勇者「淫魔の国で過ごす日々」
Part3
61 : ◆1UOAiS.xYWtC:2015/12/22(火) 01:14:01.87 ID:Ox0rWOSmo
翌日の朝。
ドアを叩き割るような、けたたましいノックの音で叩き起こされた。
サキュバスB「陛下! へーーかーー!! 起きてください! 朝ですよーーー!」
ドア越しに叫び、ガンガンとノックしているのにそれでも勝手に開けはしない点は、褒めていいのか。
それともその騒々しさを咎めようか。
考えながら、勇者は開かない目のまま起きて扉を開けた。
サキュバスB「あ、おはよーございます! 今日は私が」
勇者「チェンジ」
サキュバスB「へっ!?」
勇者「チェンジだ」
扉を閉めてベッドに戻ろうとするが、一瞬早くサキュバスBがそれを防いだ。
そのまま強引に押し入ってきて、二度寝の企みは露と消えてしまった。
62 : ◆1UOAiS.xYWtC:2015/12/22(火) 01:15:16.78 ID:Ox0rWOSmo
サキュバスB「なんですかチェンジって!? ……んん? 何かこんな事……あった、ような?」
少女姿の淫魔は、突如頭を捻って考え込む。
遠い昔にあった出来事なのか、それとも単なる既視感なのか。
考えている間に、冬の朝の冷たい室温から逃げ込むように、ベッドへ逃げ込む。
だがーーーー
勇者「つめたっ!?」
昨晩の情事で、互いの汗や体液で、シーツはびしょびしょに濡れていた。
そのせいで、図らずも眼が冴えてしまう。
悲鳴に応じたサキュバスBは、怪訝そうに距離を詰め、そして、自信ありげに胸を反らせた。
サキュバスB「お風呂の準備ならできてますよ。……どーします?」
勇者「…………入る」
引っ立てられるように、観念するように身を起こす。
真冬の朝、濡れて冷えたシーツに触れたせいで体温が一気に下げられてしまった。
手近にかけていた厚手のガウンを羽織るも、その生地もまた温まっていない。
すぐにサキュバスBが傍へと来るとシーツの具合を確かめる。
63 : ◆1UOAiS.xYWtC:2015/12/22(火) 01:15:50.04 ID:Ox0rWOSmo
サキュバスB「もう、こんなびしょびしょに濡れたトコで寝たら風邪ひきますよ。……おねしょじゃないですよね?」
勇者「少なくとも俺じゃあない」
そこで初めて、今日の彼女をまともに見た。
ふわりと癖のある髪からは、明るい甘酸っぱさが香り、鼻腔をくすぐった。
数日前に着ていた、冬と言う季節感をまったく無視したようなショートパンツに、あくまで生足。
黒い毛糸編みの上衣は前のボタンで留められるようになっており、心なしか、サイズが彼女の体格に比べて大きい。
特に袖などは腕を垂らせば、手のほとんどが隠れてしまうだろう。
彼女がベッドに四つん這いになってシーツを確かめている間、図らずもーーーー視線は、彼女の臀部へ向いた。
小ぶりだが丸く形の良い尻と、裾から覗くきめの細かく、細くも肉感を残した、掻き立るような太腿。
二つの骨に挟まれた、皮膚の薄そうな膝裏。
続いてふくらはぎに目を移そうとした時ーーーー自制し、逸らす。
64 : ◆1UOAiS.xYWtC:2015/12/22(火) 01:17:38.10 ID:Ox0rWOSmo
サキュバスB「……? どーかしました?」
勇者「い、いや……」
サキュバスB「それよりも……チェンジって何ですか、チェンジって」
口を尖らせながら、サキュバスBはベッドから下りて、下から覗き込むようにじっと見つめてきた。
曇りのない金色の瞳は、神秘的でありながらもあどけない。
世界に初めて差した曙光は恐らく、こんな色をして明け方の雲を照らしただろうか。
ーーーーそんな表現すらも、この「魔族」の眼には当てはめてしまう。
勇者「ついな」
サキュバスB「つい、じゃないですよ! わたしにも権利ってのがあるんですからね! 二番だったけど!」
勇者「俺の権利はどこにあるんだ!」
サキュバスB「え、いや……いいじゃないですか、うん。そーいう訳で、今日は私です。とりあえずお風呂入りましょー」
キリが無いと感じ、押し切られてやる事にした。
どのみち、知らなかった事とは言え昨日はサキュバスAと一緒にいたのだ。
与り知らぬ場での賭けであっても、彼女らに不公平はさせたくない。
ーーーーそんな、妙な立場の弱さを内心滑稽に思いながらも、ひとまずは朝の入浴に向かった。
65 : ◆1UOAiS.xYWtC:2015/12/22(火) 01:18:55.06 ID:Ox0rWOSmo
大浴場へ入ると、サキュバスBに感じていたそそっかしさに裏打ちされる嫌な予感は、
どうにか裏切られてくれたようだ。
湯は普通に張っているし、あらかじめ湯を撒かれて温度も上げられ、大理石の床の冷たさもない。
湯煙を吸い込むように深く息を吸えば、じわりと胸の中から温度が上がるようだった。
勇者「……あー…………」
軽く体を流してから湯に身体を預ける。
今朝の湯に溶かされたバスオイルは、柑橘を用いたものらしい。
皮膚の毛穴ひとつひとつが開き、湯が浸潤し、身体の内側から温度を上げてくれ、
覚めたばかりの眠気すらも踵を返して戻ってきてしまうようだった。
サキュバスBは、どことなくちぐはぐだ。
朝から大声と乱暴な扉叩きで起こしをかけたかと思えば、
浴場に張り巡らされた気遣いには嘆息する。
手慣れた淫魔のように這い寄ってくるかと思えば、初心な少女のように顔を真っ赤にする事もある。
彼女の年齢3415歳、それはまだ淫魔の感覚で言えば紛れもなく未熟だ。
あり方に悩んで背伸びをするが、立てた爪先はぷるぷると震えている。
そんな微笑ましさを持つ彼女は、見ていて、からかっていて、ともかく飽きない。
まどろみかけたその時、浴場の戸を開け、誰かが入ってくるのが聴こえた。
濡れた床にぱちゃぱちゃと足音を立てる、その歩幅は小さい。
体重も恐らく軽い。
むろん、条件を満たす者はこの城には多い。
厨房手伝いの数人にはサキュバスBより背の低い者が数人いる。
つい先日この城へ現れたインキュバスの子もそうだ。
だがーーーー今日ここへ、今現れたのなら、一人だろう。
66 : ◆1UOAiS.xYWtC:2015/12/22(火) 01:19:26.57 ID:Ox0rWOSmo
勇者「サキュバスBか。何だ?」
サキュバスB「何、って……やですね。お身体を洗いに……」
湯煙の中から現れた少女は、何一つまとわない裸身に、小瓶をいくつか抱えている。
少し離れた洗い場にそれを下ろすと、おずおずと微笑みを作って、こちらへ笑いかけた。
勇者「…………じゃ、頼もうか」
応じて、湯から上がってそちらへ目指す。
67 : ◆1UOAiS.xYWtC:2015/12/22(火) 01:20:46.20 ID:Ox0rWOSmo
****
湯煙の中、椅子に座った「陛下」の背を見た。
もちろん、夜の伽の中でその肉体を見て、触って、「そう」だというのは知っていた。
だがーーーー明るい場所で見ると、違う。
硬く盛り上がった矢傷、十数センチにわたる魚の骨のような切創、点々と残るケロイド状の瘢痕、
心臓に達して貫通したであろう致死の刺し傷。
そのどれもが「陛下」の、壮絶だった半生を語る。
世界を救う、「勇者」の日々を。
サキュバスB「……お傷、いっぱいあるんですね」
そっと背中のさんま傷に手を触れた。
痛みは流石に無いようだがーーーー健康な皮膚とは、やはり手触りが違う。
無理やり継ぎ接ぎして補修して、接着部の「にかわ」をはみ出させたきりのような、乱暴な傷。
胸の奥のどこかが、ずきりと痛んだ。
68 : ◆1UOAiS.xYWtC:2015/12/22(火) 01:23:32.49 ID:Ox0rWOSmo
勇者「その傷は、魔物に取りつかれた領主の館でついた」
サキュバスB「え……?」
勇者「彫刻に擬態した化け物にやられた。回復呪文と縫合を合わせてどうにか生き残ったよ」
彼は、ぽつりぽつりと語り始めた。
勇者「別の日。心臓を貫かれた時は流石にだめかと思った。……でもまぁ、なんとか生きてる」
説明……いや、思い出しているのかもしれない。
その傷の一つ一つの歴史を。
歴史の中にある、かつての旅を。
勇者「どうした? 温まって腹も減ってきたんだが……っ」
69 : ◆1UOAiS.xYWtC:2015/12/22(火) 01:24:21.77 ID:Ox0rWOSmo
唇に、心臓へ達した傷跡が触れた。
思わず前に回した手で探れば、同じく、左よりの胸板に傷跡があり、それは何かが「貫通」した事を雄弁に語る。
いくつもの死線を乗り越えて、今彼はここにいる。
もし少し違っていたのなら、出会う事はできなかった。
存在を知る事すら、できなかった。
ほろ苦さを湛え、そして一瞬で暗転するような喪失感が、胸を締め付けた。
勇者「おい、……どうしたんだ?」
サキュバスB「……あ、その……何でも、ないですから。お身体、洗いますね」
呼びかけがあり、ようやく、陛下の体を抱きしめてしまっていた事に気付いた。
慌ててほどき、湿らせた垢落としの布に液体石鹸を落として、泡立たせる。
両手で畳んだそれを擦り合わせるようにしていると、やがて、細かく柔らかいクリームのような泡が現れてきた。
70 : ◆1UOAiS.xYWtC:2015/12/22(火) 01:25:10.66 ID:Ox0rWOSmo
勇者「……あのな。もう少し力、入れてもいい」
サキュバスB「は、はい。すみません、何となく……」
つい、背を擦る力には加減してしまう。
慌てて、気持ち程度に力を入れようとするが、入らない。
遠慮ではない。
ただ、この傷だらけの背中を強く擦るという事ができなかった。
だから、気付くとーーーー液体の石鹸を乳房に塗り込み、やわやわと伸ばし、泡を新たに創っていた。
はたから見ると、莫迦げた慰めの手遊びなのかもしれない。
でも、この体に……「硬さ」は、当てたくない。
勇者「っ!?」
泡で覆われた乳房が、彼の背へ押し付けられ、形をむにゅり、と変えた。
そのまま伸び上がるように上へ。
再び屈んで下へ。
乳房そのものを泡の塊として、彼の背を磨く。
71 : ◆1UOAiS.xYWtC:2015/12/22(火) 01:25:57.20 ID:Ox0rWOSmo
サキュバスB「……どう、ですか、陛下? 気持ちいいですか?」
恥ずかしさに、声が上ずる。
こんな事に自分の胸を使った事などない。
恥ずかしさと不安とが問いかけになり、身を強張らせて驚く彼へと投げかけられた。
勇者「……ああ、気持ち……いい、よ」
サキュバスB「えへへっ……。それじゃ、前の方も、洗いますね?」
胸でそうしつつ、合間を縫って胸板から腹部まで、垢すりの布でゆっくりと擦る。
手触りで、身体の前面にも傷がある事は分かっている。
それなのに後ろから背中の傷に触れるよりは、ずっと楽な気持ちになれた。
硬く盛り上がった傷に触れる。
傷のない滑らかな部分に触れる。
その差のたびに乳房と頂の種とが刺激され、自慰を覚えかけた少女のような背徳感が湧き上がる。
72 : ◆1UOAiS.xYWtC:2015/12/22(火) 01:26:52.71 ID:Ox0rWOSmo
サキュバスB「ん、っ……」
悩まし気な色気が、吐息に混じり始める。
濃密な泡が互いの肌を馴染ませ、その境すらも曖昧にしていくようだった。
触れあう部分はやがて溶け合い、ひとつながりの液体生物として堕ちていくような、奇妙な快感。
既にーーーー乳房は、熱さのあまりに感覚を失いかけている。
サキュバスB「……ひゃっ……、あの……これ……」
前を流していた左の手首に、ふと硬い、剣の柄のようなものがあたる。
その手触りに一瞬手を引き、伸び上がるように肩越しに覗き込む。
サキュバスB「えへへ。おっきく……しちゃったんですね」
勇者「仕方ないだろ。……お前こそ、なんでこんな……」
サキュバスB「だって……陛下には、いっぱい……お傷、ありましたから」
73 : ◆1UOAiS.xYWtC:2015/12/22(火) 01:28:20.06 ID:Ox0rWOSmo
背中に見えるだけで、大小十数。
前面や下肢には、更に増えるだろう。
世界を救うための旅の中で受けたいくつもの傷。
それをーーーーーー打ち消してやりたい、と思った。
サキュバスB「お傷のぶん。……今まで痛かったぶんだけ、ううん。もーーーっと、気持ちよくなってほしくて……」
言葉を待たず、彼の股間に滾った、剛直に触れ、その根元へ指を巻き付ける。
右手でそれを。
左手で彼の胸板を。
乳房で彼の背を、それぞれ愛しく撫でて、大浴場へ淫らな音を響かせる。
くちゅくちゅと粘性の液体が奏でる音、しゅこ、しゅこ、という摩擦音、混ざり合う二つの吐息交じりの声。
サキュバスB「陛下、いつでも出しちゃっていいんですからね? ガマンしないで……ほら」
74 : ◆1UOAiS.xYWtC:2015/12/22(火) 01:29:15.80 ID:Ox0rWOSmo
人差し指の腹で裏筋をくりくりとなで、左手で彼の乳首を抓む。
すると接した胸から、小さな痙攣が二度伝わりーーーーその手応えは、いたずら心とともに、満足感をもたらした。
そして……彼へ、「勇者」へ、奉仕できている事の喜びが上塗る。
サキュバスB「……かぷっ」
泡に覆われていない首筋へ、唇で吸い付く。
そこは湯にも浸かっていなかったから、汗の塩味がそのまま口の中に膨らんだ。
勇者「っ…ぐ……!」
気付かないうちに、彼の男根を扱く右手が動きを速める。
淫魔じみて淫らな焦燥を駆り立てる喜びよりも、楽にさせてやりたい欲求が今は勝る。
ーーーーーーもっと、気持ちよくさせてあげたい。
ーーーーーー何度でも、何度でも。
ーーーーーー痛かったすべての思い出を、塗り替えてしまうほどに。
75 : ◆1UOAiS.xYWtC:2015/12/22(火) 01:32:52.12 ID:Ox0rWOSmo
サキュバスB「いい、ですよ。……いっぱい、出して…わたしの手……どろどろに、して……ください。
……がまん、しないで……ね」
首筋、背中、胸板、男根。
後ろから抱きしめながらの愛撫に、ついつい力が籠る。
早く、出させてあげたい。
高まったそれを吐き出させて、楽にさせてあげたい。
どこまでも白い願いが、心を満たしていく。
サキュバスの抗いがたい欲求ではなくーーーー献身として。
やがて、限界を迎えて迸る。
とっさに亀頭に添えた左手が、その熱を受け止めた。
未だに剛直を握り、しかし緩めた右手には、生命の脈動が伝わる。
口には入らない。
自分の中にも注がれないはずのそれに、確かな充足感を感じていた。
下腹の高まりも、秘所の疼きもない。
ただ、胸を静かに脈打たせる幸福。
それだけで、今は充分だった。
サキュバスB「……ふふっ……いっぱい、出ましたね」
ーーーー刻まれた傷のひとつぶんぐらいは、やっつけられた、気がした。
76 : ◆1UOAiS.xYWtC:2015/12/22(火) 01:35:57.79 ID:Ox0rWOSmo
今日の分終了です
それではまた
それとですが、今回のでスレ立ては最後にするって件ですが
何か湿っぽい理由がある訳ではないのでご安心ください
77 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2015/12/22(火) 02:31:19.72 ID:8yAdOL0do
乙
最近寒いから体調管理に気を付けてー
78 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2015/12/22(火) 03:02:31.19 ID:VQaQzJ4f0
おつ
冷え込む季節だけどBの献身に心が温まるわい
79 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2015/12/22(火) 08:51:06.19 ID:h6pPYF57O
乙
Bも成長してるんだなホロリ
80 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2015/12/22(火) 09:24:57.65 ID:OvmSwH4AO
久々に遭遇、やっぱええね。
お持ち帰りするんなら、やっ…ぱ……B………だ…………な(墜落
翌日の朝。
ドアを叩き割るような、けたたましいノックの音で叩き起こされた。
サキュバスB「陛下! へーーかーー!! 起きてください! 朝ですよーーー!」
ドア越しに叫び、ガンガンとノックしているのにそれでも勝手に開けはしない点は、褒めていいのか。
それともその騒々しさを咎めようか。
考えながら、勇者は開かない目のまま起きて扉を開けた。
サキュバスB「あ、おはよーございます! 今日は私が」
勇者「チェンジ」
サキュバスB「へっ!?」
勇者「チェンジだ」
扉を閉めてベッドに戻ろうとするが、一瞬早くサキュバスBがそれを防いだ。
そのまま強引に押し入ってきて、二度寝の企みは露と消えてしまった。
62 : ◆1UOAiS.xYWtC:2015/12/22(火) 01:15:16.78 ID:Ox0rWOSmo
サキュバスB「なんですかチェンジって!? ……んん? 何かこんな事……あった、ような?」
少女姿の淫魔は、突如頭を捻って考え込む。
遠い昔にあった出来事なのか、それとも単なる既視感なのか。
考えている間に、冬の朝の冷たい室温から逃げ込むように、ベッドへ逃げ込む。
だがーーーー
勇者「つめたっ!?」
昨晩の情事で、互いの汗や体液で、シーツはびしょびしょに濡れていた。
そのせいで、図らずも眼が冴えてしまう。
悲鳴に応じたサキュバスBは、怪訝そうに距離を詰め、そして、自信ありげに胸を反らせた。
サキュバスB「お風呂の準備ならできてますよ。……どーします?」
勇者「…………入る」
引っ立てられるように、観念するように身を起こす。
真冬の朝、濡れて冷えたシーツに触れたせいで体温が一気に下げられてしまった。
手近にかけていた厚手のガウンを羽織るも、その生地もまた温まっていない。
すぐにサキュバスBが傍へと来るとシーツの具合を確かめる。
63 : ◆1UOAiS.xYWtC:2015/12/22(火) 01:15:50.04 ID:Ox0rWOSmo
サキュバスB「もう、こんなびしょびしょに濡れたトコで寝たら風邪ひきますよ。……おねしょじゃないですよね?」
勇者「少なくとも俺じゃあない」
そこで初めて、今日の彼女をまともに見た。
ふわりと癖のある髪からは、明るい甘酸っぱさが香り、鼻腔をくすぐった。
数日前に着ていた、冬と言う季節感をまったく無視したようなショートパンツに、あくまで生足。
黒い毛糸編みの上衣は前のボタンで留められるようになっており、心なしか、サイズが彼女の体格に比べて大きい。
特に袖などは腕を垂らせば、手のほとんどが隠れてしまうだろう。
彼女がベッドに四つん這いになってシーツを確かめている間、図らずもーーーー視線は、彼女の臀部へ向いた。
小ぶりだが丸く形の良い尻と、裾から覗くきめの細かく、細くも肉感を残した、掻き立るような太腿。
二つの骨に挟まれた、皮膚の薄そうな膝裏。
続いてふくらはぎに目を移そうとした時ーーーー自制し、逸らす。
64 : ◆1UOAiS.xYWtC:2015/12/22(火) 01:17:38.10 ID:Ox0rWOSmo
サキュバスB「……? どーかしました?」
勇者「い、いや……」
サキュバスB「それよりも……チェンジって何ですか、チェンジって」
口を尖らせながら、サキュバスBはベッドから下りて、下から覗き込むようにじっと見つめてきた。
曇りのない金色の瞳は、神秘的でありながらもあどけない。
世界に初めて差した曙光は恐らく、こんな色をして明け方の雲を照らしただろうか。
ーーーーそんな表現すらも、この「魔族」の眼には当てはめてしまう。
勇者「ついな」
サキュバスB「つい、じゃないですよ! わたしにも権利ってのがあるんですからね! 二番だったけど!」
勇者「俺の権利はどこにあるんだ!」
サキュバスB「え、いや……いいじゃないですか、うん。そーいう訳で、今日は私です。とりあえずお風呂入りましょー」
キリが無いと感じ、押し切られてやる事にした。
どのみち、知らなかった事とは言え昨日はサキュバスAと一緒にいたのだ。
与り知らぬ場での賭けであっても、彼女らに不公平はさせたくない。
ーーーーそんな、妙な立場の弱さを内心滑稽に思いながらも、ひとまずは朝の入浴に向かった。
65 : ◆1UOAiS.xYWtC:2015/12/22(火) 01:18:55.06 ID:Ox0rWOSmo
大浴場へ入ると、サキュバスBに感じていたそそっかしさに裏打ちされる嫌な予感は、
どうにか裏切られてくれたようだ。
湯は普通に張っているし、あらかじめ湯を撒かれて温度も上げられ、大理石の床の冷たさもない。
湯煙を吸い込むように深く息を吸えば、じわりと胸の中から温度が上がるようだった。
勇者「……あー…………」
軽く体を流してから湯に身体を預ける。
今朝の湯に溶かされたバスオイルは、柑橘を用いたものらしい。
皮膚の毛穴ひとつひとつが開き、湯が浸潤し、身体の内側から温度を上げてくれ、
覚めたばかりの眠気すらも踵を返して戻ってきてしまうようだった。
サキュバスBは、どことなくちぐはぐだ。
朝から大声と乱暴な扉叩きで起こしをかけたかと思えば、
浴場に張り巡らされた気遣いには嘆息する。
手慣れた淫魔のように這い寄ってくるかと思えば、初心な少女のように顔を真っ赤にする事もある。
彼女の年齢3415歳、それはまだ淫魔の感覚で言えば紛れもなく未熟だ。
あり方に悩んで背伸びをするが、立てた爪先はぷるぷると震えている。
そんな微笑ましさを持つ彼女は、見ていて、からかっていて、ともかく飽きない。
まどろみかけたその時、浴場の戸を開け、誰かが入ってくるのが聴こえた。
濡れた床にぱちゃぱちゃと足音を立てる、その歩幅は小さい。
体重も恐らく軽い。
むろん、条件を満たす者はこの城には多い。
厨房手伝いの数人にはサキュバスBより背の低い者が数人いる。
つい先日この城へ現れたインキュバスの子もそうだ。
だがーーーー今日ここへ、今現れたのなら、一人だろう。
勇者「サキュバスBか。何だ?」
サキュバスB「何、って……やですね。お身体を洗いに……」
湯煙の中から現れた少女は、何一つまとわない裸身に、小瓶をいくつか抱えている。
少し離れた洗い場にそれを下ろすと、おずおずと微笑みを作って、こちらへ笑いかけた。
勇者「…………じゃ、頼もうか」
応じて、湯から上がってそちらへ目指す。
67 : ◆1UOAiS.xYWtC:2015/12/22(火) 01:20:46.20 ID:Ox0rWOSmo
****
湯煙の中、椅子に座った「陛下」の背を見た。
もちろん、夜の伽の中でその肉体を見て、触って、「そう」だというのは知っていた。
だがーーーー明るい場所で見ると、違う。
硬く盛り上がった矢傷、十数センチにわたる魚の骨のような切創、点々と残るケロイド状の瘢痕、
心臓に達して貫通したであろう致死の刺し傷。
そのどれもが「陛下」の、壮絶だった半生を語る。
世界を救う、「勇者」の日々を。
サキュバスB「……お傷、いっぱいあるんですね」
そっと背中のさんま傷に手を触れた。
痛みは流石に無いようだがーーーー健康な皮膚とは、やはり手触りが違う。
無理やり継ぎ接ぎして補修して、接着部の「にかわ」をはみ出させたきりのような、乱暴な傷。
胸の奥のどこかが、ずきりと痛んだ。
68 : ◆1UOAiS.xYWtC:2015/12/22(火) 01:23:32.49 ID:Ox0rWOSmo
勇者「その傷は、魔物に取りつかれた領主の館でついた」
サキュバスB「え……?」
勇者「彫刻に擬態した化け物にやられた。回復呪文と縫合を合わせてどうにか生き残ったよ」
彼は、ぽつりぽつりと語り始めた。
勇者「別の日。心臓を貫かれた時は流石にだめかと思った。……でもまぁ、なんとか生きてる」
説明……いや、思い出しているのかもしれない。
その傷の一つ一つの歴史を。
歴史の中にある、かつての旅を。
勇者「どうした? 温まって腹も減ってきたんだが……っ」
69 : ◆1UOAiS.xYWtC:2015/12/22(火) 01:24:21.77 ID:Ox0rWOSmo
唇に、心臓へ達した傷跡が触れた。
思わず前に回した手で探れば、同じく、左よりの胸板に傷跡があり、それは何かが「貫通」した事を雄弁に語る。
いくつもの死線を乗り越えて、今彼はここにいる。
もし少し違っていたのなら、出会う事はできなかった。
存在を知る事すら、できなかった。
ほろ苦さを湛え、そして一瞬で暗転するような喪失感が、胸を締め付けた。
勇者「おい、……どうしたんだ?」
サキュバスB「……あ、その……何でも、ないですから。お身体、洗いますね」
呼びかけがあり、ようやく、陛下の体を抱きしめてしまっていた事に気付いた。
慌ててほどき、湿らせた垢落としの布に液体石鹸を落として、泡立たせる。
両手で畳んだそれを擦り合わせるようにしていると、やがて、細かく柔らかいクリームのような泡が現れてきた。
70 : ◆1UOAiS.xYWtC:2015/12/22(火) 01:25:10.66 ID:Ox0rWOSmo
勇者「……あのな。もう少し力、入れてもいい」
サキュバスB「は、はい。すみません、何となく……」
つい、背を擦る力には加減してしまう。
慌てて、気持ち程度に力を入れようとするが、入らない。
遠慮ではない。
ただ、この傷だらけの背中を強く擦るという事ができなかった。
だから、気付くとーーーー液体の石鹸を乳房に塗り込み、やわやわと伸ばし、泡を新たに創っていた。
はたから見ると、莫迦げた慰めの手遊びなのかもしれない。
でも、この体に……「硬さ」は、当てたくない。
勇者「っ!?」
泡で覆われた乳房が、彼の背へ押し付けられ、形をむにゅり、と変えた。
そのまま伸び上がるように上へ。
再び屈んで下へ。
乳房そのものを泡の塊として、彼の背を磨く。
71 : ◆1UOAiS.xYWtC:2015/12/22(火) 01:25:57.20 ID:Ox0rWOSmo
サキュバスB「……どう、ですか、陛下? 気持ちいいですか?」
恥ずかしさに、声が上ずる。
こんな事に自分の胸を使った事などない。
恥ずかしさと不安とが問いかけになり、身を強張らせて驚く彼へと投げかけられた。
勇者「……ああ、気持ち……いい、よ」
サキュバスB「えへへっ……。それじゃ、前の方も、洗いますね?」
胸でそうしつつ、合間を縫って胸板から腹部まで、垢すりの布でゆっくりと擦る。
手触りで、身体の前面にも傷がある事は分かっている。
それなのに後ろから背中の傷に触れるよりは、ずっと楽な気持ちになれた。
硬く盛り上がった傷に触れる。
傷のない滑らかな部分に触れる。
その差のたびに乳房と頂の種とが刺激され、自慰を覚えかけた少女のような背徳感が湧き上がる。
72 : ◆1UOAiS.xYWtC:2015/12/22(火) 01:26:52.71 ID:Ox0rWOSmo
サキュバスB「ん、っ……」
悩まし気な色気が、吐息に混じり始める。
濃密な泡が互いの肌を馴染ませ、その境すらも曖昧にしていくようだった。
触れあう部分はやがて溶け合い、ひとつながりの液体生物として堕ちていくような、奇妙な快感。
既にーーーー乳房は、熱さのあまりに感覚を失いかけている。
サキュバスB「……ひゃっ……、あの……これ……」
前を流していた左の手首に、ふと硬い、剣の柄のようなものがあたる。
その手触りに一瞬手を引き、伸び上がるように肩越しに覗き込む。
サキュバスB「えへへ。おっきく……しちゃったんですね」
勇者「仕方ないだろ。……お前こそ、なんでこんな……」
サキュバスB「だって……陛下には、いっぱい……お傷、ありましたから」
73 : ◆1UOAiS.xYWtC:2015/12/22(火) 01:28:20.06 ID:Ox0rWOSmo
背中に見えるだけで、大小十数。
前面や下肢には、更に増えるだろう。
世界を救うための旅の中で受けたいくつもの傷。
それをーーーーーー打ち消してやりたい、と思った。
サキュバスB「お傷のぶん。……今まで痛かったぶんだけ、ううん。もーーーっと、気持ちよくなってほしくて……」
言葉を待たず、彼の股間に滾った、剛直に触れ、その根元へ指を巻き付ける。
右手でそれを。
左手で彼の胸板を。
乳房で彼の背を、それぞれ愛しく撫でて、大浴場へ淫らな音を響かせる。
くちゅくちゅと粘性の液体が奏でる音、しゅこ、しゅこ、という摩擦音、混ざり合う二つの吐息交じりの声。
サキュバスB「陛下、いつでも出しちゃっていいんですからね? ガマンしないで……ほら」
74 : ◆1UOAiS.xYWtC:2015/12/22(火) 01:29:15.80 ID:Ox0rWOSmo
人差し指の腹で裏筋をくりくりとなで、左手で彼の乳首を抓む。
すると接した胸から、小さな痙攣が二度伝わりーーーーその手応えは、いたずら心とともに、満足感をもたらした。
そして……彼へ、「勇者」へ、奉仕できている事の喜びが上塗る。
サキュバスB「……かぷっ」
泡に覆われていない首筋へ、唇で吸い付く。
そこは湯にも浸かっていなかったから、汗の塩味がそのまま口の中に膨らんだ。
勇者「っ…ぐ……!」
気付かないうちに、彼の男根を扱く右手が動きを速める。
淫魔じみて淫らな焦燥を駆り立てる喜びよりも、楽にさせてやりたい欲求が今は勝る。
ーーーーーーもっと、気持ちよくさせてあげたい。
ーーーーーー何度でも、何度でも。
ーーーーーー痛かったすべての思い出を、塗り替えてしまうほどに。
75 : ◆1UOAiS.xYWtC:2015/12/22(火) 01:32:52.12 ID:Ox0rWOSmo
サキュバスB「いい、ですよ。……いっぱい、出して…わたしの手……どろどろに、して……ください。
……がまん、しないで……ね」
首筋、背中、胸板、男根。
後ろから抱きしめながらの愛撫に、ついつい力が籠る。
早く、出させてあげたい。
高まったそれを吐き出させて、楽にさせてあげたい。
どこまでも白い願いが、心を満たしていく。
サキュバスの抗いがたい欲求ではなくーーーー献身として。
やがて、限界を迎えて迸る。
とっさに亀頭に添えた左手が、その熱を受け止めた。
未だに剛直を握り、しかし緩めた右手には、生命の脈動が伝わる。
口には入らない。
自分の中にも注がれないはずのそれに、確かな充足感を感じていた。
下腹の高まりも、秘所の疼きもない。
ただ、胸を静かに脈打たせる幸福。
それだけで、今は充分だった。
サキュバスB「……ふふっ……いっぱい、出ましたね」
ーーーー刻まれた傷のひとつぶんぐらいは、やっつけられた、気がした。
76 : ◆1UOAiS.xYWtC:2015/12/22(火) 01:35:57.79 ID:Ox0rWOSmo
今日の分終了です
それではまた
それとですが、今回のでスレ立ては最後にするって件ですが
何か湿っぽい理由がある訳ではないのでご安心ください
77 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2015/12/22(火) 02:31:19.72 ID:8yAdOL0do
乙
最近寒いから体調管理に気を付けてー
78 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2015/12/22(火) 03:02:31.19 ID:VQaQzJ4f0
おつ
冷え込む季節だけどBの献身に心が温まるわい
79 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2015/12/22(火) 08:51:06.19 ID:h6pPYF57O
乙
Bも成長してるんだなホロリ
80 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2015/12/22(火) 09:24:57.65 ID:OvmSwH4AO
久々に遭遇、やっぱええね。
お持ち帰りするんなら、やっ…ぱ……B………だ…………な(墜落
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