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勇者「真夏の昼の淫魔の国」

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Part12
427 : ◆1UOAiS.xYWtC :2013/09/21(土) 03:47:15.33 ID:KkJqIXbko
「……うぅっ……!」
浴槽内の段差に腰掛け、二の腕まで浸かると、思わず年嵩のような唸りが漏れた。
湯の温度は少し熱いが、それはおそらく体が冷えているせいだろう。
至福の時を味わいながら時を置いていると、ぽかぽかと暖まってきて、さほど熱くは感じなくなった。
「……ん?」
やがて、落ち着いて湯煙にも目が慣れてくると――――対面に、人影が見えた。
対面といっても距離で六、七メートルはある。
薄い薔薇色の水面に、確かにそちらからの波立ちが、認められる。
「誰かいるのか? ……すまないな、邪魔をしてしまった」
声をかけると――――意外にもあっさり、その人影が湯船の中を歩き、こちらへやってきた。
臍から上だけを覗かせ、湯煙を割いて現れた姿は、間違えようも無い。
「陛下……申し訳ございません。お先に、頂いてしまいました」
上気し、ほんのりと赤みを帯びた白い肌。
隠しきれない乳房を抱えるように隠したまま、堕女神が、姿を見せた。

428 : ◆1UOAiS.xYWtC :2013/09/21(土) 03:48:12.48 ID:KkJqIXbko
「いや……こんな時間に入る俺がおかしいんだ。気にしなくていい」
そう言うと、彼女はほっと息をついて、勇者のすぐ隣に腰を下ろした。
湯に浸かって火照った彼女の肌は、血の色が透けて見えるようで、美しかった。
入浴の邪魔にならないように結い上げた髪は湿気を含んで幾筋かが垂れており、
それがまた、何とも言えない艶やかな色香を醸している。
豊満な果実のような双丘は水面に浮いて、浮き沈みする舳の色づきに目が引き寄せられ、
その度に彼女は恥ずかしそうにして、沈め直すように隠した。
「堕女神」
「……はい」
「俺が、帰って来てから……よそよそしい、というか。……いや、いつも通りの態度だったな」
そう言うと、彼女は湯の中で足を組み替えて波立たせる。
返答はなく、揺れた瞳が水面を漂った。
「……一度、夕食の後に……一度、お部屋へ伺ったのです。沐浴なさってはいかがか、と。
しかし、その。お疲れが溜まっておいでのようで……眠っておられましたので」
「そうか、ごめん。気を遣わせたな。……でも、起こしてくれてよかったのに」
「……申し訳ございませんでした」
「だから、いい。それより――――俺がいない間、『休日』はどうだった?」

429 : ◆1UOAiS.xYWtC :2013/09/21(土) 03:49:04.45 ID:KkJqIXbko
そう訊ねると、彼女は唇を引き締め、俯いた。
体の前で胸を隠していた二の腕は解かれ、湯の中に沈み、反して、二つの果実は浮いた。
「時に追われず過ごす、というのは……確かに、寛げました」
「なら、良かった」
「ですが……休まる事など、できませんでした」
「え…?」
「……陛下が」
浴槽内に置いていた手に、彼女の手が重ねられた。
「せっかく陛下に賜った『休日』を……私は、『早く終わってしまえばいい』と、思って……しまいました。
…………申し訳……あり、ません……」
弱々しく、吐き出すような声。
反して湯の中で重ねられた手はきゅっと握られた。
その行為に全てを汲み取り――――その手を引き寄せると、彼女の身体も従った。
浴槽につかる勇者に、堕女神が対面して覆いかぶさるような姿になり、彼女の顔が胸板へ押し付けられた。
太腿に、かすかな重みと吸い付くような柔い太腿の感触が加わる。
「……もう、私は……貴方がいない事、に……耐えられそうに、ありません……」
「…………」
潤み、哀切の色を濃くした瞳が――――ゆっくりと、迫った。
近づいてくる荒くなった『吐息』の香りは湯煙に負けない程濃く、甘く、情欲に満ちている。
堕女神の背に腕を回し、鳥籠を閉じるように、彼女をその手に抱いた。
そして――――

430 : ◆1UOAiS.xYWtC :2013/09/21(土) 03:50:14.77 ID:KkJqIXbko
「ん、ぅっ……」
ちゅぷっ、と湿った音が、唇を通して頭を震わせた。
唇が触れ合ってもなお勢いは止まることは無い。
彼女の唇が、勇者の下唇を挟み込み、口内で舌先が待ちかねたように舐る。
まるで皺のひとつひとつを伸ばすように、上下、上下に往復しながら――薄く、暖かい舌が這い回った。
漏れ出た唾液の一筋に至るまで、彼女の舌は逃してはくれない。
やがて、下唇を心行くまで舐ったと思えば――次は、上唇を同様になぞられる。
吐息を漏らすたび、彼女は鼻をひくつかせ、それを吸い込む。
唾液も、息も、視線も――――全てを、彼女は呼吸する。
貪るようだった舌の動きは、段々と――――満ち足りたか、鈍くなる。
気付けば、勇者の『性』は硬く、引き絞られて起ち上がっていた。
「ひぁっ……!」
偶然に亀頭が、堕女神の後ろの蕾を、掻いた。
その拍子に舌の凌辱が止んで、すぐ目前で高い喘ぎが聴こえる。
「っ……貴方の……大きくなって……ます……」
「もう、する……か?」
そんなデリカシーを欠いた問いに、彼女はどこか嬉しそうな微笑みを浮かべて、答えた。
「いえ……その前に。覚えた事が、ございます。……さ、させて……いただけ、ますか?」
「……? 構わないが……」
「ありがとうございます。……縁へ、腰掛けていただけますでしょうか」

431 : ◆1UOAiS.xYWtC :2013/09/21(土) 03:51:19.75 ID:KkJqIXbko
堕女神に言われるがまま、腰を一度浮かせて、一段上の、浴槽の縁へ座る。
自然、彼女の鼻先に陰茎を突きつけるような姿になり、彼女も一瞬たじろぐが、やがてすぐに微笑みに戻る。
「それでは……失礼、いたします」
まるで人魚が近寄るように、彼女は水面を泳ぐように、屹立した『それ』へ顔を寄せる。
そして――――唇を尖らせ、啄む。
ちゅ、ちゅ、と……親愛の情を交わす挨拶のように、根元から亀頭まで、彼女の柔らかい唇が触れる。
かつては『愛の女神』だった彼女の唇が、今――――勇者の、一人の『男』のモノに愛しげに口を寄せる。
それは、退廃を極めた美しさがあった。
やがて、口づけが止むと――――次に、手が添えられた。
かつて彼女に祈りを寄せていた者達がそうしていたように、合掌した手に挟むように、それを握り――――
先端、裏筋から鈴口を、舌先が一嘗めした。
そのままちろちろと先端を嘗められ、焦らすようにしてから、先端が含まれた。


432 : ◆1UOAiS.xYWtC :2013/09/21(土) 03:52:13.01 ID:KkJqIXbko
「うぅっ……!」
どこまでも優しくて、細く繊細な手の感触。
不慣れでたどたどしい、唇と舌の愛撫。
陰茎をしゃぶる音と、ちゃぷちゃぷと揺れる湯の、二つの水音が混ざり合う。
「っ……覚え、たっ……って、いったい……!」
「……サキュバス……A、に……。……ん、ぐ……ぅ……!」
答え、再び意を決したように、それを飲み込んでいく。
彼女の口の中は溶かされるように熱くて、うねる蜜の海のようにまとわりつく唾液が、ねっとりと絡みついてきた。
たどたどしく、拙くとも――――それは、まさしく『淫魔』の業だ。
亀頭が喉の窄まりに触れた時、彼女は僅かに前のめりになり、くぐもった声を漏らした。
えづきかけた時、軽く前歯が立てられてしまっても、痛みは無い。
申し訳なさそうにする彼女の上目使いに打ち消されてしまった。
なのに、彼女は口を離し――――
「申し訳ありませんでした。い、痛く……は、ありませんでしたか?」
分かりやすく狼狽えて、謝ってきてしまう。
「いや、大丈夫だ。……やめなくてもよかったのに」
「……それでは、こちらで……奉らせて、いただきます」

433 : ◆1UOAiS.xYWtC :2013/09/21(土) 03:53:09.55 ID:KkJqIXbko
そう言うと、彼女は湯船の中に膝を立てて姿勢を高める。
顔の高さが勇者の臍のあたりにまで来たところで身体を前に倒し――――甜瓜の如く実った乳をモノへと押し付け、その谷間に飲み込んでいった。
「くっ……!」
柔らかく、暖かく、よく練った麺麭生地のように吸い付く淫靡な肉感に包まれ、声を堪えられなかった。
すかさず堕女神は手を添え、二つの乳房の間でモノを扱き、揉み込み、亀頭が露出した時には、そこへ口づけを加える。
赤みの差した白い乳房に、すっぽりと飲み込まれてしまい――――もはや、どこにあるのかさえ分からない。
母胎に還ったような安堵と幸福が、下腹から立ち上る。
子へ含ませるためのその乳が、子を生すための肉槍を愛撫する。
それも――――かつて人間達の『愛』を見守っていた筈の、『女神』の御胸が。
「あ、んっ……! いか、が……ですか……? 上手く、できて……います、でしょうか?」
「……良い、よ……」
「ふふっ……。……すごく、硬くて……お……お、っぱい……が……潰されて、しまいそう……です」
乳房を使った奉仕の最中、彼女は戸惑いながら、わざと淫らな言葉で表現してみせる。
言ってしまった、という恥じらいの表情もまた『愛撫』のひとつのようで、……昂り、更にモノに力が伝わり、
硬直するのが分かった。
「いつでも……出して、ください。……貴方の、……早く……欲しいです、から」

434 : ◆1UOAiS.xYWtC :2013/09/21(土) 03:54:39.20 ID:KkJqIXbko
れろんっ、と鈴口を嘗め上げられ、背が思わず逸れた。
既に先走りが迸り、双丘の中に飲み込まれ、湯と、汗と混ざって滑りとなっている。
もはやいつ放ってしまってもおかしくなく、精道が詰まったようで、時が経つごとに感覚が尖ってしまう。
包み込まれているだけでも弾けてしまいそうなのに、駄目押すように不規則に彼女の唇が色を差す。
「……い、っ……!」
最後まで告げる事もできず――――睾丸から精道へ、激流がこみ上げた。
そのまま押し出すように放たれる直前、亀頭がぴったりと包まれた。
強烈な解放感と眩暈のするような快感に上がっていく顎を抑えて見れば、堕女神がすっぽりと咥え込んでいた。
直後、瞬ける間もないままに――――ようやく、吐き出される。
「んむっ…ぐ、ぅっ――――――!」
炸裂する霰弾のように放たれる白濁を、彼女は受け止める。こぼれた乳白色の精液は白い胸を濁らせるように染め、
薄薔薇の水面に浮いて漂う。
口の中に吐き出した分は、ごくごくと飲み込まれて――その度に窄まった頬肉が亀頭を擦り上げ、
粘膜の触感が敏感な部分に刺激を与えてくる。
――――――やがて射精の波がおさまると、少し間を置いてから、彼女もようやく口を離す。
「ふふっ……。ご満足……いただけました、か?」
全てを飲み下し、亀頭にこびり付いた精液を嘗め取ってから、堕女神は魅了するように微笑み、見上げてくる。
口の端についた白濁を指先で掬い、つまみ食いをするように嘗め取る様子は、
健気で――――どこまでも、愛しかった。

435 : ◆1UOAiS.xYWtC :2013/09/21(土) 03:55:20.65 ID:KkJqIXbko
「……すごく、良かった。気持ちよかったよ」
そう言うと、彼女は視線を揺らし、伸び上がり――――唇を求めようとし、やがて、止まる。
「も、申し訳……ありません。口を……漱いで参りま……えっ!?」
断りを入れ、離れようとした彼女のうなじに手を添え、引き寄せて強引に唇を奪う。
最初は、嫌悪感を与える事を恐れて抵抗していた彼女も観念したように身を任せてくる。
口内には、微かに栗花のような香りが残る。
だがそれ以上に、暖まった肺から立ち上る、堕女神の吐息の香りの方が強い。
時にして数分そうしていると、唇と胸、脳髄の熱さに反して、必然、身体は湯冷えする。
どちらからともなく、もつれ合うように湯船に身を沈めた。

436 : ◆1UOAiS.xYWtC :2013/09/21(土) 03:56:32.23 ID:KkJqIXbko
****
「あっ……! い、嫌…………乳、房……ばかり……苛め、ないで……ください……」
冷えた体を温めながら、堕ちた女神を湯に溶かすように求める。
背面を向かせて膝の上に座らせれば、彼女の白いうなじと背中がすぐ前に覗ける。
湯の色と、火照った赤みが花を添え――――さながら、薔薇の蜜に浮かぶ雪山にも似ている。
背を向かせたまま、両手は彼女の双果を絶えず愛撫する。
みっちりと張り詰め、柔らかさの中に確かな弾力もあり、押し出した物言いをしない彼女に代わり、
存在を主張しているようでもある。
人差し指と中指の股に乳首を挟み込み、『水かき』の部分で、時おり擦る。
「ふぁっ……!」
乳首に触れずとも、乳輪の色づきをくにくにと揉み上げるだけで、彼女の喉が震える。
後ろから白くて手入れの行き届いたうなじに、啄むようにキスをすると――――続いて、身体までもびくびくと反応する。
腕の中に抱いた堕女神の肉体は、折れそうなほどか弱く、暖かく。
そして――――並はずれて、感度が良い。
めちゃくちゃにしてやりたい衝動と愛でてやりたい衝動が圧し合い、その二つの間をいつも揺蕩う。
恐らく、『有り得たかもしれない自分』は、前者の衝動を抑えられなかった。
抑えられなかったから――――『暴君』になった。

437 : ◆1UOAiS.xYWtC :2013/09/21(土) 03:57:30.03 ID:KkJqIXbko
衝動は、『そんな自分』を追体験した今でも、消えてはくれない。
だが、身を任せたことは無い。
そうさせないのは――――新しい『七日目』の翌朝、彼女の、花の咲くような笑顔を見たからだ。
「貴方の……硬く、なって……ます……」
自然と血の廻った陰茎が、再び勢いを取り戻し――――湯の中で、彼女の秘所の裂け目をなぞった。
その事に気付いた堕女神が、もじもじと身をくねらせ、秘部をひくつかせ、自ら押し付けてくる。
「……お迎え、しても……よろしい、でしょうか…………?」
おずおずと問う彼女へは、答えない。
その問いかけに秘めた「欲求」を、分かっているから。
答えずに――――再び硬くなった先端を、秘部へ押し当てる。
それを受けると、静かに、ゆっくり、腰を落として呑み込んでいった。
「んふぁっ……! は、入って……きま、す…………!」
湯ごと押し込むように、柔らかくぬめった感触がモノを包んだ。
きゅっと締め付けるような感覚に続き、ゆっくりと堕ちた女神の肉を遡り、じわじわと、神聖な部位へと近づく。
締め付ける部位が段々と先端から根元へ近づき、熱さが肉茎を押し包む。
「……あ、あぁぁ……! 貴方の、が……奥、まで……ぇ……っ!」
根元まで呑み込むと、堕女神は荒く、肩で息をつく。
焼け付くような粘膜が、モノへと張り付く。
生娘のような締め付けは、湯の中で勇者を支配した。
そのまま、彼女は――――自ら腰を振り、上下に肉茎を摩擦し、きゅっ、きゅっ、と締め付ける。

438 : ◆1UOAiS.xYWtC :2013/09/21(土) 03:58:43.25 ID:KkJqIXbko
のぼせ上がるほどの熱さで、目の前がクラクラする。
もたれかかるように彼女の背へ顔を押し付け、ぎゅっ、と両手を握り締めてしまう。
「い、たっ……!」
「ご……ごめん。つい、力が……」
初めての『悲鳴』が大浴場に小さく響いた時、はっと我に返り、謝罪する。
爪が食い込む感覚が、僅かに残っていた。
なのに――――堕女神はほんの少しだけ顔をこちらに向け、にっこりと笑ってくれる。
「いえ、良いのです。……私は……」
ほんの少しだけ笑顔が曇り、そして日が差し――――暁のように赤らめながら、ようやく続ける。
「私は……あ、貴方……の…………っ!?」
その先の言葉を先回りし、唇で封じる。
引き寄せ、肩に彼女の小さな頭蓋の重みを確かめながら――――
深く、深くまで彼女の唇を、つるりとした前歯を、舌を、頬の粘膜を、歯茎を味わう。
もごもごと唇を蠢かせる彼女に、形振り構わず、舌を操って口腔を凌辱する。
暖かくて弾力ある唇が、性感で高まった唇に、淫靡な快感をもたらしてくれる。
触覚と味覚、二つがもつれて絡まり合い、無限に続く螺旋を描くようだった。
そうしている内に、彼女の奥まで昇らせていた『男性』が、きゅん、きゅんと甘締められる。
リズムは段々と早く詰まっていき、やがて早鐘を打つような律動を刻み、繋がると――――
ぴくぴくと媚肉が蠢き、堕ちた女神は、高みへ達する。

439 : ◆1UOAiS.xYWtC :2013/09/21(土) 03:59:33.43 ID:KkJqIXbko
「んーっ……! ふ、んんっ……! んぁぅぅっ――――!」
舐られたままの唇の中に、彼女の淫声がこだまし、そのまま、勇者の頭へ反響する。
脳髄に直接響くような絶頂の喘ぎは、奥底へと浸透し――――
「ぅんっ……、はっ……! は、激し……っ!」
下から突き上げる腰の動きを、早めた。
達し、昂った肉体を更に遠くへ連れて行くように――――口辱と乳辱の両方も、更に激しさを増す。
耳朶を甘噛み、小さな耳穴へ舌をねじ込み、殊更に音を立てて舐り回す。
その度に離れていきそうになる身体を、離すまいと、淫肉の双球をこね回す手に力を込め、引き留めた。
既に乳房の先端は硬く充血し、揺れる水面が触れるだけでも、彼女の背が跳ね上がるほどだ。
指の股で挟み、揉み込むと――――それだけで、小刻みな絶頂を迎えるらしい。
「う、くっ――――! も、もう……いい、か……?」
愛蜜か、先走りか、それとも湯なのか。
それさえ分からないほどに、酷く淫らな温度の中――――射精が近づく。
「あ、貴方の……! 出……出し、て……ください……っ! 全、部……受け止め、ます……からぁ……!」
湯と、唾液と、涙に塗れた懇願から、少しして。
彼女の奥へ――――『再会』を、放った。

440 : ◆1UOAiS.xYWtC :2013/09/21(土) 04:00:10.21 ID:KkJqIXbko
****
一週間も経つと、全てが元通りになった。
再会の晩を越え、朝になると――――堕女神は、堅物に戻ってしまった。
サキュバスAは会うたび、話すたびに笑いながら煙に巻くし、サキュバスBは運んでいる最中に大皿を数枚落として割った。
もう、あの汗ばむ日々は返ってこない。
執務室に籠もっても、寝ていても、歩いていても、中庭でひとときを過ごしていても、もう、日差しに鋭さはない。
むしろ、シャツ一枚で過ごすと、どこか肌寒い日もある。
共に夜を過ごす『淫魔』の身体を抱き締めると、その肌の暖かさが、丁度良いほどだった。
そんな日に、中庭で午後の執務の前の休憩を取っていると……堕女神が訪れて報告をくれた。
あるサキュバスからの献上品が届いているという。
どことなく複雑そうな表情を浮かべる彼女に、興味を引かれてついていく。
通されたのは、玉座の間でも執務室でもなく、玄関先――――だった。
謎に感じても、到着すれば、すぐにその謎は解けた。

441 : ◆1UOAiS.xYWtC :2013/09/21(土) 04:01:12.49 ID:KkJqIXbko
「……これ、は」
馬蹄階段を下りた所、荷車に乗せられていたのは、山積みの『赤』だった。
「先ほど届いたものです。なんでも、城下へ新たに移り住んだサキュバスが陛下へ、と。
 見れば誰からかは分かる筈だ、と申していたそうですが……」
「…………ああ」
どう使えばいいかも分からない程、大量の『善悪の果実』へ近づく。
階段を下りれば、甘酸っぱい香りが漂ってくる。
あの日、あの木の下で薫ったものと、まったく同じだった。
赤に混じって、まだ未熟な黄色みがかったものもちらほらとある。
それは、紅葉を迎えた秋の野山がすぐ目の前にあるようだ。
「すぐに追いつく、とは言っていたな。だけど…………これは、多くないか」
一つだけ、その山から取って、シャツの袖で皮を拭って、かぶり付いてみる。
しゃっきりとした食感、口の中に跳ね飛んでくる甘酸っぱいしぶきは、人間界で食べたものよりも、染み入るように美味だった。
実った理由は、考えても分からない。
もしかすると、それは――――はるか高く、果てしない何かが、『許した』のかもしれない。

442 : ◆1UOAiS.xYWtC :2013/09/21(土) 04:01:44.66 ID:KkJqIXbko
「……まったく。顔ぐらい見せろよ」
「あの、陛下?」
「…………後で、詳しく説明するよ。ひとまず貯蔵庫へ入れておいてくれ。みんなに振る舞ってもいい」
「はい、かしこまりました。……これを使って、人間界の文献に載っていた焼き菓子を作ってみてもよろしいでしょうか?」
「ああ。楽しみだな」
林檎を齧りながら、ゆっくりと、執務室へと戻る。
あの手入れされた芝とも違う草地の感覚が余韻として戻ってきて、爪先を少し物足りなくさせた。
空の近づく季節は去り、空が遠のく季節が、これから来る。
淫魔の国の真夏の日は去り、収穫の秋がやって来る。
こうして――――また、一年。
あの暑さは、おあずけになった。


443 :以下、新鯖からお送りいたします :2013/09/21(土) 04:06:09.77 ID:EE43B+Ow0
乙!!!

447 :以下、新鯖からお送りいたします :2013/09/21(土) 04:33:31.49 ID:yVqJASZJo
乙!
堕女神はやっぱりカワイイな。
夏休み中の駄女神が楽しみだ。
できれば、Cと一緒に帰ってきた勇者も見て
「私は連れて行かなかったのに、女と帰ってきた」
(`Д´) ムキー!
ってパターンも見たかった。

459 :以下、新鯖からお送りいたします :2013/09/21(土) 14:28:40.55 ID:5py/WYPi0
乙!
淫魔の国に幸あれ!

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