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少年「あなたが塔の魔女?」

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Part7
254 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/08/02(木) 20:34:34 ID:SrQXGCIs
魔女視点となります。

255 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/08/02(木) 20:35:06 ID:SrQXGCIs
 少年には、悪いことをした。
 いくら、補助魔法をかけたとしても彼はまだ年端も行かない只の人間だというのに。
 でも、そんな只の人間が、全てを振り絞って僕なんかを助けに来てくれた。
魔女「少年のあの眼、まるで勇者みたいに真っ直ぐで力強かったな」
 今も眼前で、獅子吼をあげ奮戦している少年。
 彼が相手にしているのは、王国の騎士団さえ後込みするほどの凶悪な魔物達だというのに。
 今の少年は、きっと大丈夫だとなぜか思えてしまう。
 小さな背中がどんどん大きく見えてくる。
 優しいだけで人間はこうも強くなれるんだと僕は忘れていたようだ。

256 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/08/02(木) 20:37:39 ID:SrQXGCIs
 胸に手をかざす。
 空想する。 僕の中に確かに存在すると確信できるほどに。
 心の中にハッキリと浮かび上がったソレを、現実に引き出す。
 かざした手に握られているのは杖の形をした光。
 魔力を練って作り出した僕だけの為の杖。
 ソレを媒介に呪文を紡ぐ。
魔女「~~~~」
 呼び寄せ、破壊する想像。
 森羅万象の摂理をねじ曲げて事象を引き起こすために。

257 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/08/02(木) 20:40:27 ID:SrQXGCIs
 なにが起きるかわからない筈の呪文を、魔力で強制的に効果を特定の物にする。
魔女「~~~~」
 神経が焼け付くような痛みを押し殺す。
魔女「~~~~!」
 魔法は、成功。
魔女「少年、ご苦労様。 後は僕の側にいて巻き添えにならないようにしてくれれば終わるよ」
少年「え?」
 少年を引き寄せると同時に発動させる。
魔女「ほら、今から星空が降ってくるよ。 願い事でもいう準備をしたらいい」
少年を抱き寄せて、魔物の群れに目をやる。
 次の瞬間。
 天空から流星が降り注いだ。

258 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/08/02(木) 20:41:05 ID:SrQXGCIs
少年視点となります。


259 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/08/02(木) 20:41:46 ID:SrQXGCIs
少年「凄いや」
 魔物の群れに次々と流星が降り注ぎます。
 魔物達は為す術もなく、次々と消し飛んでいきました。
 しかも、全ての流星は魔物以外には当たらず、周りには何の影響もないのです。
魔女「これは少し疲れるから、君が居てくれて助かったよ」
 辺りはすぐに静まり返りました。
 遠くの森まで流星が降り注いだ所をみると、きっと辺りに魔物は居ないのでしょう。
少年「……っ!?」
 大変な事に気がつきました。 ゆゆしき事態と言う奴です。

260 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/08/02(木) 20:42:24 ID:SrQXGCIs
魔女「どうしたんだ……なる程、そういった所も君はもう男な訳だ」
 思わず目を逸らします。
 魔女の格好は、年頃の女の子がして良いような格好ではありません。
 月光のように白い肌も、もっと見えちゃいけない物まで丸見えなんです。
少年「あ……と、その、これ着てよ」
 とりあえず服を脱いで魔女に渡しました。
魔女「ん、ありがとう」
 目を逸らして必死に見ないようにします。
 別に見たくなんてないですよ?
 本当に本当です。 神様に誓います。

261 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/08/02(木) 20:43:10 ID:SrQXGCIs
魔女「少年、こっちを見てくれ」
少年「え……!?」
 せっかく渡した服を着ずに魔女は意地悪そうな顔でほくそ笑んでました。
魔女「これは、ほんのお礼だ、受け取ってくれ」
 そういってそのまま僕は抱きしめられました。
 魔女の身体は、見た目よりもずっと柔らかくて小さくて。
 どんどん顔が熱くなってきます。
 こんな時どうすればいいのか、誰にも教えてもらってないです。

262 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/08/02(木) 20:44:00 ID:SrQXGCIs
魔女「随分と鼓動が激しいね? 僕なんかの貧相な身体でも興奮してくれるのかい」
 魔女の声の調子は、普段より意地悪そうでした。
 でも、よく見たら、魔女の蜂蜜色の濃い金髪から覗いている形の良い耳も、真っ赤になっています。
少年「魔女……もしかして顔赤くない?」
魔女「淑女にいう言葉じゃないよ?」
少年「否定はしないんだね、て痛っ」
 わき腹に魔女の爪が食い込みました。

263 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/08/02(木) 20:44:23 ID:SrQXGCIs
魔女「あぁ、確かに顔は赤いさ。 助けに来てくれて嬉しいやら、裸を見られて恥ずかしいやらでどうしようか困っている」
少年「え…と」
魔女「だからといって、君にそれを見られるのも癪だ。 だから」
 魔女は僕の胸から顔を離しません。
魔女「顔の赤みが治まるまでこのままじゃ……駄目かい?」
 やはり、魔女は狡いです。
 こんな風にお願いされたら、どうかえしたら良いかわかりませんもの。

264 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/08/02(木) 20:54:34 ID:SrQXGCIs
今回の更新は以上になるかと思われます。

265 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/08/02(木) 21:17:42 ID:tC9NGmGY
乙、次でラストスパートかい?
    ④"
( ´-`)ノ

266 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/08/04(土) 21:27:33 ID:PdVcaBKE
更新します。
あと数回、お付き合い頂ければ幸いです。

267 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/08/04(土) 21:29:15 ID:PdVcaBKE
 しばらくの間、魔女は動きませんでした。
少年「魔女?」
魔女「人の温もりが久々すぎてつい、ね」
 いつのもの魔女です。
 でも笑顔は柔らかです。
少年「そっか」
 これ以上何か言うと、魔女に無粋だと怒られそうですから。
魔女「できることならもう少しこうしていたいんだけど、そうもいかないみたいだね」
 魔女が森の方を睨みました。

268 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/08/04(土) 21:30:11 ID:PdVcaBKE
青年「よぉ、無事だったのか」
 嫌いな人が来ました。
 死んでないのは良い事だと思いますが、できれば会いたくない相手です。
少年「そっちもね」
魔女「……」
 魔女は、僕でも感じる事ができるほど青年に敵意を剥き出しにしていました。
青年「そちらのお嬢ちゃんはなんでまたそんな眼で俺をみてるんだ?」
少年「まともな人間で青年さんの本性がわかる人なら普通の反応じゃないかな?」
青年「は、言うようになったなぁ」
 何か異質な感じがしました。

269 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/08/04(土) 21:31:05 ID:PdVcaBKE
魔女「いつまで茶番を続けるつもり?」
少年「?」
青年「はぁ?」
魔女「そんなチンケな人間の中に居るだけで僕の目を誤魔化せるとでも?」
 魔女は、今までみた事がないくらいの鋭い目で青年さんを睨んでいました。
青年「随分と訳の分かんないことを言うお嬢ちゃんだな」
少年「魔女?」
魔女「徐々に浸食して同化して、自我は乗っ取らずにいる」
魔女「相も変わらず下衆な手口だね、魔王」
青年「……はぁ?」

270 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/08/04(土) 21:33:27 ID:PdVcaBKE
魔女「自分の所為で歪んでいく宿主をほくそ笑んで見てるんだろう? 吐き気がする程悪趣味だ」
青年「……」
青年「なんのことだか」
魔女「~~~」
 魔女が呪文を唱え、手をかざしました。
 氷塊が青年さんに降り注ぎました。
少年「魔女!?」
魔女「これくらいでどうにかなる相手じゃないよ」
青年「……」
 青年さんには水滴ひとつ付いていませんでした。

271 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/08/04(土) 21:34:21 ID:PdVcaBKE
青年「小娘……」
 空気が変わっていきます。
 肌に突き刺さるような緊張感と、指一本動かす事さえできない重苦しさ。
 そして、今まで経験した事がないくらい、ハッキリと。
 ソレは死を連想させました。
少年「……魔女」
魔女「アレの前で生きていて、しかも正気を保てているなんて誇って良いよ」

272 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/08/04(土) 21:36:26 ID:PdVcaBKE
 ゆっくりと歩いてくる青年さん。
 いえ、あれは青年さんの姿形をした別の何かです。
 世界中の嫌な物、怖い物を一つに集めて固めたら、あんな雰囲気になるんでしょうか?
魔女「随分と調子が良さそうだね? 現世に出るには随分と貧相な依代に見えるけど」
青年「貴様を消すくらいならこの人間を依代にしてもできるからな」
青年「その後、ゆっくりと復活させてもらうよ」
魔女「二百年も良いようにされていた死に損ないとは思えない強気な言葉だ」
青年「今回は別だ」
青年「なぁ、そこの少年」
 青年さんは、いや、魔王は唇だけを歪めて僕を見ました。
 なんだか魔女みたいな笑い方です。 その表情の奥にある物がなにも見えません。

273 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/08/04(土) 21:37:07 ID:PdVcaBKE
青年「この付近の人間は実に素晴らしいな」
少年「え?」
魔女「……」
青年「いったいどうすればここまで醜悪な精神になるんだ? 特にこの男は酷い」
魔女「人の負の感情の塊が何を偉そうに」
 魔女は汚い物を見る目で魔王に言いました。
青年「あぁ、人と云う物があればこその私だ」
 魔王は言いました。
青年「なぁ、少年。 人と云う生き物は何とも愚かしく、愛おしいものだな」
 僕もそう思います。 ただ、魔王の考えとは真逆ですが。


274 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/08/04(土) 21:37:53 ID:PdVcaBKE
魔女「無駄話はそろそろ止めないかい? 親しく話すような仲でもないだろう」
青年「確かに、そうであるな」
 二人は楽しそうでもあり、凄く不愉快そうでもありました。
魔女「少年、巻き添えにならないようにした方がいいよ?」
少年「え?」
魔女「周りを気にしてちゃコイツは倒せないから」

275 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/08/04(土) 21:39:30 ID:PdVcaBKE
 それから、魔女は魔王に向けいくつもの魔法を撃ちました。
 夜空に届きそうな程の火柱。
 辺り一面を埋め尽くす氷河。
 全てを引き裂くように吹き荒れる豪風。
 でも。
青年「効かないな」
青年「~~~~」
 そのどれもが、同じような魔法で打ち消されてしまいます。
魔女「それはお互い様だろう?」
魔女「~~~~」
 魔王の撃った大量の火球を、今度は魔女が、大量の火球で撃ち落とします。
 互いに互いの魔法を打ち消す闘いがもう一刻以上続いていました。

276 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/08/04(土) 21:40:11 ID:PdVcaBKE
少年「魔女? 大丈夫なの?」
 魔女は明らかに疲れてきていました。
魔女「あぁ、大丈夫だよ」
 魔女は一瞬だけこちらを見ました。
 燃えるような輝きを湛えている、暁のように深い美しい紫色。
 その瞳は、ひたすらに力強く、真っ直ぐな瞳でした。
魔女「守るべき物があると、どこまでも強くなれるんだ」
 魔女はにっこりと笑いました。

277 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/08/04(土) 21:43:25 ID:PdVcaBKE
青年「茶番だな」
魔女「そう見えるかい?」
青年「あぁ、興醒めだ。 死ね」
 魔王は手を振りかざしました。
少年「あ……あぁ」
 恐ろしくなりました。 絶望、という物が形をなしたようです。
 地面が無くなったみたいに、足に感覚がありません。
 涙が溢れてきます。 奥歯はガチガチと震えて、情けなく空気が漏れます。
青年「~~~~~~~」
 魔王は手をかざして呪文を唱えてます。
少年「魔女……怖いよ」
魔女「あぁ、全く嫌になるね」
 魔女も震えていました。

278 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/08/04(土) 21:44:30 ID:PdVcaBKE
魔女「逃げ出したいくらいだよ」
 魔女が手を差し出しました。
魔女「だから逃げないように、手を握ってくれないかな?」
少年「……うん!」
 魔女の手を握ります。
 もう、震えは止まっていました。

279 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/08/04(土) 21:45:26 ID:PdVcaBKE
青年「~~~~~~」
魔女「さて、こちらもとっておきを使おうか」
 魔女はつないだ手を前に突き出します。
魔女「君はアイツから眼をそらさないで。 君が狙いをつけるんだ」
 魔女の声はこんな時でさえ、井戸の底みたいに澄んでいました。 でも、前みたいに冷たくはありません。
 陽向みたいに暖かくて、優しい声です。
魔女「僕は君を信じてる。 君は?」
 もちろん答えなんか決まってます。
少年「僕も魔女を信じてるよ」
魔女「ありがとう。 二人でやっつけよう」
 魔女は僕の手を強く握りしめて、目を瞑りました。

280 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/08/04(土) 21:46:57 ID:PdVcaBKE
青年「~~~~……死ね」
 夜の闇よりも深い漆黒の塊が飛んできました。
 でも、僕は魔女を信じています。
 十メートル。
 五メートル。
 あと瞬きをするくらいの時間で二人とも直撃です。
 怖くなんてありません。
 誓ったって良いです。
 居るか居ないかわかんない神様じゃなくて、僕自身にかけて違います。
少年「魔女を信じてるから怖くなんてない!」
 一メートル。
 目は逸らしません。
 次の瞬間、目の前が真っ白になりました。

281 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/08/04(土) 21:48:19 ID:PdVcaBKE
 眩い閃光は魔女と僕の手から放たれた物でした。
 その光の奔流は、目の前の魔法をかき消しても、一切衰えずに魔王へ一直線に向かいます。
青年「~~~~!」
青年「~~~~!」
 魔王がそれを防ごうと幾つもの魔法を撃ちました。
青年「~~!」
 しかし、効きません。
青年「小ぉ娘ぇぇぇえええっ!!」
 魔王は光に飲まれて消えていきました。
少年「魔女やっ……魔女?」
 繋いだ手から力が抜けていくのを感じました。
魔女「」
 魔女がその場で力なく倒れます。
少年「魔女!?魔女!?」
 魔女は返事をしませんでした。

282 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/08/04(土) 21:49:27 ID:PdVcaBKE
今回の更新は以上となります。

283 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/08/04(土) 21:55:21 ID:JDBPH/yQ
引きがうめぇ……
気になる

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