毒男の怖い話とか音楽とか雑談とか 2016/07/10 スレ
Part3
72 :毒男 ◆B.DOLL/gBI :2016/07/10(日) 01:45:52.228 ID:KUgYdFxo0
やがて、捜索隊が山に入り、俺は事情聴取されました。
最初は、あの女のことを、どう説明したらよいのか悩みましたが、結局見たままのことを話しました。
警察は淡々と調書を取っていました。
ただ、Aに女が何かを囁いていた、というところは繰り返し質問されました。
翌々日、遺体が一つ見つかりました。
白い夏服に黒髪。
俺が見た、あの女の特徴に一致していました。
俺は警察に呼ばれて、あの時の状況についてまた説明させられました。
その時に、警察の人から、その遺体についていろいろと聞かされました。
女の身元はすぐにわかったそうです。
去年の夏に、何十キロも離れた町で行方不明になっていた女の人でした。
ただ、なぜあんな山の中に居たのかはわからない、と言うことでした。
俺は、あの時のことはもう忘れたい、と思っていたので
そんなことはどうでもエエ、と思って聞いていました。
けれど、一つ気になることがありました。
女の遺体を調べたところ、両眼に酷い損傷があったそうです。
俺は、Aのヤツそんなことをしたのか、と思いましたが、どうも違ったみたいで、その傷は随分古いものだったようです。
「目はぜんぜん見えんかったはずや。」
警察の人はそう言いました。
結局、Aの行方は、今でもわかっていません。
残された家族のことを考えると、Aには生きていて欲しい、とは思いますが、あの時のことを思い出すと、正直なところ、もう俺はAに会いたくありません。
ただ、何となく嫌な予感がするので、先週、髪を切って坊主にしました。
86 :毒男 ◆B.DOLL/gBI :2016/07/10(日) 02:18:06.322 ID:KUgYdFxo0
僕がまだ六歳ぐらいのときの話。
それまで市街地に住んでたんだけど、小学校へあがる春に緑の多い郊外に引っ越したんだ。
近所には田圃や畑があって、兼業農家をやってる地元の人が多い。
そんなのどかな環境の町はずれにある新興住宅に、僕ら家族は移ってきた。
慣れないこともあったけど、僕は小学校へあがってすぐに友達ができて、二ヶ月もたった頃には、もうすっかりその町に馴染んだつもりになってた。
ある日曜日、昼ご飯を食べてから友達三人と学校の近くにある田圃のあぜ道で、遊びがてら、おたまじゃくしをとっていた。
ビンに入れて家に持って帰って、カエルになるのを見たかったからだ。
用水路のなかに手を突っ込んでたら、いきなり小便がしたくなってきた。
僕は何匹かつかまえていたし、もう帰ってもよかったんだけど、友達は、もっとつかまえるつもりでいた。
時刻は五時半ぐらいだったと思う。
そろそろ日が暮れどきで、空はうっすらと陰り始めていた。
僕は友達を置いて、ちょっと小便しにいってくると駆けだした。
家まで帰る気はなくて、そこらで適当なところを探してた。
ちょっと離れたところに、まだ行ったことのない古いお寺があって、歩いていた道からそこに飛び込むと、
トイレを探すのが面倒だったから、寺の横手のほうにある低い木の茂みですませた。
はやく友達のところへ帰りたかったけれど、なにを間違えたのか、僕は道とは反対の、寺の裏側へ歩いていってしまった。
間違ったとわかって引き返そうとしたとき、小さくカチャカチャと音がした。
何だろうと思って振り返ったら、暗い寺のなかからボンヤリと黄色い光が漏れてる。
そっちに行くと、雨戸と障子が開け放してあって、ふと見れば、薄暗い60W電球を吊った下で、四人家族がご飯を食べてた。
住職らしい丸禿の男と、痩せた奥さんと、まだ小さい子供が二人、ちゃぶ台のまわりに正座して、それぞれに茶碗を持ってる。
カチャカチャっていうのは、お箸が茶碗に当たる音だった。
その光景に、僕はなんとなく寒々しい違和感を覚えた。
誰も何も言わずに、黙々と食べながら、裏庭に立っている僕のほうをジッと見ているんだけど、誰もが無表情で、何も話さないんだ。
静まり返った食卓に、ただカチャカチャとお箸の音がするだけ。
僕も何も言わず、その場から立ち去ろうとした。
そしたら、奥さんが小さな声で、
「あんた、どこの子?これ食べていく?」
と。
87 :毒男 ◆B.DOLL/gBI :2016/07/10(日) 02:19:17.317 ID:KUgYdFxo0
振り向いたら、奥さんのそばにあった「おひつ」から、ご飯を茶碗によそってくれてる。
「はい、お食べよ」
って、茶碗を出してくれたその白い腕が、こちらへ、異様に長くニュルッと伸びてきたように感じた。
そして、そのご飯を見たとき、僕はビックリどころか、心臓がとまりそうになった。
ご飯に色がついていて、赤飯かと一瞬思ったけど、
あきらかにそれは血だったんだ!
ご飯粒が血で真っ赤になっていたんだ!
はっと顔をあげたら、もくもくと無表情で食べている四人家族の口も血だらけになっていて、
胸などにも口からぽろぽろこぼれたご飯粒が点々と赤くくっついている!
それでも、住職も二人の子供たちも、一様にカチャカチャ箸を動かして血まみれのご飯を口にかき込んでいて…
急に生臭い匂いが漂ってきて吐きそうになった。
奥さんの差し出している茶碗に背を向けると、走り出した。
あまりの怖さに膝ががくがくしていたけど、なんとかかんとか友達のところまで戻れた。
それで、寺で見たことを泣きながら話したら、ずっと地元に住んでる友達が、真っ青になって震えながら言ったんだ。
「あの寺、今は誰も住んでないよ。だって、みんな死んだから」
聞けば、前の住職は何かの事情でノイローゼのようになって、家族が寝ているときに包丁を持ち出して無理心中をはかり、
奥さんと子供たちを刺し殺したあとは、自分も首の動脈を切って自殺したということだった。二年前に…
僕らは怖くなってそれぞれ走って家に帰った。
寺で見たことを親に話したけれど、あまり真剣にとりあってくれなかった。
その夜から二日続けて高熱がでて、きっと体調が悪かったからそんな幻を見たんだろう、ということにされてしまった。
今でも、その寺はある。すっかり寂れて荒れ果てているが。
住職一家の供養はされているはずだということだが、あの寺の裏手に行けば、
今もぼんやりと黄色い光が見えるような気がして大学の休みに帰省しても、僕は絶対にあそこには近寄らないようにしている。
90 :cat ◆TUKUMO3rAI :2016/07/10(日) 02:26:31.495 ID:aZYFmhpm0
|ω・`) その寺怖い
成仏できてないじゃないー
89 :毒男 ◆B.DOLL/gBI :2016/07/10(日) 02:26:16.746 ID:KUgYdFxo0
|A-) 次の話で終わりかな
91 :秋山 ◆MIO/.JGsks :2016/07/10(日) 02:26:36.454 ID:mWVAuNNI0
>>89
|ョ゚ω゚=)えー
93 :毒男 ◆B.DOLL/gBI :2016/07/10(日) 02:27:31.710 ID:KUgYdFxo0
小学校のころ、俺のクラスにユキオ(どんな漢字かは忘れた)っていう奴が転校してきた。
小柄でハーフっぽい顔で、どことなくオドオドした感じの奴だった。
ユキオには両親がいなくて、爺ちゃん婆ちゃんと一緒に暮らしていた。
その辺の事情を、先生は教えてくれなかったが、ユキオ本人から聞いた。
俺たちは、最初のうち、ユキオをイジメた。
と言っても、金脅し取ったりとかじゃなくて、すれ違いざま背中にエルボーしたり、筆箱をカッターで切ったり、
集会の時にオナラをしたと騒ぎ立ててみたり、まぁ他愛もないものだったと思う。
それでも、本人には辛かったかもしれんけど。
だけど、ユキオは普段オドオドしてるくせに、そんな時は妙に根性を見せて、泣いたりムキになったりすることが無かった。
先生に告げ口もしなかった。
だから、あまり面白くなくて、そのうち俺らもイジメたりしなくなった。
ただ、ユキオは良く学校を休んだ。
月にどれくらい休んだのかは忘れたけど、しょっちゅう休んでたっていう印象は残ってる。
その頃、うちの学校では、給食のパンを休んだ奴のところへ、同じクラスで近所の奴が届けるっていうルールがあった。
ユキオの家にパンを届けるのは俺の役目だった。
家はけっこう離れていたけど、同級では一番近かったし、良く通る帰り道の途中だったし。
ユキオの家は木造の文化住宅で、いかにも爺ちゃん婆ちゃんが住んでそうな家だった。
中に入ったことは無かった。何となく暗い感じで、俺的に嫌な雰囲気の家だった。
パンを届ける時は、いつも婆ちゃんにパンを渡してそそくさと帰った。
ある日、またユキオが休んだので、俺はパンを届けに行った。
玄関で呼ぶと、珍しくユキオ本人が出てきた。風邪でもひいているのか、顔色が悪い。
ユキオは俺に、家の中に入るように誘った。
「××××があるから、やろうよ。」
とか言って。
そのオモチャは俺の欲しかったヤツだったんで、嫌な感じを振り払って、家の中に入った。
ユキオの部屋に入って、ちょっと驚いた。
そこら中にシールやステッカーがベタベタと貼ってあって、その中には神社のお札みたいなのも混ざっていた。
俺らが入ってきた襖にも隙間がないくらい貼ってある。
「…なんだ、これ。」
「おじいちゃんとおばあちゃんがお札を貼るんだけど、それだけだと何となく怖いからシールも貼るんだ。」
ユキオが自分で書いたようなお札もあった。
「お札破ったらいいじゃん。」
「そんなことしたら、おじいちゃんに怒られるし…」
ユキオは口籠もってしまった。
その日は、ユキオの部屋で1時間ぐらい遊んで帰った。
95 :毒男 ◆B.DOLL/gBI :2016/07/10(日) 02:28:57.070 ID:KUgYdFxo0
次の日も、ユキオは学校を休んだ。
先生が俺にユキオの様子を聞いてきた。
なんか調子悪そうだった、と言うと
「そうか…休むっていう電話も掛かってこないから、どんな様子なのかと思ってな。」
「電話したら?」
「いや、したんだけど誰も出ないんだ。おじいさんかおばあさんは、居たか?」
「昨日は見なかった。」
「うーん、休むんだったら電話してくれって、ユキオにでもいいから言っといてくれ。」
その日もユキオの部屋で遊んだ。
ユキオはオモチャを沢山持っていた。
少しうらやましくなって聞くと、お父さんとお母さんが買ってくれた、と答えた。
「お前のお父さんとお母さんってドコにいるんだよ?」
「死んだ。」
ユキオはあっさりとそう言った。
「なんで?」
「交通事故。」
オモチャをいじりながら俯いて答えるユキオを見て、さすがに、これ以上は悪い気がして、話を変えた。
「明日は学校行く?」
「わかんない。」
「お前、大丈夫かよ。」
「…」
「休む時は電話しろって先生言ってたぞ。」
「…ゴメン。」
「俺に言ってもしょーがないよ。おじいちゃんとおばあちゃんは?」
「奥の部屋にいるよ。」
「じゃあ、そう言っとけよな。」
「…眠れないんだ。」
「はぁ?」
「お父さんとお母さんが夢に出てきて、僕のことを呼ぶんだ。」
「…」
「ユキオ、ユキオって僕のことを何度も呼ぶんだ。それが怖くて、だから眠れないんだ。」
「…」
「昨日は、腕をつかまれた、僕を連れて行くつもりなんだ。」
俺はだんだん怖くなってきて、もう帰る、と言うと、ユキオはやけにしつこく引き留めた。
「お前が怖いのはわかるけど、俺がここに泊まるわけにいかねーだろ?」
「なんで?」
「俺ん家はお母さんが心配するから…」
そこまで言って、
「ヤバ!」
って思った。
ユキオは俯いて何も言わなくなってしまった。
俺は、居たたまれなくなって、ユキオの家を半ば飛び出すように出ていった。
96 :毒男 ◆B.DOLL/gBI :2016/07/10(日) 02:30:42.858 ID:KUgYdFxo0
次の日もユキオは学校を休んだ。
先生は、一緒に行くと言って、帰りに俺を車に乗せてユキオの家に向かった。
先生が玄関で呼んでも、何の返事もなかった。
玄関を開けると先生が顔をしかめた。
靴を脱いで家に上がった。
台所やユキオの部屋には誰もいなかった。
ユキオの部屋を出ると右手に部屋があった。
ユキオが昨日言っていた奥の部屋というのはそこなんだろう、と俺は思った。
先生がそこの襖を開けた。
そのとたん、先生は立ちすくんで、すぐに襖を閉めた。
その一瞬の間に、先生の体ごしに部屋の中が見えた。
ユキオの血塗れの顔が見えた。
それから、先生が警察を呼んだんだと思う。
その日の、そこから先のことはほとんど憶えていないけれど、警察は来ていた。
次の日、先生がユキオと爺ちゃんと婆ちゃんが死んだことをクラスの皆に伝えた。
けれど血塗れだったとは言わなかった。
ただ、死んだと言った。
あとで、俺は先生にユキオの夢の話をした。
先生はしばらく黙って聞いていた。
そして、誰にも言うな、と言って、俺にユキオの両親のことを教えてくれた。
ユキオの親の死因は自殺だった。
一家心中を図っていた。
ユキオはその時、運良く生き延びて、爺ちゃん婆ちゃんのところへ引き取られた。
俺はそれを聞いても、そんなに驚かなかった。
なんとなく、そんな気がしていた。
何日かして、俺は警察に呼ばれて、ユキオの家へ行った時のことを話した。
ユキオの夢のことも話した。
警官は、俺に、その話がウソでないかをしつこく聞いた。
俺はウソじゃないと何度も言った。
「本当に、君はあの家で、ユキオ君からその話を聞いたのかい?」
「うん。」
一緒に来ていた先生が困った顔をしていた。
警官が先生に向かって、ヒョイヒョイと手を振った。
それが合図だったのか、先生はしばらく考えてから俺に言った。
「あのなぁ、俺とお前がユキオの家に行っただろ。あの時…」
先生は言いにくそうだった。
俺は嫌な予感がした。
「…あの時、ユキオ達は、間違いなく、死んで3日は経っていたんだ。」
97 :以下、\(^o^)/でVIPがお送りします:2016/07/10(日) 02:31:00.139 ID:WktbI6q3a
>>95
俺だったらハーフっぽい内気ショタに泊まってほしいなんて言われたら嫌でも寝かせないのに……
98 :毒男 ◆B.DOLL/gBI :2016/07/10(日) 02:34:19.780 ID:KUgYdFxo0
>>97
|A-) だよなあw
話は違った展開になるだろうなww
99 :秋山 ◆MIO/.JGsks :2016/07/10(日) 02:34:29.635 ID:mWVAuNNI0
>>97
どんな性癖の持ち主なのだ・・・・
100 :毒男 ◆B.DOLL/gBI :2016/07/10(日) 02:35:21.917 ID:KUgYdFxo0
|A-) というわけで怖い話と音楽終わりー
101 :秋山 ◆MIO/.JGsks :2016/07/10(日) 02:35:55.773 ID:mWVAuNNI0
>>100
(´;ω;`)ブワッ
102 :以下、\(^o^)/でVIPがお送りします:2016/07/10(日) 02:36:50.433 ID:WktbI6q3a
おつかれさま
元スレ:http://viper.2ch.sc/test/read.cgi/news4vip/1468076953/
やがて、捜索隊が山に入り、俺は事情聴取されました。
最初は、あの女のことを、どう説明したらよいのか悩みましたが、結局見たままのことを話しました。
警察は淡々と調書を取っていました。
ただ、Aに女が何かを囁いていた、というところは繰り返し質問されました。
翌々日、遺体が一つ見つかりました。
白い夏服に黒髪。
俺が見た、あの女の特徴に一致していました。
俺は警察に呼ばれて、あの時の状況についてまた説明させられました。
その時に、警察の人から、その遺体についていろいろと聞かされました。
女の身元はすぐにわかったそうです。
去年の夏に、何十キロも離れた町で行方不明になっていた女の人でした。
ただ、なぜあんな山の中に居たのかはわからない、と言うことでした。
俺は、あの時のことはもう忘れたい、と思っていたので
そんなことはどうでもエエ、と思って聞いていました。
けれど、一つ気になることがありました。
女の遺体を調べたところ、両眼に酷い損傷があったそうです。
俺は、Aのヤツそんなことをしたのか、と思いましたが、どうも違ったみたいで、その傷は随分古いものだったようです。
「目はぜんぜん見えんかったはずや。」
警察の人はそう言いました。
結局、Aの行方は、今でもわかっていません。
残された家族のことを考えると、Aには生きていて欲しい、とは思いますが、あの時のことを思い出すと、正直なところ、もう俺はAに会いたくありません。
ただ、何となく嫌な予感がするので、先週、髪を切って坊主にしました。
86 :毒男 ◆B.DOLL/gBI :2016/07/10(日) 02:18:06.322 ID:KUgYdFxo0
僕がまだ六歳ぐらいのときの話。
それまで市街地に住んでたんだけど、小学校へあがる春に緑の多い郊外に引っ越したんだ。
近所には田圃や畑があって、兼業農家をやってる地元の人が多い。
そんなのどかな環境の町はずれにある新興住宅に、僕ら家族は移ってきた。
慣れないこともあったけど、僕は小学校へあがってすぐに友達ができて、二ヶ月もたった頃には、もうすっかりその町に馴染んだつもりになってた。
ある日曜日、昼ご飯を食べてから友達三人と学校の近くにある田圃のあぜ道で、遊びがてら、おたまじゃくしをとっていた。
ビンに入れて家に持って帰って、カエルになるのを見たかったからだ。
用水路のなかに手を突っ込んでたら、いきなり小便がしたくなってきた。
僕は何匹かつかまえていたし、もう帰ってもよかったんだけど、友達は、もっとつかまえるつもりでいた。
時刻は五時半ぐらいだったと思う。
そろそろ日が暮れどきで、空はうっすらと陰り始めていた。
僕は友達を置いて、ちょっと小便しにいってくると駆けだした。
家まで帰る気はなくて、そこらで適当なところを探してた。
ちょっと離れたところに、まだ行ったことのない古いお寺があって、歩いていた道からそこに飛び込むと、
トイレを探すのが面倒だったから、寺の横手のほうにある低い木の茂みですませた。
はやく友達のところへ帰りたかったけれど、なにを間違えたのか、僕は道とは反対の、寺の裏側へ歩いていってしまった。
間違ったとわかって引き返そうとしたとき、小さくカチャカチャと音がした。
何だろうと思って振り返ったら、暗い寺のなかからボンヤリと黄色い光が漏れてる。
そっちに行くと、雨戸と障子が開け放してあって、ふと見れば、薄暗い60W電球を吊った下で、四人家族がご飯を食べてた。
住職らしい丸禿の男と、痩せた奥さんと、まだ小さい子供が二人、ちゃぶ台のまわりに正座して、それぞれに茶碗を持ってる。
カチャカチャっていうのは、お箸が茶碗に当たる音だった。
その光景に、僕はなんとなく寒々しい違和感を覚えた。
誰も何も言わずに、黙々と食べながら、裏庭に立っている僕のほうをジッと見ているんだけど、誰もが無表情で、何も話さないんだ。
静まり返った食卓に、ただカチャカチャとお箸の音がするだけ。
僕も何も言わず、その場から立ち去ろうとした。
そしたら、奥さんが小さな声で、
「あんた、どこの子?これ食べていく?」
と。
87 :毒男 ◆B.DOLL/gBI :2016/07/10(日) 02:19:17.317 ID:KUgYdFxo0
振り向いたら、奥さんのそばにあった「おひつ」から、ご飯を茶碗によそってくれてる。
「はい、お食べよ」
って、茶碗を出してくれたその白い腕が、こちらへ、異様に長くニュルッと伸びてきたように感じた。
そして、そのご飯を見たとき、僕はビックリどころか、心臓がとまりそうになった。
ご飯に色がついていて、赤飯かと一瞬思ったけど、
あきらかにそれは血だったんだ!
ご飯粒が血で真っ赤になっていたんだ!
はっと顔をあげたら、もくもくと無表情で食べている四人家族の口も血だらけになっていて、
胸などにも口からぽろぽろこぼれたご飯粒が点々と赤くくっついている!
それでも、住職も二人の子供たちも、一様にカチャカチャ箸を動かして血まみれのご飯を口にかき込んでいて…
急に生臭い匂いが漂ってきて吐きそうになった。
奥さんの差し出している茶碗に背を向けると、走り出した。
あまりの怖さに膝ががくがくしていたけど、なんとかかんとか友達のところまで戻れた。
それで、寺で見たことを泣きながら話したら、ずっと地元に住んでる友達が、真っ青になって震えながら言ったんだ。
「あの寺、今は誰も住んでないよ。だって、みんな死んだから」
聞けば、前の住職は何かの事情でノイローゼのようになって、家族が寝ているときに包丁を持ち出して無理心中をはかり、
奥さんと子供たちを刺し殺したあとは、自分も首の動脈を切って自殺したということだった。二年前に…
僕らは怖くなってそれぞれ走って家に帰った。
寺で見たことを親に話したけれど、あまり真剣にとりあってくれなかった。
その夜から二日続けて高熱がでて、きっと体調が悪かったからそんな幻を見たんだろう、ということにされてしまった。
今でも、その寺はある。すっかり寂れて荒れ果てているが。
住職一家の供養はされているはずだということだが、あの寺の裏手に行けば、
今もぼんやりと黄色い光が見えるような気がして大学の休みに帰省しても、僕は絶対にあそこには近寄らないようにしている。
90 :cat ◆TUKUMO3rAI :2016/07/10(日) 02:26:31.495 ID:aZYFmhpm0
|ω・`) その寺怖い
成仏できてないじゃないー
89 :毒男 ◆B.DOLL/gBI :2016/07/10(日) 02:26:16.746 ID:KUgYdFxo0
|A-) 次の話で終わりかな
>>89
|ョ゚ω゚=)えー
93 :毒男 ◆B.DOLL/gBI :2016/07/10(日) 02:27:31.710 ID:KUgYdFxo0
小学校のころ、俺のクラスにユキオ(どんな漢字かは忘れた)っていう奴が転校してきた。
小柄でハーフっぽい顔で、どことなくオドオドした感じの奴だった。
ユキオには両親がいなくて、爺ちゃん婆ちゃんと一緒に暮らしていた。
その辺の事情を、先生は教えてくれなかったが、ユキオ本人から聞いた。
俺たちは、最初のうち、ユキオをイジメた。
と言っても、金脅し取ったりとかじゃなくて、すれ違いざま背中にエルボーしたり、筆箱をカッターで切ったり、
集会の時にオナラをしたと騒ぎ立ててみたり、まぁ他愛もないものだったと思う。
それでも、本人には辛かったかもしれんけど。
だけど、ユキオは普段オドオドしてるくせに、そんな時は妙に根性を見せて、泣いたりムキになったりすることが無かった。
先生に告げ口もしなかった。
だから、あまり面白くなくて、そのうち俺らもイジメたりしなくなった。
ただ、ユキオは良く学校を休んだ。
月にどれくらい休んだのかは忘れたけど、しょっちゅう休んでたっていう印象は残ってる。
その頃、うちの学校では、給食のパンを休んだ奴のところへ、同じクラスで近所の奴が届けるっていうルールがあった。
ユキオの家にパンを届けるのは俺の役目だった。
家はけっこう離れていたけど、同級では一番近かったし、良く通る帰り道の途中だったし。
ユキオの家は木造の文化住宅で、いかにも爺ちゃん婆ちゃんが住んでそうな家だった。
中に入ったことは無かった。何となく暗い感じで、俺的に嫌な雰囲気の家だった。
パンを届ける時は、いつも婆ちゃんにパンを渡してそそくさと帰った。
ある日、またユキオが休んだので、俺はパンを届けに行った。
玄関で呼ぶと、珍しくユキオ本人が出てきた。風邪でもひいているのか、顔色が悪い。
ユキオは俺に、家の中に入るように誘った。
「××××があるから、やろうよ。」
とか言って。
そのオモチャは俺の欲しかったヤツだったんで、嫌な感じを振り払って、家の中に入った。
ユキオの部屋に入って、ちょっと驚いた。
そこら中にシールやステッカーがベタベタと貼ってあって、その中には神社のお札みたいなのも混ざっていた。
俺らが入ってきた襖にも隙間がないくらい貼ってある。
「…なんだ、これ。」
「おじいちゃんとおばあちゃんがお札を貼るんだけど、それだけだと何となく怖いからシールも貼るんだ。」
ユキオが自分で書いたようなお札もあった。
「お札破ったらいいじゃん。」
「そんなことしたら、おじいちゃんに怒られるし…」
ユキオは口籠もってしまった。
その日は、ユキオの部屋で1時間ぐらい遊んで帰った。
95 :毒男 ◆B.DOLL/gBI :2016/07/10(日) 02:28:57.070 ID:KUgYdFxo0
次の日も、ユキオは学校を休んだ。
先生が俺にユキオの様子を聞いてきた。
なんか調子悪そうだった、と言うと
「そうか…休むっていう電話も掛かってこないから、どんな様子なのかと思ってな。」
「電話したら?」
「いや、したんだけど誰も出ないんだ。おじいさんかおばあさんは、居たか?」
「昨日は見なかった。」
「うーん、休むんだったら電話してくれって、ユキオにでもいいから言っといてくれ。」
その日もユキオの部屋で遊んだ。
ユキオはオモチャを沢山持っていた。
少しうらやましくなって聞くと、お父さんとお母さんが買ってくれた、と答えた。
「お前のお父さんとお母さんってドコにいるんだよ?」
「死んだ。」
ユキオはあっさりとそう言った。
「なんで?」
「交通事故。」
オモチャをいじりながら俯いて答えるユキオを見て、さすがに、これ以上は悪い気がして、話を変えた。
「明日は学校行く?」
「わかんない。」
「お前、大丈夫かよ。」
「…」
「休む時は電話しろって先生言ってたぞ。」
「…ゴメン。」
「俺に言ってもしょーがないよ。おじいちゃんとおばあちゃんは?」
「奥の部屋にいるよ。」
「じゃあ、そう言っとけよな。」
「…眠れないんだ。」
「はぁ?」
「お父さんとお母さんが夢に出てきて、僕のことを呼ぶんだ。」
「…」
「ユキオ、ユキオって僕のことを何度も呼ぶんだ。それが怖くて、だから眠れないんだ。」
「…」
「昨日は、腕をつかまれた、僕を連れて行くつもりなんだ。」
俺はだんだん怖くなってきて、もう帰る、と言うと、ユキオはやけにしつこく引き留めた。
「お前が怖いのはわかるけど、俺がここに泊まるわけにいかねーだろ?」
「なんで?」
「俺ん家はお母さんが心配するから…」
そこまで言って、
「ヤバ!」
って思った。
ユキオは俯いて何も言わなくなってしまった。
俺は、居たたまれなくなって、ユキオの家を半ば飛び出すように出ていった。
96 :毒男 ◆B.DOLL/gBI :2016/07/10(日) 02:30:42.858 ID:KUgYdFxo0
次の日もユキオは学校を休んだ。
先生は、一緒に行くと言って、帰りに俺を車に乗せてユキオの家に向かった。
先生が玄関で呼んでも、何の返事もなかった。
玄関を開けると先生が顔をしかめた。
靴を脱いで家に上がった。
台所やユキオの部屋には誰もいなかった。
ユキオの部屋を出ると右手に部屋があった。
ユキオが昨日言っていた奥の部屋というのはそこなんだろう、と俺は思った。
先生がそこの襖を開けた。
そのとたん、先生は立ちすくんで、すぐに襖を閉めた。
その一瞬の間に、先生の体ごしに部屋の中が見えた。
ユキオの血塗れの顔が見えた。
それから、先生が警察を呼んだんだと思う。
その日の、そこから先のことはほとんど憶えていないけれど、警察は来ていた。
次の日、先生がユキオと爺ちゃんと婆ちゃんが死んだことをクラスの皆に伝えた。
けれど血塗れだったとは言わなかった。
ただ、死んだと言った。
あとで、俺は先生にユキオの夢の話をした。
先生はしばらく黙って聞いていた。
そして、誰にも言うな、と言って、俺にユキオの両親のことを教えてくれた。
ユキオの親の死因は自殺だった。
一家心中を図っていた。
ユキオはその時、運良く生き延びて、爺ちゃん婆ちゃんのところへ引き取られた。
俺はそれを聞いても、そんなに驚かなかった。
なんとなく、そんな気がしていた。
何日かして、俺は警察に呼ばれて、ユキオの家へ行った時のことを話した。
ユキオの夢のことも話した。
警官は、俺に、その話がウソでないかをしつこく聞いた。
俺はウソじゃないと何度も言った。
「本当に、君はあの家で、ユキオ君からその話を聞いたのかい?」
「うん。」
一緒に来ていた先生が困った顔をしていた。
警官が先生に向かって、ヒョイヒョイと手を振った。
それが合図だったのか、先生はしばらく考えてから俺に言った。
「あのなぁ、俺とお前がユキオの家に行っただろ。あの時…」
先生は言いにくそうだった。
俺は嫌な予感がした。
「…あの時、ユキオ達は、間違いなく、死んで3日は経っていたんだ。」
97 :以下、\(^o^)/でVIPがお送りします:2016/07/10(日) 02:31:00.139 ID:WktbI6q3a
>>95
俺だったらハーフっぽい内気ショタに泊まってほしいなんて言われたら嫌でも寝かせないのに……
98 :毒男 ◆B.DOLL/gBI :2016/07/10(日) 02:34:19.780 ID:KUgYdFxo0
>>97
|A-) だよなあw
話は違った展開になるだろうなww
99 :秋山 ◆MIO/.JGsks :2016/07/10(日) 02:34:29.635 ID:mWVAuNNI0
>>97
どんな性癖の持ち主なのだ・・・・
100 :毒男 ◆B.DOLL/gBI :2016/07/10(日) 02:35:21.917 ID:KUgYdFxo0
|A-) というわけで怖い話と音楽終わりー
101 :秋山 ◆MIO/.JGsks :2016/07/10(日) 02:35:55.773 ID:mWVAuNNI0
>>100
(´;ω;`)ブワッ
102 :以下、\(^o^)/でVIPがお送りします:2016/07/10(日) 02:36:50.433 ID:WktbI6q3a
おつかれさま
元スレ:http://viper.2ch.sc/test/read.cgi/news4vip/1468076953/
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