百物語2012
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147 :三年目の朝顔 ◆6.QkgMwzsU :2012/08/19(日) 00:33:16.20 ID:uWtnU2NG0
「守られる家」1/3
私が生まれ育ってきた家の事を話すと、「変わった所に住んでいたんだね」
と、よく人に言われる。私はそれが"あたりまえ"で過ごしてきたので、何が
どう変わっているのか全然ピンと来なかったが、大人になった今思うと確か
に変わっているかも知れなかった。
ある日の1日を書き出してみるとこうである。
朝5時頃になると、ドンドコドンドコ・・・と、大きな音で目を覚めさせ
られる。隣の稲荷神社から聞こえる太鼓の音だ。
私は7時に起きれば良かったので、いつも"うるさいなぁ〜"と思いながら
再び眠っていた。
そして土日の夕方にはトン・テン・シャン・ピーヒャララ・・・と賑やかな
音が2軒隣から聞こえてくる。…天理教だ。
さらに夜にお風呂に入ってると窓の外から轟く様に早口の大合唱で
南無妙法蓮華経、南無妙法蓮華経、南無妙法蓮華経、南無妙法蓮華経………
と聞こえてくる。特に、この南無妙法蓮華経、はいつまでもいつまでも聞こ
えてきて、幼い私はとても怖かった事を覚えている。
148 :三年目の朝顔 ◆6.QkgMwzsU :2012/08/19(日) 00:33:57.56 ID:uWtnU2NG0
2/3
まるで、魔の三角地帯のちょうど真ん中に私の家が建てられているカタチ
だった。そして、とても不思議だったのは、この二大宗教に挟まれていた私の
家は、どちらの派閥にも入らない"無宗教"の家だったのだ。
今思うと、近所の人が家のものに対してよそよそしかったのは、この"無宗教"
が関係しているのかも知れなかった。
…そんな、喧騒な日々を私は十数年間"あたりまえ"に過ごしていた。
それから家族で引っ越しをし、あの家も運よく誰かに買われていった。
その後数年たち、ある日、自分の人生をリセットしたくなった私は、やっぱり
"生まれた家"、"生まれた土地"に帰るのが、人生をやりなおす一番のきっかけ
になるだろうと思い、ものすごく久しぶりに家に帰った。
帰ったと言っても、もう誰も住んでない家。風の噂で家を買ってくれた人も
引っ越したと聞いた。
でも、誰も住んでないボロ家でも、潰れないで残っている事に私はとても
感激した。そして、家の周りを見てものすごく驚いた。
まず、創価学会の家が土地だけになっていた。そして隣の家も跡形もなく無く
なっていて、夏草がビッシリ生えていた。さらに、確かあそこにあったはずの
天理教の前を何度も行ったり来たりしても見当たらない。
そして、稲荷神社の御神木は根本からバッサリと切られていた。
私は、稲荷神社の木を切ってもいいのかなぁ?と思い、帰りに神社に寄ると
ブランコや滑り台も蜘蛛の巣だらけ。お社も窓ガラスが割れていて、すっかり
さびれていて、どうしてこんなふうになってしまったんだろう…と悩みながら
そこを後にした。
149 :三年目の朝顔 ◆6.QkgMwzsU :2012/08/19(日) 00:34:52.89 ID:uWtnU2NG0
3/3
次の日、旅館の仲居さんに家の周りの事を聞いてみた。
「あ〜、あそこね、確かちょっと前に天理教から火が出てねぇ〜
上の神社の木にも燃え移って、隣の家も全焼したんじゃなかったかな?
かなり大きな火事でねぇ、ほら、あそこは道が狭くて消防車も入らないでしょ…」
仲居さんは眉をひそめてぶつぶつ言っていた。
私はまさかあの一帯が火事で燃えてしまったとは思わず、驚くと共に稲荷神社の
御神木を切った理由もわかった。神社が廃れた理由も御神木が関係していると
思った。
魔の三角地帯の真ん中に鎮座する空き家。
周りの点は3つとも機能してないのに、何故あの家だけがひっそりと残っている
のだろう…。
私は、いつもと同じ様に自分の生まれ育った家が、空き家で十数年たつのに
まだ残っている話をすると、ある人はこう言った
「その土地に愛されるというか、守られる家ってあるんだってね」
私はあの家には、愛着を持った魂がたくさん、今でも棲んでいるのだろうか、
そんな風に思い、幼い頃の思い出をそっと心に閉まった。
〜完〜
「守られる家」1/3
私が生まれ育ってきた家の事を話すと、「変わった所に住んでいたんだね」
と、よく人に言われる。私はそれが"あたりまえ"で過ごしてきたので、何が
どう変わっているのか全然ピンと来なかったが、大人になった今思うと確か
に変わっているかも知れなかった。
ある日の1日を書き出してみるとこうである。
朝5時頃になると、ドンドコドンドコ・・・と、大きな音で目を覚めさせ
られる。隣の稲荷神社から聞こえる太鼓の音だ。
私は7時に起きれば良かったので、いつも"うるさいなぁ〜"と思いながら
再び眠っていた。
そして土日の夕方にはトン・テン・シャン・ピーヒャララ・・・と賑やかな
音が2軒隣から聞こえてくる。…天理教だ。
さらに夜にお風呂に入ってると窓の外から轟く様に早口の大合唱で
南無妙法蓮華経、南無妙法蓮華経、南無妙法蓮華経、南無妙法蓮華経………
と聞こえてくる。特に、この南無妙法蓮華経、はいつまでもいつまでも聞こ
えてきて、幼い私はとても怖かった事を覚えている。
148 :三年目の朝顔 ◆6.QkgMwzsU :2012/08/19(日) 00:33:57.56 ID:uWtnU2NG0
2/3
まるで、魔の三角地帯のちょうど真ん中に私の家が建てられているカタチ
だった。そして、とても不思議だったのは、この二大宗教に挟まれていた私の
家は、どちらの派閥にも入らない"無宗教"の家だったのだ。
今思うと、近所の人が家のものに対してよそよそしかったのは、この"無宗教"
が関係しているのかも知れなかった。
…そんな、喧騒な日々を私は十数年間"あたりまえ"に過ごしていた。
それから家族で引っ越しをし、あの家も運よく誰かに買われていった。
その後数年たち、ある日、自分の人生をリセットしたくなった私は、やっぱり
"生まれた家"、"生まれた土地"に帰るのが、人生をやりなおす一番のきっかけ
になるだろうと思い、ものすごく久しぶりに家に帰った。
帰ったと言っても、もう誰も住んでない家。風の噂で家を買ってくれた人も
引っ越したと聞いた。
でも、誰も住んでないボロ家でも、潰れないで残っている事に私はとても
感激した。そして、家の周りを見てものすごく驚いた。
まず、創価学会の家が土地だけになっていた。そして隣の家も跡形もなく無く
なっていて、夏草がビッシリ生えていた。さらに、確かあそこにあったはずの
天理教の前を何度も行ったり来たりしても見当たらない。
そして、稲荷神社の御神木は根本からバッサリと切られていた。
私は、稲荷神社の木を切ってもいいのかなぁ?と思い、帰りに神社に寄ると
ブランコや滑り台も蜘蛛の巣だらけ。お社も窓ガラスが割れていて、すっかり
さびれていて、どうしてこんなふうになってしまったんだろう…と悩みながら
そこを後にした。
149 :三年目の朝顔 ◆6.QkgMwzsU :2012/08/19(日) 00:34:52.89 ID:uWtnU2NG0
3/3
次の日、旅館の仲居さんに家の周りの事を聞いてみた。
「あ〜、あそこね、確かちょっと前に天理教から火が出てねぇ〜
上の神社の木にも燃え移って、隣の家も全焼したんじゃなかったかな?
かなり大きな火事でねぇ、ほら、あそこは道が狭くて消防車も入らないでしょ…」
仲居さんは眉をひそめてぶつぶつ言っていた。
私はまさかあの一帯が火事で燃えてしまったとは思わず、驚くと共に稲荷神社の
御神木を切った理由もわかった。神社が廃れた理由も御神木が関係していると
思った。
魔の三角地帯の真ん中に鎮座する空き家。
周りの点は3つとも機能してないのに、何故あの家だけがひっそりと残っている
のだろう…。
私は、いつもと同じ様に自分の生まれ育った家が、空き家で十数年たつのに
まだ残っている話をすると、ある人はこう言った
「その土地に愛されるというか、守られる家ってあるんだってね」
私はあの家には、愛着を持った魂がたくさん、今でも棲んでいるのだろうか、
そんな風に思い、幼い頃の思い出をそっと心に閉まった。
〜完〜
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