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幼馴染「……童貞、なの?」 男「」.

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Part12
279 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/07/29(金) 09:37:39.60 ID:ormcuORco
 夕方までゲームをして過ごしてから、テストのことを思い出す。
 勉強してない。
 これはまずい。
 が、まだ二週間くらいある。
 大丈夫。うん。
 五時を過ぎた頃、幼馴染の母であるユリコさんがやってきた。
 ちなみに本名はユリコではない。どうしてこんなあだ名がついたのかは分からないが、俺の母がそう呼んでいた。
「久し振り。先月以来?」
 母とユリコさんは学生時代からの付き合いで、忙しい俺たちの両親に代わってよく面倒を見にきてくれた。
 最近でも、食事を一緒にとったりする。
 家族全員で揃って食事をとることより祖父母と食事をとることのほうが多いが、ユリコさんと一緒に食事をとることはさらに多かった。
 
 幼馴染と会ったのも、母親同士が友人同士だったという縁があったからこそだ。
「にしても、女ふたりに囲まれて休日を過ごすなんて、ちょっと爛れすぎてるんじゃないの?」
 片方は妹だ。それにもう片方は自分の娘だろうに。爛れるとか言うな。
「夏の魔性が俺を野獣にさせるんです」
 なぜかこの人を前にすると冗談を言わずにはいられない。

280 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/07/29(金) 09:38:08.32 ID:ormcuORco
「ユリコさんも爛れてみます?」
 四本目のコントローラーを差し込んだ。
 四人でプレイする。首位は妹。二位は幼馴染。三位は俺。四位がユリコさん。
「……ねえ、コントローラーがきかないんだけど」
「いやいやいや」
 正常に動作しております。
 俺のコントローラーの方をユリコさんに手渡して、もう一度レースをはじめる。
 首位妹。二位俺。三位幼馴染。四位ユリコさん。
「……調子悪いなぁ」
「いやいやいや」
 そんな素振り全然見せていなかった。
 その後、何度もステージを変えてプレイしたけれど、一位と四位は全部同じだった。
「……もういっかい。もういっかいだけだから」
「もう六時になりますよ」
 ユリコさんは負けず嫌いだ。

281 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/07/29(金) 09:38:36.07 ID:ormcuORco
 その後、ユリコさんに誘われて幼馴染の家で夕食をご馳走になる。
 焼肉。
 遠慮はいらない、と自分で思った。
 ばくばくと食べる。
 
「調子に乗りすぎ」
 ユリコさんの不興を買った。
「夏の太陽が俺をおかしくさせるんです」
「もう日、沈んだから」
 ちょっとだけ遠慮しながら食べた。
 どうせならお風呂も入っていけば、と勧められる。
 
 せっかくなので好意を受け取ることにした。

282 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/07/29(金) 09:39:08.07 ID:ormcuORco
「一緒に入るか」
「調子に乗りすぎ」
 妹の不興を買った。
「私と一緒に入る?」
 幼馴染が真顔で言った。
「なんばいいよっとねこの子は」
 思わずシリアスに突っ込む。
 このところペースが乱れっぱなしだ。
「どうせだから泊まっていけば?」
「調子に乗りすぎです」
 無礼を承知で俺が言う番だった。
 丁寧に断る。風呂まで入っておいて今更だが、一応テスト前だし勉強もしたい。
 お礼を言って、家に帰ることにした。
 いつものこととはいえ、もてなしが過度でちょっと遠慮してしまう。
「またきてねー」
 笑顔のユリコさんに見送られて玄関を出た。おじゃましました。ごちそうさまでした。
 日曜の和やかな夜が過ぎていった。

283 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/07/29(金) 09:39:49.15 ID:ormcuORco
 その夜は、ぐっすりと眠ったが、変な夢を見た。
 夢の中、俺は夕方の教室で「なおと」と一緒にいた。
「なにやってるんだよ相棒」
 なおとは困ったような声音で言う。
「らしくないよ……女の子と一緒の週末なんてらしくない」
 余計なお世話だ。
 俺は冷静に返事をする。
「よく考えてもみろよ、なおと。俺が何の代価も支払わず女子と一緒にいるなんてありえないじゃないか」
 夢の中の俺は、なんだか紳士な口調だった。
「つまり……?」
「つまり、だ。両津が金儲けに成功したあとに調子に乗りすぎて自滅するように、予定調和があるんだよ」
「予定調和?」
「爆発オチとか、そういう類の。上手く行っているってことは、悪いことが近付いているとみたね」


284 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/07/29(金) 09:40:26.12 ID:ormcuORco
「たとえば?」
「たとえばだ。明日、朝起きたとする」
「そいつはびっくりだ」
「まだ何も言ってねえ」
 思わず紳士口調が取れてしまうほど、なおとの反応は適当だった。
「明日の朝、目が覚めたら、俺に妹なんていないんだよ」
「……ん?」
「幼馴染もいない。全部妄想なんだよ」
「……そいつは予定調和って言うより、一炊の夢だ」
「もしくは幼馴染はいてもいい。ただ、普通に先輩と付き合ってるって可能性もあるな」
「もうちょっと前向きにものを考えられねえのか」
「じゃあ、明日朝起きたら、妹に彼氏ができてて、夜、遊びに来る。お兄ちゃん、外行っててくれる? って言われる」
「前向きになってないな」

285 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/07/29(金) 09:41:04.14 ID:ormcuORco
「とにかく、何かあるはずだ。絶対だ。今までのはサービスタイムみたいなもんなんだよ。ここから地獄のどん底に叩き落されるに決まってる」
 なおとは不可解そうにうなった。
「つまり、嫌な想像をしておくと、ちょっと嫌なことが起こっても平気だっていう感じの、心のバリア?」
「それをいわないで」
 なぜそこまで的確に俺の心を読むのか。
 良いことは続きすぎると怖い。
 いつ悪いことが起こるのかと。
「やっぱり臆病者だな、いつもの相棒だ」
「失敬な奴だなおまえは」
 俺のどこが臆病だと言うのか。ぜひ説明してみて欲しい。
 そう思ったときには、なおとの姿は見えなくなっていた。

286 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/07/29(金) 09:41:47.21 ID:ormcuORco
 しばらく俺は教室にひとりで取り残されていた。
 置いてけぼりの気持ち。
 絆創膏だらけの指。
 場面変わって、俺はベッドに横になっていた。
 仰向けに寝転がっている。不意に、タオルケットの内側に誰かの気配を感じた。
 自然な表情で、妹が眠っていた。今より少し幼い顔。泣き腫らした跡。
 冷蔵庫にしまいこんだバースデイケーキ。
 蒸し暑い夜なのに、妹は決して俺から離れようとしなかった。
 仕方ないな、と俺は思う。いろいろなことが仕方ない。
 両親が来れないのも、妹が悲しいのも、俺にはどうしようもないのも。
 妹の寝顔をしばらく見つめていると、なんだかよく分からない気持ちが湧き上がってくる。
 自分が甘えてるんだか甘えられてるんだか分からなくなる。混乱する。そういうことはよくあった。
 なんだか落ち着かない気持ちになって、俺は意地になったように眠ろうとする。
 けれど、寝ようとすればするほど、逆に目が冴えていく。
 仕方ない、と思う。
 寝付くまではしばらくの時間が必要だった。妹の寝息を聞きながら瞼を閉じる。一緒にいる、という感覚。
 不思議だ、と思いながら、俺はゆっくりと眠りに落ちていった

287 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/07/29(金) 09:42:13.23 ID:ormcuORco
つづく

288 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) :2011/07/29(金) 09:50:27.65 ID:e0et1h0o0
先に何が起こるか期待させる続き方はずるいよ。
まぁ楽しみになるからいいんだけどね。
乙です!

289 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/07/29(金) 10:01:11.63 ID:czMYRkTZo

続きが楽しみだ

293 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) :2011/07/29(金) 13:19:42.94 ID:d1mGBA5lo
持ち上げて落とす…これほど、辛いことはない…
この後の展開がとてもこわい…何もおきませんように(>_<)

301 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/07/30(土) 10:15:44.16 ID:7TY25Q1bo
 夢の内容を覚えていたので、意識がはっきりしたあとも、目を開けるのが少しだけ怖かった。
 
 まさか、本当に妹がいなくなっているということはないだろうけど。
 まさか、幼馴染が先輩と付き合ってなかったというのが夢だったわけではないだろうけど。
 考えごとをしながら身体を揺すると、なにかの感触があった。
 目を開くと、腕の中に妹がいた。
 強く動揺した。
 顔が近い。
 いったいなにが起こったというのか。
 なぜこうなった。
「……起きた?」
 妹は心底困り果てたような声で訊ねた。
 頷きながら、状況を分析しようとする。
 なんだ、これ。

302 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/07/30(土) 10:16:15.55 ID:7TY25Q1bo
「起きたんなら、放してほしいんだけど。腕」
 言われてから、自分が妹をなかば拘束していることに気付いた。
 目を開けるとそこには妹が……って、さすがに驚く。
 妹を解放する。
 彼女はベッドから起き上がって居住まいを正した。
 落ちつかなそうに視線を動かしながら、後ろ髪を撫でている。
 なにがどうなった。
 混乱する俺を尻目に(以前も言ったように尻目という言葉には独特の卑猥さがあるが、今はそんな場合ではない)妹は部屋を出て行った。
「朝ごはん、できてるから」
 気まずそうな顔をしたまま去っていく。
 ひょっとして記憶が飛んでるんじゃなかろうか。
 携帯を開く。
 月曜。昨日の記憶もはっきりとしていた。
 なにが起こったのか、妹は結局説明してくれなかった。

303 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/07/30(土) 10:16:45.11 ID:7TY25Q1bo
「なんていうか」
 通学路を並んで歩いていると、不意に幼馴染が口を開いた。
「シスコンだよね。妹ちゃんもブラコンだけど」
 自覚はある。
 
「たぶん、寝ぼけて布団の中に引きずり込んでしまったんだと思うんだけど」
 でも、それなら殴られるような気もする。反応がおかしかった。
 ギャルゲーかなんかなら、寝てる間にキスでもされてるところだろうが、現実なのでありえない。
 考え込んだ俺の姿を、幼馴染がじとりと睨んだ。
「なに?」
「別に、なんでもないよ」
 言葉の割には不服そうな表情をしていた。

304 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/07/30(土) 10:17:15.58 ID:7TY25Q1bo
 教室についてからは幼馴染と別行動をとった。
 先週までのことを考えれば、突然一緒に行動するようになるのは不自然だというのもあるが、以前からそういうところがあったのだ。
 お互い、教室にいるときはあまり話しかけあわない。
 なにか理由があってのことではないが、いつのまにかそうなっていたし、特別不満は感じない。
 急に手持ち無沙汰になる。
 先週までどうやって過ごしていたかを思い出せない。
 佐藤たちの大富豪に混ざったり、マエストロが俺の席で薄い本を読んでいたり。
 思い返しながら佐藤たちの方を見る。今日も今日とて大富豪に興じていた。
 俺は佐藤たちの円に割って入って大富豪に参戦した。
「今度は負けないぜ?」
 佐藤は苦笑していた。
 今日の俺は絶好調だった。2が一枚、Aが三枚、ジョーカーが一枚。
 3も4もある。絵札も充実している。これならいける、と俺はほくそえんだ。
 最初は様子をうかがうように強い数字を出し惜しむ三人に対して、絵札を駆使して一気に攻める。
 強い数字を出し切ってから、A三枚とジョーカーで革命を起こす。ワイルドカード。

305 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/07/30(土) 10:17:42.53 ID:7TY25Q1bo
 あとは大きい数字の順に出していくだけだ。
 俺は勝利を確信しながら9を出した。
 続く佐藤が、8を出した。八切り。
 初手を取った佐藤は6を三枚とジョーカーで革命を起こす。
 結果、俺は大貧民だった。
「……おかしいだろ、あの手札で勝てないって」
 佐藤は困ったように笑っていた。

306 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/07/30(土) 10:18:27.72 ID:7TY25Q1bo
 昼休みになってすぐ、あくびが出た。大きく伸びをすると、筋肉が心地よくほぐれていくのを感じる。
 ひさびさに授業に集中できた気がした。
 
 妹が作った弁当を持って屋上へ向かう。結局月水が妹で、火木が幼馴染らしい。
 屋上には、相変わらずの顔をした屋上さんがいた。
 ポニーテール。退屈そうな視線。サンドウィッチをもさもさと食べる。
 土日振りに見る彼女の姿は、先週までと少しも変わりなかった。
  俺は彼女の隣に座って弁当をつつく。彼女は俺を一瞥したあと、視線をフェンスの向こうに送った。
「ツバメでも飛んでるの?」
「それが、いないんだよね」
 月曜だからか、彼女は少し眠たそうだった。
 沈黙が落ち着かなかったので、適当な話題を屋上さんに振る。
「テスト勉強してる?」
「まぁ、そこそこ」
 俺は全然してない。
 ……本当にしてない。

307 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/07/30(土) 10:19:39.26 ID:7TY25Q1bo
「それはともかく」
 分の悪い話題だったので話を逸らした。
 自分で振っておいて、という顔で屋上さんがこちらを睨む。俺のせいじゃない、星の巡りが悪かったんだ。
「このまえさ、グーグルで『堤防』って入力して画像検索したのよ」
「突然なに?」
「したらね、すげえの。なんか癒されるの。あ、この町住みたい、って思うよ、きっと。今度やってみ?」
 感動を伝えようと興奮するあまり口調が変化した。
 でも、よくよく考えると喋り方なんていつも安定してないし、まぁいいか。
「こりゃあすごいと思って、次は『海』って検索したよ」
「そうしたら、どうなったの?」
「沖縄に行きたくなった」
 湘南でもいい。なんか、海っぽいところであればどこでもいい。夏だし、どうにかしていけないものか。海。
 この街から海を見に行こうとすると、車で一時間から二時間。自転車でどうにかできる距離じゃない。
「で、画像検索が楽しくなって、今度は『水着』で検索した」
「そしたら?」
 ーーめくるめく肌色世界がそこにはあった。
「ごめん、言わなくてもいい。だいたい想像ついたから」
 屋上さんは察しがいい。

308 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/07/30(土) 10:20:13.91 ID:7TY25Q1bo
 昼食を食べ終えてから教室に戻ると、茶髪に声をかけられた。
「ネタバラシされたんだって?」
 何の話か、と考えて、すぐに思い当たる。
 幼馴染のことだ。
「茶髪、知ってたの?」
 まぁね、と彼女は頷いた。幼馴染の言葉を思い出す。
 
 ーー友達に、一度、相談したの。
 こいつか。
「まぁ、元気が出たようで何よりだな、チェリー」
「いやまぁ」
 あまりそのあたりには触れてほしくない。反応に困るから。
 茶髪との話を終えて自分の席に戻る。授業の再開を待っていると、教室の入り口で誰かに呼び出された。
 メデューサがそこにはいた。
 彼女は俺を見て、一瞬だけ顔を強張らせた。
 一瞬だけ警戒しかけたが、先輩が大丈夫と言っていたのを思い出す。実際、彼女は何もしてこなかった。
 メデューサは気まずそうに俺から目を逸らす。ちょっとどきどきする。
「……あの」
「はい」
「……ごめんなさい」
 謝られた。
 なぜだか後ろめたい気分になる。

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