勇者「淫魔の国の王になったわけだが」
ワルキューレ編
Part5
74 : ◆1UOAiS.xYWtC :2012/03/27(火) 02:59:06.86 ID:h7sEMOtHo
幾たびも、幾たびも、彼女は内側を抉られ続ける。
突かれるごとに、内壁をゴリゴリと削り取られるような、痛みに限りなく近い快感。
思い切り引き抜かれるごとに、膣道にあるものがすべてめくれ上がり、外側に抉り出されるような快感。
内臓が持ち上がる高揚感、内側を力任せに擦り上げ、霊体を道連れに引き抜く快感。
彼女を責め苛む要素に、更にもう一つが加わった。
サキュバスA「ひゃぁぁっ!?」
両腕を突っ張りながら耐えていた彼女の、胸に勇者の手が伸びる。
下半身への荒々しい陵辱に似つかわしく、好き勝手に捏ね回された。
サキュバスA「だ…めぇ……!駄目……ですわ……!」
手の中で形を変える乳房は、吸い付くように柔らかい。
天辺にある乳首はぷりぷりと硬く、敏感に尖っていた。
見逃されるはずもなく、乳首を指先が捉えた。
人差し指と中指で強く摘まれ、残りの指が乳肉を弄ぶ。
いつもであれば痛みを感じる加減だが、今の彼女には、快楽としてしか受け取れない。
サキュバスA「ッ…い、く……イク……!」
言葉を受け取った時、ピストンの勢いが更に増す。
もはや、彼女に意思はない。
肺から漏れ出す空気は、余さず色欲が支配する甘い鳴き声へ。
淫魔として生まれた体は、快楽を求めるだけの卑しい肉塊へ。
意思を離れた体は、脳へ快感を届けるだけの感覚器へと成り果てた。
75 : ◆1UOAiS.xYWtC :2012/03/27(火) 02:59:41.28 ID:h7sEMOtHo
サキュバスA「……も……だめ……イクッ……!」
ガチガチと歯を鳴らし、瞑られた瞼の中で眼球がひっくり返る。
抑え込まれ、蓋をされた快感は体の中を跳ね回り、何もかもをこそげ落とす。
矜持などは遠くへ吹き飛び、後ろから突き上げ、乳肉を弄ぶ男が誰であるかももはや分かっていない。
不意に、乳首を摘む指先へ力が込められた。
擂り潰されそうな力が小さな乳首へかけられ、千切れそうな「快感」が伴う。
それが――とどめの一撃、となった。
サキュバスA「…っ…あ……あ、あぁぁぁぁ!イグっ……イっ……!」
チカチカと目の奥が明滅し、意識が微塵に吹き飛ぶような、病の発作にも似た衝撃が体に走る。
暴走した背筋がびくんびくんと跳ね上がり、雷に打たれたように全身の筋肉が意思を離れ、動き回る。
足の爪先がぎゅっと丸まり、手先はシーツを掴み、引き裂いてしまいそうなほどに握り締められた。
膣内を焼く、溶けた硝子のように熱くドロドロした液体が子宮に満ち溢れる。
子宮をパンパンに満たし、風船のように張り詰めさせる刺激が、更に彼女を遠くまで連れて行く。
勇者は、彼女の奥深くを穢しながら――堪え切れず、指先に力を更にこめた。
サキュバスA「あひっ……やめで……やめでぇ!…おっぱ…い……やめでぇぇ!ひっ……!死んじゃうぅ……!!」
暴走を止めない感覚が、オーガズムに打ち震える肉体に更に追撃を加える。
最中に乳首を強く抓られ、ぎこちなく体を反りかえらせながら懇願を口にする。
よだれが絡み、思うように言葉を発せられない。
もはやそれは、吼え狂う野獣の、本能の叫びだ。
そして、しばし身を震わせて―――ぷつりと、静かに脱力し、ベッドへと倒れ込んだ。
意識が真っ白に吹き飛び、もはや、保っていられなくなったのだ。
76 : ◆1UOAiS.xYWtC :2012/03/27(火) 03:00:33.52 ID:h7sEMOtHo
勇者「……何て声、出すんだよ」
静かに息を立てながら、時々身を震わせる彼女の顔を眺めて呟く。
乱れて顔にふりかかった髪をどけてやる。
泣き疲れて眠った少女のように、触れがたい美しさを湛えていた。
身を焼き尽くすような情事の後だというのに、だ。
勇者「…………そう、だな」
涙と唾液で濡れた顔を、優しく撫でる。
こそばゆさを感じたのか、彼女の喉奥から息が漏れる。
勇者「…叶えてやれるのは、俺しかいないんだな」
沁み込ませるように、呟いた。
その顔はほんの数分前までとは違い、優しく、それでいて寂しさもはらんでいた。
彼女は、自らでも抑えきれない、被虐の性癖を持っていた。
それ故に――加虐にも、長けていた。
正反対であり、鏡のような性質は、彼女の中に同居している。
過剰なまでの性癖が暴走して、今夜の情事、ひいては自重もできない、あの階段での自慰にまで繋がってしまった。
生来の彼女の態度は、もしかすると演技なのかもしれない。
自らの、業の深すぎる性癖を一歩引いて見ている為に、どこか飄々とした態度を取らざるを得ないのかもしれない。
淫魔として生まれた事は、彼女にとっては不幸だったのかもしれない。
人間の精を絞り取り、魔力として王へと献上する「働きバチ」の役目を果たさなくてはならないから。
もし一人の人間の女であったのなら、その性癖を満たす術がいくらでもあった。
街頭に立ち、夜をひさぐ事もできたかもしれない。
割れた欠片へと合致する、もう一つの「欠片」を見つけ、主と奴隷として添い遂げる事もできたかもしれない。
でも、それは―――望めない。
なぜならば、「淫魔」として生まれてしまったから。
77 : ◆1UOAiS.xYWtC :2012/03/27(火) 03:01:15.11 ID:h7sEMOtHo
勇者「ほっとけない奴だな、お前も」
ふ、と笑って言う。
彼女の体の震えは落ち着き、整った息は紛れもない「寝息」へと調子を変えた。
勇者「…寝るか」
床に落ちていた毛布を拾い、彼女と共に潜り込む。
丁寧に織られたそれは、滲むように暖かく、そして軽い。
最初こそ冷え切ってはいたが、二人分の体温ですぐに暖かくなった。
勇者「……もう一人のサキュバスより手がかかりそうだ、こいつは」
室内で飼われた猫を連想させる、安心しきった寝顔。
魔族とは思えない、隙だらけの状態。
勇者はそれに対し、呆れるでもなく、ただ、微笑ましく見ていた。
―――あぁ、彼女は、彼女らは。
―――俺になら、こんな顔を見せてくれるんだな。
―――こんな、俺にも。
心の中でさえ、言葉として固まってはいない。
そんな想いがもやもやと雲のように漂っていた。
しばし寝顔を見つめた後、勇者も眠りへ落ちていった。
78 : ◆1UOAiS.xYWtC :2012/03/27(火) 03:02:29.56 ID:h7sEMOtHo
サキュバスA「陛下、もう朝ですわよ」
勇者「……ン…」
サキュバスA「……もう、どうしましたの?」
勇者「…体が重いんだ。……お前、まさか俺の精気を吸ったのか?」
サキュバスA「とんでもない。吸われたのは、むしろ私の方ですわ」
勇者「はぁ……。ん?」
サキュバスA「……?何か?」
体を起こした勇者が、ベッドサイドに腰掛ける彼女の姿を認める。
昨夜の痴態が嘘のように、いつも通りの彼女だ。
ただ――ひとつを除いて。
勇者「……お前……何で、服……」
サキュバスA「…はい?」
全く違和感というには不足の感があるが……彼女は、「服を着ていた」。
驚きに値する事ではないが、彼には、違和感でしかない。
勇者「……何で、服を着てる?」
サキュバスA「ふふ……陛下がお尻を虐めるので、赤く手の痕が残ってしまいましたの。それで」
勇者「あくまで俺のせいにするのかよ」
79 : ◆1UOAiS.xYWtC :2012/03/27(火) 03:03:03.96 ID:h7sEMOtHo
蒼白の肌に柔らかめの紫色のドレスが、よく映えていた。
袖は長く、袖口と首下には黒いレースの装飾が施され、品のあるシルエットにまとまっている。
長いスカート部分は、足首近くにスリットが入り、踵が少し浮いた靴を履いているようだ。
淫靡な空気が薄れ、代わりに、不思議な優雅さを醸し出す。
それは旅の途中で訪れた、ある国の妃に似ていた。
勇者「……似合うぞ。綺麗だ」
サキュバスA「うふふ、お上手ですわね。堕女神さんにもそうなのかしら?」
勇者「そんな事はない……と思う。しかし、何故お前達は普段服を着ないんだ」
サキュバスA「……そうですわねぇ。私達にとって、衣服は装飾品と同じ感覚ですから」
勇者「そうなのか?」
サキュバスA「ええ。裸が恥ずかしい、という感覚もあまり無いので。個人差はありますけれど」
勇者「うーむ……」
サキュバスA「それに、陛下以外はこの国には女性しかいませんもの。気になんてされませんわ」
勇者「…………女子校かよ。っていうか寒くないのか?」
サキュバスA「魔力で体温を調節していますので。隣国の淫魔は、割ける魔力が少ないので普通に服を着ていますわね」
勇者「言われてみると確かに……」
七日間の中、訪れた隣国の様子を思い出していた。
女王から、穢されていた淫魔に至るまで、皆、きちんと服を着ていた。
もっとも……「きちんとした服」ではなかったが。
80 : ◆1UOAiS.xYWtC :2012/03/27(火) 03:03:44.60 ID:h7sEMOtHo
勇者「堕女神はいつも服着てるよな?……あと、兵士とか使用人も」
サキュバスA「兵士や使用人は、ユニフォームとしての側面が強いですわね。下着の色さえ統一されてますわ」
勇者「それはそれでつまらんな」
サキュバスA「よろしければ、ご覧になります?……私の、下着」
勇者「どうせ穿いてねぇんだろ」
サキュバスA「さぁ、どうでしょうね?」
勇者「想像して愉しむ事にする。……で、聞きそびれていたんだが」
サキュバスA「はい、何でしょうか」
勇者「ワルキューレの方は、どんな調子だ」
サキュバスA「昨日は、イジメすぎてしまいましたわね。泣かせてしまいました」
勇者「ヒデーな、おい」
サキュバスA「私をイジメて泣かせたのは陛下でしょうに」
勇者「お前が欲しがるからだろ!……で、予定は?」
サキュバスA「どうしましょうか。ネタなら幾らでもありますわ」
81 : ◆1UOAiS.xYWtC :2012/03/27(火) 03:04:32.06 ID:h7sEMOtHo
勇者「……そうだな。今夜は、俺が直々に訊くとするかな」
サキュバスA「……陛下もお好きですわね」
勇者「ポチを使おうかとも思ったけど」
サキュバスA「あの秘蔵のローパーを?……心が壊れてしまいますわよ」
勇者「だよなぁ。まぁ、とにかく今夜は俺がやるよ」
サキュバスA「了解いたしましたわ。着替えのお手伝いをいたしましょうか?」
勇者「いや、いい。……しかし、服着ると印象変わるな」
サキュバスA「馬子にも……ですか?」
勇者「ヒネてんなよ」
サキュバスA「服を着たのなんて、4年ぶりですわ」
勇者「いきなり身近だな!?っていうかそれでも久しぶりすぎる!」
サキュバスA「そうそう、『あの子』は可愛い服を買うのが好きなのですけれど」
勇者「Bの事か?」
サキュバスA「ええ。リボンやフリルのたくさんついた服を買ったのですが、結局『恥ずかしい』と言って。
それを着ないで、いつも裸ですわ。勿体無い」
勇者「何でそうなるんだよ!?」
サキュバスA「ちなみに、私達は裸より下着姿を見られるのが一番恥ずかしいのです」
勇者「それは、まぁ。ちょっと分かる気がする」
82 : ◆1UOAiS.xYWtC :2012/03/27(火) 03:05:10.28 ID:h7sEMOtHo
サキュバスA「ともかく、私達は裸にあまり抵抗が無くて。陛下もいかがです?楽ですわよ?」
勇者「遠慮しとく。……しかし、今のBの話で思ったんだが」
サキュバスA「はい」
勇者「……堕女神がそういう格好したら、ちょっといいと思わないか?」
サキュバスA「…………お言葉ですが、Bちゃんや、隣女王の方が似合うのでは……」
勇者「わかってねぇな!!」ドンッ!
サキュバスA「はいっ!?」ビクッ
勇者「Bや隣女王に似合うのは当たり前なんだよ!敢えてミスマッチを狙うのがいいんだろ!?」
サキュバスA「陛下、どうなさいましたの?一体……」
勇者「いいか、想像してみろ。堕女神がピンク色のリボンだらけの服を着て」
サキュバスA「はい……」
勇者「まんざらでもなさそうに鏡の前でポーズ取ってぎこちなく笑顔を浮かべて、いきなり恥ずかしくなって我に返って」
サキュバスA「…………なるほど、確かに悪くないですわね」
勇者「だろ?」
83 : ◆1UOAiS.xYWtC :2012/03/27(火) 03:06:04.49 ID:h7sEMOtHo
サキュバスA「可愛らしさではなく、振り切ったミスマッチからくる不健康ないやらしさの方が殿方の心をくすぐると?」
勇者「そうだ。安易な記号化では得られないものもある」
サキュバスA「意外性、いや、はっきりと『似合わない』からこその到達点ですわね」
勇者「そう。堕女神に可愛い服は似合わない。絶望的に似合わない。だからこそ、惹かれるんだ」
サキュバスA「しかしそれなら、私でも良いのでは?」
勇者「いや、お前は奔放すぎる。失礼な言い方だが……その、萎える」
サキュバスA「あぁ……。つまり、普段の態度も重要なのですか?」
勇者「そう。あの硬くて真面目で知的な堕女神だからこそ、だ」
サキュバスA「ふむ。二万余年を生きても尚、殿方というのは奥が深いですわ」
勇者「そうだろう。こればかりは、どれだけ生きていても掴み切れないぞ」
サキュバスA「私も、まだまだ未熟。……いや、勉強になりましたわ。ところで」
勇者「何か」
サキュバスA「先ほどから、戸口に堕女神さんが立っていらっしゃいます」
勇者「えっ」
84 : ◆1UOAiS.xYWtC :2012/03/27(火) 03:07:04.23 ID:h7sEMOtHo
堕女神「…………」
勇者「……何か言ってくれないか」
堕女神「…………朝食の準備が整っております」
勇者「ああ、すぐ行く」
堕女神「お待ちしております。それでは」バタン
勇者「怒ってるのかな?」
サキュバスA「さぁ?」
勇者「楽しんでるだろ?」
サキュバスA「ええ、わりと」
勇者「……とりあえず、着替えるか。引き止めてすまなかった」
サキュバスA「私で良ければ、いつでも話し相手を務めさせていただきますわ」
勇者「…………しかし、本当に夜とは別人すぎるな」ゴソゴソ
サキュバスA「スッキリさせていただきましたもの。陛下もでしょう?」
勇者「……ああ、成る程。さて……。それじゃ、行くかな」
85 : ◆1UOAiS.xYWtC :2012/03/27(火) 03:07:35.93 ID:h7sEMOtHo
朝食を終えると、彼は、真っ直ぐに地下牢へと向かった。
腹ごなしの運動というには不足だが、好奇心は抑えきれない。
長い石の階段を下っていくと、反響した足音が遠く響き渡り、
それでいて、後ろから誰かがついてくるような音にも変わった。
陰鬱で恐ろしい空間へ続いている、という事からも鑑みて、ゾッとしないものがある。
単なる反響と分かっていても、そう処理するには難しい。
大袈裟な恐怖でこそないが、心から落ち着きを奪う程度には恐ろしい。
それは、世界を救った「勇者」であっても、例外ではなかった。
階段が終わりに近づくと、気配がした。
淫魔のものとも違う、ローパーとも違う、張り詰めた空気感。
懐かしい空気を肌に馴染ませながら、拷問部屋の、「彼女」を幽閉した一角に近づく。
勇者「何だ、起きてたのか?」
ワルキューレ「貴様…………。ここから、出せ」
勇者「飽きもしないヤツだな」
ワルキューレ「うるさい!……頼む……お願いだから……」
勇者「んん?」
ワルキューレ「お願いだ……ここから……出して………。出してくれ……」
鉄格子越しに、弱々しい懇願が聞こえた。
既に捕縛時の威勢などなく、折られかけた心は、体に力を注いではくれない。
立つことすらできず、ぺたんと座り込み、鉄格子に手をかけ、俯きながら声を漏らすだけ。
勇者「…………何をしに来たんだ?」
ワルキューレ「……」
勇者「……俺を、殺しにか?」
ワルキューレ「…………」
86 : ◆1UOAiS.xYWtC :2012/03/27(火) 03:08:08.12 ID:h7sEMOtHo
勇者「…………お前に、チャンスをやるよ」
ワルキューレ「何だと?」
勇者「…俺と、戦おう。一対一でな。……勝てば、自由にしてやる。俺を殺してもいい」
ワルキューレ「裏があるのか?」
勇者「ああ、あるとも。……俺が勝てば、お前の体を自由にさせてもらう。『淫魔の王』の自由にな」
ワルキューレ「……それが目的なら、今この場で処せばいいだろう。何故、そんな事を!」
勇者「……さぁな。終わったら教えてやる。……あとで、武具とお前の『力』を返させるよ」
ワルキューレ「何を企んでいる?……私を辱めるためか?」
勇者「強いて言えば、しのびなくてね」
ワルキューレ「何がだ!」
勇者「『ワルキューレ』の強さを確かめたい。……それだけだ」
ワルキューレ「……なめるなよ」
勇者「なめてなどいないさ。……それでは、後で会おうか」
87 : ◆1UOAiS.xYWtC :2012/03/27(火) 03:09:31.37 ID:h7sEMOtHo
勇者「……という訳で、彼女に力を返してやってくれ」
堕女神「は?」
勇者「武具も返して、中庭へ連れて来てくれ。……これは、『決闘』なんだ」
堕女神「…ご命令とあらば。しかし、何故です?そんな事をする理由が?」
勇者「聞かなきゃ気が済まないのか」
堕女神「……お許しください。口が過ぎました」
勇者「いや、いい。ちゃんと説明するさ」
堕女神「……陛下の武具は?」
勇者「剣だけでいい。……適当に持ってきてくれ」
堕女神「お言葉ですが、『ワルキューレ』を相手にそれは不用心かと」
勇者「一番いいのを頼む」
堕女神「はい、分かりました」
勇者「頼む。……なぁ、堕女神」
堕女神「はい、何でしょう」
88 : ◆1UOAiS.xYWtC :2012/03/27(火) 03:10:11.65 ID:h7sEMOtHo
勇者「怒っているのか?朝の事」
堕女神「…………いえ」
勇者「悪く言っていた訳じゃないんだ」
堕女神「それは、分かっております」
勇者「『どうして戦うのか』って訊いたな」
堕女神「はい」
勇者「……俺も、何度もそう思った。ほかにも道があるはずなのに、何で戦うんだろう、ってね」
堕女神「?」
勇者「…ああ、いや。人間界の話だ」
堕女神「……人間は元来『奪いたがる』ものだからでは?」
勇者「つまり俺が、あのワルキューレから何かを奪いたがっていると言うのか」
堕女神「いえ、そのような……」
勇者「……いや、そうかもな。奪う奴と、奪われまいとする奴がいて。それが単純な真実なのかもな」
堕女神「だとすれば、それは幾千の時を経ても変わらないのですね」
勇者「何を、かは変わるだろう。領土?鉱脈?あるいは、生活を豊かにするための新しい資源?」
堕女神「あるいは……恐ろしい武器を生み出すための、『何か』など?」
幾たびも、幾たびも、彼女は内側を抉られ続ける。
突かれるごとに、内壁をゴリゴリと削り取られるような、痛みに限りなく近い快感。
思い切り引き抜かれるごとに、膣道にあるものがすべてめくれ上がり、外側に抉り出されるような快感。
内臓が持ち上がる高揚感、内側を力任せに擦り上げ、霊体を道連れに引き抜く快感。
彼女を責め苛む要素に、更にもう一つが加わった。
サキュバスA「ひゃぁぁっ!?」
両腕を突っ張りながら耐えていた彼女の、胸に勇者の手が伸びる。
下半身への荒々しい陵辱に似つかわしく、好き勝手に捏ね回された。
サキュバスA「だ…めぇ……!駄目……ですわ……!」
手の中で形を変える乳房は、吸い付くように柔らかい。
天辺にある乳首はぷりぷりと硬く、敏感に尖っていた。
見逃されるはずもなく、乳首を指先が捉えた。
人差し指と中指で強く摘まれ、残りの指が乳肉を弄ぶ。
いつもであれば痛みを感じる加減だが、今の彼女には、快楽としてしか受け取れない。
サキュバスA「ッ…い、く……イク……!」
言葉を受け取った時、ピストンの勢いが更に増す。
もはや、彼女に意思はない。
肺から漏れ出す空気は、余さず色欲が支配する甘い鳴き声へ。
淫魔として生まれた体は、快楽を求めるだけの卑しい肉塊へ。
意思を離れた体は、脳へ快感を届けるだけの感覚器へと成り果てた。
75 : ◆1UOAiS.xYWtC :2012/03/27(火) 02:59:41.28 ID:h7sEMOtHo
サキュバスA「……も……だめ……イクッ……!」
ガチガチと歯を鳴らし、瞑られた瞼の中で眼球がひっくり返る。
抑え込まれ、蓋をされた快感は体の中を跳ね回り、何もかもをこそげ落とす。
矜持などは遠くへ吹き飛び、後ろから突き上げ、乳肉を弄ぶ男が誰であるかももはや分かっていない。
不意に、乳首を摘む指先へ力が込められた。
擂り潰されそうな力が小さな乳首へかけられ、千切れそうな「快感」が伴う。
それが――とどめの一撃、となった。
サキュバスA「…っ…あ……あ、あぁぁぁぁ!イグっ……イっ……!」
チカチカと目の奥が明滅し、意識が微塵に吹き飛ぶような、病の発作にも似た衝撃が体に走る。
暴走した背筋がびくんびくんと跳ね上がり、雷に打たれたように全身の筋肉が意思を離れ、動き回る。
足の爪先がぎゅっと丸まり、手先はシーツを掴み、引き裂いてしまいそうなほどに握り締められた。
膣内を焼く、溶けた硝子のように熱くドロドロした液体が子宮に満ち溢れる。
子宮をパンパンに満たし、風船のように張り詰めさせる刺激が、更に彼女を遠くまで連れて行く。
勇者は、彼女の奥深くを穢しながら――堪え切れず、指先に力を更にこめた。
サキュバスA「あひっ……やめで……やめでぇ!…おっぱ…い……やめでぇぇ!ひっ……!死んじゃうぅ……!!」
暴走を止めない感覚が、オーガズムに打ち震える肉体に更に追撃を加える。
最中に乳首を強く抓られ、ぎこちなく体を反りかえらせながら懇願を口にする。
よだれが絡み、思うように言葉を発せられない。
もはやそれは、吼え狂う野獣の、本能の叫びだ。
そして、しばし身を震わせて―――ぷつりと、静かに脱力し、ベッドへと倒れ込んだ。
意識が真っ白に吹き飛び、もはや、保っていられなくなったのだ。
76 : ◆1UOAiS.xYWtC :2012/03/27(火) 03:00:33.52 ID:h7sEMOtHo
勇者「……何て声、出すんだよ」
静かに息を立てながら、時々身を震わせる彼女の顔を眺めて呟く。
乱れて顔にふりかかった髪をどけてやる。
泣き疲れて眠った少女のように、触れがたい美しさを湛えていた。
身を焼き尽くすような情事の後だというのに、だ。
勇者「…………そう、だな」
涙と唾液で濡れた顔を、優しく撫でる。
こそばゆさを感じたのか、彼女の喉奥から息が漏れる。
勇者「…叶えてやれるのは、俺しかいないんだな」
沁み込ませるように、呟いた。
その顔はほんの数分前までとは違い、優しく、それでいて寂しさもはらんでいた。
彼女は、自らでも抑えきれない、被虐の性癖を持っていた。
それ故に――加虐にも、長けていた。
正反対であり、鏡のような性質は、彼女の中に同居している。
過剰なまでの性癖が暴走して、今夜の情事、ひいては自重もできない、あの階段での自慰にまで繋がってしまった。
生来の彼女の態度は、もしかすると演技なのかもしれない。
自らの、業の深すぎる性癖を一歩引いて見ている為に、どこか飄々とした態度を取らざるを得ないのかもしれない。
淫魔として生まれた事は、彼女にとっては不幸だったのかもしれない。
人間の精を絞り取り、魔力として王へと献上する「働きバチ」の役目を果たさなくてはならないから。
もし一人の人間の女であったのなら、その性癖を満たす術がいくらでもあった。
街頭に立ち、夜をひさぐ事もできたかもしれない。
割れた欠片へと合致する、もう一つの「欠片」を見つけ、主と奴隷として添い遂げる事もできたかもしれない。
でも、それは―――望めない。
なぜならば、「淫魔」として生まれてしまったから。
77 : ◆1UOAiS.xYWtC :2012/03/27(火) 03:01:15.11 ID:h7sEMOtHo
勇者「ほっとけない奴だな、お前も」
ふ、と笑って言う。
彼女の体の震えは落ち着き、整った息は紛れもない「寝息」へと調子を変えた。
勇者「…寝るか」
床に落ちていた毛布を拾い、彼女と共に潜り込む。
丁寧に織られたそれは、滲むように暖かく、そして軽い。
最初こそ冷え切ってはいたが、二人分の体温ですぐに暖かくなった。
勇者「……もう一人のサキュバスより手がかかりそうだ、こいつは」
室内で飼われた猫を連想させる、安心しきった寝顔。
魔族とは思えない、隙だらけの状態。
勇者はそれに対し、呆れるでもなく、ただ、微笑ましく見ていた。
―――あぁ、彼女は、彼女らは。
―――俺になら、こんな顔を見せてくれるんだな。
―――こんな、俺にも。
心の中でさえ、言葉として固まってはいない。
そんな想いがもやもやと雲のように漂っていた。
しばし寝顔を見つめた後、勇者も眠りへ落ちていった。
78 : ◆1UOAiS.xYWtC :2012/03/27(火) 03:02:29.56 ID:h7sEMOtHo
サキュバスA「陛下、もう朝ですわよ」
勇者「……ン…」
サキュバスA「……もう、どうしましたの?」
勇者「…体が重いんだ。……お前、まさか俺の精気を吸ったのか?」
サキュバスA「とんでもない。吸われたのは、むしろ私の方ですわ」
勇者「はぁ……。ん?」
サキュバスA「……?何か?」
体を起こした勇者が、ベッドサイドに腰掛ける彼女の姿を認める。
昨夜の痴態が嘘のように、いつも通りの彼女だ。
ただ――ひとつを除いて。
勇者「……お前……何で、服……」
サキュバスA「…はい?」
全く違和感というには不足の感があるが……彼女は、「服を着ていた」。
驚きに値する事ではないが、彼には、違和感でしかない。
勇者「……何で、服を着てる?」
サキュバスA「ふふ……陛下がお尻を虐めるので、赤く手の痕が残ってしまいましたの。それで」
勇者「あくまで俺のせいにするのかよ」
蒼白の肌に柔らかめの紫色のドレスが、よく映えていた。
袖は長く、袖口と首下には黒いレースの装飾が施され、品のあるシルエットにまとまっている。
長いスカート部分は、足首近くにスリットが入り、踵が少し浮いた靴を履いているようだ。
淫靡な空気が薄れ、代わりに、不思議な優雅さを醸し出す。
それは旅の途中で訪れた、ある国の妃に似ていた。
勇者「……似合うぞ。綺麗だ」
サキュバスA「うふふ、お上手ですわね。堕女神さんにもそうなのかしら?」
勇者「そんな事はない……と思う。しかし、何故お前達は普段服を着ないんだ」
サキュバスA「……そうですわねぇ。私達にとって、衣服は装飾品と同じ感覚ですから」
勇者「そうなのか?」
サキュバスA「ええ。裸が恥ずかしい、という感覚もあまり無いので。個人差はありますけれど」
勇者「うーむ……」
サキュバスA「それに、陛下以外はこの国には女性しかいませんもの。気になんてされませんわ」
勇者「…………女子校かよ。っていうか寒くないのか?」
サキュバスA「魔力で体温を調節していますので。隣国の淫魔は、割ける魔力が少ないので普通に服を着ていますわね」
勇者「言われてみると確かに……」
七日間の中、訪れた隣国の様子を思い出していた。
女王から、穢されていた淫魔に至るまで、皆、きちんと服を着ていた。
もっとも……「きちんとした服」ではなかったが。
80 : ◆1UOAiS.xYWtC :2012/03/27(火) 03:03:44.60 ID:h7sEMOtHo
勇者「堕女神はいつも服着てるよな?……あと、兵士とか使用人も」
サキュバスA「兵士や使用人は、ユニフォームとしての側面が強いですわね。下着の色さえ統一されてますわ」
勇者「それはそれでつまらんな」
サキュバスA「よろしければ、ご覧になります?……私の、下着」
勇者「どうせ穿いてねぇんだろ」
サキュバスA「さぁ、どうでしょうね?」
勇者「想像して愉しむ事にする。……で、聞きそびれていたんだが」
サキュバスA「はい、何でしょうか」
勇者「ワルキューレの方は、どんな調子だ」
サキュバスA「昨日は、イジメすぎてしまいましたわね。泣かせてしまいました」
勇者「ヒデーな、おい」
サキュバスA「私をイジメて泣かせたのは陛下でしょうに」
勇者「お前が欲しがるからだろ!……で、予定は?」
サキュバスA「どうしましょうか。ネタなら幾らでもありますわ」
81 : ◆1UOAiS.xYWtC :2012/03/27(火) 03:04:32.06 ID:h7sEMOtHo
勇者「……そうだな。今夜は、俺が直々に訊くとするかな」
サキュバスA「……陛下もお好きですわね」
勇者「ポチを使おうかとも思ったけど」
サキュバスA「あの秘蔵のローパーを?……心が壊れてしまいますわよ」
勇者「だよなぁ。まぁ、とにかく今夜は俺がやるよ」
サキュバスA「了解いたしましたわ。着替えのお手伝いをいたしましょうか?」
勇者「いや、いい。……しかし、服着ると印象変わるな」
サキュバスA「馬子にも……ですか?」
勇者「ヒネてんなよ」
サキュバスA「服を着たのなんて、4年ぶりですわ」
勇者「いきなり身近だな!?っていうかそれでも久しぶりすぎる!」
サキュバスA「そうそう、『あの子』は可愛い服を買うのが好きなのですけれど」
勇者「Bの事か?」
サキュバスA「ええ。リボンやフリルのたくさんついた服を買ったのですが、結局『恥ずかしい』と言って。
それを着ないで、いつも裸ですわ。勿体無い」
勇者「何でそうなるんだよ!?」
サキュバスA「ちなみに、私達は裸より下着姿を見られるのが一番恥ずかしいのです」
勇者「それは、まぁ。ちょっと分かる気がする」
82 : ◆1UOAiS.xYWtC :2012/03/27(火) 03:05:10.28 ID:h7sEMOtHo
サキュバスA「ともかく、私達は裸にあまり抵抗が無くて。陛下もいかがです?楽ですわよ?」
勇者「遠慮しとく。……しかし、今のBの話で思ったんだが」
サキュバスA「はい」
勇者「……堕女神がそういう格好したら、ちょっといいと思わないか?」
サキュバスA「…………お言葉ですが、Bちゃんや、隣女王の方が似合うのでは……」
勇者「わかってねぇな!!」ドンッ!
サキュバスA「はいっ!?」ビクッ
勇者「Bや隣女王に似合うのは当たり前なんだよ!敢えてミスマッチを狙うのがいいんだろ!?」
サキュバスA「陛下、どうなさいましたの?一体……」
勇者「いいか、想像してみろ。堕女神がピンク色のリボンだらけの服を着て」
サキュバスA「はい……」
勇者「まんざらでもなさそうに鏡の前でポーズ取ってぎこちなく笑顔を浮かべて、いきなり恥ずかしくなって我に返って」
サキュバスA「…………なるほど、確かに悪くないですわね」
勇者「だろ?」
83 : ◆1UOAiS.xYWtC :2012/03/27(火) 03:06:04.49 ID:h7sEMOtHo
サキュバスA「可愛らしさではなく、振り切ったミスマッチからくる不健康ないやらしさの方が殿方の心をくすぐると?」
勇者「そうだ。安易な記号化では得られないものもある」
サキュバスA「意外性、いや、はっきりと『似合わない』からこその到達点ですわね」
勇者「そう。堕女神に可愛い服は似合わない。絶望的に似合わない。だからこそ、惹かれるんだ」
サキュバスA「しかしそれなら、私でも良いのでは?」
勇者「いや、お前は奔放すぎる。失礼な言い方だが……その、萎える」
サキュバスA「あぁ……。つまり、普段の態度も重要なのですか?」
勇者「そう。あの硬くて真面目で知的な堕女神だからこそ、だ」
サキュバスA「ふむ。二万余年を生きても尚、殿方というのは奥が深いですわ」
勇者「そうだろう。こればかりは、どれだけ生きていても掴み切れないぞ」
サキュバスA「私も、まだまだ未熟。……いや、勉強になりましたわ。ところで」
勇者「何か」
サキュバスA「先ほどから、戸口に堕女神さんが立っていらっしゃいます」
勇者「えっ」
84 : ◆1UOAiS.xYWtC :2012/03/27(火) 03:07:04.23 ID:h7sEMOtHo
堕女神「…………」
勇者「……何か言ってくれないか」
堕女神「…………朝食の準備が整っております」
勇者「ああ、すぐ行く」
堕女神「お待ちしております。それでは」バタン
勇者「怒ってるのかな?」
サキュバスA「さぁ?」
勇者「楽しんでるだろ?」
サキュバスA「ええ、わりと」
勇者「……とりあえず、着替えるか。引き止めてすまなかった」
サキュバスA「私で良ければ、いつでも話し相手を務めさせていただきますわ」
勇者「…………しかし、本当に夜とは別人すぎるな」ゴソゴソ
サキュバスA「スッキリさせていただきましたもの。陛下もでしょう?」
勇者「……ああ、成る程。さて……。それじゃ、行くかな」
85 : ◆1UOAiS.xYWtC :2012/03/27(火) 03:07:35.93 ID:h7sEMOtHo
朝食を終えると、彼は、真っ直ぐに地下牢へと向かった。
腹ごなしの運動というには不足だが、好奇心は抑えきれない。
長い石の階段を下っていくと、反響した足音が遠く響き渡り、
それでいて、後ろから誰かがついてくるような音にも変わった。
陰鬱で恐ろしい空間へ続いている、という事からも鑑みて、ゾッとしないものがある。
単なる反響と分かっていても、そう処理するには難しい。
大袈裟な恐怖でこそないが、心から落ち着きを奪う程度には恐ろしい。
それは、世界を救った「勇者」であっても、例外ではなかった。
階段が終わりに近づくと、気配がした。
淫魔のものとも違う、ローパーとも違う、張り詰めた空気感。
懐かしい空気を肌に馴染ませながら、拷問部屋の、「彼女」を幽閉した一角に近づく。
勇者「何だ、起きてたのか?」
ワルキューレ「貴様…………。ここから、出せ」
勇者「飽きもしないヤツだな」
ワルキューレ「うるさい!……頼む……お願いだから……」
勇者「んん?」
ワルキューレ「お願いだ……ここから……出して………。出してくれ……」
鉄格子越しに、弱々しい懇願が聞こえた。
既に捕縛時の威勢などなく、折られかけた心は、体に力を注いではくれない。
立つことすらできず、ぺたんと座り込み、鉄格子に手をかけ、俯きながら声を漏らすだけ。
勇者「…………何をしに来たんだ?」
ワルキューレ「……」
勇者「……俺を、殺しにか?」
ワルキューレ「…………」
86 : ◆1UOAiS.xYWtC :2012/03/27(火) 03:08:08.12 ID:h7sEMOtHo
勇者「…………お前に、チャンスをやるよ」
ワルキューレ「何だと?」
勇者「…俺と、戦おう。一対一でな。……勝てば、自由にしてやる。俺を殺してもいい」
ワルキューレ「裏があるのか?」
勇者「ああ、あるとも。……俺が勝てば、お前の体を自由にさせてもらう。『淫魔の王』の自由にな」
ワルキューレ「……それが目的なら、今この場で処せばいいだろう。何故、そんな事を!」
勇者「……さぁな。終わったら教えてやる。……あとで、武具とお前の『力』を返させるよ」
ワルキューレ「何を企んでいる?……私を辱めるためか?」
勇者「強いて言えば、しのびなくてね」
ワルキューレ「何がだ!」
勇者「『ワルキューレ』の強さを確かめたい。……それだけだ」
ワルキューレ「……なめるなよ」
勇者「なめてなどいないさ。……それでは、後で会おうか」
87 : ◆1UOAiS.xYWtC :2012/03/27(火) 03:09:31.37 ID:h7sEMOtHo
勇者「……という訳で、彼女に力を返してやってくれ」
堕女神「は?」
勇者「武具も返して、中庭へ連れて来てくれ。……これは、『決闘』なんだ」
堕女神「…ご命令とあらば。しかし、何故です?そんな事をする理由が?」
勇者「聞かなきゃ気が済まないのか」
堕女神「……お許しください。口が過ぎました」
勇者「いや、いい。ちゃんと説明するさ」
堕女神「……陛下の武具は?」
勇者「剣だけでいい。……適当に持ってきてくれ」
堕女神「お言葉ですが、『ワルキューレ』を相手にそれは不用心かと」
勇者「一番いいのを頼む」
堕女神「はい、分かりました」
勇者「頼む。……なぁ、堕女神」
堕女神「はい、何でしょう」
88 : ◆1UOAiS.xYWtC :2012/03/27(火) 03:10:11.65 ID:h7sEMOtHo
勇者「怒っているのか?朝の事」
堕女神「…………いえ」
勇者「悪く言っていた訳じゃないんだ」
堕女神「それは、分かっております」
勇者「『どうして戦うのか』って訊いたな」
堕女神「はい」
勇者「……俺も、何度もそう思った。ほかにも道があるはずなのに、何で戦うんだろう、ってね」
堕女神「?」
勇者「…ああ、いや。人間界の話だ」
堕女神「……人間は元来『奪いたがる』ものだからでは?」
勇者「つまり俺が、あのワルキューレから何かを奪いたがっていると言うのか」
堕女神「いえ、そのような……」
勇者「……いや、そうかもな。奪う奴と、奪われまいとする奴がいて。それが単純な真実なのかもな」
堕女神「だとすれば、それは幾千の時を経ても変わらないのですね」
勇者「何を、かは変わるだろう。領土?鉱脈?あるいは、生活を豊かにするための新しい資源?」
堕女神「あるいは……恐ろしい武器を生み出すための、『何か』など?」
勇者「淫魔の国の王になったわけだが」
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