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幼馴染「……童貞、なの?」 男「」.

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Part27
776 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/08/09(火) 12:20:43.87 ID:IGAQdTino
 ここらへんで夏祭りと言えば、駅前の商店街で開催されるものを言う。
 最近では商店街自体が寂れはじめているので、どことなく哀愁漂う祭りではあるが、まぁ地方の祭りなんてそんなものかもしれない。
 商店街全域に出店が立ち並んでいる。その列はやたらと長い。 
 人々は浴衣を着たりして、家族や友人や恋人と一緒にやってくる。
 やたらと高いカキ氷やらお好み焼きやら焼きそばやらを食べて、「美味しい」という。
 商店街から脇道を逸れて街中を歩いてみると、家々の立ち並ぶ道の間に、石造りの水路があることに気付く。
 水路が街中を貫いて存在している雰囲気は、なんとなくいい感じ。昔風で美しい。
 しかもそれに沿って桜の木が伸びていたり。
 
 歩くと癒される。
 夜。
 俺たち(七人)は、賑わいだ雑踏から遠くの、そんな道を歩いていた。
 祭りに行く人数が多かったので、アキラさんに車を出してもらったのだが、当然、駐車場なんてなかなか空いていない。
 そんなわけで、割と遠くで下ろしてもらって、そこから歩いていくことになったのだ。
 ちなみにアキラさんとユリコさんは今日は二人で夏祭りを楽しむらしい。仲が良いのはよいことだ。
 女子勢は浴衣率が高かった。
 着ていないのは屋上さんと後輩の二人。妹と幼馴染はせっかくなのでと浴衣を着ていた。
 巾着まで持って草履まで履く徹底ぶり。懐からがま口財布でも出しかねない。
 空には月が出てきたが、街灯の明かりが周囲を照らしていた。
 なんとなくしんみりする。

777 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/08/09(火) 12:21:25.83 ID:IGAQdTino
 るーとタクミは祭りに行くのが楽しみで仕方ないらしく、ずっとは騒いでいる。
 それを見て、後輩と幼馴染があんまりはしゃいで、はぐれないように、と諌める。
 妹と屋上さんはその少し後ろを歩いている。少しずつ馴染んでいるようで、ふたりだけでも話をするようになった。
 いまいちどんな話をしているのかは想像できないのだけれど。
 出店のある通りに辿りつく。人の話し声が連なって、周囲を覆っていく。
 ともすれば隣を歩く人の声も聞こえないような喧騒。
 
 通るのに難儀するほどではないものの、それでも多くの人が祭りにやってきていた。
 浴衣を着ていたり、水ヨーヨーを持っていたり。
 
 射的だのくじ引きだのが並んで、広場ではステージの上で和太鼓の演奏がされていた。
 
 食べ物を食べたり、ステージを眺めたり、遊んでみたり。
 
 女性陣がタクミとるーを連れて盛り上がったので、俺はひとり置き去りになる。 
 こういうときのテンションだと、あんまり話に入れない。なんとなく。
 
 仕方ないのでフランクフルトやアメリカンドッグやチョコバナナやお好み焼きをひとりで食べた。
 すぐに腹がつらくなった。
「なにやってんだ俺は……」
 もはや自身を犠牲にしたギャグにしかならない。

778 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/08/09(火) 12:21:59.40 ID:IGAQdTino
 出店の中には普段見ないようなものもあった。
 最たるものとして、飴細工が挙げられる。割り箸大の一本の棒に、干支の動物の形をした飴を作って売る出店。
 注文を受けてから作り始めるため、待ち時間は長いが、物珍しさも相まって人は列を作る。
 るーとタクミが欲しがって、長時間待たされることになる。
 出店なんて多少は待たされるものだし、そうすることが祭りのメインなのだから、あんまり苦にはならない。
 慌てたっていいことはない。  
 人波の中を歩いても、夜なので少し涼しい。
 買ってきた飴を舐めながら、ふたりは笑いながら歩いていた。なんか癒される。
 でも。
 後輩と幼馴染はその少し後ろを歩いていて、
 妹と屋上さんは、さらに後ろを歩いていて、
 俺は、一番後ろを一人で歩いている。
 なんだかなぁ、という気持ち。
 結局、集団の中にいても、俺は取り残されている気がする。
 馴染めていない気がする。自分だけ。
 置いてけぼりの気持ち。
 子供っぽい疎外感。
 綿飴でも食うかな、と思って立ち止まる。
 携帯があるし、はぐれたらはぐれたでなんとかなる。
 出店に並んで、綿飴を頼む。
 少し待たされる間、手持ち無沙汰になる。
 そのとき、服の裾を引かれた。

779 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/08/09(火) 12:22:43.41 ID:IGAQdTino
「なにやってんの?」
 屋上さんがやたらと近くにいた。
 遠くでみんなも立ち止まっている。
 なんだろうねこれは。
 この微妙にうれしい感じ。気恥ずかしい感じ。なにやってんだ俺は、という感じ。
「綿飴、私も欲しい」
 屋上さんがそういうので、二つ目を注文する。ちょっと待って、受け取って、一緒にみんなを追いかける。
 なんか。
 ちょっとうれしかった。
 置いてかれてないや、っていう。
 まぁ、それだけのことなのだけれど。
 ちょっとどきっとした。

780 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/08/09(火) 12:23:17.47 ID:IGAQdTino
 そろそろ帰る頃合かな、と思って引き返そうとすると、妹が屈みこんだ。
「どうした?」
 と、見てみると、草履の鼻緒に擦れたのか、指と指の間が赤くなっていた。
「痛い」
 まぁ、こういうこともある。
「ほれ。おんぶ」
「なんで?」
「痛いんだろ」
「でも浴衣だし」
「……何か問題が?」
「恥ずかしいです」
 埒が明かないので、強引に負ぶった。
「この馬鹿兄。周りの目を少しくらい気にしろ」
 なぜか怒られる。
 
 後輩が微笑ましそうにこっちを見ていた。
 ……なんで一番年上みたいな雰囲気をかもし出しているんだ、あいつは。
 どうせ駐車場までだし、ちょっとくらい我慢してもらおう。
 来た道を遡って駐車場に戻る。大人ふたりには幼馴染が電話した。


781 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/08/09(火) 12:23:44.52 ID:IGAQdTino
 なんとなく落ち着かない。
「どうしたの?」
 そわそわしていると、背中に乗る妹に声を掛けられた。肩越しに返事をする。
「浴衣って帯とかで胸が当たらないもんだと思ってたんだけど、意外と当たるんだな」
「最低だこの兄」
 比較的真面目な意見です。
 それでも妹は、強引に離れようとはしなかった。疲れてるらしい。
 しばらく歩くと、不意に背中にかかる重みが増した。
 寝たっぽい。
「……この状況でよく寝れるなこいつは」
 呆れる。
 三分かからないって。
 世界中の赤ん坊がこうだったら、育児ノイローゼも半数がなくなるだろう。
 駐車場につくと、ユリコさんたちは既に車に乗っていた。
 
 帰りの道の途中で、るーとタクミは眠ってしまった。
 妹も目を覚まさないまま幼馴染の家につく。アキラさんは家まで送ると言ってくれたが、近いので断ることにした。
 屋上さんたちはアキラさんに送られていくことにしたらしい。それがいい。
 別れ際、屋上さんと目が合った。
 なんか、変な気持ち。
 そわそわする。

782 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/08/09(火) 12:24:11.05 ID:IGAQdTino
 家に帰って妹をベッドに寝かせようとしたところで、浴衣のままではまずいだろうと気付く。
 どうすることもできないので、とりあえず起こすことにした。
 妹はしばらく眠そうにしていたけれど、やがてしっかりと起きたようだった。
 自室に戻ってベッドに倒れこむ。
 疲れた。
 
 人の多いところはあまり得意じゃないし、騒がしい場所にいると混乱する。気疲れもあった。
 でもまぁ、楽しかった。
 明日も行ってみようかな、と思う。
 全身がほどよく疲れていたら、その日は心地良く眠ることができた。

783 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/08/09(火) 12:25:29.52 ID:IGAQdTino
つづく

785 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(静岡県) :2011/08/09(火) 12:31:47.65 ID:4n57kVyt0
さあてどこにおちるかwktk
乙です!

787 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/08/09(火) 12:34:11.26 ID:zhuYl9+p0
サチ姉ちゃんいいな
ともかく乙

789 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東海) :2011/08/09(火) 12:46:26.25 ID:phJx0+lAO

屋上さんがかわいすぎる

790 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(茨城県) :2011/08/09(火) 12:52:50.01 ID:a9Kcd04Do

幼馴染空気回だったな

791 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/08/09(火) 12:56:27.05 ID:e4xCfo91o
屋上さんがどんどん強くなっていってるなww
乙楽しみに待ってる

825 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/08/10(水) 11:04:30.51 ID:1HXzWSwXo
 翌日は誰も家に来なかった。起きたのは昼過ぎ。暇だったので、適当に街をぶらつくことにした。
 レンタルショップや本屋なんかをぶらりと回って暇を潰す。こういうことをしていると時間はあっという間にすぎる。
 とてもじゃないが、有意義とはいえない。かといって家でだらだら過ごすのも有意義ではない。
 今この瞬間も、課題を全部終わらせた上で、一学期の復習やら二学期の予習やらをやってる奴がいるんだろうか。
 ちょっと想像がつかない。
 アリとキリギリスの寓話(ホントはアリとセミらしいが、語感的にはキリギリスの方がいい)。
 遊んでばっかりの俺は、いつかそのツケを食らうことになるのかな、とか。
 柄にもなく真面目なことを考えたりもした。
 ボディーソープを詰め替えたばかりだったことを思い出して、近所のホームセンターに向かった。
 生活用品は一通り何でも揃う店。いつも使っているものを購入する。妹の選択。
 ひとりで買い物してるときって、なんか和む。特に生活用品の場合は。
 なんかこう、生活してるや、って気分になる。
 俺だけかもしれない。
 帰りにペットショップを覗くと、やっぱり幼馴染がいた。
「……かわいい」
 ガラス窓の向こうの子犬を見つめて瞳を輝かせていた。
 よく飽きないものだな、と思う。

826 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/08/10(水) 11:04:57.52 ID:1HXzWSwXo
 ガラス窓の向こうの子犬を見つめて瞳を輝かせていた。
 よく飽きないものだな、と思う。
 
 幼馴染は昔から犬を飼いたがっていた。ユリコさんがそれを認めなかったのは、遠出ができなくなるから。
 旅行好きな一家としては、やっぱりそれは痛かった。
 幼馴染も、犬を飼うことの責任と旅行にいけなくなることを考慮したうえで、納得はしていたが、やっぱり犬は好きで仕方ないらしい。
 暇を持て余すとここに来て窓を覗いてる。
 
 一度、祖父母の家に連れて行って‘はな'に会わせたことがある。すごく喜んでいた。
 帰り際に泣いてた。そこまでいくとちょっと怖い。
 声をかけると、幼馴染はハッとして振り返った。
「いつからいたの?」
「さっきから」
 実に十分間、彼女は俺に気付かずに子犬を眺めていた。
「一緒に帰ろうか」
「うん」
 並んで歩く。なぜだか赤信号に多くぶつかった。
 家につく頃には二時頃になっていた。幼馴染の家までつくと、ユリコさんに強引に誘われてお茶を飲まされた。

827 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/08/10(水) 11:05:51.19 ID:1HXzWSwXo
「トウモロコシ茹でたから」
「いただきます」
 好物。
 
「麦茶もどうぞ」
「いただきます」
 好物。
「あ、昼間お祭り行ってリンゴ飴買ってきたの。いる?」
「いやなんつーか」
 なんていえばいいんだろう、この人には。
 やりすぎって言葉がある。ユリコさんも知ってるだろうけど。
 ユリコさんは食べ物を置いていったあと、用事があるといって家を出て行った。幼馴染とふたりで取り残される。
「タクミは出かけてるの?」
「うん」
 タクミの両親もいないようなので、多分どこかに出かけてるんだろう。
 せっかくなので涼しい場所に行こうと思い、縁側に麦茶とトウモロコシを持って腰掛ける。
 
 幼馴染とふたりで並んでトウモロコシをかじる。
「美味い」
「うん」
 さっきから幼馴染が「うん」しか言ってない。
 しばらくだんまり。ゆるやかに流れる時間。

828 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/08/10(水) 11:06:18.78 ID:1HXzWSwXo
 最近じゃ珍しく、涼しい。
 明日からはまだ暑いらしい。残暑は九月半ばくらいまで続きそうだという。
 
 不意にポケットの中の携帯が鳴った。歌を設定すると外で鳴ったときになんとなく恥ずかしいので、初期設定のまま。
 画面を開く。メール一通。開く。屋上さんからだった。
 本文はなく、画像ファイルが添付されている。
 浴衣姿のるーが、カキ氷を食べながら出店の並ぶ商店街を歩いていた。かわいい。今日も祭りにいったらしい。
「タクミ、こっちにいつまでいるんだ?」
「たぶん、今週末くらいまで」
 両親の仕事の都合ってどうなってるんだろう。少しだけ疑問だった。
 
「……今週末」
 意外に近い。
 屋上さんのメールに対する返事を打っていると、幼馴染が何かを言おうとした。
「あのさ」
 こんなふうに、彼女は何かを言いかけることが多い。なぜか。
 そして最後には、「なんでもない」と言って話を終わらせる。
「……なに?」
 続きを促す。幼馴染は戸惑ったような表情をした。
「メール、誰から?」
「ああ」
 話している相手の前で携帯を弄るのは、さすがに失礼だったかな、と思う。
 でも、そういうことを気にする奴じゃない。
 親しき仲にも礼儀ありとはいえ、そんな瑣末な事柄で不愉快になるような間柄ではない。
 もちろんそれに甘え切ってなんでもしていいと思っているわけではないが、これは「そこまでのこと」とは思えなかった。

829 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/08/10(水) 11:06:51.57 ID:1HXzWSwXo
 少し考えてから、添付されてきた画像ファイルを見せる。
「ほら」
 幼馴染はディスプレイを見て少しだけ表情を強張らせた。なぜ?
「メールのやりとり、結構してるの?」
「そこまでではない。たまに来たり、送ったり」
 それも最近になってからだ。教えてもらったのがそもそもつい先日。
 メールをしたといっても、大した期間じゃない。キンピラくんとの回数の方がよっぽど多い。
 
 大抵が、こういう画像だったりとか、どうでもいいことだったりとか、家に行ってもいいかとか、そういう類のものだ。
「ねえ、好きなの?」
「え?」
 驚く。どうしてそうなる。
「何が?」
「彼女」
 判断に困る。
「メールのやりとりがあると、イコール好きなのですか」
「そうじゃないけど」
 幼馴染はもどかしそうに唸った。
「なんか、そんな感じがする」
「そんな感じ、とは」
「……そんな感じ」
 そんな感じがするらしい。
 話の流れから判断すれば、幼馴染には、俺が屋上さんのことを好きであるように見えるらしい。

830 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/08/10(水) 11:07:18.24 ID:1HXzWSwXo
 ぶっちゃけ、嫌いではないけれど。 
 というか、好きではあるけれど。
 それが恋愛感情かと訊かれれば、どうだろう。
 でもたしかに、好意の種類としては、るーや後輩に向かうものとは別のもの、という気もする。
「よく分からない」
 大真面目に答える。
 でも、最近なんか気になる。ふとしたときにどきっとする。
 そういうことはある。それが恋愛感情なのかどうかは、まだ分からない。まだ。
「……じゃあ、私のこと好き?」
「何言ってるのか君は」
 唐突な質問に呆れる。
「真面目に。シリアスに」
 と幼馴染が言うので、シリアスに考えてみる。
 幼馴染。
「……おまえとは、なんか、好きとか嫌いとかじゃないような気がするんだけど」
「というと?」
「きょうだいみたいなもので」
「……都合の悪いときばっかりそれだよね」
 彼女は少し棘のある声音で言った。強張った表情。距離を測りかねている。
「本当に妹ちゃんと同じように扱ってくれれば、納得もいくけど」
 そうは言われても、妹と幼馴染は同じ人物ではないし、立ち位置も違う。
 もし仮に、本当に幼馴染が俺の妹のひとりだったとしても、妹とまるで同じ扱いにはならないだろう。
 個人個人に対して態度が変わってしまうのは当然のことだし、仕方ないことだ。

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