男「少し不思議な話をしようか」女「いいよ」
Part16
346 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2016/08/16(火) 16:52:04.24 ID:HFCsbPW1o
医者「刑事さんは、私がずっと前に話した、『殺します』というメール覚えてますか?」
刑事「ええ、覚えてますよ。考え過ぎて悔しい思いをしましたからね」
刑事「結局、打ち間違いだったっていうあれでしょう?」
医者「ええ。実際に彼女が打とうとしたメールは」
医者「『そろそろクリスマスだけど、どうする?』というものでした」
医者「それを打ち間違えて、気付かずに送ってしまったので、あんなメッセージになってしまったんですね」
医者「『事実は小説よりも奇なり』という、あれですよ」
刑事「もしくは……『幽霊の、正体みたり、枯れ尾花』ですか」
医者「ええ……。正しく、そうですね」
医者「結局、それがどんな事であれ」
医者「不思議な話の正体というのは、そのほとんどが『脳の錯覚や、異常や、勘違いや、思い込みや、メカニズムによるもの、あるいは嘘』だという事です」
刑事「…………」
医者「走馬灯しかり、ダウジングしかり、そのほとんどが科学的に説明がついてしまうんですよ」
347 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2016/08/16(火) 16:53:03.98 ID:HFCsbPW1o
医者「逆に言えば」
医者「不思議な話と言うのは、科学的に説明がつかないからこそ不思議だという事です」
医者「説明がつけば、枯れ尾花と一緒で、『何だ、そんな事か』となるものばかりでしょうね、きっと」
医者「だからね、刑事さん」
刑事「はい?」
医者「真相なんて、知らないままの方が幸せだと思いませんか?」
刑事「……どういう事です?」
医者「……そのままの意味ですよ」
刑事「…………」
医者「知らない方が幸せな事も、世の中には多くあるだろうという事です……」
刑事「…………」
349 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2016/08/16(火) 16:54:10.88 ID:HFCsbPW1o
シイナキミヨシ、二十七歳
無職。元カラオケ店のアルバイト
キシタカコ・アイダマリコ・サノレイカ・イマナカオサムの四人を殺害した罪により、起訴される
350 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2016/08/16(火) 16:54:50.17 ID:HFCsbPW1o
当初、この事件は
被告が、記憶障害により病院に通っていたという事もあって
また、事件の猟奇性から、精神異常者ではないかと一部のマスコミが推測を報じた事によって
死刑にはならず、無期懲役になるのではないかとの見方が強かったが
精神鑑定の結果、『精神に異常なし、責任能力あり』と判断された事により
犯行が計画的で、かつ残忍であった為
検察側は死刑を求刑し
それに対し、弁護側は無期懲役が妥当だという形で争われた
351 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2016/08/16(火) 16:55:30.72 ID:HFCsbPW1o
弁護側はまず、シイナキミヨシが犯行に至った動機を説明した後
四人の被害者にも非があった事を述べ
特に、イマナカオサム殺害の件については、十分に情状酌量の余地があるとした
また、被告の記憶が日に日に消えていっている事について言及して
『病気などによって本人に記憶がなくなっている事まで罪に問うのは、あまりにも酷だ』
と、減刑を訴えた
352 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2016/08/16(火) 16:56:22.07 ID:HFCsbPW1o
しかし、イマナカオサムが起こしたと思われる、カタギリミキ強姦事件については、証拠不十分という事で不問にされ
また、殺害された女性三名の方も、きっかけは作ったものの、直接的にカタギリミキの苛めには関与しなかった事が指摘され
また、それらの事については拷問によって自白させたと被告が証言した事から、信憑性に著しく欠ける内容だと判断された
また、カタギリミキ自身は強姦や苛めを否定しており
彼女が精神異常をきたしている事から、証言自体もあてにならず
結果、これらの出来事は全て周りの推測でしかないとされた
故に、被告への情状酌量は一切認められず
更に、初公判の時には、被告が四人の殺害を認めた事もあって
その時、本人に反省の色が全く見られなかった事も考慮され
記憶障害による減刑も認められなかった
353 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2016/08/16(火) 16:57:08.12 ID:HFCsbPW1o
結果、第一審では、検察側の求刑通り、死刑判決が言い渡されたが
弁護側はこれを不服として控訴の構えを見せた
しかし、被告本人の意思により、控訴は行わない事となり
こうして、シイナキミヨシの死刑が確定した
355 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2016/08/16(火) 16:58:17.88 ID:HFCsbPW1o
医者「……こんにちは、ミキさん」
女「あ、お帰りー。待ってたよ」
医者「今日は元気そうですね」
医者「体調は大丈夫ですか?」
女「うん。大丈夫、平気」
女「今日は調子いいみたいなの」
医者「そうですか……。それは良かった」
医者「ところで、ミキさんに伝言があるんですが」
女「何?」
医者「不思議な話を一つ持ってきました。あなたに聞かせて欲しいという事だったので」
女「本当? どうしたの?」
医者「男さんから、あなたに伝えてほしいと、そう言われたんですよ」
女「ああ、またあの幽霊見たんだね」
女「それで、教えてもらったんだ」
医者「……はい。彼は幽霊ではありませんけどね」
356 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2016/08/16(火) 16:58:50.21 ID:HFCsbPW1o
女「で、今度はどんな話だったの?」
医者「……パラレルワールドに迷いこんだという話ですよ」
女「へー、面白そう」
医者「聞きますか?」
女「うん。聞く」
医者「……楽しそうですね」
女「え? ああ、うん。そりゃ楽しみだし」
医者「……そうですか」
女「……あれ? 何か表情暗くない?」
女「どうしたの?」
医者「いえ……」
女「あ、もしかして、ヤキモチ妬いてるとか?」
医者「違います、そうではありませんが……」
女「大丈夫だよ。相手は幽霊だし。それに、そんな風に、私、思ってなんかないから」
医者「…………」
357 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2016/08/16(火) 16:59:17.69 ID:HFCsbPW1o
女「うん。わかってる。言わなくても大丈夫」
女「私が好きなのは、オサムだけだから、安心して」
医者「……私はオサムではありませんよ。それに、彼はもう亡くなってますし、あなたにとっては、彼氏でも何でも……」
女「あー、またそうやって話を長くしようとする」
女「今日はやめようよ、それ」
医者「…………」
女「それより、早く聞かせて。今度はどんな不思議な話なの?」
女「ね。早く教えて」
医者「……ええ、わかりました」
医者「それなら、不思議な話をしましょうか」
女「うん」
359 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2016/08/16(火) 17:00:28.01 ID:HFCsbPW1o
看護師A「あの人ですか……。先生を恋人だと思い込んでる人って」
看護師B「ええ、可哀想なものよね。もうそれしか手段がなかったんじゃないかしら」
看護師A「……何かあったんですか?」
看護師B「緊急措置みたいなものよ」
看護師A「?」
看護師B「あの人は真実を知りたくはないから、無意識的に過去の記憶をねじ曲げてるの」
看護師B「虐待にあった事も、苛めにあった事も、強姦された事も、全部、自分ではなく幽霊がされた事だと思い込んで」
看護師A「…………」
看護師B「そんな人に、否応なく真実を突きつけたらどうなると思う?」
看護師A「……悪化するんですか?」
看護師B「そう。ゆっくりと、少しずつ段階を踏んでなら、いいわ。それは治療行為の範疇よ」
看護師B「でも、それを急激に行ってしまったら逆効果なのよ」
看護師B「なのに、それをしてしまった人がいたのよ、彼女には……」
看護師A「…………」
360 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2016/08/16(火) 17:01:40.16 ID:HFCsbPW1o
看護師B「本人は良かれと思ってした事なんだろうけど……。ろくな知識もないままに、私達に相談する事もなくしてしまったから……」
看護師A「…………」
看護師B「その人は、ミキさんと親しくしていて、看護師の間でも噂になっていたわ。二人とも、良い雰囲気だったらしいから、もう少しで恋仲になっていたかもしれないわね」
看護師A「……そうなんですか」
看護師B「ええ。でも、そんな事があったものだから……」
看護師B「ミキさんは真実を拒否する為に、その人を幽霊だと思い込んで、現実から目を背けて」
看護師B「そして、強姦された事を拒否する為に、その相手が恋人だったと思い込む様になった……」
看護師A「…………」
看護師B「そして、その相手として丁度良かったのが、先生なのよ。他の先生でも同じ事をミキさんはしているから、ろくに区別なんかついてないんでしょうね」
看護師A「…………」
361 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2016/08/16(火) 17:02:33.25 ID:HFCsbPW1o
看護師B「ねえ、あなたは、どう思う?」
看護師A「どう、というのは……?」
看護師B「ああして、本人は幸せそうにしてるけど、でも、それって、本当に幸せだと呼べるのかしらね……?」
看護師A「…………」
看護師B「そして、もしそれが幸せだというなら、治す事は彼女にとって本当に治療と呼べるのかしらね……?」
看護師B「もちろん、治す事が私達に与えられた仕事だけど……」
看護師B「治す事で、逆に不幸せになるのだとしたら……」
看護師B「それは、何の為の治療なのかしらね……?」
看護師B「……あなたは、どう思う?」
看護師A「…………」
362 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2016/08/16(火) 17:03:45.14 ID:HFCsbPW1o
解・八話
【殺害予告メール】
解・最終話
【パラレルワールド】
終了
363 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2016/08/16(火) 17:04:12.14 ID:HFCsbPW1o
男「少し不思議な話をしようか」女「いいよ」【解】
終了
364 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2016/08/16(火) 17:04:41.16 ID:HFCsbPW1o
以下、補足
365 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2016/08/16(火) 17:04:58.97 ID:/5MZOqnKo
乙
面白かったです
もやもやも残るけど
366 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2016/08/16(火) 17:05:09.33 ID:HFCsbPW1o
解を書く条件としたもの
・嘘つきが誰か当てられた時
解を開く条件としたもの
一話:男の記憶が抜け落ちている
二話:幻聴などの類い
三話:ピッキングの跡は以前につけられたもの、型を用意して文字を書いた
四話:嘘
五話:アケミが怯えていたのは別の理由
六話:父親が犯人、隠し部屋の存在
七話:誤認識
八話:クリスマスという打ち間違い
367 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2016/08/16(火) 17:05:11.94 ID:5xQwXBhN0
乙
後日どうなったかがすごく気になる…
368 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2016/08/16(火) 17:06:10.45 ID:HFCsbPW1o
時系列や、書ききれなかった事など
なお、七話は完全に無関係
『ミキ、幼少期』
・ユカリをイマジナリーフレンドに
・オカルトにはまりだす
『ミキ、小学校時代』
・父親からの性的虐待
・UFO話(六話)
・精神を病み始める
『ミキ、中学時代』
・アケミと接触(五話)
『ミキ、高校時代』
・レイカなどがミキを気持ち悪がり、友達グループから排除しようと画策。修学旅行が終わった後にグルになって嘘をつき、ミキに霊感があるなんて嘘だったと言いふらしてグループから追い出す(四話)
・これをきっかけに、ミキは孤立し、やがて悪い噂として広がってイジメの対象となる
『ミキ、十八歳』
・大学に進学
・男、高校卒業(十八歳)。家庭の事情から進学はせずに就職。この年、車の免許を取得
『ミキ、十九歳』
・電話会社に相談に行く(解・二話)
『ミキ、二十歳』
・友、大学二年生、バイト先でミキと知り合う(二十歳)
『ミキ、二十一歳』
・男、タクシー免許を取得、タクシー会社に転職する
『ミキ、二十二歳』
・ミキ、不眠症などにより病院に通い始める
・男、記憶障害により、病院に通い始める。この時、ミキと知り合って一目惚れし、オカルト好きを知って不思議な事についての会話を何回かする(一話、二話、五話)
『ミキ、二十三歳』
・大学生、幽霊が出るという洞穴に(七話)
・友、酒を飲ませてミキを酔い潰し、レイプする
・ミキ、レイプをきっかけに精神に破綻をきたし、入院
・医者、母親にミキの話を聞きに行く(六話)
・母親、隠し部屋を発見して父親に問い詰め、殺害。その後、行方不明に(解・六話)
・男、ミキとは恋仲に近い関係に。また、ミキの言葉を頼りに真相を推理して、ミキにその事を尋ね始める
・ミキ、両親の死と男の真実を突く質問により精神を悪化。否定する為に男を幽霊に変え、友とは恋人だと思い込み始め、医者を友代わりとする
・男、ミキから幽霊として認識され、更にレイプ犯である友を恋人として見ている事に絶望を覚え、ミキの精神異常に関連した人間全員に復讐する事を誓う
・男、カコに話を聞きに行く。その後、監禁して拷問、殺害
・友、就職。呪いの部屋事件発生(三話)
・夫とレイカの会話(四話)
『ミキ、二十四歳』
・男、マリコ・レイカを殺害
・刑事、ミキの関係者ではないかと疑い始める
・刑事、夫に話を聞きに行く(解・四話)
・大学生、教授を訪ねる(解・七話)
『ミキ、二十五歳』
・男、友が引っ越した事に気付き、接触を図る。同じ会社にアルバイトとして入る
・友、男によって殺害される。これにより、犯行が発覚。逮捕
・男の過去を調べたらタクシー事件が浮かび上がる(解・一話)
・警察官、男の事情聴取(七話。解・三話)
・医者、男の精神鑑定を始める(八話)
・アケミ、上司と雑談(解・五話)
『ミキ、二十六歳』
・男の第一審が始まる
『ミキ、二十七歳』
・男の第一審終了。死刑が確定する(解・最終話)
372 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2016/08/16(火) 17:12:10.70 ID:WvJgaVPM0
報われないというか悲しい話というか。取り合えずミキ不憫すぎるなこれ
乙
373 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2016/08/16(火) 17:12:19.36 ID:Aji/uXK/o
お疲れ様でした
避難所にひぐらしっぽいって書いたら叩かれたけどやっぱり影響受けてたのね
面白かった
382 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2016/08/16(火) 17:49:55.80 ID:asPxiTtNo
乙!
最初は軽い気持ちで追ってたがまさかここまで引き込まれるとは。よく出来てたよ
ミキは踏んだり蹴ったりで可哀想…イジメの度合いはわからないけど、父親と友が断トツのクズ
383 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2016/08/16(火) 17:51:23.64 ID:EszxNLRqO
おつかれ!
時系列まとめもありがとう
難しかったけど面白かったよ
384 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2016/08/16(火) 17:53:12.79 ID:otE1M1vn0
完走乙
医者「刑事さんは、私がずっと前に話した、『殺します』というメール覚えてますか?」
刑事「ええ、覚えてますよ。考え過ぎて悔しい思いをしましたからね」
刑事「結局、打ち間違いだったっていうあれでしょう?」
医者「ええ。実際に彼女が打とうとしたメールは」
医者「『そろそろクリスマスだけど、どうする?』というものでした」
医者「それを打ち間違えて、気付かずに送ってしまったので、あんなメッセージになってしまったんですね」
医者「『事実は小説よりも奇なり』という、あれですよ」
刑事「もしくは……『幽霊の、正体みたり、枯れ尾花』ですか」
医者「ええ……。正しく、そうですね」
医者「結局、それがどんな事であれ」
医者「不思議な話の正体というのは、そのほとんどが『脳の錯覚や、異常や、勘違いや、思い込みや、メカニズムによるもの、あるいは嘘』だという事です」
刑事「…………」
医者「走馬灯しかり、ダウジングしかり、そのほとんどが科学的に説明がついてしまうんですよ」
347 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2016/08/16(火) 16:53:03.98 ID:HFCsbPW1o
医者「逆に言えば」
医者「不思議な話と言うのは、科学的に説明がつかないからこそ不思議だという事です」
医者「説明がつけば、枯れ尾花と一緒で、『何だ、そんな事か』となるものばかりでしょうね、きっと」
医者「だからね、刑事さん」
刑事「はい?」
医者「真相なんて、知らないままの方が幸せだと思いませんか?」
刑事「……どういう事です?」
医者「……そのままの意味ですよ」
刑事「…………」
医者「知らない方が幸せな事も、世の中には多くあるだろうという事です……」
刑事「…………」
349 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2016/08/16(火) 16:54:10.88 ID:HFCsbPW1o
シイナキミヨシ、二十七歳
無職。元カラオケ店のアルバイト
キシタカコ・アイダマリコ・サノレイカ・イマナカオサムの四人を殺害した罪により、起訴される
350 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2016/08/16(火) 16:54:50.17 ID:HFCsbPW1o
当初、この事件は
被告が、記憶障害により病院に通っていたという事もあって
また、事件の猟奇性から、精神異常者ではないかと一部のマスコミが推測を報じた事によって
死刑にはならず、無期懲役になるのではないかとの見方が強かったが
精神鑑定の結果、『精神に異常なし、責任能力あり』と判断された事により
犯行が計画的で、かつ残忍であった為
検察側は死刑を求刑し
それに対し、弁護側は無期懲役が妥当だという形で争われた
351 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2016/08/16(火) 16:55:30.72 ID:HFCsbPW1o
弁護側はまず、シイナキミヨシが犯行に至った動機を説明した後
四人の被害者にも非があった事を述べ
特に、イマナカオサム殺害の件については、十分に情状酌量の余地があるとした
また、被告の記憶が日に日に消えていっている事について言及して
『病気などによって本人に記憶がなくなっている事まで罪に問うのは、あまりにも酷だ』
と、減刑を訴えた
しかし、イマナカオサムが起こしたと思われる、カタギリミキ強姦事件については、証拠不十分という事で不問にされ
また、殺害された女性三名の方も、きっかけは作ったものの、直接的にカタギリミキの苛めには関与しなかった事が指摘され
また、それらの事については拷問によって自白させたと被告が証言した事から、信憑性に著しく欠ける内容だと判断された
また、カタギリミキ自身は強姦や苛めを否定しており
彼女が精神異常をきたしている事から、証言自体もあてにならず
結果、これらの出来事は全て周りの推測でしかないとされた
故に、被告への情状酌量は一切認められず
更に、初公判の時には、被告が四人の殺害を認めた事もあって
その時、本人に反省の色が全く見られなかった事も考慮され
記憶障害による減刑も認められなかった
353 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2016/08/16(火) 16:57:08.12 ID:HFCsbPW1o
結果、第一審では、検察側の求刑通り、死刑判決が言い渡されたが
弁護側はこれを不服として控訴の構えを見せた
しかし、被告本人の意思により、控訴は行わない事となり
こうして、シイナキミヨシの死刑が確定した
355 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2016/08/16(火) 16:58:17.88 ID:HFCsbPW1o
医者「……こんにちは、ミキさん」
女「あ、お帰りー。待ってたよ」
医者「今日は元気そうですね」
医者「体調は大丈夫ですか?」
女「うん。大丈夫、平気」
女「今日は調子いいみたいなの」
医者「そうですか……。それは良かった」
医者「ところで、ミキさんに伝言があるんですが」
女「何?」
医者「不思議な話を一つ持ってきました。あなたに聞かせて欲しいという事だったので」
女「本当? どうしたの?」
医者「男さんから、あなたに伝えてほしいと、そう言われたんですよ」
女「ああ、またあの幽霊見たんだね」
女「それで、教えてもらったんだ」
医者「……はい。彼は幽霊ではありませんけどね」
356 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2016/08/16(火) 16:58:50.21 ID:HFCsbPW1o
女「で、今度はどんな話だったの?」
医者「……パラレルワールドに迷いこんだという話ですよ」
女「へー、面白そう」
医者「聞きますか?」
女「うん。聞く」
医者「……楽しそうですね」
女「え? ああ、うん。そりゃ楽しみだし」
医者「……そうですか」
女「……あれ? 何か表情暗くない?」
女「どうしたの?」
医者「いえ……」
女「あ、もしかして、ヤキモチ妬いてるとか?」
医者「違います、そうではありませんが……」
女「大丈夫だよ。相手は幽霊だし。それに、そんな風に、私、思ってなんかないから」
医者「…………」
357 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2016/08/16(火) 16:59:17.69 ID:HFCsbPW1o
女「うん。わかってる。言わなくても大丈夫」
女「私が好きなのは、オサムだけだから、安心して」
医者「……私はオサムではありませんよ。それに、彼はもう亡くなってますし、あなたにとっては、彼氏でも何でも……」
女「あー、またそうやって話を長くしようとする」
女「今日はやめようよ、それ」
医者「…………」
女「それより、早く聞かせて。今度はどんな不思議な話なの?」
女「ね。早く教えて」
医者「……ええ、わかりました」
医者「それなら、不思議な話をしましょうか」
女「うん」
359 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2016/08/16(火) 17:00:28.01 ID:HFCsbPW1o
看護師A「あの人ですか……。先生を恋人だと思い込んでる人って」
看護師B「ええ、可哀想なものよね。もうそれしか手段がなかったんじゃないかしら」
看護師A「……何かあったんですか?」
看護師B「緊急措置みたいなものよ」
看護師A「?」
看護師B「あの人は真実を知りたくはないから、無意識的に過去の記憶をねじ曲げてるの」
看護師B「虐待にあった事も、苛めにあった事も、強姦された事も、全部、自分ではなく幽霊がされた事だと思い込んで」
看護師A「…………」
看護師B「そんな人に、否応なく真実を突きつけたらどうなると思う?」
看護師A「……悪化するんですか?」
看護師B「そう。ゆっくりと、少しずつ段階を踏んでなら、いいわ。それは治療行為の範疇よ」
看護師B「でも、それを急激に行ってしまったら逆効果なのよ」
看護師B「なのに、それをしてしまった人がいたのよ、彼女には……」
看護師A「…………」
360 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2016/08/16(火) 17:01:40.16 ID:HFCsbPW1o
看護師B「本人は良かれと思ってした事なんだろうけど……。ろくな知識もないままに、私達に相談する事もなくしてしまったから……」
看護師A「…………」
看護師B「その人は、ミキさんと親しくしていて、看護師の間でも噂になっていたわ。二人とも、良い雰囲気だったらしいから、もう少しで恋仲になっていたかもしれないわね」
看護師A「……そうなんですか」
看護師B「ええ。でも、そんな事があったものだから……」
看護師B「ミキさんは真実を拒否する為に、その人を幽霊だと思い込んで、現実から目を背けて」
看護師B「そして、強姦された事を拒否する為に、その相手が恋人だったと思い込む様になった……」
看護師A「…………」
看護師B「そして、その相手として丁度良かったのが、先生なのよ。他の先生でも同じ事をミキさんはしているから、ろくに区別なんかついてないんでしょうね」
看護師A「…………」
361 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2016/08/16(火) 17:02:33.25 ID:HFCsbPW1o
看護師B「ねえ、あなたは、どう思う?」
看護師A「どう、というのは……?」
看護師B「ああして、本人は幸せそうにしてるけど、でも、それって、本当に幸せだと呼べるのかしらね……?」
看護師A「…………」
看護師B「そして、もしそれが幸せだというなら、治す事は彼女にとって本当に治療と呼べるのかしらね……?」
看護師B「もちろん、治す事が私達に与えられた仕事だけど……」
看護師B「治す事で、逆に不幸せになるのだとしたら……」
看護師B「それは、何の為の治療なのかしらね……?」
看護師B「……あなたは、どう思う?」
看護師A「…………」
362 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2016/08/16(火) 17:03:45.14 ID:HFCsbPW1o
解・八話
【殺害予告メール】
解・最終話
【パラレルワールド】
終了
363 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2016/08/16(火) 17:04:12.14 ID:HFCsbPW1o
男「少し不思議な話をしようか」女「いいよ」【解】
終了
364 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2016/08/16(火) 17:04:41.16 ID:HFCsbPW1o
以下、補足
365 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2016/08/16(火) 17:04:58.97 ID:/5MZOqnKo
乙
面白かったです
もやもやも残るけど
366 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2016/08/16(火) 17:05:09.33 ID:HFCsbPW1o
解を書く条件としたもの
・嘘つきが誰か当てられた時
解を開く条件としたもの
一話:男の記憶が抜け落ちている
二話:幻聴などの類い
三話:ピッキングの跡は以前につけられたもの、型を用意して文字を書いた
四話:嘘
五話:アケミが怯えていたのは別の理由
六話:父親が犯人、隠し部屋の存在
七話:誤認識
八話:クリスマスという打ち間違い
367 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2016/08/16(火) 17:05:11.94 ID:5xQwXBhN0
乙
後日どうなったかがすごく気になる…
368 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2016/08/16(火) 17:06:10.45 ID:HFCsbPW1o
時系列や、書ききれなかった事など
なお、七話は完全に無関係
『ミキ、幼少期』
・ユカリをイマジナリーフレンドに
・オカルトにはまりだす
『ミキ、小学校時代』
・父親からの性的虐待
・UFO話(六話)
・精神を病み始める
『ミキ、中学時代』
・アケミと接触(五話)
『ミキ、高校時代』
・レイカなどがミキを気持ち悪がり、友達グループから排除しようと画策。修学旅行が終わった後にグルになって嘘をつき、ミキに霊感があるなんて嘘だったと言いふらしてグループから追い出す(四話)
・これをきっかけに、ミキは孤立し、やがて悪い噂として広がってイジメの対象となる
『ミキ、十八歳』
・大学に進学
・男、高校卒業(十八歳)。家庭の事情から進学はせずに就職。この年、車の免許を取得
『ミキ、十九歳』
・電話会社に相談に行く(解・二話)
『ミキ、二十歳』
・友、大学二年生、バイト先でミキと知り合う(二十歳)
『ミキ、二十一歳』
・男、タクシー免許を取得、タクシー会社に転職する
『ミキ、二十二歳』
・ミキ、不眠症などにより病院に通い始める
・男、記憶障害により、病院に通い始める。この時、ミキと知り合って一目惚れし、オカルト好きを知って不思議な事についての会話を何回かする(一話、二話、五話)
『ミキ、二十三歳』
・大学生、幽霊が出るという洞穴に(七話)
・友、酒を飲ませてミキを酔い潰し、レイプする
・ミキ、レイプをきっかけに精神に破綻をきたし、入院
・医者、母親にミキの話を聞きに行く(六話)
・母親、隠し部屋を発見して父親に問い詰め、殺害。その後、行方不明に(解・六話)
・男、ミキとは恋仲に近い関係に。また、ミキの言葉を頼りに真相を推理して、ミキにその事を尋ね始める
・ミキ、両親の死と男の真実を突く質問により精神を悪化。否定する為に男を幽霊に変え、友とは恋人だと思い込み始め、医者を友代わりとする
・男、ミキから幽霊として認識され、更にレイプ犯である友を恋人として見ている事に絶望を覚え、ミキの精神異常に関連した人間全員に復讐する事を誓う
・男、カコに話を聞きに行く。その後、監禁して拷問、殺害
・友、就職。呪いの部屋事件発生(三話)
・夫とレイカの会話(四話)
『ミキ、二十四歳』
・男、マリコ・レイカを殺害
・刑事、ミキの関係者ではないかと疑い始める
・刑事、夫に話を聞きに行く(解・四話)
・大学生、教授を訪ねる(解・七話)
『ミキ、二十五歳』
・男、友が引っ越した事に気付き、接触を図る。同じ会社にアルバイトとして入る
・友、男によって殺害される。これにより、犯行が発覚。逮捕
・男の過去を調べたらタクシー事件が浮かび上がる(解・一話)
・警察官、男の事情聴取(七話。解・三話)
・医者、男の精神鑑定を始める(八話)
・アケミ、上司と雑談(解・五話)
『ミキ、二十六歳』
・男の第一審が始まる
『ミキ、二十七歳』
・男の第一審終了。死刑が確定する(解・最終話)
報われないというか悲しい話というか。取り合えずミキ不憫すぎるなこれ
乙
373 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2016/08/16(火) 17:12:19.36 ID:Aji/uXK/o
お疲れ様でした
避難所にひぐらしっぽいって書いたら叩かれたけどやっぱり影響受けてたのね
面白かった
382 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2016/08/16(火) 17:49:55.80 ID:asPxiTtNo
乙!
最初は軽い気持ちで追ってたがまさかここまで引き込まれるとは。よく出来てたよ
ミキは踏んだり蹴ったりで可哀想…イジメの度合いはわからないけど、父親と友が断トツのクズ
383 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2016/08/16(火) 17:51:23.64 ID:EszxNLRqO
おつかれ!
時系列まとめもありがとう
難しかったけど面白かったよ
384 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2016/08/16(火) 17:53:12.79 ID:otE1M1vn0
完走乙
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