2chまとめサイトモバイル

百物語2012

Facebook Twitter LINE はてなブックマーク
Part73
246 :切子 ◆DjSl2E7hcs :2012/08/19(日) 03:51:35.55 ID:pszXzzP+0
『転ばし』
(1/3)
私が中学生だったときの話。
うちはいわゆる見える人が多い家系で、父方の祖母や父、妹などは普段から不思議なものをたくさん見ていたようです。
しかし私と母はまったくの零感で、そういったものを見たことはほとんどありません。
そんな私ですが、一度だけ怖い体験をしたことがありました。
当時、かなり田舎に住んでいた私は中学校まで自転車で30分以上かけて通っていました。
その日も部活動を終えた私は、夕暮れの赤茶けた光の中を自転車で走っていました。
信号待ちで自転車を止めたときのことです。
ふと後ろを振り向いた私の視界に奇妙なものが映りました。
黒い・・・ボール・・・?
それは私には真っ黒な輪郭のはっきりしないバレーボールのように見えました。
でもそれが、まるで生きているかのようにころころとこちらに転がってきます。
田舎の夕暮れのこととて、周囲には人影どころか田んぼがあるばかり。
それなのに、まるで勢いよく放ったかのようにその黒いボールがこちらに近づいてくるのです。
なに?・・・怖い!
ゾッとしました。
背筋があわ立つとはあのような感覚を言うのだと思います。
普通ではないと思いました。

247 :切子 ◆DjSl2E7hcs :2012/08/19(日) 03:52:38.51 ID:pszXzzP+0
(2/3)
とっさに信号を無視して、私は全力で自転車をこぎ始めていました。
あれに追いつかれたらよくないことが起こるような気がしたのです。
後ろを振り向くと、あのボールがすごい勢いで近づいてきています。
無我夢中で自転車をこぎました。
スカートが翻るのも無視して力いっぱい立ちこぎしました。
カーブを曲がり、小さな坂を上り、細い小道を目いっぱいのスピードでこぎました。
それでも黒いボールは離れません。
当時、吹奏楽部だった私はそれなりに体力はありましたが、まるで肺が焼け付くようでした。
やがて大きな下り坂にさしかかりました。
普段なら足をゆるめてスピードを落とすのですが、そんな余裕はありません。
まだ黒いボールはついてきていたからです。
全速力で坂を下ります。
その坂の途中で、はじめて人とすれ違いました。
農家の方と思われるおじさんでしたが、切羽詰っていた私はものすごいスピードで通り過ぎていました。
すぐに下り坂はカーブにさしかかり、スピードを落とさなければ曲がりきれない、と思ったときです。
「あっ」と、後ろから驚いたような声が聞こえてきました。
スピードをゆるめ、後ろを見ると、先ほどのおじさんがすとんとしりもちをついていました。
なんだかバツが悪そうにきょろきょろしながら、立ち上がろうとするところでした。
黒いボールはもう、いなくなっていました。

248 :切子 ◆DjSl2E7hcs :2012/08/19(日) 03:53:27.41 ID:pszXzzP+0
(3/3)
え・・・おじさんが、転んだだけなの?
なんだか自分がバカみたいな気持ちになったのを覚えています。
あまりに拍子抜けだったせいか、その日のことは変なことがあったと日記に書いただけで誰にも話しませんでした。
それから数年して高校に上がったころのことです。
なにかの拍子で、ふと、この話を笑い話としてひとつ下の妹に話しました。
すると妹は
「知ってる、それ。踏むと転ぶんだよね」
と、ごく当たり前のことのように言うではありませんか。
私はそうそうと頷きながら、なんだか可笑しいよね、と同意を求めたのですが
妹は「それ、追いつかれなくてよかったね」と怖い顔で言うのです。
どういうこと、と聞き返すと、妹は言いました。
「そこの角で自動車の事故があったときにさ、見たことある」と。
そう言われて、ようやくあのときの自転車のスピードで転んでいたら大惨事だったことに思い至りました。
私が今更ながらに衝撃を受けていると、続けて妹は言ったのです。
「お姉には黒いボールに見えてたかもしれないけど、あれって首だし、人の」
【終】

怖い系の人気記事

本当に危ないところを見つけてしまった

スレタイの場所に行き知人が一人行方不明になってしまったHINA ◆PhwWyNAAxY。VIPPERに助けを求め名乗りでた◆tGLUbl280sだったが得体の知れないモノを見てから行方不明になってしまう。また、同様に名乗りでた区らしき市民 ◆34uqqSkMzsも怪しい集団を目撃する。釣りと真実が交差する物語。果たして物語の結末は・・・?

短編シリーズ

毒男の怖い話とか音楽とか雑談とか

音楽をお供に、上質な怪談を味わってみませんか?

百物語

師匠シリーズ

唯一の友達の性癖が理解できない。

唯一の友達に唾液を求められ、VIPPERに助けを求める>>1。しかし運が悪いことに安価は「今北産業」で、スレの存在を友達に知られてしまう。そして事は予想だにしなかった展開に…!!

守護霊「ゴルゴマタギ」

かのゴルゴそっくりなマタギの守護霊が憑いている友人を持つ報告者。そしてたびたび危機に巻き込まれるが、そのゴルゴよって救われる友人。愉快な心霊話に終わるかと思いきや、事態は予想外に大きくなっていき、そして…

屋根裏から変な音する。獣害に詳しいやつ来てくれ

いっそ獣害だった方が救いはあった。

笑い女

あなたは最近いつ人に笑われましたか?その声は耳に残ってはいませんか?居た。居た。居た。

卒業式で一人の女子生徒にギョッとした

記憶違い?勘違い?スレ内のやりとりで固まりかけた>1の結論。しかし>287の書き込みで再び謎がよみがえる。