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神娘「我を呼んだか!」男「呼んでません」

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Part12
371: ◆lwQY2qw84A:2013/09/23(月) 17:07:09 ID:yGdevo2Y
神娘「私は、風の神様でも道祖神でも…人を護るための神様でもない、そんな優しい存在じゃない」
男「……」
神娘「人を戦争へと駆り立てる神、戦う者たちの為の神…戦神だ、私は」
男「戦神…」
神娘「私は人を生かす為ではない、人を殺すための神だ」
男「それは」
神娘「戦争を止める為ではない、戦争を続けるための神だ」
男「神様」
神娘「あの後、私の願いとは裏腹に国は戦争に勝ち続けて…その度に膨大な被害者を出した」
男「……」
神娘「どこかで止められた筈なんだ、私が居なければ戦争なんて無かったかもしれないんだ…」

372: ◆lwQY2qw84A:2013/09/23(月) 17:11:47 ID:yGdevo2Y
男「(傷つけていたのか?)」
神娘「そうじゃなくても、力を与えさえしなければ…そう思う事が何度あったか分からん」
男「(神様だと、そう自覚させるたびに知らずに傷つけていたのか?)」
神娘「でもやるしかなかったんだ、力を与えて殺すか、与えずむざむざ殺させるかしか…」
男「神様!」
神娘「……」ビクッ
男「落ち着きなよ、その為に神主はここに居る」
神娘「…すまん、取り乱した」
男「お茶でも飲もう、持ってくる」
神娘「ああ」

373: ◆lwQY2qw84A:2013/09/23(月) 17:19:41 ID:yGdevo2Y
男「持ってきたよ」
神娘「座れ、話がしたい」
男「すっかり調子が戻ってるな」ポリポリ
神娘「さっきがおかしかったのだ、神は冷静でなければならぬ」シャキッ
男「…それでいいのか?」コトン
神娘「あの時決めたのだ、全てを背負うと」ズズ…
男「……」ススス
神娘「恨みも憎しみも全てを受け入れてやると誓った、止められぬならばせめても死なないように祈った」
男「(強いのか弱いのかわからないな)」
神娘「人が我を見て希望となるように、戦う者たちが頭をあげて剣を掲げられるように…そうあろうとした」
男「(戦争、か)」
神娘「…今考えても、他に何が出来たのか分からん」

374: ◆lwQY2qw84A:2013/09/23(月) 17:23:07 ID:yGdevo2Y
神娘「1人で考えても…分からん」
男「難しいもんな」
神娘「ああ難しい、神ですら分からぬこともある」
男「自分が元人間だって自覚は?」
神娘「無い」
男「きっぱりしてるな」
神娘「あの時人間としての私は死んで、その代り神である私が生まれた、それだけだ」
男「……」ズズ
神娘「それだけの…簡単な話だ」

375: ◆lwQY2qw84A:2013/09/23(月) 18:12:12 ID:yGdevo2Y
男「……」ズズ
神娘「お代わり」コトッ
男「あいよ」
神娘「……」
男「…」トポポポ
神娘「なぁ」
男「ん?」コトッ
神娘「軽蔑しないのか?」ズズ
男「なんでさ」トポポ
神娘「なんでって」
男「別に、しないよ」ズズ
神娘「戦神なんて、軽蔑されてしかるべき存在だ」
男「そんなの神様の意見だろ?」
神娘「確かに、そうだが」


376: ◆lwQY2qw84A:2013/09/23(月) 18:16:21 ID:yGdevo2Y
男「別に、仕方ないんじゃないかなぁ」
神娘「軽々しく言える事じゃないと思うんだが」
男「だって戦争なんて知らないもん」
神娘「……」
男「おかしい?戦争を知らない奴はどれだけ聞かされたってその恐ろしさは分からないよ」
神娘「確かにな」
男「今は、戦争なんて遠い場所にある」
神娘「らしいな」
男「その中で神様がいる」
神娘「おかしいか?」
男「全然?」
神娘「……」ズズ
男「…新しく生きろって事じゃないかなぁ」
神娘「新しく…無理だ」
男「なんでさ」

377: ◆lwQY2qw84A:2013/09/23(月) 18:18:23 ID:yGdevo2Y
神娘「私には、かつて私を信じた者達をを忘れる事なんてできん」
男「そう言う事じゃないよ」
神娘「は?」
男「忘れるんじゃなくて、その上で新しく生きるんだよ」
神娘「出来るだろうか」
男「だってさ、こうして話している事とか…それだけでもいいんだと思う」
神娘「難しいな」
男「難しく考えてるだけだよ、簡単だって」
神娘「……」

378: ◆lwQY2qw84A:2013/09/23(月) 19:15:47 ID:yGdevo2Y
神娘「たくさん殺したんだぞ」
男「神様が殺したわけじゃない」
神娘「戦神なんて今時流行らん」
男「だからそれ以外の生き方考えればいいじゃないか」
神娘「私を恨んでるのがいるかも」
男「恨みも背負ってやるって言ったじゃないか」
神娘「…正直、どうしたらいいか分からん」
男「時間なんて幾らでもあるだろうし、正解なんてないよ」

379: ◆lwQY2qw84A:2013/09/23(月) 19:47:30 ID:yGdevo2Y
男「きっと神様を信仰してた人たちも、今の神様は望んでないんじゃないかな」
神娘「そうだろうか」
男「うん、きっと」
神娘「……そうか」
男「少なくとも、何時までも縛られているよりは…そちらの方がいいんじゃないかとは思う」
神娘「なあ、私の考えは間違っていたのか?」
男「間違いなんてどこにもない、そう思う」
神娘「…そうかもな」

380: ◆lwQY2qw84A:2013/09/23(月) 20:14:54 ID:yGdevo2Y
神娘「神主、来い」スクッ
男「なんだよ」
神娘「お前に見せたいものがある、良いから来い」
男「分かった」パカラッ
神娘「…そういえば、何時からお前下駄に変えた?」
男「ここで下駄に履き替えてんの、なんか気に入ったから」
神娘「そうか」
男「可笑しいか?」
神娘「いや、懐かしい」フッ
男「やっぱり、神様は笑ってる方がいいよ」
神娘「褒めるな、照れる」

381: ◆lwQY2qw84A:2013/09/23(月) 20:28:18 ID:yGdevo2Y
男「……」ザカザカ
神娘「……」ザッザッ
男「こんな道あったんだな」ザッ
神娘「今までは閉ざしていた場所だからな」ザシュッ
男「ばれないようにか」ザカッ
神娘「阿保な事をしたものだ、隠そうと私にとって何も変わらないと言うのに」ザシザシ
男「(吹っ切れたみたいだな)」ザシッ

382: ◆lwQY2qw84A:2013/09/23(月) 23:04:35 ID:yGdevo2Y
神娘「……ここだ」
男「(広場だ、巨大な岩一つ以外には何もない)」
神娘「なんだかわかるか」
男「巨大な石以外には…あ」
神娘「なんだ」
男「…墓石?」
神娘「然様、これは戦死者の為の墓石だ…とは言っても自己満足に過ぎんが」
男「神様、これを護っていたの?」
神娘「そうかもしれない、無意味と思いつつも私は…ここを護る為に消えずに居たのかもしれない」
男「……」
神娘「私が消えればこの森も消える、そしてはこの墓石も…だからかもしれない」
男「うん」
神娘「無意味なのに、私はここが何か神聖な場所のように思えて…」
男「ああ」
神娘「…なんでなんだろうな」

383: ◆lwQY2qw84A:2013/09/23(月) 23:08:09 ID:yGdevo2Y
男「…神様、手を出して」
神娘「あ?ああ…なんだ」
男「……」ギュゥ
神娘「…ん」
男「少し冷たい」
神娘「人の手なんて、久々に触った」
男「でも、死んでは無い」
神娘「ああ」
男「生きている」
神娘「ああ」
男「だったら…いや、なんでもない」
神娘「なんだ、言いかけは気になるな」

384: ◆lwQY2qw84A:2013/09/23(月) 23:11:22 ID:yGdevo2Y
男「説明は苦手だ、答えは神様が見つければいい」
神娘「…ふ、ふふ」
男「なぜ笑うし」
神娘「なんだか、小さなことに囚われていたような気がしてな」
男「小さくはないけどな」
神娘「でもまあこうして…なんだか救われた気がした」ギュウ
男「そうか、よかった」
神娘「お前は私とともにある、それだけで…良い気がした」
男「ああ」
神娘「神主よ」
男「なんだ」
神娘「神の名において、感謝するぞ」ニコリ
男「(…可愛いな)」
ザァァァァァァッ

385: ◆lwQY2qw84A:2013/09/23(月) 23:15:39 ID:yGdevo2Y
神娘「なんだ?」
男「…神様!あれを!」
ザァァァァッ ザァァァァァ…
神娘「葉が…緑だった葉が紅くなって…」
男「紅葉しているのか…?」
神娘「一体何が起こっているんだ」
リーン… リーン… カラカラカラ…
男「虫が…でもいつもと違う」
神娘「夏の虫じゃないぞ、これは秋の虫だ」
男「神様、なにかやったのか?」
神娘「知らん、だが急にこの森の季節が変わったのだ」
サァァァァァァァ…
神娘「夏が…いつまでも変わらなかった夏が秋になった…」
男「急に様変わりしたな」

386: ◆lwQY2qw84A:2013/09/23(月) 23:20:52 ID:yGdevo2Y
男「(秋の匂いがする)」
神娘「……どうなっている?」
男「(夏の草の香りとは違う…香り立つ秋の匂いがする)」
神娘「なあ、神主は驚いてないのか?」
男「いや、興奮した」
神娘「興奮?」
男「秋だ…すげえ、周り一面の秋だぞ神様!」
神娘「お、おう」
男「この森全体が紅葉しているんだ、一気に様変わりして…凄いよ神様」
神娘「そうだな、なんか私もわくわくしてきたぞ」
男「明日は一緒に探索しよう神様」
神娘「よし、良い銀杏がある場所を教えてやるぞ」
男「調理器具は持ってきたからすぐ食えるな」
神娘「ああ…美味いぞ、秋の食べ物は」

387: ◆lwQY2qw84A:2013/09/23(月) 23:25:50 ID:yGdevo2Y
男「ははっ、こりゃいいぞ…いいなぁ」
神娘「…ふふ、お前は何だか変わらんなぁ」
男「神様に毒されたのかもしれない」
神娘「今ではお前の方がよほど順応している気がするがな」
男「神様よりアウトドアだし」
神娘「なにお言うか、こちとら元気があれば散策に出かけてるわ」
男「言ったな?」
神娘「言ったさ」

388: ◆lwQY2qw84A:2013/09/23(月) 23:36:23 ID:yGdevo2Y
男「まあ神様も元気になったみたいだし」
神娘「神主の癖に生意気な口をききおって」
男「神様の為ですから」
神娘「ああそうか、ありがたいな」
男「…明日は楽しみだな」
神娘「うむ、私も楽しみにしている」

389: ◆lwQY2qw84A:2013/09/23(月) 23:37:09 ID:yGdevo2Y
男「良かったよ、本当に」
神娘「お前には世話になりっぱなしだな、私からは何もしてないと言うのに…」
男「別にいいから、そういうの」
神娘「では私は帰るとするが…どうする?」
男「……」
神娘「神主?」
男「…少し、ここに残るよ」
神娘「そうか…まあ迷う事もあるまい、一直線だからな」ザッザッ
男「……」
ザァァァァァァ…
男「……」
娘「……気づいていたのだな」
男「まあな」

390: ◆lwQY2qw84A:2013/09/23(月) 23:45:16 ID:yGdevo2Y
娘「良くやったよ、お前は」
男「褒められたのか?」
娘「褒めたつもりなのだが」
男「えらくひねてるな、神様とは大違いだ」
娘「私は神様であって神様でないからな」
男「はい?」
娘「神様としての役割に耐えきれなかった彼女が私だよ、分かる?」
男「パラレルワールドって奴か、そんな簡単に出てくるもんなのかい」
娘「ここは神様の領土だ、何が起こっても不思議じゃないさ」
男「じゃあ…急に季節が変わったことも?」
娘「そもそも延々と夏が続く事からしておかしいがね」


391: ◆lwQY2qw84A:2013/09/24(火) 00:17:24 ID:1mIJ17yY
娘「ありがとう」
男「うん?」
娘「彼女は救われたよ」
男「良かった」
娘「これで、私の役目も終わった」スゥ
男「消えるのか」
娘「元々彼女の強い罪の意識が私を呼んだんだ、もうそれも無くなった」
男「悲しくないのか?」
娘「いいや?だって彼女は私がなれなかった私だから」
男「……そうか」

392: ◆lwQY2qw84A:2013/09/24(火) 00:18:09 ID:1mIJ17yY
娘「ああ、あと気を付けた方がいいぞ?」スゥゥゥ…
男「うん?」
娘「お前にとっての彼女は変わり無いだろうけど、逆はそうでもないから」
男「それって、どういう」
娘「さあね、自分で考えなよ」フッ
男「…行っちまったのか」

393: ◆lwQY2qw84A:2013/09/24(火) 00:19:09 ID:1mIJ17yY
ここらで一端区切りです 適当に書いてたら難しくなりすぎて頭フット―しそうだよぉ

396:以下、名無しが深夜にお送りします:2013/09/24(火) 00:42:52 ID:6eabZ3kY
風呂敷広げすぎた感は否めないが期待している

397: ◆lwQY2qw84A:2013/09/24(火) 00:46:35 ID:1mIJ17yY
一応落としどころは最初から用意しているので行方不明は無いと思います 骨組みももう組んであるので
でもそれが風呂敷の大きさに見合うかは分からないけどという残念仕様

398:以下、名無しが深夜にお送りします:2013/09/24(火) 01:06:07 ID:YhzWOhaY
乙!
楽しみにしてるよ!

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