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幼馴染「……童貞、なの?」 男「」.

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Part11
230 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/07/28(木) 10:34:36.51 ID:eTEPqKVXo
「どこ行ってたの?」
 幼馴染に尋ねられる。先輩と会ってきた、と言ったらどんな顔をするだろう。
 俺は「ちょっとそこまで」と答えてから麦茶を飲み干した。
 コップを置いたところで、妹が何かを思いついたように声をあげた。
「本人に直接意見を聞けばいいんじゃない?」
 幼馴染は意表をつかれたように「ああ!」と頷く。
「何の話?」
「お弁当の話」
「おべんと、ですか」
 何の説明にもなっていない。
「お姉ちゃんが、お兄ちゃんの、作りたいって言うから」
「ふたりで話し合いをしてたんだよ」
「月火水木は半分ずつってことで決まったんだけど、金曜の分をどっちが作るかがなかなか決まらなくて」
 ……なんだろう、このやりとり。

231 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/07/28(木) 10:35:06.57 ID:eTEPqKVXo
「いや、何でわざわざ分担する必要があるの?」
 幼馴染に作ってもらえたら食費が少しだけ浮くが、そんなみみっちい話ではなく。
 なぜ別々の人間に作ってもらう理由があるのか。面倒だろうに。
 彼女らは当人の意見を無視して協議を再開した。
 なんだかなぁ、と思う。今までずっと、どうでもいいことに時間を費やしていた気がした。とんだ徒労。くだらない悩み。
 一気に肩の荷が下りた気がした。
 話し合いは平行線を辿っているようだ。
 金曜の担当が決まるのと、夏休みに入るのはどっちが早いだろうかと、ふとそんなことを思う。
「あ」
 不意に思いついた。
「なに?」
「週ごとに金曜の担当を交換すればいいんじゃね?」
 その言葉の後もしばらくは話し合いが続いていたが、結局はその方向で決まったらしい。

232 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/07/28(木) 10:35:42.60 ID:eTEPqKVXo
「でも、何で弁当なんて作りたいの?」
 割と真剣な疑問。面倒なだけだと思うのに。
 幼馴染は簡単に答えた。
「はっきり言って、男の子にお弁当つくるのって、女子からしてもけっこう憧れなのです」
「へえ」
「制服デートとかもね」
「なるほど」
 そのあたりは男子と大差ないらしい。
「つまさき立ちでちゅーするために身長差は結構欲しいとかね」
 妹がさらりと言った。少女漫画的。
 ……やっぱ身長か。やっぱ一七○センチないとダメなのか。
「……ちょっとコンビニで牛乳買ってくる」
 カルシウムの摂取が身長の伸びに直結しない自分の体が憎い。
 幼馴染は、妹の言葉に微妙な表情を浮かべた。
「それはちょっと……違わない?」
「そう?」
 妹さまはけろりとしている。
 なんだかもう、女ってよく分からない。

233 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/07/28(木) 10:36:29.28 ID:eTEPqKVXo
 本当にコンビニに行こうとすると、二人は慌てて追いかけてきた。
 三人で並んで歩く。両手に花。美少女二人。ぐへへ。
 ーー暑さでそれどころじゃなかった。
「……誰? コンビニ行こうって言った人」
 妹がうなる。誰も「行こう」なんて言ってない。
「蝉がうるさいね……」
 幼馴染も疲れ果てていた。なんだか、子供の頃もこうやって歩いたことがあるような気がする。
 なんだかなぁ、と思う。
 恋だ愛だと騒いでおいて、結局、ふたりと一緒にいるだけで、俺はある程度満たされてしまうのだ。
 まいった。
 この居心地のいい立ち位置で、曖昧なままで一緒にいたい。
 
 まぁ、できないんだけど。
 でもまぁ、今は、ね。

234 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/07/28(木) 10:36:55.96 ID:eTEPqKVXo
 徒歩十分のファミレスの脇に立つコンビニ。広い駐車場。でかい看板。何かのキャンペーンのポスターが張られた窓。
 冷房のきいた店内に入っても、暑さの名残は消えないようで、幼馴染はうんざりしたように呟いた。
「アイス食べたい」
 財布を忘れてきたらしい。
「私もアイス食べたい」
 妹は財布を持ってきていたが、間違いなく便乗しようとしていた。
 仕方なしに、三人分のアイスバーを買うことにした。
 牛乳、炭酸のジュース、少しのお菓子を選んで、レジに並ぶ。
 店を出てすぐに、アイスを配ってその場で食べ始める。
「食べ歩き、食べ歩き」
 上機嫌な様子で幼馴染はアイスをかじりはじめるが、どう考えても「買い食い」と言いたいに違いない。
 店の前におかれたゴミ箱に袋を捨てて、来た道を引き返す。
 太陽に焼かれて、アイスはすぐに溶けそうになる。
 溶けて垂れはじめた雫を舌先で舐めとるふたりの様子をみて、思わず変なことを考えそうになるーーなどということもなく。
 俺は自分のアイスを食べきるので精一杯だった。


235 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/07/28(木) 10:37:26.03 ID:eTEPqKVXo
 家に帰ってからも、リビングでぐだぐだと過ごした。
 テスト勉強をしなくては、と思うのに、気が抜けて行動に移せない。
 たぶん、長い間頭を支配していた悩み事がひとつ消えただろう。都合のいいことだ。
 幼馴染は結局、夕方まで家に居座った。
 彼女が帰った後、俺と妹は手持ち無沙汰になった。
 さっきまでいた誰かがいなくなると、寂しさと同時に時間を持て余している感じが訪れる。
 夕食に冷やし中華を食べたあと、映画を鑑賞することにした。
 ターミナルをまたかける。今度は、妹は眠らなかった。最後には涙目になっていた。
 俺は本気で泣いていた。
 さすがに、またビデオカメラを構える勇気はない。
 順番に風呂に入って、早めに寝ることにする。
 ベッドの中で、明日の日曜はどう過ごそうか、と、少しだけ考えた。
 テスト勉強、少しくらいしておかないと。
 そんなことを考えていると、いつのまにか眠りに落ちていた。

236 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/07/28(木) 10:38:38.47 ID:eTEPqKVXo
つづく
一区切りついたのでちょっと投下の間隔が空くようになるかもしれない

238 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/07/28(木) 10:58:01.91 ID:WgGZPKiIO
読みやすさとかどう考えてもプロでしょ

240 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) :2011/07/28(木) 11:32:16.57 ID:ylVl8r+g0
もはや小説を出版出来るレベル

245 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) :2011/07/28(木) 13:07:05.77 ID:MnpGY/kvo
何でここで書いてんのか不思議になるレベル
いや続けてください楽しみにしてます

270 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/07/29(金) 09:32:07.45 ID:ormcuORco
 次の日曜も、幼馴染は当然のようにうちにやってきた。
 リビングのソファに寝転がってだらける幼馴染。
 テーブルに突っ伏して暑さに負けている妹。
 俺は椅子に身体をもたれて全身の力を抜いていた。
 暑い。
「たとえばさ、朝の六時って『早い時間』だろ?」
 
「そうだね」
 だるそうに幼馴染が頷く。意味もなくつけたテレビでは旅番組をやっていた。
 チャンネルを変える。暑さに負けない健康料理特集。妹が顔を机にくっつけたままちらりと目を向ける。
 リモコンをおいて手の力を抜いた。
「でも、深夜三時って『遅い時間』だろ?」
「そうだね」
 幼馴染がさっきとまったく同じ声音で応じた。
 
「遅い時間が早い時間より先に来るって、おかしくない?」
「そうだね」という幼馴染の呟きを最後に、言葉が途絶える。

271 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/07/29(金) 09:32:45.86 ID:ormcuORco
 開けっ放しにした窓から、風が一切吹き込まない。風がないのだ。ちょっとでいいから吹け。
 扇風機をつけてあるが、気休めにもならない。近付くと髪が動いてわずらわしいし、遠いと涼しくない。
 
 髪、切りにいきたい。
 けど、動くのだるい。
 テスト勉強どころじゃない。
 夏。
 網戸の向こうから蝉の鳴き声が聞こえる。風物詩。
 
「……暑い」
 何もやる気が起きない。
 このままではいけない。
 何とかしてやる気を取り戻さなければならない。

272 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/07/29(金) 09:33:29.17 ID:ormcuORco
 しばらく無言のままの時間を過ごしていると、やがてインターホンがなった。
 這うようにして玄関に向かう。客はマエストロだった。
 彼を玄関からリビングに招き入れたときには、二人の少女は居住まいを正していた。どういう理屈だそれは。
「こんにちは」
 にっこりと妹が笑う。
 どういう理屈だそれは。
 マエストロは幼馴染の姿を見つけてひどく戸惑った様子だった。
「なんで?」
「いろいろあって」
 本当にいろいろあった。
 幼馴染はマエストロに向かって笑いかける。だからどういう理屈だ。さっきまでのおまえたちはどこへ行った。女って怖い。
 マエストロは少し怪訝そうな表情をしたものの、すぐに興味を失ったのか、堂々とリビングの椅子に座った。
 女が二人いることに気後れする様子はない。すげえ。逆の立場ならこうは行かない。
「で、だ」
 マエストロはカバンからノートPCを取り出した。
「電気もらうけど」
「いいけど、充電あるんじゃないの?」
「ずっとコンセント繋ぎっぱなしにしてたら数秒で充電切れるようになって」
「……どうにかしようよ、それは」
 具体的な解決法は詳しくないので思いつかない。
 バッテリー買い替え? どこで売ってるんだろう。

273 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/07/29(金) 09:34:00.34 ID:ormcuORco
「で、これ描いたんだけど」
 画像ファイルが展開される。
 パステルっぽい淡い彩色のされたイラスト。
 リアルっぽい雰囲気で描かれたイラスト。
 アニメっぽい塗りのイラスト。
 なんかすごい凝った風景。
 モザイクなしのモロエロ絵。
 なんてものを描いてるんだ。
「ごめん、これは間違いだわ」
 マエストロがファイルを閉じる。と同時に、俺の様子を窺うようにこちらを見た。
「……おまえ、どうした?」
 彼は驚いたように目を見開いた。
「え、なに?」
 何か変な態度を取っただろうか。
 別におかしなことはなかったように思う。
 それなのにマエストロは、女だと思っていた漫画キャラが男だったと気付いたときみたいに呆然としていた。

274 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/07/29(金) 09:34:44.74 ID:ormcuORco
「反応が薄すぎるだろ」
「そう、か?」
 マエストロはしばらく考え込んでいた。
 たしかに、マエストロの絵には、いつも強い反応を見せたような気がする。上手いし、ツボをついている。
 クオリティが落ちているとか好みじゃないというわけではない。
 そう考えると、確かに反応が薄いような気もした。
 彼はしばらく押し黙ったあと、不意に幼馴染に目を向ける。
「……なるほど」
「なにが?」
 マエストロは俺の質問には答えずにうっすらと笑う。
「なぁ、チェリー。おまえひとつ忘れてないか?」
「チェリーって言うな」
 妹の前で。
 肝心の妹本人はきょとんとしている。それならまぁいいや。
 と、安心したところに、
「幼馴染との関係が元通りになったって、おまえが童貞だってことは変わらないんだぜ?」
 ーー爆弾が投下された。

275 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/07/29(金) 09:35:15.41 ID:ormcuORco
「どうて……え、なに?」
 妹が戸惑ったように眉をひそめる。幼馴染はもう慣れた様子で、平然と麦茶を飲んでいた。恐ろしい。
 なんてこと言いやがる。
 が、的を射ていた。
「そうだった……」
 俺は依然として童貞だった。状況は一向に打破されていない。
 まいった。完全に忘れていた。
「どうしよう……」
 苦悩する俺を見て、マエストロは楽しそうに笑った。自分だって童貞のくせに。
「童貞か童貞じゃないかって、そんなに重要かな」
 幼馴染が心底不思議そうに言った。重要だよ。むちゃくちゃ重要だよ。
 あと女の子があんまり童貞とかいうんじゃありません。

276 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/07/29(金) 09:35:42.10 ID:ormcuORco
 夏が近い。
 どうにかしなくては、と考える。
 ……でも、ぶっちゃけ、そんなに焦る必要あるか?
 冷静に考える。
 別に、彼女ができていい感じに仲が進めばそのうちやることはやっちゃうわけで。
 何も焦ることはないんじゃないか?
 童貞捨てたいから女の子と付き合うっていうのも、何か違う気がするし。
 マエストロは眉をひそめて悲しげな表情をつくった。
「昨日までのおまえは切羽詰ってて面白かった」
 彼は寂しそうに呟く。
「今のおまえの、その妙な余裕はなんだよ。キャラが違いすぎるだろ。先週までの童貞丸出しなおまえはどこにいったんだ」
「マエストロ……」
 その発言、普通に失礼だよ。

277 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/07/29(金) 09:36:18.75 ID:ormcuORco
 一度しっかりと行動しはじめてしまうと、だらだら過ごすのはもう難しい。
 仕方ないので、冷房が効いていることを期待してファミレスに向かう。時間帯のせいか、結構空いていた。
 朝食と昼食をかねた食事。味は悪くない。
 
 数十分居座ってから、店内が混み合い出した頃に店を出る。
 外に出ると太陽がうっとうしいほどに自己主張を続けていた。 
 入道雲。蝉の鳴き声。炎天下。汗。
「暑い」
 口に出すと暑さが増したような気がした。
 今の段階でこうなのだから、夏の盛りとなった頃には熱中症で倒れかねない。
「俺、帰るわ」
 マエストロは汗を肩で拭いながら言う。
「うち来ないの?」
「だっておまえ、エアコンつけねえじゃん」
 幼馴染がちらりとこちらの様子を窺ったのが分かった。
「まぁ、必要ないかなって」
「んなわけあるか。この暑いなかで」

278 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/07/29(金) 09:37:12.38 ID:ormcuORco
 マエストロが帰ったのを見届けたあと、三人で並びながら家に戻る。
 暇なので、三人でゲームをする。スノボー系のレーシングゲーム。昔よくこれで遊んだ。
 妹は恐ろしくこのゲームが上手いが、俺は恐ろしくこのゲームが苦手だった。
 幼馴染は普通だが、順位はかなり変動する。
「エアコン、つけてもいいよ」
 幼馴染はコントローラーを握ったまま言った。
 何言ってるんだこいつは。
 エアコンつけてると具合が悪くなるくせに。
 ちょっとくらいなら平気かな、と思って青褪められた経験は忘れようにも忘れられない。
「別に気を遣ってるわけじゃないよ」
 俺だってエアコンの風は好きじゃなかった。何度か試して懲りた。妹も寒がり。
 エアコンをつけて得をする人間がそもそもいない。民主的な結論。
「そう?」
 彼女が俺の言葉を信じた様子はなかった。なんだって俺たちは遠慮しあってるんだろう。
 扇風機の電源を入れて首を振らせた。気休め程度にはなるかもしれない。

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