百物語2012
Part7
24 :代理投稿 ◆ztxSLaq9Ok :2012/08/18(土) 21:32:23.54 ID:YriqamUu0
雷鳥一号 ◆zE.wmw4nYQ 『しっかり者の祖母』
(1/2)
友人の話。
実家の祖母が急死した。
慌てて帰郷し、何とか通夜には間に合った。
一息つく間もなく、翌日の葬儀の準備を手伝わされたという。
葬儀社との打ち合わせを終え、湯呑みを掻き集めていた母の手伝いに向かう。
先に話した折、湯呑みの数が足らないと頭を抱えていたからだ。
「お母さーん・・・ってあれ?」
意外にも、母はきちんと湯呑みを揃えていた。
食堂の大机の上に、柄の揃った湯呑みが丁寧に並べられている。
なぜか母はその前で、呆けたように座っていた。
「よくこれだけ同じ柄の物を集められたね」
労って声を掛けると、母は首をふるふると振った。
「お義母さんがね、お義母さんがね、蔵から出してくれたの」
何を言っているのか、まったくわからない。
母がお義母さんと呼んでいたのは死んだ祖母だけだ。
祖母は今、通夜が開かれた広間でそのまま安置されている。
「湯呑みが足りなくてね、お隣さんから借り集めようかと思案していたら、
ガラッと戸が開いて、お義母さんが、お義母さんが入ってきたの。
びっくりして声を掛けたのだけど、何の反応もなくて、奥の方へスーッと。
貴女たちは打ち合わせでいなかったから、慌てて私一人で追いかけたのね。
そうしたらお義母さん、蔵に入って隅の方から箱を引っ張り出したの。
中をあらためると、この揃いの湯呑みがね、入っていたの」
25 :代理投稿 ◆ztxSLaq9Ok :2012/08/18(土) 21:32:57.39 ID:YriqamUu0
(2/2)
「・・・お祖母ちゃんは?」
「箱の中身を調べている内にね、いつの間にかいなくなっちゃったの」
遺体の様子を見に行くから一緒に広間に行ってくれないか、そう母は頼んできた。
二人して恐る恐る、広間に足を踏み入れた。
何もおかしいところはなかった。
ただ、閉められていた筈のお棺の蓋が、半分ほど開いていた。
「自分の葬儀の準備まで手伝っていくなんて、しっかり者のお袋らしいや」
父は平然とそう述べただけだった。
葬儀は何事もなくしめやかに行われた。
祖母が棺から起き上がるのではないかと、彼女は葬儀の間中ドキドキしていたが、
そのようなことはなかった。
少しホッとして、そして同時に、少し寂しかったという。
【了】
雷鳥一号 ◆zE.wmw4nYQ 『しっかり者の祖母』
(1/2)
友人の話。
実家の祖母が急死した。
慌てて帰郷し、何とか通夜には間に合った。
一息つく間もなく、翌日の葬儀の準備を手伝わされたという。
葬儀社との打ち合わせを終え、湯呑みを掻き集めていた母の手伝いに向かう。
先に話した折、湯呑みの数が足らないと頭を抱えていたからだ。
「お母さーん・・・ってあれ?」
意外にも、母はきちんと湯呑みを揃えていた。
食堂の大机の上に、柄の揃った湯呑みが丁寧に並べられている。
なぜか母はその前で、呆けたように座っていた。
「よくこれだけ同じ柄の物を集められたね」
労って声を掛けると、母は首をふるふると振った。
「お義母さんがね、お義母さんがね、蔵から出してくれたの」
何を言っているのか、まったくわからない。
母がお義母さんと呼んでいたのは死んだ祖母だけだ。
祖母は今、通夜が開かれた広間でそのまま安置されている。
「湯呑みが足りなくてね、お隣さんから借り集めようかと思案していたら、
ガラッと戸が開いて、お義母さんが、お義母さんが入ってきたの。
びっくりして声を掛けたのだけど、何の反応もなくて、奥の方へスーッと。
貴女たちは打ち合わせでいなかったから、慌てて私一人で追いかけたのね。
そうしたらお義母さん、蔵に入って隅の方から箱を引っ張り出したの。
中をあらためると、この揃いの湯呑みがね、入っていたの」
25 :代理投稿 ◆ztxSLaq9Ok :2012/08/18(土) 21:32:57.39 ID:YriqamUu0
(2/2)
「・・・お祖母ちゃんは?」
「箱の中身を調べている内にね、いつの間にかいなくなっちゃったの」
遺体の様子を見に行くから一緒に広間に行ってくれないか、そう母は頼んできた。
二人して恐る恐る、広間に足を踏み入れた。
何もおかしいところはなかった。
ただ、閉められていた筈のお棺の蓋が、半分ほど開いていた。
「自分の葬儀の準備まで手伝っていくなんて、しっかり者のお袋らしいや」
父は平然とそう述べただけだった。
葬儀は何事もなくしめやかに行われた。
祖母が棺から起き上がるのではないかと、彼女は葬儀の間中ドキドキしていたが、
そのようなことはなかった。
少しホッとして、そして同時に、少し寂しかったという。
【了】
百物語2012
Part1<< Part3 Part4 Part5 Part6 Part7 Part8 Part9 Part10 Part11 >>Part100
評価する!(8279)
百物語一覧に戻る
怖い系の人気記事
百物語
→記事を読む
本当に危ないところを見つけてしまった
スレタイの場所に行き知人が一人行方不明になってしまったHINA ◆PhwWyNAAxY。VIPPERに助けを求め名乗りでた◆tGLUbl280sだったが得体の知れないモノを見てから行方不明になってしまう。また、同様に名乗りでた区らしき市民 ◆34uqqSkMzsも怪しい集団を目撃する。釣りと真実が交差する物語。果たして物語の結末は・・・?
→記事を読む
短編シリーズ
→記事を読む
毒男の怖い話とか音楽とか雑談とか
音楽をお供に、上質な怪談を味わってみませんか?
→記事を読む
師匠シリーズ
→記事を読む
唯一の友達の性癖が理解できない。
唯一の友達に唾液を求められ、VIPPERに助けを求める>>1。しかし運が悪いことに安価は「今北産業」で、スレの存在を友達に知られてしまう。そして事は予想だにしなかった展開に…!!
→記事を読む
守護霊「ゴルゴマタギ」
かのゴルゴそっくりなマタギの守護霊が憑いている友人を持つ報告者。そしてたびたび危機に巻き込まれるが、そのゴルゴよって救われる友人。愉快な心霊話に終わるかと思いきや、事態は予想外に大きくなっていき、そして…
→記事を読む
屋根裏から変な音する。獣害に詳しいやつ来てくれ
いっそ獣害だった方が救いはあった。
→記事を読む
笑い女
あなたは最近いつ人に笑われましたか?その声は耳に残ってはいませんか?居た。居た。居た。
→記事を読む
【都市伝説】都市伝説を語る会管理人が選ぶ【50選】
→記事を読む