たぬ吉「女神さまは神力が使えず神宮の神職から役立たずと罵られていたが、持ち前の明るさで毎日元気に過ごしていた」
たぬ吉「ある日女神さまは自身の分社を作ろうと、わらわら神社からご神体を借り受けて別の神社に向かっていたそうだ」
神使「(このお話ってもしかして・・・)」チラッ
神様「なんだ?」ギロッ
神使「・・・・・・いえ」
906 : ◆8YCWQhLlF2:2016/07/27(水) 01:24:17 ID:TANvLE/A
たぬ吉「女神さまは途中・・・ この村に立ち寄った」
女将「この村のお話!?」
ザワザワ
たぬ吉「数百年ぶりに村に神様がお越し下さった! 村人は女神さまにおもてなしを沢山した」
たぬ吉「女神さまの好物が牡蠣であることを知れば牡蠣ご飯を用意し、甘い飲み物が好きと知ればうんと甘い飲み物を献上した」
神様「・・・・・・」
たぬ吉「数日後、女神さまはこの村をたつため本殿の扉を開けると、そこに一匹の狸が倒れていた」
たぬ吉「そう・・・ この神社の本殿・・・ 神宮から来たお嬢ちゃんが立っている場所だった」
神様「・・・・・・」
907 : ◆8YCWQhLlF2:2016/07/27(水) 01:25:22 ID:TANvLE/A
たぬ吉「狸は、とある事情でまもなく死を迎えようとしていたそうだ」
たぬ吉「女神さまは、その狸に自身のご神体の一部をなんの躊躇もなく割って飲み込ませた」
たぬ吉「狸の体を女神さまの優しさが包み込んだ」
たぬ吉「女神さまは、その狸が回復するのを待つまでこの村に残ると言ってくれた」
たぬ吉「村人たちは、そんなことなど露知らず・・・ いつまでたっても居座る女神さまに不信感を募らせていった」
たぬ吉「裕福でない村は神様の食事を献上するのが大変だったのだ」
たぬ吉「女神さまは献上はしなくて良いと何度も話をしたが、神罰におびえる村人は牡蠣ご飯を献上し続けた」
たぬ吉「女神さまは、献上された牡蠣ご飯を狸にすべて与えてくれた」
たぬ吉「なんとか命の危機を脱した狸が女神さまにお礼をしようとしたその時・・・」
村人「」ゴクリ
908 : ◆8YCWQhLlF2:2016/07/27(水) 01:27:01 ID:TANvLE/A
たぬ吉「女神さまは村人に捕らえられ、隣町まで連れて行かれてしまったそうだ」
たぬ吉「狸は村人を恨んだ・・・ 自分を死の淵に追いやるだけでなく、命を救って下さった心優しい女神さまにこんな仕打ちをするなんて・・・」
たぬ吉「しかし狸の中にある女神さまの神力は、そんな村人を全く恨んでなどいなかった・・・」
神使「・・・・・・」
たぬ吉「女神さま・・・」トテトテ
神様「?」
たぬ吉「命をお助けいただきありがとうございます」チョコン
神様「・・・・・・」
女将「!? 女神さまって!」
村人「この女の子が・・・!?」
ザワザワ
909 : ◆8YCWQhLlF2:2016/07/27(水) 01:27:51 ID:TANvLE/A
たぬ吉「私は、あのとき以来ずっと村人のみんなを笑顔にするために生きてきました」
たぬ吉「みんなの笑顔が私の何よりの宝物でした」
神様「そうか・・・」
たぬ吉「ご神体の神力をお返しいたします」
神様「・・・・・・」
女将「たぬ吉さま!」
村人「そんな・・・」
神様「今のお前から神力を抜くと死ぬぞ?」
たぬ吉「心得ております」
神様「覚悟の上か・・・」
神使「神様・・・」
神様「神勅を申し伝える!」
一同「!?」
神様「私、神様は“たぬ吉”をこわこわ神社の主神として任命する!」
たぬ吉「なっ・・・!」
神様「たぬ吉よ、お前は本日をもって神籍に登録。 神階を従三位とする」
神様「村人達よ、たぬ吉は人の姿を持たぬ特殊な神だ。 皆でたぬ吉を守ってやってくれ」
女将「女神さま・・・」
911 : ◆8YCWQhLlF2:2016/07/27(水) 01:29:23 ID:TANvLE/A
神様「村長」
村長「はい」
神様「申し訳けないが、もうしばらくこの村に残ってこの社の宮司を兼任してくれるか?」
村長「しかとお受けいたしました」フカブカ
神様「あ〜 それと、神宮には・・・」
村長「承知しております。 私からは一切報告の方は行いません」
神様「すまない」
神様「神使よ」
神使「はい」
神様「神籍登録を神宮に通達せよ」
神使「承知いたしました」フカブカ
神様「以上、神宮審査神・神様から神勅を申し伝えた」
912 : ◆8YCWQhLlF2:2016/07/27(水) 01:30:22 ID:TANvLE/A
神様「私たちは失礼する。 皆、神事を続けて大いに楽しんでくれ」
たぬ吉「・・・・・・」
神様「たぬ吉、酷かもしれないがお前の役目末永く続けよ」
神様「行くぞ、神使」
神使「神様、ご神体の方は・・・」
神様「もう100年以上この神社にあるんだ。 この村の物だ」
たぬ吉「女神さま・・・」
神様「今日からお前と私は同じ神だ。 神には上も下もない。 さま付けはやめろ」
たぬ吉「はい、かわゆい神ちゃん」
神様「!? たぬ吉! お前が初めてだ! 私をそう呼んでくれたのは!!」ウルウル
神様「神様だっ!」 神使「神力ゼロですが・・・」
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