士郎「衛宮さんちの美味しんぼ」
Part1
1 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/06/27(水) 01:56:26.93 ID:B36hnpLHO
※設定・キャラ崩壊注意。
書き手の料理知識はゼロなので全てデタラメです。本気にしないでください。
2 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/06/27(水) 01:59:59.04 ID:B36hnpLHO
士郎(聖杯戦争……。あの凄惨な戦いから歳月は流れ……)
士郎(俺は冬木新聞社に就職した)
士郎(そこから早数年ーー新聞社の記念企画として発足した『究極のメニュー』というコラムを担当することになったんだ)
士郎(今はその究極のメニューを追い求め、それを記事にする日々……)
士郎(料理はもともと得意分野であったから、これ以上の適職はないと思ったが)
士郎(これがまた色々と大変で……)
士郎(ともかく、そんな毎日で身を削っているこの頃……)
3 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/06/27(水) 02:03:03.93 ID:B36hnpLHO
桜「ーー先輩」
士郎「……?」
桜「あの、相談があるのですが」
士郎(こいつは俺の後輩社員の間桐桜。そう、あの桜は俺と同じ会社に就職したんだ)
士郎(そしてなんの巡り合わせか、同じ『究極のメニュー』を担当する記者として、こうして共に行動している)
士郎「すまん桜、後にしてくれないか?」
桜「え? どうしてですか?」
士郎「今大事なところなんだ」
桜「あの……。先輩、競馬新聞を見ながら大事な用とは何ですか?」
士郎「……」
桜「……先輩?」ニコォ
士郎「わ、分かったよ桜! で、何の相談だ?」
桜「次のメニューのことなんですが、中華料理はどうでしょうか?」
士郎「中華ねえ、今更感もあるが……。それに中華といっても色々あるし」
桜「はい。確かに過去に取り上げたこともありますが……」
士郎「じゃあ、何で今更?」
桜「あの、兄さーーいえ、副部長が」
慎二「ーー衛宮」
4 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/06/27(水) 02:04:51.41 ID:B36hnpLHO
士郎「慎二、どうしたんだ?」
慎二「慎二じゃない。副部長だろ?」
士郎「慎二、どうしたんだ?」
慎二「……」
士郎「……」
慎二「ちなみに僕はサトノダイヤモンドに賭けたよ」
士郎「……一番人気に目を奪われてレースを逃す典型だな」
慎二「な、何だと!?」
士郎「俺はストロングタイタンだ」
桜「……先輩?」ニコォ
士郎「そうだ副部長ーーそれで、何か御用でしょうか?」
慎二「ふん……。次のメニューは中華にしてもらうぞ、衛宮」
士郎「それは、なんでさ……?」
慎二「中華ーー確かに中華といってもその種類はごまんとある」
慎二「創作中華から大衆中華まで新しいメニューが続々と生まれているジャンルだ!」
慎二「その中で、新たな世界を切り開くような、そんな斬新なメニューを時代は求めているのさ!!」
慎二「僕たちには、人々にそれを知らせる義務がある!!」
慎二「……というわけで、君たちにはそんなメニューを取り上げ、そして記事にして欲しい」
慎二「あの忌々しい『財宝新聞』をあっと言わせるようなメニューを頼んだよーー」スッ
5 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/06/27(水) 02:07:21.84 ID:B36hnpLHO
桜「……というわけなんです」
士郎「なるほどな……。斬新なメニューか……」
士郎「おっ、丁度昼休みかーー桜、それじゃ昼飯は中華にしようぜ」
士郎「参考がてら、周辺の中華料理を調べてみよう」
桜「はいっ!」
6 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/06/27(水) 02:09:45.23 ID:B36hnpLHO
【中華・言峰飯店】
桜「このお店はどうでしょうか、先輩ーー」
士郎「ほう……。この店は初めて見たな」
桜「そうなんですか!? 人気みたいですよ?」
士郎「桜は来た事あるのか?」
桜「わたしも実は初めてなんですが……。でも、最近名前をよく聞きます」
桜「なんでも、麻婆ラーメンが人気だとか」
士郎「麻婆ラーメンねぇ……。俺は好きじゃないな」
士郎「麻婆豆腐に白飯なら分かる。だけどそれをラーメンにかけるなんて、麻婆豆腐とラーメンのいいところを潰している。中華への冒涜だ」
士郎「日本人は外国の寿司についてあれこれうるさい癖に、この麻婆ラーメンや、それに天津飯や中華丼など、日本で改造されたものについては無頓着だ」
士郎「料理というのはルーツに敬意を持たなければならない。それなのにーー」
イラッシャイ
桜「ーーあ、二名です」
士郎「さ、桜ぁ!?」
桜「先輩、何してるんですか?」
士郎「……しょうがないなぁ」
7 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/06/27(水) 02:12:11.78 ID:B36hnpLHO
【店内】
綺礼「いらっしゃいませ」
桜「……ッ!?」
士郎「ゲッ……。なんでアンタがここに……!!」
綺礼「知らなかったのか?」
士郎「知ってるわけないだろ……。だいたい、アンタは神父だろ……」
綺礼「中華料理店のマスター兼神父だ」
士郎「神父がおまけになっていいのかよ……」
綺礼「まぁまぁーー当店オススメの麻婆ラーメンを、食うか?」
士郎「食うか!」
桜「先輩……。先輩のこだわりはともかく、この麻婆ラーメンって斬新なメニューじゃないですか?」
士郎「……いや、今に始まったメニューではないだろ」
士郎「中華料理店では普通に見るメニューだ」
士郎「まあ、影が薄いから一般に浸透しているとも言えないけどな」
桜「ーーでは、今一度注目してみる価値はあるのでは?」
士郎「でもなぁ、やっぱり俺はーー」
桜「麻婆ラーメン二つでお願いします」
綺礼「かしこまり(イケボ)」
士郎「なんでさっ!?」
8 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/06/27(水) 02:14:53.44 ID:B36hnpLHO
【数分後】
綺礼「麻婆ラーメン二丁、お待ち」ドン
桜「うわぁ……! とてもいい香りがします……!」
桜「いただきますっ!」ズル
士郎「……」ズル ジュポッ ジュルル
桜「……」
桜「……さすがに辛いですね。でも、これが本場の味ってことでしょうか?」
桜「辛さの刺激が来て、食欲も増しますね……! どんどん食べちゃう……!」ズル
士郎「……」
桜「……先輩?」
士郎「なんだかなぁ……。やっぱり、俺が予想した通りだ」
桜「え……?」
士郎「そもそもこのーー」
???「ーー何だこの料理はァ!? ふざけるなぁ!! 馬鹿野郎ォォ!!」
9 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/06/27(水) 02:18:35.49 ID:B36hnpLHO
士郎「……!!」
桜「……!?」
舞弥「ーーいけません、切嗣!」
切嗣「うまい中華料理があると聞いて来てみれば、何だこのふざけた料理はァ!? 僕を侮辱してるのかいッ!?」
桜「あ、あのお方は……!?」
士郎「……」
桜(ケリィ・切嗣ーー天才的な芸術家であり、食に対しても並々ならぬこだわりを持つ食通)
桜(そのこだわり故か、完全会員制の高級料亭『愉悦倶楽部』を立ち上げ、わたしたちの競合会社でもある財宝新聞社のコラム、『至高のメニュー』のアドバイザーも務めている……)
桜(そしてーー)
士郎「……」
桜(ケリィさんは、先輩の父親でもある……)
舞弥「切嗣、おやめください……!」
切嗣「麻婆豆腐をラーメンにかけるだとォっ!? 中国4千年の歴史を冒涜してるのかいっ!?」
綺礼「ですが……。まずはお召し上がりになって……」
切嗣「なんだとォっ!? こんなふざけた料理を僕に食えと!?」
切嗣「そもそもラーメンなどという化学調味料にまみれたふざけたものに麻婆豆腐をかけるなんて、侮辱だ!!」
綺礼「ラーメンもそのルーツは中国でーー」
切嗣「これは料理とは呼べん!! 畜生の餌だ!!」
切嗣「こんな料理でもない餌を食えと!? 迷 惑 千 万 !!」
切嗣「帰らせてもらうよ!!」
舞弥「き、切嗣……!」
士郎「ーー待てよ、じいさん」
10 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/06/27(水) 02:22:10.65 ID:B36hnpLHO
桜「せ、先輩!?」
綺礼「……」
切嗣「……なんだと!?」
切嗣「また君たち二人か……!! 今度は何の真似だい!?」
士郎「じいさん、あんたそのラーメンを一口でも食ったのか?」
切嗣「ふん、こんなふざけたものを僕が食うわけないだろう」
士郎「権威のあるものだけに固執し、新しいものを受け入れない……。食通の名が泣くぜ?」
桜(先輩、ブーメランになってます……)
士郎「それとも、頭が凝り固まって痴呆になっちまったのか?」
切嗣「な、なんだとォ……!?」
士郎「確かに、この麻婆ラーメンは中華風ではあっても中華料理そのものではない。アレンジメニューだ」
士郎「麻婆豆腐というアクセントの強い料理が麺の良さを殺し、中途半端な代物になってしまう」
士郎「だが、もしお互いの良さを活かすことができれば、新たな歴史が生まれる」
士郎「可能性のあるメニューだ」
切嗣「ほう……。そこまで言うなら、その可能性のある麻婆ラーメンとやらを用意できるんだろうね?」
桜「先輩……」
綺礼「……」
士郎「ああ。もちろんさ」
11 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/06/27(水) 02:24:52.27 ID:B36hnpLHO
桜「先輩……!?」
切嗣「いいだろうーー一週間後、一週間後だ。僕に完璧な麻婆ラーメンを食わせてみるんだね」
舞弥「切嗣……!! お待ちください!!」
ガララ
士郎「……」
桜「先輩……。良かったんですか?」
士郎「ああ、やってやるさ。あのじいさんに一泡吹かせてやろう」
桜「ーー麻婆豆腐とラーメンのいいところを潰している。中華への冒涜だ」
士郎「……」
桜「っておっしゃっていましたけど……」
士郎「だ、だから、俺は可能性のあるメニューについては柔軟な思考を持っているんだ」
士郎「お互いの良さを潰さず、活かすことができたならーー記事にできるような面白いメニューになる」
士郎「よし、帰って戦略を立てよう!」ガララ
桜「あ、先輩待って下さい!!」
綺礼「……」
綺礼「お代……」
12 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/06/27(水) 02:26:41.27 ID:B36hnpLHO
士郎(そして、究極の麻婆ラーメン作りが始まった)
士郎「ーー究極の料理を作るには、究極の道具が必要だ」
士郎「というわけで、まずは道具の調達だ」
桜「でも、どうやって……?」
士郎「俺のトレースで複製もできるが、いかんせん見たことのないものは作れない」
桜(え、そうなんだ……)
士郎「そうだな……。まずはあそこに行ってみよう」
13 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/06/27(水) 02:28:48.12 ID:B36hnpLHO
【とある骨董品屋】
桜「こんにちは、ライダー」
ライダー「サクラーーと士郎も? どうしたんですか?」
士郎「やあ、ライダー。実はなーー」
ライダー「……はあ、なるほど」
ライダー「それで、『究極の麺棒』が欲しいと……?」
士郎「そうだ。ここに来ればあると思ったんだが」
ライダー「いや、あるわけないでしょう(即答)」
士郎「え、ないのか?」
ライダー「確かにここは骨董品屋ですが、骨董品の麺棒なんてないです」
ライダー「専門の業者から取り寄せた方が確実なのでは?」
士郎「いや、時間がないからなぁ……」
桜「ーーそうだ、ライダーが使っていたあの武器はどうですか?」
14 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/06/27(水) 02:30:52.54 ID:B36hnpLHO
士郎「あ、確かに。あれ麺棒代わりにちょうど良さそうだよな」
ライダー(サクラ、あなたって人は……)
ライダー「あの、失礼を承知で言いますがーーなんですか馬鹿ですか?」
桜「ライダー……?」
ライダー「馬鹿ですかーー士郎」
士郎「なんでさっ!?」
ライダー「た、確かに英霊の武器を使えば料理の格も上がるかもしれません(そんなわけないですけど)」
ライダー「ですが、私のそれは麺をこねるには不向きです(適当)」
士郎「なるほどな……。でも、英霊の武器って発想はなかったな」
ライダー(当たり前です。どうしてサクラは何も言わないんですか)
士郎「それじゃ、麺棒代わりになりそうな武器を探すか」
ライダー(どうしてそうなるんですか)
桜「そうですね、先輩」
ライダー(サクラッ……!?)
15 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/06/27(水) 02:32:27.21 ID:B36hnpLHO
士郎「ライダーすまん、麺棒代わりになりそうな武器に心当たりはあるか?」
ライダー「そうですね……(あるわけないでしょう)」
ライダー「バーサーカーではどうでしょう?(適当)」
士郎「ああ、確かにあのなんかでかいやつは麺棒にピッタリだな!!」
桜「神格もありそうですし、いいですね!」
士郎「ありがとうライダー、イリヤに頼んでみるよ」
桜「ありがとう、ライダー」
ライダー「……」
ライダー「もう私、知りませんよ……」
16 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/06/27(水) 02:34:34.79 ID:B36hnpLHO
【衛宮邸】
士郎「ーーおーい」ガラッ
セイバー「シロウと桜……? 今日は随分と早い帰宅ですね」
士郎「いや、仕事中なんだがーーそうだ!」
セイバー「……?」
桜「どうしたんですか?」
士郎「セイバーを見て思いついたんだが、麺棒の前に包丁を調達しよう!!」
桜「包丁を……ですか?」
士郎「ああ、究極の包丁だ。麺を切る際に必要になる」
セイバー「あの、一体どういうことですか?」
士郎「あのな、実はーー」
セイバー「はあ、なるほど……。それで究極の道具が必要なわけですね」
士郎「そうだ」
セイバー「ということは、まさかーー」
士郎「ああ。セイバーのエクスカリバーを貸してくれないか?」
17 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/06/27(水) 02:36:43.24 ID:B36hnpLHO
桜「……なるほどっ!!」
セイバー「なるほどーーじゃないですよ!!」
桜「……え?」
セイバー「私のエクスカリバーは宝具であって、調理器具ではありません!!」
士郎「エクスカリバーを麺切り包丁の形にすることはできるか?」
セイバー「人の話を聞いて下さい!!」
士郎「ーーセイバー」
セイバー「……?」
士郎「セイバー、究極の麻婆ラーメンを食べてみたいか?」
セイバー「はい(即答)」
士郎「それを作るには、セイバーの力が必要なんだ」
セイバー「しょうがないですね」
セイバー「いわばこれは戦争。私はいつだってシロウの味方ですから」
セイバー「助太刀致しましょう」キリッ
士郎「よし、包丁はこれで決まりだ」
桜「やりましたねっ!」
18 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/06/27(水) 02:39:21.97 ID:B36hnpLHO
イリヤ「ーーもー、騒がしいけどどーしたのー?」
士郎「お、イリヤ。いいところに来たな!」
イリヤ「シロウにサクラ? 今日は随分と早いのね」
士郎「いや、まだ仕事中なんだ」
士郎「こうこうこういうわけがあってな」
イリヤ「……はあ、なるほど」
イリヤ「それでバーサーカーのあれを麺棒に使いたいのね?」
士郎「そうだ。駄目か……?」
イリヤ「いいわよ」
士郎「え? いいのかっ!?」
イリヤ「その代わり私にも究極の麻婆ラーメン食べさせてよね?」
士郎「ああ、もちろんだ!!」
イリヤ「楽しみにしてるからねっーーあ、そうだ」
士郎「どうした?」
イリヤ「麺棒なら、ランサーの槍の方がいいんじゃない?」
士郎「ああ、あれは駄目だ。先が尖ってるから」
桜「そっか……! 危ない、ですもんね。尖ってるから……」
イリヤ「まあ、確かに先が尖ってるから危ないわね」
セイバー「槍は調理器具じゃありませんしね。これはいけない」
士郎「ーーよし、包丁と麺棒は揃った! これで道具は完璧だな」
士郎「後は……」
19 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/06/27(水) 02:42:25.70 ID:B36hnpLHO
【スーパーマーケット・ケルト】
ランサー「坊主とお嬢ちゃん……? なんだ、冷やかしなら帰ってくれよな」
士郎「冷やかしなんかじゃないぞ、店長さん」
ランサー「嫌味か? バイトだよバイト」
桜「へぇー、ランサーさんってスーパーの店長さんなんですね! 凄いです!」
ランサー「雇われだよ!」
ランサー「……それで、何か用か? 俺は忙しいんだ」
士郎「実はーー」
ランサー「……究極の食材だァ!?」
ランサー「わりぃが、タダで相談に乗ってやる義理はねぇぞ」
士郎「ーー入手困難な日本酒が手に入ったんだけど」スッ
ランサー「ほぅ……。いいぜ、少しくらいは聞いてやるーー」
20 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/06/27(水) 02:44:53.55 ID:B36hnpLHO
【バックヤード】
ランサー「ーーそれで、国産の小麦粉が欲しいってわけか」
士郎「ああ、中華麺を作るのに必要なんだ。クオリティが高いものが欲しい。一番高いものを……」
ランサー「外国産の小麦粉じゃ駄目なのか?」
士郎「駄目だ。外国産の小麦粉は輸出する際に悪くならないよう、処置が施してある」
士郎「そのせいで小麦本来の風味が損なわれてしまうんだ」
ランサー「ほぅ……。というか、それだったら質のいい中華麺を使えばいいだけなんじゃねーか? うちにも置いてあるぞ?」
桜「手打ち……がいいみたいなんです」
士郎「ああ。外国産の小麦粉をかん水で誤魔化して作っているようじゃ駄目だ」
士郎「かん水だって、かん水を入れると中華麺らしい麺が出来上がるかもしれない。だけど、かん水の風味が小麦粉本来の良さを消してしまう。だから俺はかん水も使わない」
ランサー「……それって、中華麺と言えるのか?」
21 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/06/27(水) 02:47:59.25 ID:B36hnpLHO
士郎「俺たちがイメージしている中華麺とは、かん水を使った黄色い麺だ。確かにそうだ」
士郎「だけど、それはいわばインプリンティングだ」
桜「インプリンティング……。刷り込みのことですか? 鳥の雛の……」
士郎「ああそうだ。『中華麺とはそうであるもの』という思い込みがあるんだ」
士郎「だが、本当にいいものを作ろうとしたら、この思い込みが邪魔になる」
士郎「あの中華料理店でもそうだったーー麻婆ラーメンの麻婆豆腐は悔しいくらいに良かったのに、中華麺が全てを台無しにしていたんだ」
士郎「まるで小学校の給食に出てくるような安っぽい中華麺……。あれが麻婆豆腐の良さを全て帳消しにしてしまった」
士郎「だから、俺は中華麺も手打ちで作る。手打ちの太麺だ。手打ちにすることで小麦粉本来の風味を最大限に引き出せるし、太麺にすることでドロドロした麻婆豆腐によく絡む。そして、適度なコシも加わって食べ応えがある」
桜「なるほど……!」
ランサー「そうか……。まあ、そう言うなら、うちにある最上級の国産小麦粉を分けてやってもいいぜ? 高級料理店とかでも使ってるやつだ」
士郎「すまないな、ありがとう」
ランサー「まあ、この日本酒をもらった借りがあるしな。もってけ泥棒」
桜「ありがとうございます……! これで麺はクリアですね……!」
士郎「次はーー」
※設定・キャラ崩壊注意。
書き手の料理知識はゼロなので全てデタラメです。本気にしないでください。
2 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/06/27(水) 01:59:59.04 ID:B36hnpLHO
士郎(聖杯戦争……。あの凄惨な戦いから歳月は流れ……)
士郎(俺は冬木新聞社に就職した)
士郎(そこから早数年ーー新聞社の記念企画として発足した『究極のメニュー』というコラムを担当することになったんだ)
士郎(今はその究極のメニューを追い求め、それを記事にする日々……)
士郎(料理はもともと得意分野であったから、これ以上の適職はないと思ったが)
士郎(これがまた色々と大変で……)
士郎(ともかく、そんな毎日で身を削っているこの頃……)
3 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/06/27(水) 02:03:03.93 ID:B36hnpLHO
桜「ーー先輩」
士郎「……?」
桜「あの、相談があるのですが」
士郎(こいつは俺の後輩社員の間桐桜。そう、あの桜は俺と同じ会社に就職したんだ)
士郎(そしてなんの巡り合わせか、同じ『究極のメニュー』を担当する記者として、こうして共に行動している)
士郎「すまん桜、後にしてくれないか?」
桜「え? どうしてですか?」
士郎「今大事なところなんだ」
桜「あの……。先輩、競馬新聞を見ながら大事な用とは何ですか?」
士郎「……」
桜「……先輩?」ニコォ
士郎「わ、分かったよ桜! で、何の相談だ?」
桜「次のメニューのことなんですが、中華料理はどうでしょうか?」
士郎「中華ねえ、今更感もあるが……。それに中華といっても色々あるし」
桜「はい。確かに過去に取り上げたこともありますが……」
士郎「じゃあ、何で今更?」
桜「あの、兄さーーいえ、副部長が」
慎二「ーー衛宮」
4 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/06/27(水) 02:04:51.41 ID:B36hnpLHO
士郎「慎二、どうしたんだ?」
慎二「慎二じゃない。副部長だろ?」
士郎「慎二、どうしたんだ?」
慎二「……」
士郎「……」
慎二「ちなみに僕はサトノダイヤモンドに賭けたよ」
士郎「……一番人気に目を奪われてレースを逃す典型だな」
慎二「な、何だと!?」
士郎「俺はストロングタイタンだ」
桜「……先輩?」ニコォ
士郎「そうだ副部長ーーそれで、何か御用でしょうか?」
慎二「ふん……。次のメニューは中華にしてもらうぞ、衛宮」
士郎「それは、なんでさ……?」
慎二「中華ーー確かに中華といってもその種類はごまんとある」
慎二「創作中華から大衆中華まで新しいメニューが続々と生まれているジャンルだ!」
慎二「その中で、新たな世界を切り開くような、そんな斬新なメニューを時代は求めているのさ!!」
慎二「僕たちには、人々にそれを知らせる義務がある!!」
慎二「……というわけで、君たちにはそんなメニューを取り上げ、そして記事にして欲しい」
慎二「あの忌々しい『財宝新聞』をあっと言わせるようなメニューを頼んだよーー」スッ
5 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/06/27(水) 02:07:21.84 ID:B36hnpLHO
桜「……というわけなんです」
士郎「なるほどな……。斬新なメニューか……」
士郎「おっ、丁度昼休みかーー桜、それじゃ昼飯は中華にしようぜ」
士郎「参考がてら、周辺の中華料理を調べてみよう」
桜「はいっ!」
【中華・言峰飯店】
桜「このお店はどうでしょうか、先輩ーー」
士郎「ほう……。この店は初めて見たな」
桜「そうなんですか!? 人気みたいですよ?」
士郎「桜は来た事あるのか?」
桜「わたしも実は初めてなんですが……。でも、最近名前をよく聞きます」
桜「なんでも、麻婆ラーメンが人気だとか」
士郎「麻婆ラーメンねぇ……。俺は好きじゃないな」
士郎「麻婆豆腐に白飯なら分かる。だけどそれをラーメンにかけるなんて、麻婆豆腐とラーメンのいいところを潰している。中華への冒涜だ」
士郎「日本人は外国の寿司についてあれこれうるさい癖に、この麻婆ラーメンや、それに天津飯や中華丼など、日本で改造されたものについては無頓着だ」
士郎「料理というのはルーツに敬意を持たなければならない。それなのにーー」
イラッシャイ
桜「ーーあ、二名です」
士郎「さ、桜ぁ!?」
桜「先輩、何してるんですか?」
士郎「……しょうがないなぁ」
7 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/06/27(水) 02:12:11.78 ID:B36hnpLHO
【店内】
綺礼「いらっしゃいませ」
桜「……ッ!?」
士郎「ゲッ……。なんでアンタがここに……!!」
綺礼「知らなかったのか?」
士郎「知ってるわけないだろ……。だいたい、アンタは神父だろ……」
綺礼「中華料理店のマスター兼神父だ」
士郎「神父がおまけになっていいのかよ……」
綺礼「まぁまぁーー当店オススメの麻婆ラーメンを、食うか?」
士郎「食うか!」
桜「先輩……。先輩のこだわりはともかく、この麻婆ラーメンって斬新なメニューじゃないですか?」
士郎「……いや、今に始まったメニューではないだろ」
士郎「中華料理店では普通に見るメニューだ」
士郎「まあ、影が薄いから一般に浸透しているとも言えないけどな」
桜「ーーでは、今一度注目してみる価値はあるのでは?」
士郎「でもなぁ、やっぱり俺はーー」
桜「麻婆ラーメン二つでお願いします」
綺礼「かしこまり(イケボ)」
士郎「なんでさっ!?」
8 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/06/27(水) 02:14:53.44 ID:B36hnpLHO
【数分後】
綺礼「麻婆ラーメン二丁、お待ち」ドン
桜「うわぁ……! とてもいい香りがします……!」
桜「いただきますっ!」ズル
士郎「……」ズル ジュポッ ジュルル
桜「……」
桜「……さすがに辛いですね。でも、これが本場の味ってことでしょうか?」
桜「辛さの刺激が来て、食欲も増しますね……! どんどん食べちゃう……!」ズル
士郎「……」
桜「……先輩?」
士郎「なんだかなぁ……。やっぱり、俺が予想した通りだ」
桜「え……?」
士郎「そもそもこのーー」
???「ーー何だこの料理はァ!? ふざけるなぁ!! 馬鹿野郎ォォ!!」
9 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/06/27(水) 02:18:35.49 ID:B36hnpLHO
士郎「……!!」
桜「……!?」
舞弥「ーーいけません、切嗣!」
切嗣「うまい中華料理があると聞いて来てみれば、何だこのふざけた料理はァ!? 僕を侮辱してるのかいッ!?」
桜「あ、あのお方は……!?」
士郎「……」
桜(ケリィ・切嗣ーー天才的な芸術家であり、食に対しても並々ならぬこだわりを持つ食通)
桜(そのこだわり故か、完全会員制の高級料亭『愉悦倶楽部』を立ち上げ、わたしたちの競合会社でもある財宝新聞社のコラム、『至高のメニュー』のアドバイザーも務めている……)
桜(そしてーー)
士郎「……」
桜(ケリィさんは、先輩の父親でもある……)
舞弥「切嗣、おやめください……!」
切嗣「麻婆豆腐をラーメンにかけるだとォっ!? 中国4千年の歴史を冒涜してるのかいっ!?」
綺礼「ですが……。まずはお召し上がりになって……」
切嗣「なんだとォっ!? こんなふざけた料理を僕に食えと!?」
切嗣「そもそもラーメンなどという化学調味料にまみれたふざけたものに麻婆豆腐をかけるなんて、侮辱だ!!」
綺礼「ラーメンもそのルーツは中国でーー」
切嗣「これは料理とは呼べん!! 畜生の餌だ!!」
切嗣「こんな料理でもない餌を食えと!? 迷 惑 千 万 !!」
切嗣「帰らせてもらうよ!!」
舞弥「き、切嗣……!」
士郎「ーー待てよ、じいさん」
10 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/06/27(水) 02:22:10.65 ID:B36hnpLHO
桜「せ、先輩!?」
綺礼「……」
切嗣「……なんだと!?」
切嗣「また君たち二人か……!! 今度は何の真似だい!?」
士郎「じいさん、あんたそのラーメンを一口でも食ったのか?」
切嗣「ふん、こんなふざけたものを僕が食うわけないだろう」
士郎「権威のあるものだけに固執し、新しいものを受け入れない……。食通の名が泣くぜ?」
桜(先輩、ブーメランになってます……)
士郎「それとも、頭が凝り固まって痴呆になっちまったのか?」
切嗣「な、なんだとォ……!?」
士郎「確かに、この麻婆ラーメンは中華風ではあっても中華料理そのものではない。アレンジメニューだ」
士郎「麻婆豆腐というアクセントの強い料理が麺の良さを殺し、中途半端な代物になってしまう」
士郎「だが、もしお互いの良さを活かすことができれば、新たな歴史が生まれる」
士郎「可能性のあるメニューだ」
切嗣「ほう……。そこまで言うなら、その可能性のある麻婆ラーメンとやらを用意できるんだろうね?」
桜「先輩……」
綺礼「……」
士郎「ああ。もちろんさ」
11 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/06/27(水) 02:24:52.27 ID:B36hnpLHO
桜「先輩……!?」
切嗣「いいだろうーー一週間後、一週間後だ。僕に完璧な麻婆ラーメンを食わせてみるんだね」
舞弥「切嗣……!! お待ちください!!」
ガララ
士郎「……」
桜「先輩……。良かったんですか?」
士郎「ああ、やってやるさ。あのじいさんに一泡吹かせてやろう」
桜「ーー麻婆豆腐とラーメンのいいところを潰している。中華への冒涜だ」
士郎「……」
桜「っておっしゃっていましたけど……」
士郎「だ、だから、俺は可能性のあるメニューについては柔軟な思考を持っているんだ」
士郎「お互いの良さを潰さず、活かすことができたならーー記事にできるような面白いメニューになる」
士郎「よし、帰って戦略を立てよう!」ガララ
桜「あ、先輩待って下さい!!」
綺礼「……」
綺礼「お代……」
12 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/06/27(水) 02:26:41.27 ID:B36hnpLHO
士郎(そして、究極の麻婆ラーメン作りが始まった)
士郎「ーー究極の料理を作るには、究極の道具が必要だ」
士郎「というわけで、まずは道具の調達だ」
桜「でも、どうやって……?」
士郎「俺のトレースで複製もできるが、いかんせん見たことのないものは作れない」
桜(え、そうなんだ……)
士郎「そうだな……。まずはあそこに行ってみよう」
13 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/06/27(水) 02:28:48.12 ID:B36hnpLHO
【とある骨董品屋】
桜「こんにちは、ライダー」
ライダー「サクラーーと士郎も? どうしたんですか?」
士郎「やあ、ライダー。実はなーー」
ライダー「……はあ、なるほど」
ライダー「それで、『究極の麺棒』が欲しいと……?」
士郎「そうだ。ここに来ればあると思ったんだが」
ライダー「いや、あるわけないでしょう(即答)」
士郎「え、ないのか?」
ライダー「確かにここは骨董品屋ですが、骨董品の麺棒なんてないです」
ライダー「専門の業者から取り寄せた方が確実なのでは?」
士郎「いや、時間がないからなぁ……」
桜「ーーそうだ、ライダーが使っていたあの武器はどうですか?」
14 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/06/27(水) 02:30:52.54 ID:B36hnpLHO
士郎「あ、確かに。あれ麺棒代わりにちょうど良さそうだよな」
ライダー(サクラ、あなたって人は……)
ライダー「あの、失礼を承知で言いますがーーなんですか馬鹿ですか?」
桜「ライダー……?」
ライダー「馬鹿ですかーー士郎」
士郎「なんでさっ!?」
ライダー「た、確かに英霊の武器を使えば料理の格も上がるかもしれません(そんなわけないですけど)」
ライダー「ですが、私のそれは麺をこねるには不向きです(適当)」
士郎「なるほどな……。でも、英霊の武器って発想はなかったな」
ライダー(当たり前です。どうしてサクラは何も言わないんですか)
士郎「それじゃ、麺棒代わりになりそうな武器を探すか」
ライダー(どうしてそうなるんですか)
桜「そうですね、先輩」
ライダー(サクラッ……!?)
15 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/06/27(水) 02:32:27.21 ID:B36hnpLHO
士郎「ライダーすまん、麺棒代わりになりそうな武器に心当たりはあるか?」
ライダー「そうですね……(あるわけないでしょう)」
ライダー「バーサーカーではどうでしょう?(適当)」
士郎「ああ、確かにあのなんかでかいやつは麺棒にピッタリだな!!」
桜「神格もありそうですし、いいですね!」
士郎「ありがとうライダー、イリヤに頼んでみるよ」
桜「ありがとう、ライダー」
ライダー「……」
ライダー「もう私、知りませんよ……」
16 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/06/27(水) 02:34:34.79 ID:B36hnpLHO
【衛宮邸】
士郎「ーーおーい」ガラッ
セイバー「シロウと桜……? 今日は随分と早い帰宅ですね」
士郎「いや、仕事中なんだがーーそうだ!」
セイバー「……?」
桜「どうしたんですか?」
士郎「セイバーを見て思いついたんだが、麺棒の前に包丁を調達しよう!!」
桜「包丁を……ですか?」
士郎「ああ、究極の包丁だ。麺を切る際に必要になる」
セイバー「あの、一体どういうことですか?」
士郎「あのな、実はーー」
セイバー「はあ、なるほど……。それで究極の道具が必要なわけですね」
士郎「そうだ」
セイバー「ということは、まさかーー」
士郎「ああ。セイバーのエクスカリバーを貸してくれないか?」
17 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/06/27(水) 02:36:43.24 ID:B36hnpLHO
桜「……なるほどっ!!」
セイバー「なるほどーーじゃないですよ!!」
桜「……え?」
セイバー「私のエクスカリバーは宝具であって、調理器具ではありません!!」
士郎「エクスカリバーを麺切り包丁の形にすることはできるか?」
セイバー「人の話を聞いて下さい!!」
士郎「ーーセイバー」
セイバー「……?」
士郎「セイバー、究極の麻婆ラーメンを食べてみたいか?」
セイバー「はい(即答)」
士郎「それを作るには、セイバーの力が必要なんだ」
セイバー「しょうがないですね」
セイバー「いわばこれは戦争。私はいつだってシロウの味方ですから」
セイバー「助太刀致しましょう」キリッ
士郎「よし、包丁はこれで決まりだ」
桜「やりましたねっ!」
18 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/06/27(水) 02:39:21.97 ID:B36hnpLHO
イリヤ「ーーもー、騒がしいけどどーしたのー?」
士郎「お、イリヤ。いいところに来たな!」
イリヤ「シロウにサクラ? 今日は随分と早いのね」
士郎「いや、まだ仕事中なんだ」
士郎「こうこうこういうわけがあってな」
イリヤ「……はあ、なるほど」
イリヤ「それでバーサーカーのあれを麺棒に使いたいのね?」
士郎「そうだ。駄目か……?」
イリヤ「いいわよ」
士郎「え? いいのかっ!?」
イリヤ「その代わり私にも究極の麻婆ラーメン食べさせてよね?」
士郎「ああ、もちろんだ!!」
イリヤ「楽しみにしてるからねっーーあ、そうだ」
士郎「どうした?」
イリヤ「麺棒なら、ランサーの槍の方がいいんじゃない?」
士郎「ああ、あれは駄目だ。先が尖ってるから」
桜「そっか……! 危ない、ですもんね。尖ってるから……」
イリヤ「まあ、確かに先が尖ってるから危ないわね」
セイバー「槍は調理器具じゃありませんしね。これはいけない」
士郎「ーーよし、包丁と麺棒は揃った! これで道具は完璧だな」
士郎「後は……」
19 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/06/27(水) 02:42:25.70 ID:B36hnpLHO
【スーパーマーケット・ケルト】
ランサー「坊主とお嬢ちゃん……? なんだ、冷やかしなら帰ってくれよな」
士郎「冷やかしなんかじゃないぞ、店長さん」
ランサー「嫌味か? バイトだよバイト」
桜「へぇー、ランサーさんってスーパーの店長さんなんですね! 凄いです!」
ランサー「雇われだよ!」
ランサー「……それで、何か用か? 俺は忙しいんだ」
士郎「実はーー」
ランサー「……究極の食材だァ!?」
ランサー「わりぃが、タダで相談に乗ってやる義理はねぇぞ」
士郎「ーー入手困難な日本酒が手に入ったんだけど」スッ
ランサー「ほぅ……。いいぜ、少しくらいは聞いてやるーー」
20 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/06/27(水) 02:44:53.55 ID:B36hnpLHO
【バックヤード】
ランサー「ーーそれで、国産の小麦粉が欲しいってわけか」
士郎「ああ、中華麺を作るのに必要なんだ。クオリティが高いものが欲しい。一番高いものを……」
ランサー「外国産の小麦粉じゃ駄目なのか?」
士郎「駄目だ。外国産の小麦粉は輸出する際に悪くならないよう、処置が施してある」
士郎「そのせいで小麦本来の風味が損なわれてしまうんだ」
ランサー「ほぅ……。というか、それだったら質のいい中華麺を使えばいいだけなんじゃねーか? うちにも置いてあるぞ?」
桜「手打ち……がいいみたいなんです」
士郎「ああ。外国産の小麦粉をかん水で誤魔化して作っているようじゃ駄目だ」
士郎「かん水だって、かん水を入れると中華麺らしい麺が出来上がるかもしれない。だけど、かん水の風味が小麦粉本来の良さを消してしまう。だから俺はかん水も使わない」
ランサー「……それって、中華麺と言えるのか?」
士郎「俺たちがイメージしている中華麺とは、かん水を使った黄色い麺だ。確かにそうだ」
士郎「だけど、それはいわばインプリンティングだ」
桜「インプリンティング……。刷り込みのことですか? 鳥の雛の……」
士郎「ああそうだ。『中華麺とはそうであるもの』という思い込みがあるんだ」
士郎「だが、本当にいいものを作ろうとしたら、この思い込みが邪魔になる」
士郎「あの中華料理店でもそうだったーー麻婆ラーメンの麻婆豆腐は悔しいくらいに良かったのに、中華麺が全てを台無しにしていたんだ」
士郎「まるで小学校の給食に出てくるような安っぽい中華麺……。あれが麻婆豆腐の良さを全て帳消しにしてしまった」
士郎「だから、俺は中華麺も手打ちで作る。手打ちの太麺だ。手打ちにすることで小麦粉本来の風味を最大限に引き出せるし、太麺にすることでドロドロした麻婆豆腐によく絡む。そして、適度なコシも加わって食べ応えがある」
桜「なるほど……!」
ランサー「そうか……。まあ、そう言うなら、うちにある最上級の国産小麦粉を分けてやってもいいぜ? 高級料理店とかでも使ってるやつだ」
士郎「すまないな、ありがとう」
ランサー「まあ、この日本酒をもらった借りがあるしな。もってけ泥棒」
桜「ありがとうございます……! これで麺はクリアですね……!」
士郎「次はーー」
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