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アンパンマンは涙を流せない

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Part2
44 :続き:[]2009/12/05(土) 15:15:11.14 ID:2ZTF1Df70
小さな音がした。
男達が目をやると、壁にヒビが入っていた。
そこから細かい破片が床へと降り注いでいた。 
次の瞬間、ヒビの中心をぶち破るように、巨大なロボットが現れた。
「ハーヒフーヘホー!オレ様のロボットで、お前ら全員踏み潰してやる!」 
バイキンUFOが変形した二足歩行ロボット、、通称『だだんだん』。
アンパンマンと何度も戦い、その度に苦い想いを経験しているロボットだ。
「しかぁし!お前らみたいな変な奴らに負けるほど、やわなロボットじゃないのだ!」
バイキンマンの高笑いが工場に響いた。
その声にドキンちゃんもほっと息をついた。たとえバイキンマンが負けても構わない。
これで全てが元通りだ。
バイキンマンは、情けない声をあげながら気を失い、
起きてから凄く落ち込むことだろう。
それを見ながら私はバイキンマンを馬鹿にするのだ。
アンパンマンじゃなくてもアンタはダメなのね、と。
まあたまには、その後傷の手当してあげても良いけど…。
けれど、いつもの展開には発展しそうになかった。
その場から居なくなってしまったのかと言うほど、男達は静かだった。

45 :続き:[]2009/12/05(土) 15:17:42.92 ID:2ZTF1Df70
「なによアンタたち!ビックリして声も出ないのね!」
焦ったようにドキンちゃんが叫んだ。
早く、いつもの展開に戻さなくてはいけない。
返答の代わりに、手を鳴らす音が聞こえた。
誰かが拍手している。こんな時に、拍手?
男の一人が感嘆の声をあげた。
「素晴らしい!素晴らしいよバイキンマン。
 耳にしてはいたものの、実際に目にすると君の科学力には本当に驚かされるな。
 是非ご教授いただきたいものだよ」
予想していた反応と違う。それだけでバイキンマンの手にはじっとりと汗が滲んできた。
「うるさーい!ごちゃごちゃ言ってないで、さっさとドキンちゃんから離れろ!」
男達を蹴散らすように、ロボットが歩き始める。
普段だったら、蜘蛛の子を散らすように逃げ惑うやつらを、笑いながら見下ろしていれば良い。
誰一人として踏み潰したりはせず、堂々と闊歩するだけで良い。
そしたら、アンパンマンのやつが現れてくれる。
しかし男達は、一匹の大きな生き物のように、一塊のままロボットから距離を取った。
声も出さずに全員で同じ動作を行う様子は、薄気味の悪さ以上に、
このまま相対してはいけない恐怖をバイキンマンに感じさせた。
「なにやってるのよバイキンマン!早くあいつらをやっつけて!」
ドキンちゃんの声が、バイキンマンを自分達の世界に繋ぎ止める。
「お前ら、俺様のロボットに手も足も出ないな!」
バイキンマンが再び歩き出そうと、レバーを握る手に力を込めた時、
男達が一斉に何かを取り出した。
「撃て」
誰が発したのか分からないその一言で、激しい金属音が鳴り響いた。
横殴りの雨を受けるように、無数の銃弾がロボットに降り注ぐ。
ドキンちゃんは聞いたことの無い音に襲われ、体を丸め、ぎゅっと目を閉じていた。

46 :続き:[]2009/12/05(土) 15:19:28.55 ID:2ZTF1Df70
銃声が鳴り止んだ。
経験したことの無い男たちの行動が、バイキンマンの全身に汗を噴出させた。
しかし幸いなことに、その行動にはアンパンマンほどの力は無かった。
バイキンマンの声が幾ばくかの元気を取り戻す。
「ハーヒフーヘホー!そんなものじゃ俺様のロボットはビクともしないのだ!」
男の一人が笑みを浮かべた。
「ああ、まったく、そのようだ。さすが、と言うべきかな」
「降参するのも今のうちだぞ!さっさと俺様の工場から出て行け!」
「何か特殊な金属でも使っているのか?傷一つ付かないとは」
「俺様は本気だからな!早くしないとギタギタにするぞ!」
「けれど、どうやらコクピットの強度はそれ程でも無さそうだ。
 とは言ってもこの角度では君に当たりそうも無いのだがね」
「訳分かんないことばかり言いやがって!もう怒ったぞ!」
バイキンマンがロボットの足を踏み出そうと動かし始める。
男達はそれを見ても何ら表情を変えずに、先ほどと同じ様に銃を構えた。

47 :続き:[]2009/12/05(土) 15:22:39.28 ID:2ZTF1Df70
「何度でもやってみろ。俺様のロボットは無敵なのだ!」
「おっしゃる通り。では、こういう手はいかがかな?」
男達は銃口をロボットから別の対象へと向けた。
そこに居たのはドキンちゃん。
目をパチパチさせ、この後の展開を想像出来ないでいる。
バイキンマンも同じだった。
自分の知らないルールで、何が正しいのか、何をすればいいのか。
考え判断する思考を、持ち合わせていなかった。
ただ、ルールに関係無く、バイキンマンはドキンちゃんが好きだった。
大好きだった。
自分が何をして、何で喜ぶのか。
そんなことは分かりきっていたのだ。
再び、工場内が銃声で満たされていく。

50 :ローカルルール変更議論中@VIP+:[]2009/12/05(土) 18:28:27.55 ID:2ZTF1Df70
「バイキンマーン!ドキンちゃーん!」
食パンマンがあらん限りの声を振り絞っていた。しかし、すぐに声はかき消されてしまう。
バイキン工場内は、あちらこちらから爆発音が聞こえ、壁は崩れ落ちつつあった。
あとどれくらい持ち堪えてくれるのかも分からない。もう二人はここには居ないのだろうか。
「バイキンマーン!どこに居るんですかぁー!」
崩れる壁の中を縫うように、食パンマンは奥へと進んでいった。
ある部屋の入り口に、ゆらゆらと動く影が見える。
「あれは・・・ドキンちゃん!」
食パンマンの声に気づいたのだろう。ドキンちゃんも視線をあげた。
その目は虚ろで、まだ食パンマンの姿が見えてないようだった。


51 :ローカルルール変更議論中@VIP+:[]2009/12/05(土) 18:30:18.03 ID:2ZTF1Df70
食パンマンがドキンちゃんの目の前へと降り立つ。
様子がおかしい彼女の肩をつかみ、問いただした。
「ドキンちゃん、大丈夫ですか?いったい何が起こってるんです?これは誰の仕業なんですか?」
紳士な態度とは言えない矢継ぎ早な質問。
それでも、食パンマンの声に、存在に、ドキンちゃんの顔は力を取り戻していった。
そして質問に答える代わりに、くしゃっと顔をゆがめてしまった。
「食パンマン様ぁぁぁぁ」
ドキンちゃんは食パンマンに抱きつき、耳が痛くなるほどの泣き声をあげる。
困惑した食パンマンは彼女の肩を抱き、少し落ち着くのを待った。
しゃくり声をあげるドキンちゃんに、先ほどと同じ質問をかける。
「ここで何が、あったんですか?」
ドキンちゃんは何も言わず、小さく首を横に振った。
「これは誰の仕業なんですか?」
また首を振る。答えが得られることを信じていた食パンマンは、その反応にたじろいだ。
ドキンちゃんですら何も知らないとなると、今この世界はどこに向かっているのだろうか。
ずっと目を背けていた不安が一瞬にして食パンマンに絡みつく。
食パンマンもそれ以上ドキンちゃんに質問出来ないでいた。
次の展開を望むように、ドキンちゃんの顔の上で目を泳がせた。

52 :ローカルルール変更議論中@VIP+:[]2009/12/05(土) 18:31:58.48 ID:2ZTF1Df70
二人の沈黙を破るように、一際大きな爆発音がして、壁が激しく崩れ落ちてきた。
我に返ったように食パンマンは工場内を見渡す。
「ドキンちゃん!とりあえずここから出ましょう。このままでは二人とも埋まってしまいます」
コクコク、とドキンちゃんは頷いた。その手を取り、食パンマンは出口へと向かおうとした。
「なんなんですか一体・・・」
手を引かれるがままにドキンちゃんも歩き出そうとする。
「バイキンマンの仕業じゃないとは・・・」
その瞬間、急に食パンマンの手が振りほどかれた。
驚いて後ろを向くと、ドキンちゃんは真っ直ぐに食パンマンを見つめていた。
「食パンマン様、ごめんなさい。アタシ行けない」
「何言ってるんですかドキンちゃん!このままでは工場が崩れ落ちてしまいますよ!」
「でもダメなの。だって、バイキンマンが待ってる」
「え、バイキンマンがいるんですか?」
食パンマンの声を無視するかのように、ドキンちゃんは元いた場所に向かって走り出した。
その後姿追いかけようとした食パンマンの視界を、崩れ落ちてきた壁が遮る。
「ドキンちゃーん!」
もうその声は彼女に届いていないようだった。

53 :ローカルルール変更議論中@VIP+:[]2009/12/05(土) 18:34:51.73 ID:2ZTF1Df70
地震のように激しく床が揺れている。
眼前に広がるのは数時間前とは打って変わった工場内の景色。
壁は残っているところを探す方が難しく、至るとこに亀裂が走り崩壊している。
その中心に巨大なロボットが居た。
四つんばいの格好で、先ほどまで動いていたのが嘘のように、重い金属の塊と化している。
ドキンちゃんはコクピットの部分に寄りかかった。
「全く、アンタのおかげで私もここに残るはめになっちゃったじゃない」
セリフとは裏腹にその声は穏やかだった。
「食パンマン様の誘いを断ったのよ?せっかくのデートだったのに」
「でもこんな埃だらけじゃダメよね。・・・何嬉しそうな顔してるのよ。しょうがないわね」
「目が覚めたら、早く工場内を綺麗にするのよ。
 綺麗なのが苦手だからって、今回ばかりは許さないんだから」
コクピットを覆っていたガラスは粉々に砕かれている。
その中、バイキンマンは背もたれに体を預けて目を瞑っていた。

54 :ローカルルール変更議論中@VIP+:[]2009/12/05(土) 18:38:37.77 ID:2ZTF1Df70
眠ったように静かなバイキンマン。
その表情は、今までにないくらい幸せに満ちている。
ただ、バイキンマンの下半身は、跡形もなく、見るも無残に消し飛んでいた。
無数の銃弾がバイキンマンの体を引き千切っていた。
「ねぇ、早く、目を覚ましてよ。バイキンマン・・・」
そんなバイキンマンを見て、ドキンちゃんは微笑む。
幸せそうな表情のバイキンマン。
周囲を崩れ落ちた壁が包み込む。
静かに、ゆっくりと、二人の世界が終わりを告げた。

55 :ローカルルール変更議論中@VIP+:[]2009/12/05(土) 18:50:35.28 ID:O7r692SNO
うわあああああん

61 :続き:[]2009/12/06(日) 03:10:57.11 ID:WVDFJSYT0
アンパンマンは躊躇した。
パン工場のドアに手をかけたまま、一瞬その動きを止めてしまった。
このままドアを開けても良いのだろうか。
いや、良い悪いでは無い。自分はこのドアを開けても、自分でいられるのだろうか。
そんなことを考えてしまう自分の変化に、アンパンマンは気づけないでいた。
異なるルールが、徐々にアンパンマンの精神を塗りつぶしていく。
不吉な考えを追い払うように頭を振り、ドアを開けた。

62 :続き:[]2009/12/06(日) 03:12:44.06 ID:WVDFJSYT0
室内は薄暗く、異様な臭気が漂っていた。
暗いのは明かりだけじゃない。ジャムおじさんとバタ子さん、
二人の明るい声も聞こえてこなかった。
アンパンマンは中に足を踏み入れることが出来なかった。
助けを求めるように、工場内に視線を巡らせる。
「ジャムおじさん。バタ子さん。居ないんですか?」
それはアンパンマンが出してはいけない声だった。
顔は一切濡れてないはずなのに、怯えと困惑の色で満たされた声。
勇気の化身であるはずのアンパンマンが、アンパンマンで無くなってしまった瞬間。
見えてはいた。
床に横たわる“それ”が、視界には入っていたのだ。
ただそれは、この世界にあるはずも無い物。あってはならない概念。
ゆっくりと、アンパンマンは工場内に足を踏み入れる。
それを目の前にしても、アンパンマンはまだ理解することを拒否していた。
それに手をかけ、ごろりと上を向かせる。
頭を打ちぬかれた死体。
数時間前、ジャムおじさんであった物体。
アンパンマンは息を呑んだ。
名前を呼んではいけない。これがジャムおじさんであってはならない。
快活な笑顔と優しい声。それを持たぬこれを、ジャムおじさんと呼んではいけない。
後ずさるようにアンパンマンはそれから離れた。
壁に寄りかかり、上手く息を吸うことの出来ない胸を押さえた。

63 :続き:[]2009/12/06(日) 03:14:36.70 ID:WVDFJSYT0
「アン・・・パ・・・ン」
かすかに聞こえる声に、アンパンマンは小動物のように飛び上がった。
「アンパンマン・・・そこに居るの?」
声の主は、バタ子さんだ。
それに気づいたアンパンマンはすぐさま彼女のもとに駆け寄った。
バタ子さんも、部屋の奥で床に横たわっていた。
アンパンマンはバタ子さんを抱き起こす。
しかし、抱き起こしたバタ子さんは、アンパンマンの知らない誰かだった。
「アンパンマン、無事だったの?」
バタ子さんの声がするものの、彼女の顔は赤い液体がべっとりとへばり付いている。
「アンパンマン・・・なの?私、今、何も見えないの」
彼女の目は赤黒く、一欠けらの光も映しこんではいない。
「ジャムおじさんも、チーズも、あいつらにやられてしまったの・・・」
これは誰だ?
いや、僕は知っている。
本当は理解しているのだ。
ああ、もう、戻れない。
昨日までの日々には、もう戻れないのだ。

64 :続き:[]2009/12/06(日) 03:16:08.01 ID:WVDFJSYT0
一歩、踏み出さなくてはならなかった。
腕の中で横たわる彼女の、大好きだった彼女の、
愛おしい名前を、僕はちゃんと呼んであげなくてはならない。
「バタ子さん、大丈夫ですか?」
恐怖も不安も、そこには含まれていなかった。別の何かが体を支配していく。
バタ子さんは力無い笑顔を向けた。
「アンパンマン、良かった。無事だったのね」
「いったい、何があったんです?」
「急にあいつらがやって来たの。外から。私達の知らないところから」
「あいつら?」
「人間、と言っていたわ。あいつらは、この世界にあってはならない物を持っていたの」
「・・・そいつらがバタ子さんを、皆を、こんな風にしたんですね」
アンパンマンは、バタ子さんを自らの胸の中できつく抱きしめた。
「離して、アンパンマン。顔が汚れてしまうわ」
聞こえないかのようにアンパンマンは抱きしめ続けた。
「ねえアンパンマン。私、分かっているの。
 私はもうバタ子さんでは無いわ。もうパンを焼いたり、笑ったりは出来ない。
 あなたの知ってるバタ子さんはここには居ないのよ。
 だから、ねえ、もう放っておいていいのよ」
バタ子さんもまた、自らをルールの外に置いていた。
全てを受け入れ、理解していた。
なぜかその声はいつもより優しく聞こえた。

65 :続き:[]2009/12/06(日) 03:18:26.94 ID:WVDFJSYT0
「アンパンマン、泣いているの?」
バタ子さんの顔の上へと、涙が落ちる。
「顔が濡れてしまっては力が出ないでしょう。正義の味方なのに、子供みたいよ」
バタ子さんはくすくすと笑った。
「いつもだったら、すぐに新しい顔を焼いてあげられるのに。
 ごめんなさい。私にはもう無理なの」
アンパンマンは黙って首を振る。
「でもアンパンマン、安心して。釜の中に最後の一つが残っているわ。
 それをつけたらもう泣いてはダメよ?アナタは正義の味方なんだから。
 他の人達を助けに行って」
「・・・バタ子さん」
何でも良い、何でも良いから声をかけたいのに、
アンパンマンの口からは何も発することが出来なかった。
「ほら、早く行きなさい」
バタ子さんは、ニッコリと微笑んでみせる。
そして明るい声で言った。
「それいけ、僕らの、アンパンマン」
腕の中の彼女がずっしりと重くなった。
もう彼女は話すことも、笑うことも出来なくなってしまった。
不思議なことに、経験したことの無かったそれを、
アンパンマンはすんなりと受け入れることが出来た。

66 :続き:[]2009/12/06(日) 03:21:31.78 ID:WVDFJSYT0
アンパンマンは目を閉じ、もう一度きつく抱きしめた後、
静かに、大切に、彼女を床へと寝かせた。
力の入らぬ体で立ち上がり、釜の前へと足を進める。
普段なら軽く開けられる扉が、やけに重く感じる。
中にはバタ子さんの言った通り、アンパンマンの顔が入っていた。
しかしそれは焼きあがる前の、生の生地だった。
手に取ると湿っていて、重く、指がめり込むようだった。
ふわふわで温かい新しい顔とは似ても似つかない代物。
それでもアンパンマンは自らの顔を外し、新しい顔へと付け替えた。
膝から崩れ落ちそうになる。体中に重りをつけられたかのように、全身から力が抜けた。
それでも足を踏ん張り、歯を食いしばった。
あらん限りの力で足を上げ、出口へと一歩を踏み出そうとした時、
空気を震えさせるような爆音が響いた。
激しい衝撃が体を貫く。
気がつけば周囲は炎に包まれていた。
バタ子さんも、ジャムおじさんも、見る間に黒ずみ縮んでいく。
炎に揺らめきながら、外の方に何かが見えた。

67 :続き:[]2009/12/06(日) 03:23:31.24 ID:WVDFJSYT0
「ヤーヤーヤーヤー。これでかの有名なパン工場も一巻の終わりといったところだね。
 アンパンマンも彼らと共に消し炭と変わったことだろう。
 仲間とともに死ねるなら、優しいアンパンマンの本望だろうさ」
パン工場の外には男達が一列に並んでいる。
その後ろには巨大な鉄の車。主力戦車、MIエイブラムス。
「うんうんうんうん。なんと嬉しきことかな。
 アンパンマンが居ないとなれば、この世界は我々のものになったも当然だ。」
男は両手を広げて空を仰ぎ見た。
「豊富な土地と資源。我々の世界とは異なる性質を持つ未知なる物質。
 科学者でなくても、この世界の素晴らしさには感動せざるを得ないね」
燃えさかるパン工場が音を立てて崩れ落ちた。

68 :続き:[]2009/12/06(日) 03:25:38.77 ID:WVDFJSYT0
「ん?」
男の目に、炎の中、一つの影が揺らめいてるのが見える。
「君が・・・」
その影が何かをつぶやいた。男の耳には届いてこない。
「君が僕を・・・」
「全く、しつこい奴だ」
男が後ろの戦車へと合図を送る。轟音とともに主砲が発射された。
爆風と炎が影を包み込む。
が、次の瞬間、影を包んでいた炎が全て吹き飛ばされていた。
突風が吹いたのではない。
彼が自らのマントを翻し、全ての炎を消し去ったのだ。
瓦礫の中、アンパンマンが立っている。
「君が僕を」
その声は空気を震わし、地面を揺らした。
「焼成させた!」
それは咆哮に似た叫びだった。

69 :続き:[]2009/12/06(日) 03:29:23.81 ID:WVDFJSYT0
釜で焼かれた顔ではない。
斑についた焦げ目は醜く、優しい顔など作れやしない。
それでも体の内には、ふつふつと力が湧いてきている。
新しく手に入れた感情、手にしたくなかった感情。
愛や勇気はもう自分の体を満たしてはくれない。
それでも、それでも戦う。
譲れない何かのために。
たった一つの理由のために。
アンパンマンはその決意を言葉に込めた。
誰に言うでもなく、一人つぶやく。
「元気百倍、アンパンマン」

72 :ローカルルール変更議論中@VIP+:[]2009/12/06(日) 08:27:08.50 ID:gzg/UEh00
バイキンマンのところから目の前がみえない!!!!!!
おおおおおおおわりじゃないよな!


77 :ローカルルール変更議論中@VIP+:[]2009/12/06(日) 12:15:09.76 ID:HzFSNraaO
なんてスレを開いちまったんだ…。
気になって布団からでられないじゃないか。

83 :続き:[]2009/12/06(日) 18:12:46.04 ID:8+fcfG650
それはまさに、ファンタジーの世界だった。
全ての悪を屠る強さ。
物語で読むヒーローの姿。
部隊を一歩前へ出させた。攻撃目標はもちろん彼だ。
ただ、銃を構えさせる前に、一人の頭が消し飛んだ。
瓦礫の中に居たはずの彼がそこに居る。彼に我々の距離の概念は通用しない。
拳の一振りで、熟したトマトのように頭部が弾ける。
残された体は小刻みに震えていた。
その場に居た男達が一斉に銃を向ける。
しかしそこに彼は居ない。銃口を四方へ向けながらその姿を探す。
馬鹿なやつらめ。彼には重力の概念すら無いというのに。
男の視線の先に彼が居た。
空中で、マントをなびかせながら、眼下に居る我々を見下ろしている。

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