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勇者「淫魔の国は白く染まった」

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Part1
1 : ◆1UOAiS.xYWtC :2014/12/25(木) 04:44:47.09 ID:d36Bo9WLo
秋を過ぎて冷たくなった空気がいっそう冷え切ったように感じ、目が覚める。
勇者「なんでこんな寒……おい」
サキュバスB「んー……」
充分な幅のあったはずの布団の在り処は、そこだった。
隣を見れば菓子のように巻き込まれた布団の塊があり、その端から髪と角だけが具のように見えていた。
勇者「いい加減に……というか、何故いる。一人で寝たのに」
なんとか身体を起こすと冷たい空気に擦れて、更に体温が奪われるようだった。
乾いた空気によって鼻の奥が涸れたように痛み、唇も水分を失いかけていた。
暖炉に火が入っていない事から、まだ起きるような時間でもないようだ。
勇者「布団、返……返せよ、おいコラ!」
サキュバスB「んもー……」
勇者「んもー、じゃない。起きろ! 起きて布団を返せ!」
彼女がしっかり巻き込んだ布団を奪い返そうとするも、まるで甲冑のようにビクともしない。
勇者「く、寒っ」
数分ほどそうしてから身震いし、諦めてベッド脇のガウンを掛布団代わりに寝ようと試みる。
だが暖かい筈のそれでさえ、霜が降りたように冷えきっており、ぞくりと背筋まで冷気が駆け抜けた。
勇者「冷たっ……なんでこんな目に遭うんだ! もういい起きる!」

2 : ◆1UOAiS.xYWtC :2014/12/25(木) 04:46:32.30 ID:d36Bo9WLo
そうと決めてから、薄暗さの中で手探りに支度を整えて、ガウンを羽織って寝室を出る。
長い廊下の空気は静謐に冷え切り、風がないというだけで外気温とまるで変わらないようだ。
勇者「……どこか、暖かい場所……いや浴場はダメだ、湯冷めして死ぬ」
身を縮めるようにして当て所なく歩いているうちに、かすかに、耳の奥に旋律が響いた。
気のせいかと思って立ち止まり、耳を澄ませば、それは……間違いなくハープの音だ。
しかし城内に、ハープが置いてある場所など思いつかない。
少なくとも、普段使う空間にはない。
聴覚を頼りに進んでいくと、少しずつ、少しずつ音は大きくなってきた。
その旋律は、不思議な安堵感をもたらしてくれる。
寒からしめる空気をかき分け、かすかな熱を持った甘い芳香が五臓六腑に染みわたるような、見事な演奏。
誰の手になるかは分からないものの、ひとつの狂いもなくーーいや、僅かな狂いさえもさながら歌い手の息遣いのように聴こえるほどだ。
かつて人間界で耳にした弦楽、その全ての位が一つ落ちる。
そう表現しても構わない程の、優しい響きだった。
やがて、この城にしては小さな螺旋階段を登った先、尖塔の一つにある部屋に導かれた。
扉に手をかけ、開くと……室内には、小さな暖炉が煌々と燃えていた。
普段目にしない隠し部屋ながらも掃除は行き届いており、埃臭さは感じない。
小窓の近くには使い込まれたロッキングチェアが一脚、
中央のこれもまた簡単なテーブルセットには飲みかけのワイングラスと、瓶が一つ。
そして部屋の奥にはやや古びたハープと、その脇に侍る、演者が一人。
サキュバスA「陛下? いかがいたしましたの? このような晩に」

3 : ◆1UOAiS.xYWtC :2014/12/25(木) 04:47:28.62 ID:d36Bo9WLo
勇者「お前が弾いてたのか」
サキュバスA「ええ。もしかして起こしてしまいました?」
勇者「いや。……意外だな」
サキュバスA「あら、それはどのような意味ですの?」
気を悪くした様子もなく、くすくすと笑って返す彼女は、どこかーー魔族らしくない無邪気さがある。
サキュバスA「私も弾いてみるのは久方ぶりでしたわ。ただ……こんな夜には、奏でてみたくもなるものです」
勇者「?」
サキュバスA「どうぞ、窓の外をご覧に」
促され、曇った窓を一撫でしてから外を覗き込む。
そこには、空からの『白』が舞い散る、夜魔の国の情景があった。
いつから降り続いたものが、しんしんと降る雪によって、見渡す限りが薄く覆われていた。
勇者「寒いと思ったら……」
サキュバスA「それで、陛下。まだ起床なさるお時間には早いかと思いますが……何故?」

4 : ◆1UOAiS.xYWtC :2014/12/25(木) 04:48:43.79 ID:d36Bo9WLo
勇者「ん、ああ。いつの間にかサキュバスBが隣に寝てて、いつの間にか布団を剥ぎ取られて、返して……くれなくて……」
サキュバスA「夜這いに失敗したのですわね。お湯もいただいて、陛下の寝所に忍んで……眠気に勝てず沈没した、と」
勇者「子供か!」
サキュバスA「そんな子供に滾る獣欲をぶつけ、柔肌を舐り、果実を穿るのも陛下でしょうに」
勇者「ヤな言い方するな! 生々しい!」
サキュバスA「淫魔なもので」
勇者「……それはもういい、この部屋は?」
片隅にあったロッキングチェアを引き寄せ、室内を見渡すように座る。
サキュバスA「見ての通りの隠し部屋、いえ大人の隠れ家。私がこっそり設えましたの」
勇者「今バレたぞ」
サキュバスA「ならば公然の秘密としましょう」
悪びれもせず言うと、彼女は腰を上げてテーブルの上のワインを取り、口をつけながら暖炉の前へと移る。
勇者「……それにしても、ハープが弾けるとはな」

5 : ◆1UOAiS.xYWtC :2014/12/25(木) 04:50:16.08 ID:d36Bo9WLo
サキュバスA「たまに、でしてよ。眠れぬ夜など奏でたくなるものなので、このような離れに部屋を作りまして」
勇者「眠れなくなるような事があったのか?」
サキュバスA「例えば初雪の今宵、例えば満月の夜。眠る事がもったいない日もありましょう?
         それに昔の殿方の事を思い出し、腹立たしくて眠れぬ夜も」
勇者「お前でもそんな事があるか」
サキュバスA「ええ。いくら私が優しくてスタイル抜群の美人でも、許せぬ事はありましてよ」
勇者「……それはともかく、雪が止まない」
雲の厚みを見ても、恐らく今日の昼頃までは間違いなく降り続くだろう。
もしかすると、春までこのままかもしれない。
勇者「もう、雪の降る時期か」
サキュバスA「陛下がお出でになられて、もう冬。早いものですわね」
うだるような夏を越え、過ごしやすい秋を過ぎ、訪れたのは極寒の冬。
冬を越えてしまえば、一年を周った事になる。
勇者「助かったよ。ここにお前がいてくれなかったら、今頃凍え死んでた」
サキュバスA「大げさな」


6 : ◆1UOAiS.xYWtC :2014/12/25(木) 04:57:02.11 ID:d36Bo9WLo
勇者「大げさなもんか。……まったく、あいつときたら」
サキュバスA「やる事なす事、まるでテコ入れのようにあざといですわね。ところで、陛下?」
勇者「え?」
サキュバスA「せっかくですもの。……少し、戯れて行かれませんこと? まだ、『夜』は残っておりますわ」
そう言うと、サキュバスAはわざとらしく胸を強調し、ぺろりと舌を覗かせ、唇の端をなめた。
勇者「それよりも、もう少し弾いてくれ。聴いていたいよ」
サキュバスA「ふふ……仰せのままに」
言って、ワイングラスを空けて再びハープに戻る。
音符型の胴を後ろから抱くような姿勢を取り、背筋を優しく丸め、奏者となった。
翻された蝙蝠の翼は、青紫の皮膜で卵のように奏者とハープを包み込む。
挿し絵だとすれば、甘言を囁く悪魔と注釈が付くだろう。
だが、それでもその姿はーーーーどこか切なささえ漂わせる、目を離せなくなるような魅力に満ちていた。

7 : ◆1UOAiS.xYWtC :2014/12/25(木) 04:58:01.73 ID:d36Bo9WLo
窓から差し込む朝日で目が覚め、気付けばそこは寝室だった。
隣にいたサキュバスBの姿は無く、自身ははだけた寝間着姿だった。
暖炉に火が入って時間は経っているようで、寒さは感じない。
やがていつものように、堕女神が起こしにやってきた。
勇者「おはよう」
堕女神「おはようございます、陛下。……初雪が降りましたが、ご覧になられましたか?」
勇者「ああ」
堕女神「朝食の前に……お耳に入れたい事がひとつ」
勇者「何だ?」
堕女神「隣国から、その……陛下に、協力してもらいたい事があると」
勇者「俺に?」
堕女神「はい。陛下に。あくまで陛下個人の協力が必要との事です」
勇者「話が見えない」
堕女神「……性教育」
勇者「は?」
堕女神「隣女王陛下の、性教育です」
そう言った彼女は、それきり微妙な表情を作ったまま黙りーーーー結局、朝食を済ませて執務室へ行くまで、詳しくは聞かせてくれなかった。

8 : ◆1UOAiS.xYWtC :2014/12/25(木) 04:59:10.21 ID:d36Bo9WLo
勇者「……で、どういう事なんだ?」
ずきずきと痛むような頭を抑えながら、どうにか問う。
堕女神も未だ困惑しているようで、時おり唇を波打たせるように言いよどむ。
堕女神「……まず前提として、我が国では1800歳以下の性行為は禁止。種族の寿命によってはその限りではありませんが、まずサキュバスは則ります」
勇者「うん」
堕女神「一方、あちらの国では15歳以下は禁止。彼女らに充分な倫理観や道徳心が備わるまでは、との事です」
勇者「それも知っている。なのに何故、何故だ」
堕女神「曰く、あまりに初心が過ぎると」
勇者「…………コメントしづらいな」
堕女神「……同感です。ですが……いつかは学ばねばならない事だとか。殿方は淫魔国界隈には陛下お一人です」
勇者「俺を教材にしようってのか?」
堕女神「単刀直入には。……最終的には陛下のご判断です」
勇者「教育だから問題ない、っていう抜け道もどうかと思うんだけどな。だいたい何を教えるんだ」

9 : ◆1UOAiS.xYWtC :2014/12/25(木) 05:03:20.54 ID:d36Bo9WLo
堕女神「それは、その……つまり……直接的でなければ何でも」
勇者「しかしな……」
堕女神「ただ、一つ申し上げるなら…歯止めを効かせる為には、ある程度は隣女王陛下に知識と実践を伴わせていただくべきかと」
隣国に住まう淫魔ーーーー彼女らの種族は、残酷、貪欲だ。
咲き掛けた蕾にも見えるが、それは猛毒の罠。
一度誘われてしまえば、甘く蕩ける快楽の中で、その身をしゃぶり尽くされ、死に至る。
通常のサキュバスが花だとすれば、彼女らは、さながら食虫植物だ。
堕女神「隣国の淫魔は、ハッキリと申して危険です。隣女王陛下の治世は幼いながら整っておりますが、それだけに急激な変化があっては危ういと」
述べながら、堕女神は隣国からの手紙の写しに目を落とす。
それは、勇者の目の前にある原本と内容は同じだ。
堕女神「いつかは子を生し、世継ぎとしますが……その際、淫魔として悪い方に振れてしまうと、国の危機に繋がります」
勇者「……つまり一国の存亡を賭けた性教育?」
堕女神「我が国への影響がないとも限りませんし……陛下もお気が乗らないかと存じますが、もしかすると、人間界から連れ去ってきてしまうやも」

10 : ◆1UOAiS.xYWtC :2014/12/25(木) 05:04:00.04 ID:d36Bo9WLo
もちろん、それが大げさな話ではない事は分かっている。
少しの逡巡の後ーーーーようやく、意思は言葉になった。
勇者「……分かった、受けよう。だが……どうやって?」
堕女神「監視、及び指南の役を……両陛下と同衾して務める者が必要ですね」
勇者「堕女神は?」
堕女神「わ、私ですか? お恥ずかしながら、役目を果たせるほどの……経験は……。あ」
勇者「え?」
堕女神「適役が一人おります。隣女王陛下とある程度親しく、一応はサキュバス。物を教えるのに向くかは分かりかねますが」
勇者「……あぁ、アイツか」

11 : ◆1UOAiS.xYWtC :2014/12/25(木) 05:07:54.37 ID:d36Bo9WLo
投下しゅうりょ
一年以上また空いてしまったけれど、どうか勘弁を
それではまた明日

12 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2014/12/25(木) 05:09:42.89 ID:rKDY8JDao
初めてリアルタイムで遭遇したわ
楽しみにしてる

13 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2014/12/25(木) 05:12:12.82 ID:GOM9QIPF0
ずっとお前を待っていたよ
ちょっと寒いが続きを全裸で待機させて貰おうか

14 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2014/12/25(木) 05:18:07.68 ID:pFV1i1Zb0
待ってました。ありがとう
リアルでは初めて
ずっとフォローして待ってた甲斐があった

15 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2014/12/25(木) 05:45:17.60 ID:TjWs4EnVO
待ってたよ

16 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2014/12/25(木) 05:51:04.34 ID:NmeEurBoo
まさかまた読めるとは思わなかった。おかえり

17 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2014/12/25(木) 05:54:59.98 ID:8kVkv3wX0
早起きの甲斐があった

66 : ◆1UOAiS.xYWtC :2014/12/26(金) 03:40:28.07 ID:MkFoF7Rko
その後いくつかの話をまとめ、昼食まで空いた時間、庭で過ごすことにした。
白く化粧した中庭は、まるで雰囲気が違う。
靴底からさくさくとした新雪の感触が届き、テラスまでの道のりもどこか楽しい。
吐く息まで白く宙に溶けて、雲の晴れ間から覗く青空までも、澄ませたように鮮やかだった。
使用人達は通路の雪よけや庭木の雪払いに追われているようで、昼前の今になっても、仕事の手を休められていない。
サキュバスB「あっ、陛下!」
振り返ると、そこには幼気が抜けない淫魔が、いつものように人懐こい笑顔を浮かべていた。
しかし、その姿は……世辞にも、雪とは似つかわしくない。
勇者「あぁ、……って、何だその格好は?」
サキュバスB「え、何、って……?」
勇者「寒くないのか?」
サキュバスB「え……、いえ、別に。動きやすいですし」

67 : ◆1UOAiS.xYWtC :2014/12/26(金) 03:41:24.08 ID:MkFoF7Rko
上も下も、夏に見たものとまるで変わっていない。
顔と雰囲気に似つかわしくなく豊満な胸の上部まで覆うビスチェに、薄青い太腿を露わにしたショートパンツ。
ブーツだけは一応冬らしく長いものを履いてはいるが、見ているだけでも寒々しくなるような、恐ろしく季節感のない姿だった。
勇者「寒くねーくせに昨日は俺を殺しに来たのか!」
サキュバスB「ね、寝る時は別ですよ! それに、寝てる途中は魔力が弱くなるから……体温調節できませんし……」
勇者「…………」
サキュバスB「……ごめんなさい」
勇者「次はせめて起こせ。あれは完全に刺客だ」
サキュバスB「はい。……どうしても、エッチしたくて……」
勇者「これで務まるのか……本当に? 適任が他にいるんじゃ……」
サキュバスB「へ? く、クビですか!? 待ってください! 今日は何でもしますから! 縛っていただいても……あ、それともお外で」

68 : ◆1UOAiS.xYWtC :2014/12/26(金) 03:42:28.81 ID:MkFoF7Rko
勇者「違う違う! 声! 声がデカい!」
通りがかったメイドが、『クビ』という単語の不穏さにーーーーあるいはその後の内容に、やり取りに振り返る。
その中にニヤニヤとしながらこちらを見るサキュバスAがいたが、それには気付かないふりをした。
勇者「つまりだ、お前に重要な仕事があってな。正式には後で伝えるが……内容がな」
サキュバスB「まかせて下さい! 何でもやっちゃいますよー!」
勇者「教育なんだが」
サキュバスB「? 新人さん教育ですか?」
勇者「まぁ、ある意味……詳しくは後だ、仕事に戻れ」
サキュバスB「はーい」
そして、サキュバスBは尻尾を左右に揺らしながら向こうへ駆けて行った。
彼女が去っていく姿を見ても、どうしても不安がぬぐえない。
ひたむきさや真面目さはあっても、何をしでかすか分からない怖さがあるからだ。


69 : ◆1UOAiS.xYWtC :2014/12/26(金) 03:45:59.44 ID:MkFoF7Rko
その夜は、それまではとても静かだった。
夕餉を終えた頃からふたたび雪が降り始め、静寂すら『音』として聞こえてきそうだった。
勇者「……淫魔の国に来たと思ったら、淫魔に性教育? どんな冗談だ」
暖炉の火を落とした寝室で、何とはなしに外を眺める。
今少し室内に熱が残ってはいるが、じきに冷えてくるはずだ。
その前にベッドに入ろうとは思っているが、どうも眠る気分にはなれない。
妙な大任の事もだが、静けさのあまり逆に落ち着けないのだ。
ここまで静かだと、むしろ生き埋めにでもされたような憂鬱さすら感じる。
食料庫から酒を盗んで来るか、それとも窓から飛び降りて城下の酒場にでも繰り出そうか、とも思案するほどに。
事実、秋ごろにサキュバスAから名物の厚さ4cmのステーキの話を深夜に聞かされてしまい、いても立ってもいられずそうした前科がある。
分厚く焼かれたステーキを楽しんで、酒場に居た全員にかたく口止めして城の寝室に戻ると堕女神がいて、
結局、サキュバスAもろとも説教をされてしまった。
雪に足跡を残せば、今度は酒場まで追跡される。
しかし今ならーーーー降り続く雪で、足跡を消せるのではないか?
それとも、静けさに乗じて食料庫まで下り、適当な燻製肉と酒を盗んでくるか?
窓に手をかけたあたりで、ふと思い留まり、いたずら心を抑え込んでベッドに入る。
空腹がこれ以上進んでしまう前に、眠ってしまう事にした。

70 : ◆1UOAiS.xYWtC :2014/12/26(金) 03:47:46.15 ID:MkFoF7Rko
眠りについて数刻すると、室内に気配を感じて、眠りが浅くなった。
うとうとしながら何者かの息遣いを聞き分けようとしていると、まっすぐベッドに向かってきて、同じ布団にもぐりこんできた。
胴に腕を回されたあたりで、口を利くまでに眠気は薄れた。
勇者「起こせ、とは言ったけど……ノックぐらいしたらどうだ」
背を向けて寝たままそう言うと、かき抱く腕がかすかに震える。
しかし、侵入者はーー何も言わない。
堕女神「すみません……陛下」
勇者「…………堕女神? 何だ、珍しい」
身体を少し起こして反転すると、隣に寝ていたのは、まぎれもなく彼女だった。
彼女はまるで、叱られた子犬のようになって蹲っていた。
勇者「眠れなかったのか?」
堕女神「……すみません」
二度目の言葉に、どこか苦しげなものを感じ取りながらーー彼女に向き合うように、再び横になる。
ほんの少し身を起こして布団に隙間を作っただけなのに、肌には冷たい空気が刺さった。
堕女神は、すぐに布団の中で体を寄せ、ぴたりと密着してきた。

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