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神娘「我を呼んだか!」男「呼んでません」

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Part28
891: ◆lwQY2qw84A:2013/10/31(木) 23:18:13 ID:Bv4jmR.s
男「(神様)」
男「(時々不思議に思う)」
男「(なぜこんなにも神様に固執しているんだろうか)」
男「(神主だから?)」
男「(あの場所に居たから?)」
男「(付き合いが長いから?)」
男「(違う、そうじゃない)」
男「(もっと深い所で、神様に執着している自分が居る)」
男「(なんだ?)」
男「(それはなんだ?)」
男「……明日にしよう」
男「今日は疲れた」
男「…おやすみ」
神娘「……」
ヒュルルルルル…

892: ◆lwQY2qw84A:2013/10/31(木) 23:19:25 ID:Bv4jmR.s
気付いた 神様居ないとテンポ悪い
登場人物少ないからね シカタナイネ

896: ◆lwQY2qw84A:2013/11/01(金) 09:07:50 ID:XIAuiqW2
――――――
男「……」
神娘「人の子」
男「…神様」
神娘「なぜお前は、私を待っているのだ」
男「待っていたいからさ」
神娘「目覚めるか分からない私の為にか?」
男「うん」
神娘「時間を無為に使うな」
男「神様を待っている時間は、決して無意味ではないと思うけどな」
神娘「…お前は馬鹿か?」
男「馬鹿じゃなきゃこんなことしてないさ」
神娘「…努力が報われない時もあると、知らないのだろうな」
男「知らないからこうしている」
神娘「もういい!そのままそこで朽ち果てるがいい!」

897: ◆lwQY2qw84A:2013/11/01(金) 09:13:54 ID:XIAuiqW2
男「……」
―――――
男「…夢か」バッ
男「夢の中にまで出てくるとはな、どうかしてるよ」フルフル
ヒュルルルルル…
男「…寒い」ブルルッ
男「外に行くか」トントンッ
ヒュゥ……
男「日が昇る」
男「また一つ日が昇る」
男「…いつまで待てばいい?」
男「何度こうして、昇っては沈むのを見ていればいい?」
男「……神様」

898: ◆lwQY2qw84A:2013/11/01(金) 12:52:30 ID:XIAuiqW2
―――――
―――
月日は流れる
男「神様、今日は晴れてるよ」
神娘「……」
男「一緒に外に行こうか、おぶって行くよ」
神娘「……」
男「風邪引いたりしてね、そう言えば神様って風邪引くのかな」
神娘「……」
男「目覚めたら第一に風邪をひいたりしてね、看病しなくちゃ」
神娘「……」
男「うん、じゃあ行こうか」


899: ◆lwQY2qw84A:2013/11/01(金) 12:55:09 ID:XIAuiqW2
――――――
太陽は昇り、沈む
男「うーん、髭も生えない」
神娘「……」
男「まあ手入れしなくていいのはいいけどね」
神娘「……」
男「これもこの森が止まってるからなのかな、でも一日は過ぎていくし…どうなんだろ」
神娘「……」
男「まあ神様に聞いても分からないって言うだろうな、うん」
神娘「……」
男「本当になー、不思議の森だよここは」

900: ◆lwQY2qw84A:2013/11/01(金) 12:57:41 ID:XIAuiqW2
昇っては沈む
男「吹雪って嫌だな、やっぱり」
神娘「……」
沈んでは昇る
男「なんかどこもかしこも白くて飽きるな」
神娘「……」
男「偶には赤とか黄色とか…秋の色が見たい」
太陽は一直線上を進んで往く
男「雪って、なんで冷たいんだろうな」
神娘「……」

901: ◆lwQY2qw84A:2013/11/01(金) 13:01:29 ID:XIAuiqW2
昇る
男「何年経ったんだろ」
沈む
男「冬にも慣れたな」
昇っては
男「随分ここに居る気がする」
沈む
男「…分からない」
―――――
同じ日々が続く
続く
男「なあ、もうそろそろ目覚めても良いんだと思うんだけどな」

902: ◆lwQY2qw84A:2013/11/01(金) 13:05:16 ID:XIAuiqW2
続く
「飽きちゃないよ」
続く
男「辞めたくなる時はあったけどさ」
続く続く
「でも、神主だから神様を放っては置けないだろ?」
続く続く続く
「そう思ったらなんだか、まだやれそうな気がしてさ」
終わりも見えない日々が永劫に続く
「そしたらなんかさ、途中からよく分からなくなって」
無意味な積み重ねが
「進んでるのか戻ってるのか分からなくなって」

903: ◆lwQY2qw84A:2013/11/01(金) 13:07:14 ID:XIAuiqW2
続く
「ぐちゃぐちゃで、なんかもうどうでも良くなって」
続く
「おかしくなっちゃったのかな」
続く
「もう、訳わかんないよ」
ただ、続く
「神様」
「もう神様の声が思い出せないんだよ」

904: ◆lwQY2qw84A:2013/11/01(金) 13:10:31 ID:XIAuiqW2
「最初はぼやけたみたいに時々聞こえ辛くなるぐらいだった」
「気のせいかなと思ったんだけど、やっぱり思い出し辛くなって」
「そのうちぶつ切りになって」
「細切れになって」
「もう思い出せない」
「あれだけ聞いたのに思い出せない」
「どうしよう」
「どうしたらいいんだよ」
「分からないよ神様」
「もう神様を思い出せないんだよ」
「どうしたら…」

905:以下、名無しが深夜にお送りします:2013/11/01(金) 15:38:25 ID:fLo7y1JY
(´;ω;`)

906: ◆lwQY2qw84A:2013/11/01(金) 16:01:13 ID:XIAuiqW2
「分からない」
「別に、神様の事なんて放っておいてもよかったんだ」
「今だけじゃない、最初に助けを請われた時も無視すればよかったんだ」
「だってそうだろう?自分には関係のない事だ」
「あの時神様を無視しても何の不利益も無かったんだ」
「それでも、無視できなかった」
「神様が倒れたあの時だってそうだ」
「諦めればよかった」
「そうすれば日常に戻れたんだ」
「でも」
「そんな事、出来ない」
「神様を諦めるなんて出来なかった」
「なんでだろう」
「分からない」

907: ◆lwQY2qw84A:2013/11/01(金) 16:13:56 ID:XIAuiqW2
男「静かだ」
男「雪は音を吸収するから冬は静かなんだって、神様言ってたっけ」
男「……」
男「寒いな」
男「神様、寒くないかい?」
神娘「……」
男「聞こえてる訳ないか」
「教えてあげるよ」

908: ◆lwQY2qw84A:2013/11/01(金) 16:48:49 ID:XIAuiqW2
神娘「……」ポロッ
男「……うん?」
男「神様、こんな髪留めしてたっけ」スッ
男「違う、これは…生花だ」サワサワ
男「…この花、どこかで見た事がある」
男「淡い紫色で、綺麗な…」
――――「さっき綺麗な花があったから――に見せようと思って」
男「神様に、似合いそうな…」
――――「なんか紫の花でさ、綺麗だから」
男「……あ」
男「…しおんだ、これ…」

909: ◆lwQY2qw84A:2013/11/01(金) 16:56:56 ID:XIAuiqW2
――――――
娘「教えてあげるよ、紫苑の花言葉を」
男「特別な意味でもあるのか」
娘「うん、自分が送った花の言葉ぐらい覚えておかなきゃ」
男「いや、何気なく渡したんだがな…」
娘「花を送るのは気持ちを送る事、自分では言い表せない直接的な感情をぶつける事」
男「…そんな重いものだとは知らんかった」
娘「だから覚えておいて、自分の捧げた言葉を」
男「ああ」
娘「耳を貸して、よく聞いて、覚えて」
男「意味があるのか」
娘「きっと役立つよ、危ない時にこの花は繋ぎとめてくれるから」
男「そうか」
娘「この花の、花言葉はね」

910: ◆lwQY2qw84A:2013/11/01(金) 17:01:13 ID:XIAuiqW2
―――『思い出』
男「思い出…」
娘「沢山の思い出、覚えておいてね」
男「忘れる筈無いさ」
娘「本当に?」
男「本当だよ、絶対」
娘「でも、思い出は忘れるものじゃないんだよ」
男「そうなのか?」
娘「思い出せなくなるもの、引出しにしまったまま場所が分からなくなるものなの」
男「自分の意志には関係なくか」
娘「寂しいけど、そう言う事なんだよ」

911: ◆lwQY2qw84A:2013/11/01(金) 17:06:56 ID:XIAuiqW2
『遠方の人を想う』
男「いや神様と遠くないし、すぐ近くだし、人じゃなくて神だし」
娘「距離的には遠くないだろうけど、心理的にはどうなのかな」
男「…分からん」
娘「神様と人間の距離はとても遠いの、別の世界に生きているから」
男「それも、なんだか寂しいな」
娘「想い続ければきっと大丈夫だよ」
男「何が大丈夫なのさ」
娘「さあねー」
男「気になるんだが」

912: ◆lwQY2qw84A:2013/11/01(金) 17:23:47 ID:XIAuiqW2
『追憶』
男「なんか物騒な言葉だな」
娘「そう?どこが?」
男「なんか、もう会えないみたいな」
娘「そんな事も無いと思うよ」
男「そうか?」
娘「また会える、その時まで思い出し続けていればそれも追憶なの」
男「そんな状況に陥るのもあれだけどな」
娘「ま、そうだよね」
男「願わくば、だけどな」
娘「そして、最後の一つ」
男「うん」
娘「忘れないでね、この花を見るたびに思い出して」
男「ああ」
娘「その言葉は」

913: ◆lwQY2qw84A:2013/11/01(金) 17:29:40 ID:XIAuiqW2
―――――
男「あなたを……」
――『あなたを忘れない』
男「忘れない」ギュゥ
男「忘れない」
娘「そう」
男「そうか」
娘「そう思っていれば思い出せるよ」
男「うん」
娘「だから、”忘れない”って思い続けて」
男「分かった」
娘「きっとそれは、力になるから」
男「約束する」
娘「君自身と、約束してね」
男「分かった」


914: ◆lwQY2qw84A:2013/11/01(金) 17:31:20 ID:XIAuiqW2
男「分かった」
―――「おい」
男「忘れないよ」
―――「こっちを向け」
男「絶対忘れない」
―――「…よし」
男「想い続ける」
―――「神主」
男「忘れそうになっても」
―――「笑え、悲しむより笑え」
男「…神様」
―――神娘「それで、いい」
男「…ああ」

915: ◆lwQY2qw84A:2013/11/01(金) 18:33:58 ID:XIAuiqW2
多分もうちょい続くんじゃ

916:以下、名無しが深夜にお送りします:2013/11/01(金) 19:00:52 ID:TAXuPPag
だめだ、涙腺が

917:以下、名無しが深夜にお送りします:2013/11/01(金) 19:44:35 ID:RLEwn27s
そのセリフは倍以上続くフラグ

918: ◆lwQY2qw84A:2013/11/01(金) 21:07:02 ID:XIAuiqW2
―――――
神娘「なあ」
男「うん?」
神娘「もしも、私がお前を好きだといったらどうする?」
男「どうって…分からん」
神娘「…だろうなあ」
男「なんかあれだ、フィルターが掛かったみたいなんだ」
神娘「そういうものだ」
男「うん」
神娘「人と神、神と人、互いに決して交わることの無いように出来ている」
男「なんかあれだな、次元の違いと言うか」
神娘「こちらとしても人間であったうちの同族意識を今は感じんのは、少し寂しいな」
男「神様にとっての人間って?」
神娘「今となっては既に護るべき存在さ」
男「そっか」

919: ◆lwQY2qw84A:2013/11/01(金) 21:22:46 ID:XIAuiqW2
神娘「ただ…」
男「うん?」
神娘「それはあくまでお前が”人間”であればだ」
男「別に人間を止めるつもりは毛頭ないけど」
神娘「それは知っている、が」
男「が」
神娘「往々にしてこの世界には予想外がつきものだ」
男「まあ、そりゃ知ってるけど」
神娘「予想外が無ければ私と出会わなかったわけで、なあ?」
男「でも、人間から外れるって何になるのさ」
神娘「……お前は時々馬鹿なのではないかと思う」
男「なんだと」
神娘「ま、いずれその時が来たら分かる」
男「来なかったら?」
神娘「その時はその時さ、簡単な話だ」

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