魔王「世界の半分はやらぬが、淫魔の国をくれてやろう」
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927 : ◆1UOAiS.xYWtC :2011/12/05(月) 02:06:50.35 ID:lDlhPoeEo
旅の途中、『魔法使い』が病に倒れ、『戦士』と『僧侶』とともに薬草を採りに行った。
冗談のような体躯を持つ氷の巨人を打ち倒し、間一髪のところで魔法使いの命は助かった。
ある古城では、『僧侶』が吸血鬼に浚われてしまった。
吸血鬼が彼女の首筋へ歯を立てる寸前に間に合い、その吸血鬼は灰と化した。
またある時は、『戦士』と『勇者』が領主に囚われてしまった。
処刑される前日、内通者を得た魔法使いと僧侶に救出され、領主に取り付いた魔物を倒す事ができた。
数え上げる事も億劫なほどの、命の危険。
野営すれば山賊に襲われ、海に出れば巨大な怪魚が姿を現した。
命がいくつあっても足りないほどの旅の末、魔王を倒せたとしてもあるのは戦乱。
強く精悍な『勇者』の頬を、
涙が一筋流れ落ちる。
ひどく虚しく、そしてどこまでも哀しい。
窓から離れ、椅子に腰掛ける。
誰もが『勇者』の勝利を信じ、応援していた。
二人の国王は、勇者が勝つ事を計算に入れた上で、『戦争』の計画を立てていた。
自分は、いったい。
何のために、戦ってきたのだろう。
928 : ◆1UOAiS.xYWtC :2011/12/05(月) 02:31:34.76 ID:lDlhPoeEo
勇者「…………ああ、もう」
落ち込んでいくしかない思考に区切りをつけ、立ち上がる。
魔王だけのせいではないが、どうにも暗く、唾液が苦くなるようだ。
勇者「どっちにせよ、引き返せないんだ」
旅の最中、出会った人々の顔を思い浮かべる。
渋い顔をしていたが、襲ってきた怪魚を倒してから、勇者の為に船を使わせてくれるようになった船長。
コボルトの被害に悩んでいた、ある村の長。
ダンジョンの奥深くから助け出した、エルフの娘。
勇者の生まれた国の、この世界の住人と比べても見劣りしないほど美しい姫君。
何の解決にもなりはしないが、ネジを締めなおす事はできた。
部屋を出て、どこへともなく歩いていく。
気の赴くまま、城内を散策しようと。
929 : ◆1UOAiS.xYWtC :2011/12/05(月) 02:57:52.66 ID:lDlhPoeEo
見て回ると、やはり淫魔の国の城と言うにふさわしい。
男女の交合の絵画が、廊下を彩っている。
その中には、『神』と『人』との交わりを描くものもあった。
どれも悪趣味ではなく、芸術作品として完成されていた。
それこそ、芸術に対し造詣が深くない勇者さえ、魅入ってしまうほど。
勇者「……ふーむ」
一つの絵画が目に留まった。
描かれているのは、豪華な寝台に寝そべる若い男に這い寄る淫魔。
その淫魔は、どうにも見覚えがあった。
勇者「これって……どう見ても……」
すぐに、その正体は分かった。
絵の中の淫魔は、サキュバスAに似ているのだ。
蒼い肌も、上質のアメジストのような瞳も、ねじれて天を向いた角も。
いや、これは本人と言っても良い。
930 : ◆1UOAiS.xYWtC :2011/12/05(月) 03:28:02.61 ID:lDlhPoeEo
サキュバスA「……気になります?」
勇者「うぉっ!?」
いきなり後ろからかけられた声に、驚いてしまう。
すぐに後ろを振り返り――そしてすぐ、絵画と見比べた。
サキュバスA「…これ、確かに描かれてるのは私ですよ。あの第二皇子は、中々に精力に溢れていました」
勇者「……ちなみに訊くが、これはいつの事だ?」
サキュバスA「今から……1039年前ですね」
勇者「相変わらずケタが凄いな」
サキュバスA「この時は、ただ彼の童貞を奪っただけですよ」
勇者「ただ、で済ますあたり更に凄いな」
サキュバスA「まぁ、いい思い出ですよ。……それはそうと、厨房に行ってみては?」
931 : ◆1UOAiS.xYWtC :2011/12/05(月) 03:46:54.75 ID:lDlhPoeEo
勇者「何か面白いものでもあるのか?」
サキュバスA「ええ。……くれぐれも、見つからないように?」
勇者「何なんだ?」
サキュバスA「行けば分かりますわ。…ふふ」
勇者「……そこまで言うなら」
サキュバスA「きっと驚きますよ」
勇者「堕女神が、『おいしくなぁれ』とでも唱えながら仕込みをしてるのか?」
サキュバスA「…………」
勇者「おい」
サキュバスA「…そういう日もありましたね、確か」
勇者「何か、どんどんイメージが崩れていく」
サキュバスA「い、いえ。……ともかく、行ってみてください」
勇者「……分かった」
932 : ◆1UOAiS.xYWtC :2011/12/05(月) 04:11:03.74 ID:lDlhPoeEo
物陰から、厨房を覗き込む。
広い厨房の中には、堕女神と、手伝いが二人ほど。
堕女神は大鍋の前から離れず、火加減を見ながら、ときおり灰汁を掬っているようだ。
堕女神「……もう少し、塩……?」
言って、塩を一つまみ投入する。
かき混ぜ、小皿にスープを取る。
左手で小皿を口元に運び、啜りこんだ。
堕女神「…良いでしょう」
得心がいったか、大鍋をかき混ぜながら小皿を置く。
見ていれば、たまに唇に指先を当て、俯いていた。
何日か前の朝食の時にも、その様子は見かけた
彼女の癖なのか、それとも、つい最近になってからなのか。
それは、勇者には分からない。
堕女神「……『美味しい』と、言ってくださるでしょうか」
灰汁を掬いながら、一人呟く。
その様子を見て、勇者は顔を引っ込め、厨房から離れて行った。
936 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(栃木県) :2011/12/05(月) 04:17:36.83 ID:Kk1PVjVno
堕女神可愛すぎわろた
941 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(長屋) :2011/12/05(月) 12:37:28.79 ID:HX1GTn1Ho
うん、やっぱり面白い
みんな可愛い。勇者がんばれ。
943 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です) :2011/12/05(月) 13:03:14.33 ID:i3YEN86DO
堕女神が可愛すぎて生きてるのが辛い
944 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(鹿児島県) :2011/12/05(月) 18:18:19.71 ID:xswfdChe0
堕女神が可愛すぎて生きる希望を見つけた
945 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です) :2011/12/05(月) 18:24:31.03 ID:urRTHHTQo
堕女神が可愛すぎて生きていく理由が見つかった
963 : ◆1UOAiS.xYWtC :2011/12/06(火) 01:12:12.56 ID:H3OHunjxo
勇者「…………………」
サキュバスA「あら、陛下。ご覧になられましたか?」
勇者「……ああ」
サキュバスA「いかがでした?」
勇者「もう、何つーの。『お前誰だ』って感じ」
サキュバスA「可愛いでしょう?……陛下も罪なヒトですわね、本当に」
勇者「別に怒らないけど、お前は本当にアレだな、言葉遣いから何から」
サキュバスA「私をそうさせたのは陛下ですわ」
勇者「それも俺のせいか?」
サキュバスA「ええ」
勇者「即答かよ」
サキュバスA「しおらしく振舞うのもわざとらしいでしょう?」
964 : ◆1UOAiS.xYWtC :2011/12/06(火) 01:26:57.92 ID:H3OHunjxo
勇者「自由な奴だな。初日とは大違いだ」
サキュバスA「初日……?」
勇者「ああ、いやこっちの話」
サキュバスA「?」
勇者「ともかく、五日前とは全然違うぞお前」
サキュバスA「というより、これが素ですので」
勇者「なぜ演じるのを止めたんだ?」
サキュバスA「……今の陛下なら、受け入れてくれると思いましたので」
勇者「…何だって?」
サキュバスA「何故でしょうね。自分でもよく判りませんわ」
勇者「………まぁ、続きは今夜だな」
サキュバスA「さてと、そろそろお昼ですわね。……それでは、失礼致します」
965 : ◆1UOAiS.xYWtC :2011/12/06(火) 01:59:43.13 ID:H3OHunjxo
勇者「…何だと言うんだ」
メイド「陛下、こちらにいらしたのですか?」
勇者「何だ、どうした?」
メイド「はい。お食事の準備が整いましたのでお呼びに」
勇者「分かった、すぐ行くよ」
メイド「沐浴の準備も済んでおりますので、いつでもどうぞ」
勇者「ありがとう。……やっぱり、我が家が一番、か」
966 : ◆1UOAiS.xYWtC :2011/12/06(火) 02:17:20.25 ID:H3OHunjxo
食事中
勇者「……なぁ」
堕女神「はい、何でしょう」
勇者「見すぎ」
堕女神「…失礼しました」
勇者「………」ズズ
堕女神「お味はいかがでしょうか」
勇者「美味いよ。視察のはずが色々と回るはめになったけど、これが一番だな」
堕女神「勿体無きお言葉です」
勇者「それだけか?」
堕女神「と、申されますと?」
勇者「……スープを火にかけながら、『おいしくなぁれ☆』って」
堕女神「そんな事は言ってません」
967 : ◆1UOAiS.xYWtC :2011/12/06(火) 02:36:56.89 ID:H3OHunjxo
勇者「……言ってないのか、残念」
堕女神「私はどういう位置付けなんですか」
勇者「それはともかく、さっきから口元が緩んでるな」
堕女神「………いえ」
勇者「今さら引き結んでも手遅れだ」
堕女神「…………」
勇者「話を変えるが、この後何か予定は入ってるのか?」
堕女神「いえ。予定では今頃南方の砦の視察から帰る途中ですので。今日は、体をお休めください」
勇者「…言葉に甘えるよ。流石に、色々と堪えた」
堕女神「お食事が済みましたら、体を清めて、少し眠るがよろしいかと」
968 : ◆1UOAiS.xYWtC :2011/12/06(火) 02:55:46.20 ID:H3OHunjxo
勇者「そうするかな。……さて、ご馳走様」
堕女神「……残さず、食べて下さるのですね」
勇者「…?」
堕女神「私の作ったものを、残さずに」
勇者「当たり前だろ?」
堕女神「あの時、褒めて下さいましたね」
勇者「それが?」
堕女神「………貴方は、『誰』ですか?」
喉の奥、うなじから上の辺りが重く、震えた。
突飛すぎる。
そのきっかけも、言葉も、全てが予想外すぎる。
彼女の料理を褒め、そして残さず平らげた。
それが―――彼女には、違和感だったと。
969 : ◆1UOAiS.xYWtC :2011/12/06(火) 03:21:35.02 ID:H3OHunjxo
勇者「質問の意味が、分からない……な」
堕女神「あまりにも、違いすぎるのです」
勇者「え…?」
堕女神「隣国に対しての措置。私に対しての態度。……何もかもが」
勇者「…………」
堕女神「……差し出がましい事とは存じますが、どうかお答えを。……貴方は、『誰』なのですか?」
勇者「……俺、は」
堕女神「…はい」
勇者「上手くは説明できない。明日の夜、部屋に来てくれ。……そこでなら、全てを話せる」
堕女神「明日?」
勇者「……ああ。明日が、俺が『ここ』にいられる、最後の日だ」
堕女神「……分かりました」
972 : ◆1UOAiS.xYWtC :2011/12/06(火) 03:49:36.79 ID:H3OHunjxo
勇者「『俺』が嫌いか?」
堕女神「…………」
勇者「まぁ、いい。それも、明日だ」
堕女神「はい」
勇者「……だが、信じてくれ。お前の料理は、本当に美味かったんだ」
堕女神「そう……申されても」
勇者「今までに食べたどんなものよりも、美味かった。『勇者』をもてなす為の晩餐じゃない。
誰かが、心を込めて作ってくれる料理。……美味かった」
堕女神「……」
勇者「それじゃあ、な。……少し休んだら、風呂に入って少し眠るよ」
973 : ◆1UOAiS.xYWtC :2011/12/06(火) 04:28:18.53 ID:H3OHunjxo
少しの休息の後、勇者は浴場へ向かった。
二回目だというのに、不釣合いに広い浴場は、馴染んだ我が家の風呂そのものだった。
湯煙の中、適温に保たれた湯に体を沈める。
肌から染み入るような、体表から毒素が抜けるような、何とも言えない至福の時。
一瞬の至福の時を超えると、重苦しく、斧刃のように心に圧し掛かる事実。
明日の夜に眠り、目が覚めると自分は消えている。
魔王の前に、対峙する事になる。
それを今さら恐れたりはしない。
魔王を倒すという気概は、微塵も薄れていない。
だが、失われる。
この世界の、全てを。
堕女神の料理を味わえない。
サキュバス達との交合の快楽も。
この素晴らしく満たされた時間の、全てが。
魔王「世界の半分はやらぬが、淫魔の国をくれてやろう」
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1323147951/
1 : ◆1UOAiS.xYWtC :2011/12/06(火) 14:05:52.02 ID:H3OHunjxo
前スレ
ttp://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1321385276/
登場人物
勇者:文字通り。魔王城でスレタイな事態になって、七日間のお試し体験中。現在六日目。
堕女神:淫魔の国の王の身の回りの世話をしている。態度が硬いが、実はキス魔。料理も得意な元・”愛”の女神。
サキュバスA:おちょくるような態度を取るお姉さんタイプのサキュバス。実はMの20942歳。
サキュバスB:精神年齢低めのサキュバス。王にガチ惚れしてて色々悩む。3418歳。
隣女王:隣国の淫魔を統べる女王。幼い姿のまま成長しない特性を持つ、褐色銀髪ついでに貧乳の15歳。真面目だが本性は……
魔王:勇者の動向を全て見ている。正直、さっさと快楽に溺れて堕ちてくれないかと思ってる。
オーク:レイプ要員。空気も読める。
ローパー:触手要員。ちょっとだけ芸もできる。
注意
・>>1は遅筆です。書き溜めもろくにできないのでご了承下さい
・見て下さった日にエロ成分が無くてもご容赦を
39 : ◆1UOAiS.xYWtC :2011/12/07(水) 03:35:17.46 ID:5snW6QyYo
勇者「一ヶ月って言えば良かったな」
冗談めかして、鼻で笑いながら漏らす。
無論、本気ではない。
ただ、あまりに短くて。
せっかく、あの堕ちた女神も柔らかい態度を見せるようになったのに。
サキュバス達とも、気のおけない付き合いができるようになったのに。
この世界を取り巻く環境と、力関係が理解できてきたのに。
それが、あまりに惜しい。
勇者「はぁ……」
大きな溜め息が、誰もいない浴場に響く。
一人ではあまりにも広い。
勇者「上がろう、どうにも今日は落ちるな。……少し、寝よう」
水面を波立たせて、立ち上がる。
その時、踏み締めた床の感覚が消えた。
鼻の奥から頭痛が昇って来て、それが頭頂に達するのを感じた途端、視界が歪んだ。
次に感じたのは、したたかに左肩を強打する痛みと、床の冷たさ。
最後に――少しずつ、暗転していく世界。
42 : ◆1UOAiS.xYWtC :2011/12/07(水) 03:52:26.66 ID:5snW6QyYo
誰かの、声が聞こえた。
無意識下の幻聴なのか、それとも、本当に誰かが語りかけてくるのか。
無造作に広がる茫漠とした韻律が、”こより”を作るかのように徐々にはっきりとしてくる。
???「――起きてください」
勇者「誰、だ」
???「私を、お忘れですか?……『勇者』よ」
勇者「…お前は」
???「貴方に力を授け――いえ、目覚めさせた存在」
勇者「……『女神』だな。堕ちていない方の」
???「………」
勇者「これは、夢か?……今度は、一体何を押し付けてくるんだ?」
45 : ◆1UOAiS.xYWtC :2011/12/07(水) 04:22:12.53 ID:5snW6QyYo
女神「……ごめんなさい」
勇者「…謝る前に、何に対してなのか言ってくれよ」
女神「貴方を……『勇者』にしてしまった事に」
勇者「それの何が負い目だ?」
女神「魔王の災いを止める為に、私は正しい事をしたと思っています。……『勇者』を覚醒させるしかなかったのですから」
勇者「……謝りたいのはそれじゃない、か」
女神「『勇者』でなければいけなかったのです。古来より、『魔王』は『勇者』に打ち倒される。その因縁は、私とて抗えません」
勇者「……………」
女神「絶対の真理なのです。『魔王から逃げる事ができない』のと同じように」
勇者「……ふん」
女神「……?」
勇者「今言ったそれは、違うんだ。俺は、旅の中でそれを知った」
女神「え?」
46 : ◆1UOAiS.xYWtC :2011/12/07(水) 04:37:45.80 ID:5snW6QyYo
勇者「魔王が怖くて逃げようとして、それでも逃げられずに殺されてしまう人も、確かにいるさ」
女神「……」
勇者「…でも、そうじゃなかった人達もいっぱいいた。無名の兵士だったり、叩き上げの十人隊長だったり、あるいは『父親』だったり」
女神「と、言いますと……?」
勇者「目の前に、世界を恐怖に陥れる『魔王』。一度逃してしまえば、次に姿を見られるのはいつなのか。
そもそも、命があるうちに対峙する事ができるのか分からない。そして、今自分は生きて目の前にいる」
女神「…………」
勇者「…逃げる事など考えられなくなる人がいる。ここで倒せば、それで世界は救われる。
――だから、考えるんだ。『魔王から、逃げるわけにはいかない』って」
女神「それは……無謀に過ぎます」
勇者「分からないよ。貴女には。……ともかく、『魔王から逃げられない』は、魔王の言葉じゃない。俺達の、人間の言葉なんだ」
48 : ◆1UOAiS.xYWtC :2011/12/07(水) 04:51:42.83 ID:5snW6QyYo
女神「……つまり?」
勇者「血を引く勇者の末裔ではなくても、『魔王』と戦う事はできるんだ。岩に刺さった剣を抜けなくても、雷電の剣撃を扱えなくても」
女神「……ですが……」
勇者「上手く言えないが。……『勇者』は、任命されるものじゃない。自分で『勇者』になるんだ」
女神「………」
勇者「ある若い新兵が、魔王に一太刀を浴びせ、血を流させるのを見た事がある。……彼は死んでしまったけれど、
その時は紛れも無く……『勇者』だったよ」
女神「そんな……非現実的な」
勇者「心配しなくていい。それでも俺は、魔王を倒す。……だから、もう。『勇者』を任ずる必要は、無いんだ」
女神「…初めて、です。そのような言葉を頂いたのは」
勇者「そうか。ともかく、世界は……貴女達が思うより、『大丈夫』なんだって事を俺は言いたいんだ」
女神「……ごめんなさい。あなたの人生を、奪ってしまって」
旅の途中、『魔法使い』が病に倒れ、『戦士』と『僧侶』とともに薬草を採りに行った。
冗談のような体躯を持つ氷の巨人を打ち倒し、間一髪のところで魔法使いの命は助かった。
ある古城では、『僧侶』が吸血鬼に浚われてしまった。
吸血鬼が彼女の首筋へ歯を立てる寸前に間に合い、その吸血鬼は灰と化した。
またある時は、『戦士』と『勇者』が領主に囚われてしまった。
処刑される前日、内通者を得た魔法使いと僧侶に救出され、領主に取り付いた魔物を倒す事ができた。
数え上げる事も億劫なほどの、命の危険。
野営すれば山賊に襲われ、海に出れば巨大な怪魚が姿を現した。
命がいくつあっても足りないほどの旅の末、魔王を倒せたとしてもあるのは戦乱。
強く精悍な『勇者』の頬を、
涙が一筋流れ落ちる。
ひどく虚しく、そしてどこまでも哀しい。
窓から離れ、椅子に腰掛ける。
誰もが『勇者』の勝利を信じ、応援していた。
二人の国王は、勇者が勝つ事を計算に入れた上で、『戦争』の計画を立てていた。
自分は、いったい。
何のために、戦ってきたのだろう。
928 : ◆1UOAiS.xYWtC :2011/12/05(月) 02:31:34.76 ID:lDlhPoeEo
勇者「…………ああ、もう」
落ち込んでいくしかない思考に区切りをつけ、立ち上がる。
魔王だけのせいではないが、どうにも暗く、唾液が苦くなるようだ。
勇者「どっちにせよ、引き返せないんだ」
旅の最中、出会った人々の顔を思い浮かべる。
渋い顔をしていたが、襲ってきた怪魚を倒してから、勇者の為に船を使わせてくれるようになった船長。
コボルトの被害に悩んでいた、ある村の長。
ダンジョンの奥深くから助け出した、エルフの娘。
勇者の生まれた国の、この世界の住人と比べても見劣りしないほど美しい姫君。
何の解決にもなりはしないが、ネジを締めなおす事はできた。
部屋を出て、どこへともなく歩いていく。
気の赴くまま、城内を散策しようと。
929 : ◆1UOAiS.xYWtC :2011/12/05(月) 02:57:52.66 ID:lDlhPoeEo
見て回ると、やはり淫魔の国の城と言うにふさわしい。
男女の交合の絵画が、廊下を彩っている。
その中には、『神』と『人』との交わりを描くものもあった。
どれも悪趣味ではなく、芸術作品として完成されていた。
それこそ、芸術に対し造詣が深くない勇者さえ、魅入ってしまうほど。
勇者「……ふーむ」
一つの絵画が目に留まった。
描かれているのは、豪華な寝台に寝そべる若い男に這い寄る淫魔。
その淫魔は、どうにも見覚えがあった。
勇者「これって……どう見ても……」
すぐに、その正体は分かった。
絵の中の淫魔は、サキュバスAに似ているのだ。
蒼い肌も、上質のアメジストのような瞳も、ねじれて天を向いた角も。
いや、これは本人と言っても良い。
930 : ◆1UOAiS.xYWtC :2011/12/05(月) 03:28:02.61 ID:lDlhPoeEo
サキュバスA「……気になります?」
勇者「うぉっ!?」
いきなり後ろからかけられた声に、驚いてしまう。
すぐに後ろを振り返り――そしてすぐ、絵画と見比べた。
サキュバスA「…これ、確かに描かれてるのは私ですよ。あの第二皇子は、中々に精力に溢れていました」
勇者「……ちなみに訊くが、これはいつの事だ?」
サキュバスA「今から……1039年前ですね」
勇者「相変わらずケタが凄いな」
サキュバスA「この時は、ただ彼の童貞を奪っただけですよ」
勇者「ただ、で済ますあたり更に凄いな」
サキュバスA「まぁ、いい思い出ですよ。……それはそうと、厨房に行ってみては?」
931 : ◆1UOAiS.xYWtC :2011/12/05(月) 03:46:54.75 ID:lDlhPoeEo
勇者「何か面白いものでもあるのか?」
サキュバスA「ええ。……くれぐれも、見つからないように?」
勇者「何なんだ?」
サキュバスA「行けば分かりますわ。…ふふ」
勇者「……そこまで言うなら」
サキュバスA「きっと驚きますよ」
勇者「堕女神が、『おいしくなぁれ』とでも唱えながら仕込みをしてるのか?」
サキュバスA「…………」
勇者「おい」
サキュバスA「…そういう日もありましたね、確か」
勇者「何か、どんどんイメージが崩れていく」
サキュバスA「い、いえ。……ともかく、行ってみてください」
勇者「……分かった」
物陰から、厨房を覗き込む。
広い厨房の中には、堕女神と、手伝いが二人ほど。
堕女神は大鍋の前から離れず、火加減を見ながら、ときおり灰汁を掬っているようだ。
堕女神「……もう少し、塩……?」
言って、塩を一つまみ投入する。
かき混ぜ、小皿にスープを取る。
左手で小皿を口元に運び、啜りこんだ。
堕女神「…良いでしょう」
得心がいったか、大鍋をかき混ぜながら小皿を置く。
見ていれば、たまに唇に指先を当て、俯いていた。
何日か前の朝食の時にも、その様子は見かけた
彼女の癖なのか、それとも、つい最近になってからなのか。
それは、勇者には分からない。
堕女神「……『美味しい』と、言ってくださるでしょうか」
灰汁を掬いながら、一人呟く。
その様子を見て、勇者は顔を引っ込め、厨房から離れて行った。
936 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(栃木県) :2011/12/05(月) 04:17:36.83 ID:Kk1PVjVno
堕女神可愛すぎわろた
941 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(長屋) :2011/12/05(月) 12:37:28.79 ID:HX1GTn1Ho
うん、やっぱり面白い
みんな可愛い。勇者がんばれ。
943 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です) :2011/12/05(月) 13:03:14.33 ID:i3YEN86DO
堕女神が可愛すぎて生きてるのが辛い
944 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(鹿児島県) :2011/12/05(月) 18:18:19.71 ID:xswfdChe0
堕女神が可愛すぎて生きる希望を見つけた
945 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です) :2011/12/05(月) 18:24:31.03 ID:urRTHHTQo
堕女神が可愛すぎて生きていく理由が見つかった
963 : ◆1UOAiS.xYWtC :2011/12/06(火) 01:12:12.56 ID:H3OHunjxo
勇者「…………………」
サキュバスA「あら、陛下。ご覧になられましたか?」
勇者「……ああ」
サキュバスA「いかがでした?」
勇者「もう、何つーの。『お前誰だ』って感じ」
サキュバスA「可愛いでしょう?……陛下も罪なヒトですわね、本当に」
勇者「別に怒らないけど、お前は本当にアレだな、言葉遣いから何から」
サキュバスA「私をそうさせたのは陛下ですわ」
勇者「それも俺のせいか?」
サキュバスA「ええ」
勇者「即答かよ」
サキュバスA「しおらしく振舞うのもわざとらしいでしょう?」
964 : ◆1UOAiS.xYWtC :2011/12/06(火) 01:26:57.92 ID:H3OHunjxo
勇者「自由な奴だな。初日とは大違いだ」
サキュバスA「初日……?」
勇者「ああ、いやこっちの話」
サキュバスA「?」
勇者「ともかく、五日前とは全然違うぞお前」
サキュバスA「というより、これが素ですので」
勇者「なぜ演じるのを止めたんだ?」
サキュバスA「……今の陛下なら、受け入れてくれると思いましたので」
勇者「…何だって?」
サキュバスA「何故でしょうね。自分でもよく判りませんわ」
勇者「………まぁ、続きは今夜だな」
サキュバスA「さてと、そろそろお昼ですわね。……それでは、失礼致します」
965 : ◆1UOAiS.xYWtC :2011/12/06(火) 01:59:43.13 ID:H3OHunjxo
勇者「…何だと言うんだ」
メイド「陛下、こちらにいらしたのですか?」
勇者「何だ、どうした?」
メイド「はい。お食事の準備が整いましたのでお呼びに」
勇者「分かった、すぐ行くよ」
メイド「沐浴の準備も済んでおりますので、いつでもどうぞ」
勇者「ありがとう。……やっぱり、我が家が一番、か」
966 : ◆1UOAiS.xYWtC :2011/12/06(火) 02:17:20.25 ID:H3OHunjxo
食事中
勇者「……なぁ」
堕女神「はい、何でしょう」
勇者「見すぎ」
堕女神「…失礼しました」
勇者「………」ズズ
堕女神「お味はいかがでしょうか」
勇者「美味いよ。視察のはずが色々と回るはめになったけど、これが一番だな」
堕女神「勿体無きお言葉です」
勇者「それだけか?」
堕女神「と、申されますと?」
勇者「……スープを火にかけながら、『おいしくなぁれ☆』って」
堕女神「そんな事は言ってません」
967 : ◆1UOAiS.xYWtC :2011/12/06(火) 02:36:56.89 ID:H3OHunjxo
勇者「……言ってないのか、残念」
堕女神「私はどういう位置付けなんですか」
勇者「それはともかく、さっきから口元が緩んでるな」
堕女神「………いえ」
勇者「今さら引き結んでも手遅れだ」
堕女神「…………」
勇者「話を変えるが、この後何か予定は入ってるのか?」
堕女神「いえ。予定では今頃南方の砦の視察から帰る途中ですので。今日は、体をお休めください」
勇者「…言葉に甘えるよ。流石に、色々と堪えた」
堕女神「お食事が済みましたら、体を清めて、少し眠るがよろしいかと」
968 : ◆1UOAiS.xYWtC :2011/12/06(火) 02:55:46.20 ID:H3OHunjxo
勇者「そうするかな。……さて、ご馳走様」
堕女神「……残さず、食べて下さるのですね」
勇者「…?」
堕女神「私の作ったものを、残さずに」
勇者「当たり前だろ?」
堕女神「あの時、褒めて下さいましたね」
勇者「それが?」
堕女神「………貴方は、『誰』ですか?」
喉の奥、うなじから上の辺りが重く、震えた。
突飛すぎる。
そのきっかけも、言葉も、全てが予想外すぎる。
彼女の料理を褒め、そして残さず平らげた。
それが―――彼女には、違和感だったと。
969 : ◆1UOAiS.xYWtC :2011/12/06(火) 03:21:35.02 ID:H3OHunjxo
勇者「質問の意味が、分からない……な」
堕女神「あまりにも、違いすぎるのです」
勇者「え…?」
堕女神「隣国に対しての措置。私に対しての態度。……何もかもが」
勇者「…………」
堕女神「……差し出がましい事とは存じますが、どうかお答えを。……貴方は、『誰』なのですか?」
勇者「……俺、は」
堕女神「…はい」
勇者「上手くは説明できない。明日の夜、部屋に来てくれ。……そこでなら、全てを話せる」
堕女神「明日?」
勇者「……ああ。明日が、俺が『ここ』にいられる、最後の日だ」
堕女神「……分かりました」
972 : ◆1UOAiS.xYWtC :2011/12/06(火) 03:49:36.79 ID:H3OHunjxo
勇者「『俺』が嫌いか?」
堕女神「…………」
勇者「まぁ、いい。それも、明日だ」
堕女神「はい」
勇者「……だが、信じてくれ。お前の料理は、本当に美味かったんだ」
堕女神「そう……申されても」
勇者「今までに食べたどんなものよりも、美味かった。『勇者』をもてなす為の晩餐じゃない。
誰かが、心を込めて作ってくれる料理。……美味かった」
堕女神「……」
勇者「それじゃあ、な。……少し休んだら、風呂に入って少し眠るよ」
973 : ◆1UOAiS.xYWtC :2011/12/06(火) 04:28:18.53 ID:H3OHunjxo
少しの休息の後、勇者は浴場へ向かった。
二回目だというのに、不釣合いに広い浴場は、馴染んだ我が家の風呂そのものだった。
湯煙の中、適温に保たれた湯に体を沈める。
肌から染み入るような、体表から毒素が抜けるような、何とも言えない至福の時。
一瞬の至福の時を超えると、重苦しく、斧刃のように心に圧し掛かる事実。
明日の夜に眠り、目が覚めると自分は消えている。
魔王の前に、対峙する事になる。
それを今さら恐れたりはしない。
魔王を倒すという気概は、微塵も薄れていない。
だが、失われる。
この世界の、全てを。
堕女神の料理を味わえない。
サキュバス達との交合の快楽も。
この素晴らしく満たされた時間の、全てが。
魔王「世界の半分はやらぬが、淫魔の国をくれてやろう」
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1323147951/
前スレ
ttp://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1321385276/
登場人物
勇者:文字通り。魔王城でスレタイな事態になって、七日間のお試し体験中。現在六日目。
堕女神:淫魔の国の王の身の回りの世話をしている。態度が硬いが、実はキス魔。料理も得意な元・”愛”の女神。
サキュバスA:おちょくるような態度を取るお姉さんタイプのサキュバス。実はMの20942歳。
サキュバスB:精神年齢低めのサキュバス。王にガチ惚れしてて色々悩む。3418歳。
隣女王:隣国の淫魔を統べる女王。幼い姿のまま成長しない特性を持つ、褐色銀髪ついでに貧乳の15歳。真面目だが本性は……
魔王:勇者の動向を全て見ている。正直、さっさと快楽に溺れて堕ちてくれないかと思ってる。
オーク:レイプ要員。空気も読める。
ローパー:触手要員。ちょっとだけ芸もできる。
注意
・>>1は遅筆です。書き溜めもろくにできないのでご了承下さい
・見て下さった日にエロ成分が無くてもご容赦を
39 : ◆1UOAiS.xYWtC :2011/12/07(水) 03:35:17.46 ID:5snW6QyYo
勇者「一ヶ月って言えば良かったな」
冗談めかして、鼻で笑いながら漏らす。
無論、本気ではない。
ただ、あまりに短くて。
せっかく、あの堕ちた女神も柔らかい態度を見せるようになったのに。
サキュバス達とも、気のおけない付き合いができるようになったのに。
この世界を取り巻く環境と、力関係が理解できてきたのに。
それが、あまりに惜しい。
勇者「はぁ……」
大きな溜め息が、誰もいない浴場に響く。
一人ではあまりにも広い。
勇者「上がろう、どうにも今日は落ちるな。……少し、寝よう」
水面を波立たせて、立ち上がる。
その時、踏み締めた床の感覚が消えた。
鼻の奥から頭痛が昇って来て、それが頭頂に達するのを感じた途端、視界が歪んだ。
次に感じたのは、したたかに左肩を強打する痛みと、床の冷たさ。
最後に――少しずつ、暗転していく世界。
42 : ◆1UOAiS.xYWtC :2011/12/07(水) 03:52:26.66 ID:5snW6QyYo
誰かの、声が聞こえた。
無意識下の幻聴なのか、それとも、本当に誰かが語りかけてくるのか。
無造作に広がる茫漠とした韻律が、”こより”を作るかのように徐々にはっきりとしてくる。
???「――起きてください」
勇者「誰、だ」
???「私を、お忘れですか?……『勇者』よ」
勇者「…お前は」
???「貴方に力を授け――いえ、目覚めさせた存在」
勇者「……『女神』だな。堕ちていない方の」
???「………」
勇者「これは、夢か?……今度は、一体何を押し付けてくるんだ?」
45 : ◆1UOAiS.xYWtC :2011/12/07(水) 04:22:12.53 ID:5snW6QyYo
女神「……ごめんなさい」
勇者「…謝る前に、何に対してなのか言ってくれよ」
女神「貴方を……『勇者』にしてしまった事に」
勇者「それの何が負い目だ?」
女神「魔王の災いを止める為に、私は正しい事をしたと思っています。……『勇者』を覚醒させるしかなかったのですから」
勇者「……謝りたいのはそれじゃない、か」
女神「『勇者』でなければいけなかったのです。古来より、『魔王』は『勇者』に打ち倒される。その因縁は、私とて抗えません」
勇者「……………」
女神「絶対の真理なのです。『魔王から逃げる事ができない』のと同じように」
勇者「……ふん」
女神「……?」
勇者「今言ったそれは、違うんだ。俺は、旅の中でそれを知った」
女神「え?」
46 : ◆1UOAiS.xYWtC :2011/12/07(水) 04:37:45.80 ID:5snW6QyYo
勇者「魔王が怖くて逃げようとして、それでも逃げられずに殺されてしまう人も、確かにいるさ」
女神「……」
勇者「…でも、そうじゃなかった人達もいっぱいいた。無名の兵士だったり、叩き上げの十人隊長だったり、あるいは『父親』だったり」
女神「と、言いますと……?」
勇者「目の前に、世界を恐怖に陥れる『魔王』。一度逃してしまえば、次に姿を見られるのはいつなのか。
そもそも、命があるうちに対峙する事ができるのか分からない。そして、今自分は生きて目の前にいる」
女神「…………」
勇者「…逃げる事など考えられなくなる人がいる。ここで倒せば、それで世界は救われる。
――だから、考えるんだ。『魔王から、逃げるわけにはいかない』って」
女神「それは……無謀に過ぎます」
勇者「分からないよ。貴女には。……ともかく、『魔王から逃げられない』は、魔王の言葉じゃない。俺達の、人間の言葉なんだ」
48 : ◆1UOAiS.xYWtC :2011/12/07(水) 04:51:42.83 ID:5snW6QyYo
女神「……つまり?」
勇者「血を引く勇者の末裔ではなくても、『魔王』と戦う事はできるんだ。岩に刺さった剣を抜けなくても、雷電の剣撃を扱えなくても」
女神「……ですが……」
勇者「上手く言えないが。……『勇者』は、任命されるものじゃない。自分で『勇者』になるんだ」
女神「………」
勇者「ある若い新兵が、魔王に一太刀を浴びせ、血を流させるのを見た事がある。……彼は死んでしまったけれど、
その時は紛れも無く……『勇者』だったよ」
女神「そんな……非現実的な」
勇者「心配しなくていい。それでも俺は、魔王を倒す。……だから、もう。『勇者』を任ずる必要は、無いんだ」
女神「…初めて、です。そのような言葉を頂いたのは」
勇者「そうか。ともかく、世界は……貴女達が思うより、『大丈夫』なんだって事を俺は言いたいんだ」
女神「……ごめんなさい。あなたの人生を、奪ってしまって」
魔王「世界の半分はやらぬが、淫魔の国をくれてやろう」
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