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百物語2013

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Part24
85 :葛 ◆PJg/T8DlUQ :2013/08/23(金) 23:46:39.47 ID:V8agdtj5O
【第二十四話】
「忘れ物」1/2
夏の終わり、先輩が入院したと聞いて見舞いに行った
薄暗い病室で、底抜けに明るく、人前だとちょっと調子に乗りすぎてしまうお調子者の先輩は、ひどく憔悴しきっていた
どうしたのかと問うと、やがて先輩はぽつりぽつりと答え始めた
お盆のある日、先輩はバイト仲間の友人たちと連れ立って、肝試しに行ったそうだ
しかし、藪を掻き分けてまで辿り着いた小さなお堂にはこれといった怪異も無く、次第に先輩たちは退屈紛れにお堂を荒らし始めたそうだ
そのうち先輩は、友人たちの目もあるし、酒の勢いもあって、持っていたカッターでお堂の柱に名前を彫ったのだそうだ
途中でカッターが折れ、さすがにやりすぎた気になった先輩たちは、そのままお堂を後にした
「その帰りにファミレスに寄ったらさ、グラスが1個多いんだよ。その時は皆で、きっと肝試し帰りと思われる客を脅かすサービスじゃないか、って笑ってたんだ」
それ以来、先輩の周りでは奇妙なことが増えたのだと言う
グラスが多く置かれるのは当たり前、友人からは「後ろの女は誰だよ」とからかわれる…そして
「夜に部屋の中でさ、足音がするんだよ…部屋中を歩き回っているような足音…それがオレのベッドの隣で止まるんだ…でも誰も居ないんだよ…」
そんなことが続いたある日、先輩はお神酒を手にお堂にお参りに行ったそうだ
「でも、足音が消えないんだよ…ちゃんと謝りに行ったって言うのにさあ…」
力無くそう言って、先輩はうなだれた
「それでさ、こないだふと『足音がするなら足元を見てみよう』と思って、ベッドの隣で足音が止まった時に、下を見たんだ…」
そこには、足首から上が透けた足があった

86 :葛 ◆PJg/T8DlUQ :2013/08/23(金) 23:48:16.97 ID:V8agdtj5O
「忘れ物」2/2
「その瞬間、足首から下しか見えないのに、何故か女が立ってオレを見下ろしているのが解って」
ぶわっと総毛立ち硬直する先輩の耳に、ボソボソと小さな声が聞こえたそうだ
「『………ですよ、……………ですよ、………ですよ』って、何か同じ言葉を言っているのは解ったけど、よく聞き取れなくて」
次第に腹が立ってきた先輩は、恐怖を振り払って声を張り上げた
「『何言ってんのか解んねーよ!もっとハッキリ言えよ!』って。そしたらさ、一瞬沈黙があってからヤケにハッキリした声が耳元で」
「 忘 れ 物 で す よ 」
気が付けば目の前に、お堂で折れたハズのカッターが突き出されていたという
一通り聞き終えてから、
「……とにかく、命が無事だっただけ良かったじゃん」と言うと、先輩は泣き笑いの表情を浮かべて、病室の床の一点を指して首を振った
「………まだそこに居るんだ」


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