淡々と兵食の話するわ
Part6
275 : 以下、名無しが深夜にお送りします :2014/10/27(月) 20:58:46 SFeiRyls
-大航海時代の海軍編-
友「そういやいつも分からなくなるんだけど、海兵隊ってあれ海軍なの?」
男「国によるね。アメリカの場合は陸海空軍や沿岸警備隊みたいに海兵隊っていう独立した軍隊だし、イギリスやスペインなんかは海軍所属だし」
友「へぇー」
男「でも、基本は海軍所属のところが多いよ。米海兵隊にしたって、独立戦争時にイギリスに同様の部隊があったから海兵隊を作ったって話だし」
友「なるほど」
276 : 以下、名無しが深夜にお送りします :2014/10/27(月) 21:00:23 SFeiRyls
男「そもそも昔の海軍は陸軍を輸送する概念がない、っていうか不可能だったしな」
友「?」
男「だってお前・・・大航海時代の船とか見てみろよこれ」
http://i.imgur.com/1mfFqaa.jpg
友「うん、ボトルシップとかでよくみる奴だ」
277 : 以下、名無しが深夜にお送りします :2014/10/27(月) 21:02:01 SFeiRyls
男「こんなの、海軍の乗組員乗せたら、もう(他の人員乗せる場所)ないじゃん」
友「たしかに」
男「だから、昔は基本海軍の人員は遠征先での陸戦も視野に入れてたんだよ。それに、大砲が出来る前は基本的に敵の船に接舷して白兵戦をする必要があったしな。それが後の海兵隊に繋がった、と」
友「なるほどねぇ・・・ていうか、こんな船で太平洋横断とか、食い物どうしてたんだろ・・・」
男「当時は今みたいに保存技術も発達してないし、栄養学も発達してなかったからな。それはもうドイヒーな有様だったようだ」
278 : 以下、名無しが深夜にお送りします :2014/10/27(月) 21:03:18 SFeiRyls
友「うーん、ぱっと思いつくのは干すか、塩に漬けるか・・・缶詰とかもないんだもんな」
男「まぁ大体そんな感じだよ。ゲームの大航海時代やったことある?」
友「あー、少しは」
男「アレに塩漬け肉ってのが出て来るだろ?基本、当時の海軍の貴重な食糧の一つとして塩漬け肉があった」
友「ほほぉ」
279 : 以下、名無しが深夜にお送りします :2014/10/27(月) 21:04:06 SFeiRyls
男「って言っても、半年以上に及ぶ航海で腐らせないようにするためには相当量の塩分に漬け込んだようだ。文献によると、当時の塩漬け肉は塩による脱水効果でまるで靴底のように固いものだったらしい」
友「これもう(どうやって食うのか)わかんねぇな」
男「基本的には塩抜き・・・と言っても、真水なんて超貴重で使えないから、網に入れて舷側からぶら下げて、海水の中に一日中浸しておくらしい」
友「塩水で塩抜きするのか・・・」(困惑)
男「まぁまだ海水の方が塩分濃度が低いからね・・・で、その肉をやはり海水で煮る。煮あがった肉は鍋から取り出すと同時に表面に白い塩の結晶が浮かび上がり、一口食べると強烈なのどの渇きを覚えたという」
友「腎臓壊れちゃ~↑う」
280 : 以下、名無しが深夜にお送りします :2014/10/27(月) 21:07:30 SFeiRyls
男「当然、当時は冷蔵庫なんかもないし、航海中は赤道付近の高温多湿の海域を通ることも多かったことから、積み込まれた食材は容赦なく腐った」
友「そらそうよ」
男「例の塩漬け肉も、カチカチになるまで塩に漬けているにも関わらずどうしてもウジが沸いてしまうので、船員たちは肉を取り出す前に樽の中の肉の上に生魚などを置いたらしい」
友「なにそれ・・・おまじない?」
男「こうすると、肉についたウジが新鮮な生魚のほうに集まってくるから、魚にウジが集まった時点でそれを捨てて、肉の方を取り出すのさ」
友「ヴォエ!!」
281 : 以下、名無しが深夜にお送りします :2014/10/27(月) 21:08:42 SFeiRyls
友「・・・もう素直に生魚のほう食えばいいじゃん」(いいじゃん)
男「そうはいっても船員全員に行きわたるだけの魚を確保するのは難しいからな。同様に、船に乗せたチーズには足が生えるとも言われていた」
友「どういうことなの・・・」
男「当然、港で積み込んだ生鮮食品にはほぼ漏れなくウジが沸く。特にチーズは表面全体にウジが蠢き、まるで棚の中でチーズが動いているように見えたことからこう言われていた」
友「ヴォエ!ヴォォエ!!」
282 : 以下、名無しが深夜にお送りします :2014/10/27(月) 21:10:04 SFeiRyls
男「主食については南北戦争の時に話したハードタックと同等のものが使用された・・・が、これもやはり保存中にコクゾウムシなどが大量に湧き、船員が口にするころには既にボロボロのスカスカになっていたという」
友「やめてくれよ・・・」(絶望)
男「船員たちはそれを食べる前にテーブルに叩き付けて中のコクゾウムシを落としたり、あるいは栄養補給がてらそのまま食べたりしたようだが、苦みもあってかなり難渋していたようだ」
友「長野県民だってそんな無茶しないだろう多分」
男「これら積み込まれた食材をぐだぐだになるまで煮込み、砂糖や酢などで味付けされたものが当時の船員の基本的な食事だったようだな」
友「腐りかけのRation・・・」
283 : 以下、名無しが深夜にお送りします :2014/10/27(月) 21:11:42 SFeiRyls
男「さらに貴重だったのはさっきも言った真水だ。当時は現在の水道水に使われているカルキのような消毒剤もなかったから、これもやはり樽の中で為す術もなく腐っていったという」
友「過酷過酷アンド過酷」
男「そもそも水源だって出港地の近くの川とかだしな。積み込んだ水は、最初はなんとか飲めるものの、出航後数日すると藻や苔が浮きドロドロの異臭を放つ状態になる。が、それらが沈殿すると一旦水の味は良くなるという」
友「やべぇよ・・・やべぇよ・・・」
男「だがそれも一時的なもので、その後は下水と呼んで差支えないレベルまで腐り果てていく水を、彼らは飲まざるを得なかったらしい」
友「おぉ、もう・・・」
284 : 以下、名無しが深夜にお送りします :2014/10/27(月) 21:13:30 SFeiRyls
男「当時の人でも腹を壊すようなシロモノだったから、せめてもの気休めとして殺菌性のあるアルコールを含んだビールやワインなどの酒類が配給されるようになったというわけだ」
友「これもうわかんねぇな」
男「まぁ、その酒にしたって納品業者のピンハネや資金不足で名ばかりの酷い品質のものだったようだ。当時船員たち間には『テムズ川の水の中で麦を洗ったり泳がせたりして引き揚げれば今まで飲んだこともないような美味いビールが飲める』なんて歌もあったそうだ」
友「ファーwwww」
友「ただし、当時は一度航海に出てしまえば半数以上が生きて故郷の土を踏むこともできないという状況がザラだったため、恐怖を紛らわすため船員に飲酒癖が付いてしまうのが常だったという」
友「悲しいなぁ」
285 : 以下、名無しが深夜にお送りします :2014/10/27(月) 21:14:36 SFeiRyls
男「で、当然こんなものしか摂取できずに問題となるのが最初にいった栄養不足だ。生鮮食品の不足による各種ビタミンの欠乏は、船員たちを深刻な病に陥れた」
友「脚気とか、壊血病とか?」
男「そう。特に船員たちに恐れられていたのが壊血病だ。壊血病に掛かると、最初は傷が治りにくくなり、徐々に歯茎などの粘膜が腐り始め歯が抜け落ち、そのうち皮膚の色も土気色になって死んでいくという原因不明の恐怖の病だったわけだ」
友「こわE」
男「船員たちはまともな治療も受けられず、腐った歯茎を自らの尿でゆすぐという酷い有様だったらしい」
友「ヴォォォォエ!!」
286 : 以下、名無しが深夜にお送りします :2014/10/27(月) 21:16:46 SFeiRyls
男「ちなみに、同時期の東洋の艦隊ではそれほど壊血病が問題になることはなかったらしい」
友「へ?何で?」
男「沿岸航海が多かったこともあると思うが、一説によると東洋では茶を日常的に摂取する習慣があったため航海中でもビタミンCが摂取できていたのではないかと言われている。日露戦争における旅順攻略戦でも見られるように、東洋では豆苗やもやしといったスプラウツ類を恒常的に食する習慣もあったしな」
友「なるほど」
男「前に言ったように脚気はビタミンB、壊血病はビタミンCの欠乏によって起きる。特にビタミンCは通常生野菜などにしか含まれないから、当時の船上でそれを得るのはほぼ不可能と言ってよかった」
287 : 以下、名無しが深夜にお送りします :2014/10/27(月) 21:19:09 SFeiRyls
友「でもさぁ・・・同じ哺乳類でも、ライオンとかは肉ばっか食っても壊血病にならないじゃん?」
男「通常哺乳類は自前でビタミンCを体内で合成できるからな・・・ビタミンCを出来ないのは一部のネズミと、人間を含めたの直鼻猿亜目だけだ」
友「えぇ・・・なんでまた」
男「そもそもそれらの動物は、かつて果物などを主食としていたことから、ビタミンCを合成する酵素が失われたと言われている」
友「もったいない・・・」
男「進化生物学においては、生存に不要な遺伝子を持つことは生物にとって無駄なコストを払う=生存競争に不利ということになるらしい。ただ、一部の鳥類についてはかつて何度かビタミンC合成機能を獲得したり喪失したことが分かってるようだが」
288 : 以下、名無しが深夜にお送りします :2014/10/27(月) 21:20:26 SFeiRyls
男「で、話がそれたが・・・当然、当時はそんなこと分かりっこないから、壊血病は未知の病として大変恐れられた。その恐怖から逃れる為、船員たちはますます酒に溺れ、当時海軍の士気や規律は大変に悪かったらしい」
友「そらそうよ」
男「そんな中、イギリス海軍のジェームズ・リンドという軍医は、船員の中でも船長などの高級船員たちはこの病の発症率が低いところに着目した」
友「どういうこと?」
男「いいもん食ってたってこと。ヒラの船員はさっき言った腐ったメシばっかくってたけど、船長クラスとなると食事用に生きた牛や鶏、それに僅かながらの野菜も積み込まれていたようだ」
289 : 以下、名無しが深夜にお送りします :2014/10/27(月) 21:21:07 SFeiRyls
友「なるほど。それでそういう人たちは航海中でもなんとか栄養補給ができたわけか」
男「ああ。そこでジェームズは実験的に船員の食事の質を上げて航海を実施してみたところ、壊血病罹患者が劇的に減ったという」
友「やったぜ」
男「これを受け1766年、南太平洋派遣の命を受けたイギリス海軍のジェームズ・クック船長は、自らの船に柑橘類やザワー・クラウトなどを積み込んだ」
友「クック船長、有能」
男「だが当時の船員たちは保守的で、クックが食べることを奨励したそれらの食品に当初は全く手を付けることがなかったという
290 : 以下、名無しが深夜にお送りします :2014/10/27(月) 21:22:09 SFeiRyls
友「なんでや!!」
男「まぁ当時はそんなもんだろう。占星術なんかの占もかなりの信憑性をもって広まってたし、壊血病の予防のためには酢で船上を洗うなんてまじない的な方法が常識とされていたわけだし」
友「えぇ・・・」(困惑)
男「そこでクック船長は、まずそう言った食物が自分たちだけが有難がって食べ、船員たちに与えないようにした。すると、船員たちは次第に自分たちにもそれを食わせるよう要求してきたという」
友「クック船長、有能。マジ有能」
291 : 以下、名無しが深夜にお送りします :2014/10/27(月) 21:23:16 SFeiRyls
男「その後3年に及んだ航海中、壊血病で死亡した船員はただの一人も出なかったという。これは18世紀当時としては奇跡といっていいレベルの出来事だった」
友「よかった・・・もう壊血病で死ぬ人はいなくなったんだね」
男「いやそれが・・・クック船長も、そこまでは気付かなかったんだな。当時、船には柑橘類やザワークラウトの他に麦汁も積み込まれたんだが、帰港後クック船長が奨励したのはあろうことかこの麦汁だったんだ」
友(アカン)
男「当時はまだザワークラウトや柑橘類こそが壊血病の予防になるとは分かってなかったからな・・・そして、残念ながらその後百年以上にわたって壊血病が船乗りたちの間から消えることはなかった」
292 : 以下、名無しが深夜にお送りします :2014/10/27(月) 21:24:31 SFeiRyls
友「保守的な割には経験則を重視しないんですね」(正論)
男「ちなみにその後は、柑橘類やザワークラウトの他、ジャガイモやトウガラシなどがヨーロッパに導入されたことにより、航海中のビタミンC不足は次第に解消されていった」
友「時間がかかったなぁ・・・」
男「ちなみに二次大戦中、英独がそれぞれの兵士の事を『ライミー』とか『キャベツ野郎』だの読んでいたのは、当時イギリス海軍は壊血病予防のためにライムを、ドイツはザワークラウトを食べていたからだという」
友「ドイツ料理ってすんごいザワークラウト使うよね。ウィンナーの付け合せとかスープにまで入ってるもん」
男「あの辺冬は野菜とれないから、長期保存できるジャガイモ含めてザワークラウトは冬の間の貴重なビタミン源だったんだよ」
293 : 以下、名無しが深夜にお送りします :2014/10/27(月) 21:25:25 SFeiRyls
友「でもさぁ・・・>>276みたいな小さい船じゃ、そんなに食糧積み込めんだろ」
男「まぁできるだけ大量に積み込むのは潜水艦なんかと同じだわな・・・当然、航海中にも補給の必要はあるし」
友「補給?」
男「例えば雨水だったり、無人島があれば上陸して島にいる鳥獣を捕獲したり」
友「無人島0円生活やないか・・・」
294 : 以下、名無しが深夜にお送りします :2014/10/27(月) 21:26:20 SFeiRyls
男「特に珍重されたのはウミガメだったようだ。動きが遅くて捕獲が容易なうえ、船上で生かしておけるから必要なときにそのまま肉にすることもできたし」
友「・・・でもさぁ、例えば周りに島がなかったり、漂流しちゃってどうにもならんくなったらどうすんの」
男「そりゃもう死を待つのみよ・・・まぁ、どちらにせよ死者は大量に出てしまうから徐々に口減らしもできるわけだし」
友「うへ」
男「まぁそれでもいよいよ!となれば、船のマストや衣服に使われていた皮革や、船内のネズミ、仲間の死体などにも手を出したようだが」
友「地獄や!!」
295 : 以下、名無しが深夜にお送りします :2014/10/27(月) 21:27:35 SFeiRyls
男「こうした場合の人肉食はさほど珍しいことでもないけどな。藤子・F・不二雄が『カンビュセスの籤』で描いているクシュ遠征の様子のように、はるか紀元前から軍隊では食糧が尽きると敵兵や自軍の兵を殺害し食糧にする事例もあったし。十字軍なんかも一説じゃ『計画的な食糧確保』の為に村を襲ったなんて話も残ってる」
友(アカン)
男「近年でも日本のひかりごけ事件や、ウルグアイ空軍571便墜落事故など必要に迫られたうえでの食人ケースは散見されるし、事態が切迫すれば人間そんなもんじゃないの」
友「地獄や!この世は地獄や!!」
男「もし仮に俺とお前が無人島に漂着したら、多分俺3日目くらいでお前の頭に石ゴッってやって食っちゃうんじゃないかな」
友「早えーよ怖えーよ!!」
-大航海時代の海軍編 おわり-
296 : 以下、名無しが深夜にお送りします :2014/10/27(月) 21:31:12 SFeiRyls
ちなみにイギリス海軍の提督エドワード・バーノンは船員たちの飲酒癖を見て(アカン)と思ったことから、それまで原酒のまま配給していたラム酒を水割りで配給するようにしたという。
このエドワード提督の着ていた絹と毛の混紡の粗い布地の上着の名前がグログラム・コートという名前だったことから、この酒はグロッグと呼ばれるようになった!
今二日酔いで「グロッキー」という言葉が生まれたのはこのグロッグが元(グロッギー)だと言われているぞ!!
-大航海時代の海軍編-
友「そういやいつも分からなくなるんだけど、海兵隊ってあれ海軍なの?」
男「国によるね。アメリカの場合は陸海空軍や沿岸警備隊みたいに海兵隊っていう独立した軍隊だし、イギリスやスペインなんかは海軍所属だし」
友「へぇー」
男「でも、基本は海軍所属のところが多いよ。米海兵隊にしたって、独立戦争時にイギリスに同様の部隊があったから海兵隊を作ったって話だし」
友「なるほど」
276 : 以下、名無しが深夜にお送りします :2014/10/27(月) 21:00:23 SFeiRyls
男「そもそも昔の海軍は陸軍を輸送する概念がない、っていうか不可能だったしな」
友「?」
男「だってお前・・・大航海時代の船とか見てみろよこれ」
http://i.imgur.com/1mfFqaa.jpg
友「うん、ボトルシップとかでよくみる奴だ」
277 : 以下、名無しが深夜にお送りします :2014/10/27(月) 21:02:01 SFeiRyls
男「こんなの、海軍の乗組員乗せたら、もう(他の人員乗せる場所)ないじゃん」
友「たしかに」
男「だから、昔は基本海軍の人員は遠征先での陸戦も視野に入れてたんだよ。それに、大砲が出来る前は基本的に敵の船に接舷して白兵戦をする必要があったしな。それが後の海兵隊に繋がった、と」
友「なるほどねぇ・・・ていうか、こんな船で太平洋横断とか、食い物どうしてたんだろ・・・」
男「当時は今みたいに保存技術も発達してないし、栄養学も発達してなかったからな。それはもうドイヒーな有様だったようだ」
278 : 以下、名無しが深夜にお送りします :2014/10/27(月) 21:03:18 SFeiRyls
友「うーん、ぱっと思いつくのは干すか、塩に漬けるか・・・缶詰とかもないんだもんな」
男「まぁ大体そんな感じだよ。ゲームの大航海時代やったことある?」
友「あー、少しは」
男「アレに塩漬け肉ってのが出て来るだろ?基本、当時の海軍の貴重な食糧の一つとして塩漬け肉があった」
友「ほほぉ」
279 : 以下、名無しが深夜にお送りします :2014/10/27(月) 21:04:06 SFeiRyls
男「って言っても、半年以上に及ぶ航海で腐らせないようにするためには相当量の塩分に漬け込んだようだ。文献によると、当時の塩漬け肉は塩による脱水効果でまるで靴底のように固いものだったらしい」
友「これもう(どうやって食うのか)わかんねぇな」
男「基本的には塩抜き・・・と言っても、真水なんて超貴重で使えないから、網に入れて舷側からぶら下げて、海水の中に一日中浸しておくらしい」
友「塩水で塩抜きするのか・・・」(困惑)
男「まぁまだ海水の方が塩分濃度が低いからね・・・で、その肉をやはり海水で煮る。煮あがった肉は鍋から取り出すと同時に表面に白い塩の結晶が浮かび上がり、一口食べると強烈なのどの渇きを覚えたという」
友「腎臓壊れちゃ~↑う」
男「当然、当時は冷蔵庫なんかもないし、航海中は赤道付近の高温多湿の海域を通ることも多かったことから、積み込まれた食材は容赦なく腐った」
友「そらそうよ」
男「例の塩漬け肉も、カチカチになるまで塩に漬けているにも関わらずどうしてもウジが沸いてしまうので、船員たちは肉を取り出す前に樽の中の肉の上に生魚などを置いたらしい」
友「なにそれ・・・おまじない?」
男「こうすると、肉についたウジが新鮮な生魚のほうに集まってくるから、魚にウジが集まった時点でそれを捨てて、肉の方を取り出すのさ」
友「ヴォエ!!」
281 : 以下、名無しが深夜にお送りします :2014/10/27(月) 21:08:42 SFeiRyls
友「・・・もう素直に生魚のほう食えばいいじゃん」(いいじゃん)
男「そうはいっても船員全員に行きわたるだけの魚を確保するのは難しいからな。同様に、船に乗せたチーズには足が生えるとも言われていた」
友「どういうことなの・・・」
男「当然、港で積み込んだ生鮮食品にはほぼ漏れなくウジが沸く。特にチーズは表面全体にウジが蠢き、まるで棚の中でチーズが動いているように見えたことからこう言われていた」
友「ヴォエ!ヴォォエ!!」
282 : 以下、名無しが深夜にお送りします :2014/10/27(月) 21:10:04 SFeiRyls
男「主食については南北戦争の時に話したハードタックと同等のものが使用された・・・が、これもやはり保存中にコクゾウムシなどが大量に湧き、船員が口にするころには既にボロボロのスカスカになっていたという」
友「やめてくれよ・・・」(絶望)
男「船員たちはそれを食べる前にテーブルに叩き付けて中のコクゾウムシを落としたり、あるいは栄養補給がてらそのまま食べたりしたようだが、苦みもあってかなり難渋していたようだ」
友「長野県民だってそんな無茶しないだろう多分」
男「これら積み込まれた食材をぐだぐだになるまで煮込み、砂糖や酢などで味付けされたものが当時の船員の基本的な食事だったようだな」
友「腐りかけのRation・・・」
283 : 以下、名無しが深夜にお送りします :2014/10/27(月) 21:11:42 SFeiRyls
男「さらに貴重だったのはさっきも言った真水だ。当時は現在の水道水に使われているカルキのような消毒剤もなかったから、これもやはり樽の中で為す術もなく腐っていったという」
友「過酷過酷アンド過酷」
男「そもそも水源だって出港地の近くの川とかだしな。積み込んだ水は、最初はなんとか飲めるものの、出航後数日すると藻や苔が浮きドロドロの異臭を放つ状態になる。が、それらが沈殿すると一旦水の味は良くなるという」
友「やべぇよ・・・やべぇよ・・・」
男「だがそれも一時的なもので、その後は下水と呼んで差支えないレベルまで腐り果てていく水を、彼らは飲まざるを得なかったらしい」
友「おぉ、もう・・・」
284 : 以下、名無しが深夜にお送りします :2014/10/27(月) 21:13:30 SFeiRyls
男「当時の人でも腹を壊すようなシロモノだったから、せめてもの気休めとして殺菌性のあるアルコールを含んだビールやワインなどの酒類が配給されるようになったというわけだ」
友「これもうわかんねぇな」
男「まぁ、その酒にしたって納品業者のピンハネや資金不足で名ばかりの酷い品質のものだったようだ。当時船員たち間には『テムズ川の水の中で麦を洗ったり泳がせたりして引き揚げれば今まで飲んだこともないような美味いビールが飲める』なんて歌もあったそうだ」
友「ファーwwww」
友「ただし、当時は一度航海に出てしまえば半数以上が生きて故郷の土を踏むこともできないという状況がザラだったため、恐怖を紛らわすため船員に飲酒癖が付いてしまうのが常だったという」
友「悲しいなぁ」
285 : 以下、名無しが深夜にお送りします :2014/10/27(月) 21:14:36 SFeiRyls
男「で、当然こんなものしか摂取できずに問題となるのが最初にいった栄養不足だ。生鮮食品の不足による各種ビタミンの欠乏は、船員たちを深刻な病に陥れた」
友「脚気とか、壊血病とか?」
男「そう。特に船員たちに恐れられていたのが壊血病だ。壊血病に掛かると、最初は傷が治りにくくなり、徐々に歯茎などの粘膜が腐り始め歯が抜け落ち、そのうち皮膚の色も土気色になって死んでいくという原因不明の恐怖の病だったわけだ」
友「こわE」
男「船員たちはまともな治療も受けられず、腐った歯茎を自らの尿でゆすぐという酷い有様だったらしい」
友「ヴォォォォエ!!」
286 : 以下、名無しが深夜にお送りします :2014/10/27(月) 21:16:46 SFeiRyls
男「ちなみに、同時期の東洋の艦隊ではそれほど壊血病が問題になることはなかったらしい」
友「へ?何で?」
男「沿岸航海が多かったこともあると思うが、一説によると東洋では茶を日常的に摂取する習慣があったため航海中でもビタミンCが摂取できていたのではないかと言われている。日露戦争における旅順攻略戦でも見られるように、東洋では豆苗やもやしといったスプラウツ類を恒常的に食する習慣もあったしな」
友「なるほど」
男「前に言ったように脚気はビタミンB、壊血病はビタミンCの欠乏によって起きる。特にビタミンCは通常生野菜などにしか含まれないから、当時の船上でそれを得るのはほぼ不可能と言ってよかった」
287 : 以下、名無しが深夜にお送りします :2014/10/27(月) 21:19:09 SFeiRyls
友「でもさぁ・・・同じ哺乳類でも、ライオンとかは肉ばっか食っても壊血病にならないじゃん?」
男「通常哺乳類は自前でビタミンCを体内で合成できるからな・・・ビタミンCを出来ないのは一部のネズミと、人間を含めたの直鼻猿亜目だけだ」
友「えぇ・・・なんでまた」
男「そもそもそれらの動物は、かつて果物などを主食としていたことから、ビタミンCを合成する酵素が失われたと言われている」
友「もったいない・・・」
男「進化生物学においては、生存に不要な遺伝子を持つことは生物にとって無駄なコストを払う=生存競争に不利ということになるらしい。ただ、一部の鳥類についてはかつて何度かビタミンC合成機能を獲得したり喪失したことが分かってるようだが」
288 : 以下、名無しが深夜にお送りします :2014/10/27(月) 21:20:26 SFeiRyls
男「で、話がそれたが・・・当然、当時はそんなこと分かりっこないから、壊血病は未知の病として大変恐れられた。その恐怖から逃れる為、船員たちはますます酒に溺れ、当時海軍の士気や規律は大変に悪かったらしい」
友「そらそうよ」
男「そんな中、イギリス海軍のジェームズ・リンドという軍医は、船員の中でも船長などの高級船員たちはこの病の発症率が低いところに着目した」
友「どういうこと?」
男「いいもん食ってたってこと。ヒラの船員はさっき言った腐ったメシばっかくってたけど、船長クラスとなると食事用に生きた牛や鶏、それに僅かながらの野菜も積み込まれていたようだ」
289 : 以下、名無しが深夜にお送りします :2014/10/27(月) 21:21:07 SFeiRyls
友「なるほど。それでそういう人たちは航海中でもなんとか栄養補給ができたわけか」
男「ああ。そこでジェームズは実験的に船員の食事の質を上げて航海を実施してみたところ、壊血病罹患者が劇的に減ったという」
友「やったぜ」
男「これを受け1766年、南太平洋派遣の命を受けたイギリス海軍のジェームズ・クック船長は、自らの船に柑橘類やザワー・クラウトなどを積み込んだ」
友「クック船長、有能」
男「だが当時の船員たちは保守的で、クックが食べることを奨励したそれらの食品に当初は全く手を付けることがなかったという
290 : 以下、名無しが深夜にお送りします :2014/10/27(月) 21:22:09 SFeiRyls
友「なんでや!!」
男「まぁ当時はそんなもんだろう。占星術なんかの占もかなりの信憑性をもって広まってたし、壊血病の予防のためには酢で船上を洗うなんてまじない的な方法が常識とされていたわけだし」
友「えぇ・・・」(困惑)
男「そこでクック船長は、まずそう言った食物が自分たちだけが有難がって食べ、船員たちに与えないようにした。すると、船員たちは次第に自分たちにもそれを食わせるよう要求してきたという」
友「クック船長、有能。マジ有能」
291 : 以下、名無しが深夜にお送りします :2014/10/27(月) 21:23:16 SFeiRyls
男「その後3年に及んだ航海中、壊血病で死亡した船員はただの一人も出なかったという。これは18世紀当時としては奇跡といっていいレベルの出来事だった」
友「よかった・・・もう壊血病で死ぬ人はいなくなったんだね」
男「いやそれが・・・クック船長も、そこまでは気付かなかったんだな。当時、船には柑橘類やザワークラウトの他に麦汁も積み込まれたんだが、帰港後クック船長が奨励したのはあろうことかこの麦汁だったんだ」
友(アカン)
男「当時はまだザワークラウトや柑橘類こそが壊血病の予防になるとは分かってなかったからな・・・そして、残念ながらその後百年以上にわたって壊血病が船乗りたちの間から消えることはなかった」
292 : 以下、名無しが深夜にお送りします :2014/10/27(月) 21:24:31 SFeiRyls
友「保守的な割には経験則を重視しないんですね」(正論)
男「ちなみにその後は、柑橘類やザワークラウトの他、ジャガイモやトウガラシなどがヨーロッパに導入されたことにより、航海中のビタミンC不足は次第に解消されていった」
友「時間がかかったなぁ・・・」
男「ちなみに二次大戦中、英独がそれぞれの兵士の事を『ライミー』とか『キャベツ野郎』だの読んでいたのは、当時イギリス海軍は壊血病予防のためにライムを、ドイツはザワークラウトを食べていたからだという」
友「ドイツ料理ってすんごいザワークラウト使うよね。ウィンナーの付け合せとかスープにまで入ってるもん」
男「あの辺冬は野菜とれないから、長期保存できるジャガイモ含めてザワークラウトは冬の間の貴重なビタミン源だったんだよ」
293 : 以下、名無しが深夜にお送りします :2014/10/27(月) 21:25:25 SFeiRyls
友「でもさぁ・・・>>276みたいな小さい船じゃ、そんなに食糧積み込めんだろ」
男「まぁできるだけ大量に積み込むのは潜水艦なんかと同じだわな・・・当然、航海中にも補給の必要はあるし」
友「補給?」
男「例えば雨水だったり、無人島があれば上陸して島にいる鳥獣を捕獲したり」
友「無人島0円生活やないか・・・」
294 : 以下、名無しが深夜にお送りします :2014/10/27(月) 21:26:20 SFeiRyls
男「特に珍重されたのはウミガメだったようだ。動きが遅くて捕獲が容易なうえ、船上で生かしておけるから必要なときにそのまま肉にすることもできたし」
友「・・・でもさぁ、例えば周りに島がなかったり、漂流しちゃってどうにもならんくなったらどうすんの」
男「そりゃもう死を待つのみよ・・・まぁ、どちらにせよ死者は大量に出てしまうから徐々に口減らしもできるわけだし」
友「うへ」
男「まぁそれでもいよいよ!となれば、船のマストや衣服に使われていた皮革や、船内のネズミ、仲間の死体などにも手を出したようだが」
友「地獄や!!」
男「こうした場合の人肉食はさほど珍しいことでもないけどな。藤子・F・不二雄が『カンビュセスの籤』で描いているクシュ遠征の様子のように、はるか紀元前から軍隊では食糧が尽きると敵兵や自軍の兵を殺害し食糧にする事例もあったし。十字軍なんかも一説じゃ『計画的な食糧確保』の為に村を襲ったなんて話も残ってる」
友(アカン)
男「近年でも日本のひかりごけ事件や、ウルグアイ空軍571便墜落事故など必要に迫られたうえでの食人ケースは散見されるし、事態が切迫すれば人間そんなもんじゃないの」
友「地獄や!この世は地獄や!!」
男「もし仮に俺とお前が無人島に漂着したら、多分俺3日目くらいでお前の頭に石ゴッってやって食っちゃうんじゃないかな」
友「早えーよ怖えーよ!!」
-大航海時代の海軍編 おわり-
296 : 以下、名無しが深夜にお送りします :2014/10/27(月) 21:31:12 SFeiRyls
ちなみにイギリス海軍の提督エドワード・バーノンは船員たちの飲酒癖を見て(アカン)と思ったことから、それまで原酒のまま配給していたラム酒を水割りで配給するようにしたという。
このエドワード提督の着ていた絹と毛の混紡の粗い布地の上着の名前がグログラム・コートという名前だったことから、この酒はグロッグと呼ばれるようになった!
今二日酔いで「グロッキー」という言葉が生まれたのはこのグロッグが元(グロッギー)だと言われているぞ!!
ショートストーリーの人気記事
神様「神様だっ!」 神使「神力ゼロですが・・・」
神様の秘密とは?神様が叶えたかったこととは?笑いあり、涙ありの神ss。日常系アニメが好きな方におすすめ!
→記事を読む
キモオタ「我輩がおとぎ話の世界に行くですとwww」ティンカーベル「そう」
→記事を読む
女「ハローハロー。誰かいませんか?どうぞ」
→記事を読む
魔王「世界の半分はやらぬが、淫魔の国をくれてやろう」
→記事を読む
男「少し不思議な話をしようか」女「いいよ」
→記事を読む
しんのすけ「アローラ地方を冒険するゾ」
→記事を読む
シンジ「こうなったら、開き直ってやる・・・w」
→記事を読む
同僚女「おーい、おとこ。起きろ、起きろー」
→記事を読む
妹「マニュアルで恋します!」
→記事を読む
彡(゚)(゚)「お、居酒屋やんけ。入ったろ」
→記事を読む
