堕女神「私を、『淫魔』にしてください」
Part8
162 : ◆1UOAiS.xYWtC :2012/12/21(金) 03:10:24.13 ID:IAYWe2woo
夕食の席は、賑わっていた。
普段は一人しかつかない食卓には、隣国の女王とその側近、そして護衛兵までが着いた。
加えて堕女神も席に着き、優艶な仕草で食事を進める。
隣女王「…美味しいです。特に、このお肉……お口の中で溶けるようで……」
堕女神「お気に召していただけて、何よりです」
勇者「相変わらずだな」
ナイフが不要なほどにやわらかく煮込まれた、牛肉を使った主菜に皆が舌鼓を打つ。
見慣れない白身魚のスープも、露が滴るほど新鮮な野菜のサラダも、
馥郁とした甘い麦の香りをまとったパンも、その場にいる誰もが、笑顔とともに食していた。
隣国からの客人達が、顔を綻ばせて食する姿を見て、堕女神はどこか照れ臭そうな素振りを見せる。
無邪気な賞賛の声が上がる度に赤みが差すようだ。
勇者「……実はかなり照れやすいだろ?」
堕女神「…いえ、そのような事はありません」
勇者「いや、照れてる」
堕女神「で、ですから……! 照れてなど!!」
163 : ◆1UOAiS.xYWtC :2012/12/21(金) 03:11:42.97 ID:IAYWe2woo
張り上げられた声の主に、視線が集まる。
口の周りをソースで汚し、パンを頬張ったまま、あるいは肉片を口に運ぶ動きの途中で、
幼い淫魔達、更には給仕をするメイドまでもが堕女神を振り返った。
堕女神「……も、申し訳ありません。お騒がせいたしました……」
ばつが悪そうに、それでいて更に染まった顔色を誤魔化すように、ワインに口をつける。
隣女王「………ふふっ」
勇者「……? どうしたんだ」
隣女王「あっ……いえ、すみません。ただ……お会いした時とは、印象が違うので」
勇者「イメージ?」
隣女王「玄関では落ち着いた方だな、と思ったのですが……とても、感情が豊かな方なのですね」
堕女神「……どうか、からかわないで下さいませ」
勇者「……まぁ、この話はもうやめようか。二人がかりで苛めてるようになる」
隣女王「いえ、私は本当に、本心から…」
勇者「ともかく、話題を変えよう」
164 : ◆1UOAiS.xYWtC :2012/12/21(金) 03:12:52.45 ID:IAYWe2woo
晩餐会のその後は、つつがなく進んだ。
隣女王は堕女神に「女王」としての教えを請うように、幾度も質問を重ねた。
熱心なその瞳に炎を揺らがせながら、隣国を治めていくために必要な、あらゆる事を。
政治上の方策をはじめ、内政、外交、飢饉への対処、その全てを学び取ろうとするように。
勇者では、それらに答える事は確かにできなかった。
王になり日が浅いというのもあるし、知識と経験の面で代行とはいえ、淫魔の国を治めた堕女神には勝る筈も無い。
堅苦しい話を続けているうちに、食卓の全員が皿を空けて、デザートが運ばれてくる。
台車に乗って運ばれてくる、塔のように積み上げられた色とりどりのデザートが、場の全ての目を釘付けにした。
ひとつのグラスに数種類盛られた柑橘類のシャーベット、生クリームをふんだんに用いた苺を載せたケーキ、
ビスケットにバニラアイスを載せてブルーベリーをトッピングした、一口サイズの菓子。
その他、隣国の淫魔はもちろんの事、勇者でさえも見た事の無い菓子が、まるできらめく宝石のように、シャンデリアの灯りの下に現れた。
隣女王「……凄いです。こんなに……」
隣国側近A「…あの……本当に、食べてもよろしいのですか?」
勇者「……え? あ、ああ……勿論。好きなのを……遠慮なく」
隣国衛兵A「…じゃ、私はこれを」
隣国衛兵B「私はこのケーキと、これと、これと……」
隣女王「あっ…! お、落ち着いて…!」
165 : ◆1UOAiS.xYWtC :2012/12/21(金) 03:14:36.37 ID:IAYWe2woo
隣国の淫魔達があどけなく顔を輝かせて様々な菓子を頬張るのを見て、彼女はどこか奇妙な表情を浮かべる。
微笑むように緩めるでもなく、その振る舞いに苛立ち歪めるでもなく、どこか楽しげでありながら、視線は定まらない。
勇者「どうした」
堕女神「いえ……取るに足らない事、ですので」
勇者「気になるだろ」
堕女神「……初めて、なのです」
勇者「?」
堕女神「この大食堂に、笑い声が響き渡るのは……初めてで」
勇者「…………そうなのか?」
堕女神「私の知る限りは」
勇者「…悪くないだろ?」
堕女神「……分かりません。ですが………」
勇者「?」
堕女神「……いえ、何でもありません」
166 : ◆1UOAiS.xYWtC :2012/12/21(金) 03:18:13.91 ID:IAYWe2woo
――――――――
いつになく賑やかな晩餐を終えて、大食堂から少女の姿の淫魔達が姿を消す。
ある者は用意された部屋に戻って満腹に任せて眠り、
ある者は仲間と城内を歩き回り、食後の一時を思い思いに過ごしていた。
ただ二人だけが、閑散とした大食堂に残っている。
勇者「……入浴の準備は?」
堕女神「はい、整えましたが……よろしいのですか?」
勇者「何?」
堕女神「…隣女王陛下の側近はともかくとして……衛兵までも、陛下の浴場に通して」
勇者「構わないさ。だいたい一人じゃ持て余すよ、あの広さは」
堕女神「陛下がそう仰るのなら……」
勇者「そのついでに、一つ」
堕女神「はい」
勇者「……俺以外の……淫魔達にも、浴場を使わせてやりたいと思うのだけど」
堕女神「……陛下以外の者にも開放する、と?」
167 : ◆1UOAiS.xYWtC :2012/12/21(金) 03:19:20.73 ID:IAYWe2woo
勇者「駄目かな」
堕女神「差し支えなければ……理由をお訊きしても?」
勇者「理由というほどはないよ」
堕女神「……陛下がそうお決めなのでしたら。分かりました、明日より、城内の淫魔達にも開放いたしましょう」
勇者「ありがとう。……それと、今日は風呂には入らない事にする」
堕女神「どうなされました」
勇者「……何となく、不穏な予……あ、いや。本当に何でもないから」
堕女神「……陛下? 昼食の時から、何か御様子が……」
勇者「いや、本当に何でもない。深い意味は無い」
堕女神「は、はぁ……」
勇者「……それと、できるだけ浴場に近づかないようにした方がいい。少なくとも今日は」
堕女神「………? 分かりました」
168 : ◆1UOAiS.xYWtC :2012/12/21(金) 03:20:10.20 ID:IAYWe2woo
サキュバスB「ふぃー。大変だったねぇ、こんなにたくさん」
厨房では、サキュバスA、Bを含め、メイド達が総出で片づけを行っていた。
使い終わったシルバーも、皿も、グラスも、目を回すほどに膨大な量だ。
サキュバスBは洗い終えた食器から水分を拭き取り、作業台の上に片端から積み上げていく。
サキュバスAはその中から銀食器を取り、磨き、曇りを残さぬよう丹念に仕上げる。
サキュバスB「……わたしも食べたかったなぁ。Aちゃんのお菓子……」
サキュバスA「心配しなくても、ちゃんと取ってあるわよ。あとで一緒に食べましょうね」
サキュバスB「えっ……本当に!?」
サキュバスA「……それより、気になったのだけれど」
サキュバスB「え、……何?」
サキュバスA「…貴女、城内での私への態度が急に変わったわね。どうして?」
磨き終えたナイフを置き、やおら真剣な目を、Bへと向ける。
その目には有無を言わさぬ迫力があるものの、威圧するかのようではない。
単純な――疑問に由来している。
169 : ◆1UOAiS.xYWtC :2012/12/21(金) 03:21:11.83 ID:IAYWe2woo
サキュバスA「別に責めているんじゃないのよ。私と貴女の仲だし、不愉快でも無いもの」
サキュバスB「……Aちゃん」
サキュバスA「…そう。貴女が陛下に抱かれ―――じゃなかったわね。抱っこされて撫でられて一緒に眠ってから」
サキュバスB「なんで言い換えたの!?」
サキュバスA「物事は正確に言い回さないと」
サキュバスB「……間違ってないけど……間違ってないんだけど……うーん」
サキュバスA「それで、どうなの?」
サキュバスB「うーん……何だろ? 何か、変わったのかなぁ。っていうかAちゃんだって……」
サキュバスA「…私かしら?」
サキュバスB「陛下が最初に来た日、『はたして人間に務まるのかしら?』とか言ってたよね?」
170 : ◆1UOAiS.xYWtC :2012/12/21(金) 03:22:22.57 ID:IAYWe2woo
サキュバスA「…あ」
サキュバスB「それが今だと、何だか陛下に絡みたがってない? 」
拭き上げたグラスを作業台に載せ、はたはたとナプキンを振って見せる。
黄金の瞳に、どこか意地の悪い光を宿らせて。
サキュバスB「……さぼって陛下と遊んでた時から? それとも、お身体洗った時?」
サキュバスA「………さぁ、……どうかしら」
サキュバスB「ごまかしてるー」
サキュバスA「……ごまかしてなんか。ただ……何となく、思ったのよ」
サキュバスB「何を?」
サキュバスA「……『ああ、この人になら……任せられるな』と」
サキュバスB「んー……わかる、かも……?」
サキュバスA「……手が止まってしまったわね。あとでお茶の時に続けましょう」
サキュバスB「はーい」
171 : ◆1UOAiS.xYWtC :2012/12/21(金) 03:23:12.76 ID:IAYWe2woo
食堂に続き大浴場でも、普段とは違った賑わいがあった。
湯煙の中に、さながら妖精郷のように、少女達が過ごしている。
おしなべて背は小さく、捩れた小さな角と申し訳程度に生えた翼を持つ、一糸まとわぬ「淫魔」達。
もっとも外見年齢の高いものでも、せいぜい十四歳程度。
褐色の肌に、膨らみ始めた乳房。
ゆるやかどころか、「なだらか」と言って差し支えの無い、小さくまとまったヒップ。
腰が細く括れはじめて、いよいよ咲き誇る予兆を感じとらせながら、
決して花開く事の無い『永遠』を閉じ込められた、凍てついた「蕾」。
それが、「隣国の淫魔」の身体。
「大人」の姿には、なれない。
背を伸ばす事も、男性の視線を集めるように肉体を実らせる事も、できない。
少女そのものの姿は、たとえ老衰で死のうとも変わらない。
その肉体は、決して「女性」になる事はない。
彼女らは、その一生を――――「少女」のままで、終える。
172 : ◆1UOAiS.xYWtC :2012/12/21(金) 03:23:47.47 ID:IAYWe2woo
女王と、側近の一人が、浴槽の縁に腰かけながら、話している。
女王の体は、勇者のみが知る「三年後」よりは、やや小さい。
結い上げた銀髪はやや短く、まとめ切れない髪がぱらぱらと顔にかかる。
小さな胸とほっそりとした体のラインはそのままに、薄い桃色の乳首が肌の色によって強調されていた。
隣女王「……明日、帰らなければならないのですね」
側近A「…は……」
隣女王「…いえ、良いのです。私は、女王。悠々としてはいられません」
側近A「……女王陛下」
隣女王「何でしょうか?」
側近A「……私達を、頼ってくださいね」
隣女王「はい、それは勿論」
側近A「お母上の……先代からお仕えしている私達が、女王陛下をお支えいたします」
隣女王「…ありがとう、心強いです」
側近A「…どうか、気負わずに。私達がついております」
173 : ◆1UOAiS.xYWtC :2012/12/21(金) 03:28:06.80 ID:IAYWe2woo
彼女が即位したのは、半年前。
魔族の身とはいえ、若干12歳で――彼女は、「母」を失った。
父は同国の淫魔ではなく、先代の女王が人間界へ降り立ち交わった、年若い兵士だったという。
もとより体が強くはなかった女王は、人間界へ下り、慣れぬ人間界で人と交わり、
子を宿して戻ってきた時にはすでに呼吸もままならなかった。
それでも、宿した子の――娘のために、彼女は回復した。
慣れない人間界の空気を吸い、魔力を振り絞って魔界へと帰りつき、そして、一人の子を産んだ。
娘に物心がつく頃には、すでに彼女は病床から離れる事ができない身体となってしまっていた。
あと数年もすれば自らの娘に外見の年齢では追い越されてしまうだろう、
幼気な少女の姿のままで……彼女は日ごとに、弱っていく。
心臓が鼓動を刻む回数も安定しない。
呼吸が弱く、少なくなっていく。
弱っていく、足腰の筋肉。
銀髪からは段々と輝きが失われ、「白髪」へと変わっていった。
しかし、彼女は最期の瞬間まで「女王」であり、「母」だった。
床についたまま、女王としての職務を果たした。
床についたまま、自らの娘に口づけを与え、頭を撫で、たわいもない話に頬をゆるめた。
その時だけは――――彼女自身も彼女の側近も侍医も、病を忘れ、その先に近づく死の影を忘れる事ができた。
174 : ◆1UOAiS.xYWtC :2012/12/21(金) 03:30:17.99 ID:IAYWe2woo
――――――――
隣女王「……おかあさま」
隣女王母「…はい。何かしら?」
隣女王「おかあさまのおびょうき、なおる?」
隣女王母「………そうね。治らないとね」
隣女王「……わたしね。おかあさまといっしょに、おさんぽしたい」
隣女王母「…ごめんね。絶対、絶対……良くなるから。そうしたら……っ」
喉に痛みが走り、咳き込む。
あわてて抑えた手に少量の血が付着し、彼女は、それを娘に見せないようにシーツの中へ手を差し入れ、拭った。
隣女王母「……大きくなったわね。ほら、こちらへ……来て」
隣女王「うん…」
おずおずと進み出た娘の背に、彼女の手が頼りなく回される。
娘が感じたのは、風に吹かれた枯れ葉が背に当たるような―――弱々しい感触。
それが、「母」の試みた、精一杯の………娘へ与える、「抱擁」だった。
隣女王「……おかあさま、くるしいの?」
隣女王母「………もうすぐ、私に追いついてしまいそうね」
175 : ◆1UOAiS.xYWtC :2012/12/21(金) 03:31:08.76 ID:IAYWe2woo
部屋の中には、側近も侍医も、世話役もいない。
彼女らは、気付いていたからだ。
もはや、女王には回復の見込みがない事を。
彼女が、娘とともに歩く事は……できない事を。
回復の呪文は、もはや効き目はない。
できたとしても死期を少し伸ばすだけであり、死神の足にしがみつく程度にしかならなかった。
窓から差す光は、少女の姿の「親子」を暖かく包んでいた。
彼女の手が「抱擁」であると気付いた娘は、ベッドへよじ登り、「母」の胸に顔を埋める。
娘が頬を通して感じるのは、かつて一年近くもの間、ずっと聴いていた、命の音。
痩せさらばえた主に、それでも命を繋ぎ止めるために休まず働く、命の機関。
その熱さと、音に思いを馳せているうちに、娘は、寝てしまった。
それから三年、四年。
驚異に値する精神力で、彼女は生きて、国を想い続け、一人遺される運命にある娘を想い続けた。
そして……娘が自分よりも「年上」に見えた頃。
「彼女」は―――娘よりも小さな姿で、眠りについた。
190 : ◆1UOAiS.xYWtC :2012/12/22(土) 01:28:52.31 ID:5XcExnPco
五日目
食堂
勇者「……今朝も、起こしに来てくれたな」
朝の支度を終えた勇者が、大食堂で隣女王を待つ。
紅茶の香りが朝の澄み渡った空気と溶け合い、差し込む朝日は室内を明るく照らした。
卓上の燭台や壁面の絵画、すでに並べ終えた食器らが日を浴びて輝く。
堕女神「昨日も今朝も、朝食の準備が早めに済んでおりましたので」
勇者「いつもの事じゃないのか?」
堕女神「…………陛下、お注ぎいたします」
上座に座って待つ勇者に、間を誤魔化すようにして堕女神が茶を注ぐ。
雲のように真っ白なティーポットから、カップに明るい琥珀色の液体が滑り込んだ。
ふわりと広がった香りが鼻腔をくすぐり、既に一杯を飲み終えたというのに、すぐに手が伸びた。
勇者「……落ち着くよ」
堕女神「恐れ入ります」
勇者「…ところで、ふっと気になったんだけど」
堕女神「何でしょうか」
191 : ◆1UOAiS.xYWtC :2012/12/22(土) 01:29:54.98 ID:5XcExnPco
勇者「……俺が来るまで、女王の代理を務めてたと聞いた」
堕女神「はい」
勇者「その間、隣の淫魔国との付き合いはなかったのか?」
堕女神「10年強ほど前まで。先代の隣国女王が伏せるまでは」
勇者「…ちなみに、こういう事を訊くと誤解されそうだけど……隣国と付き合うメリットは何だ?」
堕女神「織物と、それと上質な薬草類と鉱石が豊富に手に入ります。噂では隣国領内でオリハルコンの大鉱脈もいくつか見つかったとか」
勇者「なかなか恵まれた国じゃないか」
堕女神「はい、食料事情にさえ目を瞑れば、国力自体は侮れません」
勇者「……侮ってた。すまん」
堕女神「私に申されても」
勇者「それにしても、遅いな隣女王」
堕女神「誰か、様子を見に遣りましょうか?」
勇者「……これを飲み終えても来ないようなら」
堕女神「かしこまりました」
192 : ◆1UOAiS.xYWtC :2012/12/22(土) 01:32:26.49 ID:5XcExnPco
隣女王「お……おはようございます……」
カップの中身が半分を切った頃、隣女王が、側近達を伴って現れる。
後には彼女の小さな衛兵たちが続き、思い思いの席についた。
隣女王「申し訳ありません……寝心地が良いもので、つい……」
勇者「それはどうも。……堕女神、朝食にしてくれ」
堕女神「はい、少々お待ちください」
メイドが幼い客人達に朝の茶を淹れるのと時を同じくして、
彼女は折り目正しく一礼し、朝食を供するべく厨房へと去った。
勇者「…変な事を聞いていいかな」
隣女王「何でしょうか」
勇者「隣女王だけに訊く訳じゃないけれど……皆、嫌いな食べ物は無いのか?」
側近A「…陛下…何故、そのような事を?」
勇者「いや、皆子供の姿だから。何となく……好き嫌いが多そうで」
193 : ◆1UOAiS.xYWtC :2012/12/22(土) 01:33:44.48 ID:5XcExnPco
隣女王「……私は、特にありません」
側近A「私も、思いつきません」
側近B「私も特に」
勇者「……まぁ、好き嫌いが無いのはいい事だよ」
側近A「精液が飲めれば、たいていのものは平気になります」
側近B「ですね。最初は『こんな苦いもの、何故みんな平気なのだろう?』と思いましたもの」
側近C「ありましたね~。最初はついつい、飲み下す前に隠し持ってたお砂糖をサラサラっとお口に入れて~」
側近A「ええ。そのうち『生』のままグイッといけるようになって」
側近C「で、慣れてくるとお砂糖の甘さが邪魔に感じるんですよね~」
側近B「……こちらの淫魔の皆さまはどうでした? そちらのメイドの方は?」
メイド「私も、幼い頃は鼻をつまみながら無理やり飲み下しましたが……慣れてくると、香りも含めて楽しめるように……」
側近C「あるある~」
夕食の席は、賑わっていた。
普段は一人しかつかない食卓には、隣国の女王とその側近、そして護衛兵までが着いた。
加えて堕女神も席に着き、優艶な仕草で食事を進める。
隣女王「…美味しいです。特に、このお肉……お口の中で溶けるようで……」
堕女神「お気に召していただけて、何よりです」
勇者「相変わらずだな」
ナイフが不要なほどにやわらかく煮込まれた、牛肉を使った主菜に皆が舌鼓を打つ。
見慣れない白身魚のスープも、露が滴るほど新鮮な野菜のサラダも、
馥郁とした甘い麦の香りをまとったパンも、その場にいる誰もが、笑顔とともに食していた。
隣国からの客人達が、顔を綻ばせて食する姿を見て、堕女神はどこか照れ臭そうな素振りを見せる。
無邪気な賞賛の声が上がる度に赤みが差すようだ。
勇者「……実はかなり照れやすいだろ?」
堕女神「…いえ、そのような事はありません」
勇者「いや、照れてる」
堕女神「で、ですから……! 照れてなど!!」
163 : ◆1UOAiS.xYWtC :2012/12/21(金) 03:11:42.97 ID:IAYWe2woo
張り上げられた声の主に、視線が集まる。
口の周りをソースで汚し、パンを頬張ったまま、あるいは肉片を口に運ぶ動きの途中で、
幼い淫魔達、更には給仕をするメイドまでもが堕女神を振り返った。
堕女神「……も、申し訳ありません。お騒がせいたしました……」
ばつが悪そうに、それでいて更に染まった顔色を誤魔化すように、ワインに口をつける。
隣女王「………ふふっ」
勇者「……? どうしたんだ」
隣女王「あっ……いえ、すみません。ただ……お会いした時とは、印象が違うので」
勇者「イメージ?」
隣女王「玄関では落ち着いた方だな、と思ったのですが……とても、感情が豊かな方なのですね」
堕女神「……どうか、からかわないで下さいませ」
勇者「……まぁ、この話はもうやめようか。二人がかりで苛めてるようになる」
隣女王「いえ、私は本当に、本心から…」
勇者「ともかく、話題を変えよう」
164 : ◆1UOAiS.xYWtC :2012/12/21(金) 03:12:52.45 ID:IAYWe2woo
晩餐会のその後は、つつがなく進んだ。
隣女王は堕女神に「女王」としての教えを請うように、幾度も質問を重ねた。
熱心なその瞳に炎を揺らがせながら、隣国を治めていくために必要な、あらゆる事を。
政治上の方策をはじめ、内政、外交、飢饉への対処、その全てを学び取ろうとするように。
勇者では、それらに答える事は確かにできなかった。
王になり日が浅いというのもあるし、知識と経験の面で代行とはいえ、淫魔の国を治めた堕女神には勝る筈も無い。
堅苦しい話を続けているうちに、食卓の全員が皿を空けて、デザートが運ばれてくる。
台車に乗って運ばれてくる、塔のように積み上げられた色とりどりのデザートが、場の全ての目を釘付けにした。
ひとつのグラスに数種類盛られた柑橘類のシャーベット、生クリームをふんだんに用いた苺を載せたケーキ、
ビスケットにバニラアイスを載せてブルーベリーをトッピングした、一口サイズの菓子。
その他、隣国の淫魔はもちろんの事、勇者でさえも見た事の無い菓子が、まるできらめく宝石のように、シャンデリアの灯りの下に現れた。
隣女王「……凄いです。こんなに……」
隣国側近A「…あの……本当に、食べてもよろしいのですか?」
勇者「……え? あ、ああ……勿論。好きなのを……遠慮なく」
隣国衛兵A「…じゃ、私はこれを」
隣国衛兵B「私はこのケーキと、これと、これと……」
隣女王「あっ…! お、落ち着いて…!」
165 : ◆1UOAiS.xYWtC :2012/12/21(金) 03:14:36.37 ID:IAYWe2woo
隣国の淫魔達があどけなく顔を輝かせて様々な菓子を頬張るのを見て、彼女はどこか奇妙な表情を浮かべる。
微笑むように緩めるでもなく、その振る舞いに苛立ち歪めるでもなく、どこか楽しげでありながら、視線は定まらない。
勇者「どうした」
堕女神「いえ……取るに足らない事、ですので」
勇者「気になるだろ」
堕女神「……初めて、なのです」
勇者「?」
堕女神「この大食堂に、笑い声が響き渡るのは……初めてで」
勇者「…………そうなのか?」
堕女神「私の知る限りは」
勇者「…悪くないだろ?」
堕女神「……分かりません。ですが………」
勇者「?」
堕女神「……いえ、何でもありません」
166 : ◆1UOAiS.xYWtC :2012/12/21(金) 03:18:13.91 ID:IAYWe2woo
――――――――
いつになく賑やかな晩餐を終えて、大食堂から少女の姿の淫魔達が姿を消す。
ある者は用意された部屋に戻って満腹に任せて眠り、
ある者は仲間と城内を歩き回り、食後の一時を思い思いに過ごしていた。
ただ二人だけが、閑散とした大食堂に残っている。
勇者「……入浴の準備は?」
堕女神「はい、整えましたが……よろしいのですか?」
勇者「何?」
堕女神「…隣女王陛下の側近はともかくとして……衛兵までも、陛下の浴場に通して」
勇者「構わないさ。だいたい一人じゃ持て余すよ、あの広さは」
堕女神「陛下がそう仰るのなら……」
勇者「そのついでに、一つ」
堕女神「はい」
勇者「……俺以外の……淫魔達にも、浴場を使わせてやりたいと思うのだけど」
堕女神「……陛下以外の者にも開放する、と?」
勇者「駄目かな」
堕女神「差し支えなければ……理由をお訊きしても?」
勇者「理由というほどはないよ」
堕女神「……陛下がそうお決めなのでしたら。分かりました、明日より、城内の淫魔達にも開放いたしましょう」
勇者「ありがとう。……それと、今日は風呂には入らない事にする」
堕女神「どうなされました」
勇者「……何となく、不穏な予……あ、いや。本当に何でもないから」
堕女神「……陛下? 昼食の時から、何か御様子が……」
勇者「いや、本当に何でもない。深い意味は無い」
堕女神「は、はぁ……」
勇者「……それと、できるだけ浴場に近づかないようにした方がいい。少なくとも今日は」
堕女神「………? 分かりました」
168 : ◆1UOAiS.xYWtC :2012/12/21(金) 03:20:10.20 ID:IAYWe2woo
サキュバスB「ふぃー。大変だったねぇ、こんなにたくさん」
厨房では、サキュバスA、Bを含め、メイド達が総出で片づけを行っていた。
使い終わったシルバーも、皿も、グラスも、目を回すほどに膨大な量だ。
サキュバスBは洗い終えた食器から水分を拭き取り、作業台の上に片端から積み上げていく。
サキュバスAはその中から銀食器を取り、磨き、曇りを残さぬよう丹念に仕上げる。
サキュバスB「……わたしも食べたかったなぁ。Aちゃんのお菓子……」
サキュバスA「心配しなくても、ちゃんと取ってあるわよ。あとで一緒に食べましょうね」
サキュバスB「えっ……本当に!?」
サキュバスA「……それより、気になったのだけれど」
サキュバスB「え、……何?」
サキュバスA「…貴女、城内での私への態度が急に変わったわね。どうして?」
磨き終えたナイフを置き、やおら真剣な目を、Bへと向ける。
その目には有無を言わさぬ迫力があるものの、威圧するかのようではない。
単純な――疑問に由来している。
169 : ◆1UOAiS.xYWtC :2012/12/21(金) 03:21:11.83 ID:IAYWe2woo
サキュバスA「別に責めているんじゃないのよ。私と貴女の仲だし、不愉快でも無いもの」
サキュバスB「……Aちゃん」
サキュバスA「…そう。貴女が陛下に抱かれ―――じゃなかったわね。抱っこされて撫でられて一緒に眠ってから」
サキュバスB「なんで言い換えたの!?」
サキュバスA「物事は正確に言い回さないと」
サキュバスB「……間違ってないけど……間違ってないんだけど……うーん」
サキュバスA「それで、どうなの?」
サキュバスB「うーん……何だろ? 何か、変わったのかなぁ。っていうかAちゃんだって……」
サキュバスA「…私かしら?」
サキュバスB「陛下が最初に来た日、『はたして人間に務まるのかしら?』とか言ってたよね?」
170 : ◆1UOAiS.xYWtC :2012/12/21(金) 03:22:22.57 ID:IAYWe2woo
サキュバスA「…あ」
サキュバスB「それが今だと、何だか陛下に絡みたがってない? 」
拭き上げたグラスを作業台に載せ、はたはたとナプキンを振って見せる。
黄金の瞳に、どこか意地の悪い光を宿らせて。
サキュバスB「……さぼって陛下と遊んでた時から? それとも、お身体洗った時?」
サキュバスA「………さぁ、……どうかしら」
サキュバスB「ごまかしてるー」
サキュバスA「……ごまかしてなんか。ただ……何となく、思ったのよ」
サキュバスB「何を?」
サキュバスA「……『ああ、この人になら……任せられるな』と」
サキュバスB「んー……わかる、かも……?」
サキュバスA「……手が止まってしまったわね。あとでお茶の時に続けましょう」
サキュバスB「はーい」
171 : ◆1UOAiS.xYWtC :2012/12/21(金) 03:23:12.76 ID:IAYWe2woo
食堂に続き大浴場でも、普段とは違った賑わいがあった。
湯煙の中に、さながら妖精郷のように、少女達が過ごしている。
おしなべて背は小さく、捩れた小さな角と申し訳程度に生えた翼を持つ、一糸まとわぬ「淫魔」達。
もっとも外見年齢の高いものでも、せいぜい十四歳程度。
褐色の肌に、膨らみ始めた乳房。
ゆるやかどころか、「なだらか」と言って差し支えの無い、小さくまとまったヒップ。
腰が細く括れはじめて、いよいよ咲き誇る予兆を感じとらせながら、
決して花開く事の無い『永遠』を閉じ込められた、凍てついた「蕾」。
それが、「隣国の淫魔」の身体。
「大人」の姿には、なれない。
背を伸ばす事も、男性の視線を集めるように肉体を実らせる事も、できない。
少女そのものの姿は、たとえ老衰で死のうとも変わらない。
その肉体は、決して「女性」になる事はない。
彼女らは、その一生を――――「少女」のままで、終える。
172 : ◆1UOAiS.xYWtC :2012/12/21(金) 03:23:47.47 ID:IAYWe2woo
女王と、側近の一人が、浴槽の縁に腰かけながら、話している。
女王の体は、勇者のみが知る「三年後」よりは、やや小さい。
結い上げた銀髪はやや短く、まとめ切れない髪がぱらぱらと顔にかかる。
小さな胸とほっそりとした体のラインはそのままに、薄い桃色の乳首が肌の色によって強調されていた。
隣女王「……明日、帰らなければならないのですね」
側近A「…は……」
隣女王「…いえ、良いのです。私は、女王。悠々としてはいられません」
側近A「……女王陛下」
隣女王「何でしょうか?」
側近A「……私達を、頼ってくださいね」
隣女王「はい、それは勿論」
側近A「お母上の……先代からお仕えしている私達が、女王陛下をお支えいたします」
隣女王「…ありがとう、心強いです」
側近A「…どうか、気負わずに。私達がついております」
173 : ◆1UOAiS.xYWtC :2012/12/21(金) 03:28:06.80 ID:IAYWe2woo
彼女が即位したのは、半年前。
魔族の身とはいえ、若干12歳で――彼女は、「母」を失った。
父は同国の淫魔ではなく、先代の女王が人間界へ降り立ち交わった、年若い兵士だったという。
もとより体が強くはなかった女王は、人間界へ下り、慣れぬ人間界で人と交わり、
子を宿して戻ってきた時にはすでに呼吸もままならなかった。
それでも、宿した子の――娘のために、彼女は回復した。
慣れない人間界の空気を吸い、魔力を振り絞って魔界へと帰りつき、そして、一人の子を産んだ。
娘に物心がつく頃には、すでに彼女は病床から離れる事ができない身体となってしまっていた。
あと数年もすれば自らの娘に外見の年齢では追い越されてしまうだろう、
幼気な少女の姿のままで……彼女は日ごとに、弱っていく。
心臓が鼓動を刻む回数も安定しない。
呼吸が弱く、少なくなっていく。
弱っていく、足腰の筋肉。
銀髪からは段々と輝きが失われ、「白髪」へと変わっていった。
しかし、彼女は最期の瞬間まで「女王」であり、「母」だった。
床についたまま、女王としての職務を果たした。
床についたまま、自らの娘に口づけを与え、頭を撫で、たわいもない話に頬をゆるめた。
その時だけは――――彼女自身も彼女の側近も侍医も、病を忘れ、その先に近づく死の影を忘れる事ができた。
174 : ◆1UOAiS.xYWtC :2012/12/21(金) 03:30:17.99 ID:IAYWe2woo
――――――――
隣女王「……おかあさま」
隣女王母「…はい。何かしら?」
隣女王「おかあさまのおびょうき、なおる?」
隣女王母「………そうね。治らないとね」
隣女王「……わたしね。おかあさまといっしょに、おさんぽしたい」
隣女王母「…ごめんね。絶対、絶対……良くなるから。そうしたら……っ」
喉に痛みが走り、咳き込む。
あわてて抑えた手に少量の血が付着し、彼女は、それを娘に見せないようにシーツの中へ手を差し入れ、拭った。
隣女王母「……大きくなったわね。ほら、こちらへ……来て」
隣女王「うん…」
おずおずと進み出た娘の背に、彼女の手が頼りなく回される。
娘が感じたのは、風に吹かれた枯れ葉が背に当たるような―――弱々しい感触。
それが、「母」の試みた、精一杯の………娘へ与える、「抱擁」だった。
隣女王「……おかあさま、くるしいの?」
隣女王母「………もうすぐ、私に追いついてしまいそうね」
175 : ◆1UOAiS.xYWtC :2012/12/21(金) 03:31:08.76 ID:IAYWe2woo
部屋の中には、側近も侍医も、世話役もいない。
彼女らは、気付いていたからだ。
もはや、女王には回復の見込みがない事を。
彼女が、娘とともに歩く事は……できない事を。
回復の呪文は、もはや効き目はない。
できたとしても死期を少し伸ばすだけであり、死神の足にしがみつく程度にしかならなかった。
窓から差す光は、少女の姿の「親子」を暖かく包んでいた。
彼女の手が「抱擁」であると気付いた娘は、ベッドへよじ登り、「母」の胸に顔を埋める。
娘が頬を通して感じるのは、かつて一年近くもの間、ずっと聴いていた、命の音。
痩せさらばえた主に、それでも命を繋ぎ止めるために休まず働く、命の機関。
その熱さと、音に思いを馳せているうちに、娘は、寝てしまった。
それから三年、四年。
驚異に値する精神力で、彼女は生きて、国を想い続け、一人遺される運命にある娘を想い続けた。
そして……娘が自分よりも「年上」に見えた頃。
「彼女」は―――娘よりも小さな姿で、眠りについた。
190 : ◆1UOAiS.xYWtC :2012/12/22(土) 01:28:52.31 ID:5XcExnPco
五日目
食堂
勇者「……今朝も、起こしに来てくれたな」
朝の支度を終えた勇者が、大食堂で隣女王を待つ。
紅茶の香りが朝の澄み渡った空気と溶け合い、差し込む朝日は室内を明るく照らした。
卓上の燭台や壁面の絵画、すでに並べ終えた食器らが日を浴びて輝く。
堕女神「昨日も今朝も、朝食の準備が早めに済んでおりましたので」
勇者「いつもの事じゃないのか?」
堕女神「…………陛下、お注ぎいたします」
上座に座って待つ勇者に、間を誤魔化すようにして堕女神が茶を注ぐ。
雲のように真っ白なティーポットから、カップに明るい琥珀色の液体が滑り込んだ。
ふわりと広がった香りが鼻腔をくすぐり、既に一杯を飲み終えたというのに、すぐに手が伸びた。
勇者「……落ち着くよ」
堕女神「恐れ入ります」
勇者「…ところで、ふっと気になったんだけど」
堕女神「何でしょうか」
191 : ◆1UOAiS.xYWtC :2012/12/22(土) 01:29:54.98 ID:5XcExnPco
勇者「……俺が来るまで、女王の代理を務めてたと聞いた」
堕女神「はい」
勇者「その間、隣の淫魔国との付き合いはなかったのか?」
堕女神「10年強ほど前まで。先代の隣国女王が伏せるまでは」
勇者「…ちなみに、こういう事を訊くと誤解されそうだけど……隣国と付き合うメリットは何だ?」
堕女神「織物と、それと上質な薬草類と鉱石が豊富に手に入ります。噂では隣国領内でオリハルコンの大鉱脈もいくつか見つかったとか」
勇者「なかなか恵まれた国じゃないか」
堕女神「はい、食料事情にさえ目を瞑れば、国力自体は侮れません」
勇者「……侮ってた。すまん」
堕女神「私に申されても」
勇者「それにしても、遅いな隣女王」
堕女神「誰か、様子を見に遣りましょうか?」
勇者「……これを飲み終えても来ないようなら」
堕女神「かしこまりました」
192 : ◆1UOAiS.xYWtC :2012/12/22(土) 01:32:26.49 ID:5XcExnPco
隣女王「お……おはようございます……」
カップの中身が半分を切った頃、隣女王が、側近達を伴って現れる。
後には彼女の小さな衛兵たちが続き、思い思いの席についた。
隣女王「申し訳ありません……寝心地が良いもので、つい……」
勇者「それはどうも。……堕女神、朝食にしてくれ」
堕女神「はい、少々お待ちください」
メイドが幼い客人達に朝の茶を淹れるのと時を同じくして、
彼女は折り目正しく一礼し、朝食を供するべく厨房へと去った。
勇者「…変な事を聞いていいかな」
隣女王「何でしょうか」
勇者「隣女王だけに訊く訳じゃないけれど……皆、嫌いな食べ物は無いのか?」
側近A「…陛下…何故、そのような事を?」
勇者「いや、皆子供の姿だから。何となく……好き嫌いが多そうで」
193 : ◆1UOAiS.xYWtC :2012/12/22(土) 01:33:44.48 ID:5XcExnPco
隣女王「……私は、特にありません」
側近A「私も、思いつきません」
側近B「私も特に」
勇者「……まぁ、好き嫌いが無いのはいい事だよ」
側近A「精液が飲めれば、たいていのものは平気になります」
側近B「ですね。最初は『こんな苦いもの、何故みんな平気なのだろう?』と思いましたもの」
側近C「ありましたね~。最初はついつい、飲み下す前に隠し持ってたお砂糖をサラサラっとお口に入れて~」
側近A「ええ。そのうち『生』のままグイッといけるようになって」
側近C「で、慣れてくるとお砂糖の甘さが邪魔に感じるんですよね~」
側近B「……こちらの淫魔の皆さまはどうでした? そちらのメイドの方は?」
メイド「私も、幼い頃は鼻をつまみながら無理やり飲み下しましたが……慣れてくると、香りも含めて楽しめるように……」
側近C「あるある~」
堕女神「私を、『淫魔』にしてください」
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