のび太(31)「いらっしゃいませ。」
Part3
66 : ◆51UnYd7yHM [saga]:2013/03/18(月) 00:37:29.30 ID:yyKHaLZAO
その夜 しずかのダイニングバー
しずか「そうなの。スネ夫さんが指輪を。素敵ねぇ。婚約者かしら?」
のび太「どうだろうね? 訊かなかったから分からないけど、普通の彼女って可能性もあるよね。」
しずか「あら? 普通の彼女と婚約者の違いってなぁに?」
のび太「えっ? それはやっぱり、結婚の約束をしてるかどうかで」
しずか「約束をしてなければ普通の彼女? でも、その普通の彼女にプロポーズをすればその日から婚約者よ?」
のび太「あぁ・・・・・・そっか。そうだね・・・」
67 : ◆51UnYd7yHM [saga]:2013/03/18(月) 00:38:02.06 ID:yyKHaLZAO
しずか「だから彼女に普通も特別もありません。彼女はみんな特別なものよ。」
のび太「失礼いたしました。」
しずか「ふふふっ。よろしい。はい、ジャックダニエルのハイボール。」コトッ
のび太「ありがとう。」カラン
のび太(なんだか今日はやり込められてばかりだなぁ)トホホ
しずか「スネ夫さんって言葉はキツいけど根は優しい人じゃない? それにオシャレさんだし。そんなスネ夫さんの奥さんになる人だから、きっと素敵な人なんでしょうねぇ。」
のび太「だろうねぇ。」
68 : ◆51UnYd7yHM [saga]:2013/03/18(月) 00:39:25.16 ID:yyKHaLZAO
スネ夫が来店してすぐ、のび太は指輪の存在に気付いていた。
日頃の接客の中でも相手の装飾品を誉める事で会話がスムーズに成り立つケースは多い。
その為、来店した人物のアクセサリーやバッグに目を向ける事は、すでにのび太の中で職業病として定着していた。
だが、スネ夫の左薬指に指輪の存在を認めても、のび太はその事に触れなかった。
31歳の独身男性の左薬指に指輪。
それは即ち、のび太の言う“普通の彼女”との愛の象徴ではなく、婚約者とのエンゲージリングである可能性が極めて高い。
のび太にもそれは分かっていた。
69 : ◆51UnYd7yHM [saga]:2013/03/18(月) 00:41:13.92 ID:yyKHaLZAO
だからこそ訊けなかったのだ。
スネ夫の口から婚約者の存在を聞かされれば、それはとりもなおさずスネ夫と自分の間に強烈な対比を生み、挙げ句しずかとの間にある距離の大きさまでもが浮き彫りになるような気がした。
それが恐ろしくて、指輪を視界の外へと追い出していた。
情けない。
自分の情けなさに嫌気が差す。
あんなにも必死になって自分の恋路を応援歌してくれた友人。
そんな彼の幸せを祝ぐ余裕すらないだなんて。
のび太(友人失格だなぁ。)
しずか「どうしたの? さっきから渋い顔して。」
70 : ◆51UnYd7yHM [saga]:2013/03/18(月) 00:42:10.45 ID:yyKHaLZAO
のび太「えっ? あっ、あっ・・・み、店の在庫の事考えてたんだ!」アタフタ
しずか「在庫?」
のび太「う、うん。今季中にアレとコレを売り切っとかなきゃ、来季にアレを入れる予算が厳しくなりそうだなぁって。」アセアセ
しずか「あぁ、分かるなぁ。今ある在庫をいかに無くしていくかって、死活問題よねぇ。」
のび太「う、うん。だよねぇ。」ヒヤヒヤ
のび太(ダメだダメだ! 気持ちの暗さが表情に出てる!)
71 : ◆51UnYd7yHM [saga]:2013/03/18(月) 00:43:39.69 ID:yyKHaLZAO
しずか「スネ夫さんが結婚かぁ。良いわねぇ。」
のび太(スネ夫にも言われたじゃないか。映画だ。しずかちゃんを映画に誘うんだ。)
しずか「そう言えば去年出席したA美ちゃんの披露宴も素敵だったわぁ。」
のび太(今テレビでどんな映画のCMしてたっけ?)
しずか「ご両親への手紙が感動的だったのよ。」
のび太(えっと・・・・・・うわぁ、思い付く限りどれもドンパチ物ばかりだなぁ)
しずか「あっ、そうだわ。結婚式と言えば・・・」
のび太(あっ、そう言えばジャイ子ちゃんのラブコメ漫画が映画化されるんだった! あれは確か来週から公開だったな!)
72 : ◆51UnYd7yHM [saga]:2013/03/18(月) 00:44:53.69 ID:yyKHaLZAO
しずか・のび太「「ねぇ。」」
のび太「えっ?」
しずか「あっ・・・」
のび太「ご、ごめん。どうぞ。」
しずか「いえ、こっちこそごめんなさい。のび太さん話して。」
のび太「いや、僕の話なんて良いよ。別に大した内容でもないから。で、何なの?」
しずか「あ・・・あぁ、じゃあお言葉に甘えて。」
のび太「うん。」
しずか「男の人が冠婚葬祭に履く靴って、どんなのがあるの?」
のび太「えっ? 冠婚葬祭?」
73 : ◆51UnYd7yHM [saga]:2013/03/18(月) 00:45:32.31 ID:yyKHaLZAO
しずか「えぇ。例えば女の人だったら結婚式はアニマル柄、お葬式は金具付きがNGだったりするじゃない?」
のび太「そうだね。」
しずか「男の人の靴にはそういうルールってあるのかなぁと思って。男の人の靴ってよく分からないから。」
のび太「あぁ、男はもっと簡単だよ。黒のストレートチップかプレーントゥ。この2択しかないよ。冠婚葬祭全部の場面でね。」
しずか「ストレート? プレーン?」
74 : ◆51UnYd7yHM [saga]:2013/03/18(月) 00:47:36.59 ID:yyKHaLZAO
のび太「あぁ、ごめんごめん。分からないよね。どっちもヒモ靴なんだけど、甲の部分に横一文字の線が入ってるデザインがストレートチップで、何の装飾もないツルっとしたデザインがプレーントゥだよ。」
のび太「ストレートチップが最もフォーマルなデザインで、その次がプレーントゥなんだ。まぁ、最近はその優劣もなくなりつつあるから、好みでどっちを履いても良いと思うけどね。」
しずか「その2つしかダメなの? 例えばヒモ無しでスポッと履くタイプの物とかは?」
のび太「スリッポンはダメだよ。スリッポンはあくまでスーツでオシャレする為の靴、遊びの靴だから。」
75 : ◆51UnYd7yHM [saga]:2013/03/18(月) 00:48:41.04 ID:yyKHaLZAO
しずか「そうなの。」
のび太「とは言え、最近はそういった靴に関するフォーマルなルールもなくなってきてるみたいだけどね。お葬式や結婚式の会場で男の人を見てるとみんな色んな靴を履いてるよ。Uチップとかスリッポンとかキルトローファーとか。中には茶色の靴を履いてる人までいたなぁ。さすがにお葬式で茶色はドン引きしたけどね。故人に失礼だよ。」
しずか「そうなのねぇ。」
のび太「うん。っていうか、いきなりそんな事訊いて、どうしたの?」
しずか「えっ? あぁ、何でもないわ。ふと気になっただけよ。」
76 : ◆51UnYd7yHM [saga]:2013/03/18(月) 00:49:26.08 ID:yyKHaLZAO
のび太「そうなの?」
しずか「えぇ。本当に何でもないわ。ところで、のび太さんは何を言おうとしてたの?」
のび太「えっ? あ、あぁ。あのさぁ・・・」ドキドキ
しずか「???」
のび太「あの・・・・・・今度、映画行かない?」ドキドキ
しずか「映画?」
のび太「う、うん。ジャイ子ちゃん原作のラブコメ映画。来週から公開だから。」ドキドキ
しずか「あっ、そう言えばテレビでCM見たわねぇ。」
のび太「あれ、面白そうじゃない?」ドキドキ
しずか「そうね。確かに見てみたいわ。けど・・・」
のび太「???」
77 : ◆51UnYd7yHM [saga]:2013/03/18(月) 00:53:20.93 ID:yyKHaLZAO
しずか「ごめんなさい、しばらく予定が埋まってるの。」
のび太「あっ、そうなんだ・・・。」
しずか「ごめんなさい。また予定が空いたら言うから、その時一緒に行きましょ。」
のび太「う、うん。分かった。まぁ、もしその時にジャイ子ちゃんの映画が終わってたら、また別のを見れば良いしね。」
しずか「ごめんなさい。」
のび太「良いよ良いよ・・・・・・ちなみに、その予定って」
ガチャッ
しずか「いらっしゃいませ。」
女子大生「すいません、13人いけますか?」
78 : ◆51UnYd7yHM [saga]:2013/03/18(月) 00:54:51.28 ID:yyKHaLZAO
しずか「13名様ですか? あ~、テーブルとカウンターに別れていただければ。」
女子大生「あっ、それで全然良いです!」
ミンナー13ニンイケルッテー
のび太「忙しくなってきたね。僕はおいとまするよ。」ガタッ
しずか「ごめんなさい、お話の途中なのに。」
のび太「気にしないで。また会った時にゆっくり話そう。これ、今日のお代。これでちょうどだよね?」サッ
しずか「えぇ。」
のび太「じゃあね。」
しずか「ありがとう。おやすみなさい。」
のび太「おやすみ。」スタスタ
79 : ◆51UnYd7yHM [saga]:2013/03/18(月) 00:55:42.36 ID:yyKHaLZAO
女子大生の団体とすれ違いながら、のび太は店を出た。
今を謳歌する若者達の楽しそうな笑い声を背中で聞く。
僕にもあんな時代が・・・
そう思ってすぐ、そんな時代がなかった事を思い出した。
彼女らほどの年代の時、のび太は引きこもりだったからだ。
取り戻せない過去への悔恨と、そこから立ち直った自身への誇らしさを同時に感じながら、のび太は家路を辿った。
のび太(映画作戦は失敗・・・ってほどでもないか。単に予定が合わなかっただけだもんな。また予定を合わせてゆっくり行けば良いや。)テクテクテク
80 : ◆51UnYd7yHM [saga]:2013/03/18(月) 00:56:34.13 ID:yyKHaLZAO
のび太(しずかちゃんも忙しいんだな。当分先まで予定が埋まってるなんて。)テクテクテク
のび太(予定。予定かぁ。)テクテクテク
ピタッ
のび太(予定って何だろう?)
ざわめきを覚えた。
先ほどしずかと交わした会話が蘇る。
(しばらく予定が埋まってるの。)
(男の人の靴ってよく分からないから。)
(男の人が冠婚葬祭に履く靴って、どんなのがあるの?)
(結婚かぁ。良いわねぇ。)
のび太「なんで男の靴を?」
81 : ◆51UnYd7yHM [saga]:2013/03/18(月) 00:57:49.47 ID:yyKHaLZAO
知り合いの結婚式が近く、共通の友人である男性が履いてゆく靴に悩んでいたからのび太に訊いた。
常識的に考えればこれが最も整合性のある推論だろう。
だが、不安に支配されたのび太の思考回路は悲劇作家のごとくネガティブな推論を構築してゆくのであった。
のび太(ま、まさか、結婚するとか!? 僕に訊いたのは彼氏に履かせる靴!? 予定ってのは式場の予約とか引出物の手配とかのアレコレ!?)
のび太(いやいや、それはない。だって半年前に『何か素敵な出会いはないかしら』って言ってたじゃないか。)
82 : ◆51UnYd7yHM [saga]:2013/03/18(月) 00:59:14.68 ID:yyKHaLZAO
のび太(あっ、でも、その直後に出会いがあって彼氏ができてたとしたらどうだ? 僕は幼馴染みで常連だけど、所詮は他人だ。いちいち交際の報告をする義理なんかないと言われればそれまでじゃないか。)
のび太(現に世の中には交際3ヶ月で結婚するカップルだっている。彼氏がいるのなら、いつ結婚したっておかしくないんだ・・・・・・)
のび太(そ、そんな・・・・・・しずかちゃんが・・・結婚・・・・・・)
(のび太、今けっこう崖っぷちなんだぜ。)
この日、煩悶に明け暮れるのび太が眠りについたのは、夜空が退出の準備をし始めた午前5時頃だった。
その夜 しずかのダイニングバー
しずか「そうなの。スネ夫さんが指輪を。素敵ねぇ。婚約者かしら?」
のび太「どうだろうね? 訊かなかったから分からないけど、普通の彼女って可能性もあるよね。」
しずか「あら? 普通の彼女と婚約者の違いってなぁに?」
のび太「えっ? それはやっぱり、結婚の約束をしてるかどうかで」
しずか「約束をしてなければ普通の彼女? でも、その普通の彼女にプロポーズをすればその日から婚約者よ?」
のび太「あぁ・・・・・・そっか。そうだね・・・」
67 : ◆51UnYd7yHM [saga]:2013/03/18(月) 00:38:02.06 ID:yyKHaLZAO
しずか「だから彼女に普通も特別もありません。彼女はみんな特別なものよ。」
のび太「失礼いたしました。」
しずか「ふふふっ。よろしい。はい、ジャックダニエルのハイボール。」コトッ
のび太「ありがとう。」カラン
のび太(なんだか今日はやり込められてばかりだなぁ)トホホ
しずか「スネ夫さんって言葉はキツいけど根は優しい人じゃない? それにオシャレさんだし。そんなスネ夫さんの奥さんになる人だから、きっと素敵な人なんでしょうねぇ。」
のび太「だろうねぇ。」
68 : ◆51UnYd7yHM [saga]:2013/03/18(月) 00:39:25.16 ID:yyKHaLZAO
スネ夫が来店してすぐ、のび太は指輪の存在に気付いていた。
日頃の接客の中でも相手の装飾品を誉める事で会話がスムーズに成り立つケースは多い。
その為、来店した人物のアクセサリーやバッグに目を向ける事は、すでにのび太の中で職業病として定着していた。
だが、スネ夫の左薬指に指輪の存在を認めても、のび太はその事に触れなかった。
31歳の独身男性の左薬指に指輪。
それは即ち、のび太の言う“普通の彼女”との愛の象徴ではなく、婚約者とのエンゲージリングである可能性が極めて高い。
のび太にもそれは分かっていた。
69 : ◆51UnYd7yHM [saga]:2013/03/18(月) 00:41:13.92 ID:yyKHaLZAO
だからこそ訊けなかったのだ。
スネ夫の口から婚約者の存在を聞かされれば、それはとりもなおさずスネ夫と自分の間に強烈な対比を生み、挙げ句しずかとの間にある距離の大きさまでもが浮き彫りになるような気がした。
それが恐ろしくて、指輪を視界の外へと追い出していた。
情けない。
自分の情けなさに嫌気が差す。
あんなにも必死になって自分の恋路を応援歌してくれた友人。
そんな彼の幸せを祝ぐ余裕すらないだなんて。
のび太(友人失格だなぁ。)
しずか「どうしたの? さっきから渋い顔して。」
70 : ◆51UnYd7yHM [saga]:2013/03/18(月) 00:42:10.45 ID:yyKHaLZAO
のび太「えっ? あっ、あっ・・・み、店の在庫の事考えてたんだ!」アタフタ
しずか「在庫?」
のび太「う、うん。今季中にアレとコレを売り切っとかなきゃ、来季にアレを入れる予算が厳しくなりそうだなぁって。」アセアセ
しずか「あぁ、分かるなぁ。今ある在庫をいかに無くしていくかって、死活問題よねぇ。」
のび太「う、うん。だよねぇ。」ヒヤヒヤ
のび太(ダメだダメだ! 気持ちの暗さが表情に出てる!)
しずか「スネ夫さんが結婚かぁ。良いわねぇ。」
のび太(スネ夫にも言われたじゃないか。映画だ。しずかちゃんを映画に誘うんだ。)
しずか「そう言えば去年出席したA美ちゃんの披露宴も素敵だったわぁ。」
のび太(今テレビでどんな映画のCMしてたっけ?)
しずか「ご両親への手紙が感動的だったのよ。」
のび太(えっと・・・・・・うわぁ、思い付く限りどれもドンパチ物ばかりだなぁ)
しずか「あっ、そうだわ。結婚式と言えば・・・」
のび太(あっ、そう言えばジャイ子ちゃんのラブコメ漫画が映画化されるんだった! あれは確か来週から公開だったな!)
72 : ◆51UnYd7yHM [saga]:2013/03/18(月) 00:44:53.69 ID:yyKHaLZAO
しずか・のび太「「ねぇ。」」
のび太「えっ?」
しずか「あっ・・・」
のび太「ご、ごめん。どうぞ。」
しずか「いえ、こっちこそごめんなさい。のび太さん話して。」
のび太「いや、僕の話なんて良いよ。別に大した内容でもないから。で、何なの?」
しずか「あ・・・あぁ、じゃあお言葉に甘えて。」
のび太「うん。」
しずか「男の人が冠婚葬祭に履く靴って、どんなのがあるの?」
のび太「えっ? 冠婚葬祭?」
73 : ◆51UnYd7yHM [saga]:2013/03/18(月) 00:45:32.31 ID:yyKHaLZAO
しずか「えぇ。例えば女の人だったら結婚式はアニマル柄、お葬式は金具付きがNGだったりするじゃない?」
のび太「そうだね。」
しずか「男の人の靴にはそういうルールってあるのかなぁと思って。男の人の靴ってよく分からないから。」
のび太「あぁ、男はもっと簡単だよ。黒のストレートチップかプレーントゥ。この2択しかないよ。冠婚葬祭全部の場面でね。」
しずか「ストレート? プレーン?」
74 : ◆51UnYd7yHM [saga]:2013/03/18(月) 00:47:36.59 ID:yyKHaLZAO
のび太「あぁ、ごめんごめん。分からないよね。どっちもヒモ靴なんだけど、甲の部分に横一文字の線が入ってるデザインがストレートチップで、何の装飾もないツルっとしたデザインがプレーントゥだよ。」
のび太「ストレートチップが最もフォーマルなデザインで、その次がプレーントゥなんだ。まぁ、最近はその優劣もなくなりつつあるから、好みでどっちを履いても良いと思うけどね。」
しずか「その2つしかダメなの? 例えばヒモ無しでスポッと履くタイプの物とかは?」
のび太「スリッポンはダメだよ。スリッポンはあくまでスーツでオシャレする為の靴、遊びの靴だから。」
75 : ◆51UnYd7yHM [saga]:2013/03/18(月) 00:48:41.04 ID:yyKHaLZAO
しずか「そうなの。」
のび太「とは言え、最近はそういった靴に関するフォーマルなルールもなくなってきてるみたいだけどね。お葬式や結婚式の会場で男の人を見てるとみんな色んな靴を履いてるよ。Uチップとかスリッポンとかキルトローファーとか。中には茶色の靴を履いてる人までいたなぁ。さすがにお葬式で茶色はドン引きしたけどね。故人に失礼だよ。」
しずか「そうなのねぇ。」
のび太「うん。っていうか、いきなりそんな事訊いて、どうしたの?」
しずか「えっ? あぁ、何でもないわ。ふと気になっただけよ。」
76 : ◆51UnYd7yHM [saga]:2013/03/18(月) 00:49:26.08 ID:yyKHaLZAO
のび太「そうなの?」
しずか「えぇ。本当に何でもないわ。ところで、のび太さんは何を言おうとしてたの?」
のび太「えっ? あ、あぁ。あのさぁ・・・」ドキドキ
しずか「???」
のび太「あの・・・・・・今度、映画行かない?」ドキドキ
しずか「映画?」
のび太「う、うん。ジャイ子ちゃん原作のラブコメ映画。来週から公開だから。」ドキドキ
しずか「あっ、そう言えばテレビでCM見たわねぇ。」
のび太「あれ、面白そうじゃない?」ドキドキ
しずか「そうね。確かに見てみたいわ。けど・・・」
のび太「???」
77 : ◆51UnYd7yHM [saga]:2013/03/18(月) 00:53:20.93 ID:yyKHaLZAO
しずか「ごめんなさい、しばらく予定が埋まってるの。」
のび太「あっ、そうなんだ・・・。」
しずか「ごめんなさい。また予定が空いたら言うから、その時一緒に行きましょ。」
のび太「う、うん。分かった。まぁ、もしその時にジャイ子ちゃんの映画が終わってたら、また別のを見れば良いしね。」
しずか「ごめんなさい。」
のび太「良いよ良いよ・・・・・・ちなみに、その予定って」
ガチャッ
しずか「いらっしゃいませ。」
女子大生「すいません、13人いけますか?」
78 : ◆51UnYd7yHM [saga]:2013/03/18(月) 00:54:51.28 ID:yyKHaLZAO
しずか「13名様ですか? あ~、テーブルとカウンターに別れていただければ。」
女子大生「あっ、それで全然良いです!」
ミンナー13ニンイケルッテー
のび太「忙しくなってきたね。僕はおいとまするよ。」ガタッ
しずか「ごめんなさい、お話の途中なのに。」
のび太「気にしないで。また会った時にゆっくり話そう。これ、今日のお代。これでちょうどだよね?」サッ
しずか「えぇ。」
のび太「じゃあね。」
しずか「ありがとう。おやすみなさい。」
のび太「おやすみ。」スタスタ
79 : ◆51UnYd7yHM [saga]:2013/03/18(月) 00:55:42.36 ID:yyKHaLZAO
女子大生の団体とすれ違いながら、のび太は店を出た。
今を謳歌する若者達の楽しそうな笑い声を背中で聞く。
僕にもあんな時代が・・・
そう思ってすぐ、そんな時代がなかった事を思い出した。
彼女らほどの年代の時、のび太は引きこもりだったからだ。
取り戻せない過去への悔恨と、そこから立ち直った自身への誇らしさを同時に感じながら、のび太は家路を辿った。
のび太(映画作戦は失敗・・・ってほどでもないか。単に予定が合わなかっただけだもんな。また予定を合わせてゆっくり行けば良いや。)テクテクテク
80 : ◆51UnYd7yHM [saga]:2013/03/18(月) 00:56:34.13 ID:yyKHaLZAO
のび太(しずかちゃんも忙しいんだな。当分先まで予定が埋まってるなんて。)テクテクテク
のび太(予定。予定かぁ。)テクテクテク
ピタッ
のび太(予定って何だろう?)
ざわめきを覚えた。
先ほどしずかと交わした会話が蘇る。
(しばらく予定が埋まってるの。)
(男の人の靴ってよく分からないから。)
(男の人が冠婚葬祭に履く靴って、どんなのがあるの?)
(結婚かぁ。良いわねぇ。)
のび太「なんで男の靴を?」
81 : ◆51UnYd7yHM [saga]:2013/03/18(月) 00:57:49.47 ID:yyKHaLZAO
知り合いの結婚式が近く、共通の友人である男性が履いてゆく靴に悩んでいたからのび太に訊いた。
常識的に考えればこれが最も整合性のある推論だろう。
だが、不安に支配されたのび太の思考回路は悲劇作家のごとくネガティブな推論を構築してゆくのであった。
のび太(ま、まさか、結婚するとか!? 僕に訊いたのは彼氏に履かせる靴!? 予定ってのは式場の予約とか引出物の手配とかのアレコレ!?)
のび太(いやいや、それはない。だって半年前に『何か素敵な出会いはないかしら』って言ってたじゃないか。)
82 : ◆51UnYd7yHM [saga]:2013/03/18(月) 00:59:14.68 ID:yyKHaLZAO
のび太(あっ、でも、その直後に出会いがあって彼氏ができてたとしたらどうだ? 僕は幼馴染みで常連だけど、所詮は他人だ。いちいち交際の報告をする義理なんかないと言われればそれまでじゃないか。)
のび太(現に世の中には交際3ヶ月で結婚するカップルだっている。彼氏がいるのなら、いつ結婚したっておかしくないんだ・・・・・・)
のび太(そ、そんな・・・・・・しずかちゃんが・・・結婚・・・・・・)
(のび太、今けっこう崖っぷちなんだぜ。)
この日、煩悶に明け暮れるのび太が眠りについたのは、夜空が退出の準備をし始めた午前5時頃だった。
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