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魔女「果ても無き世界の果てならば」

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Part15
813 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/06/20(木) 17:04:17 ID:cuS1vHJs
 
少女「そういえば、私達魔女は新しい同胞に徒名を贈るのが習わしだ。 そうだな……君はひんにゅ」
魔法使い「~~」
少女「甘いっ! いくら魔女になろうと私に魔力操作は勝てまい、ふっふっふ」
 ごんっ。
 うん、良い音だ。
少女「杖でぶったな!? 卑怯だぞ貧乳の魔女!!」
 コイツまだ言うか。
魔法使い「たいして変わらないだろおっ!?」
少女「お前よりはあるもんな、私は普通だ」
僧侶「どちらも可愛らしくて良いじゃないですか、大きくても肩は凝るし良い事なんて……」
魔法使い「うるさい乳袋っ!」
少女「その無駄乳をもいでやろうかっ!?」
 あーもう、楽しいなあ。

814 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/06/20(木) 17:06:29 ID:cuS1vHJs
少女「で? 君は結局どういった徒名なら満足してくれるんだい?」
魔法使い「小屋建てて暮らすつもりだから小屋の魔女とかで良いよもう」
 適当? 気にしないさ。
少女「威厳も何も無いじゃないか!?」
僧侶「そうですよ! やっぱり私の「ふわふわの魔女」が可愛らしくて最高ですっ!!」
魔法使い「馬鹿丸出しじゃないかそんな徒名!!」
戦士「ならばやはり俺の「金髪之杖鬼」が……」
魔法使い「どう聞いてもそれは豪傑の戦場での二つ名でしょ!?」
勇者「じゃあ俺の「栗鼠の魔女」とか……ほら、魔法使いって栗鼠っぽいし」
魔法使い「初耳だよ!?」
少女「なら私の「破弦の魔女」なら良いじゃないか!」
魔法使い「格好付けすぎててムズムズする、却下」

815 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/06/20(木) 17:07:32 ID:cuS1vHJs
少女「じゃあせめて、小屋じゃなくて、塔を建ててくれないか? 今の君ならちょちょいのさっと魔法で造れるだろう!?」
魔法使い「まぁ、ソレくらいなら妥協しても良いかな?」
少女「じゃあ、君の徒名は今この時より「塔の魔女」だ」
 塔の魔女、か。 うん、まぁ悪くないかな。
塔の魔女「うん、じゃあ塔でも建てて偏屈魔女として生きるとするよ」
――――――――――――――――――――

816 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/06/20(木) 17:10:59 ID:cuS1vHJs
 そうして、僕は塔の魔女になった。
 塔での生活は割と快適だ。
 最上部に部屋を作って、安楽椅子をこさえた。
 ある日。
 今日は、勇者と少女が訪ねてきた。
 どうやら勇者達も家が完成したようだ。
 「次は子供?」と訪ねると「任せておけ」と少女は言っていた。 恥じらいを持つべきだ。
 ある日。
 今日は、本をたくさん用意した。
 これだけの量が有れば当分は退屈しなくて良い。
 ある日。
 今日は、勇者の住む辺りに小さな市が開かれると言うので見に行ってみた。
 少女のお腹が大きい。
 からかうと、少女に「宝物だ」と満面の笑みで返されたので、とりあえず勇者を叩いた。 そんなに強く叩いていないのに大袈裟に痛がらないで欲しい。
 月日は止まる事なく、流れ続けた――。

819 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/06/20(木) 19:33:05 ID:wO2WichU
もうすぐ・・・終わりか・・・
寂しいな


820 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/06/20(木) 19:39:11 ID:moNU2.cI
魔法使いは不老になっただけであって、不死ではないってこと?

821 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/06/20(木) 20:46:44 ID:cuS1vHJs
>>820
魔女の状態をざっくり説明すると、先という物がない状態、強制的な現状維持です。
なので老いや死は存在せず、風邪も引きません。
髪を伸ばす事も、短くする事もできません。
因みに
魔女としての能力
魔法が凄い。
魔王の呪い
不老不死っぽい何か
となっています。ただの魔女は何か特別な魔法やら何やらを使わなければ普通に生きて普通に死にます。
ほかにも詳しく聞きたい事が有れば物語の終了後にお答えします。
また更新します。

822 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/06/20(木) 22:46:45 ID:zPn3mWfA
面白かったー

823 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/06/20(木) 23:49:01 ID:Mrt0YALI
少し魔女の心のなかを考えたら泣きそうになった
乙!愉しかったけど…寂しいよ

824 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/06/21(金) 00:15:36 ID:eDQHik8k
更新します。
次で最後。 今までありがとうございました。

825 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/06/21(金) 00:16:58 ID:eDQHik8k
 ある日。
 勇者は正式に国を建てた。
 切れ者だった少女が色々と企てたらしい。 近隣諸国との関係は比較的良好だ。
 ある日。
 戦士が遊びに来た。 随分と老けている。 女の子を一人連れていた。 彼は守る物を見つけたと笑っていた。
 ある日。
 僧侶が訪ねてきた。 教会ではかなりの地位らしい。 自由に動けなくて息が詰まると愚痴っていた。

826 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/06/21(金) 00:17:56 ID:eDQHik8k
 ある日。
 勇者が死んだ。
 僕が、殺した。
 魔王の呪いが原因だったらしい。最後には年齢とは思えない程老けていた。 恐慌の呪いが進行する前に殺して欲しかったそうだ。
 泣いたのは数年ぶりだ。
 少女は「ありがとう」と言って泣き崩れていた。
 娘はまだ理解できる程の年齢ではない所為か勇者と少女の間を行き来している。

827 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/06/21(金) 00:19:38 ID:eDQHik8k
 ある日。
 勇者の国と、僧侶の教会のある国で戦争が起きた。
 教会と国が腐敗していたからだろう。
 でも、全面衝突した平原では死者は一人しか居なかったらしい。
 亡くなったのは僧侶。
 僧侶は、その命と引き換えに戦場の全ての命を救ったんだ。
 僧侶らしいね。 教会は腐敗した上層部を切り捨てて、僧侶を新たなる成人として祀るらしい。
 勇者の国ではそれを国教として採用した。 決めたのは勇者と少女の娘だ。
 最後まで馬鹿だよ……。
 こんなに胸が痛くなるなんて……。 僕の心はまだ凍てついてはいなかったみたいだ。

828 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/06/21(金) 00:20:31 ID:eDQHik8k
 ある日。
 戦士の連れていた娘が訪ねてきた。
 戦士が死んだらしい。
 娘は泣いていた。 己の力不足を恨んでいた。
 戦士も幸せだっただろうと思う。 彼の崇高なる武人の魂はきっとこの娘を通じて連綿と受け継がれていく事だろう。
 ついに……ひとりになってしまった。

829 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/06/21(金) 00:21:44 ID:eDQHik8k
 もう、泣かなくて済む。 そう言い聞かせながら泣いた。


830 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/06/21(金) 00:22:06 ID:PK/GgQIU
魔女・・・・

831 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/06/21(金) 00:33:31 ID:eDQHik8k
 ある日。
今日は勇者達のの記念祝典らしい。
 魔王討伐百周年記念らしく、様々な国が式典を開いている。
 あれから百年も経っていたのか。
 僕だけ除け者にされて居るみたいで悔しいね。
 果ても無き世界の果てには、死せる魂が安らぐ楽園が在るという。
 彼らはそこに居るのだろうか?
 少女は、今度は勇者を僧侶に譲ってあげても良いのじゃないかな?
 そんな事を考えて笑ってしまう。
 そういえば、旅をしていた頃に勇者に「寂しそうな笑顔」って言われたな。
 昔を懐かしむ。
 大丈夫。 涙は流さない。

832 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/06/21(金) 00:34:30 ID:eDQHik8k
 ある日。
 近くに村ができて居た。
 僕の事を恐れてか、塔には一向に近づいてこなかった。
 そういえば、僕の故郷の村はまだあるのだろうか?
 魔法で見てみようかと考えた。
 けれど、いつかは無くなってしまうだろう。
 これ以上思い出は増やさない方が良い。
 これ以上過去に縋ると思い出に溺れて沈んでしまいそうだから。

833 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/06/21(金) 00:36:26 ID:eDQHik8k
 ある日。
 王国の四代目の戴冠式典に出る事になった。 この娘は髪が少女に良く似た黒髪だった。
 ある日。
 ふと昔の夢を見た。
 覚めなければ良かったのに。
 泣いていたのだろうか? 枕が濡れていた。
 泣いてなんか居られない。 これは僕が選んだ道なのだから。

834 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/06/21(金) 00:43:11 ID:eDQHik8k
 ある日。
 うたた寝してしまった。
 微睡みの中、懐かしい声が聞こえて起こされた気がした。
 思わず辺りを見渡す。
 「勇者? 僧侶? 戦士? 少女?」
 居る訳も無いのに必死に呼びかけている自分に気が付くと、滑稽さに思わず自嘲する。
 僕は、こんなにも弱かったのだろうか?
 百年以上昔の事を昨日のように思い出しては幼子のように狼狽える。
 今日は良くない日だ。
 でも、一瞬でも幸せな気持ちになれた。
 彼らの夢を視たのも数十年ぶりだ……
たまには、許してもらえるよね?


835 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/06/21(金) 00:46:36 ID:eDQHik8k
 ある日。
 今日も本を読んで過ごす。
 遠くの国では戦争が始まったらしい。 愚かな事だ。
 勇者達が愛した世界だと言うのに、人間というのは争わなければ生きていけないのだろうか?
 こんな事を考えて、自分が人間ではない事を実感した。

836 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/06/21(金) 00:47:47 ID:eDQHik8k
 ある日。
 今日も本を読んで過ごす。
 村で疫病が流行っていたらしい。
 言ってくれれば、薬くらいは用意してあげても……いや、彼等の世界に僕は介入する訳には行かないな。
 僕は、この世界の片隅で、魔王の墓守りをしながら見守ろう。
 この果ても無き世界の行く末を。

837 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/06/21(金) 00:49:45 ID:PK/GgQIU
ああ、ここでか

838 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/06/21(金) 01:07:15 ID:eDQHik8k
 もう何年経ったのだろう。
 そろそろ二百年程度の月日が流れたのかな。
 やはり、少し寂しいな。
 でも、この終わりの無い命では、人と関わった所で悲しいだけだ……。
 そう、思っていた。

839 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/06/21(金) 01:11:19 ID:eDQHik8k
 そんなある日の朝だった。
 塔の中に誰かが入って来たのがわかる。
 足音は一人。 多分まだ子供だろう。
 どうやって追い返そうか?
 でも、久しぶりに誰かと会うのかと思うと、少しだけ胸が高鳴った。

840 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/06/21(金) 01:13:11 ID:eDQHik8k
 そっと、部屋の扉が開いた。

841 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/06/21(金) 01:14:24 ID:eDQHik8k
少年「あなたが塔の魔女?」


842 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/06/21(金) 01:20:32 ID:eDQHik8k
魔女「いかにも……僕が悪名高い塔の魔女だよ」
 この果ても無き世界の果てならば――。
 もしかしたら。


843 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/06/21(金) 01:22:30 ID:eDQHik8k
魔女「果ても無き世界の果てならば」
完。

844 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/06/21(金) 01:25:51 ID:PK/GgQIU
乙!一年近く続いた魔女の過去話も遂に完結か・・・>>1にお疲れ様と言いたい。
仲間が誰もいなくなった魔女にとって、少年は本当に救いだったんだなあ・・・

845 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/06/21(金) 01:27:28 ID:eDQHik8k
以上で
魔女「果ても無き世界の果てならば」
終了となります。
感想、質問等ございましたらできる限り答えたいと思います。
放置、遅筆がちにもかかわらず最後まで付き合って下さった方、本当にありがとうございました。

846 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/06/21(金) 01:46:33 ID:NhulV7O.
乙!
あなたの作品のせいで何度寝不足になりかけたか
大好きなSSだよ
タイトルセンスも好きだ いろいろ良いな!

847 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/06/21(金) 01:53:00 ID:bVL2rFps
遂に完結ですか
作者さんお疲れ様です!

848 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/06/21(金) 02:31:15 ID:fC6TI55w
面白かったよ!!
乙!!

855 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/06/21(金) 09:48:14 ID:eDQHik8k
蛇足1
魔女「とまぁこんな所かな」
少年「……ぐすっ……ひっく」
 魔女の過去は、あの時見てきたから知ってはいました。
 でも、魔女の気持ちまで見た訳ではないです。
魔女「そんな泣かないでくれ……涙は人を弱くするよ?」
 魔女は強いですね。 でも、弱くたって良いじゃないですか……。
少年「魔女……僕は何があっても君の側にいるよ。 絶対に離れたりしない」
魔女「……ありがとう。 でも君は君の生きる道を見つけるべきだ。 君を縛り付ける気はないよ」

856 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/06/21(金) 09:52:35 ID:eDQHik8k
魔女「ふふ……期待はしないでおくよ」
少年「ねぇ、魔女」
魔女「ん?」
少年「出会ってくれて、ありがとう」
魔女「どういたしまして。 こちらこそ」
 魔女の笑顔を絶対に守りたい。
 僕は誓う。
 神様なんて居るか居ないか分からないものじゃなくて、 僕自身にかけて誓いを立てる。

857 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/06/21(金) 09:57:55 ID:eDQHik8k
少年「それと魔女、僕はね」
魔女「なんだい?」
少年「僕は小さくても良いと思うよ」
 最後まで気にしてたみたいだし。
魔女「~~」
少年「え? ちょ? 魔女? それは……」
魔女「うん、お仕置き」
 痛いのは嫌です。
嫌だってばっ!?
 うわあー。
終わり

858 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/06/21(金) 10:00:43 ID:eDQHik8k
ちなみに、次の話は勇者と少女の話の予定です。
次作
勇者「この美しき世界で」少女「生きていこうか」
ご期待下さい。
たくさんの乙ありがとうございました。

859 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/06/21(金) 10:51:37 ID:VjN.kAYQ
逆鱗に触れてはいけないとあれほど……

860 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/06/21(金) 11:28:37 ID:Cpnzut5E
微乳乙!

861 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/06/21(金) 11:51:04 ID:Qp9YTp8g
まな板おつ! 最後笑えて良かった

862 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/06/21(金) 12:14:35 ID:VjN.kAYQ
蛇足1ってことは2~を期待していいだな?

863 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/06/21(金) 12:36:39 ID:hwlb5WAQ
それよりある日の話をしてもらう方が。
あと4、5年は楽しめそうだ

864 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/06/21(金) 13:44:31 ID:Vpue2m/A
おつかれさまでした!
毎日、楽しみにしてたのに終わってしまうと…
次回作も期待!

870 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/06/22(土) 22:15:00 ID:O4532TDg

他の言葉が出て来ないや……とにかく乙です!

871 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/06/28(金) 15:51:57 ID:W/4..mqY
泣けた、、お疲れ様でした!

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