百物語2011
Part65
Part1<<
Part61
Part62
Part63
Part64
Part65
Part66
Part67
Part68
Part69
>>Part100
評価する!(7702)
百物語一覧に戻る
評価する!(7702)
百物語一覧に戻る
245 :代理投稿 ◆96j0kyRRhEF2 :2011/08/20(土) 02:21:25.56 ID:hPkmSRgw0
コッソリ ◆.PiLQRq.0A様
題名:【臭い】
(1/2)
僕が小学校3年の頃、ある友人がいました。仮に、彼の名前をT君としておきます。
T君は身体を動かすことがとても好きで、彼と遊ぶ時はいつも外を走り回っていました。
ある日、秋の深まった頃、僕はT君は二人で遊んでいました。
いつもは他に何人か友達がいるのですが、その日はみんな都合があって来られなかったのです。
大勢であれば色々な遊びもできるのですが、二人となるとそう面白い遊びもできません。
最初の内は二人で雑草を棒でなぎ払ったり、そこらの土管に潜り込んだりして遊んでいましたが、やがて二人とも飽きてきました。
辺りも徐々に暗くなってきたので、今日はそろそろ帰ろうかなぁ、と思っているとT君が
「…そうだ、うちに来ない?」
そう尋ねてきました。
彼の家に誘われるのは初めてだったので、僕はワクワクしながら彼の提案を受けました。
T君に先導されて辿り着いたのは古びた団地でした。
彼の部屋まで付いて行くと、T君はズボンのポケットから鍵を取り出し
「親、いないから」
そう言って、僕を家へと招き入れました。
家に入って最初に気が付いたのは、臭いでした。
まるで何かが腐っているような、鼻につく嫌な臭い。
T君はまるで何も感じていないように、いつもと同じ様子で僕を自分の部屋へと招きました。
家中に充満する饐えた臭いに閉口しながら、僕はT君の部屋へと足を踏み入れました。
246 :代理投稿 ◆96j0kyRRhEF2 :2011/08/20(土) 02:22:10.83 ID:hPkmSRgw0
(2/2)
彼の部屋へ入った瞬間、臭いはより強く、鮮明になりました。
目に刺さるほどに強く、吐き気を催すような、そんな臭い。
アンモニアのような、肉の腐ったような、そんな臭い。
この部屋が臭いの発生源であるような、そんな感じすらしました。
僕はT君に
「ねぇ、何かこの部屋臭わない?」と思わず尋ねました。
子供だったので、遠慮も何もなかったのですが、
今にして思えば、怒られてもおかしくない失言だったと思います。
しかし、T君は全く激昂する様子もなく
「あぁ、分かるんだ」
と答えました。
まるで宝物の在り処を明かすときの様に、T君は少し笑ってから答えました。
「この部屋さぁ、ずっと昔に自殺があったんだって。それで、臭いが取れないんだよ」
クスクスと笑いながらT君は電灯の紐を引きました。
パチパチッ、という軽い音の後、室内を蛍光灯の光が照らしました。
「まぁ嘘だけど。臭いなんてしなくない?」
そんなことをT君は言っていたような気がします。
僕はその言葉をしっかり聴かずに、T君の家を飛び出していました。
蛍光灯に照らされた室内にできるT君の影。
その影の右上、天井からぶら下がる、もう一人の影が揺れていました。
それ以来、T君とは距離を置くようになり関係は次第に薄れていきました。
彼は小学校が終わる前に引っ越しましたが、彼の住んでいたあの団地は、今も街の片隅に建っています。
【了】
コッソリ ◆.PiLQRq.0A様
題名:【臭い】
(1/2)
僕が小学校3年の頃、ある友人がいました。仮に、彼の名前をT君としておきます。
T君は身体を動かすことがとても好きで、彼と遊ぶ時はいつも外を走り回っていました。
ある日、秋の深まった頃、僕はT君は二人で遊んでいました。
いつもは他に何人か友達がいるのですが、その日はみんな都合があって来られなかったのです。
大勢であれば色々な遊びもできるのですが、二人となるとそう面白い遊びもできません。
最初の内は二人で雑草を棒でなぎ払ったり、そこらの土管に潜り込んだりして遊んでいましたが、やがて二人とも飽きてきました。
辺りも徐々に暗くなってきたので、今日はそろそろ帰ろうかなぁ、と思っているとT君が
「…そうだ、うちに来ない?」
そう尋ねてきました。
彼の家に誘われるのは初めてだったので、僕はワクワクしながら彼の提案を受けました。
T君に先導されて辿り着いたのは古びた団地でした。
彼の部屋まで付いて行くと、T君はズボンのポケットから鍵を取り出し
「親、いないから」
そう言って、僕を家へと招き入れました。
家に入って最初に気が付いたのは、臭いでした。
まるで何かが腐っているような、鼻につく嫌な臭い。
T君はまるで何も感じていないように、いつもと同じ様子で僕を自分の部屋へと招きました。
家中に充満する饐えた臭いに閉口しながら、僕はT君の部屋へと足を踏み入れました。
246 :代理投稿 ◆96j0kyRRhEF2 :2011/08/20(土) 02:22:10.83 ID:hPkmSRgw0
(2/2)
彼の部屋へ入った瞬間、臭いはより強く、鮮明になりました。
目に刺さるほどに強く、吐き気を催すような、そんな臭い。
アンモニアのような、肉の腐ったような、そんな臭い。
この部屋が臭いの発生源であるような、そんな感じすらしました。
僕はT君に
「ねぇ、何かこの部屋臭わない?」と思わず尋ねました。
子供だったので、遠慮も何もなかったのですが、
今にして思えば、怒られてもおかしくない失言だったと思います。
しかし、T君は全く激昂する様子もなく
「あぁ、分かるんだ」
と答えました。
まるで宝物の在り処を明かすときの様に、T君は少し笑ってから答えました。
「この部屋さぁ、ずっと昔に自殺があったんだって。それで、臭いが取れないんだよ」
クスクスと笑いながらT君は電灯の紐を引きました。
パチパチッ、という軽い音の後、室内を蛍光灯の光が照らしました。
「まぁ嘘だけど。臭いなんてしなくない?」
そんなことをT君は言っていたような気がします。
僕はその言葉をしっかり聴かずに、T君の家を飛び出していました。
蛍光灯に照らされた室内にできるT君の影。
その影の右上、天井からぶら下がる、もう一人の影が揺れていました。
それ以来、T君とは距離を置くようになり関係は次第に薄れていきました。
彼は小学校が終わる前に引っ越しましたが、彼の住んでいたあの団地は、今も街の片隅に建っています。
【了】
百物語2011
Part1<< Part61 Part62 Part63 Part64 Part65 Part66 Part67 Part68 Part69 >>Part100
評価する!(7702)
百物語一覧に戻る
怖い系の人気記事
百物語
→記事を読む
本当に危ないところを見つけてしまった
スレタイの場所に行き知人が一人行方不明になってしまったHINA ◆PhwWyNAAxY。VIPPERに助けを求め名乗りでた◆tGLUbl280sだったが得体の知れないモノを見てから行方不明になってしまう。また、同様に名乗りでた区らしき市民 ◆34uqqSkMzsも怪しい集団を目撃する。釣りと真実が交差する物語。果たして物語の結末は・・・?
→記事を読む
短編シリーズ
→記事を読む
毒男の怖い話とか音楽とか雑談とか
音楽をお供に、上質な怪談を味わってみませんか?
→記事を読む
師匠シリーズ
→記事を読む
唯一の友達の性癖が理解できない。
唯一の友達に唾液を求められ、VIPPERに助けを求める>>1。しかし運が悪いことに安価は「今北産業」で、スレの存在を友達に知られてしまう。そして事は予想だにしなかった展開に…!!
→記事を読む
守護霊「ゴルゴマタギ」
かのゴルゴそっくりなマタギの守護霊が憑いている友人を持つ報告者。そしてたびたび危機に巻き込まれるが、そのゴルゴよって救われる友人。愉快な心霊話に終わるかと思いきや、事態は予想外に大きくなっていき、そして…
→記事を読む
屋根裏から変な音する。獣害に詳しいやつ来てくれ
いっそ獣害だった方が救いはあった。
→記事を読む
笑い女
あなたは最近いつ人に笑われましたか?その声は耳に残ってはいませんか?居た。居た。居た。
→記事を読む
【都市伝説】都市伝説を語る会管理人が選ぶ【50選】
→記事を読む