のび太「ドラえもんが消えて、もう10年か……」
Part5
222 :◆9XBVsEfN6xFl :2014/08/11(月)21:39:32 ID:p47Ruh7JC
「……」
不思議な光景だった。
僕は、料理をする彼女の背中を眺めていた。
前までは、こうして見る女性の姿は、しずかちゃんしかいないと思っていた。
……でも、今僕の目の前にいるのは、彼女ではない。
それが何だかとても不思議なことで、咲子さんの後ろ姿を、ただぼーっと見ていた。
すると、急に咲子さんは後ろを振り返る。そして、僕が見ているのに気付いた瞬間に視線を前に戻した。それから、ちょくちょく後ろを振り返りはじめた。
「……?どうかした?」
すると、彼女は照れるように顔を背けながら、呟く。
「……そんなに見られたら、少しだけ、恥ずかしいかも……」
「あーー、ご、ごめん……!!」
慌てて布団を被ろうとした。でもーー
「ーーあ、待って!」
「え?」
「……やっぱり、見てていいよ……」
「う、うん……」
……なんなの、いったい。
223 :◆9XBVsEfN6xFl :2014/08/11(月)21:51:47 ID:p47Ruh7JC
「ーーどう?おいしい?」
咲子さんは、作った料理を持つ僕に、キラキラした視線を送りながら聞いてきた。
彼女が作ったのは、野菜がたくさん入った雑炊。
美味しそうだ。確かに美味しそうだ。
だが……
「……いや、感想聞かれても、まだ食べてないから……」
「え?ーーあ、そうだったね。ごめん、つい……
「いいさ。今から食べるから。ーーいただきます……」
とりあえず、一口ぱくり。
「……」
「……」
(……あれ?)
ちょっと待ってほしい。
雑炊ってのは、確か出汁とか醤油とかが入って、懐かしい味のする日本食のはず……
だが目の前にあるモノは、なぜか洋風テイスト。醤油も出汁も感じない、ネイティブな味が口に広がる。初めて口にするような味だ。
だが一番不思議なのは、それだけ本家雑炊からかけ離れているはずなのに……
「……お、おいしい……」
「ほ、ほんと?」
「う、うん。とてもおいしいよ……」
なぜだか分からないけど……
「いっぱいあるからね。たくさん食べて、早く治さないと」
「う、うん……」
その味は、なぜだか食欲を刺激した。
そして僕は、気が付けば、3杯もおかわりをするのだった。
224 :名無しさん@おーぷん :2014/08/11(月)21:57:21 ID:L2HZkWLLr
カワイイ
225 :◆9XBVsEfN6xFl :2014/08/11(月)22:03:49 ID:p47Ruh7JC
たらふく雑炊(?)を食べた後、咲子さんは洗い物をする。それだけではなく、掃除、洗濯をして、仕事に来ていくスーツにアイロンまでかけてくれた。
まさに主婦。今すぐにでもお嫁に行けるだろう。
「ーー今日はありがとう、咲子さん」
「ううん、いいの。私が好きでしてるだけだし」
「……え?」
「え?ーーあ!違う違う!今のはそういう意味じゃなくて!」
「ええっと……」
「ーーあ!違うんじゃなくて!好きなのは本当だけど!今のはそういう意味で言ったんじゃなくてーー!!」
彼女は、顔を真っ赤にしながら、顔を隠すように必死に手を振っていた。
その姿は、なんだかとても愛らしく思えた。
自然と僕は、お腹を抱えて笑っていた。
笑う僕の姿を見た咲子さんは、顔を膨らませ顔を伏せてしまった。
ーーふと、咲子さんはあるものに気付いた。
「……これって……アルバム?」
それは、僕の小・中学の時の、みんなで撮った写真達だった。
226 :◆9XBVsEfN6xFl :2014/08/11(月)22:08:23 ID:p47Ruh7JC
ちょっと中断
227 :名無しさん@おーぷん :2014/08/11(月)22:17:18 ID:EK0k7q2PL
アニメ版の花賀さき子が可愛過ぎる
228 :名無しさん@おーぷん :2014/08/11(月)22:18:17 ID:L2HZkWLLr
乙乙
229 :◆9XBVsEfN6xFl :2014/08/11(月)22:34:35 ID:p47Ruh7JC
再開
230 :名無しさん@おーぷん :2014/08/11(月)22:35:58 ID:sF5Qjy2dP
わーい
231 :名無しさん@おーぷん :2014/08/11(月)22:39:03 ID:9yZGBHYgl
キタ━
∧∧ ∧∧
(*゜∀)(∀゜*)
彡 ⊂ つ⊂ つ ミ
⊂、 / \ つ
∪ ≡ ∪′
232 :◆9XBVsEfN6xFl :2014/08/11(月)22:45:12 ID:p47Ruh7JC
もしかして人増えた?
ちょっと緊張……
「……これ、見ていい?」
「……うん。いいよ」
僕がそう言うと、咲子さんはアルバムをめくり始めた。彼女が見る傍らで、僕もアルバムを覗き込む。
写真の中の僕らは、あの頃のまま時間が止まっていた。
あの頃、彼が取り出す不思議な道具により彩られた、夢のような毎日……でも、彼の写真は1枚も残っていない。不自然に抜き取られたアルバムのポケットが、ところどころ散見された。
その何もないポケットを見るたびに、思い知らされる気分になる。
彼が、僕の隣にいないことを……
「ーーこれ……」
感傷に耽っていると、咲子さんが言葉を漏らした。
彼女の見つめる先には、小学生の時の写真が。それは、みんなで白亜期に行き、キャンプをした時の写真だった。
その中で、僕はあの子の隣に立っていた。
「……これ、あの時の……」
「……うん。しずかちゃん……」
「……」
そのまま、彼女は口を閉ざした。
233 :名無しさん@おーぷん :2014/08/11(月)22:46:22 ID:9TNwAzFhf
大丈夫だ、前の時も結構いたから
236 :◆9XBVsEfN6xFl :2014/08/11(月)22:53:12 ID:p47Ruh7JC
「……やっぱり、幼馴染み……なんだね……」
ようやく彼女が口にしたその言葉は、とても寂しそうだった。
そしてそのまま、彼女は続ける。
「……ずるいなぁ、源さん……」
「……ずるい?」
「私には、のび太くんとの記憶は、会社に入社した時からしかないんだよね。
ーーだけど源さんは、のび太くんとの思い出が、こんなにたくさん残ってる。
……やっぱり、羨ましいな……」
「……」
「私ね、最近考えてるんだ。私とのび太くんは同じ地元なのに、なんでもっと早く会えなかったんだろうって。
もっと早く会っていれば、こんなに悩むこと、なかったかもしれないのに……」
「……咲子さん……」
「……」
「……」
部屋の中は、静まり返った。
台所の水道から漏れる水滴の音が、やけに大きく聞こえていた。
ポタリ……ポタリ……と。
241 :◆9XBVsEfN6xFl :2014/08/11(月)23:05:10 ID:p47Ruh7JC
「ーー私、そろそろ帰るね」
いきなり、咲子さんは立ち上がり、荷物をまとめ始めた。
「え?あ、うん……」
「……じゃあね。あ、寝てなきゃダメだよ?」
そう言い残し、逃げるように玄関に向かう彼女。
でもここで、僕は彼女が荷物を忘れていることに気付いた。
「ーーあ、咲子さん!これーー!」
その荷物を手に持ち、前屈みに立ち上がり彼女の方に向かう。
ーーすると、急に目の前が真っ暗になった。
激しい目眩に苛まれ、目の前が歪む。
(やばっ……そういえば、まだ熱が……)
フラフラと彼女の方に近付いていった。
「えーー?」
彼女が僕に気付き振り返ると同時に、僕の意識は、そのまま暗闇の中に沈み始める。
体の力は抜け、彼女に覆い被さるように倒れ込んだ。
「あーー」
彼女の口から漏れた声だけが耳に入る。
それから先は、覚えていない。
……ただ最後に、彼女の腕に包み込まれたような……そんな、気がした。
242 :名無しさん@おーぷん :2014/08/11(月)23:07:22 ID:rlsAWhGuS
咲子エンドに近づいた
243 :名無しさん@おーぷん :2014/08/11(月)23:17:43 ID:pQh54wxMu
咲子は告白済みで、のび太の返事待ち状態なんだよな
244 :◆9XBVsEfN6xFl :2014/08/11(月)23:20:14 ID:p47Ruh7JC
「……うぅ……うぅん……」
気が付いた時には、朝の光が窓から射し込まれていた。
どうやら、そのまま眠ってしまったようだ。
体は軽い。熱も下がったようだ。
「……うん?」
その時、僕はようやく気が付いた。僕の腹部に顔を埋め、座ったまま眠る彼女の姿にーー
彼女の横には、水が張った洗面器があった。そして僕ま枕の横には、少し濡れたタオルも落ちていた。
それが意味することは、つまり……
(一晩中、看病してくれてたのか……)
無意識に、彼女の頭を撫でていた。
ーーその時だった。
ピンポーン……
玄関から、チャイムが鳴り響く。
こんな時間に誰だろうかーー。そんなことを思いながら、彼女を起こさないように横にずらし、玄関に向かった。
「……どなたですか?」
玄関を開けた瞬間、僕は凍り付いた。
「……具合、どう?」
一瞬、目を疑った。でも、間違いない。
「ーーし、しずかちゃん!?」
245 :名無しさん@おーぷん :2014/08/11(月)23:20:23 ID:X4fHfCohR
先手告白は負けフラグだからな…
246 :名無しさん@おーぷん :2014/08/11(月)23:21:36 ID:HxpnDP7CI
ここでしずかちゃん登場かwww
面白くなってきました
247 :名無しさん@おーぷん :2014/08/11(月)23:22:25 ID:rlsAWhGuS
咲子さんかわいそう
248 :名無しさん@おーぷん :2014/08/11(月)23:33:01 ID:sjnqrZDE5
うおおおおおおおおおおおぉぉぉぉぉぉ
249 :◆9XBVsEfN6xFl :2014/08/11(月)23:33:07 ID:p47Ruh7JC
「ーーど、どうしてここに!?」
「……剛さんから、のび太さんが風邪引いたって聞いて。お見舞いに……」
「あ……ああ……そう、なんだ……」
(ーーこれは……マズイ!!!)
寝起きでぼけっとしていた僕の脳は、即座に高速回転を始める。
僕の部屋には、咲子さんがいる。そして時刻は朝。誰が見ても、導き出される答えは同じだろう。
ーー即ち、御宿泊……
(ーーま、マズイぞおおおおおお!!!)
しずかちゃんが僕の部屋を訪ねたのは、今日が初めてだった。だがしかし、なぜよりよって今日なのだろうか!
やましいことは何もない。何もないーーが!いったい誰が信じると言うのだろうか……
「……ねえのび太さん。本当に大丈夫?」
しずかちゃんは、心配そうに僕の顔を覗き込む。おそらく、死にそうな顔をしているのだろう。
「え!?ああ、ああ!大丈夫大丈夫!すごく元気!」
ちょっと大げさに、ジェスチャーをしながら言ってみた。するとしずかちゃんは、ホッと胸を撫で下ろす。
「良かったぁ……ねえ、上がってもいい?」
(な、なんですとおおおおお!!??)
僕は、更なる窮地に立たされた。
253 :◆9XBVsEfN6xFl :2014/08/11(月)23:45:02 ID:p47Ruh7JC
「……だめ?」
「ダメって言うか……その……そう!凄く散らかってるし!風邪で寝てて、全然片付けてないんだ!!」
とりあえず、防衛線を張ってみた。
「もう、のび太さん。片付けないと、治るものも治らないわよ?
のび太さんは寝てていいわよ。私が片付けます」
(逆効果だったあああああ!!!)
こう来るとは!凄まじくマズイ!
ここまで言われたら、断る方が不自然かもしれない!
しかし……だがしかし!家に入れれるはずもない!
どうする……どうする……!!??
「ーーのび太くん、起きてたの?」
「な゛っーーー!!??」
突然、後ろから咲子さんの声が聞こえた。さらにあろうことか、玄関へと近付いてくる。
そして……
「あれ?誰か来てた……の……」
「……え?……あなたは……あの時の……」
……ついに……ご対面、しちゃいました……。
そしてその場で、僕達はもれなくフリーズする。
その時、僕の脳裏には、なぜか走馬灯が流れていた……
254 :◆9XBVsEfN6xFl :2014/08/11(月)23:46:33 ID:p47Ruh7JC
一旦寝ます。
続きはまた後程
255 :名無しさん@おーぷん :2014/08/11(月)23:47:34 ID:HxpnDP7CI
続きが気になるw
お疲れ!
256 :名無しさん@おーぷん :2014/08/11(月)23:47:35 ID:sF5Qjy2dP
乙〜続き楽しみにしてる
257 :名無しさん@おーぷん :2014/08/11(月)23:48:02 ID:pQh54wxMu
お疲れ!
楽しみにしてるよん
258 :名無しさん@おーぷん :2014/08/11(月)23:49:19 ID:rlsAWhGuS
気になるところでおわたーw
お疲れ!続き楽しみだわw
268 :◆9XBVsEfN6xFl :2014/08/12(火)05:13:45 ID:8noyZ5OrM
「……のび太さん?」
「は、はひっーー!」
「これ……どういうこと?」
しずかちゃんから放たれる圧倒的なオーラが、僕の心を叩き潰しにかかる。これまで、聞いたことがないくらいに怖い声。
凄まじくーーどころではない。超ド級に怒ってるのが分かる。
……が、今の僕には、この状況を的確に説明できるような余裕などあるはずもなく……
「い、いや……これはというと……」
「ちゃんと説明、してくれるかしら?」
「ええと……その……」
……結果、しどろもどろとなり、余計に誤解を招いてしまったようだ。
そんな中、突然咲子さんが切り出した。
「ーー私は、風邪で倒れていたのび太くんを、看病していただけです」
「……え?」
「……へ?」
ポカーンとする僕達を他所に、咲子さんは続けた。
「ですから、私がここにいたのは、寝込んでいたのび太くんを看病していただけなんです。やましいことは、一切ありません」
「……」
……なんとまあ、意外なことに、咲子さんが助け船を出してくれた。
269 :名無しさん@おーぷん :2014/08/12(火)05:17:53 ID:rDeswCQEP
おはよう
さあ楽しみだ
270 :名無しさん@おーぷん :2014/08/12(火)05:48:50 ID:fRTB3OWPg
期待して待ってるよおお
271 :名無しさん@おーぷん :2014/08/12(火)06:56:54 ID:puiLtj1rj
咲子脱落?
「……」
不思議な光景だった。
僕は、料理をする彼女の背中を眺めていた。
前までは、こうして見る女性の姿は、しずかちゃんしかいないと思っていた。
……でも、今僕の目の前にいるのは、彼女ではない。
それが何だかとても不思議なことで、咲子さんの後ろ姿を、ただぼーっと見ていた。
すると、急に咲子さんは後ろを振り返る。そして、僕が見ているのに気付いた瞬間に視線を前に戻した。それから、ちょくちょく後ろを振り返りはじめた。
「……?どうかした?」
すると、彼女は照れるように顔を背けながら、呟く。
「……そんなに見られたら、少しだけ、恥ずかしいかも……」
「あーー、ご、ごめん……!!」
慌てて布団を被ろうとした。でもーー
「ーーあ、待って!」
「え?」
「……やっぱり、見てていいよ……」
「う、うん……」
……なんなの、いったい。
223 :◆9XBVsEfN6xFl :2014/08/11(月)21:51:47 ID:p47Ruh7JC
「ーーどう?おいしい?」
咲子さんは、作った料理を持つ僕に、キラキラした視線を送りながら聞いてきた。
彼女が作ったのは、野菜がたくさん入った雑炊。
美味しそうだ。確かに美味しそうだ。
だが……
「……いや、感想聞かれても、まだ食べてないから……」
「え?ーーあ、そうだったね。ごめん、つい……
「いいさ。今から食べるから。ーーいただきます……」
とりあえず、一口ぱくり。
「……」
「……」
(……あれ?)
ちょっと待ってほしい。
雑炊ってのは、確か出汁とか醤油とかが入って、懐かしい味のする日本食のはず……
だが目の前にあるモノは、なぜか洋風テイスト。醤油も出汁も感じない、ネイティブな味が口に広がる。初めて口にするような味だ。
だが一番不思議なのは、それだけ本家雑炊からかけ離れているはずなのに……
「……お、おいしい……」
「ほ、ほんと?」
「う、うん。とてもおいしいよ……」
なぜだか分からないけど……
「いっぱいあるからね。たくさん食べて、早く治さないと」
「う、うん……」
その味は、なぜだか食欲を刺激した。
そして僕は、気が付けば、3杯もおかわりをするのだった。
224 :名無しさん@おーぷん :2014/08/11(月)21:57:21 ID:L2HZkWLLr
カワイイ
225 :◆9XBVsEfN6xFl :2014/08/11(月)22:03:49 ID:p47Ruh7JC
たらふく雑炊(?)を食べた後、咲子さんは洗い物をする。それだけではなく、掃除、洗濯をして、仕事に来ていくスーツにアイロンまでかけてくれた。
まさに主婦。今すぐにでもお嫁に行けるだろう。
「ーー今日はありがとう、咲子さん」
「ううん、いいの。私が好きでしてるだけだし」
「……え?」
「え?ーーあ!違う違う!今のはそういう意味じゃなくて!」
「ええっと……」
「ーーあ!違うんじゃなくて!好きなのは本当だけど!今のはそういう意味で言ったんじゃなくてーー!!」
彼女は、顔を真っ赤にしながら、顔を隠すように必死に手を振っていた。
その姿は、なんだかとても愛らしく思えた。
自然と僕は、お腹を抱えて笑っていた。
笑う僕の姿を見た咲子さんは、顔を膨らませ顔を伏せてしまった。
ーーふと、咲子さんはあるものに気付いた。
「……これって……アルバム?」
それは、僕の小・中学の時の、みんなで撮った写真達だった。
226 :◆9XBVsEfN6xFl :2014/08/11(月)22:08:23 ID:p47Ruh7JC
ちょっと中断
アニメ版の花賀さき子が可愛過ぎる
228 :名無しさん@おーぷん :2014/08/11(月)22:18:17 ID:L2HZkWLLr
乙乙
229 :◆9XBVsEfN6xFl :2014/08/11(月)22:34:35 ID:p47Ruh7JC
再開
230 :名無しさん@おーぷん :2014/08/11(月)22:35:58 ID:sF5Qjy2dP
わーい
231 :名無しさん@おーぷん :2014/08/11(月)22:39:03 ID:9yZGBHYgl
キタ━
∧∧ ∧∧
(*゜∀)(∀゜*)
彡 ⊂ つ⊂ つ ミ
⊂、 / \ つ
∪ ≡ ∪′
232 :◆9XBVsEfN6xFl :2014/08/11(月)22:45:12 ID:p47Ruh7JC
もしかして人増えた?
ちょっと緊張……
「……これ、見ていい?」
「……うん。いいよ」
僕がそう言うと、咲子さんはアルバムをめくり始めた。彼女が見る傍らで、僕もアルバムを覗き込む。
写真の中の僕らは、あの頃のまま時間が止まっていた。
あの頃、彼が取り出す不思議な道具により彩られた、夢のような毎日……でも、彼の写真は1枚も残っていない。不自然に抜き取られたアルバムのポケットが、ところどころ散見された。
その何もないポケットを見るたびに、思い知らされる気分になる。
彼が、僕の隣にいないことを……
「ーーこれ……」
感傷に耽っていると、咲子さんが言葉を漏らした。
彼女の見つめる先には、小学生の時の写真が。それは、みんなで白亜期に行き、キャンプをした時の写真だった。
その中で、僕はあの子の隣に立っていた。
「……これ、あの時の……」
「……うん。しずかちゃん……」
「……」
そのまま、彼女は口を閉ざした。
233 :名無しさん@おーぷん :2014/08/11(月)22:46:22 ID:9TNwAzFhf
大丈夫だ、前の時も結構いたから
236 :◆9XBVsEfN6xFl :2014/08/11(月)22:53:12 ID:p47Ruh7JC
「……やっぱり、幼馴染み……なんだね……」
ようやく彼女が口にしたその言葉は、とても寂しそうだった。
そしてそのまま、彼女は続ける。
「……ずるいなぁ、源さん……」
「……ずるい?」
「私には、のび太くんとの記憶は、会社に入社した時からしかないんだよね。
ーーだけど源さんは、のび太くんとの思い出が、こんなにたくさん残ってる。
……やっぱり、羨ましいな……」
「……」
「私ね、最近考えてるんだ。私とのび太くんは同じ地元なのに、なんでもっと早く会えなかったんだろうって。
もっと早く会っていれば、こんなに悩むこと、なかったかもしれないのに……」
「……咲子さん……」
「……」
「……」
部屋の中は、静まり返った。
台所の水道から漏れる水滴の音が、やけに大きく聞こえていた。
ポタリ……ポタリ……と。
241 :◆9XBVsEfN6xFl :2014/08/11(月)23:05:10 ID:p47Ruh7JC
「ーー私、そろそろ帰るね」
いきなり、咲子さんは立ち上がり、荷物をまとめ始めた。
「え?あ、うん……」
「……じゃあね。あ、寝てなきゃダメだよ?」
そう言い残し、逃げるように玄関に向かう彼女。
でもここで、僕は彼女が荷物を忘れていることに気付いた。
「ーーあ、咲子さん!これーー!」
その荷物を手に持ち、前屈みに立ち上がり彼女の方に向かう。
ーーすると、急に目の前が真っ暗になった。
激しい目眩に苛まれ、目の前が歪む。
(やばっ……そういえば、まだ熱が……)
フラフラと彼女の方に近付いていった。
「えーー?」
彼女が僕に気付き振り返ると同時に、僕の意識は、そのまま暗闇の中に沈み始める。
体の力は抜け、彼女に覆い被さるように倒れ込んだ。
「あーー」
彼女の口から漏れた声だけが耳に入る。
それから先は、覚えていない。
……ただ最後に、彼女の腕に包み込まれたような……そんな、気がした。
242 :名無しさん@おーぷん :2014/08/11(月)23:07:22 ID:rlsAWhGuS
咲子エンドに近づいた
243 :名無しさん@おーぷん :2014/08/11(月)23:17:43 ID:pQh54wxMu
咲子は告白済みで、のび太の返事待ち状態なんだよな
244 :◆9XBVsEfN6xFl :2014/08/11(月)23:20:14 ID:p47Ruh7JC
「……うぅ……うぅん……」
気が付いた時には、朝の光が窓から射し込まれていた。
どうやら、そのまま眠ってしまったようだ。
体は軽い。熱も下がったようだ。
「……うん?」
その時、僕はようやく気が付いた。僕の腹部に顔を埋め、座ったまま眠る彼女の姿にーー
彼女の横には、水が張った洗面器があった。そして僕ま枕の横には、少し濡れたタオルも落ちていた。
それが意味することは、つまり……
(一晩中、看病してくれてたのか……)
無意識に、彼女の頭を撫でていた。
ーーその時だった。
ピンポーン……
玄関から、チャイムが鳴り響く。
こんな時間に誰だろうかーー。そんなことを思いながら、彼女を起こさないように横にずらし、玄関に向かった。
「……どなたですか?」
玄関を開けた瞬間、僕は凍り付いた。
「……具合、どう?」
一瞬、目を疑った。でも、間違いない。
「ーーし、しずかちゃん!?」
245 :名無しさん@おーぷん :2014/08/11(月)23:20:23 ID:X4fHfCohR
先手告白は負けフラグだからな…
246 :名無しさん@おーぷん :2014/08/11(月)23:21:36 ID:HxpnDP7CI
ここでしずかちゃん登場かwww
面白くなってきました
247 :名無しさん@おーぷん :2014/08/11(月)23:22:25 ID:rlsAWhGuS
咲子さんかわいそう
うおおおおおおおおおおおぉぉぉぉぉぉ
249 :◆9XBVsEfN6xFl :2014/08/11(月)23:33:07 ID:p47Ruh7JC
「ーーど、どうしてここに!?」
「……剛さんから、のび太さんが風邪引いたって聞いて。お見舞いに……」
「あ……ああ……そう、なんだ……」
(ーーこれは……マズイ!!!)
寝起きでぼけっとしていた僕の脳は、即座に高速回転を始める。
僕の部屋には、咲子さんがいる。そして時刻は朝。誰が見ても、導き出される答えは同じだろう。
ーー即ち、御宿泊……
(ーーま、マズイぞおおおおおお!!!)
しずかちゃんが僕の部屋を訪ねたのは、今日が初めてだった。だがしかし、なぜよりよって今日なのだろうか!
やましいことは何もない。何もないーーが!いったい誰が信じると言うのだろうか……
「……ねえのび太さん。本当に大丈夫?」
しずかちゃんは、心配そうに僕の顔を覗き込む。おそらく、死にそうな顔をしているのだろう。
「え!?ああ、ああ!大丈夫大丈夫!すごく元気!」
ちょっと大げさに、ジェスチャーをしながら言ってみた。するとしずかちゃんは、ホッと胸を撫で下ろす。
「良かったぁ……ねえ、上がってもいい?」
(な、なんですとおおおおお!!??)
僕は、更なる窮地に立たされた。
253 :◆9XBVsEfN6xFl :2014/08/11(月)23:45:02 ID:p47Ruh7JC
「……だめ?」
「ダメって言うか……その……そう!凄く散らかってるし!風邪で寝てて、全然片付けてないんだ!!」
とりあえず、防衛線を張ってみた。
「もう、のび太さん。片付けないと、治るものも治らないわよ?
のび太さんは寝てていいわよ。私が片付けます」
(逆効果だったあああああ!!!)
こう来るとは!凄まじくマズイ!
ここまで言われたら、断る方が不自然かもしれない!
しかし……だがしかし!家に入れれるはずもない!
どうする……どうする……!!??
「ーーのび太くん、起きてたの?」
「な゛っーーー!!??」
突然、後ろから咲子さんの声が聞こえた。さらにあろうことか、玄関へと近付いてくる。
そして……
「あれ?誰か来てた……の……」
「……え?……あなたは……あの時の……」
……ついに……ご対面、しちゃいました……。
そしてその場で、僕達はもれなくフリーズする。
その時、僕の脳裏には、なぜか走馬灯が流れていた……
254 :◆9XBVsEfN6xFl :2014/08/11(月)23:46:33 ID:p47Ruh7JC
一旦寝ます。
続きはまた後程
255 :名無しさん@おーぷん :2014/08/11(月)23:47:34 ID:HxpnDP7CI
続きが気になるw
お疲れ!
256 :名無しさん@おーぷん :2014/08/11(月)23:47:35 ID:sF5Qjy2dP
乙〜続き楽しみにしてる
257 :名無しさん@おーぷん :2014/08/11(月)23:48:02 ID:pQh54wxMu
お疲れ!
楽しみにしてるよん
258 :名無しさん@おーぷん :2014/08/11(月)23:49:19 ID:rlsAWhGuS
気になるところでおわたーw
お疲れ!続き楽しみだわw
268 :◆9XBVsEfN6xFl :2014/08/12(火)05:13:45 ID:8noyZ5OrM
「……のび太さん?」
「は、はひっーー!」
「これ……どういうこと?」
しずかちゃんから放たれる圧倒的なオーラが、僕の心を叩き潰しにかかる。これまで、聞いたことがないくらいに怖い声。
凄まじくーーどころではない。超ド級に怒ってるのが分かる。
……が、今の僕には、この状況を的確に説明できるような余裕などあるはずもなく……
「い、いや……これはというと……」
「ちゃんと説明、してくれるかしら?」
「ええと……その……」
……結果、しどろもどろとなり、余計に誤解を招いてしまったようだ。
そんな中、突然咲子さんが切り出した。
「ーー私は、風邪で倒れていたのび太くんを、看病していただけです」
「……え?」
「……へ?」
ポカーンとする僕達を他所に、咲子さんは続けた。
「ですから、私がここにいたのは、寝込んでいたのび太くんを看病していただけなんです。やましいことは、一切ありません」
「……」
……なんとまあ、意外なことに、咲子さんが助け船を出してくれた。
269 :名無しさん@おーぷん :2014/08/12(火)05:17:53 ID:rDeswCQEP
おはよう
さあ楽しみだ
270 :名無しさん@おーぷん :2014/08/12(火)05:48:50 ID:fRTB3OWPg
期待して待ってるよおお
271 :名無しさん@おーぷん :2014/08/12(火)06:56:54 ID:puiLtj1rj
咲子脱落?
のび太「ドラえもんが消えて、もう10年か……」
Part1 Part2 Part3 Part4 Part5 Part6 Part7 Part8 Part9 >>Part11
評価する!(821)
ドラえもんSS集一覧に戻る
ショートストーリーの人気記事
神様「神様だっ!」 神使「神力ゼロですが・・・」
神様の秘密とは?神様が叶えたかったこととは?笑いあり、涙ありの神ss。日常系アニメが好きな方におすすめ!
→記事を読む
女「ハローハロー。誰かいませんか?どうぞ」
→記事を読む
キモオタ「我輩がおとぎ話の世界に行くですとwww」ティンカーベル「そう」
→記事を読む
魔王「世界の半分はやらぬが、淫魔の国をくれてやろう」
→記事を読む
男「少し不思議な話をしようか」女「いいよ」
→記事を読む
同僚女「おーい、おとこ。起きろ、起きろー」
→記事を読む
妹「マニュアルで恋します!」
→記事を読む
きのこの山「最後通牒だと……?」たけのこの里「……」
→記事を読む
月「で……であ…でぁー…TH…であのて……?」
→記事を読む
彡(゚)(゚)「お、居酒屋やんけ。入ったろ」
→記事を読む