毒男の怖い話とか音楽とか雑談とか 2016/08/14 スレ
Part3
81 :毒男 ◆B.DOLL/gBI :2016/08/15(月) 01:19:43.398 ID:8wDINd5e0
私には10歳離れた妹がいまして、寝物語に話していたりしていたせいか、弱いながらも霊感がついたようです。
そうは言ってもちょっと見えるとか、夜中に誰もいないのに何度も名前を呼ばれた程度の経験だったのですが、
少し前、電話してきた話を聞いていて
「これはキテる!」
というのがあったので書かせてもらいます。
今年の4月頃の話でした。
彼氏が引っ越しをしたというので、妹が荷ほどきの手伝いに行った時のことです。
彼の部屋はマンションの3階。
通りとは面していないのでそれほどうるさくないはずなのですが、幹線道路らしく、車の音はよく聞こえました。
一通り荷物をほどき、邪魔な段ボールはベランダに置いて、その日は新しいベッドで、彼は壁側に、妹は窓側で眠りました。
昼間の疲れからかすぐに眠りについた妹ですが、夢をみたそうです。
夢の中で、妹は銭湯から帰るところでした。
首にタオルをまいてプラプラと歩いていると、暖かいラーメンが食べたくなったそうです。
大通りの向こうにあるお店に向かって歩いていると、街路樹の植えてある大きな交差点に出ました。
アベックが立っていました。歩道を降りた路肩に。
彼らは信号が青になっても動こうとせず、じっと佇んでいます。
妹が交差点に着くまで何度も信号が変わったのですが、それでも動こうとしない彼らを不思議に思い、妹は声をかけてみました。
「あの、どうかしたんですか?」
女性の方が低い声で答えました。
「…なんだかとても寒くて…」
よく見ると二人ともパジャマを着ています。
足にはスリッパを履いていて、まるでさっき病院を抜け出してきたような出で立ちでした。
「今から私ラーメンを食べに行くんですけど、良かったら一緒に行きませんか?」
寒そうにしている二人を見て親切心が働いたのか、妹はそう言いました。
「…ええ…ありがとう…」
女性の方が静かに答えます。
信号が変わるのを待ち、三人は並んで歩き出しました。ですが、妙なんです。
普通アベックなら寄り添って歩くものなのに、この二人は妹を挟むようにして歩き出すのです。
それも妹の体に触れながら。
「いいなぁ…暖かい体…いいなぁ…」
「あったかぁい…いいなぁ…欲しいなぁ…暖かい体…」
妹の体を撫でるようにして二人はそうつぶやいているのです。
これはヤバイと思った妹は、信号を渡りきると、首に巻いていたタオルを渡しながら二人に言いました。
「ごめんね、私急いでいるから先に行くね。ラーメン屋さんはすぐだから。寒いならこのタオルを巻いてね。」
妹は二人を振り払い、急ぎ足で歩き出しました。
追ってくると思い後ろも見ずにいたのですが、その気配はありません。
82 :毒男 ◆B.DOLL/gBI :2016/08/15(月) 01:20:55.572 ID:8wDINd5e0
少しして振り返るとアベックは妹と別れた信号機のところで、いまだに立ち止まっています。
ちょっとだけほっとして前を向いた瞬間、真後ろから
「いいなぁ…暖かい体…欲しいなぁ…」
と言う声が聞こえて来たのです。妹は必死になって走り出しました。
ここで妹は目を覚ましたそうです。
時間は朝の4時頃でした。
妹が飛び起きたのに驚いて、彼も起きたそうですが、話をろくに聞こうともせず、また眠ってしまいました。
彼は幽霊を信じないたちです。
それも
「いると思うと怖いから」
という理由なので、怖い話が大の苦手なのでした。
まあ眠かったというのもあるんでしょうが…。
彼の態度に頬を膨らませながらも、妹もまた眠りにつこうとしました。
その時、道路を歩く足音が聞こえて来ました。
もう車もろくに通らない時間です。
シンと静まり返った世界では小さな音でもよく響くのかもしれません。
ただ、普通の足音ではありませんでした。
パタ…パタ…パタ…
スリッパのような足音です。
先ほどの夢のことがあります。
妹は単なる偶然だと思いながらも耳をじっとすませていました。
足音は徐々にマンションに近づいて来ます。
パタ…パタ…
足音はマンションの入り口付近まできたようでした。
(早く行ってよ…)
妹は心の中で願っていました。
けれど足音はより近くなってきます。
パタ…パタ…パタ…
どうやら路地を抜け、マンションの裏手に近づいて来るように聞こえます。
妹の頭はパニック状態でした。
(まさか?…けど…)
足音は彼の部屋の真下辺りで止まりました。
もうすっかり眠気は醒めていました。
今は足音に全神経を集中させています。
83 :毒男 ◆B.DOLL/gBI :2016/08/15(月) 01:22:06.998 ID:8wDINd5e0
ギッ、ギシ…
何者かがベランダの柵をよじ上るような音がします。
音は1階から2階へ上がってきました。
ゆっくりと上る音の主がどこを目指しているかなど、考えたくもありません。
ギシ…ギシギシ…
遂に音は妹の寝ているベランダから聞こえてきました。
ギシ、…ギシギシ…
ドン!
ベランダに置いてあった段ボールの上に何か重い物がが降りる音がしました。
確かに窓の外に誰か…「何か」がいます。
ですが、ベッドを降りてカーテンを開ける勇気などありません。
妹はそのまま目をぎゅっとつぶっていました。
向こうに何かが立っている、それは見なくてもはっきりと感じられたそうです。
普通は念仏を唱えたりしそうですが、妹は怖がりながらも、声に出さずに腹を立てていました。
「あたしになにが出来るっていうのよ!何にも出来ないんだから早く出てってよ!今すっごく幸せなんだから!体なんか、絶対あげないからね!」
やがて、妹は金縛りにあいました。
布団のまわりに人の気配がします。それも二人。
かなり悪意に満ちた霊気を感じた妹はこれは絶対目を開けちゃあだめだ!と思ったそうです。
ですが、むりやり瞼をこじ開けられるかのごとく、目が徐々に自分の意志に逆らって開いていくのです。
開いた目には、例の二人が映っていました。
二人は妹のベッドの周りをゆっくりと回っていました。
最初、布団の周辺を歩いていたのが、徐々に輪を狭めるようにして妹に近づいてきます。
それにつれ、腰を曲げ、しゃがむような格好で顔を近づけて来ました。
女性の髪が顔に当たっているのがわかります。
84 :毒男 ◆B.DOLL/gBI :2016/08/15(月) 01:22:45.601 ID:8wDINd5e0
それこそ妹の顔から10cmくらいまで近づいた時、
連れていこうか…
という女の声が妹の頭に響いきました。
落っこちているおもちゃでも持っていこうか、というような、素っ気ない言い方でした。
二人は動けない妹の布団を剥ぐと両手を持って引っ張りあげようとしました。
(いや、いやだって!あたしは行きたくない!!)
妹は動けない体で必死に抵抗しました。
どうにか動かせるようになると、夢中で女の手を振り払いました。
すると女性は
なんでそんなことをするの?
とでもいうように、顔をしかめると手を離し、そのまま押入の方へ歩き出して行きました。
二人は押入のドアから、どこかに吸い込まれるように消えてしまいました。
引っ張られた感触よりも、あのときの女性の髪の感触の方が嫌だった、と妹は言っていました。
怖がりの彼にこんな話をするわけにもいきません。
ですから、彼はまだそのマンションに住んでいます。
それにしても、妹が連れて行かれようとしたのは、やっぱり「あの世」だったのでしょうか…
86 :毒男 ◆B.DOLL/gBI :2016/08/15(月) 01:26:10.846 ID:8wDINd5e0
つい、先日あった話。
私は転職を考えるサラリーマンだが、友人にキャバクラの店長がいる。
この男、小太りのいつもにこにことした男だが、学生時代から非常に強い悪霊に取りつかれているという。
私は基本的にそういったものは楽しんで聞く程度なので信じていないのだが、
彼との七年ほどの付き合いの中で、どうにもおかしいことが多数ある。
先に説明しておくと、彼にとりつく悪霊というのは、手にひどい怪我をした女性だという。
私は残念ながら彼にとりつく、彼曰く美女の幽霊を視認したことはない。
私は、販売員をしているのだが、その日は、訳のわからないクレームで嫌な気分で帰り道を歩いていた。
そのクレームというのは、精神的に病んでいるお客様のものだった。
普段から、難癖をつけて金を巻き上げようとする連中に頭を下げていて、そういうことには慣れていたが、そのお客様はとても嫌な人だった。
もともと、私は霊を見るなんてことはできないのだが、彼と付き合い出してから、なんとなく気配のようなものは感じるようになっていた。
終電車で地元の駅についた時、なんだかとても嫌な感じがしていた。
なんというか、一人で歩きたくないのだ。
私の住む町は、治安の悪い片田舎だ。
大阪の環状線沿線なのだが、そこはちょっとした歓楽街の隣にあたる駅で、駅前だけはそれなりに明るい。
アパートまで歩いて十五分ほどなのだが、タクシーに乗ろうと思っていた。
私自身、その時の行動が何やら不可解なのだが、突然コンビニに行きたくなり、駅から少し離れたコンビニに立ち寄った。
雑誌を買って、コンビニから出る。アパートまではあと五分ほどの距離だ。
タクシーに乗るのもためらわれ歩いていた。
話は変わるが、そのクレームのお客様は、電話注文でパソコンを買おうとしていた女性だった。
北海道からなぜか注文の電話がきた。通販窓口へ行くのが普通なのだが、なぜか電話がかかっていた。
パソコンの性能などについてファックスを送り、納得してもらったら代金着払いで発送するだけにのだが、
そのお客様は、電話口で私を指名し、ながながと世間話をする。
それが五日近く続いていた。
離婚したことや、さらには私の過去の恋愛(当然適当にお茶を濁したのだが)、そんなことを話続ける。
中でも、そのお客様は、自分が霊能者だという話をしてくる。
私は、正直なところそれにかなり辟易としていた。
なぜか近道をするか、遠回りをするか迷った。
帰り道の選択には二種類あって、潰れた工場のわき道を通り近道するか、国道をそって歩くかのどちらかだ。
その時、嫌な感覚があったのになぜか近道を選んだ。
歩きながら、なぜか後ろから誰かがやってくるのが分かった。
その誰か、というのは明らかに人間ではなかった。
足音も何もないが、そいつが後ろから凄いスピードでやってきて、私の後ろにぴたりとついたのが分かった。
私は怖くて、気づかないフリをして歩いた。
何かわめきそうになったが、そんなことをしてはダメだと、強く感じていた。
家にだとりついてからも、その感覚は離れなかった。もともと安い2DKで壁が薄いのだが、空室のはずの隣から複数の足音がやけにはっきり聞こえた。
私は怖くなり、そのまま布団をかぶって寝た。
よく覚えていないが、ひどく嫌な夢を見た。何かに追い立てられる夢だったのは覚えている。
87 :以下、\(^o^)/でVIPがお送りします:2016/08/15(月) 01:27:44.050 ID:HYgr06cr0
夢から覚めても怖い思いするってめっちゃこわいね
妹さん連れていかれなくてよかったね
眠いから寝るねー今日も楽しかったよありがとう
毒男ちゃんもみんなもおやすみねーまたねー
88 :毒男 ◆B.DOLL/gBI :2016/08/15(月) 01:28:42.601 ID:8wDINd5e0
次の日、やけに疲れて仕事へ行った。
今日さえ乗り切れば休日が待っている。
肩が重く、くしゃみをすれば体全体に嫌な痛みが広がる。
そのお客様からまた電話がかかった。
私は仕方なく、そのお客様に注意した。
業務に差し障りがあるので電話はお控え頂きたい、と言っただけだ。
お客様が何を言ったのかあまりよく覚えていないが、凄い剣幕で怒鳴られる。
「私はあなたに好意をもたれてるから付き合ってやったし、お祈りもあげてやったのに、どうしてそんなこと言うの?」
そんな気持ち悪いことを言われたのだけは鮮明に覚えている。
そのお客様から、私のメールアドレスに携帯電話のカメラで取られた写真が送られていた。
気分の悪い話だった。日付は昨日だった。
お客様は整った顔立ちわしていたが、取り立てて特徴のある女性ではなかった。
不鮮明な顔写真だったが、追い込まれたような目つきに見えた。
メッセージには、今回は許してあげますみたいなことが書いてあった。
私は、営業で席を外しているということにして、その日は電話に出なかった。
あまりに気分が悪かったためか、私は仕事ほ終えると友人の店に飛び込んだ。
金を払い、見知った顔の女の子と話ながら、閉店を待った。
彼は、いつものように笑顔でやってきた。
明け方である。
私は店長室と銘打たれた狭い部屋で、彼に事情を説明した。
終始、彼は苦笑したままだった。
「あかんわ、ほんまにあかんわ、それ。なんやえらいことになっとるで」
私は疲れと肩の重さに倒れる寸前だった。
彼は泊めてやるから、と彼の私とは比べ物にならないマンションへ連れていってくれた。
「よぅわからんけど、アレやろ、テンパった顔した女やろ、そのクレームかけとるんは」
私は、いつものことながら、彼の、その霊視みたいなものに感心した。
助けてくれるなら、金のことでも、こんなことでも、こいつくらいしかいないだろう。
「うーん、アレやな。俺と一緒やな」
彼は私の背中をばしぱし叩いた。
私はなんとなくそれで楽になった気分だった。
布団を借りて横になっていると睡魔に誘われた。
89 :毒男 ◆B.DOLL/gBI :2016/08/15(月) 01:30:26.892 ID:8wDINd5e0
その夢のことははっきり覚えている。
私は、実家へ逃げている。
高校を卒業してからは戻っていない実家の懐かしい道を、走りつづけていた。
家に入り、鍵をしめて、懐かしい十年近く前の居間へ行く。
そこは誰とも分からない連中ががやがやしていた。
そこにいた連中の顔は覚えていない。
ただ、中年の男もいたし、少年もいたし女性もいた。
誰も知らない顔だったように思える。
助けて下さい、と私は彼らにすがりつく。
「大丈夫、ここには入れないから。あとはお前がやれ」
そのような意味合いのことを言われたように思う。
気がつくと、昼間の三時すぎだった。
彼は、パソコンでファイナルファンタジーをやっていた。
私が起きるとそれを中断して、コンビニ弁当を渡してくれた。
肩の痛みは嘘のように取れていた。
「楽になったやろ。ほら、後ろ」
マンションの七階である彼の部屋のベランダを見ると、凄い形相の女がドアを叩いていた。
よく見ると、その後ろにいくつもの何か分からない気持ち悪いものも見えた。
私は悲鳴を上げて目をそらすとねそれは見えなくなった。風で窓が小さく音を立てているだけだ。
私の携帯電話に何度も着信があった。
会社からのそれだ。また鳴り出して、私はそれをとる。
あのお客様が、私に誘惑されたと騒ぎ出しているとのことだった。
彼はにやにや笑いながら、それを見ていた。
私を出せとのことだったので、私はお客様に電話をさせられることになった。
「断れよ。もう思いっきり断れよ」
と、彼は言った。
私はお客様に電話をかけて、角が立たないように、断った。
あなたが何度も電話をかけ、あなたが勝手に口説かれたと言っています。
私にそんな他意はなく、昨日申し上げた通り、これ以上の電話は営業に差し支えがあります。
そんなことを私は説明し、無理やり電話を切った。
彼が窓を開けて風を入れた。私は怖かったが、そのまま黙り込んだ。
「嫌なことこれからもあるやろけど、まあ我慢しいや」
と、彼に言われて、私は家まで送ってもらった。
目の端に、何か影がよぎる。
それを見ないようにしている。
たまに嫌な夢を見る程度になり、肩もそれほど重くなくなった。
お客様からはキャンセルの電話があり、私はそれからも開放された。
あれから三週間ほどたつが、たまに店に無言電話が鳴る。
あと、何かの拍子にあのお客様の首だけが、じっと私を見ている時もあるが、実害はその程度だ。
今日も、それが見えたので書きました。
これで終わりです。長くなり申し訳ありません。
91 :毒男 ◆B.DOLL/gBI :2016/08/15(月) 01:32:22.460 ID:8wDINd5e0
|A-) さて、怖い話と音楽はここまでー
92 :秋山 ◆MIO/.JGsks :2016/08/15(月) 01:32:32.215 ID:TYcqgADk0
| ω・)どっくんお疲れえええええええ
93 :cat ◆TUKUMO3rAI :2016/08/15(月) 01:32:41.910 ID:yTJGc7o9a
>>87
|ω・`) おやすみなさーいまたねーノシ
97 :以下、\(^o^)/でVIPがお送りします:2016/08/15(月) 01:37:44.650 ID:bvEaBfboa
おつかれさま
元スレ:http://viper.2ch.sc/test/read.cgi/news4vip/1471181969/
私には10歳離れた妹がいまして、寝物語に話していたりしていたせいか、弱いながらも霊感がついたようです。
そうは言ってもちょっと見えるとか、夜中に誰もいないのに何度も名前を呼ばれた程度の経験だったのですが、
少し前、電話してきた話を聞いていて
「これはキテる!」
というのがあったので書かせてもらいます。
今年の4月頃の話でした。
彼氏が引っ越しをしたというので、妹が荷ほどきの手伝いに行った時のことです。
彼の部屋はマンションの3階。
通りとは面していないのでそれほどうるさくないはずなのですが、幹線道路らしく、車の音はよく聞こえました。
一通り荷物をほどき、邪魔な段ボールはベランダに置いて、その日は新しいベッドで、彼は壁側に、妹は窓側で眠りました。
昼間の疲れからかすぐに眠りについた妹ですが、夢をみたそうです。
夢の中で、妹は銭湯から帰るところでした。
首にタオルをまいてプラプラと歩いていると、暖かいラーメンが食べたくなったそうです。
大通りの向こうにあるお店に向かって歩いていると、街路樹の植えてある大きな交差点に出ました。
アベックが立っていました。歩道を降りた路肩に。
彼らは信号が青になっても動こうとせず、じっと佇んでいます。
妹が交差点に着くまで何度も信号が変わったのですが、それでも動こうとしない彼らを不思議に思い、妹は声をかけてみました。
「あの、どうかしたんですか?」
女性の方が低い声で答えました。
「…なんだかとても寒くて…」
よく見ると二人ともパジャマを着ています。
足にはスリッパを履いていて、まるでさっき病院を抜け出してきたような出で立ちでした。
「今から私ラーメンを食べに行くんですけど、良かったら一緒に行きませんか?」
寒そうにしている二人を見て親切心が働いたのか、妹はそう言いました。
「…ええ…ありがとう…」
女性の方が静かに答えます。
信号が変わるのを待ち、三人は並んで歩き出しました。ですが、妙なんです。
普通アベックなら寄り添って歩くものなのに、この二人は妹を挟むようにして歩き出すのです。
それも妹の体に触れながら。
「いいなぁ…暖かい体…いいなぁ…」
「あったかぁい…いいなぁ…欲しいなぁ…暖かい体…」
妹の体を撫でるようにして二人はそうつぶやいているのです。
これはヤバイと思った妹は、信号を渡りきると、首に巻いていたタオルを渡しながら二人に言いました。
「ごめんね、私急いでいるから先に行くね。ラーメン屋さんはすぐだから。寒いならこのタオルを巻いてね。」
妹は二人を振り払い、急ぎ足で歩き出しました。
追ってくると思い後ろも見ずにいたのですが、その気配はありません。
82 :毒男 ◆B.DOLL/gBI :2016/08/15(月) 01:20:55.572 ID:8wDINd5e0
少しして振り返るとアベックは妹と別れた信号機のところで、いまだに立ち止まっています。
ちょっとだけほっとして前を向いた瞬間、真後ろから
「いいなぁ…暖かい体…欲しいなぁ…」
と言う声が聞こえて来たのです。妹は必死になって走り出しました。
ここで妹は目を覚ましたそうです。
時間は朝の4時頃でした。
妹が飛び起きたのに驚いて、彼も起きたそうですが、話をろくに聞こうともせず、また眠ってしまいました。
彼は幽霊を信じないたちです。
それも
「いると思うと怖いから」
という理由なので、怖い話が大の苦手なのでした。
まあ眠かったというのもあるんでしょうが…。
彼の態度に頬を膨らませながらも、妹もまた眠りにつこうとしました。
その時、道路を歩く足音が聞こえて来ました。
もう車もろくに通らない時間です。
シンと静まり返った世界では小さな音でもよく響くのかもしれません。
ただ、普通の足音ではありませんでした。
パタ…パタ…パタ…
スリッパのような足音です。
先ほどの夢のことがあります。
妹は単なる偶然だと思いながらも耳をじっとすませていました。
足音は徐々にマンションに近づいて来ます。
パタ…パタ…
足音はマンションの入り口付近まできたようでした。
(早く行ってよ…)
妹は心の中で願っていました。
けれど足音はより近くなってきます。
パタ…パタ…パタ…
どうやら路地を抜け、マンションの裏手に近づいて来るように聞こえます。
妹の頭はパニック状態でした。
(まさか?…けど…)
足音は彼の部屋の真下辺りで止まりました。
もうすっかり眠気は醒めていました。
今は足音に全神経を集中させています。
83 :毒男 ◆B.DOLL/gBI :2016/08/15(月) 01:22:06.998 ID:8wDINd5e0
ギッ、ギシ…
何者かがベランダの柵をよじ上るような音がします。
音は1階から2階へ上がってきました。
ゆっくりと上る音の主がどこを目指しているかなど、考えたくもありません。
ギシ…ギシギシ…
遂に音は妹の寝ているベランダから聞こえてきました。
ギシ、…ギシギシ…
ドン!
ベランダに置いてあった段ボールの上に何か重い物がが降りる音がしました。
確かに窓の外に誰か…「何か」がいます。
ですが、ベッドを降りてカーテンを開ける勇気などありません。
妹はそのまま目をぎゅっとつぶっていました。
向こうに何かが立っている、それは見なくてもはっきりと感じられたそうです。
普通は念仏を唱えたりしそうですが、妹は怖がりながらも、声に出さずに腹を立てていました。
「あたしになにが出来るっていうのよ!何にも出来ないんだから早く出てってよ!今すっごく幸せなんだから!体なんか、絶対あげないからね!」
やがて、妹は金縛りにあいました。
布団のまわりに人の気配がします。それも二人。
かなり悪意に満ちた霊気を感じた妹はこれは絶対目を開けちゃあだめだ!と思ったそうです。
ですが、むりやり瞼をこじ開けられるかのごとく、目が徐々に自分の意志に逆らって開いていくのです。
開いた目には、例の二人が映っていました。
二人は妹のベッドの周りをゆっくりと回っていました。
最初、布団の周辺を歩いていたのが、徐々に輪を狭めるようにして妹に近づいてきます。
それにつれ、腰を曲げ、しゃがむような格好で顔を近づけて来ました。
女性の髪が顔に当たっているのがわかります。
84 :毒男 ◆B.DOLL/gBI :2016/08/15(月) 01:22:45.601 ID:8wDINd5e0
それこそ妹の顔から10cmくらいまで近づいた時、
連れていこうか…
という女の声が妹の頭に響いきました。
落っこちているおもちゃでも持っていこうか、というような、素っ気ない言い方でした。
二人は動けない妹の布団を剥ぐと両手を持って引っ張りあげようとしました。
(いや、いやだって!あたしは行きたくない!!)
妹は動けない体で必死に抵抗しました。
どうにか動かせるようになると、夢中で女の手を振り払いました。
すると女性は
なんでそんなことをするの?
とでもいうように、顔をしかめると手を離し、そのまま押入の方へ歩き出して行きました。
二人は押入のドアから、どこかに吸い込まれるように消えてしまいました。
引っ張られた感触よりも、あのときの女性の髪の感触の方が嫌だった、と妹は言っていました。
怖がりの彼にこんな話をするわけにもいきません。
ですから、彼はまだそのマンションに住んでいます。
それにしても、妹が連れて行かれようとしたのは、やっぱり「あの世」だったのでしょうか…
86 :毒男 ◆B.DOLL/gBI :2016/08/15(月) 01:26:10.846 ID:8wDINd5e0
つい、先日あった話。
私は転職を考えるサラリーマンだが、友人にキャバクラの店長がいる。
この男、小太りのいつもにこにことした男だが、学生時代から非常に強い悪霊に取りつかれているという。
私は基本的にそういったものは楽しんで聞く程度なので信じていないのだが、
彼との七年ほどの付き合いの中で、どうにもおかしいことが多数ある。
先に説明しておくと、彼にとりつく悪霊というのは、手にひどい怪我をした女性だという。
私は残念ながら彼にとりつく、彼曰く美女の幽霊を視認したことはない。
私は、販売員をしているのだが、その日は、訳のわからないクレームで嫌な気分で帰り道を歩いていた。
そのクレームというのは、精神的に病んでいるお客様のものだった。
普段から、難癖をつけて金を巻き上げようとする連中に頭を下げていて、そういうことには慣れていたが、そのお客様はとても嫌な人だった。
もともと、私は霊を見るなんてことはできないのだが、彼と付き合い出してから、なんとなく気配のようなものは感じるようになっていた。
終電車で地元の駅についた時、なんだかとても嫌な感じがしていた。
なんというか、一人で歩きたくないのだ。
私の住む町は、治安の悪い片田舎だ。
大阪の環状線沿線なのだが、そこはちょっとした歓楽街の隣にあたる駅で、駅前だけはそれなりに明るい。
アパートまで歩いて十五分ほどなのだが、タクシーに乗ろうと思っていた。
私自身、その時の行動が何やら不可解なのだが、突然コンビニに行きたくなり、駅から少し離れたコンビニに立ち寄った。
雑誌を買って、コンビニから出る。アパートまではあと五分ほどの距離だ。
タクシーに乗るのもためらわれ歩いていた。
話は変わるが、そのクレームのお客様は、電話注文でパソコンを買おうとしていた女性だった。
北海道からなぜか注文の電話がきた。通販窓口へ行くのが普通なのだが、なぜか電話がかかっていた。
パソコンの性能などについてファックスを送り、納得してもらったら代金着払いで発送するだけにのだが、
そのお客様は、電話口で私を指名し、ながながと世間話をする。
それが五日近く続いていた。
離婚したことや、さらには私の過去の恋愛(当然適当にお茶を濁したのだが)、そんなことを話続ける。
中でも、そのお客様は、自分が霊能者だという話をしてくる。
私は、正直なところそれにかなり辟易としていた。
なぜか近道をするか、遠回りをするか迷った。
帰り道の選択には二種類あって、潰れた工場のわき道を通り近道するか、国道をそって歩くかのどちらかだ。
その時、嫌な感覚があったのになぜか近道を選んだ。
歩きながら、なぜか後ろから誰かがやってくるのが分かった。
その誰か、というのは明らかに人間ではなかった。
足音も何もないが、そいつが後ろから凄いスピードでやってきて、私の後ろにぴたりとついたのが分かった。
私は怖くて、気づかないフリをして歩いた。
何かわめきそうになったが、そんなことをしてはダメだと、強く感じていた。
家にだとりついてからも、その感覚は離れなかった。もともと安い2DKで壁が薄いのだが、空室のはずの隣から複数の足音がやけにはっきり聞こえた。
私は怖くなり、そのまま布団をかぶって寝た。
よく覚えていないが、ひどく嫌な夢を見た。何かに追い立てられる夢だったのは覚えている。
夢から覚めても怖い思いするってめっちゃこわいね
妹さん連れていかれなくてよかったね
眠いから寝るねー今日も楽しかったよありがとう
毒男ちゃんもみんなもおやすみねーまたねー
88 :毒男 ◆B.DOLL/gBI :2016/08/15(月) 01:28:42.601 ID:8wDINd5e0
次の日、やけに疲れて仕事へ行った。
今日さえ乗り切れば休日が待っている。
肩が重く、くしゃみをすれば体全体に嫌な痛みが広がる。
そのお客様からまた電話がかかった。
私は仕方なく、そのお客様に注意した。
業務に差し障りがあるので電話はお控え頂きたい、と言っただけだ。
お客様が何を言ったのかあまりよく覚えていないが、凄い剣幕で怒鳴られる。
「私はあなたに好意をもたれてるから付き合ってやったし、お祈りもあげてやったのに、どうしてそんなこと言うの?」
そんな気持ち悪いことを言われたのだけは鮮明に覚えている。
そのお客様から、私のメールアドレスに携帯電話のカメラで取られた写真が送られていた。
気分の悪い話だった。日付は昨日だった。
お客様は整った顔立ちわしていたが、取り立てて特徴のある女性ではなかった。
不鮮明な顔写真だったが、追い込まれたような目つきに見えた。
メッセージには、今回は許してあげますみたいなことが書いてあった。
私は、営業で席を外しているということにして、その日は電話に出なかった。
あまりに気分が悪かったためか、私は仕事ほ終えると友人の店に飛び込んだ。
金を払い、見知った顔の女の子と話ながら、閉店を待った。
彼は、いつものように笑顔でやってきた。
明け方である。
私は店長室と銘打たれた狭い部屋で、彼に事情を説明した。
終始、彼は苦笑したままだった。
「あかんわ、ほんまにあかんわ、それ。なんやえらいことになっとるで」
私は疲れと肩の重さに倒れる寸前だった。
彼は泊めてやるから、と彼の私とは比べ物にならないマンションへ連れていってくれた。
「よぅわからんけど、アレやろ、テンパった顔した女やろ、そのクレームかけとるんは」
私は、いつものことながら、彼の、その霊視みたいなものに感心した。
助けてくれるなら、金のことでも、こんなことでも、こいつくらいしかいないだろう。
「うーん、アレやな。俺と一緒やな」
彼は私の背中をばしぱし叩いた。
私はなんとなくそれで楽になった気分だった。
布団を借りて横になっていると睡魔に誘われた。
89 :毒男 ◆B.DOLL/gBI :2016/08/15(月) 01:30:26.892 ID:8wDINd5e0
その夢のことははっきり覚えている。
私は、実家へ逃げている。
高校を卒業してからは戻っていない実家の懐かしい道を、走りつづけていた。
家に入り、鍵をしめて、懐かしい十年近く前の居間へ行く。
そこは誰とも分からない連中ががやがやしていた。
そこにいた連中の顔は覚えていない。
ただ、中年の男もいたし、少年もいたし女性もいた。
誰も知らない顔だったように思える。
助けて下さい、と私は彼らにすがりつく。
「大丈夫、ここには入れないから。あとはお前がやれ」
そのような意味合いのことを言われたように思う。
気がつくと、昼間の三時すぎだった。
彼は、パソコンでファイナルファンタジーをやっていた。
私が起きるとそれを中断して、コンビニ弁当を渡してくれた。
肩の痛みは嘘のように取れていた。
「楽になったやろ。ほら、後ろ」
マンションの七階である彼の部屋のベランダを見ると、凄い形相の女がドアを叩いていた。
よく見ると、その後ろにいくつもの何か分からない気持ち悪いものも見えた。
私は悲鳴を上げて目をそらすとねそれは見えなくなった。風で窓が小さく音を立てているだけだ。
私の携帯電話に何度も着信があった。
会社からのそれだ。また鳴り出して、私はそれをとる。
あのお客様が、私に誘惑されたと騒ぎ出しているとのことだった。
彼はにやにや笑いながら、それを見ていた。
私を出せとのことだったので、私はお客様に電話をさせられることになった。
「断れよ。もう思いっきり断れよ」
と、彼は言った。
私はお客様に電話をかけて、角が立たないように、断った。
あなたが何度も電話をかけ、あなたが勝手に口説かれたと言っています。
私にそんな他意はなく、昨日申し上げた通り、これ以上の電話は営業に差し支えがあります。
そんなことを私は説明し、無理やり電話を切った。
彼が窓を開けて風を入れた。私は怖かったが、そのまま黙り込んだ。
「嫌なことこれからもあるやろけど、まあ我慢しいや」
と、彼に言われて、私は家まで送ってもらった。
目の端に、何か影がよぎる。
それを見ないようにしている。
たまに嫌な夢を見る程度になり、肩もそれほど重くなくなった。
お客様からはキャンセルの電話があり、私はそれからも開放された。
あれから三週間ほどたつが、たまに店に無言電話が鳴る。
あと、何かの拍子にあのお客様の首だけが、じっと私を見ている時もあるが、実害はその程度だ。
今日も、それが見えたので書きました。
これで終わりです。長くなり申し訳ありません。
91 :毒男 ◆B.DOLL/gBI :2016/08/15(月) 01:32:22.460 ID:8wDINd5e0
|A-) さて、怖い話と音楽はここまでー
92 :秋山 ◆MIO/.JGsks :2016/08/15(月) 01:32:32.215 ID:TYcqgADk0
| ω・)どっくんお疲れえええええええ
93 :cat ◆TUKUMO3rAI :2016/08/15(月) 01:32:41.910 ID:yTJGc7o9a
>>87
|ω・`) おやすみなさーいまたねーノシ
97 :以下、\(^o^)/でVIPがお送りします:2016/08/15(月) 01:37:44.650 ID:bvEaBfboa
おつかれさま
元スレ:http://viper.2ch.sc/test/read.cgi/news4vip/1471181969/
怖い系の人気記事
百物語
→記事を読む
本当に危ないところを見つけてしまった
スレタイの場所に行き知人が一人行方不明になってしまったHINA ◆PhwWyNAAxY。VIPPERに助けを求め名乗りでた◆tGLUbl280sだったが得体の知れないモノを見てから行方不明になってしまう。また、同様に名乗りでた区らしき市民 ◆34uqqSkMzsも怪しい集団を目撃する。釣りと真実が交差する物語。果たして物語の結末は・・・?
→記事を読む
短編シリーズ
→記事を読む
毒男の怖い話とか音楽とか雑談とか
音楽をお供に、上質な怪談を味わってみませんか?
→記事を読む
師匠シリーズ
→記事を読む
唯一の友達の性癖が理解できない。
唯一の友達に唾液を求められ、VIPPERに助けを求める>>1。しかし運が悪いことに安価は「今北産業」で、スレの存在を友達に知られてしまう。そして事は予想だにしなかった展開に…!!
→記事を読む
守護霊「ゴルゴマタギ」
かのゴルゴそっくりなマタギの守護霊が憑いている友人を持つ報告者。そしてたびたび危機に巻き込まれるが、そのゴルゴよって救われる友人。愉快な心霊話に終わるかと思いきや、事態は予想外に大きくなっていき、そして…
→記事を読む
屋根裏から変な音する。獣害に詳しいやつ来てくれ
いっそ獣害だった方が救いはあった。
→記事を読む
笑い女
あなたは最近いつ人に笑われましたか?その声は耳に残ってはいませんか?居た。居た。居た。
→記事を読む
【都市伝説】都市伝説を語る会管理人が選ぶ【50選】
→記事を読む