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神娘「我を呼んだか!」男「呼んでません」

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Part27
866: ◆lwQY2qw84A:2013/10/29(火) 22:59:44 ID:pFaHwKBk
宮司服「…随分と、凄い突風だっ…」
「お、おい逃げた方がいいか?」
「馬鹿言え、逃げたら元も子もないぞ!」
ビュォッ バビュゥゥ… ビュオォォォ…
「段々と強くなって…」
「吹き飛ばされるぞ!何かに掴まれ!」
伝令「なんでしょう…この風」ゾワッ
宮司服「分からん、だが」
ゴォォォォォォ… ズォォオォォォ…
――――ギャァアアァァ……
――――イゲェァアァイェァアア……
「船が沈んでいく…」
「突風ってレベルじゃねえな、あれ…」
ドドドドドドドドォッ…
宮司服「あれは、紛れも無く”神の力”…」

867: ◆lwQY2qw84A:2013/10/29(火) 23:10:45 ID:pFaHwKBk
男「我は神主」ビュォッ
―――「人の子?」
男「神の代理人としてヒュァッ
―――「お前!」
男「そして、その敵を討つために」ビッ
―――「なあ…いやなんでもない」
男「お前らに」
―――「神主」
男「おてめえらに」
―――「…神主」
男「神罰を下す!」バッ
ビュゴォォォォオオオォォォ… バギンッ  ボキボキボキ…
  ギァアェァア… ……ァ…アア…ァ
―――――「ありがとう」

868: ◆lwQY2qw84A:2013/10/29(火) 23:16:15 ID:pFaHwKBk
――――――
―――――
ザァァァァ…
剣士「結局、あっけなく終わりましたね」
宮司服「こちらの犠牲は最小限で済んだ、これも神の御力の成すところだろう」
ザブゥゥン…
剣士「しかし、神様は…」
宮司服「あの後すぐに神主の姿と神様の御姿が見えなくなった」
剣士「二人でどこかに行ったのでしょうか」
宮司服「恐らくは…いや、余計な詮索だ」
剣士「ええ、しかし人間の身で神力が使えるとは…」
宮司服「…いいや、人間の器で神の力は使えん」
剣士「はて、ちらと神主が風を呼んでいるように見えましたが…」
宮司服「神の力を使えるのは人に非ず、それはつまり―――――」
ザザァ…ザブゥゥゥン…

869: ◆lwQY2qw84A:2013/10/29(火) 23:20:21 ID:pFaHwKBk
――――――――――
――――――
男「思い出すね、こうしていると」ザッ ザッ
神娘「……」
男「初めて一緒に森に出かけた時、こうして神様をおぶってたんだよ」ザッ ザッ
神娘「……」
男「忘れてた?そんな筈無いと思いたいんだけどな」フッ
神娘「……」
男「…どこに行こうか」
神娘「……」
男「帰るか、あの森に」
神娘「……」
ヒュルゥゥゥゥゥゥ…

870: ◆lwQY2qw84A:2013/10/30(水) 05:35:30 ID:WvsWdWWw
―――――
男「…なんだ、これ」
チラチラ… チラチラ
男「視界一面が白い…それで寒い」ブルルッ
男「なんか白いものが振って、それが積もってるのか」
男「夏でも、秋でもない…」ザシュ ザシュ
男「…冷たい」
男「寒い」
男「何も聞こえない」
男「生き物の気配も無い」
―――「生き物に与えられる試練の季節」
男「…そうか、これが”冬”か」
―――「淘汰の季節だよ」
男「…皮肉なもんだ」ブルルッ


871: ◆lwQY2qw84A:2013/10/30(水) 05:36:08 ID:WvsWdWWw
男「神様、着いたよ」
神娘「……」
男「…これからどうなるんだろうな」
神娘「……」
男「本当はさ、割り切れていないんだ」
神娘「……」
男「神様は死んでなんかないって、きっとまた戻ってくるって」
神娘「……」
男「信じているんだ、諦めていないんだ」
神娘「……」
男「目を背けたらそこで終わりなんだ、諦めちゃダメなんだって」
神娘「……」
男「…何言ってるんだろうな」

872: ◆lwQY2qw84A:2013/10/30(水) 05:36:50 ID:WvsWdWWw
男「……寒いな」
神娘「…」
男「ずっと季節なんて暖かい物だと思ってた」
神娘「…」
男「でも、やっぱり想像って甘くできてるんだよな」
神娘「…」
男「…」
神娘「…」
男「…待てよ」
神娘「…」
男「神様がもし死んでいたなら、この空間はどうなるんだ?」

873: ◆lwQY2qw84A:2013/10/30(水) 05:37:22 ID:WvsWdWWw
男「神様の力で構築されていたなら、あの時点で無くなってても良かったんだ」
男「でも、この森には入れたし、しかも季節が動いた」
男「もしかしたら…」バッ
神娘「……」
男「…うん、分かった」
男「信じるよ、信じ続ける」
男「神様がまた帰ってくるって信じる」
男「何年かかっても、何十年かかっても」
男「人間の範囲内で、待つよ」
男「待ってるから」
神娘「……」
男「ずっと、待ってるから」

874: ◆lwQY2qw84A:2013/10/30(水) 05:38:23 ID:WvsWdWWw
多分あと一日二日で終わりです

875:以下、名無しが深夜にお送りします:2013/10/30(水) 06:22:06 ID:rozoO8Qc
IDすげぇな

876: ◆lwQY2qw84A:2013/10/30(水) 07:01:12 ID:h6ZYK/EI
>>875 全部Wじゃないのは信仰心の不足ですね

877:以下、名無しが深夜にお送りします:2013/10/30(水) 16:04:46 ID:JYaICLRM
引き込まれるは

879: ◆lwQY2qw84A:2013/10/31(木) 22:21:24 ID:Bv4jmR.s
――――――
神娘「そう言えば」
男「うん?」
神娘「ここら周辺の木の名前が気になるみたいだな」
男「あ?ああ、そうだな…別に紅葉が綺麗な訳じゃないし、なんでこの木が沢山植わってるかなって」
神娘「ま、木には紅葉だけじゃないのは気付かんようだな」フッ
男「あ、なんか馬鹿にしてるな神様」
神娘「この木はな…いや、今はやめておこう」
男「んだよ…気になるな」
神娘「気になるだろ?その気持ちを取っておけ」
男「えー…」
神娘「焦がれるほどに焦れる様に、その気持ちはきっと理解した時興奮に昇華するだろう」
男「そういうものか?」
神娘「私はお前の顔を見たいのだ、嬉しがる顔、楽しむ顔、全てを見たい」

880: ◆lwQY2qw84A:2013/10/31(木) 22:25:19 ID:Bv4jmR.s
神娘「私は見ていたいんだお前を、お前の全てを」ニコッ
男「……」
―――――――
―――――
ヒュゥゥゥゥ…
男「…は」バッ
男「いかん、幻覚か」ブルブル
男「…まあ、回想とも言うけど」
ビュルゥゥゥゥゥ…
男「う、さむ…」ブルッ
男「…帰るか」ザクッ ザクッ

881: ◆lwQY2qw84A:2013/10/31(木) 22:31:56 ID:Bv4jmR.s
男「……」ザクッ ザクッ
男「(息が白い)」ハァーッ…
男「大分慣れて来たけど、冬は辛いな」
男「……」ザク ザク ザク
男「ただいま」タッ
神娘「……」
男「神様、帰って来たよ」

882: ◆lwQY2qw84A:2013/10/31(木) 22:39:43 ID:Bv4jmR.s
男「あれからどれぐらい経ったんだろうね」
神娘「……」
男「日が昇って…また沈んで、一週間?一年?それとも一日?」
神娘「……」
男「大丈夫だよ、置いて行ったりはしないから」
神娘「……」
男「(相変わらず神様は眠ったままだ)」
神娘「……」
男「(いや、死んでいるのかもしれない…でも腐敗はしてない)」
神娘「……」
男「(この森に相変わらず冬以外の変化は訪れない、ただ静寂な雪が覆っている)」
神娘「……」
男「だからまだ神様は死んでいない、生きてもいない、眠っているだけなのかもしれないと考える」
神娘「……」
男「それに…」

883: ◆lwQY2qw84A:2013/10/31(木) 22:42:41 ID:Bv4jmR.s
男「神様」
神娘「……」
男「信じていれば、それは信仰となって神様の力になるんでしょう?」
神娘「……」
男「だったら、信じるよ」
神娘「……」
男「信仰する」
神娘「……」
男「神様を信仰するよ」
神娘「……」
男「待っているから」
神娘「……」

884: ◆lwQY2qw84A:2013/10/31(木) 22:48:52 ID:Bv4jmR.s
――――
男「さて、偶には飯でも作ろうか…っと」トン
男「(あの時この森に入ってからだろうか、徐々に体に変化が訪れ始めた)」
男「(眠らなくても平気になった、食べなくても平気になった、この雪の中歩き回っても大丈夫になった)」
男「(怪我を負ってもすぐ直る、病気もしない、なぜだろう)」
男「この森自体の時間が止まってるって事なのかな、神様」
神娘「……」
男「…って聞いても無駄か…」ハハ
男「さて、偶には飯でも作ろう…」

885: ◆lwQY2qw84A:2013/10/31(木) 22:55:06 ID:Bv4jmR.s
――――――
神娘「おい」
男「どーした」
神娘「醤油が無い」
男「あ?ああ、あそこに」
神娘「届かん」
男「はいはい」ヒョイッ
神娘「ええい、この身長がもどかしい」
男「成長とかできないの?」
神娘「出来るが力を使うし…一度やってみたが」
男「ほぉ」
神娘「身長はあまり変わらんかった」
男「…ああ」
神娘「畜生…高いのが羨ましい」
男「そんな事ない、棚に頭ぶつけるし」

886: ◆lwQY2qw84A:2013/10/31(木) 22:57:52 ID:Bv4jmR.s
神娘「それでも高いところから見えるのは良い」
男「どしてよ」
神娘「頼りがいがある」
男「今でも十分あるけど」
神娘「お前は知らんから言えるのだ」
男「何をさ」
神娘「私が昔、この地を護って来た時の事だ」
男「慕われてたじゃないか」
神娘「それはいいのだ、それは」
男「だったらなんなのさ」
神娘「奴等、私の事を娘か何かだと時々思ってるみたいだった」
男「…あー…」
神娘「なぜ納得する!」


887: ◆lwQY2qw84A:2013/10/31(木) 23:01:06 ID:Bv4jmR.s
男「親しみがあるんだよ」
神娘「親しみより畏敬を抱け!」
男「抱いてるんだがな」
神娘「行動で示せ!」
男「はい塩」ヒョイ
神娘「おお、ありがたい」パッパッ
男「……」
神娘「……」パッパッ
男「うん」
神娘「そうじゃないだろう!」ガターン
―――――
男「そんな事もあったな」タンタンタン

888: ◆lwQY2qw84A:2013/10/31(木) 23:05:35 ID:Bv4jmR.s
男「出来た、簡単な炒め物だけど」
神娘「……」
男「ん、出来あいにしては中々」
神娘「……」
男「冬の山菜って見つけるのは大変だけど美味しいんだな」
神娘「……」
男「神様と一緒に行きたいな…あ、でもこの冬だと神様外に出ないだろうけど」
神娘「……」
男「久々に神様の料理も食いたいしな」
神娘「……」
男「ああ」
神娘「……」
男「ごちそうさま」

889: ◆lwQY2qw84A:2013/10/31(木) 23:09:07 ID:Bv4jmR.s
男「食ったし、久しぶりに寝ようかな」
神娘「……」
男「布団持ってこよう…」
神娘「……」
男「神様寒くないかな、まあ布団の中に入れてるけど」ドサドサッ
神娘「……」
男「寝るか」
神娘「……」
ヒュルルルルルル…
男「…寒い」
神娘「……」

890: ◆lwQY2qw84A:2013/10/31(木) 23:13:44 ID:Bv4jmR.s
男「(何日経ったんだろうか)」
ビュゥゥゥゥ…
男「(吹雪の日もあるし、快晴の日もある)」
ヒュルルルル
男「(太陽は忙しなく昇っては沈み、昇ってはまた沈む)」
ガタガタガタガタ…
男「(何度それを繰り返しただろう)」
カンカン
男「(100を超えたあたりから、考えるのをやめてしまった)」
ヒュゥー…
男「(体の成長は止まったようにあの時から動かない)」
ヒュルルルルル…
男「(この世界には、変化するものが少なすぎる)」
カタカタカタカタ…
男「(飽きたのかもしれない、でも諦めるにしては大きすぎるものがここにはある)」

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