百物語2012
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180 :代理投稿 ◆nqnJikEPbM.8 :2012/08/19(日) 01:31:28.31 ID:jvZ3IDbu0
憂莉 ◆BPe4rMCg8k 様 『旅行』
(1/3)
小学生の頃の話だ。
子供の頃は毎年夏に家族で旅行に行っていた。
旅行と言っても海外や沖縄に行くような贅沢なものじゃなく、車で行ける範囲の場所に行くだけだ。
さらに言うと近畿圏から出たことは無い、毎年近畿圏のどこかへ二泊三日程度旅行へ行く、それだけで子供のころはワクワクしたもんだ。
いつもとは違う場所に、さらに言うと去年とは違う場所へ。
学校で行く遠足と違って友達はいないし先生もいない。
だけど、いやだからこそというべきか、日常と違う感覚を味わえる。
子供ながらにそれこそが旅の醍醐味なんだろうと思ったものだ。
その年は淡路島へ行った。
初日はあいにくの雨でロクに海で遊べなかったが、それ以外は楽しくて仕方がなかった。
三日目になって思い返してみれば雨もいい話のネタになると思い始め、終わり良ければ全て良し、やはり今年の旅行は最高の旅行だったと考えてい
た。
もちろんそれは毎年旅行の帰りに考えていたことではあったが、その年はその気持ちがより強いもので、最終日の予定だったが母親にあと一日だけ
いたいとおねだりをした記憶がある。
幸い両親ともに翌日も休みということで急遽もう一泊して帰ろう、ということに決まった。
俺も兄貴も大喜び、たった一日のことだがその一日が子供にとってはとても重要なことだ。
なんとか宿も見つかったようで、とりあえず宿へと向かうことにした。
夏の昼は長いと言ってももちろんいつかは日は沈み夜がくる。
とりあえず宿へ向かう、と言ったのは何時間前のことであったか。
すでに日は沈んでいたが宿は見つけられずひたすら山道を走っていた。
最初は山道も見慣れない風景なので楽しんではいたのだが、さすがに数時間も続くとすっかり飽きてしまい気付いたら寝てしまっていた。
着いた、と母親に起こされると目の前にあるのは林に囲まれたおどろおどろしい、言ってしまえばいかにも出そうな旅館だった。
181 :代理投稿 ◆ztxSLaq9Ok :2012/08/19(日) 01:35:18.41 ID:wlTC3hbH0
(2/3)
家族全員微妙な顔をしていたと思う、これは失敗だなと。
しかし旅館の人は丁寧で、しかも他にお客さんはいないということで周りを気にしなくていいとのこと。
見た目は悪くても住めば都・・・いやこの場合は泊まれば都というべきか、ともかく旅館の人の丁寧な案内のおかげで失敗という気持ちは失せていた。
ごゆっくり、部屋まで案内してくれた仲居さんはそう言い残し部屋から去って言った。
部屋はなかなか広く、思ってたより悪くはない。
4人家族が使う分には少し広かったと思うからもしかしたら誰もいないからと少しいい部屋に案内してくれたのかもしれない。
少しゆっくりしていたら不意に「なあ、あれ・・・。」と、母がガラス戸の外を指差す。
部屋にはガラス戸がありそのまま外へ出られるような形になっていた。
母が指差す先には・・・地蔵?
暗くてよく見えないがうっすらと地蔵のようなものが見える。
地蔵は別に悪い物ではない、もちろん何かいわくがあれば別だが。
しかしとにかく気味が悪かった。
客室のすぐ外に地蔵がある旅館など聞いたことがない。
外には出れるが誰も確認に行きたがろうとしなかった。
話もそこそこに誰からということもなく、自然と寝ようとしていた。
しかしなかなか寝付けず、トイレに向かった。
二時くらいだろうか、草木も眠る丑三つ時である。
部屋の外にある共用トイレに向かうのは少しだけ怖かった、というより人見知りする方なので誰かに会わないかと一瞬思ったがよく考えたら他に宿泊客はいないことを思い出した。
182 :代理投稿 ◆ztxSLaq9Ok :2012/08/19(日) 01:36:17.31 ID:wlTC3hbH0
(3/3)
廊下は明るかったと思う。
ギシギシと無気味に音を立てながらトイレに向かう。
廊下は明るいのだが、着いたトイレはうっすらとしか電気がついておらず、いっそう無気味な雰囲気だった。
さっさと済まそう、腹を決め個室に入ると外からの明かりが扉で遮断され余計に暗くなった。
これは設計ミスじゃないかという怒りと恐怖が入り交じりながらも用を足していると不意に。
コン、コン。
と、扉を叩く音が聞こえた。
家族の誰かがきたのかと思いノックを返し用を済ませ個室を出ると、待っていたのは知らない中年男性だった。
40代か50代だろうか、ともかく他に宿泊客はいないはずなのに知らない中年男性がいる。
一瞬従業員かと思ったが、従業員は離れのような場所で泊まっているから夜中も騒いで大丈夫と仲居さんに聞いた記憶がある。
一分くらい固まっていたが、意を決して軽く会釈をし、逃げるようにトイレを出て部屋に戻るなり布団をかぶり朝を待った。
気付けば朝になっていた。
知らぬ間に寝ていたようだ。
朝になると外にあった地蔵らしきものの正体がわかった。
たぬきの置物である、幽霊の正体見たり枯れ尾花というわけだ。
トイレの件もそういった笑い話になってほしかったが、結局その晩はうちの家族以外誰も宿泊客はいない、従業員もトイレは離れのような場所にあるのでこちらには来ていないということがわかり、何も解決はしなかった。
その年の旅行は生まれて初めて最低なものだと帰りながら思った。
終わり悪ければすべて・・・と、いうわけだ。
【了】
憂莉 ◆BPe4rMCg8k 様 『旅行』
(1/3)
小学生の頃の話だ。
子供の頃は毎年夏に家族で旅行に行っていた。
旅行と言っても海外や沖縄に行くような贅沢なものじゃなく、車で行ける範囲の場所に行くだけだ。
さらに言うと近畿圏から出たことは無い、毎年近畿圏のどこかへ二泊三日程度旅行へ行く、それだけで子供のころはワクワクしたもんだ。
いつもとは違う場所に、さらに言うと去年とは違う場所へ。
学校で行く遠足と違って友達はいないし先生もいない。
だけど、いやだからこそというべきか、日常と違う感覚を味わえる。
子供ながらにそれこそが旅の醍醐味なんだろうと思ったものだ。
その年は淡路島へ行った。
初日はあいにくの雨でロクに海で遊べなかったが、それ以外は楽しくて仕方がなかった。
三日目になって思い返してみれば雨もいい話のネタになると思い始め、終わり良ければ全て良し、やはり今年の旅行は最高の旅行だったと考えてい
た。
もちろんそれは毎年旅行の帰りに考えていたことではあったが、その年はその気持ちがより強いもので、最終日の予定だったが母親にあと一日だけ
いたいとおねだりをした記憶がある。
幸い両親ともに翌日も休みということで急遽もう一泊して帰ろう、ということに決まった。
俺も兄貴も大喜び、たった一日のことだがその一日が子供にとってはとても重要なことだ。
なんとか宿も見つかったようで、とりあえず宿へと向かうことにした。
夏の昼は長いと言ってももちろんいつかは日は沈み夜がくる。
とりあえず宿へ向かう、と言ったのは何時間前のことであったか。
すでに日は沈んでいたが宿は見つけられずひたすら山道を走っていた。
最初は山道も見慣れない風景なので楽しんではいたのだが、さすがに数時間も続くとすっかり飽きてしまい気付いたら寝てしまっていた。
着いた、と母親に起こされると目の前にあるのは林に囲まれたおどろおどろしい、言ってしまえばいかにも出そうな旅館だった。
181 :代理投稿 ◆ztxSLaq9Ok :2012/08/19(日) 01:35:18.41 ID:wlTC3hbH0
(2/3)
家族全員微妙な顔をしていたと思う、これは失敗だなと。
しかし旅館の人は丁寧で、しかも他にお客さんはいないということで周りを気にしなくていいとのこと。
見た目は悪くても住めば都・・・いやこの場合は泊まれば都というべきか、ともかく旅館の人の丁寧な案内のおかげで失敗という気持ちは失せていた。
ごゆっくり、部屋まで案内してくれた仲居さんはそう言い残し部屋から去って言った。
部屋はなかなか広く、思ってたより悪くはない。
4人家族が使う分には少し広かったと思うからもしかしたら誰もいないからと少しいい部屋に案内してくれたのかもしれない。
少しゆっくりしていたら不意に「なあ、あれ・・・。」と、母がガラス戸の外を指差す。
部屋にはガラス戸がありそのまま外へ出られるような形になっていた。
母が指差す先には・・・地蔵?
暗くてよく見えないがうっすらと地蔵のようなものが見える。
地蔵は別に悪い物ではない、もちろん何かいわくがあれば別だが。
しかしとにかく気味が悪かった。
客室のすぐ外に地蔵がある旅館など聞いたことがない。
外には出れるが誰も確認に行きたがろうとしなかった。
話もそこそこに誰からということもなく、自然と寝ようとしていた。
しかしなかなか寝付けず、トイレに向かった。
二時くらいだろうか、草木も眠る丑三つ時である。
部屋の外にある共用トイレに向かうのは少しだけ怖かった、というより人見知りする方なので誰かに会わないかと一瞬思ったがよく考えたら他に宿泊客はいないことを思い出した。
182 :代理投稿 ◆ztxSLaq9Ok :2012/08/19(日) 01:36:17.31 ID:wlTC3hbH0
(3/3)
廊下は明るかったと思う。
ギシギシと無気味に音を立てながらトイレに向かう。
廊下は明るいのだが、着いたトイレはうっすらとしか電気がついておらず、いっそう無気味な雰囲気だった。
さっさと済まそう、腹を決め個室に入ると外からの明かりが扉で遮断され余計に暗くなった。
これは設計ミスじゃないかという怒りと恐怖が入り交じりながらも用を足していると不意に。
コン、コン。
と、扉を叩く音が聞こえた。
家族の誰かがきたのかと思いノックを返し用を済ませ個室を出ると、待っていたのは知らない中年男性だった。
40代か50代だろうか、ともかく他に宿泊客はいないはずなのに知らない中年男性がいる。
一瞬従業員かと思ったが、従業員は離れのような場所で泊まっているから夜中も騒いで大丈夫と仲居さんに聞いた記憶がある。
一分くらい固まっていたが、意を決して軽く会釈をし、逃げるようにトイレを出て部屋に戻るなり布団をかぶり朝を待った。
気付けば朝になっていた。
知らぬ間に寝ていたようだ。
朝になると外にあった地蔵らしきものの正体がわかった。
たぬきの置物である、幽霊の正体見たり枯れ尾花というわけだ。
トイレの件もそういった笑い話になってほしかったが、結局その晩はうちの家族以外誰も宿泊客はいない、従業員もトイレは離れのような場所にあるのでこちらには来ていないということがわかり、何も解決はしなかった。
その年の旅行は生まれて初めて最低なものだと帰りながら思った。
終わり悪ければすべて・・・と、いうわけだ。
【了】
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