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勇者「淫魔の国の王になったわけだが」
ワルキューレ編

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Part8
115 : ◆1UOAiS.xYWtC :2012/03/27(火) 03:37:14.45 ID:h7sEMOtHo
こんこん、と、再びノックの音が聞こえる。
ふわりとした諦観が充満する室内の空気が、それで若干和らいだ。
堕女神「何用ですか?」
もやもやとした空気を一気に晴らすかのように、努めて冷静に堕女神が尋ねる。
ドアの向こうからはメイドの声が聞こえ、入浴の準備が整った事を伝えた。
そして、ワルキューレには客室を準備し、そこで休ませていると。
一応念のために見張りをつけている事も付け加えられた。
勇者「さて、俺も入るか。ああ、そうだった」
堕女神「ほかに何か?」
勇者「……口にすると、軽くなるかもしれないんだけど」
堕女神「はい?」
ドアノブに手をかける寸前に立ち止まり、彼女へと何かを言おうとする。
顔はドアを向いたままで表情は窺い知れず、そのまま数秒の沈黙が続く。
段々と堕女神の表情にも怪訝なものが浮かび上がり、それでも彼女から何か言う事はなく、「彼」の言葉を待つ。
勇者「……お前を残して先に、なんて事はしないよ」
言い切り、そそくさと彼はドアを開け、滑り込むようにその場から立ち去ってしまった。
一人残された彼女は、少しの間、呆然と立っていた。
そして、ややあって――彼女は、その言葉の意味を理解したようだ。
堕女神「―――っ!?/////」

116 : ◆1UOAiS.xYWtC :2012/03/27(火) 03:37:42.62 ID:h7sEMOtHo
城内を大股で歩いていき、浴場につくと彼は即座に服を脱ぎ、突進するように浴室へと踏み入った。
何かを振り払うように、無遠慮にモザイク模様の濡れた床を踏み締めながら一直線に浴槽へ。
かけ湯をする事もなく、飛び込むように――否、文字通りに飛び込んだ。
どぷん、と水柱を立てて湯の中へ身体を放り込むと、すぐに顔を浴槽へと浸ける。
雨の中戦った身体に、沁み込むような熱が行き渡っていく。
熱すぎる事もなく、ぬるい事もなく、調整された湯が彼の身体を暖めた。
勇者「――――!」
紅潮させているのは、湯の温かさにだけ起因するものではない。
要するに……恥ずかしい、のだ。
彼女と夜を明かした事は、十度や二十度ではない。
三年間、千を超える夜を淫魔と、堕ちた女神と、堕天使と過ごした。
真夜中の、暗闇の淫靡な空間とも違う。
陽光が差し込める空間で、ある程度緊迫した部屋で、大真面目に言ってしまった言葉。
その気恥ずかしさは、徐々に効果を顕していった。
勇者「――っぶはぁ!」
湯に浸けていた顔を、飛沫を散らしながら上げる。
そのまま両手でばしゃばしゃと顔に湯を叩きつけ、少しでも羞恥心を誤魔化そうと足掻く。
それでも気恥ずかしさは全くひかず、逆に時間の経過で鮮明さを増していくようにも感じた。
足先にも痛痒に似た感覚が満ちていき、どうにも落ち着かない。

117 : ◆1UOAiS.xYWtC :2012/03/27(火) 03:39:13.47 ID:h7sEMOtHo
勇者「……ああ、もう!恥ずかしいな!」
一応の結論を言葉にして、何とか身体に走る妙な感覚を鎮める。
未だに妙な疼きは残るが、どうにか落ち着いたようだ。
そこでやっと、湯に浸かっている事を実感できた。
勇者「…あぁ、いい湯……にしても、なぁ」
大浴場の中を、見渡す。
並ぶ円柱に混じり、いくつもの石像がある。
例えば三人の淫魔に弄ばれる、地位の高そうな男性の像。
一塊の大理石から都合四人を彫り出すという、類を見ない技が光っている。
例えば山羊の頭と下半身を持つ悪魔と、抱き合うように交わる王冠を被った裸身の美女。
豊満な肉体は、彫像とは思えないほどに瑞々しく、そして悩ましい。
情事の最中に石化の魔術をかけられでもしたのかと疑いたくなるほどだ。
勇者「………まぁ、『淫魔の国』だし。慣れたけども」
肺の中の空気を、一気に吐き出す。
暖められた呼気と一緒に、久方ぶりに身体を動かした疲労が解けていくようだ。
勇者「……後で、ワルキューレにどう思ったか聞いてみるかな」
彼は一人ごち、そのまま長くゆるゆると入浴を楽しみながら、
肩にかけた甕から浴槽へと湯を注ぎ出す、少女の姿の淫魔の像を見ていた。

118 : ◆1UOAiS.xYWtC :2012/03/27(火) 03:39:46.12 ID:h7sEMOtHo
その後、妙に気まずい晩餐を終え、約束の「夜」がやって来る。
チラチラと熱っぽい視線を向ける堕女神を意識しながらでは、夕餉の味など分かりもしなかった。
勇者は実のところ、彼女を抱く気は無かった。
勝者の権利、と言えば聞こえは良いが、これは実質、レイプにしかならない。
勝ちはしたが、彼女に対する一種の崇敬は未だなくなったわけではない。
落胆を抱いたのは彼女の実力に対してであり、その存在までも下に見てはいないからだ。
勇者「……まぁ、それはそれで往生際が悪いか」
腰紐を解き、おどろおどろしい剣をベッドサイドのテーブルへと立てかける。
呪いが解かれた後とはいえ、見た目の禍々しさは変わらない。
勇者の清廉な容姿のせいでミスマッチに収まっていたが、
もしも漆黒のフルアーマーとともに装備したのなら、絵に描いたような『地獄の騎士』になる事請け合いだ。
勇者「…『おとぎ話』は『現実』に。……そして『現実』は、『事実』として記録に残る、か」
ワルキューレをはじめて見た時、思い出されたのは、魔王を倒した瞬間の事。
あの城で、「『勇者』が魔王を打ち倒す」おとぎ話は現実へと変わり、
そして事実として世界に記録された。
ワルキューレを見た時、「戦士の魂を天上へ送り届ける戦乙女」の伝説は現実へと変わった。
そして同じく、事実としてだけ勇者の脳に刻まれた。
そうして、彼は淡々と事実だけを積み上げる事になるのか。
考えた時、彼の体から力が抜けた。
ベッドの上に倒れ込む事もなく、その場に、ベッドの周りに敷かれたカーペットに座り込む。

119 : ◆1UOAiS.xYWtC :2012/03/27(火) 03:40:11.60 ID:h7sEMOtHo
勇者「そっか。……これが、『心が死ぬ』って事なのかな」
昔手こずらされた魔物を、何の感慨もなく虫のように切り伏せられた事。
呪文も回復も行う事無く、ただ「戦う」だけで作業のように処理できた事。
次いで、今回のワルキューレとの戦い。
あれほどの使い手と戦った事は、なかった。
旅の途中で幾度も戦った黒騎士は強敵であったが、ワルキューレには僅かに劣った。
そのワルキューレでさえ、さして苦労もせず倒せた。
雷撃の呪文を連唱する事もなく、秘剣を繰り出す事もなく、回復するにも及ばず。
勝負がついたとき、抱いたのは冷たい落胆。
剣舞の中で高揚感を得たのは確かだが、今思えばそれは戦いの楽しさではない。
内容を忘れかけ、数年ぶりに読み返す本のような楽しさだった。
勇者「…ああ、クソ。目立つ目標の無い人間ってこんなにクサクサするのか。『勇者』もこのザマかよ」
声を張り上げ、強引に立ち上がる。
どうにか気分を切り替えようと試み、立ったまま上体を捻り、腰の関節を解きほぐす。
関節音がぱきぱきと鳴り、関節のジョイントがややスムーズになったように感じる。
体が軽くなったように感じていると、部屋の外から声がかけられた。
堕女神「……陛下、失礼いたします」
勇者「入れ」
堕女神「彼女を、お連れしました。力は奪っていませんが、念のために手枷を?」
勇者「いや、いい。……こいつは、約束を違えないよ」
堕女神「かしこまりました。……入りなさい」


120 : ◆1UOAiS.xYWtC :2012/03/27(火) 03:41:36.95 ID:h7sEMOtHo
促され、入ってくる彼女はどこかスッキリとした面持ちだった。
素肌に真っ白いガウンをまとい、持ち前の金髪は美しく整えられていた。
俯き加減ではあるが、その表情に悲痛さはない。
むしろ認められたのは、どこかしらの恥じらい。
栄誉を受ける新兵にも似た、はにかんだ表情。
勇者「ご苦労さん。……どうしたんだ」
堕女神「……あの…。いえ、やはりいいです」
勇者「……ヤキモチか」
堕女神「そんな事ではありません!」
勇者「案外分かりやすいんだよな。……明日は、一緒に過ごそうな」
堕女神「し、失礼します!」バタンッ
勇者「……からかいがいがあるなぁ」
ワルキューレ「その……私は、どうすれば…?」
勇者「ああ、そうだった。……こっちに来い」
扉の前で俯き、戸惑う彼女をベッドへと招く。
勇者「……その、何だ。……あんな条件は出したが……」
ワルキューレ「…?」
勇者「イヤなら、いい。……俺は、無理やり犯すような事はしたくないんだ」

121 : ◆1UOAiS.xYWtC :2012/03/27(火) 03:42:10.50 ID:h7sEMOtHo
ワルキューレ「……貴公に任せる。私は、今晩は貴公の物なのだろう……?」
勇者「……覚悟は、出来ているようだな」
ワルキューレ「それで……何を、すればいい?」
勇者「こっちへ来い」
言われるがまま、ワルキューレは近づいていく。
ベッドまであと数歩、という所で急激に腕が引かれ、彼女はベッドの上に投げ出される形となった。
柔らかなキャンバスの上に組み敷かれ、彼女は僅かに怯える。
勇者「そういえば、いつから呼び方が『貴公』になったんだ?」
ワルキューレ「…貴公が、敬意を払うべき相手だと知ったから、だ」
勇者「ほう。『ワルキューレ』のお眼鏡にかなったか」
ワルキューレ「……教えて、ほしい」
勇者「教えられる事なら」
ワルキューレ「…貴公こそ、何故だ。私がここへ連れて来られた時と、あまりに違いすぎる」
勇者「ああ、なんだ。そんな事か?」
ワルキューレ「今も、私を……その、け……穢す、事も叶うのに……何故、そう…しない?」
勇者「変な所で、やっぱり捨て切れないものがあるからかな。……勝者の権利と分かっていても、望まぬ事はしたくないんだ」

122 : ◆1UOAiS.xYWtC :2012/03/27(火) 03:42:47.82 ID:h7sEMOtHo
ワルキューレ「………そうか」
勇者「『淫魔を総べる王』には相応しくないと思ったか?」
ワルキューレ「そんな事は無い。……昼間の闘いで、貴公の事は理解できたつもりだ」
勇者「…俺は、『王』であって、『暴君』じゃない。お前を幽閉して拷問まがいの真似はしたが、そうするだけの理由はあった」
ワルキューレ「…分かっている。分かっているさ」
勇者「……俺は、この国を護らなければいけない。脅威が迫っているとなれば、それを知らねばならなかったからだ」
ワルキューレ「……」
勇者「教えてくれ。俺を、殺しに来たのか?」
ワルキューレ「……もし、そうだとしたら?」
勇者「死にたくないな。今なら言えるよ。俺は、死にたくない。胸を張って言える」
ワルキューレ「…決着の時も思ったが、何故そう正直に言えるのだ」
勇者「……何でだろうな。昔の俺からしたら考えられないよ」
ワルキューレ「………私の、目的を問うたな」
勇者「ああ、そうだった。どうしても言えないってなら、それもいい。……だが」

123 : ◆1UOAiS.xYWtC :2012/03/27(火) 03:43:18.98 ID:h7sEMOtHo
そこで言葉を切り、声に鉛を詰めたような重みが注がれた。
彼女を押し倒した姿勢のまま至近から放たれた声は、潰れるように重く、
表情は羅刹のごとき厳しさのまま、固定されていた。
勇者「…俺の国に、俺の国民に手を出すというなら黙ってはいない。たとえ『神』だろうと―――討つ」
彼女は、その言葉に戦慄を抱く。
内容の重さもそうだが、眼前の男は本気なのだと気付いたからだ。
例え腕を?がれようと、足を削ぎ落とされようと、死んでも――『神』を、殺すつもりなのだと。
鋸刃のように恐ろしく荒々しい、ワルキューレをして心胆を冷やす程の、正銘の殺意。
勇者「一度ならず二度までも俺を、俺の生を奪うというのなら。……『神』だろうと、土に還してやる」
ワルキューレ「っ……」
勇者「どうなんだ。……『神』は何と言っている?」
ワルキューレ「…っ…た……」
勇者「聞こえないぞ。……お前は、なぜこの国へ……否、淫魔の領地へと入り込んだ?」
ワルキューレ「……ん…だ……」
勇者「聞こえるように話せ。俺も、そろそろ限界だ」
ワルキューレ「……道に、迷ったんだ!」

124 : ◆1UOAiS.xYWtC :2012/03/27(火) 03:44:06.99 ID:h7sEMOtHo
勇者「……何だって?」
場の空気を壊し、完全に気勢を削がれながら訊き返す。
先ほどまでの殺意が嘘のように、完全に出鼻を挫かれて。
ワルキューレ「………私と、もう一人が……主神の下へ帰る途中、襲撃されたのだ」
勇者「……で?」
ワルキューレ「戦う内に方向感覚が狂っていたんだ。その後は、見ての通り」
勇者「…………そもそも、何から帰る途中だった?」
ワルキューレ「……我が国南方、貴国との境にあるコボルトの群生地の偵察だ。記録を終え、我が国へ帰るつもりだった」
勇者「それで、何故隣国と俺の国の境に。真逆だろう」
ワルキューレ「しくじって、大量のコボルトに襲われたんだ。気付けば、南北の感覚が逆転してしまっていた」
勇者「……それで、今に至ると」
ワルキューレ「……そうなる」
勇者「…マジメに考えて損した」

125 : ◆1UOAiS.xYWtC :2012/03/27(火) 03:44:48.47 ID:h7sEMOtHo
勇者「……本当に、それだけなのか?」
ワルキューレ「…そうだ」
勇者「…………」
ワルキューレ「な…何か、言ってくれないか?」
勇者「そうだな。…とりあえず、今から帰れ。気が削がれてしまった」
ワルキューレ「何だと?」
勇者「このテンションでどうしろっていうんだ。帰れ、故郷へ。隣国には俺からもう一人を解放するように言っておく」
ワルキューレ「しかし、その……」
勇者「何だ」
ワルキューレ「……済まない、その……こ、腰が抜けて……立てないんだ……」
勇者「…………はぁ」

126 : ◆1UOAiS.xYWtC :2012/03/27(火) 03:46:03.60 ID:h7sEMOtHo
ワルキューレ「……ば、莫迦にしているだろう!?」
勇者「…………」
ワルキューレ「頼む、何か言ってくれないか」
勇者「言ってもいいのか?」
ワルキューレ「……やはり、何も言わないでくれ」
勇者「……それで、どうする?」
ワルキューレ「?」
勇者「立てないんだろ?」
ワルキューレ「……ああ」
勇者「……もういい。一晩寝てから帰れ」
ワルキューレ「…え……」
勇者「え、って何だよ」
ワルキューレ「……その……しない、のか?」
勇者「何を」
ワルキューレ「…わ、私を……その……」

127 : ◆1UOAiS.xYWtC :2012/03/27(火) 03:46:30.75 ID:h7sEMOtHo
勇者「……」
ワルキューレ「……さ、最後まで言えというのか?」
勇者「いや、言いたい事は分かる。分かるんだが」
ワルキューレ「それでは、何が不服なのだ」
勇者「強いて言えば、タイミングが外れすぎてて。雰囲気が整ってない」
ワルキューレ「……済まない。私は…そういうのが、不得手なんだ」
勇者「…だろうね」
ワルキューレ「それでも……今は、思っているんだ。我が主にも、恥ずべき事なのだが」
勇者「…つまり?」
ワルキューレ「……貴公になら、奪われても構わない。殺されても構わないとすら思う」
勇者「…本気か?」
ワルキューレ「我が名にかけて、嘘は言わない。……一晩限りでもいい。貴公と、同じ夢を見たいんだ」

128 : ◆1UOAiS.xYWtC :2012/03/27(火) 03:47:45.09 ID:h7sEMOtHo
勇者「何故だ。俺は、『淫魔の王』なんだぞ。なぜ……そんな事が言えるんだ?」
ワルキューレ「貴公を、もっと知りたいと思った。人の身でそこまで練り上げるに至った、物語を」
勇者「……『主神』はどうなる」
ワルキューレ「…私は。『戦乙女』は、主神の命に従い、戦士の魂を導く役目がある」
勇者「そうしなくても良いのか?」
ワルキューレ「……四百年。生を受けて四百年、そうしてきた。幾つもの魂を見てきた」
勇者「(…やべ、400歳が全然若く思える)」
ワルキューレ「貴公は……一体、幾つの戦いを経てそこまで強くなったのか、知りたいんだ。だから……」
勇者「……飛びすぎだな」
ワルキューレ「……それと……恥ずべき事だが……」
勇者「何だ?」
ワルキューレ「……この体勢でいられると……鼓動が、際限なく早まる。止まってしまいそうだ」
勇者「おっと」

129 : ◆1UOAiS.xYWtC :2012/03/27(火) 03:48:20.68 ID:h7sEMOtHo
言って、勇者は身を起こす。
押し倒し、鼻先が触れ合う距離、吐息がくすぐったく感じるような距離から離れる。
その刹那、彼女がどこか名残惜しそうな表情をしたが、彼は気付くまいとした。
気付いてしまえば――欲望のままに彼女を貪り、荒淫に耽ってしまいそうだったから。
勇者「……無防備すぎる、お前は」
ワルキューレ「…この状況で、抗えるものか」
勇者「やっぱり納得行かない事があるんだが」
ワルキューレ「何だろうか?」
勇者「…なんで、俺に拘る?…お前の主の方が強いはずだ。……いや、そうであってほしい」
ワルキューレ「恐らくは、な。……だが貴公の強さは、別の所にあると感じたんだ。我が主神とは、別の」
勇者「別の所?」
ワルキューレ「淫魔とも、私の力を奪った彼女とも、私とも、我が主とも違う。『人を超えた存在』には持ちえない類の強さを感じる」
勇者「そう言われても、こういうのは本人にはピンと来ない」
ワルキューレ「……私も、未だ良く解らない。触れ合えば、解るのかと思ったんだ」
勇者「………うぅむ」
ワルキューレ「……それとも、その……わ、私では……駄目、か?」////

130 : ◆1UOAiS.xYWtC :2012/03/27(火) 03:49:19.38 ID:h7sEMOtHo
勇者「いや、そう言うのはずるいだろ」
ワルキューレ「……」
勇者「別にお前がどうとかいうんじゃなく……その。『客人』に手を出すのもどうかと思ってだな」
ワルキューレ「『捕虜』ではないのか」
勇者「侵略や偵察に来たんなら捕虜として扱うが、……迷子だろ。だから、お前は客だ」
ワルキューレ「……やはり、優しいのだな」
勇者「優しくない方がいいのか」
ワルキューレ「………」
勇者「分かったよ。本当に、いいんだな?」
ワルキューレ「っ……何度も言わせるな……!」
勇者「………止めろと言っても、もう聞かないからな」
ワルキューレ「……ああ」

131 : ◆1UOAiS.xYWtC :2012/03/27(火) 03:50:09.58 ID:h7sEMOtHo
翌朝
勇者「……なんてやり取りしてたのに。いざって時に」
ワルキューレ「……ぅ…」
勇者「何だよ、発熱ってのは!?戦乙女が何で風邪ひいてんだ!!」
ワルキューレ「……すまない…静かに…してくれ……」
勇者「あーあ、随分と図太いよなぁ」
ワルキューレ「……だから……すまない、と…」
勇者「本当あれだな、お前は。それとも空気壊す能力が戦乙女には備わってんのか?」
ワルキューレ「……熱は…私のせいでは……」
勇者「俺のせいか?」
ワルキューレ「…地下に…二日も閉じ込められていれば……誰だって……」
勇者「………だが、なんで『ワルキューレ』が熱出すんだ。おかしいだろ」
ワルキューレ「…………」
勇者「……分かったよ、寝てろ。ったく……こんなにグダグダなのは初めてだ。色々謝れよ」
ワルキューレ「…すまない」

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